(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開始タイミング決定部は、前記変化量と前記プレ空調確保時間とに基づいて算出されるプレ空調開始距離に前記車両と前記乗員との間の距離が到達するタイミングを、前記プレ空調を開始するタイミングとする請求項1に記載の空調制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の空調制御システム1について、
図1〜
図6を参照しながら説明する。空調制御システム1は、例えば、車両10と、携帯端末20と、サーバ装置30とを備える。空調制御システム1は、車両10の車室内の空調を行う車両用空調装置15の作動を制御することができる。特に空調制御システム1は、乗員が車両10に乗車する前に車室内を空調するプレ空調の実行を制御する。
【0013】
車両10には、測位部22と、無線通信部21と、DCU13と、空調ECU14と、車両用空調装置とが搭載されている。車両10は、走行駆動源としてのモータおよびこのモータに対して電力を供給するバッテリを搭載している。車両10は、例えばモータのみを走行駆動源とする電気自動車、モータと内燃機関の両方を走行駆動源として利用するハイブリッド車およびプラグインハイブリッド車等である。車両用空調装置15は、例えばヒートポンプサイクルを備える。車両用空調装置15は車室内の空調を実現するための各種の空調機能部品によって構成される。例えば、車両用空調装置15は、内外気を切り替える内外気切替ドア、送風するためのブロワ、電動コンプレッサやエバポレータ、コンデンサなどで構成された空気の冷却、加熱を行うためのヒートポンプサイクルユニットなどで構成される。車両用空調装置15は、上述のバッテリからの電力を利用して駆動される。
【0014】
測位部12は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機と慣性センサとを備える。GNSS受信機は、GNSSを構成する測位衛星が送信する測位信号を受信する受信機である。GNSS受信機は、GPS、GLONASS、Galileo、IRNSS、QZSS、Beidou等の衛星測位システムのうちで、少なくとも一つの衛星測位システムの各測位衛星から、測位信号を受信可能である。慣性センサは、車両10の角速度を計測するジャイロセンサや、車両10の加速度を計測する加速度センサである。測位部12は、GNSS受信機による測位信号と慣性センサによる計測結果との組み合わせにより車両10の位置を逐次決定する。すなわち測位部12は、車両10の位置を特定する機能を有する。測位部12は、得られた車両位置情報を無線通信部21からサーバ装置30へと送信可能である。
【0015】
無線通信部11は、インターネット、携帯電話網等の公衆回線網および基地局を介してサーバ装置30および携帯端末20と無線通信を行う。無線通信部11は、サーバ装置30および携帯端末20と相互通信可能である。または、携帯端末20とは直接通信を行わない構成であってもよい。
【0016】
DCU13および空調ECU14は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータを主なハードウェア要素として備える。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能な所定のプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。DCU13および空調ECU14は、記憶媒体に記憶された各種のプログラムをCPU等のプロセッサによって実行することで、各種制御処理を実施する機能を有する。DCU13および空調ECU14は、それぞれ車両10に搭載された複数のECU(Electronic Control Unit)のうちの1つである。
【0017】
DCU13(Domain Control Unit)は、対応するドメインに属する車載装備の制御を統括する制御装置である。一般的にDCU13は車両10に複数搭載されている。
図2に示すDCU13は、特に車両用空調装置が属するドメインにおける車載装備の制御を統括するDCUである。DCU13は、空調ECU14と通信可能に接続され、空調ECU14に対して所定の指示信号を送信することができるように構成されている。DCU13は、空調ECU14よりも上位のECUであるということもできる。DCU13は、サーバ装置30から送信されたプレ空調の開始指示もしくは解除指示を空調ECU14へと送信する。
【0018】
空調ECU14は、車両用空調装置15を制御する制御装置である。空調ECU14は、車両用空調装置におけるブロワ、コンプレッサ、エアミックスドア、内外気切替ドア、吹出口切替ドア等を制御する。空調ECU14は、車両10に乗員が乗車する前、イグニッションスイッチがOFFの状態でも車両用空調装置15を制御して空調を実行することができる。空調ECU14は、プレ空調の実行開始または実行中のプレ空調の解除を、DCU13からの指示を受けて実行する。空調ECU14は、「空調制御部」に相当する。
【0019】
次に携帯端末20について説明する。携帯端末20は、無線通信部21と、制御部23と、タッチパネル24とを備える。携帯端末20は、乗員が持ち運び可能な通信デバイスである。携帯端末20は、例えばスマートフォン、ウェアラブルデバイス、タブレット端末等、車両10を利用する乗員が所有する通信デバイスによって提供することができる。携帯端末20は、電子キーやスマートキー等の車両10ドアの施解錠の許可を行う機能を有する通信端末によって提供されてもよい。無線通信部21は、車両10の無線通信部11と同様に公衆回線網および基地局を介してサーバ装置30と無線通信を行う。測位部22は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備える。測位部22は、GNSS受信機による測位信号に基づいて携帯端末20の位置を決定する。すなわち測位部22は、携帯端末20の位置を特定する機能を有する。測位部22は、得られた端末位置情報を無線通信部からサーバ装置30へと送信可能である。携帯端末20は乗員が持ち運ぶので、端末位置情報は乗員の位置情報とみなすことができる。
【0020】
タッチパネル24は、表示部とタッチ入力部とを備える。表示部は、視覚情報を表示するためのディスプレイである。表示部は、視覚情報の形式で乗員に所定の情報を報知する報知部であるということもできる。タッチ入力部は、ディスプレイと一体的に構成され、ディスプレイの表示面に乗員の指等の操作体が接触してタッチ入力を行った場合に、タッチ入力の位置情報を制御部に出力する。タッチ入力部は、乗員が起こす動作の一種であるタッチ入力を検出する動作検出部であるということもできる。
【0021】
制御部23は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータを主なハードウェア要素として備える。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能な所定のプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御部は、記憶媒体に記憶された各種のプログラムをCPU等のプロセッサによって実行することで、各種制御処理を実施する機能を有する。制御部23は、測位部22が取得した位置情報を、無線通信部21からサーバ装置30へと送信する機能を有する。
【0022】
次にサーバ装置30について説明する。サーバ装置30は、無線通信部31と、制御部33と、データ格納部32とを有する。サーバ装置30は、例えば管理センタに設置されたホストコンピュータによって提供される。サーバ装置30は、1台のコンピュータまたは複数のコンピュータによって構成される。無線通信部31は、インターネット、携帯電話網等の公衆回線網および基地局を介して車両10および携帯端末20と無線通信を行う。無線通信部31は、車両10および携帯端末20と相互通信可能である。
【0023】
データ格納部32は、無線通信部31が受信したデータ、制御部33による演算処理結果等を記憶して蓄積する記憶部である。データ格納部32は、例えば乗員の行動パターンをデータとして蓄積する。より具体的な例としては、データ格納部32は、乗員が平日何時に出社して何時に帰宅するかといった定常的な行動のスケジュール、またその場合にどのような経路で出発地から目的地まで車両を運転するかといった走行経路情報等をデータとして記憶する。また、データ格納部32は、乗員が車両に到達するまでに通る歩行経路情報を記憶する。例えば、乗員が自宅から駐車場に停められた車両へ向かう際に定常的に使用する歩行経路を記憶する。データ格納部は、歩行経路情報を、例えば携帯端末の現在位置の軌跡として記憶する。また、データ格納部は、地図情報を記憶している。地図情報には、特に道路形状のデータが含まれる。加えて、信号機や横断歩道、踏切、道路標識等の、乗員が車両に向かう際に乗員の移動速度を変化させる要因となる構造物の情報を地図情報として含んで記憶していることが望ましい。
【0024】
制御部33は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータを主なハードウェア要素として備える。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能な所定のプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御部は、記憶媒体に記憶された各種のプログラムをCPU等のプロセッサによって実行することで、各種制御処理を実施する機能を有する。
【0025】
制御部33は、距離算出部33b、変化量算出部33c、閾値決定部33d、距離判定部33eとしての機能を有する。制御部33は、経路推定部33g、地点設定部33h、位置判定部33iとしての機能を有する。制御部33は、プレ空調開始指示部33j、プレ空調停止指示部33kとしての機能を有する。
【0026】
距離算出部33bは、携帯端末20と車両10との間の現在距離Lnowを算出する。距離算出部33bは、携帯端末20から送信された端末位置情報と、車両10から送信された車両位置情報から、携帯端末20と車両10との直線距離として算出される。距離算出部33bは、例えばあらかじめ決められた所定時間tごとに、その時点での現在距離Lnowを逐次算出する。
【0027】
変化量算出部33cは、距離算出部33bによって逐次算出された現在距離Lnowに基づいて、携帯端末20と車両10との間の直線距離の単位時間当たりの変化量Sを算出する。具体的には、Lnowよりも所定時間tだけ前の時点で算出された距離をLとすると、直線距離の変化量Sは、以下の式で表される。
(数1)
S=(L−Lnow)/t
【0028】
変化量Sは、直線距離の変化速度であるということもできる。変化量Sは、乗員の移動速度が一定の場合には、乗員と車両とを結ぶ最短の直線経路を乗員が通るときに最も大きくなり、直線経路を通らない迂回経路を通るときには直線経路を通る場合よりも小さくなる。変化量算出部33cは、変化量Sを例えばLnowが算出されるごとに逐次算出する。変化量算出部33cは、逐次算出した変化量Sを制御部33におけるRAM、ROM等の記憶媒体に一時的に保存する。もしくは算出した変化量Sをデータ格納部に記憶して蓄積する構成であってもよい。
【0029】
閾値決定部33dは、変化量Sに基づいて、プレ空調の開始タイミングを定めるための閾値を決定する。閾値決定部33dは、閾値を車両からの直線距離Lsとして決定する。閾値決定部33dは、閾値Lsを、変化量S、および目標空調時間Tpに基づいて決定する。目標空調時間Tpは、プレ空調の実行に確保されるプレ空調確保時間の1つである。目標空調時間Tpは、車室内の温度環境を乗員にとって快適な環境にするための、プレ空調に最低限必要な時間である。ここで目標空調時間Tpは、車室内に乗り込んだ際に乗員が不快感を覚えることを回避可能な温度に内気温が到達するまでに必要なプレ空調の時間として設定される。目標空調時間Tpは、例えばサーバ装置30の制御部33に設定され記憶された時間である。または、データ格納部32に記憶された時間でもよいし、空調ECU14や携帯端末20の制御部23に記憶された時間でもよい。
【0030】
目標空調時間Tpの決め方の一例について説明する。例えばプレ空調を夏季に実施する場合を考えると、車室内に乗り込んだ際に乗員が暑さによる不快感を覚えることを抑制するには、車室内温度(以下、内気温と表記)が外気温と同等以下であることが望ましい。したがって、乗員が乗車するまでにプレ空調によって内気温を外気温と同等な温度に到達させるのに必要な時間を、上述の必要な時間として定めることができる。より具体的な例としては、外気温が35℃で日射が届く環境に車両10を駐車すると、20〜30分程度で内気温は50℃まで上昇する。この状態でプレ空調を開始し、内気温が外気温と同等、すなわち35℃まで下がるには、3分程度の時間が必要となる。以上により、夏季のプレ空調に必要な時間Tpとして、3分を設定することができる。また、冬季の場合、乗員が乗車するまでにプレ空調によって内気温を外気温よりも所定温度だけ高い温度、例えば外気温よりも10度高い温度に到達させるのに必要な時間を、目標空調時間Tpとしてあらかじめ定めればよい。
【0031】
閾値Lsは、例えば上述のように定められたプレ空調に必要な時間Tpと、変化量Sとを用いて以下の式で算出することができる。
(数2)
Ls=Tp×S
【0032】
すなわち、閾値Lsは、乗員の移動速度ではなく、乗員と車両との直線距離の変化量に基づいて決定されている。換言すれば、閾値Lsは、直線距離の変化速度に基づいて決定されている。閾値決定部33dは、閾値Lsを例えば変化量Sが算出されるごとに逐次算出する。または、変化量Sが所定値以上変動した場合にのみ閾値Lsを算出するようにしてもよい。または、変化量Sが所定値以上変動していない間は、変化量Sの累積平均から閾値Lsを算出するようにしてもよい。閾値決定部33dは、算出した閾値Lsを制御部33におけるRAM、ROM等の記憶媒体に一時的に保存する。もしくは算出した変化量Sをデータ格納部に記憶して蓄積する構成であってもよい。閾値Lsはプレ空調を開始するプレ空調開始距離である。閾値決定部33dは、「開始タイミング決定部」に相当する。
【0033】
距離判定部33eは、閾値決定部33dで決定された閾値Lsと現在距離Lnowとを比較して、現在距離Lnowが閾値Ls以下であるか否かを判定する。換言すれば、距離判定部33eは、乗員が閾値Lsよりも車両に対して接近しているか否かを判定する。距離判定部33eで現在距離Lnowが閾値Ls以下であると判定されると、プレ空調開始指示部33jがプレ空調の開始指示を送信する。
【0034】
プレ空調開始指示部33jは、プレ空調を開始する指示を無線通信部31から車両10に対して送信する。プレ空調開始指示部33jは、距離判定部33eまたは位置判定部33iの判定に基づいてプレ空調の開始を空調ECUに指示する。より具体的には、距離判定部33eにおいてLnowがLs以下であると判定された場合に空調指示を送信する。また、位置判定部33iで乗員が地点Pに到達したと判定された場合に空調指示を送信する。プレ空調開始指示部33jは、無線通信部31から空調指示を無線送信し、DCUを介して空調ECU14に空調指示を送信する。
【0035】
プレ空調時間判定部33fは、プレ空調を開始してから上限時間Tp2が経過したか否かを判定する。上限時間Tp2は、目標空調時間Tpよりも長い時間である。上限時間Tp2は、例えば、発進後の車両の燃費または電費の悪化を許容できるプレ空調時間の上限値である。上限時間Tp2は、例えば8分程度の時間が設定される。上限時間Tp2は、目標空調時間Tpを第1プレ空調確保時間とした場合の第2プレ空調確保時間である。
【0036】
プレ空調停止指示部33kは、プレ空調を停止する指示を無線通信部31から車両10に対して送信する。プレ空調停止指示部33kは、プレ空調の実行中に距離判定部33eにおいて現在距離Lnowが閾値Lsを上回ると判定された場合に、プレ空調の停止を空調ECUに指示する。プレ空調停止指示部33kは、プレ空調時間判定部33fにおいてプレ空調を開始してから上限時間Tp2経過した判定された場合に、プレ空調の停止を空調ECU14に指示する。
【0037】
経路推定部33gは、乗員が車両に向かう際に通過する経路を推定する。経路推定部33gは、例えばデータ格納部に記憶された地図情報と、乗員の位置情報および車両の位置情報に基づいて、乗員から車両へと向かう際に通過する経路を探索する。このとき経路が複数探索されてどの経路を乗員が通過するか推定できない場合は、経路の推定が不可能であると判断してもよい。
【0038】
または、経路推定部33gは、乗員が車両に到達するまでに通過した過去の経路情報に基づいて経路を推定してもよい。例えば、データ格納部に記憶された歩行経路情報を取得して、記憶された歩行経路情報を乗員が通過する歩行経路として利用してもよい。例えば普段乗員が駐車した車両10に向かって移動する場合に通る歩行経路と実質的に同一の経路を通って移動しているとみなせる場合には、この記憶された歩行経路が乗員の通過する経路であると推定できる。乗員の過去の歩行経路に基づいて経路を推定することで、地図情報に含まれない場所での経路、例えば乗員の自宅の敷地内での経路等も推定することができる。この場合経路推定部33gは、普段の乗員の乗車前の行動パターンと実質的に一致するような行動パターンが観測されていない間、乗員が車両に到達するまでの経路を推定できないと判断してもよい。
【0039】
または、経路推定部33gは、乗員以外の人々の歩行経路情報から経路を推定してもよい。具体的には、例えば駐車場と店舗との間の経路の推定において、駐車場と店舗との間における人々の歩行経路情報をデータ格納部32に蓄積し、蓄積したデータに基づいて乗員の移動経路を推定してもよい。
【0040】
地点設定部33hは、経路推定部33gにて推定された推定経路の情報を用いて、プレ空調を開始する地点を設定する。地点設定部33hでは、乗員が通過してから車両に到達するまでの時間が目標空調時間Tpとなる地点Pを設定する。すなわち、地点Pでプレ空調を開始すれば、乗員が車両に到達するまでの間少なくとも目標空調時間Tpはプレ空調が可能となるように、地点Pを設定する。
【0041】
例えば経路推定部33gで地図情報に基づいて地点Pを設定する場合には、推定経路を移動する乗員の移動速度と、推定経路上における乗員の移動速度を変化させる要因となる構造物の情報とに基づいて地点Pを設定する。より具体的には、例えば信号機のある交差点を横断する際にかかる時間、交通量の多い道路を横断する際にかかる時間等が、推定経路を移動する乗員の移動速度を遅くする要素として考えられる。したがってこれらの要素が及ぼす影響を考慮に入れることで、地点Pをより正確に設定できる。ここでの乗員の移動速度は、人の平均歩行速度とすることができる。または、乗員の平均歩行速度を携帯端末20等によって収集する乗員の歩行データから算出してもよい。
【0042】
位置判定部33iは、地点設定部33hで設定した地点Pに乗員が到達したか否かを判定する。位置判定部33iは、例えば携帯端末からの測位情報を乗員の位置情報として取得し、この位置情報と地図情報とを照らし合わせることで、地点Pに乗員が到達したか否かを判定できる。位置判定部33iで地点Pに乗員に到達したと判定された場合には、プレ空調開始指示部33jが開始指示を車両に対して送信する。
【0043】
次に、空調制御システム1が実行する処理の一例について
図3のフローチャートを参照しながら説明する。空調制御システム1は、
図3のフローチャートの処理を、携帯端末20の電源が投入されている場合に実行する。
【0044】
まず空調制御システム1は、ステップS1で乗員が車両に向かう際に通過する経路の推定が可能か否かを判定する。ステップS1で経路の推定が不可能と判定されると、ステップS10へと進む。
【0045】
ステップS10では、乗員と車両との距離Lを算出する。距離Lを算出すると、距離Lを制御部33に一旦記憶してステップS20へと進む。ステップS20では、ステップS10で距離Lを算出したt秒後の時点での乗員と車両との直線距離Lnowを算出する。ステップS10およびステップS20での処理が、距離算出部で実行される処理に相当する。
【0046】
ステップS20の処理の後にステップS30へと進み、直線距離LnowおよびLより変化量Sを算出する。ステップS20の処理が変化量算出部33cの処理に相当する。ステップS30の後にステップS40へと進み、変化量Sと目標空調時間Tpに基づいて閾値Lsを算出する。ステップS40の処理が閾値決定部33dの処理に相当する。
【0047】
その後ステップS50へと進み、直線距離Lnowが閾値Ls以下であるか否かを判定する。ステップS50での処理が距離判定部33eに相当する。ステップS50で、直線距離Lnowが閾値Ls以下であると判定された場合には、ステップS60へと進み、プレ空調を開始する。ステップS60での処理が、プレ空調開始指示部33jの処理に相当する。また、ステップS60の時点ですでにプレ空調が開始されていた場合には、プレ空調の実行を維持したままステップS70へと進む。一方で、ステップS50にて直線距離Lnowが閾値Lsよりも大きいと判定された場合には、ステップS80へと進みプレ空調を停止させる。ステップS80の処理が、プレ空調停止指示部33kの処理に相当する。ステップS80の処理を終了すると、ステップS90へと進む。
【0048】
ステップS60の後にステップS70へと進む。ステップS70では、プレ空調を開始してから上限時間Tp2が経過したか否かを判定する。ステップS70の処理がプレ空調時間判定部33fに相当する。ステップS70で上限時間Tp2が経過していないと判定されると、ステップS90へと進む。ステップS70で上限時間Tp2が経過したと判定された場合には、プレ空調をそれ以上続行すると燃費の悪化が許容できなくなるため、ステップS80へと進みプレ空調を停止させる。
【0049】
ステップS90では、乗員が車両に乗車したか否かを判定する。ここでの乗車は、乗員が車両を発進させるために車両に乗り込むことを意味する。乗員が車両に乗車したか否かは、例えばエンジンを始動させるためのイグニッションスイッチや、電気自動車の走行駆動モータを駆動させるための電源スイッチがオン操作されたか否かで判定する。または、乗員が車両のドアを開けたか否かで判定してもよい。または、乗員が運転席に着座したか否かで判定してもよい。ステップS90で乗車していないと判定された場合には、再びステップS10へと戻る。すなわち、ステップS10からステップS80までの処理を、乗員が車両に乗車するまで繰り返す。この繰り返し処理により、変化量Sおよび閾値Lsを逐次算出する。したがって、変化量Sに変動があると、それに伴い閾値Lsも変動する。ステップS90で乗車したと判定された場合には、
図3のフローチャートの処理を終了し、プレ空調から乗車中の空調へと移行するか、車室内の空調自体を終了する。
【0050】
一方、ステップS1で経路の推定が可能であると判定されると、ステップS100へと進む。ステップS100では、乗員が車両に向かう際に通過する経路の推定を実行する。ステップS1、ステップS100での処理が、経路推定部33gにおける処理に相当する。経路の推定を実行するとステップS110へと進み、プレ空調を開始する地点Pを設定する。ステップS110の処理が、地点設定部33hの処理に相当する。
【0051】
ステップS110の後にステップS120へと進み、設定した地点Pに乗員が到達したか否かを判定する。ステップS120での処理が、位置判定部33iでの処理に相当する。ステップS120で地点Pに乗員が到達したと判定された場合には、ステップS130へと進み車両用空調装置にプレ空調を開始させる。ステップS130での処理がプレ空調開始指示部33jの処理に相当する。また、ステップS130の時点ですでにプレ空調が開始されていた場合には、プレ空調の実行を維持したままステップS140へと進む。
【0052】
ステップS140では、ステップS70と同様にプレ空調を開始してから上限時間Tp2が経過したか否かを判定する。ステップS140の処理もプレ空調時間判定部33fの処理に相当する。ステップS140で上限時間Tp2が経過していないと判定されると、ステップS160へと進む。ステップS140で上限時間Tp2が経過したと判定された場合には、プレ空調をそれ以上続行すると燃費の悪化が許容できなくなるため、ステップS150へと進みプレ空調を停止させる。
【0053】
一方で、ステップS120にて地点Pに到達していないと判定された場合には、ステップS150へと進みプレ空調を停止させる。ステップS150の処理が、プレ空調停止指示部33kの処理に相当する。プレ空調を停止させると、ステップS160へと進む。また、ステップS150の時点でプレ空調を実行していない場合は、プレ空調が停止された状態を継続してステップS160へと進む。
【0054】
ステップS160では、ステップS90と同様に乗員が車両に乗車したか否かを判定する。ステップS160で乗車していないと判定された場合には、再びステップS120へと戻る。すなわち、ステップS120からステップS150の処理を、乗員が車両に乗車するまで繰り返す。ステップS160で乗車したと判定された場合には、
図3のフローチャートの処理を終了し、プレ空調から乗車中の空調へと移行するか、車室内の空調自体を終了する。
【0055】
次に
図4、
図5のグラフを参照して具体的な状況における空調制御システム1の作動を説明する。
図4、
図5の上段のグラフは、時間の経過に伴う距離Lnowの変化の一例を示している。
図4、
図5の下段のグラフは、時間の経過に伴う車両用空調装置のコンプレッサの作動状況の変化を示している。なお
図4、
図5のグラフではコンプレッサの作動状況のみを示しているが、ブロワ等の空調を実行する際に作動する他の空調機能部品も、コンプレッサと同様に作動、停止を行う。
【0056】
まず
図4のグラフについて説明する。
図4上段のグラフは、乗員が車両10に向かって移動する際に、直線距離Lnowの変化速度、すなわち変化量Sが、時間t2で小さくなっている。この状況は、例えば上り坂や混雑した道を通るなどにより乗員の歩行速度が遅くなることで起こりうる。この場合、t2以降で変化量Sが小さくなるため閾値Lsも同様にt2以降で小さくなる。例えばt1にて現在距離Lnowが閾値Lsに到達すると、ステップS50からステップS60へと進むので、プレ空調が開始される。しかし、t2経過すると閾値Lsが小さくなる。t2の時点での現在距離Lnowよりも閾値Lsが小さくなった場合、ステップS50からステップS80へと進むことになるので、プレ空調が停止される。その後t3経過した際に現在距離Lnowが閾値Lsに到達すると、この時点でステップS50からステップS60へと進むので、プレ空調が再開される。
【0057】
以上により、空調制御システム1は、t2を境に変化量Sが小さくなったこと、すなわち車両10への乗員の到着が遅くなったことに対応して、プレ空調開始のタイミングをt1からt3に遅らせることができる。さらに、t1でプレ空調を開始していた場合であっても、t2にてプレ空調を一旦停止することができるので、t2からt3の間のプレ空調に使用する動力を節約できる。
【0058】
次に
図5のグラフについて説明する。
図5上段のグラフは、乗員が車両10に向かって移動する際に、直線距離Lnowの変化速度、すなわち変化量Sが、時間t4で大きくなっている。この状況は、例えばt4を境に乗員の移動経路が変化したときに起こりうる。すなわち、例えば
図6に示すように、t0からt4までは車両10には直接向かわない直線経路を移動していた乗員が、t4以降は車両と自身とを結ぶ最短の直線経路を移動して車両に接近するような場合に、このような状況が起こりうる。または、例えば下り坂や比較的人通りの少ない道を通るなどにより乗員の歩行速度が速くなることでも、
図5のグラフに示すような状況が起こりうる。この場合、t4以降で変化量Sが大きくなるため閾値Lsも同様にt4以降で大きくなる。例えばt4にて直線距離Lnowよりもが閾値Ls大きくなった場合、t4の時点でステップS50からステップS60へと進むので、プレ空調が開始される。
【0059】
以上により、空調制御システム1は、t4を境に変化量Sが大きくなったこと、すなわち車両10への乗員の到着が早くなったことに対応して、プレ空調開始のタイミングをt5からt4に早めることができる。さらに、t4の時点でLnowよりもLsの方が大きい場合、すなわちt4の時点でプレ空調の開始タイミングが過ぎていた場合でも、極力目標空調時間Tpに近い時間だけプレ空調ができるように即時にプレ空調を開始することができる。
【0060】
次に第1実施形態の空調制御システム1がもたらす作用効果について説明する。第1実施形態の空調制御システムは、車両用空調装置15に対して乗車前の車室内を空調するプレ空調を実行させることが可能な空調ECU14と、車両10と乗員との間の直線距離Lnowを逐次算出する距離算出部33bとを備える。空調制御システム1は、直線距離Lnowの単位時間当たりの変化量Sを逐次算出する変化量算出部33cと、変化量Sおよび目標空調時間Tpとに基づいてプレ空調を開始するタイミングを直線距離の閾値Lsとして決定する閾値決定部33dとを備える。
【0061】
これによれば、空調制御システム1は、逐次算出された車両と乗員との間の直線距離の単位時間当たりの変化量と目標空調時間Tpとに基づいてプレ空調の開始タイミングを決定する。すなわち、乗員が車両に到達するまでに通る経路によらず、乗員と車両との間の直線距離の変化速度に基づいて、目標空調時間Tpを確保できるプレ空調の開始タイミングを決定できる。以上により、より正確なタイミングでプレ空調を開始可能な空調制御システム1を提供することができる。
【0062】
閾値決定部33dは、逐次算出される変化量に基づいて閾値Lsを逐次補正する。これによれば、実際に乗員が車両10へと向かって移動する際の変化量Sの変化に追従して閾値Lsを逐次補正することが可能である。すなわち、実際の乗員の移動速度や移動経路等の移動状況に対応して閾値Lsを補正できる。したがって、プレ空調の開始タイミングの正確性をより向上させることができる。
【0063】
閾値決定部33dにしたがってプレ空調を実行した後で閾値Lsが現在距離Lnowよりも大きい値に補正された場合に、プレ空調を停止させるプレ空調停止指示部33kを備える。これによれば、一旦プレ空調を開始した後でも、閾値LsがLnowよりも大きい値に補正された場合に、プレ空調を停止することができる。これにより、プレ空調を開始した状態でプレ空調の開始タイミングが現在時点よりも遅くなった場合にプレ空調を停止し、プレ空調に使用する動力を低減することができる。
【0064】
空調制御システム1は目標空調時間Tpよりも長い時間である上限時間Tp2が経過したか否かを判定するプレ空調時間判定部33fをさらに備える。プレ空調停止指示部33kは、プレ空調時間判定部33fにおいてプレ空調を開始して上限時間Tp2経過したと判定された場合、プレ空調の停止指示を行う。これによれば、プレ空調を開始して上限時間Tp2経過すると、プレ空調を停止することができる。したがって、プレ空調を上限時間Tp2よりも長く実施して、車両10のバッテリの残量が低下することを抑制することができる。
【0065】
空調制御システム1は、空調ECU14および携帯端末20と通信を行うサーバ装置30を備える。サーバ装置30は、距離算出部33bと、変化量算出部33cと、閾値決定部33dとを備える。これによれば、空調制御システム1は、距離算出部33b、変化量算出部33c、閾値決定部33dの機能を、サーバ装置30で実現することができる。したがって、車載ECUおよび携帯端末20がこれらの機能を有する必要がなく、車載ECUおよび携帯端末20における処理コストを低減できる。
【0066】
空調制御システム1は、乗員が車両10に到達するまでに通過する経路を推定する経路推定部33gと、経路推定部33gが推定した経路と目標空調時間Tpとに基づいてプレ空調の開始タイミングを決定する地点設定部33hと、を備える。これによれば、空調制御システム1は、実際に乗員が車両に到達するまでに通る経路を推定し、この推定された経路に基づいてプレ空調の開始タイミングを決定できる。したがって、より正確なタイミングでプレ空調を開始可能な空調制御システム1を提供することができる。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態における空調制御システムの変形例について説明する。
図7において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0068】
第2実施形態の空調制御システム1は、外部からの充電が可能な電気自動車やプラグインハイブリッド車等に適用される。第2実施形態の空調制御システム1は、ステップS50で現在距離Lnowが閾値Lsを上回ると判定されると、ステップS55へと進む。
【0069】
ステップS55では、既にプレ空調が実行中であり、かつ車両が外部から充電されているか否かを判定する。既にプレ空調が実行中であり、かつ車両が外部から充電されていると判定されると、ステップS60へと進む。これによって、例えば閾値Lsが現在距離Lnowよりも大きくなるように変動した場合であっても、乗員が車両に接近しているとして、プレ空調を中断することなく継続できる。したがって、車室内のプレ空調を十分に行うことができる。一方でステップS55にて否判定となった場合は、ステップS80へと進む。
【0070】
また、第2実施形態の空調制御システム1はステップS60の後にステップS65へと進む。ステップS65では、車両10が充電中か否かを判定する。充電中であると判定されると、ステップS70の処理を行わずにステップS90へと進む。車両10が充電中であればプレ空調の実行時間がTp2を超えてもプレ空調の実行によるバッテリの残量低下を外部からの充電により補うことができる。すなわち、車両10が充電中であればTp2を超えた時間プレ空調を行っても、走行時の燃費または電費が悪化することを回避できる。この場合に、ステップS70の処理を行わないことで、プレ空調の開始からTp2経過してもプレ空調を停止してしまうことを回避でき、乗員の乗車まで車室内をプレ空調により快適な状態に保つことができる。一方でステップS65にて車両10が充電中でないと判定された場合には、ステップS70に進んでプレ空調の開始からTp2経過したか否かを確実に判定する。
【0071】
さらに第2実施形態の空調制御システム1は、ステップS130の後にステップS135へと進む。ステップS135は、ステップS65と同様の処理であり、同様の作用効果を有するため説明は省略する。
【0072】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0073】
上述の実施形態において、距離算出部、変化量算出部33c、閾値決定部33d、距離判定部33eは、サーバ装置30の制御部によって実行されるとした。これに代えて、DCU13、空調ECU14等の車載ECUがこれらの機能を有する構成であってもよい。また、経路推定部33g、地点設定部33h、プレ空調時間判定部33fについても車載ECUが有する構成であってもよい。上述の機能を車載ECUが有することで、それぞれの機能をサーバ装置30を介することなく車両10と携帯端末20が直接通信して実行することができる。
【0074】
上述の実施形態において、乗員と車両との間の直線距離は、測位衛星が送信する測位信号に基づいて携帯端末20と車両10のそれぞれの位置情報を取得し、取得された位置情報から算出するとした。これに代えて、携帯端末と車両との間で実施される近距離通信によって直線距離を算出してもよい。近距離通信とは、例えばBluetooth(登録商標)や、Wi−Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の近距離無線通信規格に準拠した通信である。
【0075】
上述の実施形態において、閾値決定部33dは、閾値Lsを変化量Sおよび目標空調時間Tpに基づいて決定するとした。これに代えて、目標空調時間Tp以外の時間をプレ空調確保時間として閾値Lsの決定に用いてもよい。例えば、車両10のバッテリの残量から算出されるプレ空調可能時間をプレ空調確保時間としてもよい。または、乗員が予め携帯端末20等を介して設定した所望のプレ空調実行時間をプレ空調確保時間としてもよい。プレ空調確保時間は、空調制御システム1が演算により適宜変更可能な時間でもよく、固定値として予め設定された時間でもよい。