(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
γ−グルタミルペプチドが、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1記載の組成物。
γ−Glu−X−Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
γ−Glu−Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、効果的にコク味を食品に付与できる組成物の提供を目的とする。特に本発明は、効果的に乳脂様の厚み及び/又は持続性を、乳含有食品に付与できる組成物の提供を目的とする。
また本発明は、効果的にコク味が付与された食品の製造方法の提供を目的とする。特に本発明は、効果的に乳脂様の厚み及び/又は持続性が付与された乳含有食品の製造方法の提供を目的とする。
また本発明は、食品に効果的にコク味を付与できる方法の提供を目的とする。特に本発明は、乳含有食品に効果的に乳脂様の厚み及び/又は持続性を付与できる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく種々検討した結果、γ−グルタミルペプチド又はその塩と特定の平均粒子径を有する水不溶性素材とを併せて食品(好ましくは、乳含有食品)に添加することにより、当該食品に効果的にコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を付与し得ることを見出し、さらに研究を重ねることによって、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1](A)γ−グルタミルペプチド又はその塩、並びに
(B)平均粒子径が1〜100μmである水不溶性素材
を含有する組成物。
[2]γ−グルタミルペプチドが、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一つである、[1]記載の組成物。
γ−Glu−X−Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
γ−Glu−Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
[3]γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−Val−Glyである、[1]又は[2]記載の組成物。
[4]水不溶性素材が、加工デンプン及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも一つである、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の組成物。
[5]食品に添加される(A)の量が、食品に対して0.01〜1000重量ppmとなるように食品に添加される、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の組成物。
[6]食品に添加される(B)の量が、食品に対して0.3〜250重量ppmとなるように食品に添加される、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[7]食品に添加される(A)の量と(B)の量との重量比が1:0.01〜100となるように食品に添加される、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の組成物。
[8]組成物が、コク味付与組成物である、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の組成物。
[9]コク味付与組成物が、乳脂様の厚み及び/又は持続性の付与組成物である、[8]記載の組成物。
[10]乳脂様の厚み及び/又は持続性の付与組成物が、乳含有食品用の乳脂様の厚み及び/又は持続性の付与組成物である、[9]記載の組成物。
[11][1]〜[10]のいずれか一つに記載の組成物を含有する食品。
[12]食品が、乳含有食品である、[11]記載の食品。
[13](A)γ−グルタミルペプチド又はその塩、並びに
(B)平均粒子径が1〜100μmである水不溶性素材
を添加することを含む、食品の製造方法。
[14]γ−グルタミルペプチドが、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一つである、[13]記載の製造方法。
γ−Glu−X−Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
γ−Glu−Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
[15]γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−Val−Glyである、[13]又は[14]記載の製造方法。
[16]水不溶性素材が、加工デンプン及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも一つである、[13]〜[15]のいずれか一つに記載の製造方法。
[17]食品に添加される(A)の量が、食品に対して0.01〜1000重量ppmである、[13]〜[16]のいずれか一つに記載の製造方法。
[18]食品に添加される(B)の量が、食品に対して0.3〜250重量ppmである、[13]〜[17]のいずれか一つに記載の製造方法。
[19]食品に添加される(A)の量と(B)の量との重量比が、1:0.01〜100である、[13]〜[18]のいずれか一つに記載の製造方法。
[20]食品が、コク味が付与された食品である、[13]〜[19]のいずれか一つに記載の方法。
[21]コク味が付与された食品が、乳脂様の厚み及び/又は持続性が付与された食品である、[20]記載の方法。
[22]食品が、乳含有食品である、[13]〜[21]のいずれか一つに記載の方法。
[23](A)γ−グルタミルペプチド又はその塩、並びに
(B)平均粒子径が1〜100μmである水不溶性素材
を食品に添加することを含む、コク味の付与方法。
[24]γ−グルタミルペプチドが、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一つである、[23]記載の方法。
γ−Glu−X−Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
γ−Glu−Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
[25]γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−Val−Glyである、[23]又は[24]記載の方法。
[26]水不溶性素材が、加工デンプン及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも一つである、[23]〜[25]のいずれか一つに記載の方法。
[27]食品に添加される(A)の量が、食品に対して0.01〜1000重量ppmである、[23]〜[26]のいずれか一つに記載の方法。
[28]食品に添加される(B)の量が、食品に対して0.3〜250重量ppmである、[23]〜[27]のいずれか一つに記載の方法。
[29]食品に添加される(A)の量と(B)の量との重量比が、1:0.01〜100である、[23]〜[28]のいずれか一つに記載の方法。
[30]コク味が、乳脂様の厚み及び/又は持続性である、[23]〜[29]のいずれか一つに記載の方法。
[31]食品が、乳含有食品である、[23]〜[30]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、γ−グルタミルペプチド又はその塩を単独で用いる場合に比べて、より強いコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を食品(好ましくは、乳含有食品)に付与できる。
また本発明の製造方法によれば、γ−グルタミルペプチド又はその塩を単独で添加する場合に比べて、より強いコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)が付与された食品(好ましくは、乳含有食品)を製造できる。
また本発明の付与方法によれば、γ−グルタミルペプチド又はその塩を単独で添加する場合に比べて、より強いコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を食品(好ましくは、乳含有食品)に付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の組成物)
本発明の組成物は、(A)γ−グルタミルペプチド又はその塩(本明細書中、単に「(A)」と称する場合がある)、並びに(B)平均粒子径が特定の範囲内である水不溶性素材(本明細書中、単に「(B)」と称する場合がある)を含有することを主たる特徴とする。
【0011】
[(A)γ−グルタミルペプチド又はその塩]
本発明において用いられるγ−グルタミルペプチドとは、γグルタミル構造を有するペプチド(例、ジペプチド、トリペプチド等)をいい、コク味を付与できるものであれば特に制限されないが、例えば、下記一般式(I)で表される化合物(本明細書中、「化合物(I)」と称する場合がある)、下記一般式(II)で表される化合物(本明細書中、「化合物(II)」と称する場合がある)等が挙げられる。
γ−Glu−X−Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
γ−Glu−Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体を示す)
【0012】
本発明において化合物(I)は、グルタミン酸、X(アミノ酸又はアミノ酸誘導体)及びグリシンから構成される、γグルタミル構造を有する(すなわち、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基と、Xのアミノ基とが、ペプチド結合した構造を有する)トリペプチドである。
化合物(II)は、グルタミン酸及びY(アミノ酸又はアミノ酸誘導体)から構成される、γグルタミル構造を有する(すなわち、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基と、Yのアミノ基とが、ペプチド結合した構造を有する)ジペプチドである。
【0013】
一般式(I)におけるX及び一般式(II)におけるYにより示される「アミノ酸」としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン等の中性アミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン等の芳香族アミノ酸;オルニチン、サルコシン、シトルリン、ノルバリン、ノルロイシン、α−アミノ酪酸、タウリン、ヒドロキシプロリン、tert−ロイシン、シクロロイシン、α−アミノイソ酪酸(2−メチルアラニン)、ペニシラミン、ホモセリン等の他のアミノ酸等が挙げられる。これらのアミノ酸は、好ましくはL−体である。
本明細書中、上述の各アミノ酸を以下の通り、略記する場合がある。
(1)グリシン:Gly
(2)アラニン:Ala
(3)バリン:Val
(4)ロイシン:Leu
(5)イソロイシン:Ile
(6)セリン:Ser
(7)トレオニン:Thr
(8)システイン:Cys
(9)メチオニン:Met
(10)アスパラギン:Asn
(11)グルタミン:Gln
(12)プロリン:Pro
(13)アスパラギン酸:Asp
(14)グルタミン酸:Glu
(15)リジン:Lys
(16)アルギニン:Arg
(17)ヒスチジン:His
(18)フェニルアラニン:Phe
(19)チロシン:Tyr
(20)トリプトファン:Trp
(21)オルニチン:Orn
(22)サルコシン:Sar
(23)シトルリン:Cit
(24)ノルバリン:Nva
(25)ノルロイシン:Nle
(26)α−アミノ酪酸:Abu
(27)タウリン:Tau
(28)ヒドロキシプロリン:Hyp
(29)tert−ロイシン:t−Leu
(30)シクロロイシン:Cle
(31)α−アミノイソ酪酸(2−メチルアラニン):Aib
(32)ペニシラミン:Pen
(33)ホモセリン:Hse
【0014】
X及びYにより示される「アミノ酸誘導体」としては、例えば、特殊アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノアルコール及び官能基(例、末端カルボニル基、末端アミノ基、システインのチオール基等)の少なくとも一つが置換基(例、アルキル基、アシル基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルフォニル基、各種保護基等)により置換されたアミノ酸等が挙げられる。アミノ酸誘導体の具体例としては、N−γ−ニトロアルギニン(本明細書中、「Arg(NO
2)」と略記する場合がある)、S−ニトロシステイン(本明細書中、「Cys(SNO)」と略記する場合がある)、S−メチルシステイン(本明細書中、「Cys(S−Me)」と略記する場合がある)、S−アリルシステイン(本明細書中、「Cys(S−allyl)」と略記する場合がある)、バリンアミド(本明細書中、「Val−NH
2」と略記する場合がある)、バリノール(2−アミノ−3−メチル−1−ブタノール)(本明細書中、「Val−ol」と略記する場合がある)、メチオニンスルホキシド(本明細書中、「Met(O)」と略記する場合がある)、S−メチルシステインスルホキシド(本明細書中、「Cys(S−Me)(O)」と略記する場合がある)等が挙げられる。これらのアミノ酸誘導体は、好ましくはL−体である。
【0015】
Xは、好ましくはアミノ酸であり、より好ましくはVal、Abu、Nvaである。
【0016】
Yは、好ましくはアミノ酸であり、より好ましくはAbu、Nvaである。
【0017】
本発明において用いられる化合物(I)は、好ましくはγ−Glu−Val−Gly、γ−Glu−Abu−Gly、γ−Glu−Nva−Glyである。
【0018】
本発明において用いられる化合物(II)は、好ましくはγ−Glu−Abu、γ−Glu−Nvaである。
【0019】
本発明において用いられるγ−グルタミルペプチドは、好ましくはγ−Glu−Val−Gly、γ−Glu−Abu−Gly、γ−Glu−Nva−Gly、γ−Glu−Abu、γ−Glu−Nvaであり、より好ましくはγ−Glu−Val−Gly、γ−Glu−Abu−Gly、γ−Glu−Abuであり、特に好ましくはγ−Glu−Val−Glyである。γ−Glu−Val−Glyは、「グルタミルバリルグリシン」(英名:Glutamyl−Valyl−Glycine、CAS登録番号:38837−70−6)とも称される。
【0020】
本発明において用いられるγ−グルタミルペプチドの塩は、可食性の塩であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシル基等の酸性基に対しては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;アルミニウム塩;亜鉛塩;トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機アミンとの塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられ、アミノ基等の塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩;酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸、アジピン酸等の有機カルボン酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。これらの塩は、水和物(含水塩)であってもよく、かかる水和物としては、例えば1〜6水和物等が挙げられる。これらの塩は、いずれか一種を単独で使用してよく、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
(A)の形態は特に制限されないが、例えば、粉末状、微粒状、顆粒状、液体状(スラリー状等を含む)、ゲル状、ペースト状等が挙げられる。
【0022】
(A)の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、化学合成法、酵素法、発酵法等)又はこれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。具体的には、例えば、国際公開第2004/011653号、特開2012−213376号公報又は特開2016−168045号公報に記載の方法、あるいはこれらに準ずる方法等によって製造できる。(A)は市販品を用いてもよく、簡便であることから好ましい。
【0023】
本発明において用いられる(A)は、精製品であってよいが、精製品でなくてもよい。すなわち本発明は、(A)そのものに代替して又は(A)そのものに加えて、(A)を高含有する素材を用いることもできる。ここで(A)を「高含有する」素材とは、(A)の含有量が、素材に対して100重量ppm以上であるものをいう。(A)を高含有する素材としては、例えば、(A)を含有する発酵生産物(例、γ−グルタミルペプチド産生能を有する微生物を培養して得られた培養液、菌体、培養上清等)、(A)を含有する農水畜産物、並びにそれらの加工品等が挙げられる。当該加工品としては、例えば、(A)を含有する発酵生産物を、濃縮、希釈、乾燥、分画、抽出、精製等の処理に供したもの等が挙げられ、具体的には、例えば、γ−グルタミルペプチド(例、γ−Glu−Abu等)を含有する酵母エキス(例、特開2012−213376号公報に記載の酵母エキス等)等が挙げられる。本発明において(A)を高含有する素材を用いる場合、(A)を含有する酵母エキスを用いることが好ましい。(A)を高含有する素材は、所望の程度に精製されていてよく、純度が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であるものを用いてよい。
【0024】
[(B)水不溶性素材]
本発明において用いられる「水不溶性素材」とは、常温(例、25℃)の水に実質的に溶解しない素材をいう。ここで常温の水に「実質的に」溶解しない素材とは、常温の水に全く溶解しないか、又は常温の水100gへの溶解度が0.1g以下である素材を意味する。
【0025】
本発明において用いられる水不溶性素材の種類は、常温の水に実質的に溶解せず、かつ可食性であれば特に限定されないが、異風味(食品に本来備わっていない異質な風味)を有しないものが好ましく、例えば、デンプン、増粘多糖類、加工デンプン、食物繊維、脂肪球等が挙げられ、好ましくは加工デンプン、食物繊維である。これらの水不溶性素材は、いずれか一種を単独で使用してよく、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明において「加工デンプン」とは、物理的処理、化学的処理及び酵素的処理からなる群より選択される少なくとも一つの処理を施されたデンプンをいう。本発明において用いられる加工デンプンは、常温の水に実質的に溶解せず、かつ可食性であれば特に制限されないが、化学的処理を施されたデンプンが好ましい。化学的処理を施されたデンプンとしては、例えば、リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸化デンプン等が挙げられ、好ましくはリン酸架橋デンプン、酢酸デンプンである。これらのデンプンは、化学的処理に加え、更に物理的処理及び/又は酵素的処理を施されていてもよい。
【0027】
加工デンプンの原料として用いられるデンプンの種類は特に制限されないが、例えば、タピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、ばれいしょデンプン、ワキシーばれいしょデンプン、かんしょデンプン、コメデンプン、モチゴメデンプン、サトイモデンプン、サゴデンプン等が挙げられる。本発明において用いられる加工デンプンは、かんしょデンプン、タピオカデンプン、コーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、ばれいしょデンプン及びワキシーばれいしょデンプンからなる群より選択される少なくとも一つを原料とすることが好ましく、タピオカデンプン及びコーンデンプンからなる群より選択される少なくとも一つを原料とすることがより好ましい。
【0028】
本発明において「食物繊維」とは、ヒトの消化酵素によって消化されない又は消化され難い、食物中の難消化性成分の総体をいい、水溶性のものと水不溶性のものとに分類され得るが、本発明において水不溶性素材として用いられる食物繊維は、水不溶性のもの(本明細書中、「不溶性食物繊維」と称する場合がある)である。本発明において用いられる食物繊維(不溶性食物繊維)は、可食性であれば特に制限されないが、例えば、セルロース、結晶セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン等が挙げられ、好ましくはセルロース又は結晶セルロースであり、より好ましくは結晶セルロースである。
【0029】
(B)は、平均粒子径が特定の範囲内であることが好ましい。(B)の平均粒子径が特定の範囲内であることにより、γ−グルタミルペプチド又はその塩により付与されるコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)が増強され得る。
具体的には、(B)の平均粒子径は、(A)により付与されるコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を効果的に増強し得ることから、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは1.2μm以上であり、更に好ましくは10μm以上であり、特に好ましくは15μm以上である。また(B)の平均粒子径は、(A)により付与されるコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を効果的に増強し得ることから、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは70μm以下であり、更に好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは45μm以下である。
本発明において(B)の「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法によって得られる体積基準累積粒度分布における50%粒子径(メジアン径)をいい、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、HORIBA LA−920)を使用し、水を分散媒として測定される。
【0030】
(B)の平均粒子径の調整方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、水不溶性素材を乾式又は湿式のボールミル、ジェットミル、超音波等で粉砕すること等)又はこれに準ずる方法によって調整できる。
【0031】
(B)は、平均粒子径が上述の特定の範囲内であれば、粒子径の上限及び下限は特に制限されないが、(B)の粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、特に好ましくは0.1μm以上である。また(B)の粒子径は、好ましくは1500μm以下であり、より好ましくは1000μm以下であり、特に好ましくは500μm以下である。
【0032】
(B)の形態は特に制限されないが、例えば、粉末状、微粒状、顆粒状等が挙げられる。
【0033】
(B)の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はこれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。(B)は市販品を用いてもよく、簡便であることから好ましい。
【0034】
本発明の組成物における(A)の含有量は、本発明の組成物に対し、好ましくは0.05重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、特に好ましくは0.5重量%以上である。また当該含有量は、本発明の組成物に対し、好ましくは99.9重量%以下であり、より好ましくは99重量%以下であり、特に好ましくは95重量%以下である。
本明細書中、「(A)の含有量」とは、例えば、本発明の組成物が(A)を一種のみ含有する場合は、当該一種の含有量であり、本発明の組成物が(A)を二種以上含有する場合は、それらの合計の含有量である。また(A)が塩を含む場合、当該塩の重量は遊離体の重量に換算される。
【0035】
本発明の組成物における(B)の含有量は、本発明の組成物に対し、好ましくは0.05重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、特に好ましくは0.5重量%以上である。また当該含有量は、本発明の組成物に対し、好ましくは99.9重量%以下であり、より好ましくは99重量%以下であり、特に好ましくは95重量%以下である。
本明細書中、「(B)の含有量」とは、例えば、本発明の組成物が(B)を一種のみ含有する場合は、当該一種の含有量であり、本発明の組成物が(B)を二種以上含有する場合は、それらの合計の含有量である。
【0036】
本発明の組成物における(A)の含有量と(B)の含有量の重量比(A:B)は、好ましくは1:0.01〜100であり、より好ましくは1:0.05〜50であり、特に好ましくは1:0.1〜30である。
【0037】
本発明の組成物の形態は特に制限されず、例えば、粉末状、微粒状、顆粒状、液体状(スラリー状等を含む)、ゲル状、ペースト状等が挙げられる。
【0038】
本発明の組成物は、(A)及び(B)のみからなるものであってよいが、(A)及び(B)に加えて、食品添加物の分野において慣用の基剤をさらに含有するものであってもよい。
【0039】
本発明の組成物が含有し得る基剤としては、例えば、澱粉、デキストリン、シクロデキストリン、糖類(例、砂糖、スクロース、グルコース、異性化糖、オリゴ糖等)、糖アルコール(例、キシリトール、エリスリトール等)、蛋白質、ペプチド、無機塩類(例、食塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、有機酸類(例、酢酸、クエン酸等)及びその塩、固形脂、二酸化ケイ素、酵母菌体、各種の粉末エキス類、水、並びにそれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない限り、(A)及び(B)に加えて、例えば、賦形剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘安定剤、甘味料(例、砂糖類等)、酸味料、香辛料、着色料等を更に含有してよい。
【0041】
本発明の組成物の製造は、食品添加物の分野で慣用の手法により行い得る。本発明の組成物は、例えば、濃縮処理、乾燥処理、脱色処理等を、単独で又は組み合わせて施されてもよい。
【0042】
本発明の組成物は、コク味を付与するために食品に添加できる。したがって本発明の組成物は、好ましくはコク味付与組成物である。本発明において「食品」は、経口で摂取し得るものを広く包含する概念であり、飲料や調味料等も包含される。また「食品」は「食品組成物」も包含する概念である。本発明において「コク味付与組成物」は、「コク味付与剤」を包含する概念である。
【0043】
本発明において「コク味」とは、5基本味(five basic taste)(すなわち、甘味(sweet taste)、塩味(salty taste)、酸味(sour taste)、苦味(bitter taste)及びうま味(umami))だけでは表せない感覚であり、当該5基本味に加え、5基本味の周辺の味(marginal tastes)、風味(marginal flavor)(例えば、厚み(thickness)、ひろがり(growth(mouthfulness))、持続性(continuity)、まとまり(harmony)等)によって表される感覚をいう。したがって本発明における「コク味の付与」には、5基本味の少なくとも一つを付与することや、それに伴って5基本味の周辺の味、風味(例えば、厚み、ひろがり、持続性、まとまり等)を付与することも含まれる。また本発明においてコク味の「付与」とは、例えば、コク味を有しない食品に、コク味を新たに付与することだけでなく、コク味を有する食品に、コク味を更に付与すること、すなわちコク味を増強することも含む概念である。コク味の有無や程度は、専門パネルによる官能評価(例えば、後述の実施例に示される官能評価等)によって評価できる。
【0044】
本発明の組成物により食品に付与されるコク味は、好ましくは乳脂様の厚み及び/又は持続性である。したがって本発明の組成物は、より好ましくは乳脂様の厚み及び/又は持続性の付与組成物である。本発明において「乳脂様の厚み」とは、乳脂によって口内に引き起こされる、油脂の濃厚な感覚をいい、「乳脂様の持続性」とは、食品の摂取後に口腔内が空になった後もなお乳脂の持つ風味が口腔内で10秒以上持続する感覚をいう。
【0045】
本発明の組成物を添加し得る食品は、コク味が付与されることを所望されるものであれば特に制限されないが、乳脂様の厚み及び/又は持続性を好適に付与し得ることから、乳を含有する食品(本明細書中、「乳含有食品」と称する場合がある)が好ましい。したがって、本発明の組成物は、好ましくは乳含有食品用組成物、より好ましくは乳含有食品用の乳脂様の厚み及び/又は持続性の付与組成物である。
【0046】
本発明において、乳含有食品に含有される乳の種類は特に制限されないが、例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳等が挙げられる。乳含有食品は、これらの乳に加えて又は代替して、乳製品(乳を原料の一つとする製品)を含有するものであってよく、乳含有食品に含有される乳製品としては、例えば、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料及び乳飲料等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0047】
乳含有食品は、乳、乳製品(本明細書中、これらをまとめて「乳等」と称する場合がある)のみからなるものであってよい(すなわち、乳含有食品は、上述の乳又は乳製品そのものであってよい)が、乳等に加えて、乳等以外の成分を含有してもよい。乳等以外の成分としては、本発明の目的を損なうものでなければ特に制限されないが、例えば、乳含有食品の製造に通常用いられる原料(例、肉類、魚介類、野菜類、水、油脂等)、乳含有食品の製造に通常用いられる食品添加物(甘味料、酸味料、調味料、香料、着色料、乳化剤、保存料、pH調整剤等)等が挙げられる。
【0048】
乳含有食品における乳等の含有量は、乳含有食品に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは10〜99重量%であり、特に好ましくは20〜90重量%である。
【0049】
乳含有食品の形態は特に制限されず、例えば、固体状(粉末状、顆粒状等を含む)、液体状(スラリー状等を含む)、ゲル状、ペースト状、クリーム状等が挙げられるが、好ましくは液体状、クリーム状である。
【0050】
乳含有食品の具体例としては、クリーマー、ホイップクリーム、乳又は乳製品入り飲料(例、ココア、紅茶、コーヒー等)、スープ等が挙げられる。
【0051】
本発明の組成物を添加し得る食品は、喫食に適した態様で提供(販売、流通)されるものであってよく、又は喫食に適した態様になるための所定の処理や調理を必要とする態様で提供されるものであってもよい。例えば、本発明の組成物を添加し得る食品は、喫食に適した態様となるために水等で希釈することを必要とする濃縮物等として提供されてよい。
【0052】
本発明の組成物を添加し得る食品は、例えば、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、ダイエタリーサプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、医療用食品、メディカルフード等として提供されるものであってよい。
【0053】
本発明の組成物を食品に添加する方法及び条件は特に限定されず、本発明の組成物の形態や食品の種類等に応じて適宜設定できる。本発明の組成物を食品に添加する時期は特に限定されず、いかなる時点で添加してもよいが、例えば、食品の製造中、食品の完成後(例、食品の喫食直前、食品の喫食中等)等が挙げられる。食品を製造する前の食品原料に本発明の組成物を添加してもよい。
【0054】
本発明の組成物は、好適なコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を付与し得ることから、食品に添加される(A)の量が、食品に対して、好ましくは0.01重量ppm以上、より好ましくは0.1重量ppm以上、特に好ましくは1重量ppm以上となるように、食品に添加される。また本発明の組成物は、好適なコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を付与し得ることから、食品に添加される(A)の量が、好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは10重量ppm以下となるように、食品に添加される。
本発明において、食品に添加される(A)の量が「食品に対して、Mである」とは、食品に添加される(A)の重量の、(A)が添加された食品の喫食時の総重量に対する割合が、Mであることを意味する。本発明の組成物が添加される食品が、例えば、喫食に適した態様となるために水等で希釈することを必要とする濃縮物等である場合、食品に添加される(A)の量は希釈倍率等に応じて適宜調整してよい。(A)が塩を含む場合、当該塩の重量は遊離体の重量に換算される。
【0055】
本発明の組成物は、(A)により付与されるコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を効果的に増強し得ることから、食品に添加される(B)の量が、好ましくは0.3重量ppm以上、より好ましくは1重量ppm以上、更に好ましくは5重量ppm以上、特に好ましくは10重量ppm以上となるように、食品に添加される。また本発明の組成物は、(A)により付与されるコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を効果的に増強し得ることから、食品における(B)の濃度が、好ましくは250重量ppm以下、より好ましくは150重量ppm以下、特に好ましくは100重量ppm以下となるように、食品に添加される。
本発明において、食品に添加される(B)の量が「食品に対して、Nである」とは、食品に添加される(B)の重量の、(B)が添加された食品の喫食時の総重量に対する割合が、Nであることを意味する。本発明の組成物が添加される食品が、例えば、喫食に適した態様となるために水等で希釈することを必要とする濃縮物等である場合、食品に添加される(B)の量は希釈倍率等に応じて適宜調整してよい。
【0056】
本発明の組成物は、効果的にコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を付与し得ることから、食品に添加される(A)の量と(B)の量との重量比(A:B)が、好ましくは1:0.01〜100、より好ましくは1:0.05〜50、特に好ましくは1:0.1〜30となるように食品に添加される。
【0057】
本発明によれば、本発明の組成物を含有する食品(本明細書中、「本発明の食品」と称する場合がある)も提供される。
【0058】
本発明の食品における本発明の組成物の含有量は、本発明の組成物を含有することによって添加される(A)及び(B)の量が、それぞれ上述の範囲と同様となるように適宜調整すればよく、特に制限されない。
【0059】
本発明の食品の種類は、コク味が付与されることを所望されるものであれば特に制限されないが、乳脂様の厚み及び/又は持続性が好適に付与され得ることから、好ましくは乳含有食品である。乳含有食品としては、例えば、本発明の組成物を添加し得る乳含有食品として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0060】
(本発明の製造方法)
本発明は、(A)及び(B)を添加することを含む、食品の製造方法(本明細書中、単に「本発明の製造方法」と称する場合がある)も提供する。
【0061】
本発明の製造方法において用いられる(A)及び(B)は、それぞれ本発明の組成物に含有される(A)及び(B)と同様であり、それらの好ましい態様も同様である。
本発明における(A)の添加には、(A)そのものを添加することに加え、(A)を高含有する素材を添加することも包含される。
【0062】
本発明の製造方法において、食品に添加される(A)の量は、好適なコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を付与し得ることから、食品に対して、好ましくは0.01重量ppm以上であり、より好ましくは0.1重量ppm以上であり、特に好ましくは1重量ppm以上である。また食品に添加される(A)の量は、好適なコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を付与し得ることから、食品に対して、好ましくは1000重量ppm以下であり、より好ましくは100重量ppm以下であり、特に好ましくは10重量ppm以下である。
【0063】
本発明の製造方法において、食品に添加される(B)の量は、(A)により付与されるコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を効果的に増強し得ることから、食品に対して、好ましくは0.3重量ppm以上であり、より好ましくは1重量ppm以上であり、更に好ましくは5重量ppm以上であり、特に好ましくは10重量ppm以上である。また食品に添加される(B)の量は、(A)により付与されるコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を効果的に増強し得ることから、食品に対して、好ましくは250重量ppm以下であり、より好ましくは150重量ppm以下であり、特に好ましくは100重量ppm以下である。
【0064】
本発明の製造方法において、食品に添加される(A)の量と(B)の量との重量比(A:B)は、効果的にコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を付与し得ることから、好ましくは1:0.01〜100であり、より好ましくは1:0.05〜50であり、特に好ましくは1:0.1〜30である。
【0065】
本発明の製造方法は、(A)及び(B)を個別に添加してよいが、(A)及び(B)を添加前に予め混合し、得られた混合物を添加してもよい。あるいは、(A)及び(B)の添加は、本発明の組成物を使用して行われてもよい。(A)及び(B)を個別に添加する場合、添加の順序及び間隔は特に制限されず、例えば(A)、(B)の順序、あるいはその逆の順序で添加してよい。また(A)及び(B)を同時に添加してもよい。
【0066】
本発明の製造方法は、上述の(A)及び(B)の添加に加えて、食品の製造において慣用の処理工程、調理工程を、製造する食品の種類等に応じて適宜含んでよい。また本発明の製造方法は、食品の製造に通常使用され得る原料を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜使用してよい。
【0067】
本発明の製造方法によって製造される食品の種類は、コク味が付与されることを所望されるものであれば特に制限されないが、乳脂様の厚み及び/又は持続性が好適に付与され得ることから、好ましくは乳含有食品である。乳含有食品としては、例えば、本発明の組成物を添加し得る乳含有食品として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0068】
本発明の製造方法によれば、効果的にコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)が付与された食品(好ましくは、乳含有食品)を製造できる。
【0069】
(本発明の付与方法)
本発明は、(A)及び(B)を添加することを含む、コク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)の付与方法(本明細書中、単に「本発明の付与方法」と称する場合がある)も提供する。
本発明の付与方法は、特に断りのない限り、本発明の製造方法と同様に実施し得、好ましい態様も同様である。
【0070】
本発明の付与方法において、(A)及び(B)を添加する方法及び条件は特に限定されず、(A)及び(B)を添加する食品の種類等に応じて適宜設定できる。(A)及び(B)を食品に添加する時期は特に限定されず、いかなる時点で添加してもよいが、例えば、食品の製造中及び食品の完成後(例、食品の喫食直前、食品の喫食中等)等が挙げられる。食品を製造する前の食品原料に(A)及び(B)を添加してもよい。
【0071】
本発明の付与方法によれば、効果的にコク味(好ましくは、乳脂様の厚み及び/又は持続性)を食品に付与することができる。
【0072】
本発明の付与方法によってコク味が付与され得る食品の種類は、コク味が付与されることを所望されるものであれば特に制限されないが、乳脂様の厚み及び/又は持続性を好適に付与し得ることから、好ましくは乳含有食品である。乳含有食品としては、例えば、本発明の組成物を添加し得る乳含有食品として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0073】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。尚、本明細書において「%」、「ppm」と記載されている場合は、特に断りのない限り「重量%」、「重量ppm」を意味する。
【実施例】
【0074】
以下の試験例1〜5において、水不溶性素材の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、HORIBA LA−920)を使用して測定した。具体的には、下記の(1)〜(3)の手順により測定した。
[水不溶性素材の平均粒子径の測定方法]
(1)水不溶性素材の1重量%水溶液を調製する。
(2)レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置に水を分散媒として入れ、循環を開始する(循環速度:3)。
(3)上記(1)で調製した水溶液を透過率が70〜95%の範囲となるように滴下した後、1分後に粒度分布の測定を行い、得られた体積基準累積粒度分布から50%粒子径を算出する。
【0075】
以下の試験例1〜5において、γ−Glu−Val−Glyは、国際公開第2004/011653号に記載の方法に準じて製造したものを使用した。
【0076】
(試験例1)
<評価サンプルの調製>
γ−Glu−Val−Gly及び下表1に示す水不溶性素材を、市販のクリーマー(味の素AGF株式会社製、商品名:マリーム(登録商標)Vstandard)の3.75%水溶液(クリーマー水溶液)に添加し、これを評価サンプルとした(実施例1〜4及び比較例1〜4)。クリーマー水溶液へのγ−Glu−Val−Glyの添加量は、いずれの評価サンプルにおいてもクリーマー水溶液に対して5ppmとし、水不溶性素材の添加量は、いずれの評価サンプルにおいてもクリーマー水溶液に対して100ppmとした。実施例1、比較例1及び比較例2で使用した水不溶性素材の粉砕は、ボールミル又は超音波にて行った。
【0077】
<官能評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4の各評価サンプルにおけるコク味付与効果の評価は、官能評価によって行った。
官能評価は、2名の専門パネルが、実施例1〜4及び比較例1〜4の各評価サンプルを喫食し、コク味(具体的には、乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さについて、γ−Glu−Val−Gly及び水不溶性素材を添加していないクリーマー水溶液(コントロールサンプル)、並びに、クリーマー水溶液にγ−Glu−Val−Glyを濃度が5ppmとなるよう添加し、水不溶性素材は添加しなかったもの(γ−Glu−Val−Gly単独添加品)と比較し、下記の基準に基づいて評価することにより行った。
[コク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さの評価基準]
− :コントロールサンプルと同等のコク味の強さ。
+ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品と同等のコク味の強さ。
++ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品の2倍のコク味の強さ。
+++:γ−Glu−Val−Gly単独添加品の3倍のコク味の強さ。
【0078】
結果を下表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示される結果から明らかなように、γ−グルタミルペプチド及び特定の平均粒子径を有する水不溶性素材を併せてクリーマー水溶液に添加することによって、γ−グルタミルペプチドを単独で添加した場合に比べて、より強いコク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)がクリーマー水溶液に付与された。
【0081】
(試験例2)
<評価サンプルの調製>
γ−Glu−Val−Gly及び下表2に示す水不溶性素材を、市販のクリーマー(味の素AGF株式会社製、商品名:マリーム(登録商標)Vstandard)の3.75%水溶液(クリーマー水溶液)に添加し、これを評価サンプルとした(実施例5〜9及び比較例5)。クリーマー水溶液へのγ−Glu−Val−Glyの添加量は、いずれの評価サンプルにおいてもクリーマー水溶液に対して5ppmとし、水不溶性素材の添加量は、いずれの評価サンプルにおいてもクリーマー水溶液に対して100ppmとした。実施例6で使用した水不溶性素材の粉砕は、超音波にて行った。
【0082】
<官能評価>
実施例5〜9及び比較例5の各評価サンプルにおけるコク味付与効果の評価は、官能評価によって行った。
官能評価は、2名の専門パネルが、実施例5〜9及び比較例5の各評価サンプルを喫食し、コク味(具体的には、乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さについて、γ−Glu−Val−Gly及び水不溶性素材を添加していないクリーマー水溶液(コントロールサンプル)、並びに、クリーマー水溶液にγ−Glu−Val−Glyを濃度が5ppmとなるよう添加し、水不溶性素材は添加しなかったもの(γ−Glu−Val−Gly単独添加品)と比較し、下記の基準に基づいて評価することにより行った。
[コク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さの評価基準]
− :コントロールサンプルと同等のコク味の強さ。
+ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品と同等のコク味の強さ。
++ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品の2倍のコク味の強さ。
+++:γ−Glu−Val−Gly単独添加品の3倍のコク味の強さ。
【0083】
結果を下表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示される結果から明らかなように、γ−グルタミルペプチド及び特定の平均粒子径を有する水不溶性素材を併せてクリーマー水溶液に添加することによって、γ−グルタミルペプチドを単独で添加した場合に比べて、より強いコク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)がクリーマー水溶液に付与された。
【0086】
(試験例3)
<評価サンプルの調製>
γ−Glu−Val−Gly及び下表3に示す水不溶性素材を、市販のクリーマー(味の素AGF株式会社製、商品名:マリーム(登録商標)Vstandard)の3.75%水溶液(クリーマー水溶液)に添加し、これを評価サンプルとした(実施例10)。クリーマー水溶液へのγ−Glu−Val−Glyの添加量は、クリーマー水溶液に対して5ppmとし、水不溶性素材の添加量は、クリーマー水溶液に対して100ppmとした。
【0087】
<官能評価>
実施例10の評価サンプルにおけるコク味付与効果の評価は、官能評価によって行った。
官能評価は、2名の専門パネルが、実施例10の評価サンプルを喫食し、コク味(具体的には、乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さについて、γ−Glu−Val−Gly及び水不溶性素材を添加していないクリーマー水溶液(コントロールサンプル)、並びに、クリーマー水溶液にγ−Glu−Val−Glyを濃度が5ppmとなるよう添加し、水不溶性素材は添加しなかったもの(γ−Glu−Val−Gly単独添加品)と比較し、下記の基準に基づいて評価することにより行った。
[コク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さの評価基準]
− :コントロールサンプルと同等のコク味の強さ。
+ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品と同等のコク味の強さ。
++ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品の2倍のコク味の強さ。
+++:γ−Glu−Val−Gly単独添加品の3倍のコク味の強さ。
【0088】
結果を下表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示される結果から明らかなように、γ−グルタミルペプチド及び特定の平均粒子径を有する水不溶性素材を併せてクリーマー水溶液に添加することによって、γ−グルタミルペプチドを単独で添加した場合に比べて、より強いコク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)がクリーマー水溶液に付与された。
【0091】
(試験例4)
<評価サンプルの調製>
γ−Glu−Val−Gly及び平均粒子径が20μmである不溶性食物繊維(旭化成株式会社製、商品名:セオラス FD−F20)を、市販のクリーマー(味の素AGF株式会社製、商品名:マリーム(登録商標)Vstandard)の3.75%水溶液(クリーマー水溶液)に添加し、これを評価サンプルとした(実施例11〜15)。クリーマー水溶液へのγ−Glu−Val−Glyの添加量は、いずれの評価サンプルにおいてもクリーマー水溶液に対して5ppmとし、水不溶性素材の添加量は、下表4に示す通り、クリーマー水溶液に対して1〜100ppmとした。
【0092】
<官能評価>
実施例11〜15の各評価サンプルにおけるコク味付与効果の評価は、官能評価によって行った。
官能評価は、2名の専門パネルが、実施例11〜15の各評価サンプルを喫食し、コク味(具体的には、乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さについて、γ−Glu−Val−Gly及び水不溶性素材を添加していないクリーマー水溶液(コントロールサンプル)、並びに、クリーマー水溶液にγ−Glu−Val−Glyを濃度が5ppmとなるよう添加し、水不溶性素材は添加しなかったもの(γ−Glu−Val−Gly単独添加品)と比較し、下記の基準に基づいて評価することにより行った。
[コク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さの評価基準]
− :コントロールサンプルと同等のコク味の強さ。
+ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品と同等のコク味の強さ。
++ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品の2倍のコク味の強さ。
+++:γ−Glu−Val−Gly単独添加品の3倍のコク味の強さ。
【0093】
結果を下表4に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
表4に示される結果から明らかなように、γ−グルタミルペプチド及び特定の平均粒子径を有する水不溶性素材を併せてクリーマー水溶液に添加することによって、水不溶性素材のいずれの添加量についても、γ−グルタミルペプチドを単独で添加した場合に比べて、より強いコク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)がクリーマー水溶液に付与された。
【0096】
(試験例5)
<評価サンプルの調製>
γ−Glu−Val−Gly及び平均粒子径が20μmである不溶性食物繊維(旭化成株式会社製、商品名:セオラス FD−F20)を、下表5に示す各乳含有食品に添加し、これを評価サンプルとした(実施例16〜19)。乳含有食品へのγ−Glu−Val−Glyの添加量は、いずれの評価サンプルにおいても乳含有食品に対して5ppmとし、水不溶性素材の添加量は、実施16及び17の評価サンプルにおいては、乳含有食品液に対して100ppmとし、実施18及び19の評価サンプルにおいては、乳含有食品液に対して50ppmとした。
下表5に示す各乳含有食品のうち、低脂肪ホイップクリーム及び低脂肪ミルクココアは、それぞれ下記の通りに調製した。
[低脂肪ホイップクリーム]
市販のホイップクリーム(雪印メグミルク株式会社製「ホイップ 低脂肪 植物性脂肪」)400gにグラニュー糖32gを添加し、その温度を5℃以下に調整した後、キッチンエイドミキサーで1分間泡立てて、低脂肪ホイップクリームを調製した。尚、γ−Glu−Val−Gly及び不溶性食物繊維は、泡立て後に添加した。
[低脂肪ミルクココア]
グラニュー糖6g及び市販のココアパウダー(森永製菓社製「ミルクココア」)2gに、熱湯10gを加えてダマのないようによく溶かした後、90℃に加熱した牛乳(よつ葉乳業株式会社製「北海道十勝 低脂肪牛乳」)88gを加え、低脂肪ミルクココアを調製した。
【0097】
<官能評価>
実施例16〜19の各評価サンプルにおけるコク味付与効果の評価は、官能評価によって行った。
官能評価は、3名の専門パネルが、実施例15〜18の各評価サンプルを喫食し、コク味(具体的には、乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さについて、γ−Glu−Val−Gly及び水不溶性素材を添加していない各乳含有食品(コントロールサンプル)、並びに、各乳含有食品にγ−Glu−Val−Glyを濃度が5ppmとなるよう添加し、水不溶性素材は添加しなかったもの(γ−Glu−Val−Gly単独添加品)と比較し、下記の基準に基づいて評価することにより行った。
[コク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)の強さの評価基準]
− :コントロールサンプルと同等のコク味の強さ。
+ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品と同等のコク味の強さ。
++ :γ−Glu−Val−Gly単独添加品の2倍のコク味の強さ。
+++:γ−Glu−Val−Gly単独添加品の3倍のコク味の強さ。
【0098】
結果を下表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
表5に示される結果から明らかなように、γ−グルタミルペプチド及び特定の平均粒子径を有する水不溶性素材を併せて添加することによって、いずれの乳含有食品においても、γ−グルタミルペプチドを単独で添加した場合に比べて、より強いコク味(乳脂様の厚み及び/又は持続性)が付与された。また実施例18の評価サンプルでは、乳風味の増強も確認された。