(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記実行手段は、前記第2の処理として、前記生産指標に関する許容値に基づき、前記部材によって生産可能な残りの生産数を予測する予測手段を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
前記生産装置は、前記複数の装置要素として、複数の第1の装置要素と、前記第1の装置要素の個数とは異なり、かつ前記第1の装置要素とは種類が異なる複数の第2の装置要素とを有し、
前記推定手段は、前記製品の累積生産数に関する、前記第1の区間に属する生産指標の悪化の周期性に基づき、前記第1の装置要素および前記第2の装置要素のうち前記生産指標を悪化させる装置要素を推定する、請求項3に記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについては詳細な説明は繰返さない。
【0036】
§1 適用例
まず、
図1から
図3に基づいて、本発明が適用される場面の一例について説明する。
【0037】
図1は、本例に係るシステム構成図である。
図1を参照して、システム1は、生産装置(生産設備、製造装置)2と、情報処理装置3とを備える。情報処理装置3は、生産装置2と通信可能に接続されている。
【0038】
生産装置2では、材料および部品の少なくとも一方の部材を用いて所定の製品を繰り返し生産する。当該部材の一例として、消耗品が挙げられる。ここで、「消耗品」には、たとえば、製品を製造するに従って減少する材料と、相対的に摩耗が速いため、高頻度で交換する部品とが含まれる。生産装置2がたとえば半導体製造装置の場合、消耗品の一例としてスパッタリングターゲットが挙げられる。また、上記の部材には、消耗品以外に、相対的に汚れやすいため、高頻度で清掃する必要のある部品も含まれる。
【0039】
情報処理装置3は、生産装置で生産される製品の品質に基づく生産指標を算出するために、生産装置において計測された各種のデータを取得する。
【0040】
図2は、製造条件の変化要因を説明するための図である。
図2を参照して、生産回数(処理回数)と生産指標とは、測定(観測)可能である。しかしながら、製造条件は、観測できない。
【0041】
製造条件の変化の態様は、周期性がある。この変化の態様は、短期変化と、長期変化とに区分できる。短期変化が起こる要因(相対的に短周期で生産指標を低下させる要因)としては、材料の減少が挙げられる。また、これ以外にも、短期変化が起こる要因として、高頻度で交換する部品の劣化、高頻度で清掃する必要のある部品の汚れ等が挙げられる。
【0042】
その一方、長期変化が起こる要因(相対的に長周期で生産指標を低下させる要因)としては、生産装置内の生産場所、各部品の劣化または汚れ、各治具の劣化または汚れ、生産装置が備える各ステージ等の変化が挙げられる。このように、長期変化が起こる要因には、生産装置2を構成する要素(以下、「装置構成」と称する)の劣化等が関連している。また、この装置要素のメンテナンスサイクルは、上記部材のメンテナンスサイクルよりも長い。
【0043】
また、上述した生産指標は、製造条件に応じて変動する。それゆえ、生産指標の変動は、短期変化と長期変化とが組み合わさったものとなる。
【0044】
なお、以下では、説明の便宜上、上記部材の一例として、消耗品を挙げて説明する。また、部材の「メンテナンスサイクル」の一例として、消耗品の「交換サイクル」を挙げて説明する。
【0045】
図3は、製品の累積生産数と、生産指標との関係を表した図である。
図3を参照して、消耗品の各交換サイクルP1,P2,P3,P4,Pi(iは5以上の自然数)は、生産指標の変動が緩やかな緩慢区間Paと、生産指標の変動が急峻な急峻区間Pbとを含んでいる。急峻区間Pbに示すような生産指標が得られるのは、消耗品の劣化等によって急激に製造条件が悪化するからである。システム1のユーザが消耗品を取り換えることにより、急峻区間Pbの次の緩慢期間Paに示すように、生産指標は改善する。
【0046】
緩慢区間Paと急峻区間Pbとは、予め設定された閾値Thと各生産指標との大小関係に基づいて区分される。閾値Thは、典型的には、情報処理装置3が、実運用前に、交換サイクルP1,P2,P3,P4における生産指標(時系列データ)を用いて予め決定する。なお、情報処理装置3が閾値Thを決定するのではなく、ユーザが適宜決定してもよい。
【0047】
情報処理装置3において閾値Thが設定されると、生産装置2の実運用が始まる。情報処理装置3は、生産装置2から取得した各計測データ(時系列データ)に基づき、生産指標を逐次算出する。同図においては、累積生産数がNmとなったときの生産指標まで算出した状態を表している。
【0048】
累積生産数がNmとなったときの生産指標は、閾値Thを超えている。このため、情報処理装置3では、当該生産指標が急峻区間Pbのデータであることを判定できる。また、累積生産数がN2(i−1)とNmとの間において、生産指標が閾値Th未満である場合には、情報処理装置3は、当該生産指標が緩慢区間Paに属するデータであることを判定できる。
【0049】
このように、情報処理装置3は、予め設定された閾値Thに基づき、算出された生産指標が、消耗品の一交換サイクルPiに含まれる、緩慢区間Paおよび生産指標の変動が緩慢区間Paよりも大きい急峻区間Pbのいずれの区間に属するかを判定する。これによれば、算出された各生産指標が緩慢区間Paのデータであるのか、あるいは急峻区間Pbのデータであるかを判断できる。
【0050】
さらに、情報処理装置3は、緩慢区間Paに属すると判定された生産指標を用いた処理(以下、「処理Qa」とも称する)と、急峻区間Pbに属すると判定された生産指標を用いた処理(以下、「処理Qb」とも称する)との少なくとも一方を実行する。
【0051】
また、上述したように、生産指数は、製品の製造条件の変化に応じて変化する。したがって、情報処理装置3によれば、生産指標を利用して製造条件の変化の態様に応じた処理を実行可能となる。
【0052】
情報処理装置3は、上記処理Qaの一例として、緩慢区間Paに属すると判定された生産指標に基づき、複数の装置要素(部品、治具、ステージ等)のうち、生産指標を悪化させる装置要素を推定する。
【0053】
情報処理装置3は、上記処理Qbの一例として、急峻区間Pbに属すると判定された生産指標と、生産指標に関する許容値とに基づき、現在の消耗品によって生産可能な残りの生産数を予測する。つまり、情報処理装置3は、得られた複数の生産指標のうち、消耗品の影響を大きく受けている急峻区間Pbの生産指標を除いた残りの生産指標を用いて、生産指標を悪化させる装置要素を推定する。
【0054】
§2 構成例
[A.処理の流れ]
(1)概要
図4は、実運用の前の情報処理装置3における処理の流れを表したフロー図である。
【0055】
図4を参照して、情報処理装置3は、ステップS1において、生産装置2に備えられたセンサ等による計測によって得られた各種の計測データに基づいて、生産指標を算出する。「生産指標」としては、たとえば、歩留まり、不良率、出来高、単位工程における処理成功製品率、単位工程における処理失敗製品率が挙げられる。このような生産指標のうち、何れの指標を用いるかは生産装置2が製造する製品に基づき、適宜、事前に生産装置2の製造メーカまたはユーザによって決定される。
【0056】
ステップS2において、情報処理装置3は、算出された生産指標に基づいて、モデルを生成する。モデルの具体例については、後述する(
図6)。ステップS3において、情報処理装置3は、緩慢区間Paと急峻区間Pbとを特定するための閾値Thを設定する。閾値Thの設定の詳細についても、後述する(
図7〜
図9等)。
【0057】
また、生産指標には、製品の生産に用いた装置要素の識別情報(以下、「ID」とも称する)が対応付けされている場合がある。情報処理装置は、計測データがどの装置要素、場所、装置等に関連したデータであるかによって、異なる識別情報を生産指標に対応付ける。各生産指標には、1つの製品を複数の装置要素を用いて生成するため、典型的には、複数の装置要素の識別情報が対応付けられる。たとえば、1つの生産指標には、場所に関するIDと、部品に関するIDと、治具に関するIDと、ステージに関するIDとが対応付けられる。
【0058】
図5は、実運用時の情報処理装置3における処理の流れを表したフロー図である。
図5を参照して、情報処理装置3は、ステップS11において、生産装置2から計測データを取得する。ステップS12において、情報処理装置3は、計測データに基づき、生産指標を算出する。
【0059】
ステップS13において、情報処理装置3は、算出された生産指標が、急峻区間Pbに属するデータであるか否かを閾値Thを用いて判断する。急峻区間Pbに属すると判断された場合(ステップS13においてYES)、ステップS14において、情報処理装置3は、今使用している消耗品(現在の消耗品)で、残りいくつの製品を生産可能であるかを予測する。以下では、当該生産可能な数を、「対応可能生産数」とも称する。
【0060】
急峻区間Pbに属さないと判断された場合(ステップS13においてNO)、情報処理装置3は、ステップS15において、生産指標に、製品の生産に用いた装置要素の識別情報(ID)が対応付けられているか否かを判断する。
【0061】
IDの対応付けがあると判断されると(ステップS15においてYES)、ステップS16において、情報処理装置3は、ID層別により要因推定を実行する。IDの対応付けがないと判断されると(ステップS15においてNO)、ステップS17において、情報処理装置3は、周期性等を考慮した要因推定を実行する。これらの要因推定の具体例については、後述する。
【0062】
(2)モデル作成
図6は、モデルの作成例を説明するための図である。モデルは、閾値Thを算出するために用いられる。
【0063】
図6を参照して、情報処理装置3は、グラフ(a)に示すように、一例として、累積生産数が0からN8までの4つの交換サイクルP1〜P4(
図3参照)に含まれる生産指標を用いてモデルを生成する。なお、交換サイクル(一周期)は、ユーザが、消耗品を前回交換してから今回交換するまでの累積生産数として表されている。
【0064】
情報処理装置3は、グラフ(b)に示すように、これら4つの交換サイクルP1〜P4に含まれる生産指標を重ね合わせる。情報処理装置3は、交換サイクルP1の生産指標の先頭のデータと、交換サイクルP2の生産指標の先頭のデータと、交換サイクルP3の生産指標の先頭のデータと、交換サイクルP4の生産指標の先頭のデータとが、横軸(生産数)の値が一致するようにして重ね合わせを行う。横軸の生産指標の間隔は、4つの交換サイクルP1〜P4において同じである。
【0065】
情報処理装置3は、重ね合わせた生産指標のデータに基づいて、生産数と生産指標との関係を表したモデルを生成する。グラフ(c)においては、モデルは、曲線61として表現されている。一例として、情報処理装置3は、横軸の値が同一の4つの生産指標の平均値を用いて、曲線61を作成する。曲線61は、たとえば、最小二乗法を用いて生成され得る。
【0066】
以上のように、情報処理装置3は、複数の交換サイクルにおける生産指標の平均的な変化を表したモデル(曲線61)を作成する。なお、これに限定されず、情報処理装置3は、複数の交換サイクルにおける生産指標の最大値の変化を表したモデルを生成してもよい。また、情報処理装置3は、一つの交換サイクルにおける生産指標に基づいて、モデルを生成してもよい。なお、以下では、曲線61を、「モデル曲線61」とも称する。
【0067】
(3)閾値設定
閾値Thの設定方法としては、大別して2つの方法がある。一つは、ユーザまたは製造メーカ等が、許容値に基づき決定する方法である。他方は、情報処理装置3がモデル曲線61を用いて、自動的に閾値Thの値を算出する方法である。以下では、これらの方法について、説明する。
【0068】
図7は、ユーザまたは製造メーカ(以下、「ユーザ等」とも称する)が許容値に基づき閾値Thを設定する場合を説明するための図である。「許容値」とは、製品として成立する生産指標の値である。
【0069】
図7を参照して、ユーザ等は、生産指標の許容値Uに対して所定の割合を乗じた値を閾値Thに設定する。
図7の例では、許容値Uに四分の一を乗じた値(U/4)が閾値Thに設定されている。ユーザ等は、所定の割合をいくらにするかを、たとえば、モデル曲線61を参照して決定してもよいし、あるいはモデル曲線61を参照せずに決定してもよい。
【0070】
図8は、情報処理装置3がモデル曲線61を用いて自動的に閾値Thの値を算出する場合を説明するための図である。
【0071】
図8を参照して、情報処理装置3は、モデル曲線61において曲率が最大となる点81を算出する。詳しくは、情報処理装置3は、モデル曲線61において曲率が最大となる生産数の値(横軸の値)を算出する。情報処理装置3は、モデル曲線61において、算出された値(横軸の値)のときの生産指標の値(縦軸の値)を、閾値Thに設定する。
【0072】
図9は、
図8と同様に、情報処理装置3がモデル曲線61を用いて自動的に閾値Thの値を算出する場合を説明するための図である。
【0073】
図9を参照して、生産数を増加させたときに、モデル曲線61において変化率(曲線61の接線の傾き)が初めて一定値を超える境界点91を算出する。詳しくは、情報処理装置3は、一例として変化率が0.2以上となる境界点91を算出する。なお、直線92は、傾き(変化率)が0.2の直線を表している。
【0074】
(4)急峻区間での処理
図10は、急峻区間Pbに属すると判定された生産指標を用いた処理を説明するための図である。詳しくは、同図は、
図5のステップS14の処理を説明するための図である。
【0075】
図10を参照して、情報処理装置3は、急峻区間Pbに属する生産指標と、許容値Uとに基づいて、対応可能生産数(Nb−Na)を算出する。
図10の例を用いて、算出方法を具体的に説明すると、以下のとおりであある。
【0076】
情報処理装置3は、まず、急峻区間Pbに属する3つの生産指標の値を表す点(プロットされたデータ)を直線近似する。情報処理装置3は、直線近似によって得られた直線101の縦軸の値が許容値Uとなる累積生産数の値(Nb)を算出する。つまり、情報処理装置3は、点102の横軸の座標値を算出する。情報処理装置3は、算出された値Nbから、急峻区間Pbに属する3つの生産指標を表す点のうち最も累積生産数の値が大きい点の累積生産数Naを差し引くことによって、対応可能生産数を算出する。
【0077】
以上のように、情報処理装置3によれば、急峻区間Pbに属すると判定された生産指標と、生産指標に関する許容値とに基づき、現在の消耗品によって生産可能な残りの生産数を予測することができる。
【0078】
(5)緩慢区間における処理
図11は、緩慢区間Paに属すると判定された生産指標を用いた処理を説明するための図である。詳しくは、同図は、
図5のステップS16,S17の処理を説明するための図である。
【0079】
図11を参照して、生産装置2の実運用時に、情報処理装置3は、消耗品の各交換サイクル(たとえば、交換サイクルPjまでの各交換サイクル)において、閾値Thに基づき、生産指標を緩慢区間Paと急峻区間Pbとに区分する。なお、jは、nより大きい任意の自然数である。
【0080】
情報処理装置3は、各交換サイクルにおける各緩慢区間Paの生産指標に基づき、製品の品質を低下させる要因を推定する。以下、IDの対応付けがある場合と対応付けがない場合とに分けて説明する。
【0081】
(5.1)IDの対応付けなし
図12は、
図11に示した各交換サイクルから緩慢区間Paのみを抽出し、並べ直した(結合した)ときに得られる図である。同図は、
図11の急峻区間Pbを削除し、かつ緩慢区間Paを横軸方向に移動させることにより得られる図でもある。
【0082】
図12を参照して、横軸によって、生産指標のピークが連続して現れている。説明の便宜上、各ピークを丸印で囲むことによって明示している。
【0083】
情報処理装置3は、場所の数と、生産に利用している部品の個数と、利用している治具の個数と、ステージの数(
図2の長期変化の要因参照)と、生産指標の低下の周期性とから、生産指標を悪化させている要因を推定する。
【0084】
以下では、一例として、場所の数を10箇所、部品の個数を3個、治具の個数を4個、ステージの個数を2個とする。
【0085】
図13は、周期分析の例を表した図である。
図13を参照して、図の矢印に示すように、4の倍数で自己相関が大きくなっている。これによれば、ユーザは、場所の数と、部品の個数と、治具の個数と、ステージの個数とを考慮すれば、個数が4個である治具のいずれか1つが生産指標を悪化させている要因であることを判断できる。
【0086】
したがって、ユーザは、4つの治具を調べ、かつ4つの治具のうち劣化または汚れている治具を交換または清掃することにより、生産指標を上げることが可能となる。
【0087】
(5.2)IDの対応付けあり
生産指標に複数のIDが対応付けられている場合、情報処理装置3は、こられのIDを利用して、生産指標を悪化させている要因を推定する。この場合にも、
図12に基づき説明したように、各交換サイクルから緩慢区間Paのみを抽出する。
【0088】
以下の説明では、一例として、IDが付されたステージの個数を2個とし、IDが付された部品の個数を3個とし、IDが付された治具の個数を4個とし、IDが付された場所の数を12とする。また、情報処理装置3は、生産指標の低下の要因の判断指標の一例として、中央値に中央絶対偏差(MAD)の三倍を足した値を用いる。
【0089】
図14は、生産指標をID別に表した図である。
図14を参照して、グラフ(A)は、ステージの生産指標であって、かつ識別情報毎の生産指標を表している。グラフ(B)は、部品の生産指標であって、かつ識別情報毎の生産指標を表している。グラフ(C)は、治具の生産指標であって、かつ識別情報毎の生産指標を表している。グラフ(D)は、場所の生産指標であって、かつ識別情報毎の生産指標を表している。
【0090】
グラフ(C)において、4個の治具のうちのNo.4の治具の生産指標が、判断指標(中央値+3×MAD)を超えていることが分かる。これよれば、ユーザまたは情報処理装置3は、No.4の治具が生産指標を悪化させている要因であると判断できる。
【0091】
また、グラフ(D)において、12箇所の場所のうちのNo.7の場所の生産指標が、判断指標を超えていることが分かる。これよれば、ユーザまたは情報処理装置3は、No.7の場所が生産指標を悪化させている要因であると判断できる。
【0092】
このように、生産指標を悪化させている要因が複数あった場合でも、IDを用いることにより、ユーザまたは情報処理装置3は、これらの要因を特定することができる。
【0093】
[B.ハードウェア構成]
図15は、情報処理装置3の典型的なハードウェア構成を説明するための図である。
【0094】
図15を参照して、情報処理装置3は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)351と、ROM(Read Only Memory)352と、RAM(Random Access Memory)353と、フラッシュメモリ354と、HDD(Hard Disk Drive)355と、通信IF(Interface)356と、ディスプレイ357と、操作キー358と、マウス359と、記憶媒体399に対するデータの読み書きを行うリーダライタ360とを備えている。これらの装置については、従来から知られているため、ここでは詳細については説明しない。
【0095】
[C.機能的構成]
図16は、情報処理装置3の機能的構成を説明するための図である。
【0096】
図16を参照して、情報処理装置3は、制御部310と、記憶部320と、表示部330と、操作部340とを備える。制御部310は、生産指標算出部311と、モデル作成部312と、閾値設定部313と、区間判定部314と、実行部315とを含む。実行部315は、予側部3151と、要因推定部3152とを有する。記憶部320は、データベース321を有する。
【0097】
制御部310は、情報処理装置3の全体的な動作を制御する。
生産指標算出部311は、生産装置2から取得した各種の計測データに基づいて、生産指標を算出する。生産指標算出部311は、算出された生産指標を、データベース321に記憶させる。データベース321では、生産指標と、生産指標に対応付けられたIDとが、累積生産数に関連付けられて格納される。
【0098】
制御部310は、生産装置2から累積生産数自体を取得してもよいし、あるいは、生産装置2から送られてくる所定の情報に基づき、累積生産数をカウントしてもよい。累積生産数の取得方法は、特に限定されるものではない。
【0099】
モデル作成部312は、消耗品の交換を表した対応記録データを生産装置2から取得する。なお、対応記録は、操作部340によって入力される構成であってもよい。モデル作成部312は、データベース321に記憶された生産指標等と、対応記録データとに基づき、モデルを生成する。モデル作成部312は、典型的には、モデル曲線(
図6参照)を生成する。モデル作成部312は、生成されたモデルを表したデータ(モデルデータ)を、閾値設定部313に送る。
【0100】
閾値設定部313は、モデルデータに基づいて、閾値Thを設定する。たとえば、
図8または
図9に基づき説明したように、閾値Thを算出する。なお、
図7に基づいて説明したように、閾値Thのユーザ入力を操作部340を介して受け付けるように、制御部310を構成してもよい。閾値設定部313は、設定された閾値Thを区間判定部314に送る。
【0101】
区間判定部314は、実運用時において逐次算出されかつデータベース321に逐次記憶される生産指標が、緩慢区間Paに属するデータであるのか、あるいは急峻区間Pbに属するデータであるのかを、設定された閾値Thを用いて判定する。
【0102】
区間判定部314は、急峻区間Pbに属する生産指標(データ列)を、予側部3151に送る。区間判定部314は、緩慢区間Paに属する生産指標(データ列)を、要因推定部3152に送る。
【0103】
実行部315は、緩慢区間Paに属すると判定された生産指標を用いた処理Qaと、急峻区間Pbに属すると判定された生産指標を用いた処理Qbとを実行する。
【0104】
具体的には、実行部315内の予側部3151が、処理Qbとして、生産指標に関する許容値に基づき、消耗品によって生産可能な残りの生産数(つまり、対応可能生産数)を予測する(
図10参照)。この場合、制御部310は、予測された対応可能生産数を表示部330に表示させる。
【0105】
実行部315内の要因推定部3152には、場所に関するデータ(領域数、IDとしての番号)と、部品に関するデータ(部品数、IDとしての番号)と、治具に関するデータ(治具数、IDとしての番号)と、ステージに関するデータ(ステージ数、IDとしての番号)とが入力される。これらのデータは、典型的には、生産装置2から送られてくる。
【0106】
要因推定部3152は、処理Qaとして、これら生産装置2から送られてきたデータと、緩慢区間Paに属するデータとを用いて、生産指標を悪化させる装置要素を推定する。この場合、制御部310は、推定された要因を表示部330に表示させる。
【0107】
詳しくは、要因推定部3152は、生産指標にIDが対応付けられていない場合、製品の累積生産数に関する、緩慢区間Paに属する生産指標の悪化の周期性に基づき、複数の装置要素等のうち生産指標を悪化させる装置要素を推定する(
図13参照)。
【0108】
また、要因推定部3152は、生産指標にIDが対応付けられている場合には、緩慢区間Paに属する生産指標と、生産指標に関連付けられた識別情報とに基づき、複数の装置要素等のうちから、生産指標が悪化したときに製品の生産に用いられた装置要素を推定する(
図14参照)。
【0109】
なお、推定された要因の表示の仕方は、要因そのものを明示するものであってもよいし、あるいは、グラフを用いて間接的に表示する(ユーザに要因を判断させる)ものであってもよい。表示の仕方は特に限定されるものではない。
【0110】
ところで、制御部310は、
図15に示したCPU31、ROM32、RAM33等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部320は、例えば、HDD35、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御部310で実行されるプログラム、データベースD321等を記憶する。
【0111】
記憶媒体399は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的または化学的作用によって蓄積する媒体である。情報処理装置3は、この記憶媒体399から、上述したプログラムまたは生産指標のデータを取得してもよい。
【0112】
なお、処理Qaと処理Qbとの少なくとも一方を実行部315が実行するように、制御部310を構成してもよい。
【0113】
[D.ユーザインターフェイス]
情報処理装置3のディスプレイ357(表示部330)で表示される各種のユーザインターフェイスについて説明する。
【0114】
(1)全体区間
図17は、情報処理装置3における表示画面例である。
【0115】
図17を参照して、情報処理装置3は、緩慢区間Paと急峻区間Pbとを交換サイクル毎に区別した画面を、ディスプレイ357(表示部330)に表示させる。なお、緩慢区間Paと急峻区間Pbとには、データがプロットされている。
【0116】
(2)急峻区間
図18は、急峻区間Pbに関する表示画面例である。詳しくは、同図は、予測結果を表した図である。
【0117】
図18を参照して、情報処理装置3は、対応可能生産数の予測値を表示する。典型的には、情報処理装置3は、予測値を、急峻区間Pbの生産指標のデータと、直線近似により得られた直線(
図10における直線101)とともに、ディスプレイ357に表示する。これによれば、ユーザは、現在の消耗品での対応可能生産数を知ることができる。
【0118】
(3)緩慢区間
図19は、各交換サイクルから緩慢区間Paのみを抽出し、並べ直した(結合した)ときに得られるデータ(
図12参照)を表した画面例である。
図19を参照して、ユーザは、当該画面を確認することにより、生産指標の値に何らからの周期性があるか否かを判断できる。
【0119】
図20は、IDの対応付けがない場合の周期分析(
図13参照)の結果に基づき表示される画面例である。
【0120】
図20を参照して、情報処理装置3は、ステージ、部品、治具、および場所の各々について、自己相関を算出する。情報処理装置3は、算出された各自己相関を、ステージ、部品、治具、および場所に対応付けて表示する。これによれば、ユーザは、部品、治具、および場所のうち、生産指標を悪化させている要因を判断することができる。同図の例の場合、ユーザは、4つの治具のうちのいずれかが生産指標を悪化させていると判断できる。
【0121】
図21は、IDの対応付けがある場合の長期変化の要因別の生産指標(
図14参照)を表した画面例である。
【0122】
図21を参照して、情報処理装置3は、ステージ、治具、部品、および場所の各々に関し、生産指標と目標値とをディスプレイ357に表示させる。特に、情報処理装置3は、判断指標を超えた生産指標に関しては、他の生産指標と区別可能な表示態様で表示する。
【0123】
同図の例では、情報処理装置3は、4個の治具のうちのNo.4の治具の生産指標の棒グラフと、12の場所のうちのNo.7の場所の生産指標の棒グラフとの表示態様を、他の棒グラフの表示態様とは異ならせる。
【0124】
これによれば、ユーザは、生産指標を悪化させている要因を速やかに把握することが可能となる。
【0125】
[E.変形例]
(1)閾値設定
上記においては、一つの閾値Thを用いて、一交換サイクルにおいて緩慢区間Paと急峻区間Pbとを重複なく連続して区分した態様を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。以下では、他の態様について説明する。
【0126】
(1.1)第1の変形例
図22は、一交換サイクルにおいて緩慢区間Paと急峻区間Pbとを離して設定した場合を説明するための図である。
【0127】
図22を参照して、緩慢区間Paと急峻区間Pbとの間に緩衝区間Pcが設定される。このような緩衝区間Pcを設けることにより、緩慢区間Paにおける生産指標の変動と急峻区間Pbにおける生産指標の変動との差異が、緩衝区間Pcを設けない場合に比べて、より明確となる。
【0128】
図23は、緩衝区間Pcを設けるための閾値設定方法を説明するための図である。同図は、
図7に基づき説明したのと同様に、ユーザまたは製造メーカ等が許容値に基づき閾値Thを設定する場合を説明するための図でもある。
【0129】
図23を参照して、ユーザ等は、生産指標の許容値Uに対して所定の割合を乗じた値を2つの閾値Th1,Th2に設定する。
図23の例では、許容値Uに五分の一を乗じた値(U/5)が閾値Th1に設定され、許容値Uに二の一を乗じた値(U/2)が閾値Th2に設定されている。
【0130】
このような閾値Th1,Th2の設定により、閾値Th1以上Th2未満の区間に対応する生産数の区間が緩衝区間Pcとなる。また、閾値Th1未満の区間に対応する生産数の区間が緩慢区間Paとなる。さらに、閾値Th2以上の区間に対応する生産数の区間が急峻区間Pbとなる。
【0131】
実行部315(
図16)は、対応可能生産数の予測および要因の推定に、緩衝区間Pcのデータを使用しない。このため、緩衝区間Pcを設定しない場合に比べて、対応生産数の予測値の精度を上げることが可能となるとともに、要因の推定を精度高く行うことが可能となる。
【0132】
図24は、緩衝区間Pcを設けるための他の閾値設定方法を説明するための図である。同図は、
図9に基づき説明したのと同様に、情報処理装置3がモデル曲線を用いて自動的に閾値を算出する場合を説明するための図でもある。
【0133】
図24を参照して、情報処理装置3は、モデル曲線61を用いて閾値Th1,Th2を算出する。詳しくは、生産数を増加させたときに、モデル曲線61において変化率が互いに異なる2つの一定値を初めて超える境界点251,252を算出する。同図の場合、情報処理装置3は、一例として変化率が0.2以上となる境界点251と、変化率が0.4以上となる境界点252とを算出する。なお、直線253は、傾き(変化率)が0.2の直線を表しており、直線254は、傾き(変化率)が0.4の直線を表している。
【0134】
このように、変化率を用いる場合も、上記と同様に、対応生産数の予測値の精度を上げることが可能となるとともに、要因の推定を精度高く行うことが可能となる。
【0135】
(1.2)第2の変形例
図25は、一交換サイクルにおいて緩慢区間Paと急峻区間Pbとを一部重複させて設定した場合を説明するための図である。
【0136】
図25を参照して、緩慢区間Paの一部と急峻区間Pbの一部とが重なった重複区間Pdが設定される。このような重複区間Pdを設けることにより、緩慢区間Paおよび急峻区間Pbにおける生産指標のデータ数を多くすることができる。
【0137】
図26は、重複区間Pdを設けるための閾値設定方法を説明するための図である。同図は、
図7に基づき説明したのと同様に、ユーザまたは製造メーカ等が許容値に基づき閾値Thを設定する場合を説明するための図でもある。
【0138】
図26を参照して、ユーザ等は、生産指標の許容値Uに対して所定の割合を乗じた値を2つの閾値Th1,Th2に設定する。
図26の例では、
図23の例と同様に、許容値Uに五分の一を乗じた値(U/5)が閾値Th1に設定され、許容値Uに二分の一を乗じた値(U/2)が閾値Th2に設定されている。
【0139】
このような閾値Th1,Th2の設定により、閾値Th1以上Th2未満の区間に対応する生産数の区間が重複区間Pdとなる。また、閾値Th2未満の区間に対応する生産数の区間が緩慢区間Paとなる。さらに、閾値Th1以上の区間に対応する生産数の区間が急峻区間Pbとなる。
【0140】
図27は、重複区間Pdを設けるための他の閾値設定方法を説明するための図である。同図は、
図9に基づき説明したのと同様に、情報処理装置3がモデル曲線を用いて自動的に閾値を算出する場合を説明するための図でもある。
【0141】
図27を参照して、情報処理装置3は、モデル曲線61を用いて閾値Th1,Th2を算出する。詳しくは、横軸の値(生産数)を増加させて、モデル曲線61における変化率が互いに異なる2つの一定値を初めて超える境界点281,282を算出する。同図の場合、情報処理装置3は、一例として変化率が0.2以上となる境界点251と、変化率が0.3以上となる境界点252とを算出する。なお、直線283は、傾き(変化率)が0.2の直線を表しており、直線284は、傾き(変化率)が0.3の直線を表している。
【0142】
(2)対応可能生産数の予測
複数の工程を経て製品が生産される場合等においては、各工程における品質の評価は、最終工程が終了してから行われることが多い。また、このような場合において、各工程での対応可能生産数を予測するためには、工程終了から検査までの遅れについても推定する必要がある。以下では、このような計測遅れが生じる場合において、対応可能生産数を精度よく予測可能とする構成について説明する。
【0143】
図28は、計測遅れが生じるときの対応可能生産数を説明するための図である。
図28を参照して、計測遅れは、対象となる工程から検査工程までの仕掛数を表している。
【0144】
黒で塗り潰した丸の点は、生産指標の実測値を表している。点291,292は、予測値を表している。菱形の点293は、現状値(推定値)を示している。なお、同図の場合には、計測遅れが3個分の場合の例を表している。
【0145】
情報処理装置3は、生産指標の実測値と、過去のデータとに基づき、予測値と現状値とを推定する。さらに、情報処理装置3は、生産指標の実測値と、予測値と、現状値とに基づき、モデルとなる直線295を作成する。情報処理装置3は、モデルの作成の際には、たとえば直近の3つの実測値を用いる。
【0146】
情報処理装置3は、直線295の縦軸の値が許容値Uとなったときの累積生産数を特定し、特定された累積生産数から対応可能生産数(たとえば、3個)を算出する。
【0147】
図29は、計測遅れがある場合の画面例を表した図である。
図29を参照して、情報処理装置3は、
図28に示したグラフをディスプレイ357に表示する。さらに、情報処理装置3は、各点の内容(データ種別)と、計測遅れの数と、予測値である対応可能生産数との情報を表示する。
【0148】
このような構成によれば、ユーザは、計測遅れが生じる場合であっても、各工程における対応可能生産数を精度よく予測することが可能となる。
【0149】
§3 具体例
以下では、生産装置2として、半導体製造装置を例に挙げて説明する。また、以下では、上述した対応可能生産数の予測および生産指標を悪化させる要因の推定等の各種の処理を、半導体製造の前工程に適用した場合を説明する。
【0150】
(1)第1の具体例
図30は、半導体製造における前処理工程の流れの一例を表したフロー図である。
【0151】
図30を参照して、ステップS101において、基板の洗浄が行われる。ステップS102において、基板上に成膜が行われる。ステップS103において、成膜処理がなされた基板の洗浄が行われる。
【0152】
ステップS104において、基板に対して、レジストコーティングがなされる。ステップS105において、基板に対して露光がなされ、ステップS106において現像がなされる。ステップS107において、基板に対してエッチングがなされ、ステップS108において、不純物の注入がなされる。
【0153】
その後、ステップS109において、アニール炉内で、エッチング後の基板に対してアニール(焼鈍)が行われる。ステップS110において、レジストの剥離が行われ、ステップS111において電気特性の検査が行われる。
【0154】
なお、ステップS101〜S111の処理は、従来行われている処理である。
ステップS101の洗浄処理は、たとえばバッチ式ウェット洗浄であって、複数のスロットの内の指定されたスロットを用いて行われる。スロット内には、薬液が入っている。この洗浄処理は、長期変化の要因のうちの「場所」に相当する(
図2参照)。
【0155】
ステップS102の成膜処理は、スパッタリングターゲットを用いた、スパッタリング成膜である。スパッタリングターゲットは、消耗品であって、短期変化の要因となる。
【0156】
ステップS108のエッチングは、たとえばドライエッチングであって、複数のステージのうちの指定されたステージ上で行われる。このエッチング処理は、長期変化の要因のうちの「ステージ変化」に相当する。
【0157】
ステップS109のアニールは、複数のアニール炉のうちの指定された炉を用いて行われる。アニールは、長期変化の要因のうちの「部品劣化または汚れ」に関連する(
図2参照)。
【0158】
また、前工程では複数のウエハカセットが用いられる。ウエハカセットは治具である。ウエハカセットの劣化または汚れも、長期変化の要因となる。
【0159】
図31は、生産指標の具体例としてのLSI不良率の時系列変化を表した図である。
図31を参照して、急峻区間Pbでは、処理枚数が増えにつれて、LSI不良率が大きく上昇する。また、スパッタリングターゲットが交換される度に、LSI不良率が下がる。
【0160】
図32は、急峻区間Pbに関する表示画面例である。詳しくは、同図は、
図18の画面例に対応する図(予測結果を表した図)である。
【0161】
図32を参照して、情報処理装置3は、モデルの直線および点とともに、対応可能生産数の予測値を表示する。
【0162】
図33は、IDの対応付けがない場合の周期分析(
図13参照)の結果に基づき表示される画面例である。詳しくは、同図は、
図20の画面例に対応する図である。
【0163】
図33を参照して、情報処理装置3は、スロット、ステージ、カセット、およびアニール炉の各々について、自己相関を算出する。情報処理装置3は、算出された各自己相関を、スロット、ステージ、カセット、およびアニール炉に対応付けて表示する。
【0164】
図34は、IDの対応付けがある場合の長期変化の要因別の生産指標(
図14参照)を表した画面例である。詳しくは、同図は、
図21の画面例に対応する図である。
【0165】
図34を参照して、情報処理装置3は、スロット、ステージ、ウエハカセット、およびアニール炉の各々に関し、生産指標と目標値とをディスプレイ357に表示させる。特に、情報処理装置3は、判断指標を超えた生産指標に関しては、他の生産指標と区別可能な表示態様で表示する。
【0166】
同図の例では、情報処理装置3は、4個のウエハカセットのうちのNo.4のウエハカセットの生産指標の棒グラフと、25個のスロットのうちのNo.6およびNo.18のスロットの生産指標の棒グラフとの表示態様を、他の棒グラフの表示態様とは異ならせる。
【0167】
図35は、情報処理装置3の機能的構成を表した図である。
図35を参照して、
図16に示した機能的構成と異なる点は、生産装置2が具体例としての半導体製造装置2Aとなっている点と、生産指標算出部311に入力される計測データが具体例としての抵抗値となっている点と、生産指標算出部311から出力される生産指標が具体例としてのLSI不良率になっている点である。
【0168】
また、半導体製造装置2Aから要因推定部3152には、ウエハカセットに関するデータ(カセット数、IDとしての番号)と、ステージに関するデータ(ステージ数、IDとしての番号)と、スロットに関するデータ(スロット数、IDとしての番号)と、アニール炉に関するデータ(炉数、IDとしての番号)とが入力される。この点も、
図16とは異なっている。
【0169】
上記の点が異なる以外は、
図16に基づいて説明した処理と同様な処理が実行される。
(2)第2の具体例
図36は、半導体製造における前処理工程の他の流れの一例を表したフロー図である。
【0170】
図36を参照して、ステップS201において、基板の洗浄が行われる。ステップS202において、基板の乾燥が行われる。ステップS203において、基板に対する酸化処理がなされる。ステップS204において、酸化処理がなされた基板に対して成膜が行われる。ステップS205において、膜厚検査が行われる。なお、ステップS201〜S205の処理は、従来行われている処理である。
【0171】
図37は、生産指標の具体例としての成膜合格率の時系列変化を表した図である。
図37を参照して、急峻区間Pbでは、処理枚数が増えにつれて、成膜合格率が大きく減少する。また、スパッタリングターゲットが交換される度に、成膜合格率が上昇する。
【0172】
図38は、急峻区間Pbに関する表示画面例である。詳しくは、同図は、
図18の画面例に対応する図(予測結果を表した図)である。
【0173】
図38を参照して、情報処理装置3は、モデルの直線および点とともに、対応可能生産数の予測値を表示する。
【0174】
図39は、IDの対応付けがない場合の周期分析(
図13参照)の結果に基づき表示される画面例である。詳しくは、同図は、
図20の画面例に対応する図である。
【0175】
図39を参照して、情報処理装置3は、スロット、ステージ、カセット、および酸化炉の各々について、自己相関を算出する。情報処理装置3は、算出された各自己相関を、スロット、ステージ、カセット、および酸化炉に対応付けて表示する。
【0176】
図40は、IDの対応付けがある場合の長期変化の要因別の生産指標(
図14参照)を表した画面例である。詳しくは、同図は、
図21の画面例に対応する図である。
【0177】
図40を参照して、情報処理装置3は、スロット、ステージ、ウエハカセット、および酸化炉の各々に関し、生産指標と目標値とをディスプレイ357に表示させる。特に、情報処理装置3は、判断指標を超えた生産指標に関しては、他の生産指標と区別可能な表示態様で表示する。
【0178】
同図の例では、情報処理装置3は、50個の酸化炉のうちのNo.6およびNo.18の酸化炉の生産指標の棒グラフと、13個のスロットのうちのNo.6の生産指標の棒グラフとの表示態様を、他の棒グラフの表示態様とは異ならせる。
【0179】
図41は、情報処理装置3の機能的構成を表した図である。
図41を参照して、
図16に示した機能的構成と異なる点は、生産装置2が具体例としての半導体製造装置2Bとなっている点と、生産指標算出部311に入力される計測データが具体例としての膜厚となっている点と、生産指標算出部311から出力される生産指標が具体例としての膜厚合格率になっている点である。
【0180】
また、半導体製造装置2Aから要因推定部3152には、ウエハカセットに関するデータ(カセット数、IDとしての番号)と、ステージに関するデータ(ステージ数、IDとしての番号)と、スロットに関するデータ(スロット数、IDとしての番号)と、酸化炉に関するデータ(炉数、IDとしての番号)とが入力される。この点も、
図16とは異なっている。
【0181】
上記の点が異なる以外は、
図16に基づいて説明した処理と同様な処理が実行される。
§4 作用・効果
以上のように、本実施形態では、予め設定された閾値に基づき、算出された生産指標が、消耗品の一交換サイクルに含まれる緩慢区間Paおよび生産指標の変動が緩慢区間Paよりも大きい急峻区間Pbのいずれの区間に属するかを判定する。これによれば、算出された各生産指標が緩慢区間Paのデータであるのか、あるいは急峻区間Pbのデータであるかを判断できる。
【0182】
さらに、情報処理装置3は、緩慢区間Paに属すると判定された生産指標を用いた処理(対応可能生産数の予測処理)と、急峻区間Pbに属すると判定された生産指標を用いた処理(生産指標を悪化させる要因の推定)との少なくとも一方を実行する。
【0183】
生産指数は、製品の製造条件の変化に応じて変化するため、情報処理装置3によれば、生産指標を利用して製造条件の変化の態様に応じた処理を実行可能となる。
【0184】
[付記]
以上のように、本実施形態は以下のような開示を含む。
【0185】
〔1〕情報処理装置(3)は、材料および部品の少なくとも一方の部材を用いて製品を生産する生産装置から取得したデータに基づき、製品の品質に基づく生産指標を算出する算出手段(311)と、予め設定された閾値に基づき、生産指標が、部材の一メンテナンスサイクルに含まれる第1の区間(Pa)および生産指標の変動が第1の区間(Pa)よりも大きい第2の区間(Pb)のいずれの区間に属するかを判定する判定手段(314)と、第1の区間(Pa)に属すると判定された生産指標を用いた第1の処理と、第2の区間(Pb)に属すると判定された生産指標を用いた第2の処理との少なくとも一方を実行する実行手段(315)とを備える。
【0186】
〔2〕実行手段(315)は、第2の処理として、生産指標に関する許容値に基づき、部材によって生産可能な残りの生産数を予測する予測手段(3151)を含む。
【0187】
〔3〕生産装置(2,2A,2B)は、部材と、各々が生産装置(2,2A,2B)を構成し、かつ種類が異なる複数の装置要素とを用いて製品を生産している。複数の装置要素の各々のメンテナンスサイクルは、部材のメンテナンスサイクルよりも長い。実行手段(315)は、第1の処理として、複数の装置要素のうち、生産指標を悪化させる装置要素を推定する推定手段(3152)を含む。
【0188】
〔4〕生産装置(2,2A,2B)は、複数の装置要素として、複数の第1の装置要素と、第1の装置要素の個数とは異なり、かつ第1の装置要素とは種類が異なる複数の第2の装置要素とを有する。推定手段(3152)は、製品の累積生産数に関する、第1の区間(Pa)に属する生産指標の悪化の周期性に基づき、第1の装置要素および第2の装置要素のうち生産指標を悪化させる装置要素を推定する。
【0189】
〔5〕生産装置(2,2A,2B)は、複数の装置要素のうちの第1の種類の装置要素として、複数の第1の装置要素を有する。製品は、複数の第1の装置要素のうち製品毎に指定される1つの第1の装置要素を用いて生産される。生産指標は、複数の第1の装置要素のうち製品の生産に用いた第1の装置要素を識別するための第1の識別情報が関連付けられている。推定手段(3152)は、第1の区間(Pa)に属する生産指標と、生産指標に関連付けられた第1の識別情報とに基づき、複数の第1の装置要素のうちから、生産指標が悪化したときに製品の生産に用いられた第1の装置要素を推定する。
【0190】
〔6〕生産装置(2,2A,2B)は、複数の装置要素のうちの第2の種類の装置要素として、複数の第2の装置要素をさらに有する。製品は、複数の第2の装置要素のうち製品毎に指定される1つの第2の装置要素を用いて生産される。生産指標は、複数の第2の装置要素のうち製品の生産に用いた第2の装置要素を識別するための第2の識別情報が関連付けられている。推定手段(3152)は、第1の区間(Pa)に属する生産指標と、生産指標に関連付けられた第1の識別情報および第2の識別情報とに基づき、複数の第1の装置要素および複数の第2の装置要素のうちから、生産指標を悪化させた装置要素を推定する。
【0191】
〔7〕情報処理装置(3)は、製品の累積生産数と生産指標との関係を表したモデルデータを生成する生成手段(312)と、モデルデータに基づき閾値を設定する設定手段(313)とをさらに備える。
【0192】
〔8〕生成手段(312)は、部材の複数のメンテナンスサイクルにおいて得られた生産指標に基づき、モデルデータを生成する。
【0193】
〔9〕第1の区間(Pa)と第2の区間(Pb)とは連続している。
〔10〕第1の区間(Pa)と第2の区間(Pb)とは離れている。
【0194】
〔11〕第1の区間(Pa)と第2の区間(Pb)とは一部が重複している。
〔12〕設定手段(313)は、生産指標に関する許容値に基づいて、閾値を設定する。
【0195】
〔13〕設定手段(313)は、累積生産数および生産指標の各々を座標軸とする2次元座標系において、モデルデータに基づいた曲線を表す数式を算出し、曲線の曲率が最大となったときの生産指標の座標軸の座標値を算出し、算出された座標値を閾値に設定する。
【0196】
〔14〕設定手段(313)は、累積生産数および生産指標の各々を座標軸とする2次元座標系において、モデルデータに基づいた曲線を表す数式を算出し、曲線の接線の傾きに基づき閾値を設定する。
【0197】
〔15〕情報処理方法は、材料および部品の少なくとも一方の部材を用いて製品を生産する生産装置から取得したデータに基づき、製品の品質に基づく生産指標を算出するステップ(S1)と、予め設定された閾値に基づき、生産指標が、部材の一メンテナンスサイクルに含まれる第1の区間(Pa)および生産指標の変動が第1の区間(Pa)よりも大きい第2の区間(Pb)のいずれの区間に属するかを判定するステップ(S13)と、第1の区間(Pa)に属すると判定された生産指標を用いた第1の処理と、第2の区間(Pb)に属すると判定された生産指標を用いた第2の処理との少なくとも一方を実行するステップ(S14、S16,S17)とを備える。
【0198】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。