特許第6981179号(P6981179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981179液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981179
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20211202BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B41J2/17 103
   B41J2/17 207
   B41J2/165 505
   B41J2/165 401
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-212824(P2017-212824)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-84700(P2019-84700A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−272996(JP,A)
【文献】 特開2003−191480(JP,A)
【文献】 特開2017−128010(JP,A)
【文献】 特開2012−030545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/17
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射媒体に液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのメンテナンス動作において該液体噴射ヘッドから排出された前記液体を受容する受容部を有するメンテナンス機構と、
前記受容部を洗浄する洗浄動作において該受容部に洗浄液を供給可能な洗浄液供給機構と、
を備え、
の前記メンテナンス動作が実行されてから後の前記メンテナンス動作が実行されるまでの時間が、第1設定時間よりも長く、且つ第2設定時間よりも短い場合には、後に実行される前記メンテナンス動作に続けて前記洗浄動作が実行され、
先の前記メンテナンス動作が実行されてから後の前記メンテナンス動作が実行されるまでの時間が、前記第2設定時間よりも長い場合には、先の前記メンテナンス動作が実行されてから前記第2設定時間が経過したところで前記洗浄動作が実行されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記洗浄動作は、電源が遮断される場合、前記メンテナンス動作を実行してから経過した経過時間に関わらず実行されることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記洗浄液は、前記液体噴射ヘッドが有する洗浄液ノズルから前記受容部に供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記メンテナンス機構は、前記受容部が受容した前記液体を吸引し、該液体を排出流路を介して廃液収容部に排出させるポンプを有し、
前記受容部は、前記液体噴射ヘッドに接触して前記ノズルを含む空間を形成するキャップであり、
前記洗浄動作は、前記キャップが前記洗浄液ノズルを含む空間を形成した状態で、前記ポンプにより前記洗浄液を吸引し、該洗浄液を前記排出流路に導入して洗浄することを特徴とする請求項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
被噴射媒体に液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのメンテナンス動作において該液体噴射ヘッドから排出された前記液体を受容する受容部を有するメンテナンス機構と、
を備える液体噴射装置のメンテナンス方法であって、
先の前記メンテナンス動作が実行されてから後の前記メンテナンス動作が実行されるまでの時間が、第1設定時間よりも長く、且つ第2設定時間よりも短い場合には、後に実行される前記メンテナンス動作に続けて前記受容部を洗浄する洗浄動作を実行し、
先の前記メンテナンス動作が実行されてから後の前記メンテナンス動作が実行されるまでの時間が、前記第2設定時間よりも長い場合には、先の前記メンテナンス動作が実行されてから前記第2設定時間が経過したところで前記洗浄動作を実行することを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として、印字ヘッド(液体噴射ヘッド)に形成されたノズルからインク(液体)を噴射して記録媒体(被噴射媒体)に文字や線図を描くインクジェット式の記録装置がある。記録装置は、印字ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス機構の一例として、ノズルの周囲を覆うキャップ(受容部)や、ノズルが形成されたノズル面を払拭するワイパーを備えていた(例えば特許文献1)。
【0003】
こうした記録装置のなかには、ワイパーに向けて洗浄液を噴射してワイパーを洗浄する洗浄ヘッド(洗浄液供給機構)を備えたものがある。洗浄ヘッドは、キャップ内にも洗浄液を噴射し、キャップにより覆われるノズル周囲の空間を洗浄液により高湿度雰囲気に保持していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−253081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録装置では、ワイパーの洗浄とキャップ内の保湿に洗浄液を使用していた。しかし、洗浄液の使用方法については改善する余地があった。
こうした課題は、洗浄ヘッドを備える記録装置に限らず、洗浄液供給機構を備える液体噴射装置においては、概ね共通したものとなっている。
【0006】
本発明の目的は、メンテナンス機構による液体噴射ヘッドのメンテナンス性能を確保しつつ、メンテナンス機構の洗浄を効率的に行うことができる液体噴射装置、液体噴射装置のメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する液体噴射装置は、被噴射媒体に液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのメンテナンス動作において該液体噴射ヘッドから排出された前記液体を受容する受容部を有するメンテナンス機構と、前記受容部を洗浄する洗浄動作において該受容部に洗浄液を供給可能な洗浄液供給機構と、を備え、前記洗浄動作は、先の前記メンテナンス動作が実行されてから後の前記メンテナンス動作が実行されるまでの時間が、第1設定時間よりも長く、且つ第2設定時間よりも短い場合には、後に実行される前記メンテナンス動作が実行された後、該メンテナンス動作に続けて実行される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体噴射装置の一実施形態の斜視図。
図2図1の液体噴射装置が備える液体噴射ヘッドの模式底面図。
図3図1の液体噴射装置が備える第1筐体部の内部構成を示す模式正面図。
図4図1の液体噴射装置の正面図。
図5図1の液体噴射装置が備える洗浄液供給機構と液体供給機構の模式図。
図6図1の液体噴射装置の電気的構成を示すブロック図。
図7図1の液体噴射装置が備える圧力調整機構の断面図。
図8図1の液体噴射装置が備えるフィルターユニット及び流入規制部の断面図。
図9】メンテナンス処理ルーチンを示すフローチャート。
図10】メンテナンス動作と排出動作を実行するタイミングを示すタイミングチャート。
図11】経過時間が第2設定時間を超えた場合を示すタイミングチャート。
図12】電源の遮断が指示された場合を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、液体噴射装置及び液体噴射装置のメンテナンス方法の実施形態について、図を参照して説明する。液体噴射装置は、例えば、用紙などの被噴射媒体に液体の一例であるインクを噴射することによって記録(印刷)を行うインクジェット式のプリンターである。
【0010】
図1に示すように、液体噴射装置11は、略矩形箱状の第1筐体部12と第2筐体部13とを備えている。なお、本実施形態では、液体噴射装置11において、第1筐体部12が設けられた側を前側というと共に、第2筐体部13が設けられた側を後側という。そして、鉛直方向に沿う上下方向Zと交差(本実施形態では直交)する方向であって第1筐体部12と第2筐体部13との並び方向を前後方向Yとして図示する。また、上下方向Z及び前後方向Yと交差(本実施形態では直交)する方向であって第1筐体部12の長手方向に沿う方向を幅方向Xとして図示する。
【0011】
第1筐体部12には、媒体支持トレイ14を前後方向Yに沿って搬送可能に支持する媒体搬送部15が第1筐体部12から前方に突出した状態で固定されている。そして、第1筐体部12の前面側には、媒体支持トレイ14の前後方向Yに沿う移動を許容する開口部16が形成されている。なお、第1筐体部12及び第2筐体部13内には、媒体支持トレイ14の移動を許容する空間(図示略)が第1筐体部12及び第2筐体部13に亘って形成されている。そして、以下の説明では、第1筐体部12及び第2筐体部13に亘って形成された空間と、第1筐体部12の前面に形成された開口とを合わせて開口部16というものとする。
【0012】
媒体支持トレイ14の上面は、被噴射媒体S(図3参照)をセット可能なセット面14aとされている。媒体支持トレイ14は、図1に実線で示す媒体セット位置と、図1に二点鎖線で示す印刷開始位置との間を移動可能に設けられている。媒体セット位置は、媒体支持トレイ14が第1筐体部12から露出し、セット面14aに被噴射媒体Sをセット可能な位置である。媒体支持トレイ14は、搬送モーター(図示略)の駆動に伴って、媒体セット位置と印刷開始位置との間を前後方向Yに沿って往復移動する。
【0013】
また、第1筐体部12の前面側において幅方向Xで開口部16の両側となる位置には、開閉カバー17が回動可能に取り付けられている。開閉カバー17は、その下端側に設けられた図示しない回動軸を中心に上端側が揺動するように回動することで、図1に示す閉位置と、上端部が前方下側へ揺動して内部が露出する開位置とに配置される。
【0014】
開口部16の上側には、液体噴射装置11が備える各種構成要素の動作状況を表示したり指示を入力したりする操作パネル18が取り付けられている。操作パネル18の後側には、上カバー19が回動可能に設けられている。上カバー19は、基端側に設けられた図示しない回動軸を中心に回動することで、図1に示す開位置と、開位置から先端が前方下側へ揺動して第1筐体部12内の収容物を隠蔽する閉位置とに配置される。
【0015】
液体噴射装置11は、液体を噴射する液体噴射ヘッド21と、液体噴射ヘッド21を保持する保持部22と、を備える。本実施形態の保持部22は、シリアルタイプの液体噴射ヘッド21を保持して被噴射媒体Sを横切るように往復移動するキャリッジである。保持部22は、ラインヘッドタイプの液体噴射ヘッド21を被噴射媒体Sの搬送経路上に固定して配置するものであってもよい。
【0016】
図2に示すように、液体噴射ヘッド21は、幅方向Xに並設された複数(本実施形態では5つ)のヘッドユニット24を有する。本実施形態では、5つのヘッドユニット24のうち中央の1つのヘッドユニット24は、洗浄液を噴射する洗浄液ヘッドユニット24aである。他の4つのヘッドユニット24は、インクなどの液体を噴射する液体ヘッドユニット24bである。洗浄液ヘッドユニット24aと、液体ヘッドユニット24bの構成は同じである。
【0017】
複数のヘッドユニット24は、幅方向X及び前後方向Yにおいて上方向に折り曲げられた金属製の板金25によって、下側から覆われて保持されている。板金25には、ヘッドユニット24と同数の貫通孔26が形成されている。ヘッドユニット24において、矩形の貫通孔26により露出する下側の面は、ノズル形成面27とされている。ノズル形成面27には、多数個のノズル28が形成されている。
【0018】
液体噴射ヘッド21は、洗浄液を供給する洗浄液ノズル28aと、被噴射媒体Sに液体を噴射するノズルの一例である液体ノズル28bと、を有する。すなわち、洗浄液ヘッドユニット24aのノズル形成面27に形成されたノズル28は、洗浄液ノズル28aとされている。液体ヘッドユニット24bのノズル形成面27に形成されたノズル28は、液体ノズル28bとされている。
【0019】
多数個(例えば180個又は360個)のノズル28は、前後方向Yに沿ってそれぞれ一定ピッチで配置され、ノズル列29とされている。1つのヘッドユニット24は、少なくとも1列(本実施形態では2列)のノズル列29を有し、ヘッドユニット24ごとに異なる種類の液体を噴射する。換言すると、1つのヘッドユニット24が有する複数のノズル列29は、同じ種類の液体を噴射する。ノズル28は1種の液体に対して複数設けられる。
【0020】
図3に示すように、第1筐体部12内には、幅方向Xに沿って延びるガイド軸31が設けられている。ガイド軸31には、保持部22が主走査方向の一例としての幅方向Xに往復移動可能な状態で支持されている。さらに、第1筐体部12内には、保持部22に一部が固定されたタイミングベルト32を掛装するための駆動プーリー33と従動プーリー34とが回転自在に支持されている。駆動プーリー33には、キャリッジモーター35が連結されている。キャリッジモーター35の駆動によりタイミングベルト32が周回運動すると、保持部22と液体噴射ヘッド21が幅方向Xに往復移動する。
【0021】
液体噴射装置11は、液体噴射ヘッド21のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構37と、メンテナンスに伴って液体噴射ヘッド21から排出された廃液を収容する廃液収容部38と、を備える。メンテナンス機構37は、ノズル28の目詰まり、液体噴射ヘッド21への気泡の混入、またはノズル28周辺への異物の付着などに起因して生じる噴射不良の予防または解消のために液体噴射ヘッド21をメンテナンスする。
【0022】
メンテナンス機構37は、開口部16を挟んで幅方向Xの一方側に設けられたフラッシング部39と、幅方向Xの他方側に設けられたメンテナンス部40と、を備える。フラッシング部39とメンテナンス部40は、前後方向Yに移動する媒体支持トレイ14と干渉しないように、幅方向Xにおいて開口部16と位置をずらして設けられている。メンテナンス部40が設けられた位置をホームポジションとする。
【0023】
フラッシング部39は、フラッシングにより液体噴射ヘッド21から噴射された液体を受容する。フラッシングとは、ノズル28から液体を吐き捨てることによって、噴射不良の原因となる異物、気泡または変質した液体(例えば増粘したインク)を排出する動作である。フラッシングは、軽度の噴射不良を解消するために実行される。
【0024】
フラッシング部39は、フラッシングボックス42と、フラッシングボックス42に接続されたフラッシングチューブ43と、フラッシングボックス42内を吸引可能なフラッシングポンプ44と、を備える。フラッシングチューブ43は、上流端がフラッシングボックス42に接続され、下流端が廃液収容部38に接続されている。フラッシングポンプ44は、フラッシングチューブ43の途中位置に設けられている。フラッシングポンプ44は、例えばチューブポンプとすることができるが、他の形式のポンプでもよい。
【0025】
メンテナンス部40は、放置キャップ46と、受容部及びキャップの一例である吸引キャップ47と、ワイパー48と、吸収部材49と、を備える。メンテナンス部40は、吸引キャップ47と廃液収容部38とを接続する排出流路の一例である吸引チューブ50と、吸引キャップ47内を吸引可能な吸引ポンプ51と、を備える。吸引ポンプ51は、吸引チューブ50の途中位置に設けられている。吸引ポンプ51は、例えばチューブポンプとすることができるが、他の形式のポンプでもよい。
【0026】
放置キャップ46と吸引キャップ47、及び液体噴射ヘッド21のうち少なくとも一方は、ノズル28が開口する空間を閉空間とするキャッピング位置と、ノズル28が開口する空間を開放空間とする退避位置との間で、相対移動するように構成される。そして、放置キャップ46、吸引キャップ47、及び液体噴射ヘッド21がキャッピング位置に配置されることによって、キャッピングが行われる。
【0027】
放置キャップ46は、全てのノズル28を一度に覆う閉空間を形成する。放置キャップ46は、液体の噴射を行わない時にキャッピングを行い、ノズル28の乾燥を抑制することによって、噴射不良の発生を予防する。放置キャップ46は、印刷休止時や不使用時における液体噴射ヘッド21の各ノズル28内のインクの蒸発の抑制等に用いられる。
【0028】
吸引キャップ47は、液体噴射ヘッド21に接触してノズル28を含む空間を形成する。吸引キャップ47は、1つのヘッドユニット24のノズル28を覆う閉空間を形成する。吸引キャップ47、吸引チューブ50、及び吸引ポンプ51は、液体噴射ヘッド21のメンテナンス動作と、吸引キャップ47及び吸引チューブ50を洗浄する洗浄動作と、を行う。本実施形態のメンテナンス動作は、液体ノズル28bから液体を吸引して排出させる吸引クリーニングである。
【0029】
メンテナンス動作及び洗浄動作は、吸引キャップ47をキャッピング位置に配置して形成した閉空間に、吸引ポンプ51の駆動によって生じた負圧を作用させて行う。液体噴射ヘッド21に負圧を作用させると、ノズル28から流体が吸引排出される。すなわち、メンテナンス動作では、吸引ポンプ51が液体噴射ヘッド21に負圧を印加して液体噴射ヘッド21内の液体を外部へ排出させる。洗浄動作では、吸引ポンプ51が液体噴射ヘッド21に負圧を印加して液体噴射ヘッド21内の洗浄液を外部へ排出させる。本実施形態では、洗浄液ノズル28aからの洗浄液の噴射と、吸引ポンプ51による洗浄液の吸引と、により、吸引キャップ47への洗浄液の供給が可能である。
【0030】
ワイパー48は、弾性変形しつつノズル形成面27に接触することでノズル形成面27を払拭する。吸収部材49は、ノズル形成面27に接触することでノズル形成面27に付着したインクを吸収する。
【0031】
フラッシング部39及びメンテナンス部40は、第1筐体部12に対して着脱可能に設け、交換可能としてもよい。フラッシング部39及びメンテナンス部40は、上カバー19を図1に示す開位置に変位させることによりアクセス可能に配置されている。これにより、フラッシング部39及びメンテナンス部40のメンテナンスや交換が容易に可能となっている。
【0032】
図4に示すように、液体噴射装置11は、洗浄液を収容する洗浄液供給源53と、例えばインクなどの液体を収容する液体供給源54と、が着脱可能に装着される装着部55を備える。装着部55は、第1筐体部12内において、開口部16を挟むように幅方向Xの両側に設けてもよい。装着部55に装着された洗浄液供給源53及び液体供給源54は、開閉カバー17が開位置に配置されると出現し、交換可能である。
【0033】
本実施形態の装着部55には、少なくとも1つ(例えば1つ)の洗浄液供給源53と、少なくとも1つの(例えば4つ)の液体供給源54が装着される。液体供給源54を複数装着する場合には、液体供給源54は、それぞれ異なる液体を収容してもよい。例えば、1つの液体供給源54は、溶液である水に対して沈降性を示す顔料を混ぜたインク(例えば、白色の顔料を含むホワイトインク)を収容してもよい。他の液体供給源54は、顔料を含まないか、顔料の含有量が少ないインク(例えば、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラーインク)を収容してもよい。
【0034】
図5に示すように、液体噴射装置11は、洗浄液供給源53から液体噴射ヘッド21に洗浄液を供給する洗浄液供給機構57と、液体供給源54から液体噴射ヘッド21に液体を供給する液体供給機構58と、を備える。液体供給機構58は、装着部55に装着可能な液体供給源54の数、もしくは液体噴射ヘッド21に供給される液体の種類(例えばインクの色)に応じて設けられる。本実施形態の液体噴射装置11は、1つの洗浄液供給機構57と、4つの液体供給機構58と、を備える。液体供給機構58と洗浄液供給機構57は、同一の構成としてもよい。
【0035】
洗浄液供給源53と液体供給源54の構成は同じである。洗浄液供給源53と液体供給源54は、洗浄液もしくは液体を収容する袋体60と、袋体60を収容する収容ケース61と、袋体60に収容された洗浄液もしくは液体を収容ケース61の外に導出するための導出部62と、を備える。装着部55は、洗浄液供給源53が収容する洗浄液と、液体供給源54が収容する液体と、を液体噴射ヘッド21に向けて加圧供給するための供給ポンプ63を備える。
【0036】
供給ポンプ63は、例えばダイヤフラムポンプである。供給ポンプ63の上流側には、上流側一方向弁64が設けられ、供給ポンプ63の下流側には、下流側一方向弁65が設けられる。供給ポンプ63は、例えばチューブポンプでもよいし、収容ケース61内に加圧した気体を送出して袋体60を押し潰すことにより洗浄液もしくは液体を供給する送気ポンプでもよい。そして、供給ポンプ63がチューブポンプまたは送気ポンプの場合には上流側一方向弁64及び下流側一方向弁65を設けなくてもよい。
【0037】
液体噴射ヘッド21は、液体もしくは洗浄液が一時貯留される共通液室67と、複数のノズル28に個別に対応するように設けられる複数のキャビティ68と、を備える。液体噴射ヘッド21は、液体を収容する各キャビティ68に個別に対応するように設けられる複数のアクチュエーター69を備え、アクチュエーター69の駆動により、ノズル28から洗浄液もしくは液体が噴射される。
【0038】
次に、洗浄液供給機構57の一実施形態について説明する。
図5に示すように、洗浄液供給機構57は、洗浄液供給源53から洗浄液を洗浄液ノズル28aに供給可能に設けられた供給流路71を備える。供給流路71は、洗浄液ノズル28aに洗浄液を供給する共通液室67とキャビティ68を含んで構成されている。すなわち、本実施形態の洗浄液供給機構57は、洗浄液ヘッドユニット24a(図2参照)と、洗浄液供給源53が装着される装着部55と、を含んで構成され、吸引キャップ47を洗浄する洗浄動作において吸引キャップ47に洗浄液を供給可能に設けられている。
【0039】
供給流路71の途中に洗浄液を一時貯留する貯留部72を設けると、液体噴射ヘッド21に供給される洗浄液の圧力が安定する。貯留部72は、内部を大気開放した開放系のタンクにしてもよいが、壁面の一部を撓み変位可能なフィルム73で形成した閉鎖系の貯留室にすると、洗浄液への気体の混入が抑制できる。
【0040】
共通液室67の上流側には、洗浄液を濾過する第1フィルター74を設けるとよい。第1フィルター74は、液体噴射ヘッド21内を通過できない異物を捕集可能な捕集能力を備える。液体噴射装置11が保持部22を備える場合、保持部22が第1フィルター74を保持するようにしてもよい。
【0041】
共通液室67の上流側に、加圧供給される洗浄液の圧力を調整する圧力調整機構75を設けると、洗浄液ノズル28aに供給される圧力が安定する。保持部22は、圧力調整機構75を保持するようにしてもよい。
【0042】
次に、液体供給機構58の一実施形態について説明する。
液体供給機構58のうち、例えばホワイトインクなど、沈降性を示す成分を含む液体を供給する液体供給機構58には、両端が供給流路71と接続される帰還流路77を設けてもよい。
【0043】
帰還流路77は、第1端が供給流路71の第1位置P1に接続されるとともに、第1端とは反対側の第2端が供給流路71における第1位置P1よりもノズル28に近い第2位置P2に接続される。すなわち、第2端は、第1位置P1よりもノズル28側となる第2位置P2に接続される。
【0044】
供給流路71において、液体供給源54から第1位置P1までを上流流路71aとし、第1位置P1から第2位置P2までを中間流路71bとし、第2位置P2から液体噴射ヘッド21までの液体の流路と、液体噴射ヘッド21のノズル28に至る液体の流路を含めて下流流路71cとする。
【0045】
供給流路71と帰還流路77は、循環流路78を形成する。貯留部72は、帰還流路77が接続される供給流路71において、第1位置P1と第2位置P2の間に位置して循環流路78を構成する中間流路71bに設けるとよい。供給流路71及び帰還流路77において流体が流れる方向を図5に矢印で示す。供給ポンプ63は、供給流路71の第1位置P1より液体供給源54に近い上流流路71aに配置されて、液体供給源54から液体噴射ヘッド21に向けて液体を供給する。
【0046】
液体噴射装置11は、循環流路78内の流体を流動可能な循環ポンプ79と、帰還流路77の一部を構成する交換可能なフィルターユニット80と、帰還流路77内と外部とを連通可能な態様で帰還流路77に接続された連通流路81と、を備える。
【0047】
循環ポンプ79は、例えばチューブポンプであり、一方向に回転駆動した場合に流路を形成するチューブを押圧して流体を圧送し、その逆方向に回転駆動した場合にチューブの押圧を解除して流体の流通を許容する。循環流路78において循環ポンプ79が液体を圧送する方向(図5に矢印で示す方向)を流動方向とする。すなわち、循環ポンプ79は、循環流路78内の流体を流動方向に流動させる。循環ポンプ79は、ノズル28に形成されたメニスカスを壊さない圧力で流体を循環させる。
【0048】
循環ポンプ79は、ダイヤフラムポンプなど、他の形式のポンプでもよい。液体噴射装置11は、印刷を行わないときに循環ポンプ79を駆動して、循環流路78において液体を循環させることによって液体を攪拌し、顔料などの沈降を抑制または解消する。
【0049】
フィルターユニット80は、異物を捕集する第2フィルター83と、第2フィルター83を通過する前の一次側で液体を貯留する上流側フィルター室84と、を有する。連通流路81は、上流側フィルター室84に接続するとよい。上流側フィルター室84には第2フィルター83が捕集した気体が溜まるので、上流側フィルター室84に連通流路81を接続すると、捕集された気体が、連通流路81を通じて外部に排出される。
【0050】
第2フィルター83を上流側フィルターとしたときに、供給流路71の第2位置P2からノズル28に向かう下流流路71cに配置される第1フィルター74は、下流側フィルターとなる。下流側フィルターである第1フィルター74は、上流側フィルターである第2フィルター83より異物を捕集する能力が低くてもよい。
【0051】
循環ポンプ79は、例えば、帰還流路77において連通流路81が接続された接続位置P3と第1位置P1との間に配置される。接続位置P3は、帰還流路77の第1端と第2端の間にある。本実施形態では、帰還流路77において、接続位置P3から第2位置P2までを分流流路77aとし、分流流路77aが設けられる領域を「分流領域」とする。帰還流路77において、接続位置P3から第1位置P1までを合流流路77bとし、合流流路77bが設けられる領域(概ね図1に二点鎖線で囲む領域)を「合流領域」とする。
【0052】
分流領域には、循環流路78を構成する帰還流路77内の圧力を検出可能な圧力センサー86を設けるとよい。液体噴射装置11は、循環流路78に設けられ、循環流路78における流動方向への流体の流れを許容し、流動方向とは反対の方向への流体の流れを抑制する少なくとも1つの一方向弁(本実施形態では2つの第1一方向弁87と第2一方向弁88)を備えるとよい。例えば、分流領域において圧力センサー86とフィルターユニット80との間には、第2位置P2からフィルターユニット80に向かう流体の流れを許容するとともに、その逆方向への流体の流れを抑制する第1一方向弁87を設けるとよい。
【0053】
合流領域において循環ポンプ79と第1位置P1との間には、循環ポンプ79から第1位置P1に向かう流体の流れを許容するとともに、その逆方向への流体の流れを抑制する第2一方向弁88を設けるとよい。合流領域において第2一方向弁88と第1位置P1の間にも、貯留部72を設けるとよい。
【0054】
連通流路81には、開閉弁91が設けられている。開閉弁91は、気体排出ユニット92が装着されると開弁して連通流路81を開放し、気体排出ユニット92が取り外されると閉弁して連通流路81を閉塞する。気体排出ユニット92が装着された場合には、連通流路81は、気体排出ユニット92が備える排気流路93と連通する。
【0055】
気体排出ユニット92は、気体を外部に排出するための排気流路93と、外部から連通流路81への流体の混入を規制可能な流入規制部94と、気体と液体とを分離させる気液分離部95と、を備える。流入規制部94は、例えば、連通流路81内から外部への流体の流出を許容し、外部から連通流路81への気体(空気)の流入や排気流路93内からフィルターユニット80側への流体の逆流を規制する一方向弁である。気液分離部95は、流入規制部94より下流に設けられ、排気流路93からの気体の排出を許容し、排気流路93からの液体の排出を規制する。
【0056】
図6に示すように、液体噴射装置11は、操作パネル18、キャリッジモーター35、フラッシングポンプ44、吸引ポンプ51、供給ポンプ63、アクチュエーター69、及び循環ポンプ79を含む構成要素を制御する制御部97を備える。制御部97は、これら構成要素の制御に用いるプログラムを記憶したメモリー98を備え、メモリー98に記憶されたプログラムを実行することによって、各種の処理を行う。また、制御部97は、圧力センサー86と電気的に接続されている。
【0057】
制御部97は、所定のタイミングで、第2フィルター83の目詰まりの程度を推測する処理を実行する。例えば、循環ポンプ79が駆動していないときに圧力センサー86が検出した圧力値を停止圧力値とし、循環ポンプ79が駆動しているときに圧力センサー86が検出した圧力値を駆動圧力値とすると、制御部97は、停止圧力値と駆動圧力値をメモリー98に記憶させる。そして、制御部97は、停止圧力値と駆動圧力値との差が設定された閾値より大きい場合に、第2フィルター83が交換を要する程度に目詰まりしていると推測する。このとき、制御部97は、循環ポンプ79の駆動状況及び圧力センサー86が検出した圧力値に基づいて第2フィルター83の目詰まりの程度を推測する推測手段として機能する。
【0058】
この推定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションによって算出し、制御部97が備えるメモリー98が記憶しておいてもよいし、ユーザーが操作パネル18などを通じて入力するようにしてもよい。第2フィルター83が交換を要する程度に目詰まりしていると制御部97が推測した場合、操作パネル18などを通じて、その旨をユーザーに報知すると、フィルターユニット80が適切な時期に交換される。
【0059】
次に、圧力調整機構75の一実施形態について説明する。
図7に示すように、圧力調整機構75は、供給流路71の途中に設けられる供給室101と、供給室101と連通孔102を介して連通可能な圧力室103と、連通孔102を開閉可能な弁体104と、基端側が供給室101に収容されるとともに先端側が圧力室103に収容される受圧部材105と、を備える。供給室101、連通孔102、及び圧力室103は、ノズル28に流体(洗浄液及び液体)を供給する供給流路71の一部を構成する。
【0060】
弁体104は、例えば供給室101内に位置する受圧部材105の基端部分を囲むように取り付けられた環状の弾性体からなる。第1フィルター74は、例えば、供給室101への流入口に設置することができる。なお、受圧部材105の先端側に設けられた薄板状の受圧部から供給室101に延びる棒状部を途中で分割し、供給室101側の棒状部を弁体104と一体化してもよい。
【0061】
圧力室103の壁面の一部は、撓み変位可能な可撓膜107により形成される。また、圧力調整機構75は、供給室101に収容される第1付勢部材108と、圧力室103に収容される第2付勢部材109を備える。第1付勢部材108は、受圧部材105を介して、連通孔102を閉塞する方向に弁体104を付勢する。
【0062】
受圧部材105は、圧力室103の容積を小さくする方向に撓み変位する可撓膜107に押されることにより、変位する。また、可撓膜107は、ノズル28からの流体の排出に伴って圧力室103の内圧が低下したときに、圧力室103の容積を小さくする方向に撓み変位する。そして、可撓膜107の圧力室103側となる内側の面にかかる圧力(内圧)が可撓膜107の圧力室103の反対側となる外側の面にかかる圧力(外圧)より低くなり、かつ、内側の面にかかる圧力と外側の面にかかる圧力との差が設定値(例えば1kPa)以上になると、受圧部材105が変位して、弁体104が閉弁状態から開弁状態となる。
【0063】
なお、設定値とは、第1付勢部材108と第2付勢部材109の付勢力、可撓膜107を変位させるために必要な力、弁体104によって連通孔102を閉塞するために必要な押圧力(シール荷重)、受圧部材105の供給室101側および弁体104の表面に作用する供給室101内の圧力及び圧力室103内の圧力に応じて決まる値である。つまり、第1付勢部材108と第2付勢部材109の付勢力の合計が大きいほど、設定値は大きくなる。第1付勢部材108と第2付勢部材109の付勢力は、例えば、圧力室103内の圧力が、ノズル28における気液界面にメニスカスを形成可能な範囲の負圧状態(例えば可撓膜107の外側の面にかかる圧力が大気圧の場合、−1kPa)となるように設定される。
【0064】
連通孔102が開放されて供給室101から圧力室103に流体が流入すると、圧力室103の内圧が上昇する。そして、圧力室103の内圧が上述の設定値になると、弁体104が連通孔102を閉塞する。そのため、供給室101に流体が加圧供給されても、ノズル28から流体が排出されても、圧力室103からキャビティ68までの圧力(ノズル28の背圧)は、概ね設定値程度に維持される。
【0065】
本実施形態において、圧力調整機構75は、供給流路71の第2位置P2から液体噴射ヘッド21に向かう下流流路71cに配置される。そして、供給流路71を連通状態と非連通状態とに切替可能な弁体104を有して、弁体104より下流の領域の圧力が外部空間の圧力未満である設定値より小さくなった場合に、弁体104が自律的に供給流路71(連通孔102)を連通状態から非連通状態に切り替える。そのため、圧力調整機構75は差圧弁(差圧弁の中でも特に減圧弁)に分類される。
【0066】
圧力調整機構75には、強制的に連通孔102を開いて液体を液体噴射ヘッド21に供給する開弁機構111を付加してもよい。開弁機構111は、例えば、可撓膜107により圧力室103と区画された収容室112に収容された加圧袋113と、加圧袋113内に気体を流入させる加圧流路114とを備える。そして、加圧流路114を通じて流入する気体により加圧袋113が膨らみ、可撓膜107を圧力室103の容積を小さくする方向に撓み変位させることによって、強制的に連通孔102を開く。開弁機構111が強制的に連通孔102を開くことによって、供給流路71(連通孔102)を強制的に非連通状態から連通状態に切り替えることができる。
【0067】
次に、フィルターユニット80の一実施形態について説明する。
図8に示すように、フィルターユニット80は、円筒状のケース116を備える。第2フィルター83は円筒状をなして、ケース116と中心軸が重なるようにケース116内に配置される。帰還流路77は、円筒状をなすケース116の円形状の底面及び上面に接続される。上流側フィルター室84は、ケース116と第2フィルター83の間に囲み形成されることにより、帰還流路77の一部を構成する。
【0068】
第2フィルター83は、円筒の内周面により形成される孔83aを有するとともに、第2フィルター83の底面部分と上面部分は円盤状の支持板117によって閉塞される。孔83aの上端は上面側の支持板117により閉塞され、孔83aの下端側は底面側の支持板117を貫通する。孔83a内の空間は第2フィルター83の二次側であって、帰還流路77の合流領域を構成する。
【0069】
フィルターユニット80は、一次側(上流側)が二次側(下流側)よりも高くなるように傾斜して配置するとよい。また、連通流路81は、上流側フィルター室84における鉛直方向の上端部に接続するとよい。こうすると、上流側フィルター室84に入った気体が、上流側フィルター室84における最も高い位置となるコーナー部に溜まるので、連通流路81には液体よりも気体が入りやすくなる。
【0070】
帰還流路77において、上流側となる分流領域からフィルターユニット80に流体が入ると、その流体は一時的に上流側フィルター室84に貯留された後、第2フィルター83の外周面から第2フィルター83内に進入して孔83aに至る。このとき、気泡を含む異物は第2フィルター83に捕集される。また、第2フィルター83に捕集された気泡は、上流側フィルター室84の上部に溜まって、連通流路81及び排気流路93から流路の外部に流出する。そして、第2フィルター83により異物が濾過された液体は、孔83aを通じてフィルターユニット80の下流側の合流領域に移動する。なお、図8に示す構成中において、流体が流れる方向を矢印で示す。
【0071】
次に、気液分離部95の一実施形態について説明する。
図8に示すように、気液分離部95は、排気流路93の末端で液体を一時貯留する脱気室119と、脱気室119と脱気膜120で区画された排気室121と、排気室121を外部に連通させる排気路122と、を備える。脱気膜120は、気体を通過させるが液体を通過させない性質を有する。脱気膜120としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を特殊延伸加工して作られるフィルムに、0.2ミクロン程度の微細な孔を多数形成したものを採用することができる。脱気室119に気体を含む液体が流入すると、気体のみが脱気膜120を通過して排気室121に入り、排気路122を通じて外部に排出される。これにより、排気流路93からの液体の排出を抑制しつつ、脱気室119に貯留された液体に混入した気泡や溶存ガスが除去される。
【0072】
次に、液体噴射装置11のメンテナンス方法について説明する。
図9に示すメンテナンス処理ルーチンは、液体噴射装置11の電源がオンされたタイミングで実行される。
【0073】
図9に示すように、ステップS101において、制御部97は、メンテナンス動作が実行されたか否かを判断する。メンテナンス動作が実行されていない場合は(ステップS101:NO)、メンテナンス動作が実行されるまで待機する。メンテナンス動作が実行された場合には(ステップS101:YES)、ステップS102において、制御部97は、経過時間Tの計測を開始する。
【0074】
ステップS103において、制御部97は、電源オフが指示されたか否かを判断する。電源オフが指示された場合には(ステップS103:YES)、ステップS104において、制御部97は、洗浄動作を実行し、メンテナンス処理ルーチンを終了する。
【0075】
ステップS103において、電源オフが指示されていない場合には(ステップS103:NO)、ステップS105において、制御部97は、経過時間Tが第2設定時間t2を越えたか否かを判断する。経過時間Tが第2設定時間t2を越えた場合には(ステップS105:YES)、ステップS106において、制御部97は、経過時間Tをリセットする。ステップS107において、制御部97は、洗浄動作を実行し、処理をステップS103に移行する。
【0076】
ステップS105において、経過時間Tが第2設定時間t2を越えていない場合には(ステップS105:NO)、ステップS108において、制御部97は、メンテナンス動作が実行されたか否かを判断する。メンテナンス動作が実行されていない場合は(ステップS108:NO)、制御部97は、処理をステップS103に移行する。
【0077】
ステップS108において、メンテナンス動作が実行された場合には(ステップS108:YES)、ステップS109において、制御部97は、経過時間Tが第1設定時間t1を越えたか否かを判断する。経過時間Tが第1設定時間t1を越えていない場合には(ステップS109:NO)、制御部97は、処理をステップS103に移行する。ステップS108において、経過時間Tが第1設定時間t1を越えた場合には、制御部97は、処理をステップS106に移行する。
【0078】
次に、液体噴射装置11の作用を説明する。
図10に示すように、制御部97は、液体噴射装置11の電源がオンされて最初のメンテナンス動作M1が実行されると、経過時間Tの計測を開始する。
【0079】
メンテナンス動作では、吸引キャップ47が液体ノズル28bを含む閉空間を形成した状態で、吸引ポンプ51を駆動して液体を吸引する。1回のメンテナンス動作では、複数設けられた液体ヘッドユニット24bを1つずつ順にキャッピングして吸引ポンプ51を駆動し、全ての液体ノズル28bから液体を吸引する。メンテナンス動作を行うときには、供給ポンプ63を駆動して、液体供給源54の液体を加圧供給してもよい。メンテナンス動作により、気泡等の異物を含む液体が液体ノズル28bから排出されると同時に、液体供給源54から供給された新しい液体が供給流路71に充填される。
【0080】
吸引キャップ47は、液体噴射ヘッド21のメンテナンス動作において、液体噴射ヘッド21から排出された液体を受容する。吸引ポンプ51は、吸引キャップ47が受容した液体を吸引し、液体を吸引チューブ50を介して廃液収容部38に排出させる。このとき、吸引キャップ47及び吸引チューブ50には、液体が残ることがある。残った液体は、時間の経過に伴って変質(例えば増粘や固化)し、吸引チューブ50を詰まらせてしまう虞がある。
【0081】
本実施形態では、付着した液体を洗浄液によって洗い流せなくなる虞のある時間を第2設定時間t2(例えば24時間)とする。第1設定時間t1は、第2設定時間t2よりも短い時間(例えば23時間半)である。第1設定時間t1と第2設定時間t2の差は、メンテナンス動作に要する時間よりも長い時間であることが好ましい。第1設定時間t1と第2設定時間t2の差は、1つの被噴射媒体Sに印刷するのに要する時間、もしくは1回の印刷処理に要する時間よりも長い時間であることが好ましい。
【0082】
先のメンテナンス動作M1が実行されてから、後のメンテナンス動作M2が実行されるまでの経過時間Tが、第1設定時間t1よりも短い場合には、制御部97は、メンテナンス動作M2のみを実行する。すなわち、制御部97は、メンテナンス動作M2を実行し、洗浄動作は実行しない。洗浄動作を伴わないメンテナンス動作M2を実行した場合には、制御部97は、経過時間Tをリセットせずに継続して計測する。
【0083】
先のメンテナンス動作M1が実行されてから、後のメンテナンス動作M3が実行されるまでの経過時間Tが、第1設定時間t1よりも長く、且つ第2設定時間t2よりも短い場合には、制御部97は、メンテナンス動作M3と洗浄動作とを実行する。すなわち、洗浄動作は、後に実行されるメンテナンス動作M3が実行された後、メンテナンス動作M3に続けて実行される。
【0084】
メンテナンス動作M3に続けて洗浄動作を実行する場合には、制御部97は、メンテナンス動作M3が終了したタイミングで経過時間Tをリセットする。制御部97は、洗浄動作を伴うメンテナンス動作M3が実行されると、メンテナンス動作M3が終了した時点から経過した時間を、経過時間Tとして計測する。
【0085】
洗浄動作は、吸引キャップ47が洗浄液ノズル28aを含む空間を形成した状態で、吸引ポンプ51により洗浄液を吸引する。これにより、洗浄液は、液体噴射ヘッド21が有する洗浄液ノズル28aから吸引キャップ47に供給される。吸引ポンプ51は、洗浄液を吸引チューブ50に導入し、吸引キャップ47及び吸引チューブ50を洗浄する。
【0086】
洗浄動作を行うときには、供給ポンプ63を駆動して、洗浄液供給源53の洗浄液を加圧供給してもよい。洗浄動作により、洗浄液が洗浄液ノズル28aから排出されると同時に、洗浄液供給源53から供給された新しい洗浄液が供給流路71に充填される。
【0087】
制御部97は、洗浄液ヘッドユニット24aをキャッピングした状態で吸引ポンプ51を駆動した後、吸引キャップ47を退避位置に位置させた状態で吸引ポンプ51を駆動する。これにより、吸引キャップ47及び吸引チューブ50から洗浄液が排出され、廃液収容部38に収容される。
【0088】
図11に示すように、経過時間Tが第2設定時間t2となると、制御部97は、洗浄動作を実行する。すなわち、洗浄動作は、先のメンテナンス動作Mを実行してから第2設定時間t2まで後のメンテナンス動作が実行されない場合、第2設定時間t2に実行される。
【0089】
図12に示すように、液体噴射装置11の電源の遮断が指示された場合、制御部97は、洗浄動作を実行してから液体噴射装置11の電源を遮断する。洗浄動作は、電源が遮断される場合、メンテナンス動作Mを実行してから経過した経過時間Tに関わらず実行される。
【0090】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)メンテナンス動作に伴って液体噴射ヘッド21から排出されて吸引キャップ47に受容された液体は、時間が経過するのに伴って増粘もしくは固化し、洗浄動作では洗浄できなくなる虞がある。しかし、度々洗浄動作を実行することは煩雑である。その点、先のメンテナンス動作が実行されてから第1設定時間t1が経過し、さらに第2設定時間t2が経過するまでに後のメンテナンス動作が実行される場合に、後のメンテナンス動作に続けて洗浄動作が実行される。これにより洗浄動作による洗浄が可能なうちにメンテナンス機構37を洗浄し、液体の増粘などに伴ってメンテナンス性能が低下する虞を低減できる。したがって、メンテナンス機構37による液体噴射ヘッド21のメンテナンス性能を確保しつつ、メンテナンス機構37の洗浄を効率的に行うことができる。
【0091】
(2)先のメンテナンス動作を実行してから後のメンテナンス動作を実行するまでの時間が第2設定時間t2よりも長い場合には、先のメンテナンス動作を実行してから第2設定時間t2が経過したところで洗浄動作が実行される。したがって、洗浄動作が実行される頻度を低減し、メンテナンス機構37の洗浄を効率的に行うことができる。
【0092】
(3)電源が遮断される場合には、メンテナンス動作を実行してから経過した経過時間Tに関わらず洗浄動作が実行される。そのため、メンテナンス機構37が洗浄されないまま放置される虞を低減できる。
【0093】
(4)液体噴射ヘッド21が有する洗浄液ノズル28aを利用して洗浄液を吸引キャップ47に供給する。そのため、洗浄液を供給するための機構を別に設ける場合に比べて、簡易な構成で洗浄動作を行うことができる。
【0094】
(5)吸引キャップ47が受容した液体を吸引して排出させる吸引ポンプ51を利用し、洗浄液ノズル28aから洗浄液を吸引する。そのため、洗浄液を供給するための機構を別に設ける場合に比べて、簡易な構成で洗浄動作を行うことができる。
【0095】
上記実施形態は以下に示す変更例のように変更してもよい。上記実施形態と下記変更例とは、任意に組み合わせてもよい。下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
【0096】
・例えば紙や布などの被噴射媒体Sは、擦れた場合などに細かい毛のようなケバが生じることがある。液体噴射装置11は、ケバを捕らえるケバキャッチャーを備えてもよい。例えば、ケバキャッチャーは、ケバを収集する収集面を有しており、収集面が被噴射媒体Sと対面するように保持部22に設けることができる。ケバキャッチャーは、保持部22の移動に伴ってその収集面が被噴射媒体Sと対面しながら移動し、ケバを収集する。吸収部材49は、ケバキャッチャーの収集面を払拭可能としてもよい。
【0097】
・洗浄液供給機構57は、吸収部材49に洗浄液を供給してもよい。吸収部材49は、洗浄液が含浸した状態でノズル形成面27やケバキャッチャーの収集面を払拭してもよい。ケバキャッチャーの収集面を洗浄液で湿らせることで、ケバをより収集しやすくできる。
【0098】
・洗浄液供給機構57は、メンテナンス動作の一例であるフラッシングにおいて液体噴射ヘッド21から排出された液体を受容する受容部の一例であるフラッシングボックス42に洗浄液を供給してもよい。液体噴射装置11は、フラッシング部39を洗浄可能としてもよい。フラッシング部39の洗浄動作は、フラッシングボックス42に洗浄液を噴射し、フラッシングポンプ44により洗浄液を廃液収容部38に排出する。これにより、フラッシングボックス42及びフラッシングチューブ43に残る液体が増粘もしくは固化してしまう虞を低減できる。フラッシング部39の洗浄動作は、第2設定時間t2よりも短い間隔で行うことが好ましい。
【0099】
・フラッシング部39は、フラッシングポンプ44を備えない構成としてもよい。フラッシングボックス42に受容された液体及び洗浄液は、重力により廃液収容部38に収集されるようにしてもよい。
【0100】
・洗浄液供給機構57は、ワイパー48に洗浄液を供給し、ワイパー48を洗浄してもよい。
・洗浄液供給機構57は、放置キャップ46に洗浄液を供給してもよい。液体噴射装置11は、放置キャップ46がキャッピングして形成する空間を保湿するための保湿液として、洗浄液を使用してもよい。
【0101】
・液体噴射装置11は、放置キャップ46を洗浄可能としてもよい。放置キャップ46は、大気連通孔を備えてもよい。放置キャップ46は、キャッピングして形成する空間を大気連通孔により外部とを連通させることで、空間内の圧力の変動を低減できる。放置キャップ46の洗浄は、放置キャップ46に供給した洗浄液を大気連通孔から排出させて行ってもよい。
【0102】
・洗浄液供給機構57は、開弁機構111により供給流路71を連通させた状態で供給ポンプ63を駆動し、洗浄液を加圧供給してもよい。洗浄液供給機構57は、圧力調整機構75を備えない構成としてもよい。
【0103】
・液体噴射ヘッド21は、洗浄液を噴射しなくてもよい。液体噴射装置11は、洗浄液ノズル28aに対応するアクチュエーター69を電気的に接続しない構成としてもよい。液体噴射ヘッド21は、洗浄液ノズル28aに対応するアクチュエーター69を備えない構成としてもよい。
【0104】
・洗浄動作は、吸引キャップ47を退避位置に位置させた状態で行ってもよい。洗浄液供給機構57は、洗浄液ノズル28aから洗浄液を噴射して、吸引キャップ47に洗浄液を供給してもよい。洗浄液供給機構57は、加圧供給された洗浄液を洗浄液ノズル28aから滴下して、吸引キャップ47に洗浄液を供給してもよい。洗浄動作は、吸引キャップ47がキャッピングしていない状態で吸引ポンプ51を駆動し、吸引キャップ47に供給された洗浄液を廃液収容部38へ送ってもよい。
【0105】
・洗浄液供給機構57は、単位時間あたりに供給可能な洗浄液の量が異なる複数の方法で洗浄液を供給してもよい。例えば、単位時間あたりに供給可能な洗浄液の量は、洗浄液ノズル28aからの噴射より供給ポンプ63による加圧供給が多く、加圧供給より吸引ポンプ51による吸引排出が多い。洗浄液の供給方法は、経過時間Tに応じて変更してもよい。これにより、洗浄液の消費量を低減できる。例えば、第1設定時間t1よりも短い経過時間Tでメンテナンス動作が実行された場合には、洗浄液ノズル28aから吸引キャップ47に洗浄液を噴射してもよい。洗浄液により吸引キャップ47に付着した液体が変質(増粘や固化)する速度を遅らせることができる。第1設定時間t1よりも長く、第2設定時間t2よりも短い経過時間Tでメンテナンス動作が実行された場合には、洗浄液を加圧供給してもよい。経過時間Tが第2設定時間t2を超えた場合には、洗浄液を吸引排出してもよい。
【0106】
・洗浄動作は、洗浄液ヘッドユニット24aをキャッピングした状態で吸引ポンプ51を駆動した後、吸引キャップ47を退避位置に位置させた状態で吸引ポンプ51を駆動しなくてもよい。すなわち、洗浄動作では、吸引キャップ47及び吸引チューブ50内に洗浄液を残してもよい。吸引キャップ47及び吸引チューブ50内の洗浄液は、一定時間経過して変質した液体を溶解させた後、廃液収容部38に排出してもよい。
【0107】
・洗浄動作では、吸引ポンプ51を駆動しなくてもよい。吸引キャップ47に供給された洗浄液は、重力により廃液収容部38に収集されるようにしてもよい。
・洗浄液供給機構57は、洗浄液ヘッドユニット24aを含まない構成としてもよい。例えば、洗浄液供給機構57は、供給流路71の下流端を吸引キャップ47に接続して洗浄液を供給してもよい。また、例えば、保持部22に固定した供給流路71の下流端から、退避位置に位置させた吸引キャップ47に洗浄液を供給してもよい。また、例えば、液体噴射ヘッド21に洗浄液を供給する供給口を設けてもよい。
【0108】
・洗浄液供給機構57及び液体供給機構58は、供給ポンプ63、上流側一方向弁64、及び下流側一方向弁65を備えない構成としてもよい。液体噴射装置11は、例えば水頭により洗浄液供給源53から吸引キャップ47に洗浄液を供給してもよい。液体噴射装置11は、例えば水頭により液体供給源54から液体噴射ヘッド21に液体を供給してもよい。
【0109】
・洗浄動作は、液体噴射装置11の電源が遮断される場合であっても、実行しなくてもよい。例えば、メンテナンス動作及び洗浄動作を実行した後、次のメンテナンス動作が実行される前に電源が遮断される場合には、洗浄動作を実行せずに電源を遮断してもよい。経過時間Tが閾値時間よりも短く、第2設定時間t2までに余裕がある場合には、洗浄動作を実行せずに電源を遮断してもよい。
【0110】
・洗浄動作は、先のメンテナンス動作を実行してから第2設定時間t2まで後のメンテナンス動作が実行されない場合でも、第2設定時間t2に実行されなくてもよい。例えば、第2設定時間t2に印刷などの他の動作を実行していた場合には、制御部97は、実行中の動作が終了してから洗浄動作を実行してもよい。第2設定時間t2を跨ぐ印刷をする場合には、印刷の途中で洗浄液ノズル28aから吸引キャップ47に洗浄液を噴射し、印刷終了後に洗浄動作を実行してもよい。液体噴射ヘッド21は、吸引ポンプ51が吸引チューブ50の押圧を解除した状態で洗浄液を噴射することが好ましい。
【0111】
・被噴射媒体Sは用紙に限らず、プラスチックフィルムや薄い板材などでもよいし、捺染装置などに用いられる布帛であってもよい。
・液体噴射ヘッド21が噴射する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。
【0112】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
[思想1]
被噴射媒体に液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのメンテナンス動作において該液体噴射ヘッドから排出された前記液体を受容する受容部を有するメンテナンス機構と、
前記受容部を洗浄する洗浄動作において該受容部に洗浄液を供給可能な洗浄液供給機構と、
を備え、
前記洗浄動作は、先の前記メンテナンス動作が実行されてから後の前記メンテナンス動作が実行されるまでの時間が、第1設定時間よりも長く、且つ第2設定時間よりも短い場合には、後に実行される前記メンテナンス動作が実行された後、該メンテナンス動作に続けて実行されることを特徴とする液体噴射装置。
【0113】
メンテナンス動作に伴って液体噴射ヘッドから排出されて受容部に受容された液体は、時間が経過するのに伴って増粘もしくは固化し、洗浄動作では洗浄できなくなる虞がある。しかし、度々洗浄動作を実行することは煩雑である。その点、この構成によれば、先のメンテナンス動作が実行されてから第1設定時間が経過し、さらに第2設定時間が経過するまでに後のメンテナンス動作が実行される場合に、後のメンテナンス動作に続けて洗浄動作が実行される。これにより洗浄動作による洗浄が可能なうちにメンテナンス機構を洗浄し、液体の増粘などに伴ってメンテナンス性能が低下する虞を低減できる。したがって、メンテナンス機構による液体噴射ヘッドのメンテナンス性能を確保しつつ、メンテナンス機構の洗浄を効率的に行うことができる。
【0114】
[思想2]
前記洗浄動作は、先の前記メンテナンス動作を実行してから前記第2設定時間まで後の前記メンテナンス動作が実行されない場合、前記第2設定時間に実行されることを特徴とする[思想1]に記載の液体噴射装置。
【0115】
この構成によれば、先のメンテナンス動作を実行してから後のメンテナンス動作を実行するまでの時間が第2設定時間よりも長い場合には、先のメンテナンス動作を実行してから第2設定時間が経過したところで洗浄動作が実行される。したがって、洗浄動作が実行される頻度を低減し、メンテナンス機構の洗浄を効率的に行うことができる。
【0116】
[思想3]
前記洗浄動作は、電源が遮断される場合、前記メンテナンス動作を実行してから経過した経過時間に関わらず実行されることを特徴とする[思想1]又は[思想2]に記載の液体噴射装置。
【0117】
この構成によれば、電源が遮断される場合には、メンテナンス動作を実行してから経過した経過時間に関わらず洗浄動作が実行される。そのため、メンテナンス機構が洗浄されないまま放置される虞を低減できる。
【0118】
[思想4]
前記洗浄液は、前記液体噴射ヘッドが有する洗浄液ノズルから前記受容部に供給されることを特徴とする[思想1]〜[思想3]のうち何れか一つに記載の液体噴射装置。
【0119】
この構成によれば、液体噴射ヘッドが有する洗浄液ノズルを利用して洗浄液を受容部に供給する。そのため、洗浄液を供給するための機構を別に設ける場合に比べて、簡易な構成で洗浄動作を行うことができる。
【0120】
[思想5]
前記メンテナンス機構は、前記受容部が受容した前記液体を吸引し、該液体を排出流路を介して廃液収容部に排出させるポンプを有し、
前記受容部は、前記液体噴射ヘッドに接触して前記ノズルを含む空間を形成するキャップであり、
前記洗浄動作は、前記キャップが前記洗浄液ノズルを含む空間を形成した状態で、前記ポンプにより前記洗浄液を吸引し、該洗浄液を前記排出流路に導入して洗浄することを特徴とする[思想4]に記載の液体噴射装置。
【0121】
この構成によれば、受容部が受容した液体を吸引して排出させるポンプを利用し、洗浄液ノズルから洗浄液を吸引する。そのため、洗浄液を供給するための機構を別に設ける場合に比べて、簡易な構成で洗浄動作を行うことができる。
【0122】
[思想6]
被噴射媒体に液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのメンテナンス動作において該液体噴射ヘッドから排出された前記液体を受容する受容部を有するメンテナンス機構と、
を備える液体噴射装置のメンテナンス方法であって、
先の前記メンテナンス動作が実行されてから後の前記メンテナンス動作が実行されるまでの時間が、第1設定時間よりも長く、且つ第2設定時間よりも短い場合には、後に実行される前記メンテナンス動作に続けて前記受容部を洗浄する洗浄動作を実行することを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。
【0123】
この方法によれば、上記液体噴射装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0124】
11…液体噴射装置、12…第1筐体部、13…第2筐体部、14…媒体支持トレイ、14a…セット面、15…媒体搬送部、16…開口部、17…開閉カバー、18…操作パネル、19…上カバー、21…液体噴射ヘッド、22…保持部、24…ヘッドユニット、24a…洗浄液ヘッドユニット、24b…液体ヘッドユニット、25…板金、26…貫通孔、27…ノズル形成面、28…ノズル、28a…洗浄液ノズル、28b…液体ノズル、29…ノズル列、31…ガイド軸、32…タイミングベルト、33…駆動プーリー、34…従動プーリー、35…キャリッジモーター、37…メンテナンス機構、38…廃液収容部、39…フラッシング部、40…メンテナンス部、42…フラッシングボックス、43…フラッシングチューブ、44…フラッシングポンプ、46…放置キャップ、47…吸引キャップ(受容部、キャップの一例)、48…ワイパー、49…吸収部材、50…吸引チューブ(排出流路の一例)、51…吸引ポンプ(ポンプの一例)、53…洗浄液供給源、54…液体供給源、55…装着部、57…洗浄液供給機構、58…液体供給機構、60…袋体、61…収容ケース、62…導出部、63…供給ポンプ、64…上流側一方向弁、65…下流側一方向弁、67…共通液室、68…キャビティ、69…アクチュエーター、71…供給流路、71a…上流流路、71b…中間流路、71c…下流流路、72…貯留部、73…フィルム、74…第1フィルター、75…圧力調整機構、77…帰還流路、77a…分流流路、77b…合流流路、78…循環流路、79…循環ポンプ、80…フィルターユニット、81…連通流路、83…第2フィルター、83a…孔、84…上流側フィルター室、86…圧力センサー、87…第1一方向弁、88…第2一方向弁、91…開閉弁、92…気体排出ユニット、93…排気流路、94…流入規制部、95…気液分離部、97…制御部、98…メモリー、101…供給室、102…連通孔、103…圧力室、104…弁体、105…受圧部材、107…可撓膜、108…第1付勢部材、109…第2付勢部材、111…開弁機構、112…収容室、113…加圧袋、114…加圧流路、116…ケース、117…支持板、119…脱気室、120…脱気膜、121…排気室、122…排気路、M,M1〜M3…メンテナンス動作、P1…第1位置、P2…第2位置、P3…接続位置、S…被噴射媒体、T…経過時間、t1…第1設定時間、t2…第2設定時間、X…幅方向、Y…前後方向、Z…上下方向。
図1
図2
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図12