特許第6981238号(P6981238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981238樹脂組成物、積層体、およびそれを用いた飲料缶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981238
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、積層体、およびそれを用いた飲料缶
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20211202BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20211202BHJP
   B65D 25/14 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C08G18/10
   C09J175/04
   C09J11/06
   C09J163/00
   B32B15/08 F
   B32B37/12
   B32B27/38
   B32B27/40
   B65D25/14 A
   C08G18/80
   C08G18/08 038
   C08G59/40
   C08G18/72
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-247358(P2017-247358)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-112536(P2019-112536A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】直江 紘平
(72)【発明者】
【氏名】小清水 渉
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−107410(JP,A)
【文献】 特開2007−083525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C09J 175/04
C09J 11/06
C09J 163/00
B32B 15/08
B32B 37/12
B32B 27/38
B32B 27/40
B65D 25/14
C08G 59/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板、接着剤層、およびプラスチックフィルムを備える積層体の接着剤層形成に使用する樹脂組成物であって、
水酸基含有ウレタン樹脂(A)、ブロックイソシアネート硬化剤(B)、エポキシ基含有樹脂(C)、および多塩基酸硬化剤(D)を含み、
前記水酸基含有ウレタン樹脂(A)は、重量平均分子量が150,000〜400,000であり、
前記水酸基含有ウレタン樹脂(A)の樹脂分100質量部に対して前記エポキシ基含有樹脂(C)の樹脂分を25〜70質量部含む、樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、非ブロックイソシアネート硬化剤(E)を含む、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ基含有樹脂(C)100質量部に対して前記多塩基酸硬化剤(D)を1〜50質量部含む、請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ基含有樹脂(C)が環状構造を有する樹脂である、請求項1〜3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記多塩基酸硬化剤(D)がブロック多塩基酸硬化剤である、請求項1〜4いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤の解離温度が、120〜160℃である、請求項1〜5いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
金属板、接着剤層、およびプラスチックフィルムを備え、
前記接着剤層は、水酸基含有ウレタン樹脂(A)、ブロックイソシアネート硬化剤(B)、エポキシ基含有樹脂(C)、および多塩基酸硬化剤(D)を含んだ樹脂組成物を硬化させたものであり、
前記水酸基含有ウレタン樹脂(A)は、重量平均分子量が150,000〜400,000であり、
前記水酸基含有ウレタン樹脂(A)の樹脂分100質量部に対して前記エポキシ基含有樹脂(C)の樹脂分を25〜70質量部含む、積層体。
【請求項8】
請求項7記載の積層体の成形物である缶本体、および蓋部材を備える、飲料缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムと金属の貼り合わせに好ましく用いられる接着剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食物や飲料(以下、飲料等という)を保存する缶の内・外面は、それぞれ耐食性、装飾性等を付与する目的で各種の塗装や印刷が施されている。飲料等用の缶は、その形態から大きく2ピース缶と3ピース缶とに分類できる。2ピース缶は、有底缶胴部と、蓋部とからなる。3ピース缶は、缶胴部と、底部と蓋部とからなる。
【0003】
2ピース缶、3ピース缶いずれの場合も、金属に直に塗料を塗布したり、インキを印刷したりする方法の他に、あらかじめグラビア印刷等で意匠性に優れ高級感のある印刷層を設けた接着剤層付きプラスチックフィルムを作成し、それを缶胴部にラミネートする方法が実用化されている。
【0004】
例えば、2ピース缶の場合、プラスチックフィルムの片面にグラビア印刷等で印刷層を設け、該印刷層上に接着剤層を形成させた接着剤層付きプラスチックフィルムと、金属缶の外面がプラスチックフィルムで被覆されてなるプラスチックフィルム金属缶の有底缶胴部とを100〜230℃で、曲面でラミネートした後、150〜250℃で1〜数分間加熱し、接着剤を硬化させることにより得られる。
【0005】
一方、3ピース缶の場合、プラスチックフィルムの片面にグラビア印刷等で印刷層を設け、該印刷層上に接着剤層を形成させた接着剤層付きプラスチックフィルムと、金属板とを100〜230℃で、平面でラミネートした後、150〜250℃で1〜数分間加熱し、接着剤を硬化させ、さらに金属板を円筒状に丸め、端面を接着、溶接することにより得られる。
【0006】
また、近年、接着剤中にアルミニウムペースト、ガラスフレーク、パール顔料等を含むことで、フィルムや缶に直接印刷した場合では表現できない意匠性を発現することができ、化粧品、飲料缶、家電分野における需要が伸びてきている。
【0007】
意匠性を発現するのに必要な大粒径の顔料、粉末では接着阻害を起こす問題があるが、それに対して、特許文献1〜3に記載する、ポリエステルやウレタン変性ポリエステルを用いた接着剤により問題を解決してきた。
【0008】
しかしながら、前記する意匠性を発現する顔料を含んだ接着剤の需要増加に対して、生産量を向上するためにラミネート速度を100m/分から180m/分に変更し、ラミネート速度を高速化する他、高速化した際も硬化が進行するようにラミネート温度を150℃から200℃に変更するなど、ラミネートの高速化・高温化が施されているが、従来のラミネート缶用接着剤組成物では、高速でのラミネート時にシワや浮きが生じ、外観不良となり易く、その後の加工時に金属鋼板への密着性が低下する他、ラミネート時に発生する高温に耐え、良好な外観を得るために、塗工後からラミネートまでに、硬化を促進する、ある一定期間のエージングが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−107410号公報
【特許文献2】特開平11−199851号公報
【特許文献3】特開2012−148433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高速ラミネート時に良好な外観が得られるまでのエージング期間が短く、金属鋼板への密着性に優れるラミネート缶用接着剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、金属板、接着剤層、およびプラスチックフィルムを備える積層体の接着剤層形成に使用する樹脂組成物であって、
水酸基含有ウレタン樹脂(A)、ブロックイソシアネート硬化剤(B)、エポキシ基含有樹脂(C)、および多塩基酸硬化剤(D)を含み、
前記水酸基含有ウレタン樹脂(A)の樹脂分100質量部に対して前記エポキシ基含有樹脂(C)の樹脂分を25〜70質量部含む、樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、さらに、非ブロックイソシアネート硬化剤(E)を含む上記樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記エポキシ基含有樹脂(C)100質量部に対して前記多塩基酸硬化剤(D)を1〜50質量部含む上記樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、前記エポキシ基含有樹脂(C)が環状構造を有する樹脂である上記樹脂組成物に関する。
【0015】
また、前記多塩基酸硬化剤(D)がブロック多塩基酸硬化剤である上記樹脂組成物に関する。
【0016】
また、前記ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤の解離温度が、120〜160℃である上記樹脂組成物に関する。
【0017】
また、金属板、接着剤層、およびプラスチックフィルムを備え、
前記接着剤層は、水酸基含有ウレタン樹脂(A)、ブロックイソシアネート硬化剤(B)、エポキシ基含有樹脂(C)、および多塩基酸硬化剤(D)を含んだ樹脂組成物を硬化させたものであり、
前記水酸基含有ウレタン樹脂(A)の樹脂分100質量部に対して前記エポキシ基含有樹脂(C)の樹脂分を25〜70質量部含む、積層体に関する。
【0018】
また、上記積層体の成形物である缶本体、および蓋部材を備える、飲料缶に関する。
【発明の効果】
【0019】
上記の本発明の樹脂組成物は、水酸基含有ウレタン樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、エポキシ基含有樹脂、および多塩基酸硬化剤を含むことで、ラミネート速度を高速とした時の外観が良好であり、その後の金属板への密着性が良好である他、高速ラミネート時に良好な外観が得られるまでのエージング期間を短縮できる効果を有している。
【0020】
本発明により、ラミネート速度の高速化に対応したラミネート缶用接着剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の接着剤層形成に使用する樹脂組成物について以下に説明する。本発明の樹脂組成物の組成は以下の通りである。
【0022】
<<水酸基含有ウレタン樹脂(A)>>
本発明において用いる水酸基含有ウレタン樹脂(A)は、常法に従い、得ることができる。例えば、
(1)ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを、水酸基過剰の条件下で反応させる方法、
(2)ポリエステルポリオール(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを、イソシアネート基過剰の条件下で反応し、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを得、次いで該ポリウレタンプレポリマーと鎖伸長剤として多価アルコールとを反応する方法が挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオール(a1)は、常法に従い、得ることができる。例えば、反応槽中に多価アルコールと多塩基酸を仕込み、加熱、撹拌しながら180〜250℃ にて反応することにより得られる。
【0024】
<多価アルコール>
前記多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1 ,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサド付加物などの飽和および不飽和の低分子グリコール類、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類やバーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類である。
更には、環状エステル化合物を開環重合させてポリエステルポリオールを得ることもできる。
【0025】
<多塩基酸>
前記多塩基酸の例としては、例えばアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸、および、これらの無水物が挙げられる。
【0026】
<ポリイソシアネート化合物(a2)>
ポリイソシアネート化合物(a2)としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知の種々のジイソシアネート類や、3官能のイソシアネート類も必要に応じて使用することが出来る。
例えば、芳香族ジイソシアネートとしては、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が、
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が、
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
また、3官能イソシアネート類としては、上記ジイソシアネート類をトリメチロールプロパン等で3官能化したアダクト体、イソシアヌレート体、ビューレット体等が挙げられる。
【0027】
<鎖伸長剤>
水酸基含有ウレタン樹脂(A)を得る際に用いられる鎖伸長剤としては、各種公知の多価アルコールを使用できる。
当該多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5− ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチルジオール、ジプロピレングリコール等の飽和および不飽和の各種公知の低分子グリコール類およびダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が代表例として挙げられる。
【0028】
水酸基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(以下、Mwという)は50,000〜400,000が好ましく、150,000〜300,000がより好ましい。樹脂のMwが400,000以下になると加工時の金属鋼板への密着性がより向上する。またMwが50,000以上になるとラミネート後の外観がより向上する。
【0029】
なお、重量平均分子量は、樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。例えば、カラム(昭和電社製KF−805L、KF−803L、及びKF−802)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.2ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02%とし、標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。本発明の重量平均分子量は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0030】
<<ブロックイソシアネート硬化剤(B)>>
ポリイソシアネート化合物(a2)の説明の項で記載したイソシアネート化合物を従来公知の方法にてブロック化剤でブロックされてなるものである。
ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート体化してなる3官能のイソシアネート化合物のブロック化物(B−1)が貼着・積層し焼き付けたプラスチック被覆金属板に高度な加工を加えた後、さらにレトルト処理を加えた場合、接着剤層と金属または接着剤層と印刷層の接着力の点で好ましい( 以下、高度な加工を加え、さらにレトルト処理した後の接着性を加工密着性という)。
【0031】
<ブロック化剤>
ブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール類、3,5−ジメチルピラゾール、1,2−ピラゾール等のピラゾール類、1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物類が挙げられ、その他にもアミン類、イミド類、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール類等も挙げられる。
高速ラミネート時の外観という点では、ラミネート時の高温・高圧力に耐えるために低温解離・速硬化するブロック剤がより好ましく、メチルエチルケトンオキシム、ピラゾール類を使用することが好ましい。
また、メチルエチルケトンオキシム、ピラゾール類及びトリアゾール類でそれぞれブロック化したものを併用することもできる。
【0032】
<<エポキシ基含有樹脂(C)>>
エポキシ基含有樹脂(C)は、硬化後の接着層の凝集力を高めレトルト後の白化を抑制し、かつ高加工時における剥離が生じないために必要である。また、数平均分子量(以下、Mnという)が300〜10000の範囲にあることが好ましく、500〜7000の範囲にあることがより好ましい。Mnが300より小さいエポキシ基含有樹脂を用いて接着剤組成物を得て、プラスチックフィルムと金属板とを貼り合わせても、接着剤層の凝集力が不十分となるため高加工時における剥離が生じやすくなることがある。一方、Mnが10000よりも大きいエポキシ基含有樹脂は、前記水酸基含有ウレタン樹脂(A)との相溶性が悪く、その結果このようなエポキシ基含有樹脂を用いても均一な接着剤組成物は得難く、不均一な接着剤組成物を用いてプラスチックフィルムと金属板とを貼り合わせた場合には、十分な接着力を確保することが難しくなることがある。
【0033】
また、耐熱性という観点から、エポキシ基含有樹脂(C)は、環状構造を有しているものが望ましい。環状構造を有するエポキシ基含有樹脂として、脂環式エポキシ樹脂、芳香族含有エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂等が、それぞれ挙げられる。
【0034】
<<多塩基酸硬化剤(D)>>
多塩基酸硬化剤(D)としては、一分子中にカルボキシル基を1個有する化合物(d1)、一分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物(d2)が挙げられる。
【0035】
一分子中にカルボキシル基を1個有する化合物(d1)としては、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
飽和モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチルプロパン酸(イソ酪酸)、2−エチルへキシル酸、ラウリン酸、シクロヘキ酸カルボン酸等が、不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸等が、芳香族モノカルボン酸としては、安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸等が、それぞれ挙げられる。
【0036】
一分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物(d2)としては、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸等が、芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が、脂環族ポリカルボン酸としては、テトラヒドロカルボン酸、ヘキサヒドロカルボン酸等、また、それぞれの酸無水物が挙げられる。
【0037】
多塩基酸硬化剤(D)はブロック化してなるものを用いても良い。
【0038】
多塩基酸硬化剤(D)をブロック化してなるものとしては、一分子中にカルボキシル基を1個有する化合物を、一分子中にビニルエーテル基もしくはビニルチオエーテル基を1個有する化合物でブロックしてなるもの、一分子中にカルボキシル基を1個有する化合物を、一分子中にビニルエーテル基もしくはビニルチオエーテル基を2個以上有する化合物でブロックしてなるもの、一分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物を、一分子中にビニルエーテル基もしくはビニルチオエーテル基を1個有する化合物、でブロックしてなるもの、一分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物を、一分子中にビニルエーテル基もしくはビニルチオエーテル基を2個以上有する化合物でブロックしてなるものが挙げられる。
【0039】
本発明では、非ブロックイソシアネート硬化剤(E)を前記ブロックイソシアネート硬化剤(B)とは別に用いることができる。
前記ブロックイソシアネート硬化剤(B)とは別に非ブロックイソシアネート硬化剤(E)を用いることで、硬化がより速く進行し、ラミネート時の高温、高圧力に耐えることができ、高速ラミネート後の外観がより向上することが期待できる。また、飲料缶用途においては、レトルト処理後の耐水白化性を向上できる。
【0040】
非ブロックイソシアネート硬化剤(E)としては、前記ポリイソシアネート化合物(a2)の説明の項で記載したイソシアネート化合物を用いることができる。
【0041】
また、本発明の接着剤は、その他必要に応じて種々の顔料、有機溶剤、有機錫化合物、3級アミン等の硬化触媒、帯電防止剤、表面平滑剤、消泡剤、分散剤等の種々の添加剤を含有することができる。
顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、炭酸マグネシウム、アルミニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、更には前記グリコールエーテルのアセテート類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等から溶解性、蒸発速度等を考慮して選択される。
【0042】
上記した本発明の接着剤は、基材又は被着体に塗布・乾燥後タックフリーの状態にした後、基材と被着体とを加熱・加圧下に貼着・積層することができる。
基材又は被着体としては、プラスチックフィルム、印刷層を設けたプラスチックフィルム、金属板等が挙げられ、プラスチックフィルムと金属板、プラスチックフィルムとプラスチックフィルム、プラスチックフィルムと印刷層を設けたプラスチックフィルム、印刷層を設けたプラスチックフィルムと印刷層を設けたプラスチックフィルム、印刷層を設けたプラスチックフィルムと金属板、金属板と金属板との貼着・積層等に適用でき、特にプラスチックフィルムと金属板とを印刷層を介して貼着・積層する際に好適に使用することができる。プラスチックフィルムと金属板とを印刷層を介して貼着・積層するには、
(1)印刷層を設けたプラスチックフィルムの印刷層上に接着剤層を設け、接着剤層付きプラスチックフィルムを得、該接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層と金属板とを接触せしめ、加熱・加圧し、接着剤層付きプラスチックフィルムと金属板とを貼着・積層することもできるし、
(2)印刷層を設けたプラスチックフィルムの印刷層と、接着剤層を設けた接着剤層付き金属板の接着剤層とを接触せしめ、加熱・加圧し、印刷層付きプラスチックフィルムと接着剤層付き金属板とを貼着・積層することもできるが、前者が好ましい。
【0043】
本発明の接着剤層付きプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムと、印刷層と、上述の接着剤から形成される接着剤層とがこの順序で積層されてなるものである。例えば、印刷層を設けたプラスチックフィルムを得た後、その印刷面側に上記した接着剤をスプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リップコーティングなどにより塗布し、タックフリーになるように加熱乾燥し、接着剤層付きプラスチックフィルムを得ることができる。加熱乾燥後の状態において接着剤層をタックフリーの状態にすることによって、接着剤層付きプラスチックフィルムを巻き取り保存等することができる。この接着剤層付きプラスチックフィルムは、飲料等用の缶の外面側に用いられる。
【0044】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。
ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等が、またポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられ、飲料缶用としてはポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0045】
印刷層は、プラスチックフィルムの一方の面にグラビア印刷、フレキソ印刷等にてインキを印刷・乾燥することにより得られる。
印刷に供される印刷インキとしては、種々のものが用いられるが、耐水性、耐ボイル・レトルト性等の観点から、ポリウレタンをバインダーとするインキが好ましい。
【0046】
得られた接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層と金属板とを対向・接触せしめつつ、180〜220℃ に加熱したロール間を通過させ熱圧着せしめた後、180〜230℃ で1〜数分間加熱し、接着剤を十分に硬化させることにより、プラスチックフィルム被覆金属板を得ることができる。
プラスチックフィルム被覆金属板を得る場合、予め内面側がプラスチックフィルムで被覆された金属板を用いても良いし、外面用の接着剤層付きプラスチックフィルムと金属板とを貼着・積層するのと同時に金属板の他方の面に内面用の接着剤層付きプラスチックフィルムを貼着・積層しても良いし、あるいは金属板の一方の面に外面用の接着剤層付きプラスチックフィルムを貼着・積層した後、金属板の他方の面に内面用の接着剤層付きプラスチックフィルムを貼着・積層しても良い。
【0047】
さらに外面側の表面、即ちプラスチックフィルムの印刷層とは接していない方の側(非印刷層側)にトップコート層が設けられていてもよい。このようなトップコート層は、金属板の一方の面に外面用の接着剤層付きプラスチックフィルムを貼着・積層した後に設けてもよいし、あるいは金属板と貼着・積層する前、つまり接着剤層付きプラスチックフィルムの状態で設けておいてもよい。
後者の場合、プラスチックフィルムの一方の面にトップコート層を設け、次いで該プラスチックフィルムの背面、即ちトップコート層を設けていない側に印刷層を設け、次いで該印刷層の上に接着剤層を設けても良いし、プラスチックフィルムの一方の面に印刷層を設け、次いで該プラスチックフィルムの背面、即ち非印刷層側にトップコート層を設け、その後印刷層上に接着剤層を設けても良い。
本発明のプラスチックフィルム被覆金属板に用いられる金属板の素材としては、例えば鉄、ブリキ、ステンレス鋼、チタン、銅、アルミニウム等が挙げられる。なお、これらの金属の表面には、あらかじめ表面処理が施されていてもよく、また各種プライマーが形成されていてもよい。
上記のようにして得た内・外面をプラスチックフィルムで被覆した金属板を用いて3ピ−ス缶の缶胴部を得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら具体例のみに限定されるものではない。なお、例中[部]とあるのは[質量部]を示す。
【0049】
[実施例1]
分水器、還流冷却器、精留塔、温度調節器、窒素導入管、撹拌装置、減圧装置を有する2リットル四口フラスコに、エチレングリコール27.5部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール31.6部、ネオペンチルグリコール58.0部を仕込み、よく撹拌した後に、セバシン酸42.7部、イソフタル酸64.9部、テレフタル酸75.4部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら160〜280に加熱し脱水を14時間行い、脱水量が理論値の95%に達したら、更にテトラブトキシチタンを0.006部仕込み、所定の粘度になるまで240℃で減圧反応を続け、Mw20,000、水酸基価3KOHmg/gの水酸基を有するポリエステル樹脂(a)を得た。
【0050】
得られたポリエステル樹脂(a)300部、トルエン390部を同様の2リットル四口フラスコに仕込み100℃ に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにヘキサメチレンジイソシアネート( 以下HDIという)の3官能イソシアヌレート体6部、ジブチル錫ジラウレート0.15部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、メチルエチルケトン(以下MEKという)167部を添加し、Mw170,000、固形分35% のウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液を得た。
【0051】
このウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を活性メチレンでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部( 固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを60部(樹脂分100部に対して30部)、カルボン酸をビニルアルキルエーテルでブロックした多塩基酸硬化剤である、ノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を2.0部(樹脂分100部に対して1.2部)、キシレンを173部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(1)を調製した。
【0052】
[実施例2]
実施例1で合成したポリエステル樹脂(a)300部、トルエン390部を同様の2リットル四口フラスコに仕込み100℃ に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにHDIの3官能イソシアヌレート体7.5部、ジブチル錫ジラウレート0.15部を添加し、5時間反応を行った。反応終了後、メチルエチルケトン(以下MEKという)167部を添加し、Mw250,000、固形分35% のウレタン変性ポリエステルポリオール(A2)溶液を得た。
【0053】
実施例1のウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液をウレタン変性ポリエステルポリオール(A2)溶液に変更した以外は、実施例1と同様な所作を行い、不揮発分35%の接着剤(2)を調製した。
【0054】
[実施例3]
実施例1で合成したポリエステル樹脂(a)300部、トルエン390部を実施例1と同様の2リットル四口フラスコに仕込み100 ℃ に昇温し溶液が均一になるまで撹拌した。これにイソホロンジイソシアネート(以下IPDIという)の3官能イソシアヌレート体3部、ジブチル錫ジラウレート0.15部を添加し、3 時間反応を行った。反応終了後、MEK167部を添加し、Mw280,000、固形分35%のウレタン変性ポリエステルポリオール(A3)溶液を得た。
【0055】
実施例1のウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液をウレタン変性ポリエステルポリオール(A3)溶液に変更した以外は、実施例1と同様な所作を行い、不揮発分35%の接着剤(3)を調製した。
【0056】
[実施例4]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部( 固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを60部(樹脂分100部に対して30部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を2.0部(樹脂分100部に対して1.2部)、キシレンを173部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(4)を調製した。
【0057】
[実施例5]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体をε−カプロラクタムでブロック化したブロック化イソシアネートを27.8部( 固形分72%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを60部(樹脂分100部に対して30部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を2.0部(樹脂分100部に対して1.2部)、キシレンを173部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(5)を調製した。
【0058】
[実施例6]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、IPDIの3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシム(以下、MEKオキシム)でブロック化したブロック化イソシアネートを30.8部( 固形分65%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを60部(樹脂分100部に対して30部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を2.0部(樹脂分100部に対して1.2部)、キシレンを173部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(6)を調製した。
【0059】
[実施例7]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を活性メチレンでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部(固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを100部(樹脂分100部に対して50部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を3.3部(樹脂分100部に対して2.0部)、キシレンを190部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(7)を調製した。
【0060】
[実施例8]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を活性メチレンでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部(固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを140部(樹脂分100部に対して70部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を4.7部(樹脂分100部に対して2.8部)、キシレンを207.3部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(8)を調製した。
【0061】
[実施例9]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を活性メチレンでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部(固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを100部(樹脂分100部に対して50部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を12.5部(樹脂分100部に対して7.5部)、キシレンを198部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(9)を調製した。
【0062】
[実施例10]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を活性メチレンでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部(固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを100部(樹脂分100部に対して50部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を25部(樹脂分100部に対して15部)、キシレンを260.6部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(10)を調製した。
【0063】
[実施例11]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を活性メチレンでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部(固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを100部(樹脂分100部に対して50部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を37.5部(樹脂分100部に対して22.5部)、キシレンを215.5部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(11)を調製した。
【0064】
[実施例12]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を活性メチレンでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部(固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを100部(樹脂分100部に対して50部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を50部(樹脂分100部に対して30部)、キシレンを203部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(12)を調製した。
【0065】
[実施例13]
実施例(4)で調製した接着剤100部に対してHDIの3官能イソシアヌレートの非ブロック体を0.64部添加し、接着剤(13)を調製した。
【0066】
[実施例14]
実施例(4)で調製した接着剤100部に対してIPDIの3官能イソシアヌレートの非ブロック体を0.64部添加し、接着剤(14)を調製した。
【0067】
[比較例1]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部( 固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを20部(樹脂分100部に対して10部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を2.5部(樹脂分100部に対して1.5部)、キシレンを156部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(15)を調製した。
【0068】
[比較例2]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部( 固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを40部(樹脂分100部に対して20部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を5.0部(樹脂分100部に対して3.0部)、キシレンを167部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(16)を調製した。
【0069】
[比較例3]
実施例1で合成したウレタン変性ポリエステルポリオール(A1)溶液285.7部(樹脂分で100部)、HDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネートを26.7部( 固形分75%、樹脂分100部に対して20部 )、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるjER−1001(三菱ケミカル(株)製、Mn約900、エポキシ当量約470g/eq.)を固形分50%にMEKで希釈したものを160部(樹脂分100部に対して80部)、多塩基酸硬化剤であるノフキュア−TN1(日本油脂(株)製、固形分60% )を20部(樹脂分100部に対して12部)、キシレンを228.7部、アルミニウムペーストを66.2部(固形分71%、樹脂分100部に対して47部)、硫酸バリウムを48.5部、シリカを8部、およびジブチル錫ジラウレート0.005部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分35%の接着剤(17)を調製した。
【0070】
[ラミネート試験用塗工フィルムの作製]
各実施例及び比較例で得た接着剤を用いて、以下のようにしてプラスチックフィルムと金属板とを貼着・積層した。
厚さ12μmのコロナ処理PETフィルムに、ポリウレタンをバインダーとするグラビアインキ「NEWLPスーパーR39S藍」および「NEWLPスーパーR630白」(共に東洋インキSCホールディングス(株)製)をトルエン/MEK/イソプロパノール=40/40/20(重量比)の溶剤にて粘度を調整し、35μmグラビア版にてPETフィルム/藍/白の順でグラビア印刷を行った。
次いで、各実施例及び各比較例で調整した接着剤を前記PETフィルム印刷物のインキ面に、バーコーターにて5g/mになるように塗工、170℃で40秒間乾燥後、縦200mm、横100mm の大きさに切り、ラミネート試験用塗工フィルムを得た。
【0071】
[高速ラミネート適性評価]
ラミネート機のロール温度200℃ 、ロール圧力5Kg/cm、ラミネート速度13m/分の条件でスズメッキ鋼板と熱圧着し、プラスチックフィルム被膜金属板を得たときのラミネート外観を評価し、結果を表1に示した。評価条件は以下の通りである。
【0072】
スズメッキ鋼板と前記ラミネート試験用塗工フィルムとをラミネートし、PETフィルム側から外観を確認し、下記基準に従い評価した。
○:ラミネート面に異常は見られない
△:ラミネート面に僅かにユズ肌が見られる
×:ラミネート面にユズ肌が著しく見られる
【0073】
[加工した後の耐レトルト付着性]
深絞り加工機を用いて、230℃2分間の加熱処理したプラスチックフィルム被膜金属板を直径30mm、絞り高さ12mmのキャップ状に加工し、加圧レトルト装置により125℃で30分間熱水レトルト処理を行い、レトルト後の密着性を評価した。評価基準は次の5段階評価とした。
5点:フィルムの剥離は見られない。
4点:フィルム剥離は見られないが、ごく僅かに気泡が見られる。
3点:僅かにフィルム剥離が見られる。
2点:加工面積の50%程度にフィルム剥離が見られる。
1点:全面にフィルム剥離が見られる。
【0074】
[塗工から良好なラミネート外観が得られるまでの最適エージング期間とその後の密着性評価]
ラミネート機のロール温度220℃ 、ロール圧力5Kg/cm2、ラミネート速度1m/分の条件でスズメッキ鋼板と熱圧着し、プラスチックフィルム被膜金属板を得たときのラミネート外観を確認し、前記評価法に従い、塗工後から評価が「〇」となるまでに要したエージング期間を確認し、結果を表1に示した。評価条件は以下の通りである。
【0075】
◎:塗工直後
○:塗工後室温1日経過
△:塗工後室温3日経過
×:塗工後室温5日経過
【0076】
【表1】