(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧源が印加する電圧の波形がパルス波形、インパルス波形、及びバースト波形のいずれかである、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の塗膜の粘度分布測定装置。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムやガスバリアフィルム、液晶関連のカラーフィルタなど、インクや高分子樹脂溶液などの塗料で塗膜を形成する工程では、ムラが原因で製品が欠陥となる場合がある。光学フィルムやカラーフィルタでは光学特性の欠陥や膜厚分布のムラとなり、ガスバリアフィルムではバリア性能の不良などが生じる。
【0003】
ムラの発生は、塗布時に発生するムラ以外に、外見上及び膜厚分布が均一に塗布されても、乾燥中にムラが生じる場合がある。
【0004】
塗膜の乾燥状態の分布や、塗膜の濃度、膜質の指標となる塗膜の粘度分布が場所によって異なる場合、外観からムラとして確認することは難しいことが多い。すなわち光学的に塗膜のムラが観察されなくても、実際の乾燥状態の分布や粘度分布が、塗膜の面内で分布しているかを、物理的に塗膜に接触せず、光学的に観察することは難しい。そうした乾燥状態の分布や粘度分布の違いが、その後で塗膜にムラ不良を生じさせる原因となる。
【0005】
そのようなムラの発生を抑えるには、塗膜の完成後にムラを観察するだけでなく、各塗料、各塗布条件の乾燥過程において、どの段階でムラが生じるかを測定し、そこから原因を検討の上、最適な塗料と塗布乾燥条件を最適化することが有効である。
【0006】
塗膜のムラを画像検査する方法が多く用いられる(例えば特許文献1参照)。従来の方法の塗膜のムラの画像検査方法では、塗膜のムラを照明方法などを変えて強調して画像計測する方法が多く用いられている。
【0007】
しかしムラを光学的に強調して画像化する従来の方法では、外観上のムラのみの測定であり、外観上判別できない粘度分布は測定ができない。また塗膜が液体の状態で塗布され、塗布後の乾燥過程において、塗料と塗布乾燥条件を変えてムラが発生しない条件を求めたい場合、塗膜の表面形状、反射特性、色等は乾燥過程で変化していき、ムラが画像測定できる光学条件も異なっていくので、ムラを外観上だけで測定することは困難であった。また、乾燥状態の違いが外観で光学的に観察できない場合は画像測定することが困難であった。
【0008】
塗膜の粘度を電場を加えて非接触で測定する方法を適用した従来の例がある(例えば特許文献2参照)。しかし、従来の例では、電場を針から印加してレーザー光を集光し一点で測定しているため、粘度の分布が測定できないこと、膜厚の変化、表面の形状や反射特性の変化に対応することが困難なことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、インクや高分子樹脂溶液などの塗料を基板に塗布した塗膜の粘度分布を測定することのできる粘度分布測定装置及び粘度分布測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はかかる課題を解決するものであり、その一局面は、電圧の印加により周期的な電場が生じる周期的な電極パターンが形成された基板と、電極パターンに電圧を印加する電圧源と、基板に平行光を照射する光源と、基板に塗布された塗膜からの反射光を反射光の光軸に平行または略平行に検出し、検出した反射光に基づく画像について計測処理を行う画像計測器とを含み、画像計測器は、電圧源により電極パターンへ電圧を印加することにより変形する塗膜からの反射光を検出することにより時間的に連続する複数の画像を取得して、複数の画像を構成する
複数の画素
のそれぞれにおける輝度の時間的な変化に基づいて塗膜の粘度を測定する、塗膜の粘度分布測定装置である。
【0012】
また、光源がテレセントリック照明であり、平行光を基板に半透過鏡で同軸落斜照明し、画像計測器がテレセントリックレンズを備えたエリアカメラを有してもよい。
【0013】
また、周期的な電極パターンが複数の線パターンで形成される表面電極パターンであり、基板の材料が誘電体であり、基板の裏面に裏面電極パターンがさらに形成され、電圧源により、表面電極パターンと裏面電極パターンとに電圧を印可することにより表面電極パターンと裏面電極パターンとの間に電位差を生じさせることができてもよい。
【0014】
また、線パターンの間隔が塗膜の膜厚の5倍以上25倍以下であり、線パターン上の塗膜が電圧の印加時に基板上の全面で変形してもよい。
【0015】
また、電圧源が印加する電圧の波形がパルス波形、インパルス波形、及びバースト波形のいずれかであってもよい。
【0016】
また、本発明の他の局面は、電圧の印加により周期的な電場が生じる周期的な電極パターンが形成された基板に測定対象の塗膜を形成する工程と、電極パターンへ電圧を印加して、塗膜の少なくとも一部を変形させながら、塗膜からの反射光を検出することにより時間的に連続する複数の画像を取得する工程と、複数の画像の各画素における輝度変化の時定数分布を求める工程と、記輝度変化の時定数分布、及び既知の粘度を有する複数の溶液を用いて予め求められた輝度変化の時定数と粘度との関係に基づいて、塗膜における粘度分布を求める工程とを含む、塗膜の粘度分布測定方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インクや高分子樹脂溶液などの塗料を基板に塗布した塗膜の粘度分布を測定することのできる粘度分布測定装置及び粘度分布測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
<粘度分布測定装置>
(第1の実施形態)
まず本発明の第1の実施形態に係る粘度分布測定装置100を
図1に示し、
図1を用いて説明する。
図1は、
図1の(a)に粘度分布測定装置100の概要を示し、
図1の(b)に塗膜の変形の様子を表す断面図を示す。
【0021】
図1に示すように、粘度分布測定装置100は、電圧の印加により周期的な電場が生じる周期的な電極パターン2が形成され、表面に粘度の測定対象とする塗膜7を形成することのできる基板3と、電極パターン2に電圧を印加する電圧源8と、基板3に平行光を照射する光源1と、基板3に塗布された塗膜7からの反射光を反射光の光軸に平行または略平行に検出し、検出した反射光に基づく画像について計測処理を行う画像計測器とを含む。
【0022】
粘度分布測定装置100は、画像計測器により、電圧源8により電極パターン2へ電圧を印加することにより変形する塗膜7からの反射光を検出することにより時間的に連続する複数の画像を取得して、複数の画像を構成する画素における輝度の時間的な変化に基づいて塗膜7の粘度分布を測定することができる。
【0023】
粘度分布測定装置100は、平行光を照射可能な光源1から出射した光を、周期的な電極パターン2が形成された基板3上に形成された塗膜7へ照射する。光源1には、レーザー光はスペックルが発生することや可干渉性が強く基板3上での観察に適さず、インコヒーレントなハロゲン光、メタルハライド光、LED光、キセノン光などを好適に用いることができる。光源1としては、平行光を生成するコリメートレンズや平行LED光源等の汎用的に市販されている光源を用いることができる。
【0024】
画像計測器は、例えばレンズ4を取り付けたエリアカメラ5と、エリアカメラ5に接続された画像処理装置6とにより構成することができる。エリアカメラ5は、CCDまたはCMOSのカメラを用いることができ、プログレッシブスキャン方式が好適である。
【0025】
基板3は、板状の基材を含み、基材の材料には、絶縁性が高く、塗膜7を平滑性良く塗布でき、電極パターン2が形成できる基板用ガラスを用いることができる。具体的には、石英ガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、無アルカリガラスなどが好適である。
【0026】
エリアカメラ5には平行光または略平行光を撮像できるレンズ4を装着することが望ましい。具体的には、汎用的なレンズでは焦点距離80mm以上、F値を5.6以上のレンズを用いることができる。
【0027】
電極パターン2には、電圧の印加により周期的な電場が生じる周期的な電極パターンとして、
図1の(a)に示すような、複数の線パターンの電極が平行に多数形成されるすだれ状電極などを好適に用いることができる。基板3上には、測定対象とする塗膜7が塗布される。
【0028】
電極パターン2を構成する複数の線パターンに交互に電圧印加と接地とをすると、
図1の(b)に示すように、線パターン間に電気力線9が生じる。塗膜7を電気力線9が通ると、塗膜7と空気との誘電率が異なるためマクスウェル応力が働き、電場によって塗膜7が変形し、塗膜の変形10が生じる。
【0029】
比誘電率50以下の塗膜7を、50V以下の印加電圧で発生する電気力線9で変形させるためには、塗膜7の膜厚は50μm以下、電極パターン2を構成する複数の線パターン間の間隔は100μm以下が好適である。
【0030】
電圧源8から約50V以上の電圧を電極パターン2に印可すると塗膜7に塗膜の変形10が生ずる。レンズ4のF値の設定を大きくすることで、平行ないしは略平行な反射した光がエリアカメラ5に結像できるため、塗膜の変形10が大きいとエリアカメラ5で輝度変化が大きい画像を測定できる。よって、塗膜の変形10を画像での輝度変化として測定できる。電圧源8からステップ電圧を印加し、印加後に特定の時間にわたって画像測定した場合、塗膜7の粘度が高い部分は電場印加による応答が遅いため、塗膜の変形10が小さく、輝度変化が小さい傾向がある。
【0031】
画像処理装置6は、エリアカメラ5により取得された電圧印加前と印加後との画像を用いて、各画素における輝度変化の速度を求めることで塗膜7の粘度分布を得ることができる。画像処理装置6は、例えばエリアカメラ5と接続された汎用的な画像解析計測ソフトなどとにより構成できる。画像処理装置6により、電圧印加前と印加後との連続的または断続的塗膜7の外観画像を測定し、外観画像における輝度のムラ、及び電圧印加時と非印加時の外観画像の輝度分布から粘度分布を測定できる。
【0032】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る粘度分布測定装置101を、
図2を用いて説明する。
【0033】
粘度分布測定装置100と粘度分布測定装置101との相違点は、光源1としてテレセントリック照明11用い、レンズ4としてテレセントリックレンズ12を用い、テレセントリック照明11からの照射光を半透過鏡13により基板3上の塗膜7に同軸落射している点である。
【0034】
粘度分布測定装置101では、光源として、照射光の平行度が高いテレセントリック照明11を用いる。テレセントリック照明11は望ましくは平行度が0.03°以下、F20以上、インコヒーレント光が適する。エリアカメラ5には、平行光を結像するテレセントリックレンズ12を装着する。テレセントリックレンズ12は、望ましくは両側テレセントリックレンズ、平行度が0.03°以下、F20以上が適する。
【0035】
図2に示すように、テレセントリック照明11から出射した平行な照射光は半透過鏡13を介して同軸落射され、塗膜7の表面から平行に反射した光がテレセントリックレンズ12に入射し、エリアカメラ5で結像する。テレセントリック照明11、テレセントリックレンズ12とも、平行度が高く、F値が大きいため、塗膜の変形10が生じたときに、反射光が正反射しない場合はエリアカメラ5で結像されず、電圧印加による画像の輝度変化が高感度に、また画像内で均一に検出される。通常のレンズをエリアカメラ5に装着した場合、視野範囲において画角が異なるため、塗膜の変形による画像の輝度変化が場所によって異なり、不均一に検出される。
【0036】
一般的な画像測定と異なり、塗膜の変形10は約0.3°以下のため、粘度分布測定装置101では平行度を高めたテレセントリック光学系で測定することが有効である。
【0037】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る粘度分布測定装置102を、
図3を用いて説明する。
【0038】
粘度分布測定装置101と粘度分布測定装置102との相違点は、粘度分布測定装置101の基板3に対応する基板21に表面電極パターン22及び裏面電極パターン23が形成されている点である。その他の構成は、粘度分布測定装置101と同様であるため、図示及び説明は省略する。なお、説明は省略するが、粘度分布測定装置100の基板3を基板21に置き換えて用いてもよい。
【0039】
基板21は、ガラス等の誘電体の材質からなる板状の基材の表面に、表面電極パターン22である所定の間隔27を備えて周期的に形成された複数の線パターンを備える。表面電極パターン22としては、電極パターン2と同様に線パターンの電極が平行に多数形成されるすだれ状電極を好適に用いることができる。基板21の基材裏面には、裏面電極パターン23が形成されている。裏面電極パターン23は例えばベタ電極とすることができる。
【0040】
基板21には、粘度の測定対象とする塗膜24が塗布される。表面電極パターン22には、複数の線パターンが同電位となるように電圧源8により電圧を印加する。また、裏面電極パターン23は接地する。これにより、表面電極パターン22から基板21の基材を通り裏面電極パターン23へ電気力線25が生じる。電気力線25によって、塗膜の変形26が生じて、第1の実施形態や第2の実施形態と同様の方法で塗膜24の粘度分布測定が実施できる。
【0041】
100μm以下の塗膜24において、基板21の厚さは約500μm以下とすることが、電気力線25を発生させて塗膜24の変形26を生じさせるために好適である。表面電極パターン22を同電位とすることで、表面電極パターン22の個別の線パターンで交互に電位差が生じず、液体の状態から塗布されて導電率も変化する塗膜24において、電気的短絡を発生させずに測定することができる。
【0042】
<粘度分布測定方法>
次に、本発明に係る粘度分布測定方法について、粘度分布測定装置102を用いた例を
図4〜
図7を用いて説明する。なお、本粘度分布測定方法は、粘度分布測定装置100、101を用いて行ってもよいし、粘度分布測定装置100〜102を用いなくてもよい。
【0043】
本発明に係る粘度分布測定方法は、電圧の印加により周期的な電場が生じる周期的な電極パターンが形成された基板に測定対象の塗膜を形成する工程と、電極パターンへ電圧を印加して、塗膜の少なくとも一部を変形させながら、塗膜からの反射光を検出することにより時間的に連続する複数の画像を取得する工程と、複数の画像の各画素における輝度変化の時定数分布を求める工程と、記輝度変化の時定数分布、及び既知の粘度を有する複数の溶液を用いて予め求められた輝度変化の時定数と粘度との関係に基づいて、塗膜における粘度分布を求める工程とを含む。
【0044】
初めに、表面電極パターン22に電圧を印可した際に得られる塗膜24の画像の輝度変化について説明する。
【0045】
表面電極パターン22において、平行な線パターンの間隔27を、塗膜24の膜厚に対して5倍以上25倍以下の長さとする。間隔27が狭いと電気力線25の間隔も狭くなることから、塗膜24の膜厚に比して塗膜24の表面に生じる電場の分布の周期が狭くなり、塗膜の変形26が殆ど生じなくなる。一方、間隔27が広いと、塗膜の変形26同士の間隔が広くなり、測定した画像全面で均一に測定できなくなる。
【0046】
例として、塗膜24として厚さ50μm、粘度5000mPa・sのシリコンオイルを、表面電極パターン22の間隔27が1mmの基板21に塗布した。初めに、粘度分布測定装置102を用いて、表面電極パターン22に電圧を印可する前の外観画像30を求めた。得られた外観画像30を
図4に示す。
【0047】
次に、表面電極パターン22にステップ電圧を印加し、塗膜の変形26が生じたときの、電圧印加後の特定時間経過後における外観画像31を測定した。得られた外観画像31を
図4に示す。また、外観画像30と電圧印加後の特定時間経過後における外観画像31との各画素の輝度値の絶対差分を画像処理装置6で行うと、変化画像32が求められる。得られた変化画像32を
図4に示す。
【0048】
変化画像32において、線33で示した位置の各画素での値(輝度値の絶対差分値)を、
図4に輝度変化34のグラフで示した。輝度変化34においては、各画素で0でない値となっており、全画素で電圧による輝度の変化が周期的に生じていることがわかる。このように、表面電極パターン22にステップ電圧を印加した場合、印加後の時間に対する塗膜24からの反射光に基づく画像の各画素における輝度の変化はほぼ一次遅れ系となる傾向が得られており、各画素での輝度変化の一次遅れ系での時定数の分布を求めることで、粘度の分布を測定することができる。
【0049】
変化画像32では、表面電極パターン22のパターン線と直交する方向に、輝度変化34が生じており、周期的に輝度の変化が生じている。この周期的な輝度の変化を除き、粘度分布を平滑に求めるには、画像処理装置6において、画像処理分野においては一般的な周期性を除く移動平均フィルタやガウシアンフィルタなどの平滑処理を行う方法がある。周期を平均化することで、変化画像32を平滑化し、
図5に示す粘度分布40が得られる。塗膜24は、均一な粘度のシリコンオイルにより形成されているため、変化画像32の周期性が除かれると、ほぼ均一な灰色の画像が得られた。粘度分布40では、
図5に粘度分布40の模式
図41において示したわずかに生じた測定精度上のムラ42以外は、輝度がほぼ均一となっている。
【0050】
次に、粘度分布測定装置102を用いた輝度変化の時定数と粘度との関係を求める方法について説明する。
【0051】
初めに、粘度分布測定装置102の基板21上に塗膜24を形成する。塗膜24の形成には既知の粘度の溶液を用いる。既知の粘度の溶液としては、粘度計校正用標準液、シリコン標準粘度液等が好適である。次に、電圧源8から、例として、
図6の(b)に示すステップ電圧波形43を印加し、エリアカメラ5で動画形式等で時間的に連続して、
図6の(a)に示すように連続画像44を測定する。次に、画像処理装置6によって、連続画像44の各画素45の輝度46を求める。これにより、
図6の(c)に示すように、ステップ電圧波形43を印加後、塗膜の変形26によって生じる輝度変化を得ることができる。輝度の変化はほぼ一次遅れ系で変化する。この結果から、ステップ電圧波形43の印加から、輝度の変化が飽和する値47の0.632倍となるまでの時間である輝度変化の時定数48を求める。
【0052】
塗膜24に用いる溶液の粘度が異なると時定数48が変化し、粘度が高いと時定数48は大きくなる傾向がある。この性質を利用して、複数の既知の粘度の溶液により塗膜24を形成したときの、それぞれの時定数48を測定し、塗膜24の粘度と時定数との関係を求める。
【0053】
粘度と時定数との関係の測定例として、塗膜24として、厚さ50±10μmの範囲で、粘度50mPa・s、100mPa・s、1000mPa・s、5000mPa・s、10000mPa・s、500000mPa・sそれぞれのシリコン標準粘度液を、表面電極パターン22の間隔27が1mmの基板21に塗布した。そして、粘度分布測定装置102を用いて、波形43を電圧300Vで印加し、各粘度での連続画像44を測定しそこでの全画素平均の各時定数48を求め、
図6の(d)に示す、各粘度と各時定数48との関係を表すグラフ49を求めた。グラフ49において粘度と時定数とはほぼ、べき乗則の関係となっている。
【0054】
このようにして、グラフ49を得ることで、測定対象とする溶液の塗膜24において、連続画像44を測定し、そこから時定数分布を画像で求め、グラフ49に示される粘度と時定数との関係から、時定数分布を粘度分布に数式的に換算して、定量的に塗膜24の粘度分布を測定することができる。
【0055】
次に、得られた輝度変化の時定数と粘度との関係を用いて、所定の塗膜の粘度分布を測定する方法について、測定対象とする塗膜24を基板21に塗布し、塗布直後から乾燥過程において変化する粘度分布を測定する場合を例に説明する。塗膜24は塗布直後から、溶液の組成や塗布条件、乾燥ムラ等によって、一般にムラを有しながら粘度分布が高まっていく。
図7の(b)に示すように、塗膜24において粘度の低い部分の粘度50と粘度の高い部分の粘度51が生じた場合、それぞれの部分で時間とともに粘度が変化していく。
【0056】
粘度分布測定装置102は、
図7の(c)に示すように、塗膜24を形成した基板21の電極パターン22にパルス波形の電圧52を印加する。このときエリアカメラ5により動画形式等で、
図7の(a)に示すように、塗膜24からの反射光を時間的に連続して検出した複数の画像から構成される連続画像54を測定する。これにより、画像処理装置6は、連続画像54を構成する画像の各画素の輝度値を取得し、取得した輝度の時間的変化に基づいて、各画素の輝度変化の時定数である時定数分布を求めることができる。
【0057】
連続画像54において粘度の高い部分を測定した画素55の輝度58と、粘度の低い部分を測定した画素57の輝度56とを例に、画像処理装置6が時定数分布を得る処理の一例について説明する。
【0058】
図7の(d)に示すように、画像処理装置6は、電圧52における各パルス電圧の印加時間に基づいて、輝度56、輝度58の波形、すなわち時間的な変化からそれぞれ時定数59、時定数60を求めることができる。
図7の(d)において輝度56及び時定数59と、輝度58及び時定数60とで模式的に示されるように、粘度が高い部分の輝度58のほうが時定数60が大きくなる傾向がある。このようにして、画像処理装置6は、塗膜24の各部分を測定した各画素から輝度変化の時定数分布を得ることができる。
【0059】
このようにして得られた時定数分布を、グラフ49を用いて粘度に換算することで、測定対象とする塗膜24の粘度分布が定量的に得られる。この方法によれば、電圧52の各パルス電圧の印加タイミングごとに、粘度分布が乾燥過程で連続的に測定できる。電圧52の各パルス電圧のパルス幅61と、周期62は、粘度の上昇とともに時定数が大きくなることから、順次長くしていくことも可能である。
【0060】
電圧52は、塗膜24に帯電する誘電体粒子等が存在する場合等は、望ましくは1kHz以上の周波数の交流電圧のバースト波とすることで帯電を防止して測定できる。また、電圧52をインパルス波形として印可してもパルス波形同様に測定を実施できる。
【0061】
以上説明したように、本発明にかかる塗膜の粘度分布測定装置及び塗膜の粘度分布測定方法によれば、塗膜を形成した基板に電圧を印加することで電極パターンに沿って塗膜を変形させて、塗膜の乾燥状態や濃度の指標となる粘度分布を反射光の輝度変化に基づいて測定できる。