特許第6981270号(P6981270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981270
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】運転支援装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/095 20120101AFI20211202BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20211202BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20211202BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20211202BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20211202BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20211202BHJP
【FI】
   B60W30/095
   G08G1/09 H
   G08G1/16 C
   B60R21/0134 310
   B60W30/09
   B60W40/06
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-6250(P2018-6250)
(22)【出願日】2018年1月18日
(65)【公開番号】特開2019-123414(P2019-123414A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智史
(72)【発明者】
【氏名】東松 信幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−144185(JP,A)
【文献】 特開2008−126957(JP,A)
【文献】 特開2017−045385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/095
G08G 1/09
G08G 1/16
B60R 21/0134
B60W 30/09
B60W 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向に存在する物標を検出して、車両と物標との衝突回避を支援する運転支援装置であって、
自車両と検出物標との衝突可能性を判断する判断部と、
自車両が前記検出物標に衝突する可能性があると判断された場合、自車両と前記検出物標との衝突を回避するための行動プランを作成する作成部と、
前記行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信する送信部と、
前記行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を含む返信を受信する受信部と、
前記行動プラン及び他車両からの前記返信に基づいて、前記検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定する決定部と、
前記決定部によって決定された行動を実行する実行部と、を備え、
前記作成部は、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴う第1の行動プランと、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴わない第2の行動プランと、を作成し、
前記送信部は、前記第1の行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信し、
前記受信部は、前記第1の行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を前記返信として受信し、
前記決定部は、他車両からの前記返信に基づいて、
全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能である場合は、前記第1の行動プランを自車両がとる行動に決定し、
少なくとも1つの他車両が衝突回避行動をとることが不可能である場合は、前記第2の行動プランを自車両がとる行動に決定する、
転支援装置。
【請求項2】
車両の進行方向に存在する物標を検出して、車両と物標との衝突回避を支援する運転支援装置であって、
自車両と検出物標との衝突可能性を判断する判断部と、
自車両が前記検出物標に衝突する可能性があると判断された場合、自車両と前記検出物標との衝突を回避するための行動プランを作成する作成部と、
前記行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信する送信部と、
前記行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を含む返信を受信する受信部と、
前記行動プラン及び他車両からの前記返信に基づいて、前記検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定する決定部と、
前記決定部によって決定された行動を実行する実行部と、を備え、
前記作成部は、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴う自車両行動プランを作成し、
前記送信部は、前記自車両行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信し、
前記受信部は、前記自車両行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報、及び可能な場合における他車両と自車両との衝突を回避するための他車両行動プランを、前記返信として受信し、
前記決定部は、他車両からの前記返信に基づいて、全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能であり、かつ、全ての前記他車両行動プランに干渉がない場合は、前記自車両行動プランを自車両がとる行動に決定し、その他の場合は、前記自車両行動プランを修正した前記検出物標及び全ての他車両との衝突を回避できる行動プランを自車両がとる行動に決定する、
転支援装置。
【請求項3】
車両に搭載されたコンピューター装置が実行する、車両と物標との衝突回避を支援する運転支援方法であって、
車両の進行方向に存在する物標を検出するステップと、
自車両と前記検出物標との衝突可能性を判断するステップと、
自車両が前記検出物標に衝突する可能性があると判断された場合、自車両と前記検出物標との衝突を回避するための行動プランを作成するステップと、
前記行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信するステップと、
前記行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を含む返信を受信するステップと、
前記行動プラン及び他車両からの前記返信に基づいて、前記検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定するステップと、
前記決定された行動を実行するステップと、を備え
前記作成するステップは、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴う第1の行動プランと、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴わない第2の行動プランと、を作成し、
前記送信するステップは、前記第1の行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信し、
前記受信するステップは、前記第1の行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を前記返信として受信し、
前記決定するステップは、他車両からの前記返信に基づいて、
全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能である場合は、前記第1の行動プランを自車両がとる行動に決定し、
少なくとも1つの他車両が衝突回避行動をとることが不可能である場合は、前記第2の行動プランを自車両がとる行動に決定する、
運転支援方法。
【請求項4】
車両に搭載されたコンピューター装置が実行する、車両と物標との衝突回避を支援する運転支援方法であって、
車両の進行方向に存在する物標を検出するステップと、
自車両と前記検出物標との衝突可能性を判断するステップと、
自車両が前記検出物標に衝突する可能性があると判断された場合、自車両と前記検出物標との衝突を回避するための行動プランを作成するステップと、
前記行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信するステップと、
前記行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を含む返信を受信するステップと、
前記行動プラン及び他車両からの前記返信に基づいて、前記検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定するステップと、
前記決定された行動を実行するステップと、を備え、
前記作成するステップは、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴う自車両行動プランを作成し、
前記送信するステップは、前記自車両行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信し、
前記受信するステップは、前記自車両行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報、及び可能な場合における他車両と自車両との衝突を回避するための他車両行動プランを、前記返信として受信し、
前記決定するステップは、他車両からの前記返信に基づいて、全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能であり、かつ、全ての前記他車両行動プランに干渉がない場合は、前記自車両行動プランを自車両がとる行動に決定し、その他の場合は、前記自車両行動プランを修正した前記検出物標及び全ての他車両との衝突を回避できる行動プランを自車両がとる行動に決定する、
運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両と物標との衝突を回避するための運転支援を行う運転支援装置及びその装置が実行する運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、自車両の前方で検知した物標に自車両が衝突するおそれがある場合に、物標との衝突回避のために自車両が移動する方向を自車両の周辺に存在する移動物体、例えば他車両に通知することを行う、運転支援装置が開示されている。このような通知を行うことによって、この運転支援装置では、自車両が物標との衝突を回避する行動をとるときに、自車両が他車両に衝突する可能性を極力低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−215752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された運転支援装置では、自車両が実行しようとする物標との衝突回避行動を周辺の他車両に一方的に通知するだけである。このため、例えば、自車両から衝突回避行動の通知があったことを他車両が気付かない場合などには、自車両が物標との衝突を回避する行動をとるときに自車両と他車両とが衝突してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、自車両が物標との衝突を回避する行動をとるときに、自車両が周辺の他車両などの移動物体と衝突することを回避できる運転支援装置及び方法を提供する、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両の進行方向に存在する物標を検出して、車両と物標との衝突回避を支援する運転支援装置であって、自車両と検出物標との衝突可能性を判断する判断部と、自車両が検出物標に衝突する可能性があると判断された場合、自車両と検出物標との衝突を回避するための行動プランを作成する作成部と、行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信する送信部と、行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を含む返信を受信する受信部と、行動プラン及び他車両からの返信に基づいて、検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定する決定部と、決定部によって決定された行動を実行する実行部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この一態様による運転支援装置では、自車両が物標との衝突を回避しようとする際、自車両の周辺に存在する他車両に自車両の衝突回避のための行動プランを事前に送信し、この行動プランに関して他車両から返信される情報に基づいて自車両が実際に実行する行動プランを決定する。この制御によって、自車両は、他車両と協調した行動プランに基づいた運転支援制御を実施することができるので、物標との衝突を回避する行動をとるときに自車両が他車両と衝突することを回避できる。
【0008】
また、この一態様において、作成部は、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴う第1の行動プランと、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴わない第2の行動プランと、を作成し、送信部は、第1の行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信し、決定部は、他車両からの返信に基づいて、全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能である場合は、第1の行動プランを自車両がとる行動に決定し、少なくとも1つの他車両が衝突回避行動をとることが不可能である場合は、第2の行動プランを自車両がとる行動に決定することができる。
【0009】
この制御によれば、車両の周辺に存在する他車両に影響が及ぶ第1の行動プランと、影響が及ばない第2の行動プランとを作成して、いずれの行動プランが実行可能なのかを他車両からの返信に基づいて判断する。これにより、2つの行動プランから1つを選択するだけで簡単に衝突回避行動を決定することができる。
【0010】
また、この一態様において、作成部は、自車両が走行している車線以外の他車線への移動を伴う自車両行動プランを作成し、送信部は、自車両行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信し、受信部は、自車両行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否か、及び可能な場合における他車両と自車両との衝突を回避するための他車両行動プランを含む、返信を受信し、決定部は、他車両からの返信に基づいて、全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能であり、かつ、全ての他車両行動プランに干渉がない場合は、自車両行動プランを自車両がとる行動に決定し、その他の場合は、自車両行動プランを修正した検出物標及び全ての他車両との衝突を回避できる行動プランを自車両がとる行動に決定することができる。
【0011】
この制御によれば、車両の周辺に存在する他車両に影響が及ぶ行動プランを予め作成して、この行動プランをそのまま実行可能なのか修正が必要なのかを他車両からの返信に基づいて判断する。これにより、予め作成した行動プランを他車両の走行状況に応じた最適な内容に修正することができる。
【0012】
また、本発明の他の態様は、車両に搭載されたコンピューター装置が実行する、車両と物標との衝突回避を支援する運転支援方法であって、車両の進行方向に存在する物標を検出するステップと、自車両と検出物標との衝突可能性を判断するステップと、自車両が検出物標に衝突する可能性があると判断された場合、自車両と検出物標との衝突を回避するための行動プランを作成するステップと、行動プランを自車両から所定の範囲に存在する他車両に送信するステップと、行動プランを受信した他車両から、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を含む返信を受信するステップと、行動プラン及び他車両からの返信に基づいて、検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定するステップと、決定された行動を実行するステップと、を備えることを特徴とする。
【0013】
この他の態様による運転支援方法では、自車両が物標との衝突を回避しようとする際、自車両の周辺に存在する他車両に自車両の衝突回避行動プランを事前に送信し、この衝突回避行動プランに関して他車両から返信される情報に基づいて実際に実行する行動プランを決定する。この制御方法によって、自車両は、他車両と協調した行動プランに基づいた運転支援制御を実施することができるので、物標との衝突を回避する行動をとるときに自車両が他車両と衝突することを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明の運転支援装置及び方法によれば、自車両が物標との衝突を回避する行動をとるときに、自車両が周辺の他車両などの移動物体と衝突することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の概略構成を示す図
図2】本運転支援装置で実行される第1例の衝突回避制御を説明するシーケース図
図3】第1例による衝突回避制御に基づく車両の挙動を簡易的に説明する図
図4】本運転支援装置で実行される第2例の衝突回避制御を説明するシーケース図
図5A】本運転支援装置で実行される第3例の衝突回避制御を説明するシーケース図
図5B】本運転支援装置で実行される第3例の衝突回避制御を説明するシーケース図
【発明を実施するための形態】
【0016】
[概要]
本発明は、車両の進行方向に存在する物標を検出して、車両と物標との衝突回避を支援する運転支援装置である。本運転支援装置は、自車両が物標との衝突を回避しようとする際、自車両の周辺の他車両に自車両の衝突回避行動プランを事前に送信し、この衝突回避行動プランに関して他車両から返信される情報に基づいて自車両が実際に実行する行動プランを決定する。この制御によって、自車両は、他車両と協調した行動プランに基づいた運転支援制御を実施することができるので、物標との衝突を回避する行動をとるときに自車両が他車両と衝突することを回避できる。
【0017】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る運転支援装置1の概略構成を示す図である。図1に示した本運転支援装置1は、周辺状況取得部10、衝突判断部21と行動プラン作成部22と行動決定部23とを含む衝突回避処理部20、送信部31と受信部32とを含む車外通信部30、及び操舵制御部41と減速制御部42とを含む行動実行部40、を備えている。この運転支援装置1は、車両に搭載されている。
【0018】
周辺状況取得部10は、車両の位置及び速度などの走行状態や、車両の周辺に存在する物標(歩行者、自転車、先行車両、駐車車両、及び路上設置物など)の状況を特定するための様々な情報を取得して、車両の走行に影響がある物標を検出するための構成である。この様々な情報とは、例えば、車両に設置されるカメラ(図示せず)によって撮影された画像データ、ミリ波レーダーや光レーダー(Lidar)や超音波ソナーなど(図示せず)によって観測された信号波データ、などである。周辺状況取得部10は、これらの情報に基づいて、車両と物標との距離や車両から見た物標の方向及び車両と物標との空間を認識することができ、車両の走行に影響がある物標を検出することができる。
【0019】
衝突判断部21は、周辺状況取得部10によって車両の走行に影響があるとして検出された物標(以下「検出物標」という)に、車両が衝突する可能性があるか否かを判断するための構成である。この衝突判断部21は、例えば、衝突回避支援ECU(電子制御ユニット)や運転支援ECUによって構成される。
【0020】
行動プラン作成部22は、衝突判断部21において車両が検出物標に衝突する可能性があると判断された場合に、車両と検出物標との衝突を回避するための行動プランを作成するための構成である。この行動プラン作成部22は、例えば、衝突回避支援ECUや運転支援ECUで構成される。なお、衝突回避の行動プランについては後述する。
【0021】
送信部31は、行動プラン作成部22で作成された衝突回避の行動プランを、車両(以下「自車両」という)の周辺(自車両から所定の範囲)に存在する別の車両などの移動物体(以下「他車両」という)に向けて送信するための構成である。この送信部31は、例えば、車車間通信ECUや送信アンテナによって構成される。
【0022】
受信部32は、衝突回避行動プランを受信した他車両から、衝突回避の行動プランに対する所定の返信を受信するための構成である。所定の返信には、他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報を含んでおり、さらに本運転支援装置1を搭載している他車両で作成された自車両との衝突を回避するための行動プランを含んでいてもよい。この受信部32は、車車間通信ECUや受信アンテナによって構成される。
【0023】
行動決定部23は、少なくとも、行動プラン作成部22で作成された衝突回避の行動プランと、受信部32で受信された他車両が自車両との衝突を回避するための行動をとることが可能か否かの情報とに基づいて、検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定するための構成である。また、行動決定部23は、さらに他車両で作成された衝突回避の行動プランにも基づいて、検出物標との衝突を回避するために自車両がとる行動を決定することができる。この行動決定部23は、例えば、衝突回避支援ECUや運転支援ECUによって構成される。なお、自車両がとる行動を決定する手法については後述する。そして、行動決定部23は、決定した行動を行動実行部40に指示することを行う。
【0024】
操舵制御部41は、行動決定部23からの指示に基づいて、自車両の操舵を制御するための構成である。具体的には、操舵制御部41は、ステアリングを操舵するタイミングやステアリングの操舵量を制御することができる。この操舵制御部41は、例えば、ステアリング制御ECUや操舵用アクチュエーターによって構成される。
【0025】
減速制御部42は、行動決定部23からの指示に基づいて、自車両の速度を低下させるための構成である。具体的には、減速制御部42は、ブレーキを操作するタイミングやブレーキの踏み込み量を制御することができる。この減速制御部42は、例えば、ブレーキ制御ECU、減速用アクチュエーター、及びHVモーターによって構成される。
【0026】
なお、上述したECU(Electronic Control Unit)は、典型的には中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)、メモリ、及び入出力インターフェースなどを含んで構成され得る。このECUは、メモリに格納された所定のプログラムをCPUが読み出して実行することによって、所定の機能を実現する。
【0027】
[制御]
次に、図2乃至図5Bをさらに参照して、本発明の一実施形態に係る運転支援装置1で実行される運転支援方法を説明する。以下の説明では、自車両となる車両Aの運転支援装置1と他車両となる車両Bの運転支援装置1との間で衝突回避制御が行われる場合を説明している。
【0028】
<第1例>
図2は、第1例による衝突回避制御の処理手順を説明するシーケース図である。本衝突回避制御は、車両Aの周辺状況取得部10によって車両の走行に影響がある物標が検出されることで開始される。図3は、第1例による衝突回避制御に基づく車両の挙動を簡易的に説明する図である。
【0029】
ステップS201:車両Aの衝突判断部21は、車両Aが検出物標と衝突する可能性があるか否かを判断する。衝突する可能性がある場合には、ステップS202に進む。衝突する可能性がない場合には、以降の処理は中止される。
【0030】
ステップS202:車両Aの行動プラン作成部22は、車両Aによる衝突回避の行動プランとして、車両Aが走行している車線以外の他車線への移動を伴う行動プラン(以下「第1の行動プラン」という)と、車両Aが走行している車線以外の他車線への移動を伴わない車線内の移動に限定した行動プラン(以下「第2の行動プラン」という)との、2つを作成する。他車線は、車両と進行方向が同じ車線(片側複車線)であってもよいし、車両と進行方向が反対の対向車線であってもよい。
【0031】
ステップS203:車両Aの送信部31は、この後に衝突回避行動を実行するという予告と行動プラン作成部22が作成した第1の行動プランとを、車両Aの周辺に存在する車両Bに送信する。
【0032】
ステップS204:車両Bの受信部32は、衝突回避行動を実行するという予告と第1の行動プランとを、車両Aから受信する。
【0033】
ステップS205:車両Bの周辺状況取得部10は、車両Aが衝突回避行動を実行するという予告の受信に応じて、車両Bの周辺に存在する物標の状況(検出物標の有無、方向、距離、空間)を確認する。
【0034】
ステップS206:車両Bの衝突判断部21は、ステップS204で確認した周辺状況に基づいて、車両Bが検出物標と衝突することなく車両Aとの衝突を回避する行動を実行できるか否かを判断する。回避行動を実行可能である場合には、ステップS207に進み、回避行動を実行不可能である場合には、ステップS213に進む。
【0035】
ステップS207:回避行動を実行可能である場合、車両Bの行動プラン作成部22は、車両Bによる衝突回避の行動プランとして、検出物標と衝突することなく車両Aとの衝突を回避するための行動プランを作成する。
【0036】
ステップS208:車両Bの送信部31は、回避行動を実行可能であることの通知を車両Aに送信する。
【0037】
ステップS209:車両Aの受信部32は、回避行動を実行可能であることの通知を車両Bから受信する。
【0038】
ステップS210:車両Aの行動決定部23は、車両Bが回避行動を実行可能であることから、ステップS202で作成した走行車線以外の他車線への移動を伴う第1の行動プランを自車両がとる衝突回避行動として決定する。
【0039】
ステップS211:車両Aの行動実行部40は、第1の行動プランに基づいて、車両Aが検出物標と衝突することを回避するための行動を実行する。
【0040】
ステップS212:車両Bの行動実行部40は、ステップS207で作成した車両Bの行動プランに基づいて、車両Bが検出物標と衝突することなく車両Aと衝突することを回避するための行動を実行する。
【0041】
ステップS213:回避行動を実行不可能である場合、車両Bの送信部31は、回避行動を実行不可能であることを車両Aに送信する。
【0042】
ステップS214:車両Aの受信部32は、回避行動を実行不可能であることを車両Bから受信する。
【0043】
ステップS215:車両Aの行動決定部23は、車両Bが回避行動を実行不可能であることから、ステップS202で作成した走行車線以外の他車線への移動を伴わない車線内の移動に限定した第2の行動プランを自車両がとる衝突回避行動として決定する。
【0044】
ステップS216:車両Aの行動実行部40は、第2の行動プランに基づいて、車両Aが検出物標と衝突することを回避するための行動を実行する。
【0045】
<第2例>
図4は、第2例による衝突回避制御の処理手順を説明するシーケース図である。本衝突回避制御は、車両Aの周辺状況取得部10によって車両の走行に影響がある物標が検出されることで開始される。
【0046】
ステップS401:車両Aの衝突判断部21は、車両Aが検出物標と衝突する可能性があるか否かを判断する。衝突する可能性がある場合には、ステップS402に進む。衝突する可能性がない場合には、以降の処理は中止される。
【0047】
ステップS402:車両Aの行動プラン作成部22は、車両Aによる衝突回避の行動プランとして、車両Aが走行している車線以外の他車線への移動を伴う行動プラン(以下「自車両行動プラン」という)を作成する。
【0048】
ステップS403:車両Aの送信部31は、この後に衝突回避行動を実行するという予告と行動プラン作成部22が作成した自車両行動プランとを、車両Aの周辺に存在する車両Bに送信する。
【0049】
ステップS404:車両Bの受信部32は、衝突回避行動を実行するという予告と自車両行動プランとを、車両Aから受信する。
【0050】
ステップS405:車両Bの周辺状況取得部10は、車両Aが衝突回避行動を実行するという予告の受信に応じて、車両Bの周辺に存在する物標の状況(検出物標の有無、方向、距離、空間)を確認する。
【0051】
ステップS406:車両Bの衝突判断部21は、ステップS404で確認した周辺状況に基づいて、車両Bが検出物標と衝突することなく車両Aとの衝突を回避する行動を実行できるか否かを判断する。回避行動を実行可能である場合には、ステップS407に進み、回避行動を実行不可能である場合には、ステップS413に進む。
【0052】
ステップS407:回避行動を実行可能である場合、車両Bの行動プラン作成部22は、車両Bよる衝突回避の行動プランとして、検出物標と衝突することなく車両Aとの衝突を回避するための行動プラン(以下「他車両行動プラン」という)を作成する。
【0053】
ステップS408:車両Bの送信部31は、回避行動を実行可能であることの通知及び他車両行動プランを、車両Aに送信する。
【0054】
ステップS409:車両Aの受信部32は、回避行動を実行可能であることの通知及び他車両行動プランを、車両Bから受信する。
【0055】
ステップS410:車両Aの行動決定部23は、車両Bが回避行動を実行可能であることから、ステップS402で作成した走行車線以外の他車線への移動を伴う自車両行動プランを自車両がとる衝突回避行動として採用(決定)する。
【0056】
ステップS411:車両Aの行動実行部40は、自車両行動プランに基づいて、車両Aが検出物標と衝突することを回避するための行動を実行する。
【0057】
ステップS412:車両Bの行動実行部40は、ステップS407で作成した他車両行動プランに基づいて、車両Bが検出物標と衝突することなく車両Aと衝突することを回避するための行動を実行する。
【0058】
ステップS413:回避行動を実行不可能である場合、車両Bの送信部31は、回避行動を実行不可能であることを車両Aに送信する。
【0059】
ステップS414:車両Aの受信部32は、回避行動を実行不可能であることを車両Bから受信する。
【0060】
ステップS415:車両Aの行動決定部23は、車両Bが回避行動を実行不可能であることから、ステップS402で作成した自車両行動プランを車両Aが検出物標及び他車両Bとの衝突を回避できるように修正した新たな行動プランを、自車両がとる衝突回避行動として決定する。
【0061】
ステップS416:車両Aの行動実行部40は、ステップS415で新たに作成した車両Aの行動プランに基づいて、車両Aが検出物標と衝突することを回避するための行動を実行する。
【0062】
<第3例>
図5A及び図5Bは、第3例による衝突回避制御の処理手順を説明するシーケース図である。この第3例は、上述した上記第2例において車両Aが複数の他車両(車両B、車両C、…、車両X)と本衝突回避制御を行う場合について説明するものである。
【0063】
ステップS501:車両Aの衝突判断部21は、車両Aが検出物標と衝突する可能性があるか否かを判断する。衝突する可能性がある場合には、ステップS502に進む。衝突する可能性がない場合には、以降の処理は中止される。
【0064】
ステップS502:車両Aの行動プラン作成部22は、車両Aによる衝突回避の行動プランとして、車両Aが走行している車線以外の他車線への移動を伴う行動プラン(以下「自車両行動プラン」という)を作成する。
【0065】
ステップS503:車両Aの送信部31は、この後に衝突回避行動を実行するという予告と行動プラン作成部22が作成した自車両行動プランとを、車両Aの周辺に存在する車両B、車両C、…、車両Xに送信する。
【0066】
ステップS504−1〜n:車両B、車両C、…、車両Xの受信部32は、衝突回避行動を実行するという予告と自車両行動プランとを、車両Aからそれぞれ受信する。なお、変数nは、他車両の数に応じた値である。
【0067】
ステップS505−1〜n:車両B、車両C、…、車両Xの周辺状況取得部10は、車両Aが衝突回避行動を実行するという予告の受信に応じて、車両B、車両C、…、車両Xの各々の周辺に存在する物標の状況(検出物標の有無、方向、距離、空間)をそれぞれ確認する。
【0068】
ステップS506−1〜n:車両B、車両C、…、車両Xの衝突判断部21は、ステップS504−1〜nで確認した周辺状況に基づいて、車両Bが検出物標と衝突することなく車両Aとの衝突を回避する行動を実行できるか否かをそれぞれ判断する。回避行動を実行可能である場合には、ステップS507−1〜nにそれぞれ進み、回避行動を実行不可能である場合には、ステップ508−1〜nにそれぞれに進む。
【0069】
ステップS507−1〜n:回避行動を実行可能である車両の行動プラン作成部22は、検出物標と衝突することなく車両Aとの衝突を回避するための衝突回避の行動プラン(以下「他車両行動プラン」という)を作成する。
【0070】
ステップS508−1〜n:車両B、車両C、…、車両Xの送信部31は、ステップS506−1〜nで判断した回避行動の実行可否を車両Aに送信する。また、車両B、車両C、…、車両Xの送信部31は、ステップS507−1〜nで他車両行動プランを作成していれば、他車両行動プランを車両Aに送信する。
【0071】
ステップS509:車両Aの受信部32は、回避行動の実行可否及び他車両行動プランを、車両B、車両C、…、車両Xから受信する。
【0072】
ステップS510:車両Aの行動決定部23は、自車両が衝突回避行動としてとる行動プランを以下のように決定する。
【0073】
車両Aの行動決定部23は、車両B、車両C、…、車両Xの全てが回避行動を実行可能であって、かつ、全ての他車両行動プランで干渉がない場合は、ステップS502で作成した走行車線以外の他車線への移動を伴う自車両行動プランを自車両がとる衝突回避行動として採用(決定)する。一方、車両Aの行動決定部23は、車両B、車両C、…、車両Xの全てが回避行動を実行可能であってもいずれかの他車両行動プランに干渉がある場合、又は車両B、車両C、…、車両Xの全てが回避行動を実行可能でない場合は、車両Aが検出物標及び他車両Bとの衝突を回避できる内容に自車両行動プランを修正した新たな行動プランを、自車両がとる衝突回避行動として決定する。なお、行動プランの干渉とは、例えば、ある時刻において2つ以上の車両の走行経路が重複することをいう。
【0074】
ステップS511:車両Aの行動実行部40は、ステップS510で採用又は修正した自車両行動プランに基づいて、車両Aが検出物標と衝突することを回避するための行動を実行する。
【0075】
ステップS512−1〜n:車両B、車両C、…、車両Xの行動実行部40は、ステップS507−1〜nで他車両行動プランを作成していれば、その他車両行動プランに基づいて、車両Bが検出物標と衝突することなく車両Aと衝突することを回避するための行動を実行する。
【0076】
なお、上述した第1例において車両Aが複数の他車両(車両B、車両C、…、車両X)と本衝突回避制御を行う場合も、第3例と同様の判断を行うことができる。すなわち、車両Aの行動決定部23は、車両B、車両C、…、車両Xについて、全てが回避行動を実行可能である場合は第1の自車両行動プランを自車両がとる衝突回避行動として決定し、少なくとも1つが回避行動を実行不可能である場合は第2の自車両行動プランを自車両がとる衝突回避行動として決定すればよい。
【0077】
[本実施形態による作用及び効果]
上述した本発明の一実施形態に係る運転支援装置及び方法によれば、自車両が検出された物標との衝突を回避しようとする際、自車両の周辺に存在する他車両などの移動物体に向けて自車両の衝突回避行動プランを事前に送信し、この衝突回避行動プランに関して他車両から返信される情報に基づいて実際に実行する行動プランを決定する。
【0078】
この制御によって、自車両は、他車両と協調した行動プランに基づいた運転支援制御を実施することができるので、物標との衝突を回避する行動をとるときに自車両が他車両と衝突することを回避できる。
【0079】
例えば、自車両の走行車線以外の他車線への移動を伴う第1の行動プランと、自車両の走行車線以外の他車線への移動を伴わない第2の行動プランと、を予め作成して、第1の行動プランを他車両に送信した場合、全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能であれば第1の行動プランを採用し、それ以外であれば第2の行動プランを採用できるので、簡単に衝突回避行動を決定することができる。
【0080】
また、自車両の走行車線以外の他車線への移動を伴う行動プランを予め作成し、この行動プランを他車両に送信した場合、全ての他車両が衝突回避行動をとることが可能であり、全ての他車両行動プランに干渉がなければ予め作成した行動プランを採用し、それ以外であれば予め作成した行動プランを修正して採用できるので、他車両の走行状況に応じた最適な内容の行動プランを決定することができる。また、予め作成する行動プランが1つで済むため、行動プラン作成部22による演算の負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の運転支援装置及び方法は、車両などに利用可能であり、自車両が物標との衝突を回避する行動をとるときに、自車両が周辺の他車両などの移動物体と衝突することを回避したい場合などに有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 運転支援装置
10 周辺状況取得部
20 衝突回避処理部
21 衝突判断部
22 行動プラン作成部
23 行動決定部
30 車外通信部
31 送信部
32 受信部
40 行動実行部
41 操舵制御部
42 減速制御部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B