(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、紙あるいは樹脂フィルムからなる基材の一方の面上に、基材側に金属蒸着層を有する金属蒸着フィルム、透明樹脂フィルム、網点状のレンズ、の順で構成される軟包装材であって、
前記金属蒸着フィルムは、透明な樹脂フィルムと金属蒸着層とから成り、
金属蒸着フィルムと透明樹脂フィルムとの間に、部分的に配置した接着部を介して形成される隙間と、隙間の金属蒸着フィルム側に網点で印刷された印刷部と、を有したことを特徴とする軟包装材。
網点状のレンズのピッチが、網点で印刷された印刷部のふたつの網点のうち、左目用の網点間のピッチ、または右目用の網点間のピッチと等しく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軟包装材。
【背景技術】
【0002】
立体的に視覚可能な印刷物は、印刷ピッチをマイクロレンズシートに対して、焦点を左右の目の距離に合わせ、視覚可能な図をずらして設定すると共に、レンチキュラーレンズなどを使用して、目で見る位置によって、異なった画像を得ることによって視覚させる方法が採用されてきた。
このような立体画像は、硬質で厚肉のレンチキュラーレンズなどを使用していたので、コストも高く、用途は限られていた。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1では、直方体又は立方体形状の包装容器の外面の一部領域に所定画素ピッチ値にて形成された光学視可能な可変画素層を備え、該可変画素層上に画像ピッチ値と整合するレンズピッチ値にて形成されたレンズアレイを有するマイクロレンズシートをスライド移動可能に重ね合わせて取り付けられたレンズ付き包装容器を提案している。
【0004】
このレンズ付き包装容器に用いるレンズシートは、濡れ性の低い透明な紫外線硬化型樹脂を該撥液性層上より全面に撥液性層以上の層厚にて塗布して、各々撥液性層間の樹脂を凸状に盛り上がるように成形してレンズアレイ層を形成して紫外線照射して硬化させてレンズ基材層と一体化したもので、肉薄のマイクロレンズシートにすることはできるが、硬質で、平坦な板面にしか利用できないものであった。
【0005】
さらに、特許文献2では、印刷基材上に、透明ニスにより一定のピッチのレンズを形成した装飾体を用いた包装体であって、包装体の任意の箇所にレンズと、そのレンズよりも高い凸形状を設けたことを特徴とする包装体であって、
レンズと高い凸形状を、撥液性ニスによるパターンを含む印刷物にグロスニスコーティングを施して、撥液性ニスとの非相溶性を利用して作成することを提案している。
【0006】
このレンズ付き包装体に用いるマイクロレンズシートは、非相溶性の撥液性ニスをパターン化してグロスニスコーティングで製造し、
図6で示すように、反射層の上に設けた印刷部を、レンズシートの下方に設けた構成のシートを作成し、包装体としている。
この包装体は、基材がいくらか軟質であっても、シート上に形成することはできるが、あくまで紙容器のような平面を有する箱型の包装体であって、立体的に視覚可能な光学的効果は固定しており、軟らかい軟包装材に使用することはできないものであった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例について、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態例における軟包装材1の構成を模式的に表わした縦断面図である。
本発明の軟包装材1は、少なくとも、内側から紙あるいは樹脂フィルムからなる基材2と、金属蒸着層31を有する蒸着フィルム3と、透明樹脂フィルム4、網点状のレンズ5、の順で構成されている。
さらに、基材2の内側には、包装袋とするために融着するシーラント層21を設けることが好ましい。
金属蒸着層31を有する蒸着フィルム3は、金属蒸着層31を基材2側に向け、金属蒸着フィルム3のフィルム面側と透明樹脂フィルム4との間には、部分的に配置した接着部6を介して隙間7を形成している。
隙間7には、網点状に印刷された印刷部8を有している。
【0013】
図2は、
図1のA−A断面で、本発明の第1実施形態例における軟包装材1の印刷部8を通る横断面を模式的に表わした図である。
4方を接着部6で囲まれた間に隙間7が形成され、隙間7の中に、印刷部8が網点状に飛び飛びに形成させる。
印刷部8の網点は、左右2方向用に合わせて少なくとも2つの網点で構成される。
この為、印刷部8は左用、右用の2枚の原稿を合わせ、できるだけ同時に2つの原稿をあわせた合わせ原稿を用いて一度に印刷する。
印刷部8の画像印刷は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など、網点を使用
した印刷で行なう。
その印刷部8の網点に合わせ、網点状のレンズ5のレンズピッチ51(
図1参照)は、網点で印刷された印刷部のふたつの網点のうち、左目用の網点間のピッチ、または右目用の網点間のピッチと等しく形成されている。
【0014】
図3は、本発明の第1実施形態例における光の光路の一例を縦断面図で模式的に表わした図である。
網点状に印刷された印刷部8と網点状のレンズ5との距離が、網点状のレンズの焦点距離近傍に設定されている。そうすると、外光が入射すると、金属蒸着層31の裏面は鏡のような反射面となり、そこで入射光91は反射し、印刷部8に光が裏面から入射する。
レンズ5の焦点距離に置かれた印刷部8によって乱反射した光は、レンズ5で屈折し、左用印刷部81を通った透過光は平行になって左目用の反射光92となり、左目に入射する。同じように、右用印刷部82を通った透過光は平行になって右目用の反射光93となり、右目に入射する。そして、それぞれの目に入った光は、脳によって総合的に認識される。
【0015】
図4は、本発明の第1実施形態例で、透明樹脂層4を変形させて、隙間を変化させることで、網点状のレンズ5と印刷部8とのレンズ印刷間距離52(
図1参照)を焦点距離よりわずかに変えたもので、その状態における光の光路の変化を縦断面図で模式的に表わした図である。
網点状のレンズ5と印刷部8との距離が焦点距離よりずれると、印刷部8によって乱反射した光は、レンズ5で屈折するが、印刷部81を通った透過光は平行にならないで、拡散するように光が広がり、目でしっかりと正確に認識できなくなる。それは、焦点が合わないで部分的にぼやけた画像であったり、局所的に縮小したり、部分的に拡大された画像になったり、レンズ同士のずれもあって、モアレを発生したりして、奇抜で派手な画像効果を得ることができる。
【0016】
図5は、本発明の第2実施形態例で、軟包装材の印刷部における別の横断面を模式的に表わした図である。
4方を接着部6で囲んで、隙間7を形成しているが、接着部6が、多数の島状に分断され、多数の隙間7が繋がっている。隙間7の中には、印刷部8が網点状に飛び飛びに形成されている。接着部6が島状に別れることによって、画像に合わせて接着部6を増やし、隙間を確実に確保することもできる。
特に、
図5のような包装体では、隙間7が閉鎖空間でないので、蒸着フィルム3と、透明樹脂フィルム4との間で、隙間7にある空気は、隣り合う隙間7や外気とも通じ、自由に行き来することができる。
この為、包装体1を曲げたり、折ったりして変形しやすいと共に、隙間7自体を、大きく、かつ、細かく、繊細に変化させることが可能である。
それは、
図4で示すような網点状のレンズ5と印刷部8との距離の変化でもあるので、画像の変化・変形が極端に変化させることが可能とする。
【0017】
ここで、基材は2軸延伸された結晶性樹脂フィルムが好ましい。例えば、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリアミドフィルムなどが考えられるが、他のフィルムを貼り合せた積層フィルムであってもかまわない。
【0018】
蒸着フィルムに使用するフィルムは、蒸着時に熱が掛かりやすいこともあって、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのような、耐熱性が高く、伸びにくく、かつ、透明なフィルムが好ましい。
【0019】
また、金属蒸着フィルムの金属蒸着層は、アルミニウムなどの光沢のある無機金属で、物理蒸着であっても、化学蒸着であってもかまわない。蒸着材料の金属としては、アルミニウムの他、クロム、亜鉛、スズ、金、銀、銅、プラチナ、ニッケルなどが使用できる。約400nm程度の厚みに蒸着し、金属光沢を得るようにする。蒸着層を多層の蒸着膜によって、光沢色を変えたり、角度によって変化したりするようにしても良い。
【0020】
透明樹脂フィルムは、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリアミドフィルム、など加工時にピッチなどが変化しにくい強度の高い2軸延伸フィルムが好ましいが、厳密な立体性を得るのではなければ、必ずしもそれにこだわらない。
【0021】
網点状のレンズは、シリコン樹脂やウレタン樹脂、アクリル系樹脂などの高粘度透明樹脂を高精細ディスペンサー機と可動台を使用して、点状に滴下したり、印刷機で透明樹脂を印刷して製造することができる。特に、紫外線硬化樹脂は、高速で肉厚の硬化が期待できるので、好ましい。
印刷機では、インクジェット印刷機や、シルク印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機などが考えられる。
【実施例】
【0022】
<実施例>
基材として、30μmの2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを使用した。
基材の裏面側には、エクストラミネーション機を使用し、40μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をシーラントとして貼り合せた。
蒸着フィルムは、12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウムを蒸着した。
蒸着フィルムのアルミニウム蒸着面を基材側に向け、ドライラミネーション機を使用し、二液硬化型であるウレタン系接着剤を介して接着した。
印刷インラインラミネート機を使用し、下記内容で包装用フィルムを作成した。
すなわち、図版原稿を、いちばん暗い部分の濃度を50%程度に下げ、一番明るい部分の濃度を3%程度とした半調の下地絵柄とした網点とし、基材に貼り合せた蒸着フィルムの非蒸着面に、グラビア法で印刷した。
12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを透明樹脂フィルムとして使用し、これに透明ニスで、図版原稿の網点のピッチに合わせ、透明ニスを網点状にレンズを表面に塗工により形成し、かつ、レンズ反対面に接着剤をグラビア印刷方式で部分的に塗工した。上記部分的に接着剤を塗工した透明樹脂フィルム面と、基材と貼り合せて画像を印刷した蒸着フィルムと、を貼り合せ、軟包装材を得た。
【0023】
<比較例>
基材として、30μmの2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを使用した。
基材の裏面側には、エクストラミネーション機を使用し、40μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をシーラントとして貼り合せた。
蒸着フィルムは、12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウムを蒸着した。
蒸着フィルムのアルミニウム蒸着面を基材側に向け、ドライラミネーション機を使用し、二液硬化型であるウレタン系接着剤を介して接着した。
印刷機を使用し、下記内容で包装用フィルムを作成した。
すなわち、図版原稿を、いちばん暗い部分の濃度を50%程度に下げ、一番明るい部分の濃度を3%程度とした半調の下地絵柄とした網点とし、基材に貼り合せた蒸着フィルムの非蒸着面に、グラビア法で印刷した。
図版原稿の網点のピッチに合わせ、透明ニスを網点状にレンズを表面に塗工により形成し
、軟包装材を得た。
【0024】
<評価内容>
上記構成で作成した軟包装材を、絵柄に合わせて、縦200mm、横125mmの矩形に断裁し、3方をシールして包装袋を作成した。
内容物としてコーヒー豆を包装袋の内部に入れ、外観、手触りなどの評価を行った。
【0025】
評価項目は、下記4項目で確認した。
視覚的立体感として、左右の目で見た時の、全体的な立体感の有無を確認した。
【0026】
部分的な立体感として、軟包装材が内容物によって部分的に凹凸を持った部分が立体的に変化してより大きく変化して見えるかを確認した。
【0027】
手触りによる立体感として、包装体を手でわずかに触った時、そのわずかな包装体の凹凸の変形によって、その変形の大きさよりも、見える画像の変化がより大きく変化するかを確認した。
【0028】
総合評価として、視覚的に派手で目立ち、触った時により脈動的に立体感を感じられるかを確認した。
【0029】
<包装体評価結果>
視覚的立体感では、実施例も比較例も、同じように左右の目で見た時の、全体的な立体感が強く感じられた。
【0030】
部分的な立体感では、実施例は内容物によって部分的に凸状や凹状になった部分がより立体的に変化してより凸部がより凸状に、凹部がより凹状に、変化したように確認された。しかし、比較例は、凹凸になった部分は立体感が無くなって、感じられた。
【0031】
手触りによる立体感では、実施例は触ることで、触った部分が局所的に変化した状態に応じて、モアレを生じたりして、より動いたように感じられた。
しかし、比較例は、触った部分は立体感が無くなったように感じられた。
【0032】
総合評価では、実施例は派手で目立って人目を引いた上に、触った時に、その接触に応じて脈動的に動いたように感じられたので、包装体の高い存在感を感じた。
しかし、比較例では、真正面で見る分には派手で目立ったが、少し目線がずれると、変化が無く、包装体の存在感は、実施例に比べ、大きく劣っていた。
【0033】
以上の結果から、本発明の包装体は、視覚的立体感だけではなく、部分的に凸状や凹状になった部分がより立体的が誇張されて見えたり、手触りによる立体感では、触った部分が局所的に変化した状態に応じて、より動きを感じられたりするので、視覚効果が非常に高く、包装体の存在感を強く確認できた。
【0034】
本発明は以上のように、軟らかいフィルム上に立体的な画像を形成し、フィルムのわずかな動きに追随して、画像がモアレ状態や、あたかも局所的に拡大と縮小がしたように視覚可能とし、特殊な画像変化となることによって、高い美的で、動きのある、派手で目だった効果を有する軟包装材である。しかも、この軟包装材は、通常のラミネート機や印刷機などの既存設備で容易に生産することができるなど、本発明のメリットは大きい。