(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお本発明は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0017】
[第1実施形態]
図1〜
図3に、本発明の第1実施形態に係る排気浄化装置の全体構造を示す。
図1は縦断側面図(
図2のI−I断面図)、
図2は縦断後面図(
図1のII−II断面図)、
図3は縦断前面図(
図1のIII−III断面図)である。便宜上、直交三軸の各方向、すなわち前後左右上下の各方向を図示の如く定める。但しこれら各方向が図示の配置に関して説明の便宜上定められたものに過ぎない点に留意されたい。
【0018】
排気浄化装置が適用される内燃機関(図示せず、エンジンともいう)は、車両に搭載されるディーゼルエンジンである。車両(図示せず)はトラック等の大型車両である。但し車両および内燃機関の種類、用途等に限定はなく、例えば車両は乗用車等の小型車両であってもよいし、エンジンはガソリンエンジンであってもよい。
【0019】
図示するように、排気浄化装置1は、後述する複数の部材(触媒等)をコンパクトに纏めてキャニング(canning)状態で収容する密閉箱型のケーシング2を備える。本実施形態のケーシング2は直方体形状とされる。ケーシング2の後端壁2Rには、ケーシング2内にエンジンの排気ガスGを導入するための装置入口管3と、ケーシング2内から排気ガスGを排出するための装置出口管4とが取り付けられている。但し装置入口管3と装置出口管4の設置位置は任意に設定できる。
【0020】
ケーシング2内では、金属製(本実施形態ではステンレス製)の複数の管および板が溶接等で取り付けられることにより、適宜空間が仕切られ、これにより排気ガスGが流される排気通路5が画成されている。ここで「排気通路」とは、排気ガスGが流される任意の空間をいい、その形状は任意である。管状であってもよいしチャンバ状であってもよい。排気通路5は排気ガスGを前後方向に複数回折り返すように構成されている。
【0021】
ケーシング2内には、ケーシング2内を前後に仕切る前側隔壁板6と後側隔壁板7とが設けられている。前側隔壁板6とケーシング2の前端壁2Fとの間に前端チャンバ8Fが画成されている。後側隔壁板7とケーシング2の後端壁2Rとの間に後端チャンバ8Rが画成されている。前側隔壁板6と後側隔壁板7の間に中間チャンバ8Mが画成されている。
【0022】
以下、ケーシング2内における排気ガスGのメインの流れを概略説明する。このメインの流れは
図1〜
図3に矢示する通りである。
【0023】
装置入口管3内を前方に流れてきた排気ガスは、そのまま、ケーシング2内左下に配置され前後方向に延びる第1通路9内を直進し、このときに第1酸化触媒21とフィルタ22を順に通過する。その後排気ガスは、前端チャンバ8F内に配置された送り管19P内の送り通路19を通じて、ケーシング2内中心部に配置された混合通路としての第2通路10内に入る。このときに排気ガスは前向きから後向きへ折り返される。そして排気ガスは、第2通路10内を前方から後方に流れた後、後端チャンバ8R内に入り、ここで
図2に示すように二方向に分岐して、ケーシング2内右下に配置された第3通路11と、ケーシング2内左上に配置された第4通路12とに入る。このときに排気ガスは後向きから前向きへ折り返される。
【0024】
排気ガスは、第3および第4通路11,12内を後方から前方に流れ、このときにNOx触媒23と第2酸化触媒24を順に通過する。その後排気ガスは、前端チャンバ8F内に入り、
図3に示すように、ケーシング2内右上に配置された第5通路13へと集約される。このときに排気ガスは前向きから後向きへ折り返される。その後排気ガスは、第5通路13内を前方から後方に流れ、そのまま装置出口管4へと直進して排出される。
【0025】
このように排気通路5は、第1通路9、第2通路10、第3通路11、第4通路12、第5通路13、送り通路19、前端チャンバ8Fおよび後端チャンバ8Rを含む。
【0026】
第2通路10の上流端の位置には、還元剤としての尿素水を噴射する噴射弁14が設けられている。噴射弁10は、第2通路10と同軸に後向きに配置され、第2通路10の軸方向後方に向かって尿素水を噴霧状に噴射する。
【0027】
噴射弁14は、尿素水の供給対象物である選択還元型NOx触媒23の上流側に配置される。そして噴射弁14の下流側かつNOx触媒23の上流側に位置する第2通路10は、噴射弁10から噴射された尿素水を排気ガスと混合させる混合通路としての役割を果たす。
【0028】
排気通路5には4種類の後処理部材、すなわち第1酸化触媒21、フィルタ22、選択還元型NOx触媒23および第2酸化触媒24が、上流側から順に直列に設けられている。
【0029】
第1酸化触媒21は、排気ガス中の未燃成分(炭化水素HCおよび一酸化炭素CO)を酸化して浄化すると共に、このときの反応熱で排気ガスを加熱昇温する。
【0030】
フィルタ22は、所謂ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)または触媒付煤フィルタ(CSF: Caterized Soot Filter)と称されるもので、触媒を担持した連続再生式フィルタである。フィルタ22は、ウォールフロー型とされ、排気中に含まれる粒子状物質(以下PM: Particulate Matterという)を捕集すると共に、捕集したPMを触媒反応により連続的に酸化して燃焼除去する。
【0031】
選択還元型NOx触媒(SCR: Selective Catalytic Reduction)23は、尿素水を加水分解して得られるアンモニアNH
3とNOxを反応させ、排気中のNOxを窒素N
2に還元する。
【0032】
第2酸化触媒24は、アンモニアスリップ酸化触媒とも称され、NOx触媒23から排出された(スリップした)余剰アンモニアを酸化除去する。
【0033】
本実施形態において、NOx触媒23および第2酸化触媒24の組み合わせは、第3通路11と第4通路12に互いに並列して計二つ設けられる。また
図1に示すように、各組み合わせにおいて、NOx触媒23は上流側担体23Aの全体と、下流側担体23Bの上流側部分とに形成され、第2酸化触媒24は下流側担体23Bの下流側部分にゾーンコートにより形成されている。但し両触媒の担体を個別にしても構わない。
【0034】
第1〜第5通路9〜13および送り通路19は、第1〜第5通路管9P〜13Pおよび送り通路管19Pにより画成されている。本実施形態において、第1〜第4通路9〜12は直線状かつ断面円形、送り通路19は直線状かつ断面長円形とされている。また第5通路13は例えば
図2に示すように、ケーシング2の右上コーナー部に直線状に形成されている。各通路に対応する各管も同じ形状である。しかしながら各通路および各管の形状は適宜変更可能である。
【0035】
排気流れ方向に沿って、第1通路管9Pは後端壁2Rから前端壁2Fまで延び、第2通路管10Pは前端壁2Fから後側隔壁板7まで延び、第3通路管11Pおよび第4通路管12Pは後側隔壁板7から前側隔壁板6まで延び、第5通路管13Pは前側隔壁板6から後端壁2Rまで延びている。従って、前端チャンバ8F内は、第1通路9の部分と、第2通路10の部分と、送り通路19の部分と、それ以外の部分とに仕切られる。また後端チャンバ8R内は、第1通路9の部分と、第5通路13の部分と、それ以外の部分とに仕切られる。
【0036】
次に、
図4を参照して、本実施形態の主な特徴である第2通路10の内部の構成を説明する。
【0037】
前述したように、第2通路10の上流端には後方に向かって尿素水Uを噴射する噴射弁14が設けられている。そして前端チャンバ8F内に位置する第2通路10の左下側面部には送り通路19が接続され、ここから第2通路10内に排気ガスGが導入される。
【0038】
尿素水噴霧と排気ガスGは第2通路10内を後方下流側に進むにつれて次第に混合されていく。本実施形態ではこうした混合を促進するため、折り返し通路30が第2通路10の内部に設けられている。折り返し通路30は、図中矢示するように、排気ガスGの流れを順流方向から逆流方向に折り返し、その後順流方向に折り返すように構成されている。本実施形態において、順流方向とは前方から後方に向かう流れの向きをいい、逆流方向とは後方から前方に向かう流れの向きをいう。
【0039】
具体的には折り返し通路30は、閉鎖部材31とカバー部材32により画成されている。これらは第2通路10の中心軸Cと同軸に配置される。
【0040】
閉鎖部材31は、第2通路10内の周縁部を閉じると共に、上流側(前側)に向かって突出する連通管33をその中心部に有する。連通管33は、閉鎖部材31の上流側と下流側を連通させるためのものである。本実施形態において連通管33は閉鎖部材31に一体に形成されているが、別体で形成して溶接等により固着しても構わない。閉鎖部材31は全体として、板状かつリング状の部材とされ、下流側(後側)に向かって凸となる湾曲断面形状、具体的には半円形の断面形状を有する。これにより閉鎖部材31は、1回目の折り返しを行う排気ガスGのアウトコーナー側をスムーズに案内することができる。
【0041】
カバー部材32は、連通管33を上流側から隙間を隔てて覆う。カバー部材32は、先端側が上流側に向けられた先細り形状の部分を有する。ここで「先細り形状」とは、基端側から先端側に向かって延びると共に、先端側に向かうにつれ徐々に縮径する形状をいう。先細り形状には、錐体、錘台、半球状、ドーム状等の各形状が含まれる。錐体形状には、円錐、四角錐、多角錘等の各形状が含まれる。錘台形状には、円錐台、四角錐台、多角錘台等の各形状が含まれる。先細り形状については、これら各形状から任意の形状を採用できるが、本実施形態では加工の容易性等を考慮して円錐形状を採用している。
【0042】
カバー部材32は、短い直管状の下流端部(後端部)32Aを除いたほぼ全体部分が円錐形状とされている。カバー部材32は板材により形成されている。カバー部材32の最大外径は、第2通路管10Pの内径より小さく、連通管33の外径より大きくされる。なお本実施形態ではカバー部材32の最大外径が下流端部32Aにより規定される。下流端部32Aは、連通管33の外周部を半径方向外側から隙間を隔てて覆う。また連通管33の前方にもカバー部材32との間に隙間が形成される。カバー部材32の裏側には、中心部が連通管33内に向かって突出された湾曲凸板34が溶接等により一体的に固着されている。カバー部材32は図示しない複数の支柱により第2通路10内に同軸状態で保持される。
【0043】
本実施形態において、折り返し通路30は第2通路10の出口部に設けられている。そして連通管33は後端チャンバ8R内に開口している。
【0044】
図示するように、折り返し通路30において排気ガスGが1回目の折り返しをなすとき、排気ガスGのアウトコーナー側は閉鎖部材31により案内され、排気ガスGのインコーナー側はカバー部材32の下流端部32Aにより案内される。そして排気ガスGが2回目の折り返しをなすとき、排気ガスGのアウトコーナー側はカバー部材32および湾曲凸板34により案内され、排気ガスGのインコーナー側は連通管33の入口端により案内される。
【0045】
こうして排気ガスGは、折り返し通路30を通過するとき2回折り返され、第2通路10内の最外周部から内周側に向かって1回折り返された後、さらに内周側に向かってもう1回折り返され、その後後端チャンバ8R内に直進する。
【0046】
本実施形態では、こうした折り返し通路30を第2通路10の内部に設けたので、第2通路10の限られた前後長範囲内で、実質的な通路長を拡大し、尿素水噴霧と排気ガスGの混合通路長を拡大できる。よって、噴射された尿素水と排気ガスの混合を確実に促進することが可能である。またこれにより、排気ガスによる尿素水の加熱を促進し、尿素水の加水分解を促進し、アンモニア生成効率を高め、NOx触媒を高効率で作動させることが可能となる。そして排気浄化性能を高めることができる。
【0047】
また、排気ガスGが1回目の折り返しをなすとき、排気ガスGのアウトコーナー側が湾曲された閉鎖部材31により案内されるので、折り返しをスムーズになすことができる。同様に、排気ガスGが2回目の折り返しをなすとき、排気ガスGのアウトコーナー側が、円錐形のカバー部材32の裏側(後側)と、湾曲状の湾曲凸板34とにより案内されるので、折り返しをスムーズになすことができる。よって排気ガスGが折り返し通路30を通過するときの圧力損失を最小限に止めることができる。
【0048】
加えて、カバー部材32が先細り形状(本実施形態では円錐形状)とされているので、後方に向かう排気ガスGをスムーズに外周側に案内することができる。そしてカバー部材32は、高温の排気ガス中に常時曝されているので、排気ガスの熱を蓄熱する蓄熱体としても機能する。この蓄熱した高温のカバー部材32に尿素水(または尿素水と排気ガスの混合気)が当たったときに尿素水を加熱し、その加水分解を促進することができる。
【0049】
本実施形態では、円錐形カバー部材32の裏側の空間を利用して折り返し通路30を形成するので、空間の利用効率を高めることができる。
【0050】
また折り返し通路30を第2通路10の出口部に設け、カバー部材32を噴射弁14から最大限離間させたので、尿素水をカバー部材32の手前でできるだけ蒸発させてからカバー部材32に到達させることができる。よって、カバー部材32に尿素水の液滴が付着してカバー部材32の温度が低下し、その蓄熱効果が失われることを可能な限り抑制できる。
【0051】
本実施形態の排気浄化装置1は、密閉箱型のケーシング2内に複数回折り返す排気通路5を形成し、その排気通路5内に複数の後処理部材(触媒等)を配置したので、マフラー(消音器)としても機能する。よって別途マフラーを設けずに済み、製造コストを低減できる。
【0052】
なお、本実施形態の折り返し通路30はあくまで排気通路5の内部に形成されたものであって、排気通路5自体を折り返すことにより形成されたものではない。従って、第2通路10から後端チャンバ8Rを経て第3および第4通路11,12に入るときの折り返しは、本実施形態の折り返し通路30とは無関係である。
【0053】
本実施形態は次のような変形例も可能である。例えば必要に応じて折り返し通路30を複数設けることも可能である。上記の閉鎖部材31は連通管33を含め、全体として湾曲断面形状であったが、角張った断面形状としてもよい。湾曲凸板34は省略してもよい。但し湾曲凸板34があると、カバー部材32の円錐先端裏側まで排気ガスが浸入するのを防止し、より早いタイミングでスムーズに排気ガスを折り返すことができるので、好ましい。連通管33は、中心部に一つのみだけでなく、複数設けられてもよい。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお第1実施形態と同様の部分には図中同一符号を付して説明を割愛し、以下、第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0055】
図5に示すように、本実施形態は第2通路10付近の構成が第1実施形態と主に相違する。すなわち、第2通路10は、その中心軸Cを基準として、半径方向内側に位置する内側第2通路41と、半径方向外側に位置する外側第2通路42とを含む。外側第2通路42は、内側第2通路41の半径方向外側に隣接して位置され、内側第2通路41を囲繞し、内側第2通路41の出口部から排出された排気ガスを、内側第2通路41内の流れ方向とは逆方向に流す。折り返し通路30は内側第2通路41内に配置される。
【0056】
内側第2通路41と外側第2通路42は中心軸Cと同軸に配置される。内側第2通路41と外側第2通路42はそれぞれ内側第2通路管41Pと外側第2通路管42Pにより画成される。よってこれら内側および外側第2通路管41P,42Pは同軸の二重管である。外側第2通路管42Pの下流端(後端)は、前述の湾曲凸板34に類似の湾曲凸板43により閉止される。湾曲凸板43は湾曲凸板34と前後対称的に配置される。
【0057】
折り返し通路30は、内側第2通路41の出口部付近に配置され、第1実施形態より若干上流側に配置されている。
【0058】
この構成によれば、送り通路19から内側第2通路41に導入された排気ガスGは、内側第2通路41内を後方に向かって流れ、折り返し通路30を通過し、内側第2通路41から排出される。その後、湾曲凸板43に当たって折り返され、外側第2通路42内に入り、外側第2通路42内を前方に向かって流れ、前端チャンバ8Fに排出される。排気ガスGが内側第2通路41から外側第2通路42に折り返されるとき、排気ガスGのアウトコーナー側が湾曲凸板43により案内されるので、折り返しをスムーズになすことができる。
【0059】
本実施形態では、内側第2通路41の半径方向外側に外側第2通路42を二重管状に設けたので、第2通路10の限られた前後長範囲内で、実質的な通路長をさらに拡大し、尿素水と排気ガスGの混合通路長をさらに拡大できる。よって尿素水と排気ガスの混合をさらに促進することが可能である。
【0060】
また、外側第2通路42を流れる排気ガスにより、内側第2通路41内の排気ガスおよび尿素水を保温もしくは加熱することができるので、尿素水の加水分解をさらに促進することができる。
【0061】
その余の作用効果は第1実施形態と同様である。
【0062】
ちなみに、本実施形態では第2通路10から排出される排気ガスGの向きが第1実施形態と逆となり、排気ガスGが前端チャンバ8F内に排出される。従ってケーシング2内の構成が
図6に示すように若干変更されている。
【0063】
すなわち、第3および第4通路11,12内におけるNOx触媒23と第2酸化触媒24の配置が前後逆とされる。第5通路13は省略され、その第5通路13のあった前側隔壁板6と後側隔壁板7の位置は閉じられている。
【0064】
外側第2通路42から前端チャンバ8F内に排出された排気ガスGは、二方向に分岐して、第3通路11と第4通路12に入る。このときに排気ガスは前向きから後向きへ折り返される。そして排気ガスは、第3および第4通路11,12内を前方から後方に流れ、このときにNOx触媒23と第2酸化触媒24を順に通過する。その後排気ガスは、後端チャンバ8R内に入り、後端チャンバ8R内で装置出口管4へと集約され、排出される。
【0065】
本実施形態においては、内側第2通路41および外側第2通路42がそれぞれ特許請求の範囲にいう内側排気通路および外側排気通路に相当する。
【0066】
変形例に関し、外側第2通路管42Pの下流端(後端)は単なる平板により閉止されていてもよい。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0068】
図7に示すように、本実施形態も、第2通路10付近の構成が第1実施形態と相違する。なお全体構成は
図1に示したものと同様である。
【0069】
第2通路10および第2通路管10Pは、第1実施形態のものよりも前後長が短くされ、それら後端部の位置が後側隔壁板7よりも前方に位置されている。そしてその代わりに、連通管33が後方に延長され、後側隔壁板7の位置まで延びている。
【0070】
閉鎖部材31は、第2通路管10Pの後端部を半径方向内側に向かって断面半円状に折曲することにより、第2通路管10Pに一体に形成されている。カバー部材32の直管状下流端部32Aが、複数の支柱51を介して第2通路管10Pに連結される。本実施形態では湾曲凸板34が省略されている。
【0071】
連通管33は、閉鎖部材31と別体で形成され、閉鎖部材31の中心開口部31Aに溶接等で固着される。連通管33の入口部33Bが中心開口部31Aに対し上流側(前側)に突出される。中心開口部31Aより下流側(後側)の位置では、連通管33にテーパ状拡径部33Aが形成され、排気ガスGの排出をスムーズに行えるようになっている。
【0072】
本実施形態では、カバー部材32とは別の蓄熱体、すなわち蓄熱部材52が追加して設けられている。蓄熱部材52は、噴射弁14の下流側かつ折り返し通路30の上流側の位置に設けられている。特に蓄熱部材52は、第2通路10内におけるカバー部材32よりも上流側の位置に設けられ、カバー部材32よりも噴射弁14に近い位置に設けられている。
【0073】
蓄熱部材52は、カバー部材32と同様、先端側が上流側に向けられた先細り形状の部分を有する。ここでは先細り形状として、加工の容易性等を考慮して円錐台形状を採用している。
【0074】
蓄熱部材52は、第2通路10の全断面に亘って設けられ、そのほぼ全体部分である円錐台形状の先細り部55を有すると共に、その先細り部55に複数の開口部53を有する。
【0075】
より詳細には、蓄熱部材52は板材により形成され、先細り部55は中心軸Cに同軸の円錐台形状とされる。その円錐台の底部をなす基端部54が、中心軸Cに垂直なリング状とされ、第2通路管10Pの内周面に溶接等で固着される。基端部54から上流側に向かって先細りとなる先細り部55には、
図8にも示すように、前後に長い略三角状もしくは台形状の開口部53が、全周に亘って複数形成される。これにより開口部53の間にはフィン56が形成される。本実施形態においてフィン56は先細り部55の周方向に沿っている。
【0076】
円錐台の頂部をなす蓄熱部材52の先端部57には、中心軸Cに垂直な先端板58が固設されている。先端板58は、先端部57を塞ぐ役割と、排気ガスの流れを前面で受けて蓄熱する役割と、噴射弁14から噴射された尿素水を当てて尿素水の加熱を促進する役割とを有する。
【0077】
他方、連通管33の入口部33Bは、その周方向に分割された複数の分割片33Cを有する。
図9および
図10にも示すように、これら複数の分割片33Cは、周方向に向かうにつれ、半径方向内側および外側へと交互に折曲されている。
【0078】
より具体的には、連通管33の入口部33Bの前端から所定距離後方までの間に、周方向等間隔で複数のスリットが設けられ、このスリットの位置を境に入口部33Bが半径方向内側および外側へと交互に折曲される。これにより、交互に向きの異なる複数の分割片33Cが形成される。
【0079】
この構成によれば、送り通路19から内側第2通路41に導入された排気ガスGは、内側第2通路41内を後方に向かって流れた後、蓄熱部材52に当たって複数の開口部53を通過し、蓄熱部材52の内側に入る。そしてカバー部材32に案内されつつ、折り返し通路30に至り、折り返し通路30を通過した後、連通管33を通じて後端チャンバ8Rに排出される。
【0080】
排気ガスが蓄熱部材52を通過する際、排気ガスの熱が蓄熱部材52に伝達され、蓄熱部材52が蓄熱される。この蓄熱部材52に、排気ガス中の尿素水が当たることにより、尿素水が加熱され、その加水分解が促進される。その後も同様に尿素水がカバー部材32に当たるので、これにより尿素水の加熱および加水分解がさらに促進される。
【0081】
排気ガスが蓄熱部材52を通過する際、排気ガスの流れが幾分乱れるので、排気ガスと尿素水の混合を促進できる。
【0082】
他方、排気ガスが連通管33の入口部33Bに入るとき、排気ガスは
図9に矢示するように、分割片33Cの間の隙間33Dからも入ってくる。連通管33の軸方向に素直に入ってくる流れと、これとは別方向から隙間33Dを通って入ってくる流れとが衝突するため、入口部33Bの内部に流れの乱れが生じ、これにより排気ガスと尿素水の混合を促進できる。
【0083】
その余の作用効果は第1実施形態と同様である。
【0084】
このように、本実施形態では蓄熱部材52を設けたので、尿素水および排気ガスの混合と尿素水の加熱とを促進し、尿素水の加水分解を促進することができる。また、連通管33の入口部33Bに複数の分割片33Cを設けたので、尿素水および排気ガスの混合を促進し、尿素水の加水分解を促進できる。
【0085】
蓄熱部材52を先細り形状(本実施形態では円錐台形状)にしたので、蓄熱部材52を設けたことによる排気抵抗の増加を可能な限り抑制できる。また分割片33Cは、連通管33の管端部を切り込んで折り曲げ加工するだけなので、加工が容易である。
【0086】
本実施形態の変形例に関し、例えば蓄熱部材52の開口部53の形状を変えてもよく、例えば円形や四角形等とすることができる。また連通管33に関しては、例えば複数の分割片33Cを別体で設けて溶接等で固着することが考えられる。本実施形態と第2実施形態を組み合わせ、本実施形態の第2通路10を二重管構造にしてもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々考えられる。
【0088】
(1)本発明に係る折り返し通路は、上述のような密閉箱型ケーシングを有する排気浄化装置のみならず、通常の排気浄化装置にも適用可能である。
【0089】
(2)触媒は、必ずしもNOx触媒でなくてもよく、選択還元型NOx触媒でなくてもよい。また触媒に供給する還元剤も、触媒の種類に応じて変更可能である。
【0090】
前述の各実施形態の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。