【実施例】
【0018】
図1は本発明の実施例のシフト装置11を含む変速機が搭載されたエンジン1をその左方から見た外観図である。エンジン1は例えば自動二輪車に用いられるエンジンである。なお、本実施例において、装置、部品、部材等の形状や配置、動作を説明するに当たって方向を示す場合には、エンジン1が搭載された自動二輪車の運転席に座する運転者を基準にする。各図の右下の矢印は、当該運転者を基準にした上(U)、下(D)、左(L)、右(R)、前(F)、後(B)をそれぞれ示している。
【0019】
エンジン1は、クランクケース2、クランクケース2の前部上方に設けられたシリンダ3、シリンダ3の上方に設けられたシリンダヘッド4、シリンダヘッド4の上方を覆うヘッドカバー5、およびクランクケース2の下方に設けられたオイルパン6を備えている。クランクケース2の内部前側にはクランクシャフトが設けられている。クランクシャフトは左右方向に伸長している。
図1中のAはクランクシャフトの軸心を示している。シリンダ3の内部にはピストンが設けられ、ピストンはコネクティングロッドを介してクランクシャフトに連結されている。また、シリンダヘッド4には吸気ポートおよび排気ポートが設けられている。また、シリンダヘッド4の内部には吸気バルブ、排気バルブおよび動弁機構が設けられ、また、シリンダヘッド4には点火プラグが取り付けられている。
【0020】
また、クランクケース2の内部後側には常時噛合式の変速機が設けられている。変速機は、複数のギヤがそれぞれ設けられたメインシャフトおよびドライブシャフト、並びに本発明の実施例のシフト装置11を備えている。メインシャフトおよびドライブシャフトはそれぞれクランクシャフトと平行に伸長している。
図1中のBはメインシャフトの軸心を示している。また、
図1中のCはドライブシャフトの軸心を示している。また、シフト装置11に含まれる後述のシフトカム12もクランクシャフトと平行に伸長している。
図1中のDはシフト装置11に含まれるシフトカム12の軸心を示している。
【0021】
クランクシャフトの回転は、クランクシャフトに固定されたプライマリドライブギヤおよびメインシャフトに固定されたプライマリドリブンギヤを介してメインシャフトに伝達される。変速機において、メインシャフトの回転は、メインシャフトおよびドライブシャフトにそれぞれ設けられた複数のギヤによりドライブシャフトに伝達される。シフト装置11は、メインシャフトおよびドライブシャフトにそれぞれ設けられた複数のギヤのうち、メインシャフトの回転をドライブシャフトに伝達するギヤの組合せを切り換える。これにより変速比が変化する。さらに、ドライブシャフトの回転はドライブチェーンを介して自動二輪車の駆動輪に伝達される。
【0022】
また、エンジン1において左側の後部下側にはシフトペダルシャフト61が設けられている。シフトペダルシャフト61は左右方向に伸長し、クランクケース2とサイドカバー52に回転可能に支持されている。シフトペダルシャフト61の先端側には、運転者が左足でシフト操作を行うためのシフトペダルが取り付けられている。
図1中のEはシフトペダルシャフト61の軸心を示している。
【0023】
図2は、
図1中のエンジン1においてシフト装置11のサイドカバー52が設けられた部分を拡大して示している。
図3は、
図2中のシフト装置11のシフトカムセンサ48およびサイドカバー52を外した状態を示している。
図4は、
図2中の矢示IV−IV方向から見たクランクケース2の後部およびシフト装置11のそれぞれの断面を示している。
図5はシフト装置11においてシフトカムセンサ48を除く部分を示している。
図6はシフト装置11におけるシフトカム12、シフトカムプレート27、伝達シャフト39等のそれぞれの断面を示している。
図6の切断位置は
図4の切断位置と同じである。
【0024】
シフト装置11は、
図5に示すように、シフトカム12、複数のシフトフォーク23、複数のフォークシャフト24、25、シフトカムプレート27、ストッパアーム35、伝達シャフト39およびドライブプレート43を備えている。さらに、シフト装置11は、
図4に示すように、シフトカムセンサ48およびサイドカバー52を備えている。
【0025】
シフトカム12は、
図5に示すように、例えば金属材料により円筒状に形成されている。シフトカム12の外周面にはシフトフォーク23を動作させるためのカム溝13が形成されている。シフトカム12は、
図4に示すように、クランクケース2の内部後側に配置され、左右方向に伸長している。また、シフトカム12は、メインシャフトおよびドライブシャフトの下方に配置されている。また、シフトカム12の両端部は、クランクケース2の2箇所に形成された支持部18に、左側ベアリング20および右側ベアリング21を介して回転可能に支持されている。これにより、シフトカム12は軸心Dを中心に回転することができる。
【0026】
また、
図6に示すように、シフトカム12の左端部には、シフトカム12の左右方向中間部よりも直径が小さい小径部14が形成されている。また、シフトカム12の左右方向中間部と小径部14との間には段部15が形成されている。小径部14には左側ベアリング20の内輪およびシフトカムプレート27が取り付けられている。
【0027】
また、シフトカム12の左端部において、シフトカム12の軸心D(回転軸)に対応する位置、具体的には、シフトカム12の左端面の中央には挿入穴16が形成されている。挿入穴16は、シフトカム12の左端面から段部15を越える位置まで右方へ伸長している。また、本実施例における挿入穴16はシフトカム12の左端部を貫通している。挿入穴16には伝達シャフト39が圧入されている。
【0028】
図5に示すシフトフォーク23は、メインシャフトおよびドライブシャフトにそれぞれ設けられたスライドギヤをスライド移動させる部材である。すなわち、メインシャフトにそれぞれ設けられた複数のギヤには、メインシャフトと一体回転し、かつメインシャフトの軸方向にスライド移動することができるスライドギヤが含まれている。また、ドライブギヤにそれぞれ設けられた複数のギヤにも、ドライブシャフトと一体回転し、かつドライブシャフトの軸方向にスライド移動することができるスライドギヤが含まれている。シフトフォーク23は、これらスライドギヤをスライド移動させることにより、メインシャフトの回転をドライブシャフトへ伝達するギヤの組合せを切り換える。
【0029】
シフト装置11は、
図5に示すように、3個のシフトフォーク23を備えている。3個のシフトフォーク23のうちの1個は、メインシャフトに設けられたスライドギヤをスライド移動させるシフトフォークであり、前側フォークシャフト24にその軸方向にスライド可能に支持されている。残りの2個のシフトフォーク23は、ドライブシャフトに設けられた2個のスライドギヤをそれぞれスライド移動させるシフトフォークであり、後側フォークシャフト25にその軸方向にスライド可能に支持されている。なお、図示を省略しているが、前側フォークシャフト24および後側フォークシャフト25のぞれぞれの両端部はクランクケース2に支持されている。各シフトフォーク23の下端側にはシフトカム12の外周面に向かって突出するピンが設けられており、各ピンはシフトカム12のカム溝13に係合している。また、前側フォークシャフト24に支持されたシフトフォーク23の上端側の部分は、メインシャフトに設けられたスライドギヤに連結されている。また、後側フォークシャフト25に支持されたシフトフォーク23の上端側の部分は、メインシャフトに設けられた2個のスライドギヤにそれぞれ連結されている。シフトカム12が回転すると、カム溝13の形状に応じて各シフトフォーク23がスライド移動し、各シフトフォーク23のスライド移動により、各スライドギヤがスライド移動する。
【0030】
シフトカムプレート27は、ドライブプレート43の揺動に応じてシフトカム12を回転させる部材である。シフトカムプレート27は、
図4に示すように、シフトカム12の左端部に固定されている。ここで、
図7は、シフトカムプレート27および伝達シャフト39をそれらの左方から見た状態を示している。
図7に示すように、シフトカムプレート27の外周面には、ストッパアーム35(
図3参照)が係合する例えば7個の係合凹部28が形成されている。本実施例における変速機は例えば6段変速機である。シフトカムプレート27の周方向に60度間隔に形成された6個の係合凹部28は6段変速機のそれぞれの段に対応している。また、これら6個の係合凹部28のうち互いに隣接する一対の係合凹部28の間に形成された1個の係合凹部28はニュートラルに対応している。
【0031】
また、シフトカムプレート27の左端面における外縁側には、ドライブプレート43の複数の爪部46(
図8参照)と係合する複数の突起部29が形成されている。本実施例のシフトカムプレート27には例えば6個の突起部29が形成されており、これら突起部29は60度間隔に配置されている。また、各突起部29は、
図6に示すように、シフトカムプレート27の左端面から左方に突出している。
【0032】
また、シフトカムプレート27には、
図6に示すように、当該シフトカムプレート27の中央部を左右方向(すなわち軸方向)に貫通する貫通穴30が形成されている。貫通穴30における右端側部分は左端側部分よりも直径が小さく、貫通穴30における右端側部分と左端側部分との間には段部31が形成されている。貫通穴30には伝達シャフト39が挿入されている。
【0033】
また、シフトカムプレート27の右端面27Aには、横断面形状が円形の円形凹部33が形成されている。円形凹部33内には、シフトカム12の左端部(小径部14)が挿入され、固定されている。これにより、シフトカムプレート27とシフトカム12とは一体化されており、両者は共に回転する。
【0034】
図3に示すストッパアーム35は、シフトカムプレート27の係合凹部28に係合することにより、シフトカムプレート27およびシフトカム12を、変速機の各段に対応する位置に停止させる機能を有している。ストッパアーム35の基端部はクランクケース2に回転可能に支持されている。また、ストッパアーム35の先端部にはローラ36が回転自在に設けられている。また、ストッパアーム35は、ばね37により、ストッパアーム35の先端部が基端部を回転軸として
図3において反時計回り方向に回転するように付勢されている。これにより、ストッパアーム35の先端部に設けられたローラ36が、シフトカムプレートの係合凹部28に押し付けられている。
【0035】
伝達シャフト39は、
図4に示すように、シフトカム12の回転をシフトカムセンサ48に伝達する部材である。伝達シャフト39は例えば金属材料に棒状に形成されている。伝達シャフト39はシフトカム12と同軸に配置されている。伝達シャフト39の右端側は、ドライブプレート43の挿通穴45およびシフトカムプレート27の貫通穴30を通り、シフトカム12の挿入穴16に圧入され、固定されている。伝達シャフト39は、シフトカム12およびシフトカムプレート27と一体化されており、伝達シャフト39は、シフトカム12およびシフトカムプレート27と共に回転する。
【0036】
また、
図6に示すように、伝達シャフト39の右端部39Aは、伝達シャフト39の左右方向中間部と比較して直径が小さく、伝達シャフト39の右端部39Aと伝達シャフト39の左右方向中間部との間には段部40が形成されている。段部40は、シフトカムプレート27の貫通穴30に形成された段部31と接触している。
【0037】
また、伝達シャフト39の左端部39Bは、伝達シャフト39の左右方向中間部と比較して直径が大きい。また、伝達シャフト39の左端部39Bには、
図5に示すように、シフトカムセンサ48の係合突片51(
図9参照)と係合する係合溝41が形成されている。係合溝41は、伝達シャフト39の左端面の外縁から左端部39Bの外周面にかけての部分に形成されている。
【0038】
ここで、伝達シャフト39、シフトカムプレート27および左側ベアリング20はシフトカム12の左端部に次のように固定されている。
図6に示すように、シフトカム12の左端部に形成された小径部14には、左側ベアリング20が嵌合されている。小径部14と左側ベアリング20の内輪とはぴったりと嵌まり合っているが、圧入された状態ではない。すなわち、左側ベアリング20の内輪の内周面と小径部14の外周面とは互いに押し合っていない。
【0039】
また、シフトカムプレート27の右端面27Aに形成された円形凹部33内には、シフトカム12の小径部14の左端部が圧入されている。すなわち、円形凹部33内に小径部14の左端部が挿入された状態で、シフトカムプレート27の円形凹部33の内周面とシフトカム12の小径部14の左端部の外周面とが互いに押し合っている。これにより、シフトカムプレート27はシフトカム12の小径部14の左端部に軸方向にも周方向にも移動不能に固定されている。
【0040】
また、シフトカムプレート27の円形凹部33内にシフトカム12の小径部14が圧入された状態において、シフトカムプレート27の右端面27A(円形凹部33の縁部の端面)と、シフトカム12の段部15との間に左側ベアリング20の内輪が配置されている。この状態で、左側ベアリング20の内輪の左端面はシフトカムプレート27の右端面27Aに右方に押され、左側ベアリング20の内輪の右端面はシフトカム12の段部15に左方に押されている。これにより、左側ベアリング20の内輪がシフトカム12の小径部14に固定されている。
【0041】
また、伝達シャフト39の右端側はドライブプレート43の挿通穴45を貫通している。ドライブプレート43の挿通穴45の内径は、伝達シャフト39のいかなる部分の直径よりも大きい。伝達シャフト39はドライブプレート43の挿通穴45を大きな隙間を介して貫通している。
【0042】
また、伝達シャフト39の右端側はシフトカムプレート27の貫通穴30を貫通している。伝達シャフト39の右端側はシフトカムプレート27の貫通穴30にぴったりと嵌まり合った状態で貫通穴30を貫通しているが、圧入された状態ではない。すなわち、伝達シャフト39の右端側の外周面とシフトカムプレート27の貫通穴30の内周面とは、段部31(段部40)の右側においても左側においても互いに押し合っていない。
【0043】
また、伝達シャフト39の右端部39Aはシフトカム12の左端面に形成された挿入穴16に圧入されている。すなわち、伝達シャフト39の右端部39Aが挿入穴16内に挿入された状態で、伝達シャフト39の右端部39Aの外周面とシフトカム12の挿入穴16の内周面とが互いに押し合っている。これにより、伝達シャフト39はシフトカム12の挿入穴16に軸方向にも周方向にも移動不能に固定されている。また、この状態で、伝達シャフト39の右端側に形成された段部40がシフトカムプレート27の貫通穴30に形成された段部31に接触している。
【0044】
また、シフトカム12の挿入穴16に圧入された伝達シャフト39の右端部39Aの先端は、シフトカムプレート27の右側に位置する左側ベアリング20の内側に入っている。すなわち、
図6に示すように、伝達シャフト39の右端部39Aの先端は、シフトカムプレート27の右端面27Aを越え、左側ベアリング20の内輪の左端面を越え、左側ベアリング20の内輪の右端面に向かって右方に伸長している(本実施例においては、伝達シャフト39の右端部39Aの先端は左側ベアリング20の内輪の右端面をも越えて右方に伸長している)。このように伝達シャフト39の右端部39Aが挿入穴16に深く圧入されているので、シフトカム12の左端部が伝達シャフト39の右端部39Aにより径方向外向き押圧され、その押圧力によりシフトカム12の左端部が径方向に僅かに拡がっている。これにより、シフトカム12の左端部(小径部14)の外周面と左側ベアリング20の内輪の内周面とを確実に接触させることができる。
【0045】
また、
図7に示すように、シフトカムプレート27のシフトカム12に対する周方向の位置P、および伝達シャフト39のシフトカム12に対する周方向の位置Qはそれぞれ所定の位置に定められている。シフトカムプレート27のシフトカム12に対する周方向の位置Pは、シフト装置11の製造時に、シフトカムプレート27の円形凹部33にシフトカム12の小径部14を圧入する際に定められる。また、伝達シャフト39のシフトカム12に対する周方向の位置Qは、シフト装置11の製造時に、伝達シャフト39をシフトカム12の挿入穴16に圧入する際に定められる。
【0046】
ドライブプレート43は、シフトペダルシャフト61の回転をシフトカムプレート27に伝達する部材である。
図4において、ドライブプレート43の後側部分はシフトペダルシャフト61に回転不能に固定されている。具体的には、ドライブプレート43の後側部分には接続穴44が形成されている。接続穴44にはシフトペダルシャフト61が挿通され、ドライブプレート43は、例えばスプライン等によりシフトペダルシャフト61に回転不能に結合されている。これにより、ドライブプレート43は、シフトペダルシャフト61の回転により、軸心Eを揺動軸として揺動する。
【0047】
また、ドライブプレート43の前側部分には挿通穴45が形成されている。挿通穴45内には、伝達シャフト39が挿通されている。伝達シャフト39は、シフトカム12の回転をシフトカムセンサ48に伝達する機能に加え、ドライブプレート43の揺動範囲を制限する機能を有している。ドライブプレート43の揺動は、ドライブプレート43の挿通穴45の内周面が伝達シャフト39の左右方向中間部の外周面に接触する範囲に制限される。
【0048】
また、ドライブプレート43の右面における前端部には、ドライブプレート43の揺動をシフトカムプレート27に伝達する複数の爪部46が形成されている。ここで、
図8は、
図6中の矢示VIII方向から見たドライブプレート43およびシフトカムプレート27を模式的に示している。この図から、ドライブプレート43の爪部46とシフトカムプレート27の突起部29の係合構造を把握することができる。ドライブプレート43の揺動により爪部46が移動すると、爪部46により突起部29が押され、シフトカムプレート27およびシフトカム12が所定角度(例えば60度)回転する。
【0049】
なお、シフトペダルシャフト61の右端部は、
図4に示すように、クランクケース2に形成された支持部62にベアリング63を介して回転可能に支持されている。また、シフトペダルシャフト61の左端側は、サイドカバー52の後部に形成されたシフトペダルシャフト挿通穴54を貫通している。シフトペダルシャフト挿通穴54の内側にはベアリング65およびオイルシール66が設けられ、シフトペダルシャフト61の左端側は、このベアリング65を介してサイドカバー52に回転可能に支持されている。また、シフトペダルシャフト61の左端部には、運転者が左足でシフト操作するためのシフトペダルが取り付けられている。また、シフトペダルシャフト61は、ばね64により付勢されており、これにより、シフト操作後にシフトペダルシャフト61が初期位置に復帰するようになっている。
【0050】
シフトカムセンサ48はシフトカム12の回転角を検出するセンサであり、例えばポテンショメータである。
図3に示すように、クランクケース2の後部左側の下部には、シフトカムプレート27、ストッパアーム35、伝達シャフト39およびシフトペダルシャフト61等が配置されている。そして、
図2に示すように、クランクケース2の後部左側の下部にはサイドカバー52が取り付けられ、サイドカバー52により、シフトカムプレート27およびストッパアーム35が覆われている。また、
図4に示すように、サイドカバー52の前部には伝達シャフト挿通穴53が形成され、伝達シャフト挿通穴53内には伝達シャフト39が挿入されている。さらに、伝達シャフト挿通穴53の左側の開口部には、当該開口部を塞ぐようにシフトカムセンサ48が取り付けられている。このように、シフトカムセンサ48はクランクケース2およびサイドカバー52の外部に配置されている。
【0051】
ここで、
図9はシフトカムセンサ48および伝達シャフト39の左端部39Bを示している。
図9に示すように、シフトカムセンサ48は、ケーシング49、ケーシング49に回転可能に支持された回転子50、およびケーシング49内に設けられた検出回路等を備えている。回転子50には係合突片51が設けられ、係合突片51が、伝達シャフト39の左端部39Bに形成された係合溝41と係合している。これにより、伝達シャフト39とシフトカムセンサ48とが互いに接続されている。伝達シャフト39の回転により、シフトカムセンサ48の回転子50が回転する。シフトカムセンサ48は、回転子50の回転角に対応した電気信号を、シフトカム12の回転角を示す電気信号として、例えば自動二輪車のコントロールユニットへ出力する。
【0052】
図10はシフトペダルシャフト61のクランクケース2への組付を示している。自動二輪車の製造時において、シフトペダルシャフト61のクランクケース2への組付は、例えば次のような手順で行われる。まず、シフトカム12へ左側ベアリング20、シフトカムプレート27および伝達シャフト39を組み付けることにより第1のユニット71を形成し、かつシフトペダルシャフト61にドライブプレート43等を組み付けることにより第2のユニット72を形成する。次に、第1のユニット71をクランクケース2に組み付ける。次に、第2のユニット72をクランクケース2に組み付ける。
【0053】
第2のユニット72をクランクケース2に組み付ける際には、まず、第2のユニット72に含まれるドライブプレート43の挿通穴45に、第1のユニット71に含まれる伝達シャフト39の左端部39Bを挿入する。次に、ドライブプレート43の挿通穴45が伝達シャフト39の左右方向中間部の直径の小さい部分に達するまで、第2のユニット72を
図10(1)中の矢示K1に示すように右方へ移動させる。次に、第2のユニット72を
図10(2)中の矢示K2に示すように後方へ移動させ、シフトペダルシャフト61の軸心を、クランクケース2の支持部62に取り付けられたベアリング63の軸心と一致させる。次に、第2のユニット72を
図10(2)中の矢示K3に示すように右方へ移動させ、シフトペダルシャフト61の右端部をベアリング63の内側へ挿入する。
【0054】
このように、伝達シャフト39の左右方向中間部が伝達シャフト39の左端部39Bよりも直径が小さいので、ドライブプレート43の挿通穴45に伝達シャフト39を挿入した後に第2のユニット72を後方へ移動させることができ、シフトペダルシャフト61をベアリング63の内側へ挿入することができる。したがって、自動二輪車の製造時には、例えば第1のユニット71および第2のユニット72をそれぞれ事前に形成しておき、その後、自動二輪車の組立ラインで、第1のユニット71および第2のユニット72をクランクケース2にそれぞれ組み付けることができる。よって、自動二輪車の組立作業を簡素化することができる。
【0055】
以上説明した通り、本発明の実施例のシフト装置11によれば、伝達シャフト39の右端部39Aを、シフトカム12の左端面に形成された挿入穴16に圧入することにより、シフトカム12に対する伝達シャフト39の周方向の位置を高精度に定めることができ、かつ、伝達シャフト39がシフトカム12に対して周方向に位置ずれしないように伝達シャフト39をシフトカム12に強固に固定することができる。したがって、シフトカムセンサ48によるシフトカム12の回転角の検出精度を高めることができる。
【0056】
また、シフトカム12に対する伝達シャフト39の周方向の位置決めにピンやキーを用いないため、ピンやキー、これを挿入する穴や溝等の公差に起因する伝達シャフト39のシフトカム12に対する位置のばらつきまたは位置ずれをなくすことができる。また、ピンやキーを用いないので、シフト装置11の部品点数を削減することができる。
【0057】
また、シフト装置11の製造時には、
図7に示すように、シフトカムプレート27のシフトカム12に対する周方向の位置Pを定めてシフトカムプレート27の円形凹部33にシフトカム12の小径部14を圧入した後、伝達シャフト39の右端部39Aをシフトカム12の挿入穴16に圧入する際に、伝達シャフト39のシフトカム12に対する周方向の位置Qをシフトカムプレート27の位置Pを基準にして容易に定めることができる。
【0058】
また、本発明の実施例のシフト装置11では、シフトカム12の左端部(小径部14)がシフトカムプレート27の円形凹部33に圧入され、かつ、伝達シャフト39の右端部39Aがシフトカム12の左端面の中央に形成された挿入穴16に圧入される。それゆえ、シフトカム12の左端部の外周側部分、すなわち、シフトカム12の左端部の外周面と挿入穴16の内周面との間の部分は、伝達シャフト39の右端部39Aにより径方向外向きに押圧され、かつシフトカムプレート27の右端部(円形凹部33の外縁部)により径方向内向きに押圧されている。シフトカム12の左端部の外周側部分に作用するこれら径方向に互いに逆向きの2つの押圧力により、伝達シャフト39の右端部39Aとシフトカム12との固定力を強くすることができ、かつシフトカムプレート27の右端部とシフトカム12との固定力を強くすることができる。
【0059】
また、本発明の実施例のシフト装置11によれば、シフトカム12の小径部14が圧入されたシフトカムプレート27の右端面27Aと、シフトカム12の左端部に形成された段部15との間に、左側ベアリング20の内輪を強固に固定することができる。
【0060】
また、本発明の実施例のシフト装置11によれば、シフトカム12の挿入穴16に圧入された伝達シャフト39の段部31と、シフトカムプレート27の貫通穴30に形成された段部40とが互いに接触している。これにより、シフトカム12の挿入穴16に圧入された伝達シャフト39によりシフトカムプレート27を右方へ押さえ付けることができ、シフトカムプレート27のシフトカム12に対する固定力を強めることができる。
【0061】
また、本発明の実施例のシフト装置11では、シフトカム12の挿入穴16に圧入された伝達シャフト39の右端部39Aの先端が左側ベアリング20の内側に入っている。これにより、上述したように、左側ベアリング20の内輪の内周面をシフトカム12の左端部の外周面に確実に接触させることができる。
【0062】
また、本発明の実施例のシフト装置によれば、シフトカムセンサ48がクランクケース2の外部に配置されているので、シフトカムセンサ48をクランクケース2の内部に配置する場合と比較してシフトカムセンサ48の周囲の温度を下げることができる。これにより、シフトカムセンサ48として、内部に電子基板を有する無接点式の角度センサ等、耐熱温度の低い角度センサを用いることができる。
【0063】
なお、上述した実施例では、シフト装置11を6段の変速機に適用する場合を例にあげたが、変速機の段数は限定されない。また、上述した実施例では、自動二輪車に用いられるエンジン1の変速機におけるシフト装置11を例にあげたが、本発明のシフト装置は、他の種類の車両に用いられるエンジンの変速機にも適用することができる。
【0064】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うシフト装置もまた本発明の技術思想に含まれる。