(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2記載の旋回式作業機械であって、前記旋回指令操作は前記旋回体の旋回速度を指定するための操作であり、前記容量制御装置は、前記旋回指令操作により指定される前記旋回速度が大きいほど前記旋回モータの容量を大きくするものであり、前記容量制限部は前記ブレーキ解除時点までは前記旋回指令操作により指定された旋回速度にかかわらず前記旋回モータの容量を前記ブレーキ解除用容量以下の容量に制限するものである、旋回式作業機械。
請求項4記載の旋回式作業機械であって、前記容量パイロットラインは、前記ブレーキ解除ラインのうち前記ブレーキ切換弁の下流側の部分に接続されることにより、前記ブレーキ切換弁とともに前記容量制限部を構成する、旋回式作業機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記旋回パーキングブレーキによる旋回体の停止状態の保持を確実にするには、実際に前記旋回指令操作が与えられて旋回モータによる旋回トルクが発生してから前記旋回パーキングブレーキによるブレーキを解除することが、好ましい。しかし、このようなタイミングでブレーキの解除が行われる場合、前記旋回体に与えられる旋回トルクが大きいと、当該旋回体に当該停止保持力を与えている旋回パーキングブレーキのいわゆる引き摺りを伴いながら当該旋回体が旋回動作してしまうおそれがある。このような引き摺りを伴う旋回動作は旋回パーキングブレーキまたはその他の機器の破損の可能性を生じさせる。
【0006】
従って、前記のような破損を回避しながら前記旋回指令操作に遅れて旋回パーキングブレーキによるブレーキの解除を行うには、旋回開始時に旋回体に与えられる旋回トルクに制限を与えなければならない。その一方、作業機械における前記旋回体は一般に重量が大きいため、前記旋回開始時に前記旋回トルクを著しく制限することは、当該旋回体が停止した状態から旋回速度を迅速に立ち上げることを困難にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、旋回体及びこれを停止状態に保持するための旋回パーキングブレーキを備えた旋回式作業機械であって、前記旋回体に旋回トルクが与えられるまでは前記旋回パーキングブレーキによって前記旋回体を確実に停止状態に保持することができ、かつ、旋回開始後における旋回速度の迅速な立ち上がりを可能にしながら当該旋回トルクから前記旋回パーキングブレーキその他の機器を確実に保護することが可能な旋回式作業機械を提供することにある。
【0008】
提供されるのは、旋回式作業機械であって、基体と、旋回可能となるように前記基体に搭載される旋回体と、可変容量型油圧モータからなり、作動油の供給を受けることにより前記旋回体を旋回させるための旋回トルクを当該旋回体に与える旋回モータと、当該旋回モータの容量を制御する容量制御装置と、前記旋回モータに供給されるべき作動油を吐出する油圧ポンプと、前記旋回体を旋回させるための旋回指令操作を受けることにより前記油圧ポンプから前記旋回モータへの作動油の供給を許容して当該旋回モータを作動させる旋回制御装置と、前記旋回体を停止状態に保つように当該旋回体に停止保持力を与えるブレーキ状態と当該旋回体が旋回可能となるように当該旋回体を解放するブレーキ解除状態とに切換可能な旋回パーキングブレーキと、当該旋回パーキングブレーキを前記ブレーキ状態と前記ブレーキ解除状態とに切換えるブレーキ切換装置と、前記旋回制御装置が前記旋回指令操作を受けて前記油圧ポンプから前記旋回モータへの作動油の供給を許容した後に前記旋回パーキングブレーキを前記ブレーキ状態から前記ブレーキ解除状態に切換えるように前記ブレーキ切換装置にブレーキ解除指令を入力するブレーキ解除指令部と、前記
容量制御装置により制御される前記
旋回モータの容量を制限する容量制限部と、を備える。当該容量制限部は、前記旋回制御装置が前記旋回指令操作を受けて前記油圧ポンプから前記旋回モータへの作動油の供給を許容した後、前記ブレーキ切換装置へのブレーキ解除指令の入力による前記旋回パーキングブレーキの前記ブレーキ解除状態への切換が行われるブレーキ解除時点までは、前記容量制御装置により制御される前記旋回モータの容量を予め設定されたブレーキ解除用容量以下の容量に制限し、当該ブレーキ解除時点後に前記容量制御装置が前記ブレーキ解除用容量を超えて前記旋回モータの容量を増大させることを許容する。
【0009】
この旋回式作業機械では、前記旋回制御装置が前記旋回指令操作を受けて前記油圧ポンプから前記旋回モータへの作動油の供給を開始した後に前記ブレーキ解除指令部がブレーキ切換装置にブレーキ解除指令を与えて前記旋回パーキングブレーキをブレーキ状態からブレーキ解除状態に切換えるので、当該旋回体に当該旋回トルクが与えられるまでは確実に前記旋回体の停止状態が保持される。しかも、容量制限部は、少なくとも前記ブレーキ解除時点までは前記旋回モータの容量を予め設定されたブレーキ解除用容量以下の容量(好ましくは前記旋回モータの最小容量)に制限し、当該ブレーキ解除時点後に当該旋回モータの容量が前記ブレーキ解除用容量を超えて増大することを許容することにより、旋回パーキングブレーキが旋回体に停止保持力を与えているブレーキ状態で前記旋回体に過剰トルクが与えられることによる当該旋回パーキングブレーキの破損を確実に回避しながら、当該ブレーキ状態が解除された後に前記旋回モータの容量を増大させて旋回体の旋回速度が迅速に立ち上がることを可能にする。
【0010】
前記旋回指令操作が前記旋回体の旋回速度を指定するための操作である場合、前記容量制御装置は、前記旋回指令操作により指定される前記旋回速度が大きいほど前記旋回モータの容量を大きくするものであり、前記容量制限部は前記ブレーキ解除時点までは前記旋回指令操作により指定された旋回速度にかかわらず前記旋回モータの容量を前記ブレーキ解除用容量以下の容量に制限するものであることが、好ましい。この態様では、前記ブレーキ解除時点での前記引き摺りを防ぎながら、当該ブレーキ解除時点の後に前記旋回指令操作に対応した度合いで旋回始動のための加速を行うことが可能である。
【0011】
前記旋回式作業機械におけるブレーキ機構の具体的な構成として、前記旋回パーキングブレーキは、ブレーキ解除圧の供給を受けないときは前記ブレーキ状態を保持し、前記ブレーキ解除圧の供給を受けたときにのみ前記ブレーキ解除状態に切換えられる油圧式のネガティブブレーキである場合、前記ブレーキ切換装置は、前記旋回パーキングブレーキにブレーキ解除ラインを通じて供給されることにより当該旋回パーキングブレーキに前記ブレーキ解除圧を発生させるパイロット油を吐出するパイロットポンプと、前記ブレーキ解除ラインの途中に設けられ、当該ブレーキ解除ラインを開通することにより前記旋回パーキングブレーキへの前記パイロット油の供給を許容して前記旋回パーキングブレーキを前記ブレーキ
解除状態にするブレーキ
解除位置と当該ブレーキ解除ラインを遮断することにより当該旋回パーキングブレーキへの当該パイロット油の供給を遮断して前記旋回パーキングブレーキを前記ブレー
キ状態にするブレー
キ位置とに切換可能であり、前記ブレーキ解除指令の入力を受けることにより前記
ブレーキ解除位置に切換わるブレーキ切換弁と、を含むものが、好適である。
【0012】
この場合において、前記容量制御装置は、容量操作用油圧の供給を受けることにより前記旋回モータの容量を変化させるように作動する容量操作部と、容量パイロット圧の供給を受けることにより前記旋回モータの容量を当該容量パイロット圧が増大するに従って増大させるように前記容量操作部への前記容量操作用油圧の供給の形態を変化させる油圧供給制御部と、前記パイロットポンプが吐出する前記パイロット油を前記容量操作部に導くことにより前記容量パイロット圧を与える容量パイロットラインと、当該容量パイロットラインの途中に設けられ、容量指令の入力を受けることにより当該容量指令に対応した開度で開弁して当該容量パイロットラインを通じて前記容量操作部に与えられる前記容量パイロット圧を増大させるように開弁するパイロット圧操作弁と、当該パイロット圧操作弁に前記容量指令を入力する容量指令入力部と、を含むことが、好ましい。前記容量パイロットライン及び前記パイロット圧操作弁は、前記ブレーキ切換装置に含まれるパイロットポンプを利用して前記油圧供給制御部に容量パイロット圧を供給しかつこれを制御することを可能にする。
【0013】
さらに、前記容量パイロットラインは、前記ブレーキ解除ラインのうち前記ブレーキ切換弁の下流側の部分に接続されることが、好ましい。このように前記ブレーキ解除ラインのうち前記ブレーキ切換弁の下流側の部分に接続された前記容量パイロットラインは、前記ブレーキ切換弁が前記ブレーキ位置にあってパイロット油の供給を遮断しているときには前記容量操作部への容量パイロット圧の供給も遮断して前記パイロット圧操作弁の動きにかかわらず前記旋回モータの容量を確実に最小容量にすることを可能にする。つまり、前記容量パイロットラインは、前記ブレーキ切換装置のブレーキ切換弁とともに前記容量制限部を構成し、かつ、前記ブレーキ切換弁の動作に連動して確実に容量制限及びその解除を行うことが可能である。また、当該容量制限部は、前記ブレーキ切換装置のブレーキ切換弁及び前記容量制御装置の前記容量パイロットラインの利用によって、部品点数の増大を伴うことなく構成されることが可能である。
【0014】
より具体的に、前記容量制御装置の前記容量操作部は、前記容量操作用油圧の供給を受けるピストン室を形成する容量操作シリンダと、前記ピストン室を第1油圧室と第2油圧室とに区画するとともに第2油圧室での受圧面積が第1油圧室での受圧面積よりも大きい形状を有する容量操作ピストンであって前記第2油圧室の容積が増大する方向に変位するのに従って前記旋回モータの容量を小さくするように当該旋回モータに連結されるものと、を含み、前記油圧供給制御部は、前記容量パイロット圧の供給を受けて作動する油圧供給制御弁を含み、当該油圧供給制御弁は、前記容量パイロット圧の供給を受けることにより、前記第2油圧室に供給される容量操作用油圧を前記第1油圧室に供給される容量操作用油圧に対して前記容量パイロット圧の大きさに対応した度合いで相対的に減少させ、前記容量パイロット圧の供給を受けないときには前記第2油圧室に供給される容量操作用油圧を前記第1油圧室に供給される容量操作用油圧と同等にすることにより前記第1油圧室の受圧面積と前記第2油圧室の受圧面積との差によって前記容量操作ピストンを旋回モータの容量を最小にする位置へ変位させるものが、好適である。この容量制御装置では、ブレーキ作動状態において前記油圧供給制御弁への前記容量パイロット圧の供給を遮断することにより前記容量操作部における前記第2油圧室と前記第1油圧室での前記容量操作ピストンの受圧面積の差を利用して前記旋回モータの容量を確実に最小容量に維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図3は、それぞれの実施の形態に係る作業機械に相当する油圧ショベルを示す。当該油圧ショベルは、基体を構成するクローラ式の下部走行体1と、その走行面に対して垂直な旋回中心軸Zまわりに旋回自在に搭載される旋回体である上部旋回体2と、この上部旋回体2に装着される掘削アタッチメント3と、を備える。掘削アタッチメント3は、起伏自在なブーム4と、このブーム4の先端に取付けられたアーム5と、このアーム5の先端に取付けられたバケット6と、前記ブーム4、アーム5及びバケット6をそれぞれ動かすための複数の油圧シリンダ、すなわち、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9と、を有する。
【0018】
なお、本発明に係る作業機械はこのような油圧ショベルに限定されない。本発明は、基体及びこれに旋回可能に搭載される旋回体を含む種々の作業機械(例えば旋回クレーン)に適用されることが可能である。また、前記基体は前記下部走行体
1のように走行可能なものに限定されず、特定の場所に設置されて旋回体を支持する基台であってもよい。
【0019】
図1は、本発明に第1の実施の形態に係る油圧回路であって、前記上部旋回体2を旋回駆動するための回路の例を示す。この回路は、油圧ポンプ10と、旋回モータ11と、旋回操作装置12と、コントロールバルブ13と、右旋回管路14と、左旋回管路15と、リリーフ
弁回路18と、チェック弁回路21と、連通路22と、メイクアップライン
23と、を含む。
【0020】
前記旋回モータ11は、前記上部旋回体2の例えば旋回軸部2aに連結され、作動油の供給を受けて前記上部旋回体2を旋回させるように当該上部旋回体2に旋回トルクを与える動作を行う油圧モータである。具体的に、当該旋回モータ11は、前記右旋回管路14に接続される右旋回ポート11aと、前記左旋回管路15に接続される左旋回ポート11bと、を有し、右旋回ポート11aへの作動油の供給を受けることにより、左旋回ポート11bからの作動油の排出を伴いながら前記上部旋回体2に右旋回操作を行わせる向きの旋回トルクを当該上部旋回体2に与える一方、左旋回ポート11bへの作動油の供給を受けることにより、右旋回ポート11aからの作動油の排出を伴いながら前記上部旋回体2に左旋回操作を行わせる向きの旋回トルクを当該上部旋回体2に与える。
【0021】
前記旋回モータ11を構成する前記油圧モータは、容量(押しのけ容積)が可変である可変容量型油圧モータである。当該旋回モータ11から前記上部旋回体2に与えられる前記旋回トルクは、当該旋回モータ11の容量の増大に伴って増大する。
【0022】
前記油圧ポンプ10は、前記上部旋回体2に搭載される図略のエンジンに連結され、当該エンジンにより駆動されることにより、前記旋回モータ11に供給されるべき作動油を吐出する。
【0023】
前記旋回操作装置12及び前記コントロールバルブ13は、旋回制御装置を構成する。当該旋回制御装置は、前記上部旋回体2を旋回させるための旋回指令操作を受けることにより、前記油圧ポンプ10から前記旋回モータ11への作動油の供給を許容して、当該旋回モータ11を作動させる。
【0024】
前記コントロールバルブ13は、前記油圧ポンプ10と前記旋回モータ11との間に介在し、当該油圧ポンプ10から当該旋回モータ11に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように作動する。
図1に示されるコントロールバルブ13は、右旋回パイロットポート13a及び左旋回パイロットポート13bを有するパイロット操作式の3位置油圧切換弁により構成される。当該コントロールバルブ13は、前記パイロットポート13a,13bのいずれにもパイロット圧が入力されないときは
図1の中央位置である中立位置を保ち、両旋回管路14,15をポンプ10に対してブロックすることにより、旋回モータ11の回転を阻止する。一方、当該コントロールバルブ13は、前記右旋回パイロットポート13aにパイロット圧が入力されると当該パイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置から
図1の左位置である右旋回位置に切換えられ、当該ストロークに対応した流量で前記油圧ポンプ10から前記右旋回管路14を通じて前記旋回モータ11の右旋回ポート11aに作動油が供給されるのを許容するとともに左旋回ポート11bから排出される作動油が前記
左旋回管路15を通じてタンクに戻ることを許容する。当該コントロールバルブ13は、逆に、前記左旋回パイロットポート13bにパイロット圧が入力されると当該パイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置から
図1の右位置である左旋回位置に切換えられ、当該ストロークに対応した流量で前記油圧ポンプ10から前記左旋回管路15を通じて前記旋回モータ11の左旋回ポート11bに作動油が供給されるのを許容するとともに右旋回ポート11aから排出される作動油が前記
右旋回管路14を通じてタンクに戻ることを許容する。
【0025】
前記旋回操作装置12は、操作レバー12aと、パイロット弁12bと、を有する。前記操作レバー12aは、操作部材であり、当該操作レバー12aに対してオペレータから前記旋回指令操作が与えられることによりその向きに回動する。前記パイロット弁12bは、図示されないパイロット油圧源に接続される入口ポートと、一対の出口ポートと、を有し、当該一対の出口ポートは右旋回パイロットライン26A及び左旋回パイロットライン26Bをそれぞれ介して前記コントロールバルブ13の右旋回パイロットポート13a及び左旋回パイロットポート13bに接続される。当該パイロット弁12bは、前記操作レバー12aに連結され、前記右旋回及び左旋回パイロットポート13a,13bのうち前記操作レバー12aに与えられる前記旋回指令操作の向きに対応するパイロットポートに対して前記パイロット油圧源から当該旋回指令操作の大きさに対応したパイロット圧が供給されることを許容するように開弁する。
【0026】
前記リリーフ弁回路18、前記チェック弁回路21、前記連通路22及び前記メイクアップライン23は、前記コントロールバルブ13が前記中立位置に復帰したときに前記旋回モータ11を制動させるための回路を構成する。これらは本発明において必須のものではない。
【0027】
前記リリーフ弁回路18は、前記旋回モータ11をバイパスして前記右旋回管路14と前記左旋回管路15とを相互接続する。当該リリーフ弁回路18は、左旋回リリーフ弁16及び右旋回リリーフ弁17を含む。左旋回及び右旋回リリーフ弁16
,17は、左旋回リリーフ弁16の入口ポートが前記右旋回管路14に接続され、右旋回リリーフ弁17の入口ポートが前記左旋回管路15に接続され、かつ両リリーフ弁16,17の出口ポートが相互接続されるように、配置される。
【0028】
前記チェック弁回路21は、前記リリーフ弁回路18よりも前記旋回モータ11に近い位置で両旋回管路14,15同士を相互接続する。当該チェック弁回路21は、左旋回チェック弁
20及び右旋回チェック弁19を含む。前記左旋回チェック弁
20は前記
左旋回管路
15からの作動油の流入を阻止する向きに配置され、前記右旋回チェック弁19は前記
右旋回管路
14からの作動油の流入を阻止する向きに配置される。
【0029】
前記連通路22は、前記リリーフ弁回路18のうち前記左旋回及び右旋回リリーフ弁16,17同士の間に位置する部位と、前記チェック弁回路21のうち前記左旋回及び右旋回チェック弁19,20同士の間に位置する部位とを接続する。前記メイクアップライン23は、前記連通路22が負圧になったときに当該メイクアップライン23を通じて前記タンクから前記連通路22に作動油が吸い上げられることを許容してキャビテーションを防止するように前記連通路22とタンクとを相互に接続する。当該メイクアップライン23には図略の背圧弁が設けられている。
【0030】
この回路において、例えば右旋回駆動中に
操作レバー12aが中立位置に戻されてコントロールバルブ13がそれまでの右旋回位置から中立位置に復帰すると、当該コントロールバルブ13が両旋回管路14,15と油圧ポンプ10との間を遮断するが、旋回モータ11は上部旋回体2の慣性によって右旋回方向の回転を続けるため、メータアウト側である左旋回管路15の圧力が上昇する。当該圧力が
右旋回リリーフ弁
17の設定圧に達すると当該
右旋回リリーフ弁
17が開弁して前記
左旋回管路
15の作動油が当該右旋回リリーフ弁
17、連通路22、
右旋回チェック弁
19及び右旋回管路
14を通じて旋回モータ11に流入することを許容する。このことは、前記慣性により回転を続ける旋回モータ11に前記
右旋回リリーフ
弁17の作用によるブレーキ力を与え、これにより当該旋回モータ11を減速させ、停止させる。左旋回からの減速/停止時もこれと同じである。
【0031】
この油圧ショベルは、さらに、旋回パーキングブレーキ30と、ブレーキ切換装置40と、容量操作部50と、油圧供給制御部60と、容量パイロットライン69と、パイロット圧操作弁68と、右旋回パイロットセンサ28A及び左旋回パイロットセンサ28Bと、コントローラ70と、を備える。
【0032】
前記旋回パーキングブレーキ30は、少なくとも前記上部旋回体2が前記旋回モータ11により駆動されていないとき、つまり、少なくとも当該旋回モータ11が当該上部旋回体2に旋回トルクを与えていないとき、に前記上部旋回体2を停止状態に保つように当該上部旋回体2に機械的な停止保持力を与えるためのブレーキ装置である。当該旋回パーキングブレーキ30は、前記上部旋回体2に前記停止保持力を与えるブレーキ状態と、当該上部旋回体2が旋回可能となるように当該上部旋回体2を解放するブレーキ解除状態とに切換可能である。
【0033】
この実施の形態に係る前記旋回パーキングブレーキ30は、油圧式のネガティブブレーキであり、ブレーキ解除圧の供給を受けたときにのみ前記ブレーキ解除状態に切換えられ、当該ブレーキ解除圧の供給を受けていないときは前記ブレーキ状態を保持する。具体的に、当該旋回パーキングブレーキ30は、第1油圧室であるバネ室32a及びその反対側の第2油圧室であるブレーキ解除室32bを有する油圧シリンダ32と、前記バネ室32aに装填されるバネ34と、を含む。当該旋回パーキングブレーキ30は、前記ブレーキ解除室32bに前記ブレーキ解除圧が供給されないときは前記バネ34の弾発力によって前記上部旋回体2の適当な部位、例えば
図1に示される旋回軸部2a、に拘束力つまり前記停止保持力を与える。一方、前記ブレーキ解除室32bに前記ブレーキ解除圧が供給されると、当該ブレーキ解除圧は前記バネ34の弾発力に抗して前記拘束力の付与を解除するブレーキ解除力として前記油圧シリンダ32に作用する。
【0034】
前記ブレーキ切換装置40は、前記旋回パーキングブレーキ30へのブレーキ解除圧の供給及び当該供給の停止によって、当該旋回パーキングブレーキ30を前記ブレーキ状態と前記ブレーキ解除状態とに切換える。具体的に、当該ブレーキ切換装置40は、前記ブレーキ解除室32bにブレーキ解除ライン44を介して接続されるパイロットポンプ42と、当該ブレーキ解除ライン44の途中に設けられるブレーキ切換弁46と、を有する。
【0035】
前記パイロットポンプ42は、前記エンジンにより駆動されてパイロット油を吐出する。当該パイロット油は前記ブレーキ解除ライン44を通じて前記ブレーキ解除室32bに供給されることにより当該ブレーキ解除室32b内に前記ブレーキ解除圧を発生させる。
【0036】
前記ブレーキ切換弁46は、この実施の形態では、ソレノイド48を有する2位置電磁切換弁である。当該ブレーキ切換弁46は、前記ソレノイド48にその励磁電流であるブレーキ解除指令が入力されないときは、
図1における左側のブレーキ位置である閉位置を保ち、前記ブレーキ解除ライン44を遮断して前記パイロットポンプ42から前記ブレーキ解除室32bへのブレーキ解除圧の供給を遮断する一方、前記ソレノイド48に前記ブレーキ解除指令が入力されると、
図1における右側のブレーキ解除位置である開位置に切換えられ、前記ブレーキ解除ライン44を開通して前記パイロットポンプ42から前記ブレーキ解除室32bへのブレーキ解除圧の供給を許容する。
【0037】
前記容量操作部50及び前記油圧供給制御部60は、前記コントローラ70とともに容量制御装置を構成する。当該容量制御装置は、前記旋回操作レバー12aに与えられる旋回指令操作に応じて前記旋回モータ11の容量すなわち押しのけ容積を油圧によって制御するものである。
【0038】
前記容量操作部50は、前記油圧供給制御部60により制御される容量操作用油圧の供給を受けて前記
旋回モータ11の容量を変化させるものであり、ピストン室を囲む容量操作シリンダ52と、当該容量操作シリンダ52の当該ピストン室に装填される容量操作ピストン54と、を有する。当該容量操作ピストン54は、前記ピストン室内において軸方向に変位(容量操作シリンダ52の内周面に対して摺動)することが可能であり、当該軸方向の変位によって前記旋回モータ11の容量を変化させるように当該旋回モータ11に連結される。例えば、旋回モータ11がアキシャルピストン型のものである場合、その斜板の傾きを変化させる。
【0039】
具体的に、前記容量操作ピストン54は、当該容量操作ピストン54から前記第1油圧室55を貫くように延びるロッド53を介して前記旋回モータ11に連結されるとともに、前記ピストン室52内を第1油圧室55と第2油圧室56とに区画し、当該第1油圧室55の容積を増加させる方向の変位(
図1では右側への変位)に伴って前記旋回モータ11の容量を
増大させる。当該容量操作ピストン54の軸方向の位置は、前記第1油圧室55に供給される第1容量操作用油圧と前記第2油圧室56に供給される第2容量操作用油圧とのバランスによって決定される。すなわち、前記第1容量操作用油圧に対して前記第2容量操作用油圧が低いほど前記容量操作ピストン54は前記
旋回モータ11の容量を増大させる向き(
図1では右向き)に変位する。
【0040】
前記第1油圧室55において前記容量操作ピストン54が前記容量操作用油圧を受ける面積である受圧面積は前記ロッド53の断面積分だけ前記第2油圧室56における受圧面積よりも小さい。この断面積の差は、前記第1容量操作用油圧と前記第2
容量操作用油圧が同等のときに前記容量操作ピストン54を前記第2油圧室56の容積が最大となる位置、つまり前記
旋回モータ11の容量を最小容量にする位置であって
図1では最も左側に位置、に保持することを可能にする。
【0041】
前記油圧供給制御部60は、前記第1容量操作用油圧と前記第2容量操作用油圧の大小バランスを変えることにより前記容量操作ピストン54の位置を制御することによって、当該位置に対応する前記旋回モータ11の容量を制御する。この実施の形態に係る供給制御部60は、前記ブレーキ切換装置40の前記パイロットポンプ42から吐出される油を利用して前記容量操作部50に対する前記容量操作用油圧の供給さらには当該容量操作用油圧の変更を行うものであり、
図1に示されるような油圧供給ライン61と、油圧供給制御弁62と、を含む。
【0042】
前記油圧供給ライン61は、前記ブレーキ切換
弁46と並列に前記パイロットポンプ42に接続され、当該パイロットポンプ42から吐出される油を前記容量操作部50に導くことにより、当該容量操作部50の前記第1油圧室55及び前記第2油圧室56に前記容量操作用油圧を供給する。具体的に、当該油圧供給ライン61は前記ブレーキ切換装置40において前記ブレーキ切換弁46よりも上流側の位置で前記ブレーキ解除ライン44から分岐する。さらに、当該油圧供給ライン61は、前記第1油圧室55に接続される第1油圧ライン65と、前記第2油圧室56に接続される第2油圧ライン66と、に分岐する。
【0043】
前記油圧供給制御弁62は、前記第2油圧ライン66の途中に設けられ、当該油圧供給制御弁62に与えられる容量パイロット圧の大きさに対応した度合いで、前記第2油圧ライン66を通じて前記第2油圧室56に供給される前記第2容量操作用油圧を前記第1油圧ライン65を通じて前記第1油圧室55に供給される前記第1容量操作用油圧に対して相対的に低下させる。
【0044】
具体的に、この実施の形態に係る油圧供給制御弁62は、パイロット操作式のサーボ弁からなり、スリーブ62aと、当該スリーブ62a内に摺動可能に装填されるスプール62bと、当該スプール62bの軸方向の両側にそれぞれ配置されるバネ63及びパイロットポート64と、を有する。前記スプール62bは、前記パイロットポート64に前記容量パイロット圧が供給されないときは前記バネ63のバネ力により最大開口面積で前記第2油圧ライン66を開通する全開位置(
図1の左側位置)に保持され、前記パイロットポート64に前記容量パイロット圧が供給されると当該容量パイロット圧の大きさに対応したストロークで前記全開位置から閉じ方向(
図1では左向き)に変位して前記第2油圧室56に供給される前記第2容量操作用油圧を前記第1油圧室55に供給される前記第1容量操作用油圧に対して相対的に低下させる。
【0045】
前記容量パイロットライン69は、前記ブレーキ切換装置40の前記パイロットポンプ42が吐出する油を前記油圧供給制御弁62のパイロットポート64に導くことにより当該パイロットポート64に前記容量パイロット圧を供給する。すなわち、当該容量パイロットライン69は、前記ブレーキ解除ライン44に接続される上流端と、前記パイロットポート64に接続される下流端と、を有する。
【0046】
前記パイロット圧操作弁68は、前記容量パイロットライン69の途中に設けられ、容量指令の入力を受けることにより当該容量指令の大きさに対応した開度で開弁し、これにより前記パイロットポート64に供給される前記容量パイロット圧を増大させる。この実施の形態に係るパイロット圧操作弁68は、ソレノイド67を有する電磁比例弁からなる。前記ソレノイド67は、前記容量指令としての励磁電流の供給を受ける。前記パイロット圧操作弁68は、前記ソレノイド67に前記励磁電流が供給されない(つまり容量指令が入力されない)ときは前記容量パイロットライン69を遮断して前記パイロットポート64をタンクに連通するように閉弁することにより当該パイロットポート64への前記容量パイロット圧の供給を阻止し、前記ソレノイド67に前記励磁電流が供給された(つまり容量指令が入力された)ときはその励磁電流の大きさに対応した開度で前記容量パイロットライン69を開通して当該開度に対応した大きさの容量パイロット圧が前記パイロットポート64に供給されることを許容するように開弁する。
【0047】
この実施の形態の特徴として、前記容量パイロットライン69の上流端は、前記ブレーキ解除ライン44のうち前記ブレーキ切換弁46の下流側の部分に接続されている。従って、当該ブレーキ切換弁46は、前記ブレーキ位置(
図1の左位置)に切換えられているときに前記パイロット圧操作弁
68の開閉にかかわらず前記パイロットポート64をタンクに連通することにより当該パイロットポート64への容量パイロット圧の供給を阻止する。
【0048】
前記右旋回パイロットセンサ28A及び左旋回パイロットセンサ28Bは、それぞれ、前記右旋回パイロットライン26A及び前記左旋回パイロットライン26Bにおける右旋回パイロット圧及び左旋回パイロット圧に対応するパイロット圧検出信号を生成し、これをコントローラ70に入力する。従って、当該右旋回及び左旋回パイロット圧センサ28A,28Bは、前記旋回操作装置12の操作レバー12aに旋回指令操作が与えられたことを検出してその情報を前記コントローラ70に与える。
【0049】
前記コントローラ70は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、本発明に関連する機能として
図1に示されるブレーキ解除指令入力部72及び容量指令入力部74を有する。
【0050】
前記ブレーキ解除指令入力部72は、前記右旋回及び左旋回パイロットセンサ28A,28Bとともにブレーキ解除指令部を構成する。具体的に、当該ブレーキ解除指令入力部72は、前記右旋回及び左旋回パイロット圧センサ28A,28Bのいずれかによって前記旋回操作装置12に前記旋回指令操作が与えられたことが検知されたときに、その旋回指令操作によって前記コントロールバルブ13が前記旋回操作装置12に与えられる旋回指令操作によって開弁することにより前記油圧ポンプ10から前記旋回モータ11への作動油の供給を許容した後、前記旋回パーキングブレーキ30を前記ブレーキ状態から前記ブレーキ解除状態に切換えるように前記ブレーキ切換弁46のソレノイド48に前記ブレーキ解除指令を入力する。当該旋回指令操作が行われる時点から前記ブレーキ解除状態に切換えられる時点(ブレーキ解除時点)までの時間は、実際に旋回モータ11が作動して上部旋回体2が旋回するまでの間は確実に旋回パーキングブレーキ30によって上部旋回体2の静止を保持できる程度の微小時間に設定される。当該微小時間は、前記右旋回及び左旋回パイロット圧センサ28A,28Bのいずれかが前記旋回指令操作を検出した時点から実際に前記ブレーキ切換弁46がブレーキ解除位置に切換わるまでの自然発生的なタイムラグにそのまま対応する時間であってもよい。あるいは、前記ブレーキ解除指令入力部72は、タイマーを内蔵し、前記旋回指令操作が検出された時から予め設定された前記微小時間が経過した後に前記ブレーキ切換弁46のソレノイド48に前記ブレーキ解除指令を入力するものでもよい。
【0051】
前記容量指令入力部74は、前記旋回指令操作によって指定される上部旋回体2の旋回速度(つまり旋回モータ11の作動速度)が大きいほど大きな容量指令を生成して前記パイロット圧操作弁68のソレノイド67に入力する。つまり、当該容量指令入力部74は、前記旋回指令操作に対応する旋回速度が大きいほど前記油圧供給制御弁62のパイロットポート64に大きな容量パイロット圧が与えられるような容量指令の生成及び入力を行う。
【0052】
次に、この油圧回路の作用を説明する。
【0053】
前記旋回操作装置12の
操作レバー12aが中立位置にあるとき、コントロールバルブ13の右旋回及び左旋回パイロットポート13a,13bのいずれにもパイロット圧が供給されず、コントロールバルブ13は中立位置を保つ。従って、旋回モータ11は上部旋回体2に旋回トルクを与えない。その一方、コントローラ70のブレーキ解除指令入力部72はブレーキ切換弁46のソレノイド48にブレーキ解除指令を入力せず、これによりブレーキ切換弁46を閉位置つまりブレーキ位置に保つ。当該ブレーキ位置にあるブレーキ切換弁46は、ブレーキ解除ライン44を遮断してネガティブブレーキである旋回パーキングブレーキ30のブレーキ解除室32bをタンクに連通することにより、当該旋回パーキングブレーキ30をブレーキ状態つまり前記上部旋回体2に停止保持力を与える状態に保つ。
【0054】
このようにブレーキ切換装置40が旋回パーキングブレーキ30をブレーキ状態に保つ間、容量制御装置は、前記旋回モータ11の容量を最小容量に保つ。具体的に、前記ブレーキ切換弁48よりも下流側(つまりパイロットポンプ42と反対の側)の位置で前記ブレーキ解除ライン44に接続されている前記容量パイロットライン69は、前記ブレーキ位置にあるブレーキ切換弁48を通じてタンクに連通されるため、前記パイロット圧操作弁68の開度にかかわらず油圧供給制御弁62のパイロットポート64に容量パイロット圧が入力されることを阻止する。これにより、当該油圧供給制御弁62は全開位置に保たれて容量操作部50の第2油圧室56に供給される第2操作用油圧を第1油圧室55に供給される第1操作用油圧と同等に保つ。容量操作ピストン54は、前記第2油圧室56における受圧面積と前記第1油圧室55における受圧面積との差によって当該第2油圧室56の容積を最大にする位置(
図1において最も左側の位置)に保持され、前記旋回モータ11の容量を最小容量に保つ。
【0055】
前記旋回レバー12aが旋回指令操作を受けて中立位置から右旋回操作方向または左旋回操作方向に回動すると、コントロールバルブ13の右旋回及び左旋回パイロットポート13a,13bのうち前記方向に対応したパイロットポートに対して前記旋回操作装置12のパイロット弁12bからパイロットライン26A(または26B)を通じてパイロット圧が供給される。これにより、当該コントロールバルブ13は、右旋回位置及び左旋回位置のうち前記方向に対応した位置に切換って前記油圧ポンプ10から前記旋回モータ11の右旋回ポート11aまたは左旋回ポート11bへの作動油の供給を許容する。当該旋回モータ11は、その作動油の供給を受けたポートに対応する方向の旋回トルクを上部旋回体2に与える。
【0056】
この時点で、前記ブレーキ切換弁46は、前記閉位置(ブレーキ位置)にあり、前記パイロットポンプ42からブレーキ解除ライン44を通じて旋回パーキングブレーキ30における油圧シリンダ32のブレーキ解除室32bにパイロット油が供給されることを阻止するとともに、油圧供給制御弁62のパイロット
ポート64をタンクに連通して前記
旋回モータ11の容量を最小容量に保つ。このことは、当該
旋回モータ11から前記上部旋回体2に与えられる旋回トルクが前記旋回パーキングブレーキ30による停止保持力(トルク)を上回ることを阻止してそれよりも小さいトルクに制限することを可能にする。このようにして、旋回パーキングブレーキ30がブレーキ状態にあるにもかかわらず当該最大トルクで旋回が開始されることに起因する、当該旋回パーキングブレーキ30のいわゆる引き摺りを伴う旋回始動が防がれる。
【0057】
前記パイロット圧の発生に伴い、前記右旋回パイロットセンサ28Aまたは左旋回パイロットセンサ28Bはパイロット圧検出信号を生成してコントローラ70に入力する。ブレーキ解除指令入力部72は、検出されるパイロット圧が予め設定された判定値以上の場合に前記操作レバー12aに対して旋回指令操作が与えられたと判定し、当該判定を行ってから予め設定された微小時間が経過した後にブレーキ切換弁46のソレノイド48にブレーキ解除指令を入力して当該ブレーキ切換弁46を開弁させる。このように開弁したブレーキ切換弁46は、パイロットポンプ42からブレーキ解除ライン44を通じて旋回パーキングブレーキ30における油圧シリンダ32のブレーキ解除室32bにパイロット油が供給されることを許容して当該旋回パーキングブレーキ30をそれまでのブレーキ状態からブレーキ解除状態に切換えるのと同時に、前記パイロットポンプ42から吐出される油が前記ブレーキ解除ライン44及び容量パイロットライン69を通じて前記油圧供給制御弁62のパイロットポート64に導入されるのを許容し、これにより、パイロット圧操作弁
68の開弁によって旋回モータ11の容量が前記最小容量から最大容量まで増大することを許容する。
【0058】
前記旋回モータ11の容量の増大の許容(禁止解除)は、オペレータにより操作レバー12に与えられる旋回指令操作に応じて増大する旋回トルクで上部旋回体2が始動することを可能にし、これにより、当該上部旋回体2の大きな重量にかかわらずその旋回速度を迅速に立ち上げることを可能にする。しかも、前記ブレーキ切換弁46の開弁によって前記旋回トルクの増大の許容(禁止解除)と前記旋回パーキングブレーキ30のブレーキ解除状態への切換とが確実に同期するので、当該旋回パーキングブレーキ30がブレーキ状態にあるにもかかわらず上部旋回体2に過大なトルク(例えば最大トルクのように
旋回モータ11の最小容量に対応するトルクよりも著しく大きいトルク)が与えられることによる当該旋回パーキングブレーキ30の引き摺りによる当該旋回パーキングブレーキ30またはその他の機器の破損が防がれる。
【0059】
ここにいう前記旋回トルクの増大の許容とブレーキ解除状態への切換との同期とは、前記旋回パーキングブレーキ30が前記ブレーキ状態から前記ブレーキ解除状態に切換えられる前に前記旋回トルクが増大することによる当該旋回パーキングブレーキ30のいわゆる引き摺りを伴った上部旋回体2の旋回を確実に防止できる程度に前記ブレーキ解除時点と前記旋回トルクの増大の許容(禁止解除)が開始される時点とが一致することを意味する。従って、ここにいう「同期」は、前記引き摺りを伴う旋回を確実に防止できる範囲で前記両タイミングが微小にずれるものも包含する趣旨である。
【0060】
前記第1の実施の形態では、上述のように、前記容量パイロットライン69が前記ブレーキ切換弁46の下流側の位置で前記ブレーキ解除ライン44から分岐すること、換言すれば、当該容量パイロットライン69の上流端が前記ブレーキ切換弁46の下流側の位置で前記ブレーキ解除ライン44に接続されること、が、簡素な構成で確実に旋回パーキングブレーキ30におけるブレーキ解除と旋回トルクの増大の許容とを同期させることを可能にする。例えば、前記操作レバー12aに前記旋回指令操作が与えられた後、前記ブレーキ解除指令入力部72が前記ブレーキ切換弁46にブレーキ解除指令を入力する時点(ブレーキ解除時点)よりも容量指令入力部74がパイロット圧操作弁68にパイロット圧を増大させる容量指令を入力する時点が先行したとしても、実際に前記容量の増大が許容される時点(つまり油圧供給制御弁62のパイロットポート64にパイロット圧が供給される時点)を前記ブレーキ解除時点に確実に同期させることが可能である。
【0061】
しかし、本発明は、この第1の実施の形態に限定されない。本発明は、例えば容量パイロットライン69がブレーキ切換弁の上流側から分岐する態様も包含する。その例を第2の実施の形態として
図2に示す。
【0062】
この第2の実施の形態に係る容量パイロットライン69は、ブレーキ切換弁46の上流側でブレーキ解除ライン44から分岐して油圧供給制御部60の第1油圧ライン65に至る。つまり、当該容量パイロットライン69の上流端は当該ブレーキ切換弁46を介さずに前記パイロットポンプ42に直接接続され、当該容量パイロットライン69は当該パイロットポンプ42から吐出される油を油圧供給制御弁62のパイロットポート64にそのまま導く。
【0063】
一方、コントローラ70は、前記第1の実施の形態に係るブレーキ解除指令入力部72及び容量指令入力部74と同様のブレーキ解除指令入力部72及び容量指令入力部74を有するのに加え、容量制限部76を有する。容量制限部76は、少なくとも、前記操作レバー12aに旋回指令操作が与えられたと判定してから所定の微小時間が経過した時点、つまり、ブレーキ解除指令入力部72がブレーキ切換弁46にブレーキ解除指令を入力するブレーキ解除時点、に至るまでは、
旋回モータ11の容量を最小容量に制限する容量制限指令を容量指令入力部74に入力し、当該ブレーキ解除時点と同時または当該ブレーキ解除時点から予め設定された微小時間が経過した後に、前記容量制限指令を解除する。当該容量制限指令の入力を受けた容量指令入力部74は、前記旋回指令操作の有無にかかわらず前記パイロット圧操作弁68への容量指令の入力を停止して油圧モータ11の容量を最小容量に保つ。
【0064】
この第2の実施の形態においても、前記容量制御装置に容量増大動作を行わせる手段としてブレーキ切換装置40のパイロットポンプ42を利用して部品点数の削減を図ることが可能である。しかも、容量制限部76は、ブレーキ解除時点すなわち前記ブレーキ解除状態への前記旋回パーキングブレーキ30の切換の時点と前記旋回モータ11の容量の増大の許容(禁止解除)とを同期させることにより、前記第1の実施の形態と同様に旋回パーキングブレーキ30のいわゆる引き摺りを防ぐことが可能である。
【0065】
本発明は、しかし、旋回モータの容量の増大のための手段としてブレーキ切換装置のパイロットポンプを利用する態様に限定されない。すなわち、本発明は、当該パイロットポンプとは別に当該旋回モータの容量の増大のための油圧源を具備する態様も、包含する。
【0066】
また、容量操作部50への容量操作用油圧の供給も、必ずしもパイロットポンプ42の利用によるものでなくてもよく、パイロットポンプ42とは別のポンプにより容量操作部50に容量操作用油圧が与えられてもよい。あるいは、第3の実施の形態として
図3に示すように油圧供給制御部60の油圧供給ライン61の上流端が前記ブレーキ解除ライン44においてブレーキ切換弁46の下流側の部分に接続されてもよい。この場合、前記油圧供給ライン61には
図3に示すように容量操作部50からブレーキ解除ライン44への油の逆流を阻止するチェック弁82が設けられることが、より好ましい。当該チェック弁82は、ブレーキ切換弁46がブレーキ位置つまり前記ブレーキ解除ライン44を遮断してブレーキ解除室32bをタンクに連通する位置に切換えられても前記容量操作部50に与えられる容量操作用油圧を保持することを可能にする。