(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側壁部の一部の領域に、前記電磁波が入力または出力される開放領域が形成され、少なくとも前記開放領域の周囲の領域に対応する部分が、前記所定の比誘電率よりも大きい比誘電率の誘電体によって形成されている
請求項5ないし8のいずれか1つに記載の共振器。
前記複数の共振器のそれぞれにおいて、前記側壁部における、少なくとも前記結合窓の周囲の領域に対応する部分が、前記所定の比誘電率よりも大きい比誘電率の誘電体によって形成されている
請求項17または18に記載のフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
1.1 導波管の構成例(
図1〜
図2)
1.2 電磁波伝送路の構成例(
図3)
1.2.1 電磁波伝送路の構成の変形例
1.3 共振器の構成例(
図5〜
図11)
1.3.1 共振器の構成の変形例
1.4 アンテナの構成例(
図12〜
図16)
1.4.1 アンテナの構成のその他の変形例
1.5 フィルタの構成例(
図17〜
図19)
1.5.1 フィルタの構成の変形例
2.その他の実施の形態
【0013】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 導波管の構成例]
図1は、比較例に係る導波管101の断面構成例を示している。
【0014】
比較例に係る導波管101は、第1の層111と、第1の層111を挟み込むように対向配置された第2および第3の層112,113と、第1の層111を貫通し、第2および第3の層112,113に接続された複数のビアホール114とを備えている。
【0015】
比較例に係る導波管101において、第1の層111は、誘電率ε
rの誘電体からなる。第2および第3の層112,113は、導体からなる。複数のビアホール114はそれぞれ、内部に導体が充填されている。
【0016】
比較例に係る導波管101では、第2および第3の層112,113と、複数のビアホール114との導体で囲まれた第1の層111の領域内を電磁波が伝搬する。
【0017】
一般に、空間の波動インピーダンス(特性インピーダンス)Z
Wは、以下の式(1)で表される。ε
0は真空の誘電率、μ
0は真空の透磁率を示す。ε
rはその空間の比誘電率、μ
rは、その空間の比透磁率を示す。また、一般的な導波管における反射係数Γは、以下の式(2)で表される。ここで、Z
W1は、導波管における電磁波の伝搬領域の波動インピーダンス(特性インピーダンス)、Z
W2は、電磁波の伝搬領域を囲む領域の波動インピーダンス(特性インピーダンス)を示す。比較例に係る導波管101のように、電磁波の伝搬領域の周囲が導体で囲まれている場合、Z
W2=0となり、反射係数Γは、以下の式(3)で表される。
【0019】
図2は、本発明の一実施の形態に係る疑似導波管102の断面構成例を示している。
【0020】
疑似導波管102は、第1の層121と、第1の層121を挟み込むように対向配置された第2および第3の層122,123と、第1の層121を貫通し、第2および第3の層122,123に接続された複数のビアホール124とを備えている。
【0021】
疑似導波管102において、第1の層121は、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体からなる。第2および第3の層122,123は、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体からなる。複数のビアホール124はそれぞれ、内部に第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されている。
【0022】
このように、疑似導波管102は、比較例に係る導波管101の構成に対して、第2および第3の層122,123と、複数のビアホール124とが、導体に代えて、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で構成されている。これにより、第2および第3の層122,123と、複数のビアホール124との第2の誘電体で囲まれた第1の層121の領域内を電磁波が伝搬する。
【0023】
この疑似導波管102のように、電磁波の伝搬領域の周囲が、導体に代えて誘電体で囲まれている場合における、第1の誘電体の部分と、第2の誘電体の部分との波動インピーダンス(特性インピーダンス)Z
W1,Z
W2は、式(1)に基づいて、以下の式(4)で表される。また、疑似導波管102における反射係数Γは、以下の式(5)で表される。なお、式(4)は、式(1)における比透磁率をμ
r=1と近似した場合、すなわち第1の誘電体および第2の誘電体の比透磁率を共に1と近似した場合の式である。第1の誘電体および第2の誘電体が共に非磁性体の場合は、比透磁率は共に1と近似される。また、第1の誘電体および第2の誘電体が共に磁性体であっても、電磁波の周波数が高周波数領域(例えば1GHz以上の周波数領域)では、実質的に比透磁率が1とみなせる。
【0025】
ここで、式(5)は、Z
W1がZ
W2に対して十分に大きい場合(Z
W1>>Z
W2)、すなわち、第2の比誘電率ε
r2が第1の比誘電率ε
r1に対して十分に大きい場合(ε
r2>>ε
r1)の近似式である。ただし、第2の比誘電率ε
r2が第1の比誘電率ε
r1に対して十分に大きくなくても、第2の比誘電率ε
r2が第1の比誘電率ε
r1に対して大きければ、ε
r2>ε
r1、Z
W1>Z
W2となり、式(2)から反射係数ΓがΓ<0となる。このように、比較例に係る導波管101の構成に対して、電磁波の伝搬領域の周囲が誘電体で囲まれた構造であっても、電磁波の伝搬領域の周囲が導体で囲まれている場合に近い反射特性を得ることができる。またこの場合、比較例に係る導波管101の構成に対して、全ての部分が誘電体で構成されているので、導体損失を実質的にゼロに近付けることができる。
【0026】
以下、このような特性を利用した、本発明の一実施の形態に係る電磁波伝送路、共振器、アンテナ、およびフィルタの具体的な構成例を説明する。なお、以下の構成例では、実質的に同一の構成要素には、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0027】
[1.2 電磁波伝送路の構成例]
図3は、一実施の形態に係る電磁波伝送路1の要部の一構成例を示している。
【0028】
電磁波伝送路1は、第1の層11と、第1の層12を挟み込むように対向配置された第2および第3の層12,13と、第1の層11を貫通し、第2および第3の層12,13に接続された複数のビアホール14とを備えている。
【0029】
電磁波伝送路1において、第1の層11は、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体からなる。電磁波伝送路1において、第1の比誘電率ε
r1は、本発明の電磁波伝送路における「所定の比誘電率」の一具体例に相当する。
【0030】
複数のビアホール14は、第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bとを有している。電磁波伝送路1において、第1のビアホール列14Aは、本発明の電磁波伝送路における「第1の側壁部」の一具体例に相当する。電磁波伝送路1において、第2のビアホール列14Bは、本発明の電磁波伝送路における「第2の側壁部」の一具体例に相当する。第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bは、第2の層12と第3の層13との間において電磁波10が伝搬する領域を形成する。
【0031】
電磁波伝送路1では、第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bとの列間を電磁波10が伝搬する。より詳しくは、第2および第3の層12,13と、複数のビアホール14(第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14B)とで囲まれた第1の層11の領域内を電磁波が伝搬する。電磁波伝送路1は、例えば全体として平板状(6面体形状)に形成され、第1の層11の1つの端面21から電磁波10が出力される。
【0032】
なお、第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bとのそれぞれにおいて、隣り合うビアホール14同士の間隔(ギャップ)をg、ビアホール14の直径をdとすると、g<dの関係となるように、ビアホール14が配置されていることが望ましい。これにより、隣り合うビアホール14の間から漏れ出す電磁波10を減らすことができる。以降で説明する共振器、アンテナ、およびフィルタの具体的な構成例におけるビアホール14の配置についても同様である。
【0033】
電磁波伝送路1では、全体として第2および第3の層12,13が占める面積が大きいので、第2および第3の層12,13を第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成すると、導体損失を低減する効果が大きい。
【0034】
そこで、電磁波伝送路1において、第2および第3の層12,13の少なくとも一部分が、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、第2および第3の層12,13の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、第2および第3の層12,13の全てを、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、第2および第3の層12,13における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、第2および第3の層12,13の一部分を第2の誘電体で形成する場合、第2および第3の層12,13の他の部分は導体であってもよい。
【0035】
また、電磁波伝送路1において、複数のビアホール14の少なくとも一部分に、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されていることが望ましい。これにより、複数のビアホール14の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、複数のビアホール14の全てに、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されているとよい。これにより、複数のビアホール14における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、複数のビアホール14のうち一部分を第2の誘電体を充填したビアホールとする場合、複数のビアホール14のうち他の部分は導体を充填したビアホールであってもよい。
【0036】
[1.2.1 電磁波伝送路の構成の変形例]
図4は、
図3に示した電磁波伝送路1の一変形例の要部を示している。
【0037】
図3に示した電磁波伝送路1では、複数のビアホール14からなる第1および第2のビアホール列14A,14Bによって、列状の第1および第2の側壁部を形成している。これに対して、例えば
図4に示した電磁波伝送路1Aのように、第1のビアホール列14Aおよび第2のビアホール列14Bに代えて、連続的な壁部によって形成された列状の第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bを有する構成にしてもよい。
【0038】
図4に示した電磁波伝送路1Aにおいて、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bの少なくとも一部分は、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bの全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bの全体を、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bにおける導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bのうち一部分を第2の誘電体で形成した場合、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bのうち他の部分は導体であってもよい。
【0039】
また、以上の電磁波伝送路の構成例および変形例では、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体と、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体との2種類の誘電体を用いる例で説明したが、3種類以上の誘電体を用いた構成であってもよい。すなわち、第1の比誘電率ε
r1を所定の比誘電率とすると、この所定の比誘電率よりも大きい比誘電率の誘電体を2種類以上用いた構成であってもよい。例えば、第2および第3の層12,13のそれぞれに誘電体を用いる場合、第2の層12に用いる誘電体と、第3の層13に用いる誘電体とが、それぞれ所定の比誘電率よりも大きい、互いに異なる比誘電率の誘電体であってもよい。さらに、第1および第2のビアホール列14B,14A、または第1および第2の側壁部214A,214Bに誘電体を用いる場合、その誘電体は、所定の比誘電率よりも大きく、かつ第2および第3の層12,13に用いる誘電体とは異なる比誘電率の誘電体であってもよい。
【0040】
[1.3 共振器の構成例]
図5は、一実施の形態に係る共振器の第1の構成例を示している。
【0041】
図5に示した共振器2は、第1の層11と、第1の層12を挟み込むように対向配置された第2および第3の層12,13と、第1の層11を貫通し、第2および第3の層12,13に接続された複数のビアホール14とを備えている。
【0042】
共振器2において、第1の層11は、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体からなる。共振器2において、第1の比誘電率ε
r1は、本発明の共振器における「所定の比誘電率」の一具体例に相当する。
【0043】
複数のビアホール14は、第2の層12と第3の層13との間において電磁波10が共振する領域を形成するように配置されている。共振器2において、複数のビアホール14は、本発明の共振器における「側壁部」の一具体例に相当する。
【0044】
共振器2は、例えば全体として円柱状に形成され、第2および第3の層12,13と、複数のビアホール14とで囲まれた第1の層11の領域内で、電磁波10が共振する。複数のビアホール14は、全体として円形状に配置されている。
【0045】
共振器2では、全体として第2および第3の層12,13が占める面積が大きいので、第2および第3の層12,13を第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成すると、導体損失を低減する効果が大きい。
【0046】
そこで、共振器2において、第2および第3の層12,13の少なくとも一部分が、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、第2および第3の層12,13の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、第2および第3の層12,13の全てを、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、第2および第3の層12,13における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、第2および第3の層12,13の一部分を第2の誘電体で形成する場合、第2および第3の層12,13の他の部分は導体であってもよい。
【0047】
また、共振器2において、複数のビアホール14の少なくとも一部分に、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されていることが望ましい。これにより、複数のビアホール14の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、複数のビアホール14の全てに、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されているとよい。これにより、複数のビアホール14における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、複数のビアホール14のうち一部分を第2の誘電体を充填したビアホールとする場合、複数のビアホール14のうち他の部分は導体を充填したビアホールであってもよい。
【0048】
[1.3.1 共振器の構成の変形例]
なお、共振器2において、以下の変形例のように、電磁波10の入出力部を設けることができる。
図6は、
図5に示した共振器2の第1の変形例を示している。
図7は、
図5に示した共振器2の第2の変形例を示している。
【0049】
例えば
図6に示した共振器2Aのように、側壁部の一部の領域に電磁波10が入力または出力される開放領域が形成されていてもよい。すなわち、例えば
図6に示した共振器2Aのように、複数のビアホール14の一部を取り除き開放領域とすることで、入出力部22および入出力部23を形成してもよい。
【0050】
また、例えば
図7に示した共振器2Bのように、第2の層12の一部の領域、または第3の層13の一部の領域に、電磁波10が入力または出力される開放窓が形成されていてもよい。すなわち、例えば
図7に示した共振器2Bのように、第2および第3の層12,13の一部分に開放窓を形成することで、入出力部24および入出力部25を形成してもよい。
【0051】
図8は、
図5に示した共振器2の第3の変形例を示している。側壁部の一部の領域に開放領域を形成する場合、少なくとも開放領域の周囲の領域に対応する部分が、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体によって形成されていてもよい。すなわち、例えば
図8に示した共振器2Cのように、側壁部における入出力部22の周囲の領域のビアホール222と、側壁部における入出力部23の周囲の領域のビアホール223とに、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されていてもよい。この場合、側壁部におけるその他の領域のビアホール14には、導体が充填されていてもよい。
【0052】
図9は、
図5に示した共振器2の第4の変形例を示している。第2および第3の層12,13の一部分に開放窓を形成する場合、第2および第3の層12,13における、少なくとも開放窓の周囲の領域に対応する部分が、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体によって形成されていてもよい。すなわち、例えば
図9に示した共振器2Dのように、開放窓によって形成された入出力部24の周囲の領域224および入出力部25の周囲の領域225が、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体によって形成されていてもよい。この場合、第2および第3の層12,13におけるその他の領域は、導体で形成されていてもよい。
【0053】
図10は、
図5に示した共振器2の第5の変形例を示している。
【0054】
図5に示した共振器2では、複数のビアホール14によって側壁部を形成している。これに対して、例えば
図10に示した共振器2Eのように、複数のビアホール14に代えて、連続的な壁部によって形成された側壁部214を有する構成にしてもよい。
【0055】
図10に示した共振器2Eにおいて、側壁部214の一部分は、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、側壁部214の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、側壁部214の全体を、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、側壁部214における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、側壁部214の一部分を第2の誘電体で形成した場合、側壁部214の他の部分は導体であってもよい。
【0056】
図10に示した共振器2Eの場合にも、上述の変形例(
図6〜
図9)と同様にして、電磁波10の入出力部を設けることができる。
【0057】
図11は、一実施の形態に係る共振器の第2の構成例を示している。
【0058】
図5では、全体として円柱状の共振器2の構成例を示したが、全体の形状は円柱状に限らず、
図11に示した共振器3のように、全体の形状を平板状(6面体形状)にしてもよい。共振器3では、複数のビアホール14は、例えば全体として矩形状に配置されている。
【0059】
図11に示した共振器3の場合にも、上述の変形例(
図6〜
図9)と同様にして、電磁波10の入出力部を設けることができる。
【0060】
以上の共振器の構成例および変形例では、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体と、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体との2種類の誘電体を用いる例で説明したが、3種類以上の誘電体を用いた構成であってもよい。すなわち、第1の比誘電率ε
r1を所定の比誘電率とすると、この所定の比誘電率よりも大きい比誘電率の誘電体を2種類以上用いた構成であってもよい。例えば、第2および第3の層12,13のそれぞれに誘電体を用いる場合、第2の層12に用いる誘電体と、第3の層13に用いる誘電体とが、それぞれ所定の比誘電率よりも大きい、互いに異なる比誘電率の誘電体であってもよい。さらに、複数のビアホール14、または側壁部214に誘電体を用いる場合、その誘電体は、所定の比誘電率よりも大きく、かつ第2および第3の層12,13に用いる誘電体とは異なる比誘電率の誘電体であってもよい。
【0061】
[1.4 アンテナの構成例]
図12は、一実施の形態に係るアンテナの第1の構成例の要部を示している。
図13は、
図12に示したアンテナの第1の変形例の要部を示している。
【0062】
図12に示したアンテナ4は、第1の層11と、第1の層12を挟み込むように対向配置された第2および第3の層12,13と、第1の層11を貫通し、第2および第3の層12,13に接続された複数のビアホール14とを備えている。
【0063】
アンテナ4において、第1の層11は、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体からなる。アンテナ4において、第1の比誘電率ε
r1は、本発明のアンテナにおける「所定の比誘電率」の一具体例に相当する。
【0064】
複数のビアホール14は、第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bとを有している。アンテナ4において、第1のビアホール列14Aは、本発明のアンテナにおける「第1の側壁部」の一具体例に相当する。アンテナ4において、第2のビアホール列14Bは、本発明のアンテナにおける「第2の側壁部」の一具体例に相当する。第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bは、第2の層12と第3の層13との間において電磁波10が伝搬する領域を形成する。
【0065】
アンテナ4では、第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bとの列間を電磁波10が伝搬する。より詳しくは、第2および第3の層12,13と、複数のビアホール14(第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14B)とで囲まれた第1の層11の領域内を電磁波が伝搬する。アンテナ4は、例えば全体として平板状(6面体形状)に形成され、第1の層11の1つの端面41から電磁波10が入力される。
【0066】
アンテナ4には、第2の層12の表面、および第3の層13の表面のうち、少なくとも一部に、電磁波10を放射する開放領域が形成されている。例えば、第2の層12の一部の領域に形成された開放窓42によって、開放領域が形成されている。なお、第3の層13の一部の領域に開放窓42を形成してもよい。
【0067】
アンテナ4では、全体として第2および第3の層12,13が占める面積が大きいので、第2および第3の層12,13を第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成すると、導体損失を低減する効果が大きい。
【0068】
そこで、アンテナ4において、第2および第3の層12,13の少なくとも一部分が、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。
【0069】
このような構成のアンテナ4において、第2の層12および第3の層13を導体で構成した場合、共振状態において、開放窓42の周囲の領域43での導体損失が大きくなる。
【0070】
そこで、
図13の第1の変形例のアンテナ4Aのように、第2の層12および第3の層13における、少なくとも開放窓42の周囲の領域43に対応する部分が、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、第2および第3の層12,13の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失をより低減することができる。なお、アンテナ4,4Aにおいて、第2および第3の層12,13の一部分を第2の誘電体で形成する場合、第2および第3の層12,13の他の部分は導体であってもよい。
【0071】
より好ましくは、アンテナ4において、第2および第3の層12,13の全てを、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、第2および第3の層12,13における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。
【0072】
図14は、一実施の形態に係るアンテナの第2の構成例の要部を示している。
図15は、
図14に示したアンテナ5の要部の平面構成例を示している。
【0073】
図14に示したアンテナ5では、第1の層11の1つの端面51に、電磁波10を放射する開放領域が形成されている。
【0074】
アンテナ5では、第1のビアホール列14Aと第2のビアホール列14Bとの列間隔が、開放領域に向かうに従い、広がるように構成されている。
【0075】
アンテナ5では、全体として第2および第3の層12,13が占める面積が大きいので、第2および第3の層12,13を第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成すると、導体損失を低減する効果が大きい。
【0076】
そこで、アンテナ5において、第2および第3の層12,13の少なくとも一部分が、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。
【0077】
このような構成のアンテナ5では、第2の層12および第3の層12,13における、少なくとも列間隔が広がり始める領域52(
図14)に対応する部分53(
図15)が、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、第2および第3の層12,13の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失をより低減することができる。なお、アンテナ5において、第2および第3の層12,13の一部分を第2の誘電体で形成する場合、第2および第3の層12,13の他の部分は導体であってもよい。
【0078】
より好ましくは、アンテナ5において、第2および第3の層12,13の全てを、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、第2および第3の層12,13における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。
【0079】
また、アンテナ5では、複数のビアホール14における、少なくとも列間隔が広がり始める領域52(
図14)に対応する部分53(
図15)に形成されたビアホール14に、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されていることが望ましい。これにより、複数のビアホール14の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失をより低減することができる。なお、複数のビアホール14のうち一部分を第2の誘電体を充填したビアホールとする場合、複数のビアホール14のうち他の部分は導体を充填したビアホールであってもよい。
【0080】
より好ましくは、アンテナ5において、複数のビアホール14の全てに、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されているとよい。これにより、複数のビアホール14における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。
【0081】
[1.4.1 アンテナの構成のその他の変形例]
図16は、
図12に示したアンテナ4の第2の変形例の要部を示している。
【0082】
図12に示したアンテナ4では、複数のビアホール14からなる第1および第2のビアホール列14A,14Bによって、列状の第1および第2の側壁部を形成している。これに対して、例えば
図16に示したアンテナ4Bのように、第1のビアホール列14Aおよび第2のビアホール列14Bに代えて、連続的な壁部によって形成された列状の第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bを有する構成にしてもよい。
【0083】
図16に示したアンテナ4Bにおいて、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bの少なくとも一部分は、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bの全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bの全体を、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bにおける導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bのうち一部分を第2の誘電体で形成した場合、第1の側壁部214Aおよび第2の側壁部214Bのうち他の部分は導体であってもよい。
【0084】
また、以上のアンテナの構成例および変形例では、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体と、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体との2種類の誘電体を用いる例で説明したが、3種類以上の誘電体を用いた構成であってもよい。すなわち、第1の比誘電率ε
r1を所定の比誘電率とすると、この所定の比誘電率よりも大きい比誘電率の誘電体を2種類以上用いた構成であってもよい。例えば、第2および第3の層12,13のそれぞれに誘電体を用いる場合、第2の層12に用いる誘電体と、第3の層13に用いる誘電体とが、それぞれ所定の比誘電率よりも大きい、互いに異なる比誘電率の誘電体であってもよい。さらに、第1および第2のビアホール列14B,14A、または第1および第2の側壁部214A,214Bに誘電体を用いる場合、その誘電体は、所定の比誘電率よりも大きく、かつ第2および第3の層12,13に用いる誘電体とは異なる比誘電率の誘電体であってもよい。
【0085】
[1.5 フィルタの構成例]
図17は、一実施の形態に係るフィルタ6の一構成例を示している。
図18は、
図17に示したフィルタ6の平面構成例を示している。
【0086】
フィルタ6は、複数の共振器61,62,…6nと、複数の共振器のうち隣接する共振器同士を結合する少なくとも1つの結合窓71,72,…7nとを含んでいる。
【0087】
複数の共振器61,62,…6nはそれぞれ、第1の層11と、第1の層12を挟み込むように対向配置された第2および第3の層12,13と、第1の層11を貫通し、第2および第3の層12,13に接続された複数のビアホール14とを備えている。
【0088】
複数の共振器61,62,…6nはそれぞれ、所定の同じ周波数で共振するように構成されている。複数の共振器61,62,…6nの長さは、中央部の共振器の長さL2に対して、外側に行くほど長さが短くなっている。両端部の共振器61,6nの長さL1が最も短くなっている。
【0089】
複数の共振器61,62,…6nのそれぞれにおいて、複数のビアホール14は、第2の層12と第3の層13との間において電磁波10が共振する領域を形成するように配置されている。複数の共振器61,62,…6nのそれぞれにおいて、複数のビアホール14は、本発明のフィルタにおける「側壁部」の一具体例に相当する。
【0090】
複数の結合窓71,72,…7nの幅は、中央部の結合窓の幅W2に対して、外側に行くほど幅が大きくなっている。両端部の結合窓71,7nの幅W1が最も大きくなっている。
【0091】
フィルタ6において、第1の層11は、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体からなる。フィルタ6において、第1の比誘電率ε
r1は、本発明のフィルタにおける「所定の比誘電率」の一具体例に相当する。
【0092】
フィルタ6では、全体として第2および第3の層12,13が占める面積が大きいので、第2および第3の層12,13を第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成すると、導体損失を低減する効果が大きい。
【0093】
そこで、フィルタ6において、第2および第3の層12,13の少なくとも一部分が、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、第2および第3の層12,13の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。なお、第2および第3の層12,13の一部分を第2の誘電体で形成する場合、第2および第3の層12,13の他の部分は導体であってもよい。
【0094】
より好ましくは、フィルタ6において、第2および第3の層12,13の全てを、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、第2および第3の層12,13における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。
【0095】
また、
図18に示したように、複数の共振器61,62,…6nのそれぞれにおいて、複数のビアホール14における、少なくとも複数の結合窓71,72,…7nの周囲の領域271,272,…27nに形成されたビアホール14に、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されていることが望ましい。これにより、複数のビアホール14の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失をより低減することができる。なお、複数のビアホール14のうち一部分を第2の誘電体を充填したビアホールとする場合、複数のビアホール14のうち他の部分は導体を充填したビアホールであってもよい。
【0096】
より好ましくは、複数の共振器61,62,…6nのそれぞれにおいて、複数のビアホール14の全てに、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体が充填されているとよい。これにより、複数のビアホール14における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。
【0097】
[1.5.1 フィルタの構成の変形例]
図19は、
図17に示したフィルタ6の一変形例を示している。
【0098】
図17に示したフィルタ6では、複数のビアホール14によって側壁部を形成している。これに対して、例えば
図19に示したフィルタ6Aのように、複数のビアホール14に代えて、連続的な壁部によって形成された側壁部214を有する構成にしてもよい。
【0099】
図19に示したフィルタ6Aにおいて、側壁部214の一部分は、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成されていることが望ましい。これにより、側壁部214の全てを導体で構成した場合に比べて、導体損失を低減することができる。より好ましくは、側壁部214の全体を、第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体で形成するとよい。これにより、側壁部214における導体損失を、実質的にゼロに近付けることができる。なお、側壁部214の一部分を第2の誘電体で形成した場合、側壁部214の他の部分は導体であってもよい。
【0100】
以上のフィルタの構成例および変形例では、第1の比誘電率ε
r1の第1の誘電体と、第1の比誘電率ε
r1よりも大きい第2の比誘電率ε
r2の第2の誘電体との2種類の誘電体を用いる例で説明したが、3種類以上の誘電体を用いた構成であってもよい。すなわち、第1の比誘電率ε
r1を所定の比誘電率とすると、この所定の比誘電率よりも大きい比誘電率の誘電体を2種類以上用いた構成であってもよい。例えば、第2および第3の層12,13のそれぞれに誘電体を用いる場合、第2の層12に用いる誘電体と、第3の層13に用いる誘電体とが、それぞれ所定の比誘電率よりも大きい、互いに異なる比誘電率の誘電体であってもよい。さらに、複数のビアホール14、または側壁部214に誘電体を用いる場合、その誘電体は、所定の比誘電率よりも大きく、かつ第2および第3の層12,13に用いる誘電体とは異なる比誘電率の誘電体であってもよい。
【0101】
<2.その他の実施の形態>
本発明による技術は、上記実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0102】
例えば、上記実施の形態で説明した電磁波伝送路や共振器等の全体の形状は、平板状(6面体形状)や円柱形状に限らず、他の形状であってもよい。