(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981168
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
H01L21/56 T
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-201883(P2017-201883)
(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公開番号】特開2019-75498(P2019-75498A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】丸亀 仁寛
【審査官】
安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−012061(JP,A)
【文献】
特開2003−077946(JP,A)
【文献】
特開2000−260795(JP,A)
【文献】
特開2008−227317(JP,A)
【文献】
特開平11−047903(JP,A)
【文献】
特開平10−144713(JP,A)
【文献】
特開2011−204786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28−31
B29C 33/10
B29C 45/02
B29C 45/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層基板の実装面に薄膜を形成する工程と、
前記多層基板の前記実装面に半導体チップを実装する工程と、
前記多層基板を下金型と上金型で挟んで前記半導体チップを樹脂で封止する工程とを備え、
前記薄膜は、前記樹脂で封止される封止領域から前記多層基板の外側まで延びる溝を有し、
前記樹脂で封止する際に、前記多層基板の外周部において前記薄膜の上面と前記上金型が接し、前記溝をエアベントとして用い、
前記溝は切り返しを有し、
前記切り返しよりも外側の前記溝の幅が、前記切り返しよりも前記封止領域側の前記溝の幅に対して広いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
1つの前記半導体チップに対して前記溝を複数形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜は、導電パターンと、前記導電パターンを覆うソルダレジストとを有し、
前記導電パターンの前記ソルダレジストから露出した部分に前記溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層基板の実装面を樹脂で封止する際に、金型に形成されたエアベントからキャビティ内の空気が外部に排出される。エアベントの形状が最適でない場合、空気が樹脂内に留まってボイド又は未充填が発生し、逆に樹脂がエアベントから溢れ出すオーバーフローが発生するなどの問題がある。このため、多層基板に実装する半導体チップに合わせて金型にエアベントを設ける必要がある。従って、半導体チップが増減した場合に新規の金型が必要になり、コストがかかるという問題があった。これに対して、多層基板の実装面のソルダレジスト等に溝を形成し、エアベントとして用いる半導体装置の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1(第1図)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−77946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は多層基板の実装面に直線状の溝を形成していたため、樹脂が溝から溢れ出すオーバーフローが発生し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的はコストを削減しつつ、樹脂のオーバーフローを防ぐことができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、多層基板の実装面に薄膜を形成する工程と、前記多層基板の前記実装面に半導体チップを実装する工程と、前記多層基板を下金型と上金型で挟んで前記半導体チップを樹脂で封止する工程とを備え、前記薄膜は、前記樹脂で封止される封止領域から前記多層基板の外側まで延びる溝を有し、前記樹脂で封止する際に、前記多層基板の外周部において前記薄膜の上面と前記上金型が接し、前記溝をエアベントとして用い、前記溝は切り返しを有
し、前記切り返しよりも外側の前記溝の幅が、前記切り返しよりも前記封止領域側の前記溝の幅に対して広いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、多層基板に設けた薄膜の溝をエアベントとして用いる。このように多層基板にエアベントの機能を持たせることで、半導体チップが増減しても新規の金型は不要であるため、コストを削減することができる。また、多層基板の実装面に形成する溝が切り返しを有する。これにより、樹脂のオーバーフローを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【
図4】比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図5】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【
図6】実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。まず、多層基板1の実装面に薄膜2を形成する。多層基板1の実装面に半導体チップ3を実装する。
【0011】
続いて、多層基板1の実装面にトランスファーモールド装置で樹脂封止を実施する。まず、多層基板1を下金型4と上金型5で挟んで型締めする。次に、上金型5と多層基板1の実装面の間に形成されるキャビティ6内に溶けた樹脂7を流し込み、半導体チップ3を樹脂7で封止する。
【0012】
薄膜2は、樹脂7で封止される封止領域から多層基板1の外側まで延びる溝9を有する。樹脂7で封止する際に、多層基板1の外周部において溝9以外の部分で薄膜2の上面と上金型5が接する。溝9をエアベントとして用いてキャビティ6内の空気を外に排出することでボイド及び未充填を防ぐことができる。
【0013】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示す平面図である。
図3は
図2のI−IIに沿った断面図である。多層基板1の基材の実装面に、薄膜2として、導電パターン10と、導電パターン10を覆うソルダレジスト11とが形成されている。多層基板1の裏面にも同様に導電パターン12とソルダレジスト13が形成されている。なお、多層基板1の配線構造は何層でもかまわない。また、ソルダレジスト13の開口部において半導体チップ3と多層基板1の導電パターン10は銀ペースト又は金線などの導電性接合材で接続されているが、ここでは図示を省略している。
【0014】
本実施の形態の効果を比較例と比較して説明する。
図4は、比較例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。比較例では樹脂成型の際にキャビティ内の空気が上金型5に作られたエアベント14から外に排出される。エアベント14の形状が最適でない場合、空気が樹脂7内に留まってボイド又は未充填が発生し、逆に樹脂7がエアベント14から溢れ出すオーバーフローが発生するなどの問題がある。このため、多層基板1に実装する半導体チップ3に合わせて上金型5にエアベント14を設ける必要がある。従って、半導体チップ3が増減した場合に新規の金型が必要になり、コストがかかる。
【0015】
一方、本実施の形態では、多層基板1に設けた薄膜2の溝9をエアベントとして用いる。このように多層基板1にエアベントの機能を持たせることで、半導体チップ3が増減しても新規の金型は不要であるため、コストを削減することができる。
【0016】
また、本実施の形態では、薄膜2に形成された溝9は直線ではなく、2箇所の切り返し15a,15bを有する。即ち、溝9は、まず基板内側から外側に向かって進み、切り返し15aで基板内側に戻り、切り返し15bで再び外側に向かって進む。このように樹脂7の流れの向きを変えることで、溝9の途中で樹脂7を留め、樹脂7のオーバーフローを防ぐことができる。
【0017】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を示す平面図である。溝9の断面構造は実施の形態1と同様であるが、溝9の幅を最初の切り返し15aより外側で広げている。即ち、封止領域から外側に向かう途中で溝9の幅が広くなる。このように樹脂7の通り道の断面積を広げるとベルヌーイの法則から樹脂7の流れる速度を落とせる。従って、実施の形態1よりも短い距離で樹脂7を留めることができる。このため、溝9に必要な基板長を短くでき、基板コストを削減することができる。また、樹脂7の選定と条件設定の自由度が増える。
【0018】
また、封止領域側で溝9の幅は樹脂7のフィラー径より狭いことが好ましい。これにより、樹脂7のオーバーフローを更に防ぐことができる。ただし、封止領域側で溝9の幅を狭めることで空気を排出しづらくなるため、1つの半導体チップ3に対して溝9を複数形成することが好ましい。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0019】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を示す平面図である。
図7は
図6のI−IIに沿った断面図である。導電パターン10のソルダレジスト11から露出した部分に溝9が形成されている。これにより、多層基板1を下金型4と上金型5で挟んだ際にソルダレジスト11が潰れても溝9の幅が狭くなるのを防ぐことができる。従って、実施の形態2のように溝9の幅を狭くした場合でも設計値の溝幅を維持することができる。また、ソルダレジスト11の潰れ量を考慮する必要がないため、型締め圧力の自由度が増える。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【符号の説明】
【0020】
1 多層基板、3 半導体チップ、4 下金型、5 上金型、7 樹脂、9 溝、10 導電パターン(薄膜)、11 ソルダレジスト(薄膜)、15a,15b 切り返し