(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相調整部は、比較的小さな前記電流指令値に応じた前記重畳成分の位相よりも、比較的大きな前記電流指令値に応じた前記重畳成分の位相を進めることを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。
前記第2電流変換部から出力されて前記第2電流制御部に入力される前記高調波回転座標系上の前記モータ電流を濾波するローパスフィルタを更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構成、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(構成)
図1は、実施形態の電動パワーステアリング装置の一例の概要を示す。ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a、6bを経て、更にハブユニット7a、7bを介して操向車輪8L、8Rに連結されている。
また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクThを検出するトルクセンサ10及び操舵角を検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。
【0011】
電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、電源としてのバッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー(IG)信号が入力される。
コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Velとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、演算された電流指令値に補償等を施した電圧指令値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。
なお、舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、モータ20に連結されたレゾルバ等の回転角センサから得ることもできる。
【0012】
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VelはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
コントロールユニット30は、モータ20を駆動制御する電子制御ユニットである。
【0013】
コントロールユニット30は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等のプロセッサとその周辺部品とを含むMCU(Micro Control Unit)であってよい。周辺部品には、例えばレジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリ等の半導体記憶装置を含んでよい。
【0014】
図2は、コントロールユニット30が実行する処理によって実現するモータ制御装置の構成例を示す。
モータ制御装置は、モータ電流検出部50と、回転角センサ51と、角速度演算部52と、3相/2相変換部53と、指令値設定部54と、重畳成分生成部55と、dq電流制御部56を備える。
【0015】
さらに、モータ制御装置は、基本波/(1−n)次座標変換部57及び58と、dq(1−n)電流制御部59と、(1−n)次/基本波座標変換部60と、基本波/(n+1)次座標変換部61及び62と、dq(n+1)電流制御部63と、(n+1)次/基本波座標変換部64を備える。
また、モータ制御装置は、2相/3相変換部65と、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御部66と、インバータ67と、加算器68、69d、69q、70d、及び70qを備える。
【0016】
角速度演算部52、3相/2相変換部53、指令値設定部54、重畳成分生成部55、dq電流制御部56、基本波/(1−n)次座標変換部57及び58、dq(1−n)電流制御部59、(1−n)次/基本波座標変換部60、基本波/(n+1)次座標変換部61及び62、dq(n+1)電流制御部63、(n+1)次/基本波座標変換部64、2相/3相変換部65、PWM制御部66、並びに加算器68、69d、69q、70d及び70qの各機能は、例えば、コントロールユニット30の内部の半導体記憶装置に格納したプログラムをプロセッサで実行することによって実現される。
【0017】
モータ電流検出部50は、モータ20を流れるモータ電流を検出して、3相/2相変換部53に入力する。
モータ20にはレゾルバ等の回転角センサ51が連結されており、回転角センサ51は、モータ20の電気角θを検出して、3相/2相変換部53、角速度演算部52及び2相/3相変換部65に入力する。
【0018】
角速度演算部52は、回転角センサ51が検出した電気角θに基づいて、モータ角速度ωを算出する。
3相/2相変換部53は、回転角θを用いて、モータ電流検出部50が検出するモータ20の各相に流れるモータ電流を、モータ20の電気角周波数で回転する基本波dq回転座標系上の2相の電流に変換する。以下、モータ20の電気角周波数を「基本波周波数」と表記することがある。
具体的には、3相/2相変換部53は、次式(1)によって静止座標系上の3相電流Ium、Ivm、Iwmを、d軸モータ電流Idm、q軸モータ電流Iqmへ変換する。
【0020】
指令値設定部54は、基本波dq回転座標系上におけるモータ20の電流指令値を設定する。
図3を参照する。指令値設定部54は、電流指令値演算部540と、補償信号生成部541と、加算器542と、電流制限部543と、d−q軸電流指令値演算部544を備える。
【0021】
トルクセンサ10で検出された操舵トルクTh及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN40からの)車速Velは電流指令値演算部540に入力される。電流指令値演算部540は操舵トルクTh及び車速Velに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給するモータ電流の制御目標値である電流指令値I*を演算する。
補償信号生成部541は、電流指令値I*に対して操舵システム系の特性補償を行い収れん性や慣性特性等を改善するための補償信号を生成する。
【0022】
補償信号生成部541は、セルフアライニングトルク(SAT)541cと慣性541bを加算器541dで加算し、更に収れん性541aを加算器541eで加算することにより補償信号を生成する。
加算器542は、電流指令値演算部540により演算された電流指令値I*に補償信号を加算する。その加算結果Ic*は、電流制限部543に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefとなる。
d−q軸電流指令値演算部544は、電流指令値Irefと、モータ電気角θと、モータ角速度ωとに基づいてd軸電流指令値Irefdと、q軸電流指令値Irefq0を演算する。
【0023】
図2を参照する。重畳成分生成部55は、トルクリップルを発生するモータ電流の高調波成分を低減するための重畳成分を生成する。本実施形態では、重畳成分生成部55は、基本波周波数の(n−1)倍の逆相成分(以下、「(1−n)次高調波成分」と表記することがある)と(n+1)倍の正相成分(以下、「(n+1)次高調波成分」と表記することがある)を相殺するq軸電流指令値を重畳成分として生成する。
ここで、基本波周波数のn倍の周波数成分の重畳成分を基本波dq回転座標系上に設定すれば、静止座標系では基本波周波数の(n−1)倍の逆相成分と(n+1)倍の正相成分となって現れる。このため、重畳成分生成部55は、基本波周波数のn倍の周波数の重畳成分Irefqn=Aqn×sin(nθ+φ)を生成する。
例えば、重畳成分生成部55は、5次及び7次高調波成分によるトルクリップルを低減するために基本波周波数の6倍の周波数の重畳成分を生成してよい。11次及び13次高調波成分によるトルクリップルを低減するために基本波周波数の12倍の周波数の重畳成分を生成してよい。
【0024】
電動パワーステアリング装置の操舵補助力を付与するモータの場合には、ハンドル舵角や、舵角速度、車速等の条件に応じて、トルクリップルの大きさやトルクリップルにより生じる騒音や振動に対する運転者の感じやすさが異なる。
このため、重畳成分生成部55は、実験的又は理論的に予め定めた基本重畳成分Aqn0に可変ゲインを乗じた積を重畳成分の振幅Aqnとして設定する。
可変ゲインを動的に変化させることにより、トルクリップルにより生じる騒音や振動が大きくなる条件や、運転者が騒音や振動を感じやすい条件において、重畳成分の振幅Aqnを大きくしてトルクリップルの低減効果を大きくすることができる。また、トルクリップルにより生じる騒音や振動が小さくなる条件や、運転者が騒音や振動を感じにくい条件では、重畳成分の振幅Aqnを小さくして電流消費を節約できる。
【0025】
図4を参照する。重畳成分生成部55は、車速感応ゲイン乗算部550と、操舵トルク感応ゲイン乗算部551と、電流指令値感応ゲイン乗算部552と、モータ速度感応ゲイン乗算部553と、定数乗算器554と、位相調整部555と、加算器556と、正弦波発生器557と、乗算器558を備える。
車速感応ゲイン乗算部550は、車速センサ12で検出された車速Velを入力し、車速Velに応じて変化する可変ゲインである車速感応ゲインK1を算出する。
車速感応ゲイン乗算部550は、基本重畳成分Aqn0に車速感応ゲインK1を乗じた積(K1×Aqn0)を出力する。
【0026】
図5を参照する。車速感応ゲインK1は、例えば、車速Velが低いほど大きな値に設定してよい。低車速で大きくハンドルを切るシチュエーション(例えば、交差点の右左折や、車庫入れ、据え切りなど)では大きな操舵補助力が発生するため、その際に大きなトルクリップルが発生するのを抑制するためである。
また、車速Velが低いほどロードノイズや風切り音などの騒音や路面からの振動が小さく、モータトルクリップルにより発生する操舵機構の振動や操舵機構から生じる騒音を運転者が感じやすい。このため、重畳成分を増加させてトルクリップルの低減効果を大きくする。
【0027】
一方で、車速Velが高い場合には運転者が操舵機構の振動や操舵機構から生じる騒音を感じにくいため、車速感応ゲインK1を下げて電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
図5の例では、車速Velが所定の車速V1以下の範囲では、車速感応ゲインK1の値は最大値「1」であり、車速V1から車速V2までの範囲では「1」から「0.4」まで単調減少し、車速V2から車速V3までの範囲では「0.4」から最小値「0」まで単調減少し、車速V3以上の範囲では「0」となる。
【0028】
また、
図5に示すように、車速Velが増加するほど車速感応ゲインK1の減少率(すなわち、車速Velの増加量に対する車速感応ゲインK1の減少量の比)を減少してよい。車速Velが高いほど、運転者が操舵機構の振動や騒音を感じにくくなるためである。
なお、
図5の例では、車速感応ゲインK1は線形に減少しているが非線形に減少してもよい。速度V1、V2及びV3は、例えば20Km/h、40Km/h及び80Km/hであってよい。
【0029】
図4を参照する。操舵トルク感応ゲイン乗算部551は、トルクセンサ10で検出した操舵トルクThを入力し、操舵トルクThに応じて変化する可変ゲインである操舵トルク感応ゲインK2を算出する。
操舵トルク感応ゲイン乗算部551は、車速感応ゲイン乗算部550の出力(K1×Aqn0)に操舵トルク感応ゲインK2を乗じた積(K1×K2×Aqn0)を出力する。
【0030】
図6を参照する。操舵トルクThが大きいほど大きな操舵補助力を発生し、それに伴いトルクリップルが大きくなる。また、操舵トルクThが大きいとき運転者はハンドル1を強く握っており操舵機構の振動を感じやすい。
このため、操舵トルク感応ゲインK2は、操舵トルクThが大きいほど大きな値に設定してよい。
一方で、操舵トルクThが小さい場合にはトルクリップルが小さく、また運転者が操舵機構の振動を感じにくいため、操舵トルク感応ゲインK2を下げて電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
【0031】
図6の例では、操舵トルクThが所定のトルクT1以下の範囲では、操舵トルク感応ゲインK2の値は最小値「0.4」であり、トルクT1からトルクT2までの範囲では「0.4」から最大値「1.0」まで単調増加し、トルクT2以上の範囲では「1.0」となる。
なお、操舵トルクThが増加するほど、操舵トルク感応ゲインK2の増加率(すなわち、操舵トルクThの増加量に対する操舵トルク感応ゲインK2の増加量の比)が増加してもよい。
なお、
図6の例では、操舵トルク感応ゲインK2は線形に増加しているが非線形に増加してもよい。トルクT1及びT2は、例えば1.0Nm及び2.0Nmであってよい。
【0032】
図4を参照する。電流指令値感応ゲイン乗算部552は、指令値設定部54が算出した電流指令値Irefを入力し、電流指令値Irefに応じて変化する可変ゲインである電流指令値感応ゲインK3を算出する。
電流指令値感応ゲイン乗算部552は、操舵トルク感応ゲイン乗算部551の出力(K1×K2×Aqn0)に電流指令値感応ゲインK3を乗じた積(K1×K2×K3×Aqn0)を出力する。
【0033】
図7を参照する。電流指令値Irefが大きいほど大きなトルクリップルが発生するため、トルクリップルの低減効果を増加させる必要がある。
このため、電流指令値感応ゲインK3は、電流指令値Irefが大きいほど大きな値に設定してよい。
一方で、電流指令値Irefが小さい場合にはトルクリップルが小さいため、電流指令値感応ゲインK3を下げて電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
【0034】
図7の例では、電流指令値Irefが所定電流I1以下の範囲では、電流指令値感応ゲインK3の値は最小値「0.0」であり、電流I1から電流I2までの範囲では「0.0」から最大値「1.0」まで単調増加し、電流I2以上の範囲では「1.0」となる。
なお、電流指令値Irefが増加するほど、電流指令値感応ゲインK3の増加率(すなわち、電流指令値Irefの増加量に対する電流指令値感応ゲインK3の増加量の比)が増加してもよい。
なお、
図7の例では、電流指令値感応ゲインK3は線形に増加しているが非線形に増加してもよい。電流I1及びI2は、例えば20A及び40Aであってよい。
【0035】
図4を参照する。モータ速度感応ゲイン乗算部553は、角速度演算部52が算出したモータ角速度ωより求まるモータ回転速度Rを入力し、モータ回転速度Rに応じて変化する可変ゲインであるモータ速度感応ゲインK4を算出する。
モータ速度感応ゲイン乗算部553は、電流指令値感応ゲイン乗算部552の出力(K1×K2×K3×Aqn0)にモータ速度感応ゲインK4を乗じた積(K1×K2×K3×K4×Aqn0)を、重畳成分の振幅Aqnとして出力する。
【0036】
図8を参照する。操舵速度に応じてモータ回転速度Rが変化するとこれに伴って基本波周波数が変化するためトルクリップルの周波数が変化する。ここでトルクリップルが操舵機構の機械的な共振周波数(例えば数百kHz帯)を刺激し、操舵機構の共振特性を励起すると、操舵機構の振動やこれにより生じる騒音が大きくなり、運転者に不快な振動や騒音として伝わることがある。例えば、ハンドルを大きく切るシチュエーションでは操舵速度が高くなるため、数百kHzの共振周波数を有する操舵機構が高周波のトルクリップルにより共振することがある。
【0037】
このため、モータ速度感応ゲイン乗算部553は、(n−1)倍の逆相成分と(n+1)倍の正相成分によるトルクリップルが操舵機構の共振特性を励起するモータ回転速度では、他の回転速度と比較してより大きなモータ速度感応ゲインK4を設定してよい。例えば、トルクリップルが操舵機構の共振特性を励起するモータ回転速度におけるモータ速度感応ゲインK4を、この回転速度よりも低いモータ速度感応ゲインK4よりも大きく設定してよい。
図8の例では、トルクリップルが操舵機構の共振特性を励起するモータ回転速度帯の範囲は、モータ回転速度R2以上であり、モータ回転速度R2以上の範囲においてモータ速度感応ゲインK4の値は最大値「1」であり、モータ回転速度R2からモータ回転速度R1(<R2)の範囲で「1」から最小値「0」へ変化する。モータ回転速度R1以下の範囲においてモータ速度感応ゲインK4の値は「0」である。
【0038】
モータ回転速度がR2より低い場合には、トルクリップルが操舵機構の共振特性を励起しにくい。このため、電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
なお、モータ回転速度Rが増加するほど、モータ速度感応ゲインK4の増加率(すなわち、モータ回転速度Rの増加量に対するモータ速度感応ゲインK4の増加量の比)が増加してもよい。
図8の例では、モータ速度感応ゲインK4は線形に増加しているが非線形に増加してもよい。モータ回転速度R1及びR2は、例えば1000rpm及び2000rpmであってよい。
【0039】
図4を参照する。定数乗算器554、位相調整部555、加算器556、及び正弦波発生器557は、基本波周波数のn倍の周波数の正弦波sin(nθ+φ)を生成する。
ここで、電気角θに対するトルクリップルの位相はモータ電流の大きさに応じて変化する。このため、位相調整部555は、指令値設定部54が算出した電流指令値Irefに応じて重畳成分の位相φを調整する。
【0040】
図9を参照する。位相調整部555は、比較的小さな電流指令値I3以下の範囲で位相を最小値に設定し、及び比較的大きな電流指令値I4以上の範囲で位相φを最大値に設定し、電流指令値がI3からI4に増加する間に位相φを進める。このように位相φを調整することにより、電流指令値Irefが増加するのに伴って位相が進むトルクリップルを効果的に低減することができる。電流I3及びI4は、例えば20A及び40Aであってよい。
【0041】
図4を参照する。定数乗算器554は、回転角センサ51が検出した電気角θに整数nを乗じる。位相調整部555は、電流指令値Irefに応じて調整した位相φを出力する。加算器556は、定数乗算器554の乗算結果nθに位相φを加算し、正弦波発生器557は正弦波(nθ+φ)を発生する。
乗算器558は、正弦波sin(nθ+φ)に振幅Aqnを乗じて、乗算結果(Aqn×sin(nθ+φ))を重畳成分Irefqnとして出力する。
【0042】
図2を参照する。加算器68は、指令値設定部54が設定したq軸電流指令値Irefq0に、重畳成分生成部55が生成した重畳成分Irefqnを加算することにより、モータ電流制御に用いるq軸電流指令値Irefq=(Irefq0+Irefqn)を算出する。
dq電流制御部56は、d軸電流指令値Irefdと3相/2相変換部53が出力したd軸モータ電流Idmとの偏差、q軸電流指令値Irefqと3相/2相変換部53が出力したq軸モータ電流Iqmとの偏差をそれぞれ算出する。
dq電流制御部56は、これら偏差に基づいてモータ20に対する基本波dq回転座標系上の操作量を求める。例えばdq電流制御部56は、上記偏差に基づくPI(Proportional-Integral)制御によってモータ20に対する基本波dq回転座標系上の操作量を算出してよい。モータ20に対する基本波dq回転座標系上の操作量として、基本波d軸電圧指令値Vdref1及び基本波q軸電圧指令値Vqref1を算出してよい。
なお、dq電流制御部56による制御は、上記の制御に限られず、指令値に追従しうる制御であれば一般的に用いられる他の制御でもよい。
【0043】
一方で、基本波/(1−n)次座標変換部57は、次式(2)に基づいてd軸電流指令値Irefdとq軸電流指令値Irefqを、基本波dq回転座標系と逆方向に基本波周波数の(n−1)倍の周波数で回転する(1−n)次dq回転座標系上のd軸電流指令値Irefd
(1−n)とq軸電流指令値Irefq
(1−n)に変換する。
重畳成分Irefqnを含んだq軸電流指令値Irefqを(1−n)次dq回転座標系上の値に変換することにより、重畳成分Irefqnが(1−n)次dq回転座標系上で設定される。
【0045】
基本波/(1−n)次座標変換部58は、式(2)と同様の変換式に基づいて、基本波dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm、q軸モータ電流Iqmを、(1−n)次dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm
(1−n)、q軸モータ電流Iqm
(1−n)に変換する。
dq(1−n)電流制御部59は、d軸電流指令値Irefd
(1−n)とd軸モータ電流Idm
(1−n)との偏差、q軸電流指令値Irefq
(1−n)とq軸モータ電流Iqm
(1−n)との偏差をそれぞれ算出する。
【0046】
dq(1−n)電流制御部59は、これら偏差に基づいてモータ20に対する(1−n)次dq回転座標系上の操作量を求める。例えばdq(1−n)電流制御部59は、上記偏差に基づくPI制御によってモータ20に対する(1−n)次dq回転座標系上の操作量を算出してよい。モータ20に対する(1−n)次dq回転座標系上の操作量として、例えば(1−n)次d軸電圧指令値Vdref
(1−n)及び(1−n)次q軸電圧指令値Vqref
(1−n)を算出してよい。
【0047】
静止座標系で(1−n)次高調波成分として現れる基本波dq座標上のn次高調波成分は、(1−n)次dq回転座標系では直流成分となる。したがって基本周波数に関わらず(すなわちモータ20の回転速度に関わらず)、(1−n)次高調波成分は一定となる。
このためdq(1−n)電流制御部59は、モータの回転速度が高くなっても電流制御を追従させて(1−n)次高調波成分によるトルクリップルを良好に低減することができる。
(1−n)次/基本波座標変換部60は、式(2)と同様の変換式に基づいて、(1−n)次d軸電圧指令値Vdref
(1−n)及び(1−n)次q軸電圧指令値Vqref
(1−n)をそれぞれ基本波dq回転座標系上の値に変換する。
【0048】
基本波/(n+1)次座標変換部61は、次式(3)に基づいてd軸電流指令値Irefdとq軸電流指令値Irefqを、基本波dq回転座標系と同じ方向に基本波周波数の(n+1)倍の周波数で回転する(n+1)次dq回転座標系上のd軸電流指令値Irefd
(n+1)とq軸電流指令値Irefq
(n+1)に変換する。
重畳成分Irefqnを含んだq軸電流指令値Irefqを(n+1)次dq回転座標系上の値に変換することにより、重畳成分Irefqnが(n+1)次dq回転座標系上の重畳成分で設定される。
【0050】
基本波/(n+1)次座標変換部62は、式(3)と同様の変換式に基づいて、基本波dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm、q軸モータ電流Iqmを、(n+1)次dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm
(n+1)、q軸モータ電流Iqm
(n+1)に変換する。
dq(n+1)電流制御部63は、d軸電流指令値Irefd
(n+1)とd軸モータ電流Idm
(n+1)との偏差、q軸電流指令値Irefq
(n+1)とq軸モータ電流Iqm
(n+1)との偏差をそれぞれ算出する。
【0051】
dq(n+1)電流制御部63は、これら偏差に基づいてモータ20に対する(n+1)次dq回転座標系上の操作量を求める。例えばdq(n+1)電流制御部63は、上記偏差に基づくPI制御によってモータ20に対する(n+1)次dq回転座標系上の操作量を算出してよい。モータ20に対する(n+1)次dq回転座標系上の操作量として、例えば(n+1)次d軸電圧指令値Vdref
(n+1)及び(n+1)次q軸電圧指令値Vqref
(n+1)を、算出する。
【0052】
静止座標系で(n+1)次高調波成分として現れる基本波dq座標上のn次高調波成分は、(n+1)次dq回転座標系では直流成分となる。したがってモータ20の回転速度に関わらず(n+1)次高調波成分は一定となる。
このためdq(n+1)電流制御部63は、モータの回転速度が高くなっても電流制御を追従させて(n+1)次高調波成分によるトルクリップルを良好に低減することができる。
(n+1)次/基本波座標変換部64は、式(3)と同様の変換式に基づいて、(n+1)次d軸電圧指令値Vdref
(n+1)及び(n+1)次q軸電圧指令値Vqref
(n+1)をそれぞれ基本波dq回転座標系上の値に変換する。
【0053】
加算器69d及び70dは、基本波dq回転座標系上の値に変換された(1−n)次d軸電圧指令値Vdref
(1−n)及び(n+1)次d軸電圧指令値Vdref
(n+1)を、dq電流制御部56から出力された基本波d軸電圧指令値Vdref1に加算し、d軸電圧指令値Vdrefを算出する。
加算器69q及び70qは、基本波dq回転座標系上の値に変換された(1−n)次q軸電圧指令値Vqref
(1−n)及び(n+1)次d軸電圧指令値Vdref
(n+1)を、dq電流制御部56から出力された基本波q軸電圧指令値Vqref1に加算し、q軸電圧指令値Vqrefを算出する。
【0054】
2相/3相変換部65は、一般的な同期電動機のd、q軸のベクトル制御に基づいてもよく、次式(4)に基づいて、d軸電圧指令値Vdref及びq軸電圧指令値Vqrefからなる2相の電圧を、3相の電圧(U相電圧指令値Vuref、V相電圧指令値Vvref及びW相電圧指令値Vwref)に変換する。
PWM制御部66及びインバータ67は、U相電圧指令値Vuref、V相電圧指令値Vvref及びW相電圧指令値Vwrefに基づいてモータ20をPWM駆動する。
【0056】
モータ電流検出部50は、特許請求の範囲に記載の電流検出部の一例である。基本波dq回転座標系は、基本波回転座標系の一例である。(1−n)次dq回転座標系及び(n+1)次dq回転座標系は、高調波回転座標系の一例である。3相/2相変換部53は、第1電流変換部の一例である。3相/2相変換部53、基本波/(1−n)次座標変換部58、及び基本波/(n+1)次座標変換部62は、第2電流変換部の一例である。
【0057】
重畳成分生成部55、加算器68、基本波/(1−n)次座標変換部57、及び基本波/(n+1)次座標変換部61は、重畳成分設定部の一例である。dq電流制御部56は、第1電流制御部の一例である。dq(1−n)電流制御部59及びdq(n+1)電流制御部63は、第2電流制御部の一例である。2相/3相変換部65、PWM制御部66及びインバータ67は、モータ駆動部の一例である。
【0058】
(動作)
次に、実施形態のモータ制御装置の動作例を説明する。
図10を参照する。
動作がスタートすると、ステップS1においてトルクセンサ10が操舵トルクThを検出し、車速センサ12が車速Velを検出し(又はCAN40が車速Velを出力し)、回転角センサ51がモータ20の電気角θを検出する。
ステップS2においてモータ電流検出部50は、モータ20を流れるモータ電流を検出する。
【0059】
ステップS3において角速度演算部52は、回転角センサ51が検出した電気角θに基づいて、モータ角速度ωを算出する。モータ角速度ωに基づいてモータ回転速度Rを算出する。
ステップS4において3相/2相変換部53は、電気角θを用いて、モータ電流検出部50が検出するモータ20の各相に流れるモータ電流を、基本波dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm、q軸モータ電流Iqmに変換する。
【0060】
さらに基本波/(1−n)次座標変換部58は、d軸モータ電流Idm、q軸モータ電流Iqmを、(1−n)次dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm
(1−n)、q軸モータ電流Iqm
(1−n)に変換する。
基本波/(n+1)次座標変換部62は、d軸モータ電流Idm、q軸モータ電流Iqmを、(n+1)次dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm
(n+1)、q軸モータ電流Iqm
(n+1)に変換する。
【0061】
ステップS5において指令値設定部54は、基本波dq回転座標系上におけるモータ20のd軸電流指令値Irefd及びq軸電流指令値Irefq0を設定する。
ステップS6において重畳成分生成部55は、車速Velに応じて車速感応ゲインK1を算出し、操舵トルクThに応じて操舵トルク感応ゲインK2を算出し、電流指令値Irefに応じて電流指令値感応ゲインK3を算出し、モータ回転速度Rに応じてモータ速度感応ゲインK4を算出する。
【0062】
ステップS7において重畳成分生成部55は、電流指令値Irefに応じて重畳成分の位相φを調整する。
ステップS8において重畳成分生成部55は、重畳成分Irefqn=K1×K2×K3×K4×Aqn0×sin(nθ+φ)を生成する。加算器68は、指令値設定部54が設定したq軸電流指令値Irefq0に、重畳成分Irefqnを加算することによりq軸電流指令値Irefqを算出する。
【0063】
基本波/(1−n)次座標変換部57が、d軸電流指令値Irefd及びq軸電流指令値Irefqを、(1−n)次dq回転座標系上の値に変換することにより、重畳成分が(1−n)次dq回転座標系上に設定される。
同様に、基本波/(n+1)次座標変換部61が、d軸電流指令値Irefd及びq軸電流指令値Irefqを、(n+1)次dq回転座標系上の値に変換することにより、重畳成分が(n+1)次dq回転座標系上に設定される。
【0064】
ステップS9においてdq電流制御部56は、d軸電流指令値Irefdと3相/2相変換部53が出力したd軸モータ電流Idmとの偏差、q軸電流指令値Irefqと3相/2相変換部53が出力したq軸モータ電流Iqmとの偏差をそれぞれ算出する。
dq(1−n)電流制御部59は、d軸電流指令値Irefd
(1−n)とd軸モータ電流Idm
(1−n)との偏差を算出する。また、q軸電流指令値Irefq
(1−n)とq軸モータ電流Iqm
(1−n)との偏差を算出する。これにより(1−n)次dq回転座標系上の重畳成分とq軸モータ電流Iqm
(1−n)との偏差が算出される。
dq(n+1)電流制御部63は、d軸電流指令値Irefd
(n+1)とd軸モータ電流Idm
(n+1)と偏差を算出する。また、q軸電流指令値Irefq
(n+1)とq軸モータ電流Iqm
(n+1)との偏差を算出する。これにより(n+1)次dq回転座標系上の重畳成分とq軸モータ電流Iqm
(n+1)との偏差が算出される。
【0065】
ステップS10においてdq電流制御部56、dq(1−n)電流制御部59、及びdq(n+1)電流制御部63は、上記偏差に基づいて、それぞれモータ20に対する基本波dq回転座標系上の操作量、(1−n)次dq回転座標系上の操作量及び(n+1)次dq回転座標系上の操作量を算出する。
ステップS11において2相/3相変換部65は、これら操作量の和を3相の電圧に変換する。
ステップS12においてPWM制御部66及びインバータ67は、2相/3相変換部65から出力される3相の電圧に基づいてモータ20をPWM駆動する。
【0066】
(実施形態の効果)
以下、実施形態のモータ制御装置の効果を説明する。
(1)
図11の(a)〜
図11の(f)を参照する。
図11の(a)は、ある舵角変化の例におけるハンドル舵角の時間変化の概念図であり、
図11の(b)〜(d)は、その時のモータ回転速度、操舵トルク、及び電流指令値の時間変化の概念図である。
図11の(f)は、モータ20の電気角6次成分周波数の時間変化の概念図である。
【0067】
図11の(e)は、モータ発生トルクの電気角6次成分を概略的に示す。太線は実施形態のモータ制御装置により発生したトルクを示し、細線は従来のモータ制御装置により発生したトルクを示す。
なおここでは、
図6の操舵トルク感応ゲインK2の算出マップを定義する定数T1及びT2は、1.0Nm及び2.0Nmであり、
図7の電流指令値感応ゲインK3の算出マップを定義する定数I1及びI2は、20A及び40Aであり、
図8のモータ速度感応ゲインK4の算出マップを定義する定数R1及びR2は、1000rpm及び2000rpmであり、
図5の車速感応ゲインK1が「1」である場合を想定する。
また、
図9の位相φの算出マップを定義する定数I3及びI4は、20A及び40Aである。
【0068】
図11の(a)に示すようにハンドル舵角が変化すると、舵角速度が大きい時間にモータ回転速度が上昇する(
図11の(b))。モータ回転速度が上昇すると、
図11の(f)に示すように電気角6次成分周波数が大きくなる。
特にモータ回転速度が2000rpmを超えると、電気角6次成分周波数が、操舵機構の機械的な共振周波数(例えば数百kHz帯)に近くなるため、トルクリップルにより操舵機構の共振特性が励起される。
【0069】
操舵トルク及び電流指令値は、
図11の(c)及び
図11の(d)に示すようにハンドル舵角の大きさに応じて大きくなる。
したがって、ハンドル舵角が大きくなり操舵トルクが1Nmから2Nmへ増加すると、
図6に示すように操舵トルク感応ゲインK2は「0.4」から「1」へ増加する。
また、電流指令値が20Aから40Aへ増加すると、
図7に示すように電流指令値感応ゲインK3は「0.0」から「1.0」へ増加する。
一方で、モータ回転速度が1000rpmから2000rpmまで上昇すると、
図8に示すようにモータ速度感応ゲインK4は「0.0」から「1.0」へ増加する。
【0070】
このため、車速が遅く車速感応ゲインK1が非零である状況でハンドルを大きく切る場合には、電流指令値及びモータ回転速度が、それぞれ20A及び1000rpmより大きい期間において各ゲインの積K1×K2×K3×K4が非零になり、トルクリップル低減用の重畳成分(Irefqn=Aqn0×K1×K2×K3×K4×sin(nθ+φ))がモータ電流に重畳されるようになる。
【0071】
特に、車速感応ゲインK1が最大値「1」であり、操舵トルク、電流指令値及びモータ回転速度が、それぞれ2Nm、40A及び2000rpmより大きい期間では、各ゲインの積K1×K2×K3×K4が最大値「1」となる。
この結果、電気角6次成分周波数が操舵機構の機械的な共振周波数(例えば数百kHz帯)に近い300Hz以上となる期間では、
図11の(b)〜(d)及び
図11の(f)から分かるように、重畳成分Irefqnの振幅が最大値となり、
図11の(e)の太線に示すように従来(細線)に比べてトルクリップルを大きく低減することができる。
【0072】
(2)以上のとおり、モータ電流検出部50は、操舵補助力を発生させるモータ20に流れるモータ電流を検出する。3相/2相変換部53は、基本波dq回転座標系上の値へモータ電流を変換する。3相/2相変換部53、基本波/(1−n)次座標変換部58、及び基本波/(n+1)次座標変換部62は、(1−n)次dq回転座標系及び(n+1)次dq回転座標系上の値へモータ電流を変換する。
【0073】
指令値設定部54は、モータ20の電流指令値を基本波dq回転座標系上で設定する。重畳成分生成部55、加算器68、基本波/(1−n)次座標変換部57、及び基本波/(n+1)次座標変換部61は、モータ電流に重畳させる(1−n)次高調波の重畳成分と(n+1)次高調波の重畳成分とを(1−n)次dq回転座標系及び(n+1)次dq回転座標系上で設定する。
dq電流制御部56は、基本波dq回転座標系上のモータ電流と電流指令値との偏差に応じて、モータ20に対する第1操作量として、基本波d軸電圧指令値Vdref1及び基本波q軸電圧指令値Vqref1を生成する。
【0074】
dq(1−n)電流制御部59は、(1−n)次dq回転座標系上のモータ電流と重畳成分との偏差に応じて、モータ20に対する第2操作量として、(1−n)次d軸電圧指令値Vdref
(1−n)及び(1−n)次q軸電圧指令値Vqref
(1−n)を生成する。
dq(n+1)電流制御部63は、(n+1)次dq回転座標系上のモータ電流と重畳成分との偏差に応じて、モータ20に対する第2操作量として、(n+1)次d軸電圧指令値Vdref
(n+1)及び(n+1)次q軸電圧指令値Vqref
(n+1)を生成する。
PWM制御部66及びインバータ67は、静止座標系上の値に変換した第1操作量と第2操作量の和に基づいてモータ20を駆動する。
【0075】
これにより、dq(1−n)電流制御部59は、直流成分に変換された(1−n)次高調波成分に対して電流制御を行うことができる。また、dq(n+1)電流制御部63は、直流成分に変換された(n+1)次高調波成分に対して電流制御を行うことができる。
このため、dq(1−n)電流制御部59及びdq(n+1)電流制御部63は、モータの回転速度が高くなっても電流制御を追従させてこれら高調波成分によるトルクリップルを良好に低減することができる。
したがって、電動パワーステアリング装置のモータが高回転域で発生するトルクリップルを低減できる。
【0076】
(3)重畳成分生成部55は、所定の基本重畳成分Aqn0に可変ゲインK1〜K4を乗じて得られる振幅を有する重畳成分K1×K2×K3×K4×Aqn0×sin(nθ+φ)を生成するとともに、可変ゲインK1〜K4を動的に変化させる。
これにより、トルクリップルにより生じる騒音や振動が大きくなる又は運転者が騒音や振動を感じやすい条件において、重畳成分の振幅を大きくしてトルクリップルの低減効果を大きくすることができる。また、トルクリップルにより生じる騒音や振動が小さくなる又は運転者が騒音や振動を感じにくい条件では、重畳成分の振幅を小さくして電流消費を節約できる。
(4)可変ゲインとして、車速Velに応じて変化する車速感応ゲインK1を用いてよい。
例えば、低車速で大きくハンドルを切るシチュエーション(例えば、交差点の右左折や、車庫入れ、据え切りなど)では大きな操舵補助力が発生するのでトルクリップルが増大する。このような場合には、車速感応ゲインK1を増加させることにより大きなトルクリップルの発生を抑制できる。
また、例えば低車速では、モータトルクリップルにより発生する操舵機構の振動や操舵機構から生じる騒音を運転者が感じやすい。このような場合に、車速感応ゲインK1を増加させてトルクリップルの低減効果を大きくすることにより、これらの振動や騒音による運転者の不快感を軽減できる。
一方で、車速Velが高く操舵機構の振動や操舵機構から生じる騒音を運転者が感じにくいシチュエーションでは、車速感応ゲインK1を下げて電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
【0077】
(5)可変ゲインとして、操舵トルクThに応じて変化する操舵トルク感応ゲインK2を用いてもよい。
操舵トルクThが大きいほど大きな操舵補助力を発生し、それに伴いトルクリップルが大きくなる。また、操舵トルクThが大きいとき運転者はハンドル1を強く握っており操舵機構の振動を感じやすい。
操舵トルクThが大きいほど操舵トルク感応ゲインK2を大きくすることによって、操舵補助力の増加に伴うトルクリップルの増大を抑制でき、また、運転者が操舵機構の振動を感じやすい状況において、トルクリップルを抑制して操舵機構の振動を低減できる。
また、操舵トルクThが小さい場合にはトルクリップルが小さく、また運転者が操舵機構の振動を感じにくいため、操舵トルク感応ゲインK2を下げて電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
【0078】
(6)可変ゲインとして、電流指令値Irefに応じて変化する電流指令値感応ゲインK3を用いてもよい。
電流指令値Irefが大きいほどトルクリップルが大きくなる。電流指令値Irefが大きいほど電流指令値感応ゲインK3を大きくすることによって、操舵補助力の増加に伴うトルクリップルの増大を抑制できる。
また、電流指令値Irefが小さい場合にはトルクリップルが小さいため、電流指令値感応ゲインK3を下げて電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
【0079】
(7)可変ゲインとして、モータ回転速度Rに応じて変化すモータ速度感応ゲインK4を用いてもよい。
操舵速度に応じてモータ回転速度Rが変化するとこれに伴ってトルクリップルの周波数が変化する。ここでトルクリップルが操舵機構の機械的な共振周波数を刺激し、操舵機構の共振特性を励起すると操舵機構の振動やこれにより生じる騒音が大きくなり、運転者に不快な振動や騒音として伝わることがある。
【0080】
そこで、(1−n)次高調波成分や(n+1)次高調波成分により発生するトルクリップルが操舵機構の共振特性を励起するモータ回転速度では、他の回転速度と比較してより大きなモータ速度感応ゲインK4を設定することにより、トルクリップルが操舵機構の共振特性を励起するのを抑制することができる。
例えば、トルクリップルが操舵機構の共振特性を励起するモータ回転速度におけるモータ速度感応ゲインK4を、このモータ回転速度より低い回転速度に比べて大きくしてよい。また、トルクリップルが操舵機構の共振特性を励起するモータ回転速度において、モータ速度感応ゲインK4を最大値に設定してよい。
一方で、トルクリップルが操舵機構の共振特性を励起しないモータ回転速度では、モータ速度感応ゲインK4を下げて電流指令値に重畳させる重畳成分を小さくすることにより電流消費を節約できる。
【0081】
(8)重畳成分生成部55は、電流指令値に応じて重畳成分の位相φを調整する位相調整部555を備えてよい。これにより、モータ電流の大きさに応じて電気角θに対するに対する位相が変化するトルクリップルを効果的に抑制できる。
(9)位相調整部555は、比較的小さな電流指令値に応じた重畳成分の位相φよりも、比較的大きな電流指令値に応じた重畳成分の位相φを進めてよい。これによりモータ電流の増大に伴い位相が進むトルクリップルを効果的に抑制できる。
【0082】
(変形例)
(1)
図12を参照する。モータ制御装置は、基本波/(1−n)次座標変換部58から出力されてdq(1−n)電流制御部59に入力される(1−n)次dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm
(1−n)、q軸モータ電流Iqm
(1−n)をそれぞれ濾波するローパスフィルタ80d及び80qを更に備えてもよい。これらのローパスフィルタ80d及び80qにより、直流成分に変換された(1−n)次高調波成分以外のノイズがdq(1−n)電流制御部59の入力信号に混入するのを防止できる。
【0083】
また、基本波/(n+1)次座標変換部62から出力されてdq(n+1)電流制御部63に入力される(n+1)次dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm
(n+1)、q軸モータ電流Iqm
(n+1)をそれぞれ濾波するローパスフィルタ81d及び81qを更に備えてもよい。
これらのローパスフィルタ81d及び81qにより、直流成分に変化された(n+1)次高調波成分以外のノイズがdq(n+1)電流制御部63の入力信号に混入するのを防止できる。
【0084】
(2)上記の実施形態では、dq電流制御部56、dq(1−n)電流制御部59、及びdq(n+1)電流制御部63は、モータ20に対する操作量としてd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を算出した。
これに代えて、dq電流制御部56、dq(1−n)電流制御部59、及びdq(n+1)電流制御部63は、モータ20に対する操作量として、d軸電流の指令値及びq軸電流の指令値を算出してもよい。この場合、2相/3相変換部65は、これらd軸電流の指令値及びq軸電流の指令値を用いて3相電圧指令値を生成してもよい。
また、上記の実施形態では、基本波dq回転座標系、(1−n)次dq回転座標系、及び(n+1)次dq回転座標系についてそれぞれ算出した操作量を合計してから2相/3相変換したが、それぞれの操作量を2相/3相変換した後に合計してもよい。
【0085】
(3)上記の実施形態では、車速感応ゲインK1、操舵トルク感応ゲインK2、電流指令値感応ゲインK3及びモータ速度感応ゲインK4を全て乗じて重畳成分を算出したが、これに代えて、これらゲインK1〜K4のいずれかを選択して乗じてもよい。
【0086】
(4)上記の実施形態では、3相/2相変換部53により算出された基本波dq回転座標系上のd軸モータ電流Idm、q軸モータ電流Iqmを、基本波/(1−n)次座標変換部58及び基本波/(n+1)次座標変換部62に入力することにより、(1−n)次dq回転座標系上のモータ電流と、(n+1)次dq回転座標系上のモータ電流を算出した。
これに代えて、3相電流Ium、Ivm、Iwmから直接(1−n)次dq回転座標系上のモータ電流と、(n+1)次dq回転座標系上のモータ電流へ変換してもよい。