特許第6981143号(P6981143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6981143-シール付き玉軸受 図000002
  • 特許6981143-シール付き玉軸受 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981143
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】シール付き玉軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20211202BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20211202BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20211202BHJP
【FI】
   F16C33/78 Z
   F16C19/06
   F16J15/3204 201
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-186871(P2017-186871)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-60441(P2019-60441A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 梓
(72)【発明者】
【氏名】樋本 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】稲見 宣行
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平08−000966(JP,U)
【文献】 特開2014−109297(JP,A)
【文献】 実開昭59−067624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
F16C 19/06
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道溝が形成された外輪と、外周面に内輪軌道溝が形成された内輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝の間に転動自在に配設された複数の玉と、前記複数の玉を転動自在に保持する保持器と、前記外輪と前記内輪との間の軸方向開口部を封止する少なくとも一つのシール部材と、を備えるシール付き玉軸受であって、
前記シール部材は、円環状の芯金と、前記芯金に固着された円環状の弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記芯金の内周縁から半径方向内側に向かって延び、内径側部分に前記内輪のシール溝に摺接するシールリップを有するリップ支持部を有し、
前記リップ支持部は、前記シールリップの先端と、前記芯金の内周縁との半径方向中間位置に対して前記芯金側に、軸方向肉厚が前記リップ支持部の他部分の肉厚より薄い薄肉部を有し、
前記芯金の内周縁の直径は、前記玉のピッチ円直径より大きいことを特徴とするシール付き玉軸受。
【請求項2】
前記薄肉部は、内側面が軸方向外方に向かって凹む断面略円弧状に形成され、外側面が断面直線状に形成される、請求項1に記載のシール付き玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール付き玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接触型のシールを組み込んだ転がり軸受としては、予圧負荷時にのみシールを軽接触させることでシールの締め代を低減し、シールの摩擦抵抗による回転トルクの低減を図ったものが知られている(特許文献1参照)。また、特許文献2には、内輪とシールリップ部との間に隙間を有する非接触型のシールを備え、内輪とシールとの摩擦をなくすと共に、一定の防塵性能を確保した転がり軸受が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3948477号公報
【特許文献2】特許第5636819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の転がり軸受では、シールの締め代が低減するため、通常の接触型のシールに比べて、シール性が低いという課題がある。また、特許文献2に記載の転がり軸受においても、非接触型のシールであるため、シール性は低い。
【0005】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールの低トルク化を図ると共に、シールの締め代を低減せずにシール性を確保することができるシール付き玉軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内周面に外輪軌道溝が形成された外輪と、外周面に内輪軌道溝が形成された内輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝の間に転動自在に配設された複数の玉と、前記複数の玉を転動自在に保持する保持器と、前記外輪と前記内輪との間の軸方向開口部を封止する少なくとも一つのシール部材と、を備えるシール付き玉軸受であって、
前記シール部材は、円環状の芯金と、前記芯金に固着された円環状の弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記芯金の内周縁から半径方向内側に向かって延び、内径側部分に前記内輪のシール溝に摺接するシールリップを有するリップ支持部を有し、
前記リップ支持部は、前記シールリップの先端と、前記芯金の内周縁との半径方向中間位置に対して前記芯金側に、軸方向肉厚が前記リップ支持部の他部分の肉厚より薄い薄肉部を有し、
前記芯金の内周縁の直径は、前記玉のピッチ円直径より大きいことを特徴とするシール付き玉軸受。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシール付き玉軸受によれば、シール部材は、円環状の芯金と、芯金に固着された円環状の弾性体と、を備え、弾性体は、芯金の内周縁から半径方向内側に向かって延び、内径側部分に内輪のシール溝に摺接するシールリップを有するリップ支持部を有し、リップ支持部は、シールリップの先端と、芯金の内周縁との半径方向中間位置に対して芯金側に、軸方向肉厚が前記リップ支持部の他部分の肉厚より薄い薄肉部を有し、芯金の内周縁の直径は、玉のピッチ円直径より大きい。これにより、リップ支持部が変形し易く、内輪のシール溝とシールリップとの締め代を確保してシール性を維持しつつ、シールリップの摩擦抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】シール付き玉軸受の要部縦断面図である。
図2図1に示すシール部材の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るシール付き玉軸受を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のシール付き玉軸受10は、外輪11と、内輪12と、転動体である複数の玉13と、複数の玉13を転動自在に保持する保持器14と、一対のシール部材20と、を備える。
【0010】
外輪11の内周面には外輪軌道溝15が形成されると共に、軸方向両側にはシール部材20を固定するためのシール係止溝16が形成されている。内輪12の外周面には内輪軌道溝17が形成されると共に、軸方向両側にはシール溝18が形成されている。
【0011】
外輪軌道溝15と内輪軌道溝17との間には、保持器14により円周方向に等間隔に配置されて回動自在に保持された複数の玉13が配設される。外輪11及び内輪12間の軸方向両側には、シール溝18と協働してシール付き玉軸受10を外部から封止する一対のシール部材20が配置されて、軸方向開口部を封止する。
【0012】
シール部材20は、シール付き玉軸受10内に封入されたグリース(図示せず)が、外部へ漏れるのを防止すると共に、シール付き玉軸受10の外部の異物(例えば、水、泥水、塵埃など)が内部に侵入するのを防止する。
【0013】
図2も参照して、シール部材20は、鋼板などの金属板により断面略L字形に形成された円環状の芯金21と、ゴムなどの弾性材料からなり芯金21に固着された円環状の弾性体22と、を有する。
【0014】
芯金21は、円筒部23と、円筒部23の軸方向一端から半径方向内側に向けて屈曲形成された円板部24とを有する。円板部24の内周縁24aの直径Dは、シール付き玉軸受10のピッチ円直径PCDより大きい。
【0015】
弾性体22は、芯金21の円筒部23の外周面を覆い半径方向外側に膨出して形成された外周縁部26と、芯金21の内周縁24aから半径方向内側に向かって延びる円環状のリップ支持部27と、芯金21の外側面25に固着され、外周縁部26とリップ支持部27とを連結する側部28と、を有する。
【0016】
弾性体22の外周縁部26は、外輪11の軸方向端部に形成されたシール係止溝16に圧入などによって係止され、シール部材20が外輪11に固定される。
【0017】
リップ支持部27は、芯金21の内周縁24aから半径方向内側に向かうにつれて軸方向内側に傾斜して延び、リップ支持部27の内径側部分には、シールリップ29が軸方向内側に突出して形成されている。
【0018】
シールリップ29は、内輪12の軸方向端部に設けられたシール溝18の軸方向外向きの側壁面18aに摺接する。リップ支持部27のシールリップ29より半径方向外側の内側面には、軸方向内側に突出するグリースリップ30が形成されている。グリースリップ30は、シール溝18の側壁面18aに近接して対向配置されている。
【0019】
また、リップ支持部27は、軸方向肉厚tがリップ支持部27の他部分の肉厚より薄い薄肉部31を備える。薄肉部31は、シールリップ29の径方向先端29aと、芯金21の内周縁24aとの半径方向中間位置CPよりも芯金21側に設けられている。薄肉部31は、内側面が軸方向外方に向かって凹む断面略円弧状に形成され、外側面が断面直線状に形成されることで、肉厚tが薄くなっている。
【0020】
即ち、薄肉部31は、シール部材20がシール付き玉軸受10に装着されたとき、シール部材20の締め代によりリップ支持部27が軸方向外側に変形して伸びが生じる側が断面略円弧状であり、その反対側が断面直線状となっている。薄肉部31の内側面を断面略円弧状に形成することで、リップ支持部27と保持器14との干渉を確実に防止することができる。
【0021】
このように、芯金21の内径を大きくして、リップ支持部27の径方向長さを長くすると共に、リップ支持部27に薄肉部31を設け、且つ薄肉部31からシールリップ29の径方向先端29aまでの距離を長く設定してリップ支持部27を変形し易くすることにより、シール溝18に対するシール締め代を低減させずに摩擦抵抗を小さくして低トルク化することができる。
【0022】
なお、上記目的を効果的に達成し、且つ保持器14との干渉を防止するためには、芯金21の内周縁24aから薄肉部31までの長さL1と、薄肉部31からシールリップ29の径方向先端29aまでの長さL2との比は、1:1より小さくすることが好ましく、1:3より大きくすることがより好ましく、1:2より大きくすることが更に好ましい。
【0023】
また、リップ支持部27、即ち、芯金21の内周縁24aからシールリップ29の径方向先端29aまでは、弾性材料だけで構成されるのがよい。これにより、摩擦抵抗が小さく低トルクであり、且つ通常の接触シールと同等のシール性能を確保できる。
【0024】
また、リップ支持部27が変形し易いので、シールリップ29の締付力も弱くなる傾向があるが、シール性能を向上させるため、シールリップ29の内輪軌道溝17側の側面部29bを内輪12のシール溝18の側壁面18aに摺接させることが好ましい。
【0025】
また、グリースリップ30は、封入されたグリースがシール溝18に流出するのを抑制するが、摩擦抵抗低減のためには、内輪12のシール溝18と接触せず、すきまを有して配設されることが望ましい。
【0026】
また、芯金21は、製作コスト低減が可能な簡単な形状である断面L字形にすると共に、シール係止溝16への装着性を考慮して外周縁部26には芯金21を含まないようにすることが望ましい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のシール付き玉軸受10によれば、シール部材20は、円環状の芯金21と、芯金21に固着された円環状の弾性体22と、を備え、弾性体22は、芯金21の内周縁24aから半径方向内側に向かって延び、内径側部分に内輪12のシール溝18に摺接するシールリップ29を有するリップ支持部27を有し、リップ支持部27は、シールリップ29の先端29aと、芯金21の内周縁24aとの半径方向中間位置CPに対して芯金21側に、軸方向肉厚tがリップ支持部27の他部分の肉厚より薄い薄肉部31を有する。これにより、リップ支持部27が変形し易く、内輪12のシール溝18とシールリップ29との締め代を確保してシール性を維持しつつ、シールリップ29とシール溝18との摩擦抵抗を低減することができる。
【0028】
また、芯金21の内周縁24aの直径Dは、玉13のピッチ円直径PCDより大きいので、リップ支持部27の径方向長さを長く設定でき、シール緊迫力をより低減できる。
【0029】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 シール付き玉軸受
11 外輪
12 内輪
13 玉
14 保持器
15 外輪軌道溝
17 内輪軌道溝
18 シール溝
20 シール部材
21 芯金
22 弾性体
24a 芯金の内周縁
27 リップ支持部
29 シールリップ
29a シールリップの径方向先端
31 薄肉部
CP 半径方向中間位置
D 芯金の内周縁の直径
PCD ピッチ円直径
t 軸方向肉厚
図1
図2