特許第6981141号(P6981141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981141導電性支持体、電子写真感光体、電子写真感光体ユニット、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981141
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】導電性支持体、電子写真感光体、電子写真感光体ユニット、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/10 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   G03G5/10 Z
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-185232(P2017-185232)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-61039(P2019-61039A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 景子
(72)【発明者】
【氏名】春山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】為政 博史
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−258604(JP,A)
【文献】 特開2000−089612(JP,A)
【文献】 特開平07−152194(JP,A)
【文献】 特開2003−307864(JP,A)
【文献】 特開2000−066549(JP,A)
【文献】 特開昭60−209777(JP,A)
【文献】 特開平09−258605(JP,A)
【文献】 特開2014−038138(JP,A)
【文献】 特開2014−038136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00−5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向における一端部の端面の厚さよりも、他端部の端面の厚さが大き
前記他端部の端面の厚みが、前記一端部の端面の厚みの1.04倍以上1.1倍以下である、
電子写真感光体用の導電性支持体。
【請求項2】
前記導電性支持体の厚みが、前記他端部に向かって次第に増加する、請求項1に記載の導電性支持体。
【請求項3】
前記導電性支持体の厚みが、前記導電性支持体の軸方向の中央よりも前記一端部側から、前記他端部に向かって次第に増加する、請求項2に記載の導電性支持体。
【請求項4】
前記導電性支持体の厚みは、前記導電性支持体の半径方向の内側に向かって厚みが増加する、請求項2又は3に記載の導電性支持体。
【請求項5】
前記導電性支持体の前記他端部の中空部は錐状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性支持体。
【請求項6】
前記他端部の端面の厚みが最大厚みである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性支持体。
【請求項7】
前記他端部の端面の厚みが、前記一端部の端面の厚みの1.05倍以上1.08倍以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性支持体。
【請求項8】
前記一端部の端面の厚みが、0.4mm以上0.7mm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の導電性支持体。
【請求項9】
前記一端部の端面の厚みが、0.4mm以上0.5mm以下である、請求項に記載の導電性支持体。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の導電性支持体と、
前記導電性支持体上に配置された感光層と、
を備える電子写真感光体。
【請求項11】
請求項10に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体における前記導電性支持体の前記一端部を支持する第一の支持部と、
前記電子写真感光体における前記導電性支持体の前記他端部を支持し、かつ、前記電子写真感光体を回転駆動させるための駆動力を伝える伝達部を有する第二の支持部と、
を備える電子写真感光体ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載の電子写真感光体ユニットを備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項11に記載の電子写真感光体ユニットと、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性支持体、電子写真感光体、電子写真感光体ユニット、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーや白黒の画像を形成する複写機やプリンタなどの画像形成装置として、電子写真方式を用いた画像形成装置が知られている。
電子写真方式の画像形成装置は、一般的には以下のプロセスを有する。電子写真感光体表面を帯電手段で定められた極性および電位に帯電させ、帯電後の電子写真感光体表面を、像露光により選択的に除電することで静電潜像を形成させた後、現像手段で該静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像し、該トナー像を転写手段によって記録媒体に転写させて画像形成物として排出させる。
【0003】
例えば、特許文献1には、「表面粗さRmaxが0.5μm以上5μm以下である導電性基材と、前記導電性基材上に配置され、結着樹脂、金属酸化物粒子、電子受容性化合物及び光散乱粒子を含み、表面粗さRmaxが0.1μm以上3μm以下である下引層と、前記下引層上に配置された感光層として、電荷発生層及び入射光に対する正反射成分が30%以下である電荷輸送層を有する積層型の感光層、又は、入射光に対する正反射成分が30%以下である単層型の感光層と、を備えた電子写真感光体。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−184493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、感光層のめくれが抑制される電子写真感光体用の導電性支持体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
請求項1に係る発明は、
軸方向における一端部の端面の厚さよりも、他端部の端面の厚さが大きい、電子写真感光体用の導電性支持体である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記導電性支持体の厚みが、前記他端部に向かって次第に増加する、請求項1に記載の導電性支持体である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記導電性支持体の厚みが、前記導電性支持体の軸方向の中央よりも前記一端部側から、前記他端部に向かって次第に増加する、請求項2に記載の導電性支持体である。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記導電性支持体の厚みは、前記導電性支持体の半径方向の内側に向かって肉厚が増加する、請求項2又は3に記載の導電性支持体である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記導電性支持体の前記他端部の中空部は錐状である、請求項1〜4のいずれかの一項に記載の導電性支持体である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記他端部の端面の厚みが最大厚みである、請求項1〜5のいずれかの一項に記載の導電性支持体である。
【0013】
請求項7に係る発明は、
前記他端部の端面の厚みが、前記一端部の端面の厚みの1.04倍以上1.1倍以下である請求項1〜6のいずれかの一項に記載の導電性支持体である。
【0014】
請求項8に係る発明は、
前記他端部の端面の厚みが、前記一端部の端面の厚みの1.05倍以上1.08倍以下である請求項7に記載の導電性支持体である。
【0015】
請求項9に係る発明は、
前記一端部の端面の厚みが、0.4mm以上0.7mm以下である、請求項1〜8のいずれかの一項に記載の導電性支持体である。
【0016】
請求項10に係る発明は、
前記一端部の端面の厚みが、0.4mm以上0.5mm以下である、請求項9に記載の導電性支持体である。
【0017】
請求項11に係る発明は、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置された感光層と、を備える電子写真感光体である。
【0018】
請求項12に係る発明は、
請求項11に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体における前記導電性支持体の前記一端部を支持する第一の支持部と、前記電子写真感光体における前記導電性支持体の前記他端部を支持し、かつ、前記電子写真感光体を回転駆動させるための駆動力を伝える伝達部を有する第二の支持部と、を備える電子写真感光体ユニットである。
【0019】
請求項13に係る発明は、
請求項12に記載の電子写真感光体ユニットを備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0020】
請求項14に係る発明は、
請求項12に記載の電子写真感光体ユニットと、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜6に係る発明によれば、
電子写真感光体用の導電性支持体において、
軸方向における一端部の端面の厚さと他端部の端面の厚さが同一である場合に比べ、感光層のめくれが抑制される電子写真感光体用の導電性支持体が提供される。
【0022】
請求項7、8に係る発明によれば、
電子写真感光体用の導電性支持体において、
他端部の端面の厚みが、一方の端面の厚みの1.04倍未満1.1倍以上であるに比べ、感光層のめくれが抑制される電子写真感光体用の導電性支持体が提供される。
【0023】
請求項9、10に係る発明によれば、
電子写真感光体用の導電性支持体において、
端面の厚みが0.4mm未満0.7mm超えである場合に比べ、感光層のめくれが抑制される電子写真感光体用の導電性支持体が提供される。
【0024】
請求項11、12に係る発明によれば、
電子写真感光体用の導電性支持体を有する電子写真感光体、又は電子写真感光体ユニットにおいて、
導電性支持体の軸方向における一端部の端面の厚さと他端部の端面の厚さが同一である場合に比べ、感光層のめくれが抑制される電子写真感光体、又は電子写真感光体ユニットが提供される。
【0025】
請求項13、14に係る発明によれば、
電子写真感光体用の導電性支持体を有する電子写真感光体ユニットを備えるプロセスカートリッジ、又は画像形成装置において、
導電性支持体の軸方向における一端部の端面の厚さと他端部の端面の厚さが同一である場合に比べ、電子写真感光体の感光層のめくれが抑制されるプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る導電性支持体を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る導電性支持体を示す概略断面図である。
図3】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成を示す概略図である。
図4】本実施形態に係る電子写真感光体ユニットを示す概略図である。
図5】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図6】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(導電性支持体)
図1は、本実施形態に係る導電性支持体を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る導電性支持体の概略断面図である。なお、図2は、図1の導電性支持体の軸方向の中心軸を通り、径方向に沿って切断した導電性支持体の断面図である。
本実施形態に係る電子写真感光体用の導電性支持体1は、図1及び図2に示すように、
軸方向の両端部は、一端部1AAの端面1Aの厚さTよりも、他端部1BBの端面1Bの厚さTの方が大きいという構成を有している。
【0029】
なお、本明細書において、導電性とは、20℃における体積抵抗率が1×1013Ωcm未満であることを意味する。
【0030】
本実施形態に係る導電性支持体は、電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)の感光層のめくれの発生が抑制される。この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
感光体を長期使用した場合、感光体の感光層のめくれが生じることがある。これは、まず一つは、感光体を清掃するためのクリーニング部材(例えば、クリーニングブレード)による感光体の半径方向への圧力がある。もう一つは、感光体の片方の端部側に設けられた駆動装置からの駆動力が、駆動伝達部材を介して感光体に伝えられるものであるが、この駆動伝達部材の回転駆動により生じる感光体への回転力がある。これら双方の力が、感光体の片方の端部に加わることにより、感光体の導電性支持体に歪みや撓みが生じる。この導電性支持体の歪みや撓みにより、感光層のめくれが引き起こされるものと考えられる。
それに対して、本実施形態に係る電子写真感光体用の導電性支持体1では、軸方向における一端部の端面1Aの厚さTよりも、他端部の端面1Bの厚さTを大きくしたことにより、導電性支持体の歪みや撓みが生じる箇所の剛性を高められる。つまり、感光体を長期間使用しても、導電性支持体の歪みや撓みが抑制され、感光体の感光層のめくれを抑制することができると推測される。
【0031】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体用の導電性支持体1の詳細について説明するが、本発明の主旨を変更しない範囲において、以下の実施形態の具体的な実施内容については、適宜変更を行うことができる。
【0032】
本実施形態に係る導電性支持体1は、円筒体で構成され、その厚み(肉厚)は、図2に示すように、例えば、軸方向の中央1CCよりも一端部1AA側から増加し始め、他端部1BB側に向かうに従って次第に増加している。そして、他端部の端面1Bにおいて、その厚さは最大となる。また、厚みの増加は、導電性支持体1の半径方向内側に向かって増加している。また、導電性支持体1の他端部における中空部の形状は、錘状である。
ただし、本実施形態の導電性支持体1の厚みが増加する形態は、これに限られない。
【0033】
導電性支持体1の厚みが、「次第に増加する」とは、例えば、一端部1AAから他端部1BBに向かって直線状に増加する態様でもよいし、曲線状に増加する態様でもよいし、又は階段状に増加する態様でもよい。ここで、階段状に増加する態様である場合、感光体の使用時に、段差部に応力が集中する可能性が考えられるため、導電性支持体1への応力集中を緩和する観点から、導電性支持体1の厚みは、直線状に増加する態様、又は曲線状に増加する態様が好ましく、直線状に増加する態様がより好ましい。
また、導電性支持体1の厚みは、一端部1AAから他端部1BBに向かって次第に増加する態様の他に、一端部1AAから他端部1BBに向かって厚みは増加するが、その増加が端面1Bに到達する前で止まり、その地点から他端部の端面1Bに到達するまで最大厚みを維持する態様でもよい。
【0034】
また、導電性支持体1の厚みが、軸方向において一端部1AA側から他端部1BB側に向かって増加するにあたり、厚みの増加が開始する地点は、導電性支持体1の中央1CCよりも一端部1AA側からでもよいし、中央1CCからでもよいし、中央1CCよりも他端部1BB側からでもよいが、導電性支持体1の中央1CCよりも一端部1AA側から増加することが好ましい。
【0035】
また、導電性支持体の他端部1BBにおける中空部1Dの形状は特に限定されるものでないが、導電性支持体への応力集中を緩和する観点から、錐状であることが好ましい。具体的には、一端部1AAの開口部を底面として、他端部1BBに行くに従い、円の径が次第に小さくなる、特に円錐台であることが好ましい。
【0036】
他端部の端面の厚みTは、感光体の感光層のめくれを抑制する観点から、前記一端部の端面の厚みTの1.04倍以上1.1倍以下であることが好ましく、1.05倍以上1.08倍以下であることがより好ましい。
【0037】
一端部の端面の厚みTは、感光体の感光層のめくれを抑制する観点から、0.4mm以上0.7mm以下であることが好ましく、0.4mm以上0.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
導電性支持体1としては、以下のものが挙げられる。例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。
【0039】
以下、本実施形態の導電性支持体1の製造方法について説明する。導電性支持体1の製造方法は、特に制限はないが、インパクトプレス加工を利用した製造方法であることが好ましい。インパクトプレス加工で製造されたインパクトプレス管は、同種のアルミニウム製の筒状管(素管)の表面に切削加工を施したものに比べ、高硬度となる。また、インパクトプレス管は管の肉厚を薄肉化することや、管の端面の厚みを制御することも可能となる。具体的な一例は、次の通りである
【0040】
例えば、本実施形態に係る導電性支持体1の製造方法は、少なくともパンチ接触面に潤滑剤が付与されたスラグを雌型に配置した後、雌型(凹状型)に配置されたスラグを、雄型(パンチ型)で加圧して、スラグを雄型の外周面に塑性変形させて金属筒状体を成形するインパクトプレス工程を有する。また、インパクトプレス工程により成形された金属筒状体を、当該金属筒状体の外径よりも小さい内径を有する環状の押付型の内部に通過させて、金属筒状体の外周面をしごき加工するしごき工程を有してもよい。
【0041】
インパクトプレス加工工程で使用される雄型(パンチ型)の形状は、目的とする導電性支持体の形状に対応させたものである。したがって、パンチ型の形状を選択することにより、導電性支持体1の肉厚を目的とする厚みに調整することが可能となる。具体的には、パンチ型の先端部(底部)は、導電性支持体1の他端部1BBの中空部に対応した形状であり、パンチ型の末端部(上部)は、導電性支持体1の一端部1AAの中空部に対応した形状である。
このような形状のパンチ型を使用してインパクトプレス加工を行うことにより、一端部の端面の厚さTよりも他端部の端面の厚さTの方が大きいという構成を有している導電性支持体1を得ることができる。
【0042】
なお、しごき工程によっても、導電性支持体1の肉厚を調整することが可能である。しごき工程とは、インパクトプレス加工によって成形された金属筒状体の内部に先端側の部分が挿入される円柱型と、金属筒状体を円柱型の外周面に押し付ける押付型とを使用して行われる工程である。この円柱型の形状と押付型の形状を選択することでも、一端部の端面の厚さTよりも他端部の端面の厚さTの方が大きいという構成を有している導電性支持体1を得ることができる。
【0043】
[電子写真感光体]
本実施形態に係る電子写真感光体は、上記実施形態に係る導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた感光層と、を備える。
【0044】
図3は、本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の例を示す概略図である。図3に示すように、導電性支持体1上に、下引層2、感光層3をこの順に有する層構成が例示され、感光層3は、電荷発生層31と電荷輸送層32とが積層された積層型(機能分離型)の感光層である。
【0045】
本実施形態に係る電子写真感光体において、感光層3上に保護層を設けてもよい。また、下引層2と感光層3との間に中間層を設けてもよい。
【0046】
次に、本実施形態に係る電子写真感光体の各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0047】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0048】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0049】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0050】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0051】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0052】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0053】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0054】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0055】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0056】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0057】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0058】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0059】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0060】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0061】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0062】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0063】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0064】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0065】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro−Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0066】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0067】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0068】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0069】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0070】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0071】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0072】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0073】
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
【0075】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0076】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0077】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0078】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0079】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0080】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、−OH、−OR[但し、Rはアルキル基を示す]、−NH、−SH、−COOH、−SiRQ13−Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1〜3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0081】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0082】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0083】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0084】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0085】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0086】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0087】
(単層型感光層)
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0088】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体(つまり、本実施形態に係る電子写真感光体ユニット)が適用される。
【0089】
図4は、本実施形態に係る電子写真感光体ユニットを示す概略側面図である。図4に示すように、本実施形態の電子写真感光体ユニット10は、電子写真感光体110と、電子写真感光体110における導電性支持体1の一端部1AAを支持する第一のフランジ120A(「第一の支持部」の一例)と、電子写真感光体110における導電性支持体1の他端部1BBを支持する第二のフランジ120B(「第二の支持部」の一例)と、を備えている。また、電子写真感光体110は、導電性支持体1上に感光層3が積層されたものである。そして、導電性支持体1の他端部1BBを支持する第二のフランジ120Bには、ギア部材124B(「伝達部」の一例)が備えられている。ギア部材124Bは、電子写真感光体110を回転駆動させるための駆動力を伝えるものであって、ギア部材124Bを介することによって、モータ等の駆動装置(不図示)から発生する駆動力を導電性支持体1に伝搬することができる。
【0090】
導電性支持体1の軸方向の端部に設けられた第一のフランジ120A及び第二のフランジ120Bはそれぞれ、フランジ本体と、導電性支持体1の開口部に嵌め合わされる嵌合部と、を備えている。
【0091】
フランジ本体と嵌合部とは、例えば、円板部を介して同軸上に連続して連結されている。そして、フランジ本体と嵌合部との境界部で、フランジ本体の周方向に沿って段差部が形成されている。
【0092】
フランジの嵌合部が導電性支持体1の開口部に嵌め合わされたとき、導電性支持体1の軸と同軸で、導電性支持体1の軸方向外側に位置して配置される。そして、フランジ本体の軸中央部には、例えば、電子写真感光体110を回転駆動させるためのギア部材124Bが軸方向外側に突出するようにして設けられている。
【0093】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0094】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される
【0095】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0096】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0097】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0098】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図5に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0099】
図5におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
【0100】
なお、図5には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、清掃を補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0101】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0102】
−帯電装置−
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0103】
−露光装置−
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0104】
−現像装置−
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0105】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0106】
−クリーニング装置−
クリーニング装置は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0107】
−転写装置−
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0108】
−中間転写体−
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0109】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図6に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0110】
次に、本実施形態に係る画像形成装置100の動作について説明する。まず、電子写真感光体7が回転し、帯電装置8により例えば負に帯電する。
【0111】
帯電装置8によって表面が負に帯電した電子写真感光体7は、露光装置9により露光され、表面に静電潜像が形成される。
【0112】
電子写真感光体7における静電潜像の形成された部分が現像装置11に近づくと、現像装置11により、静電潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
【0113】
トナー像が形成された電子写真感光体7がさらに回転して、転写装置40によりトナー像は中間転写体50に1次転写され、さらに不図示の記録紙に2次転写される。これにより、記録紙にトナー像が形成される。
1次転写後、電子写真感光体7に残留するトナーはクリーニング装置13によって除去される。
【0114】
トナー像が形成された記録紙は、不図示の定着装置によりトナー像が定着される。
【0115】
なお、中間転写体50を用いずに電子写真感光体7の表面に形成されたトナー像が記録紙に直接転写されてもよい。
【実施例】
【0116】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は、「質量部」を意味する。
【0117】
<実施例1>
アルミニウム純度99.5%以上のJIS呼称1050合金の厚み15mmのアルミニウム板を打ち抜き加工して、直径34mm、厚み15mmのアルミニウム製の円柱状のスラグを用意した。次に、スラグのパンチ接触面に、下記条件のブラスト処理を施した。
次いで、スラグの全面に潤滑剤(粉末状のステアリン酸亜鉛)を付与量0.3mg/cmで付与し、インパクトプレス加工によって直径34mmの金属筒状体に成形した。
ここで、インパクトプレス加工では、底部の直径が32.98mmで、上部の直径が32.88mmのパンチ型の先端部(底部)が先細である円錐台状のパンチ型を使用した。
更に、インパクトプレス加工で得られた円筒部材に、しごき加工を施した。
そして、しごき加工を施したアルミニウム製の円筒状部材を導電性支持体1とした。得られた導電性支持体1は、直径30mm、長さ251mm、一端部の端面の厚さT0.41mm、他端部の端面の厚さT0.45mmであった。
この導電性支持体1の厚さ(肉厚)は、一端部1AAから増加し始め、他端部1BB側に向かうに従って次第に増加し、他端部の端面1Bにおいて、その厚さは最大であった(図2参照)。また、厚みの増加は、導電性支持体1の半径方向内側に向かって増加していた(図2参照)。さらに、導電性支持体1の他端部1BBにおける中空部の形状は、錐状であった(図2参照)。
【0118】
−ブラスト処理条件−
・研磨材(メディア)の材質:ジルコニア
・研磨材のサイズ:50μm
・研磨材の照射圧力:0.3MPa
・研磨材の照射時間:10秒
【0119】
<実施例2〜6、比較例1〜3>
実施例1の導電性支持体の作製において、パンチ型の底部及び上部の直径を変更した以外は、実施例1の導電性支持体と同様にして、表1に示す端面の厚さを有する各導電性支持体を作製した。
【0120】
<感光体の作製>
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた導電性支持体を使用し、次のように感光体を作製した。
【0121】
酸化亜鉛(商品名:MZ 300、テイカ社製)100質量部、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランの10質量%のトルエン溶液を10質量部、トルエン200質量部を混合して攪拌を行い、2時間還流を行った。その後10mmHgにてトルエンを減圧留去し、135℃で2時間焼き付けて、シランカップリング剤による酸化亜鉛の表面処理を行った。
表面処理した酸化亜鉛:33質量部、ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):6質量部、下記構造式(AK−1)で示される化合物:1質量部、メチルエチルケトン:25質量部を30分間混合し、その後ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製):5質量部、シリコーンボール(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):3質量部、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部を添加し、サンドミルにて3時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。
さらに、浸漬塗布法にて、下引層形成用塗布液を、導電性支持体上に塗布し、180℃、30分の乾燥硬化を行い、膜厚30μmの下引層を得た。
【0122】
【化1】

【0123】
次に、電荷発生材料としてのヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料「CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=820nm、平均粒径=0.12μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=60m/g)」、結着樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)、およびn−酢酸ブチルからなる混合物を、容量100mLガラス瓶中に、充填率50%で1.0mmφガラスビーズと共に入れて、ペイントシェーカーを用いて2.5時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の混合物に対して、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有量を55.0体積%とし、分散液の固形分は6.0質量%とした。含有量は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の比重を1.606g/cm、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の比重1.35g/cmをとして計算した。
得られた電荷発生層形成用塗布液を、下引層上に浸漬塗布し、130℃で5分間乾燥して、膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0124】
次に、電荷輸送材料として、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1A)8質量部と、ベンジジン系電荷輸送材料(CT2A)32質量部と、結着樹脂として、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールZの単独重合型ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量4万)58質量部と、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(HP−1、分子量775)2質量部(全電荷輸送材料合計量100質量%に対して5質量%)とを、テトラヒドロフラン340質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。
得られた電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、145℃、30分の乾燥を行うことにより、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
【0125】
以上の工程を経て、各感光体を得た。そして、得られた各感光体について、次の評価を実施した。
【0126】
<評価>
得られた感光体の両端部にフランジを取り付けた。ただし、他端部1BB側に取り付けたフランジはギア部材124B付きフランジとした(図4参照)。このフランジ付き感光体を画像形成装置(「Docu Print C1100」(富士ゼロックス社製))に搭載した。この装置を用いて、フランジ付き感光体の感光層のめくれ評価を以下のようにして行った。A4サイズの普通紙に黒色ハーフトーン画像(画像密度35%)を10000枚出力させた。その後、目視で表面を確認した。
また、評価基準は、次の通りである。評価結果を表1に示した。
A;めくれ無し
B:しわあり(しわは最奥部が見えるもの)
C:めくれあり
【0127】
【表1】
【0128】
なお、電荷輸送層の形成に用いた電荷輸送材料、及び酸化防止剤の詳細は以下の通りである。
・ブタジエン系電荷輸送材料:下記構造式で示される化合物(CT1A)
・ベンジジン系電荷輸送材料:下記構造式で示される化合物(CT2A)
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤:下記構造式で示される化合物(HP−1)
【0129】
【化2】
【0130】
【化3】
【0131】
【化4】
【符号の説明】
【0132】
1 導電性支持体、1A 端面、1B 端面、1AA 一端部、1BB 他端部、2 下引層、3 感光層、31 電荷発生層、32 電荷輸送層、110 電子写真感光体、10 電子写真感光体ユニット、
8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、100 画像形成装置、300 プロセスカートリッジ、
120 画像形成装置、40 転写装置、50 中間転写体
図1
図2
図3
図4
図5
図6