(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本件を実施するための形態を説明する。本実施形態で述べる吸収性物品は、着用時に着用者から排泄される尿や経血といった液体の水分(以下「排泄水分」という)を吸収体で吸収し保持する衛生用品である。この吸収性物品には、テープ型やパンツ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」)のほか、尿パッド、生理用ナプキン、パンティーライナーといったものなども含まれる。
以下の実施形態では、吸収性物品としてパンツ型の紙おむつを例示する。
【0011】
本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃と後身頃との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。
また、紙おむつが着用された状態(以下「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0012】
紙おむつにおける各構成の向きについては、例えば長手方向に沿うと表現する場合に、長手方向と平行なことだけでなく、ほぼ長手方向と平行なことも含むものとする。具体的には、長手方向に対する傾斜角度が30°未満で延在することを長手方向に沿うものとする。同様に、幅方向や厚み方向といった各方向に沿うと表現する場合についても、各方向に対する傾斜角度が30°未満で延在することを意味する。なお、本明細書において、例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0013】
[I.第一実施形態]
[1.吸収性物品(紙おむつ)]
以下、
図1及び
図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。
ここでは、紙おむつ1は幅方向の中心線CLを基準として対称に構成されている。この紙おむつ1は、長手方向Lに沿って前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cの三つの領域に大別される。
【0014】
〈シート類〉
紙おむつ1のシート類について、シート30、吸収体10、トップシート11、バックシート12、サイドシート13、カバーシート14及びギャザー15の順に説明する。
〔シート〕
シート30は、排泄水分をすぐに透過させず、その表面において排泄水分をある程度濡れ広がらせる材料(以下、液不透過性材料という)によって構成されるフィルム状の部材である。液不透過性の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。したがって、シート30は液不透過性を有する。
また、シート30に透湿性を付与することもできる。透湿性を有するシート30としては、例えば、0.1〜0.4μmの微細な孔が複数形成されたシート等を挙げることができる。このようなシート30は、液不透過性の材料中に無機充填剤を混錬してフィルム化した後に、延伸することで得られる。
【0015】
図1及び
図2に示すように、紙おむつ1において、シート30は、吸収体10に対して着用者の非肌面側に配置され、シート30の表面が吸収体10に対向する。
また、
図3及び
図4に示すように、シート30の表面には、第一凸部30a及び第二凸部30bが形成される。第一凸部30aは一方向に沿って延在し、シート30の厚み方向Tの肌面側に突出している。また、第二凸部30bは隣接する第一凸部30a同士の間に位置し、第一凸部30aと同様に一方向に沿って延在し、シート30の厚み方向Tの肌面側に突出している。そして、
図3に示すように、第一凸部30aの突出寸法H1は、第二凸部30bの突出寸法H2よりも大きい。
【0016】
言い換えれば、シート30の表面には、隣接する第一凸部30a同士により区切られた複数の第一溝30dが形成されている。また、シート30の表面には、隣接する第二凸部30b同士、又は、隣接する第一凸部30aと第二凸部30bとにより区切られた複数の第二溝30eが形成されている。そして、
図3に示すように、第一溝30dと第二溝30eとを含む溝状構造は、一方向に沿って延在し、且つ、当該一方向及び厚み方向に直交する方向に繰り返されて、シート30の表面全域にわたって並設されている。
なお、溝状構造は一方向に延在していれば、平面視において直線状であっても曲線状であってもよい。
【0017】
一般に、着用時の紙おむつ1に対する排泄水分の分布は、紙おむつ1の中央領域にピークを有する上方凸型の曲線で示される。つまり、主な排泄水分は、吸収体10の中央領域で吸収される。一度に多量の水分が吸収体10に排泄されると、吸収体10の端部領域では排泄水分を吸収することが可能であるにも関わらず、吸収体10が排泄水分を吸収しきる前に、排泄水分が吸収体10の非肌面側に漏出することがある。このような現象は、特に、吸収体10の中央領域で顕著に起こる。
なお、中央領域とは、例えば、股下部1Bに対応する領域であり、特に紙おむつ1の中心を含む領域又は中心近傍の領域をいう。また、端部領域とは、例えば、前身頃1A又は後身頃1Cに対応する領域であり、特に吸収体10の長手方向Lにおける端部を含む領域をいう。
【0018】
排泄水分が吸収体10の非肌面側に漏出した場合であっても、上述のように構成されたシート30を吸収体10の非肌面側に配置することで、排泄水分をシート30の表面全域に拡散し、吸収体10の非肌面側から、排泄水分を吸収体10に効率よく吸収させることができる。
つまり、吸収体10から漏出した排泄水分がシート30の表面に接触すると、排泄水分はシート30表面の溝状構造に沿って濡れ広がる。また、排泄水分は第一凸部30aを乗り越え、隣接する溝状構造にも濡れ広がり、並設された溝状構造に沿ってさらに濡れ広がる。したがって、シート30によれば、一方向に延在する溝状構造により、漏出した排泄水分をシート30の延在面に沿って拡散させることができる。シート30の表面に拡散した排泄水分は、吸収体10の非肌面側から吸収体10に効率よく吸収されるため、紙おむつ1から排泄水分の漏出が抑制される。
また、シート30と吸収体10との間には、複数の第一凸部30aと複数の第二凸部30bにより構成される溝状構造によって、空隙が形成されるため通気性に優れる。したがって、シート30の表面に拡散した排泄水分を揮発させることもでき、着用者の快適性が向上する。
【0019】
また、
図3に示すように、第一凸部30aの突出寸法H1は、第二凸部30bの突出寸法H2よりも大きければ特に限定されない。例えば、第一凸部30aの突出寸法H1は30〜150μmである。また、第二凸部30bの突出寸法H2は10〜50μmである。なお、複数形成される第一凸部30aの突出寸法H1は同じであっても、互いに異なっていてもよい。また、複数形成される第二凸部30bの突出寸法H2は同じであっても、互いに異なっていてもよい。
シート30の厚み寸法H3は特に限定されない。紙おむつ1の柔軟性や着用者のフィット性を向上させる観点からは、通常160μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下である。一方、シート30の耐久性を向上させる観点からは、通常35μm以上、好ましくは40μm以上である。
さらに、
図3に示すように、第一凸部30aの幅寸法W1、第二凸部30bの幅寸法W2、第一溝30dの幅寸法W3、及び、第二溝30eの幅寸法W4は特に限定されない。例えば、W1は10〜50μmであり、W2は10〜50μmであり、W3は150〜300μmであり、W4は10〜50μmである。なお、並設される第一凸部30aの幅寸法W1は同じであっても、互いに異なっていてもよい。幅寸法W2、W3、及びW4も同様である。
【0020】
上記のような構成を有するシート30では、第一凸部30a及び第二凸部30bが延在する方向(溝状構造の方向)について特に制限はないが、以下に示す態様が好ましい。
【0021】
シート30は、
図1及び
図2に示すように、第一凸部30a及び第二凸部30bの延在する方向が、紙おむつ1及びシート30の長手方向Lに沿った態様が好ましい。具体的には、第一凸部30aが延在する一方向は長手方向Lに一致しており、第二凸部30bの延在する方向も長手方向Lに一致している。
【0022】
第一凸部30a及び第二凸部30bを長手方向Lに沿って延在させると、吸収体10の非肌面側から漏出した排泄水分の濡れ広がりを長手方向Lに誘導することができる。一般に、吸収体10は長手方向Lに延在する。排泄水分の濡れ広がりを長手方向Lに誘導することで、排泄水分を、吸収体10の非肌面側全域に効率よく拡散し、吸収することができる。
また、シート30は、着用者の姿勢によっては、前身頃1Aや後身頃1Cに対応する部分が垂直方向上方(重力方向上方)等に向けて屈曲されうる。このような場合であっても、上記構成のシート30によれば、高さ寸法の異なる複数の凸部30a,30bに起因した毛細管現象により、溝状構造に沿って排泄水分を垂直方向上方(重力方向上方)等にも吸い上げ、拡散することができる。
したがって、上記構成のシート30によれば、着用者の姿勢に関わらず、排泄水分の拡散性に優れ、前身頃1Aや後身頃1Cに位置する吸収体10の吸収性を有効に利用できる。
なお、シート30の原反(例えば、裁断等の後加工をする前の状態のもの)の長手方向と、紙おむつ1の長手方向Lとは異なっていてもよい。
【0023】
また、
図4及び
図5に示すように、シート30は、第一凸部30a及び第二凸部30bが延在する方向の両端に堰状部30cを備えてもよい。堰状部30cにより、シート30の両端における凸部間の空隙が閉じられ、長手方向両端部において排泄水分が堰き止められるため、排泄水分の漏出を抑制できる。堰状部30cの形成方法は特に限定されない。例えば、シート30の製造時において、端部を切断する際の切断刃の応力によりフィルムを変形させて堰状部30cを形成する方法が挙げられる。また、切断の際に熱をかけ、シート30の端部を溶かして堰状部30cを形成することもできる。
【0024】
また、熱・超音波等により凸部を溶解し、シート30の両端以外の凸部間に堰状部を設けてもよい。さらに、予め堰状部が形成されるように第一凸部30a及び第二凸部30bを形成してもよい。シート30が両端以外の凸部間に堰状部を備えると、排泄水分が溝状構造に沿って濡れ広がりにくくなり、排泄水分は第一凸部30aを乗り越え、幅方向Wに濡れ広がる。したがって、堰状部の配置によって、長手方向L及び幅方向Wにバランスよく排泄水分を分散させることが可能になる。
【0025】
シート30の幅方向寸法及び長手方向寸法は、吸収体10と略同一である。吸収体10とシート30とは、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤によって、第一溝30d及び第二溝30eを潰さないように、全面又は一部が貼合(固定)される。
【0026】
なお、シート30の製造方法は特に限定されない。例えば、ナノインプリント法等の従来公知の手法により、液不透過性材料からならフィルムの表面に第一凸部30a及び第二凸部30bを形成してシート30を得る方法が挙げられる。
【0027】
〔吸収体〕
図1に示すように、紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cに亘って長手方向Lに延びる吸収体10(太破線で示す)が内蔵されている。ここでは、展開状態の平面視において、前身頃1Aおよび後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい砂時計形状の吸収体10を例示する。ただし、吸収体10の平面視形状は、上記したような砂時計形状に限らず、平面視で矩形(すなわち幅方向寸法が一定)であってもよいし、それぞれ円形の前身頃1A及び後身頃1Cを結ぶダンベル形状であってもよい。
【0028】
吸収体10は、排泄水分を吸収して保持する吸水性を備えたマット状の部材である。この吸収体10では、粉砕あるいは解繊されたパルプに高吸水性樹脂が混合された吸収マットがラップシートで被包(ラップ)されている。以下、パルプと高吸水性樹脂との混合物を「吸収性材料」という。
【0029】
また、本実施形態では、吸収体10に貫通孔10aを設けた態様が好ましい。以下において詳述する。
【0030】
(第一の態様)
図6〜9に示すように、第一の態様の吸収体10としては、吸収体10が複数の貫通孔10aを有する態様が挙げられる。つまり、第一の態様の吸収体10には、肌面側の面と非肌面側の面とを貫通する複数の孔(貫通孔10a)が形成されている。なお、貫通孔10aには、
図6〜9に示すような開口部の他、坪量を他の部位よりも低くして、排泄水分が透過しやすくなるようにした構成も含まれる。
【0031】
吸収体10が複数の貫通孔10aを有すると、排泄水分の量に関わらず、貫通孔10aを介して、排泄水分を吸収体10の肌面側から非肌面側に透過させることができる。吸収体10の非肌面側に透過した排泄水分は、シート30の溝状構造に沿って拡散し、吸収体10の非肌面側から吸収体10に効率よく吸収される。
また、排泄水分は貫通孔10aの内壁面においても吸収体10に吸収されるため、排泄水分の吸収性が向上する。
【0032】
貫通孔10aの形状としては、
図6に示す円形状や、
図7に示す矩形状のほか、多角形状、半円形状、砂時計形状及びレンズ形状といった種々の形状が挙げられる。なお、例えば、円形状には長円形状や楕円形状等の略円形状も含まれ、矩形状には略矩形状といった形状も含まれる。
【0033】
貫通孔10aの幅方向Wの長さ寸法は特に限定されない。吸収体10の吸収性、紙おむつ1の柔軟性及び着用者のフィット性のバランスに優れるという観点から、貫通孔10aの幅方向Wの長さ寸法は、吸収体10の幅方向Wの長さ寸法に対して通常20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。一方、紙おむつ1の製造時における吸収体10の取扱性を容易にする観点から、通常70%以下、好ましくは60%以下である。貫通孔10aの幅方向Wの長さ寸法が大きすぎると、吸収体10自体が破損しやすくなることがある。
なお、幅方向Wに複数の貫通孔10aが配置される場合には、貫通孔10aの幅方向Wの長さ寸法の合計が、吸収体10の幅方向Wの長さ寸法に対して上記範囲であればよい。
貫通孔10aの長手方向Lの長さ寸法は特に限定されない。吸収体10の吸収性、紙おむつ1の柔軟性及び着用者のフィット性のバランスに優れる観点から、貫通孔10aの長手方向Lの長さ寸法は、吸収体10の長手方向Lの長さ寸法に対して、通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。一方、紙おむつ1の製造時における吸収体10の取扱性を容易にする観点から、通常90%以下、好ましくは80%以下である。なお、長手方向Lに複数の貫通孔10aが配置される場合には、貫通孔10aの長手方向Lの長さ寸法の合計が、吸収体10の長手方向Lの長さ寸法に対して上記範囲であればよい。
【0034】
なお、上記態様の吸収体10における貫通孔10aの配置位置等は特に限定されない。
また、貫通孔10aの形成方法も特に限定されない。例えば、吸収体は吸収体型内に吸収性材料を集積して形成されることがある。このとき、吸収体型に貫通孔10aに対応する凸部を設けることで、貫通孔10aを有する吸収体10を簡便に得ることができる。
【0035】
(第二の態様)
図7に示すように、第二の態様の吸収体10としては、複数の貫通孔10aが、平面視したときの幅方向Wの中心を通る長手方向Lに沿った対称軸に対して、線対称に配置される態様が挙げられる。つまり、第二の態様の吸収体10では、複数の貫通孔10aが中心線CLに対して線対称に配置されている。
なお、
図7では、同形状の貫通孔10aが、長手方向Lに同間隔で配置された例を示すが、上述した線対称に配置されれば、貫通孔10aの形状や配置間隔は特に限定されない。
【0036】
吸収体10を第二の態様とすることで、貫通孔10aを介して吸収体10の非肌面側に透過する排泄水分の量が調整される。また、長手方向Lにおける吸収体10の肌面側からの排泄水分の吸収量も調整され、吸収体10の肌面側における排泄水分の幅方向Wへの拡散性が向上する。
したがって、排泄水分を吸収体10の肌面側及び非肌面側の全域で吸収できるようになる。
【0037】
(第三の態様)
図8に示すように、第三の態様の吸収体10としては、貫通孔10aは、平面視したときの長手方向Lの中心から長手方向Lに沿って、面積が次第に小さくなる態様が挙げられる。つまり、第三の態様では、吸収体10の長手方向Lの中心から、吸収体10の端部に向かうにつれて、貫通孔10aの面積が小さくなる。したがって、吸収体10の中央領域に配置される貫通孔10aの面積が最大であり、長手方向Lにおける前身頃1Aの端部又は後身頃1Cの端部において、貫通孔10aの面積が最小になる。
なお、
図8では、円形状の貫通孔10aを配置した例を示すが、貫通孔10aの形状は特に限定されない。
【0038】
主な排泄水分は、まず吸収体10の中央領域で吸収される。第三の態様の吸収体10によれば、吸収体10の肌面側で拡散し吸収される排泄水分の量と、貫通孔10aを介して吸収体10の非肌面側に透過し、吸収体10の非肌面側で拡散して吸収される排泄水分の量とのバランスが調整される。
したがって、排泄水分を吸収体10の肌面側及び非肌面側の全域でバランスよく吸収できる。
従来の紙おむつでは、股下部1Bにおける排泄水分の吸収量が多くなる結果、紙おむつが所定の着用位置(当初の着用状態の位置)からズレてしまうことがあった(特に重力方向下方へのズレ)。紙おむつが所定の着用位置からズレると、フィット感の低下や尿漏れ等の問題が発生し、紙おむつの諸機能が発揮しにくくなることがあった。本実施形態の紙おむつ1によれば、吸収体10の全域に排泄水分をバランスよく拡散できるため、上記問題を解消又は軽減することができる。
【0039】
また、吸収体10の中央領域に配置される貫通孔10aの面積と同様に、尿道口に対向する領域(尿道口対向領域)に配置される貫通孔10aの面積を比較的大きくしてもよい。つまり、この態様では、中央領域及び尿道口対向領域における貫通孔10aの面積が比較的大きく、吸収体10の端部に向かうにつれて貫通孔10aの面積が小さくなる。ここで、尿道口対向領域とは、中央領域よりも紙おむつ1の前身頃1A側に位置する領域である。このような態様とすることで、尿道口対向領域において貫通孔10aを介して吸収体10の非肌面側に排泄水分を透過できるため、吸収体10の非肌面側で拡散して吸収される排泄水分の量が調整される。つまり、シート30により尿道口対向領域以外に排泄水分が誘導され、吸収体10の全域に排泄水分がバランスよく拡散されるため、排泄水分を吸収体10の肌面側及び非肌面側の全域でバランスよく吸収できる。
【0040】
(第四の態様)
図9に示すように、第四の態様の吸収体10としては、隣接する貫通孔10a同士の間隔が、平面視したときの長手方向Lの中心から長手方向Lに沿って、次第に大きくなる態様が挙げられる。つまり、第四の態様では、吸収体10の長手方向Lの中心から、吸収体10の端部に向かうにつれて、貫通孔10a同士の間隔が大きくなる。したがって、吸収体10の中央領域に形成される貫通孔10a同士の間隔が最小であり、吸収体10の長手方向Lの端部領域において貫通孔10a同士の間隔が最大になる。
なお、
図9では、円形状の貫通孔10aを配置した例を示すが、貫通孔10aの形状は特に限定されない。
【0041】
第四の態様の吸収体10によれば、第三の態様の吸収体10と同様に、吸収体10の肌面側で拡散し吸収される排泄水分の量と、貫通孔10aを介して吸収体10の非肌面側に透過し、吸収体10の非肌面側で拡散して吸収される排泄水分の量とのバランスが調整され、排泄水分を吸収体10の肌面側及び非肌面側の全域でバランスよく吸収できる。
【0042】
なお、第三及び第四の態様の吸収体10による作用及び効果には、貫通孔10aの面積割合(吸収体10の単位面積当たりの貫通孔10aの総面積)も関係していると推測される。第三及び第四の態様の吸収体10では、吸収体10の中央領域に形成された貫通孔10cの面積割合よりも、吸収体10の端部領域に形成された貫通孔10aの面積割合が小さくなっている。
【0043】
(他の態様)
他の態様の吸収体10としては、例えば、上記第一の態様から第四の態様のうちの2以上を組み合わせた態様等が挙げられる。
【0044】
着用時の紙おむつ1の幅方向Wにおける排泄水分の分布に着目すると、紙おむつ1の中心線CLを含む領域にピークを有し、中心線CLを基準として幅方向に線対称な略釣鐘形状又は略台形状の曲線で示される。つまり、幅方向Wの端部方向への排泄水分の拡散性が低い傾向にある。
また、排泄水分は吸収体10の肌面側から吸収されるため、吸収体10に吸収された排泄水分の分布は、厚み方向Tにおいて肌面側が高く、非肌面側に向けて低くなる傾向にある。
したがって、吸収体10における貫通孔10aの形状や配置等を上記のように変えることで、中心線CLを含む領域における排泄水分の吸収体10へ吸収量を抑制し、排泄水分の幅方向Wへの拡散性を向上させるとともに、吸収体10の非肌面側からも排泄水分を吸収できるようになる。その結果、排泄水分を吸収体10の肌面側及び非肌面側の全域でバランスよく吸収できるようになる。
【0045】
このように、吸収性物品の用途や着用者の年齢、性別等に応じて、シート30における溝状構造の方向、吸収体10の貫通孔10aの大きさ、形状や配置等を変えることで、排泄水分の吸収体10への吸収量を調整し、着用者の快適性を向上させることができる。
【0046】
〔トップシート〕
吸収体10に対して、肌面側にはトップシート11が積層される。トップシート11は、最も肌面側に配置されるシート状の部材である。このトップシート11は、吸収体10やシート30よりも幅方向寸法が大きく、吸収体10を肌面側から被覆する。また、トップシート11は、紙おむつ1を着用した状態において、着用者の肌に接触して、排泄水分を透過させ、排泄水分を吸収体10に到達させる。このため、トップシート11は少なくとも一部又は全部が透水性をもつ材料で構成される。また、トップシート11は、着用時のフィット性のため、柔軟性が高い材料で構成されることが好ましい。また、着用状態での蒸れを抑えるため、通気性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0047】
トップシート11を構成する材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を用いることができる。また、トップシート11としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維に親水化処理を施して、不織布にしたものを用いてもよい。トップシート11を構成する不織布としては、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、SMS(Spunbound Meltblown Spunbound)不織布等を用いることができる。
【0048】
〔バックシート〕
バックシート12は、吸収体10に対してシート30よりも非肌面側に配置されるシート状の部材である。バックシート12は、吸収体10から非肌面側に排泄物が漏れることを防ぐため、非透水性をもつ材料で構成される。また、バックシート12は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0049】
バックシート12を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂シートを用いることができる。中でも、バックシート12としては、0.1〜0.4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性の熱可塑性樹脂シートを用いることが好ましい。このようなシートとしては、例えば、熱可塑性樹脂中に無機充填剤を混錬してシートを形成した後に、延伸することにより得られるシートを用いることができる。
【0050】
〔サイドシート、カバーシート〕
紙おむつ1は、トップシート11、吸収体10、シート30及びバックシート12を含む積層体に対して積層されるサイドシート13及びカバーシート14をさらに備えている。サイドシート13は、上記積層体の幅方向側方に配置される。また、カバーシート14は上記積層体の非肌面側に配置される。サイドシート13とカバーシート14と上記積層体とは、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤によって、全面又は一部が貼合される。
【0051】
サイドシート13の肌面側のうちの幅方向内側の端縁に、立体ギャザー16が形成される。サイドシート13は、トップシート11及びバックシート12の幅方向側方のそれぞれに設けられている。サイドシート13は、トップシート11の幅方向側部において肌面側に積層されるとともに、バックシート12の幅方向側部において非肌面側に積層される。
【0052】
サイドシート13は、幅方向側方への液漏れを防ぐため、非透水性をもつ材料で構成されることが好ましい。サイドシート13としては、スパンボンド不織布を用いることができる。また、サイドシート13の一部は、紙おむつ1において最も肌面側に配置される。なお、このことから、サイドシート13はトップシート11と同様に「トップシート」と称されることがある。このように、着用者に対して接触しうるサイドシート13としては、SMS不織布やSMMS(Spunbound Meltblown Meltblown Spunbound)不織布のようにメルトブローン層を含ませることにより、柔軟性を高めたスパンボンド不織布を用いることが好ましい。あるいは、スパンボンド不織布をなす繊維の繊度や目付量が抑えられることにより、柔軟性を向上させたスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0053】
なお、「繊度」とは、繊維の繊維径(太さ)や断面積に対応するパラメータであり、所定の長さあたりの重量で表される。例えば、一本の繊維について9000mあたりのグラム数(デニール)が「繊度」として用いられる。
また、「目付量」とは、シートの厚みあるいは積層度合いに対応するパラメータであり、単位面積あたりの重量で表される。例えば、一平米あたりのグラム数が「目付量」として用いられる。
【0054】
カバーシート14は、トップシート11、吸収体10、シート30及びバックシート12を含む積層体を非肌面側から被覆するシート状の部材である。カバーシート14は、紙おむつ1で最も非肌面側に配置されることで、バックシート12を補強し、バックシート12の手触り(触感)を良好にするために用いられる。ここでは、バックシート12の幅方向側部において、サイドシート13を介してカバーシート14が重ねられる。カバーシート14として、肌面側から非肌面側に向けて第一カバーシート141、第二カバーシート142、第三カバーシート143の三つがこの順に積層されている。
【0055】
第一カバーシート141は、バックシート12を介して吸収体10を非肌面側から被覆する。このことから、第一カバーシート141は「パッドカバーシート」とも称される。
第二カバーシート142及び第三カバーシート143は、前身頃1A及び後身頃1C(
図1参照)で第一カバーシート141よりも幅方向寸法が大きく設定され、着用状態で着用者の臀部や腰、腹などのまわりに配置される。第三カバーシート143は、紙おむつ1において最も非肌面側に配置される。このことから、第三カバーシート143は「アウターカバーシート」とも称され、第二カバーシート142は「インナーカバーシート」とも称される。
【0056】
カバーシート14を構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。特には、触感(手触り)を確保するために柔軟性の観点から、カバーシート14としては、スパンボンド不織布を好適に用いることができる。
【0057】
図1に示すように、前身頃1Aにおけるカバーシート14と後身頃1Cにおけるカバーシート14とは、それぞれ幅方向端縁部14a同士が互いに貼り付けられる(いわゆる「サイドシール」)。このようにして、前身頃1A及び後身頃1Cの各カバーシート14が連設され、パンツ型の紙おむつ1が形成される。
【0058】
〔ギャザー〕
次に、
図1及び
図2を参照して、紙おむつ1のギャザー15について述べる。
ギャザー15は、ゴムやポリウレタン、伸縮フィルムといった伸縮性をもつ部材(伸縮性部材)を伸張状態で不織布等のシートの間に挟んでホットメルト等で固定することによって伸縮性をもたせたシート複合体から構成される。このシート複合体は、伸縮性部材が伸張状態から元の状態(自然長の状態)に戻ろうとする力(復元力、弾性力)で不織布等のシートに細かな皺が寄った状態となる。ここでは、伸縮性部材として糸状のゴム部材(以下「糸ゴム」と略称する)20を例示する。
【0059】
この紙おむつ1には、糸ゴム20で形成されるギャザー15として、三種の糸ゴム21,22,23で伸縮性が付与された三種のギャザー16,17,18を例示する。一つは、サイドシート13の肌面側端縁部が第一糸ゴム21で皺寄せられた立体ギャザー16(「サイドギャザー」とも称される)である。もう一つは、第二カバーシート142及び第三カバーシート143(
図2参照)が第二糸ゴム22で皺寄せられたタミーギャザー17である。更にもう一つは、サイドシート13の非肌面側において幅方向端縁部が第三糸ゴム23(
図1では図示省略)で皺寄せられたセカンド立体ギャザー18(
図1では図示省略)である。
【0060】
立体ギャザー16は、排泄箇所の周縁で着用者に対する追従性を高めることにより、排泄物の幅方向側方への漏れを防ぐために設けられる。詳細に言えば、
図2に示すように、立体ギャザー16では、サイドシート13の肌面側における幅方向内側の端縁部に位置するシート部13a,13bが折り曲げられて重ねられる。これらのシート部13a,13bによって、長手方向に延在する第一糸ゴム21が囲まれている。
【0061】
タミーギャザー17は、着用者の臀部や下腹部に対する追従性を高めるために設けられる。詳細に言えば、タミーギャザー17では、平織物における縦糸または経糸のように、幅方向に延びる複数の第二糸ゴム22が、第二カバーシート142及ぶ第三カバーシート143(
図2参照)の間に介装されている。
【0062】
セカンド立体ギャザー18は、股下部1Bで追従性を高めるために設けられる。詳細に言えば、セカンド立体ギャザー18では、サイドシート13の非肌面側における幅方向外側の端縁部に第三糸ゴム23が設けられる。
その他、上述したギャザー16,17,18に加えてまたは替えて、着用者の脚部の付け根に対する追従性を高めるためのレッグギャザーを設けてもよい。
【0063】
[2.作用及び効果]
本実施形態の紙おむつ1は、上述したように構成されるため、下記の作用及び効果を得ることができる。
【0064】
一方向に延在する溝状構造を表面に有するシート30を、吸収体10の非肌面側に配置することで、吸収体10の非肌面側に漏出した排泄水分をシート30の延在面に沿って拡散し、排泄水分を吸収体10の非肌面側から吸収体10に吸収させることができる。また、シート30と吸収体10との間には、複数の第一凸部30aと複数の第二凸部30bにより構成される溝状構造によって、空隙が形成されるため通気性に優れる。
したがって、シート30を備えた吸収性物品によれば、着用者から排泄される水分を吸収体10の肌面側及び非肌面側の全域に拡散し、当該水分を吸収体10に効率よく吸収させることができる。また、排泄水分の吸収性に優れるため、吸収体10に吸収された水分が肌面側に逆戻りする液戻り(ウェットバック)が抑制される。さらに、漏出した排泄水分の揮発性に優れるため、着用者の快適性が向上する。
【0065】
[II.第二実施形態]
次に、紙おむつの第二実施形態を述べる。
本実施形態の紙おむつでは、ここで説明する点を除いては、第一実施形態と同様の構成である。これらの構成については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0066】
図10に示すように、本実施形態の紙おむつでは、シート30に対して着用者の肌面側に複数の吸収体10’が配置される。また、吸収体10’の幅方向寸法及び/又は長手方向寸法は、吸収体10よりも小さい。この場合、吸収体10’は長手方向L及び/又は幅方向Wに沿って互いに離間配置されることが好ましい。隣接する吸収体10’同士の間隔は特に限定されない。なお、第一実施形態で述べた吸収体10と同様に、吸収体10’に複数の貫通孔10aを設けてもよい。
【0067】
[作用及び効果]
図10に示すように、吸収体10’を離間配置することで、第一実施形態において詳述した貫通孔10aと同様の効果が奏される。つまり、排泄水分が複数配置された吸収体10’の間を透過し、吸収体10’の非肌面側に配置されたシート30の溝状構造に沿って拡散する。そのため、排泄水分は吸収体10’の非肌面側からも吸収される。また、排泄水分は、吸収体10’の間を透過する際に、吸収体10’の側面においても効率よく吸収される。
したがって、吸収体10’の非肌面側にシート30を配置することで、排泄水分の吸収性が向上する。
【0068】
[III.その他]
上述した実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0069】
例えば、吸収体10とシート30との間や、トップシート11と吸収体10との間に、液透過性の材料からなるシートを配置してもよい。また、シート30をバックシート12として用いることもできる。
【0070】
また、
図11に示すように、貫通孔10aを有する吸収体10の非肌面側であって、貫通孔10aに対応する部分のみ又はその近傍を含む部分に、溝状構造の延在方向の異なる複数のシート30を配置してもよい。また、表面において一方向に延在する凸部30a,30b(一方向に延在する溝状構造)を、複数方向に延在させる構成としたシート30を、吸収体10の非肌面側に配置してもよい。つまり、このシート30では、溝状構造の少なくとも一部が長手方向Lに対して所定の角度(例えば、30〜90°)を有する。このようなシート30を、貫通孔10aを有する吸収体10の非肌面側に配置することで、排泄水分を吸収体10の所定位置に誘導し、吸収体10の非肌面側において排泄水分を吸収体10全域に拡散できる。その結果、吸収体10の非肌面側の全体で排泄水分をバランスよく保持することが可能になる。
【0071】
また、シート30に貫通孔を設けたシートを、吸収体10の肌面側に配置することもできる。また、複数のシート30を吸収体10の肌面側に配置してもよい。このような構成とすることで、吸収体10の肌面側及び非肌面側において排泄水分を吸収体10全域に拡散しやすくなり、吸収体10の肌面側及び非肌面側の全体で排泄水分をバランスよく保持することが可能になる。なお、吸収体10の肌面側に上記シートを配置する場合には、シートの非肌面側に凸部30a,30bを突出させた構成としてもよい。このような構成とすることで、排泄水分が貫通孔又は隣接するシート同士の間を透過し、吸収体10の肌面側に誘導され、シートの非肌面側の溝状構造(一方向に延在する凸部30a,30b)に沿って吸収体全域に拡散される。
【0072】
また、シート30の一方向に延在する溝状構造の端部側(縁側)には吸収体10を存在させる、または、別途吸収体10を設ける構成が好ましい。このような構成とすることで、シート30の縁側に到達した排泄水分が紙おむつ1外へ漏洩することを抑制・低減できる。
【0073】
また、シート30として、少なくとも一方の面に溝が設けられた液不透過性のシートを用いてもよい。このようなシートとしては、例えば、一方向に延在し厚み方向Tの肌面側に突出する第一凸部30aを表面に有し、第二凸部30bを有さないシートが挙げられる。
【0074】
なお、シート30は、シート本体を有し、このシート本体が複数の第一凸部30aと複数の第二凸部30bとを備え、第一凸部の突出寸法H1が第二凸部の突出寸法H2よりも大きいものである。つまり、本実施形態では、シート本体を省略してシート30と記載しており、シート30にはシート本体が含まれる。また、シート30と同様に、他のシートにも「シート本体」という概念が含まれることを念のために付言する。