特許第6981283号(P6981283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981283
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20211202BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20211202BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B60C9/18 J
   B60C9/18 K
   B60C9/20 B
   B60C9/22 A
   B60C9/22 B
   B60C9/22 G
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-16627(P2018-16627)
(22)【出願日】2018年2月1日
(65)【公開番号】特開2019-131110(P2019-131110A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮太
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−210305(JP,A)
【文献】 特開2017−177842(JP,A)
【文献】 特開2010−285107(JP,A)
【文献】 特開2015−107563(JP,A)
【文献】 特開平11−222010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側、かつ、トレッド部の内部に配されたトレッド補強層とを有する自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド補強層は、1本又は複数本の補強コードがトッピングゴムにより被覆された長尺の帯状プライが、各ショルダー領域に巻き付けられている一対のショルダー補強部と、前記帯状プライが、前記各ショルダー領域のタイヤ軸方向内側の領域である各ミドル領域に巻き付けられている一対のミドル補強部とを含み、
前記一対のミドル補強部のそれぞれは、前記帯状プライがタイヤ周方向に対して一方側に傾斜する複数の第1傾斜部、
前記帯状プライがタイヤ周方向に対して前記複数の第1傾斜部とは逆向きに傾斜する複数の第2傾斜部、及び、
前記複数の第1傾斜部の側縁が互いに接触することなく配され、かつ、前記複数の第2傾斜部の側縁が互いに接触することなく配されることにより、前記複数の第1傾斜部と前記複数の第2傾斜部とで囲まれた菱形状の複数の空間部を有する格子状であり、
前記一対のショルダー補強部のそれぞれは、前記帯状プライが実質的にタイヤ周方向に沿って螺旋状に1周以上延びているショルダー螺旋状部を含む、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記一対のミドル補強部は、前記帯状プライが、前記複数の第1傾斜部又は前記複数の第2傾斜部のタイヤ軸方向の内端に連なってタイヤ周方向に沿って延びる複数の内側周方向部を有し、
前記複数の内側周方向部のタイヤ周方向の長さは、前記複数の空間部のタイヤ周方向の最大長さの50%〜150%である、請求項1記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記ショルダー螺旋状部の前記トレッド部の踏面に沿った幅は、前記トレッド補強層の前記トレッド部の踏面に沿った幅の5%以上である、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部は、前記一対のミドル領域間の領域であるクラウン領域を含み、
前記トレッド補強層は、前記帯状プライが、前記クラウン領域に巻き付けられているクラウン補強部を含み、
前記クラウン補強部は、前記帯状プライが実質的にタイヤ周方向に沿って螺旋状に1周以上延びているクラウン螺旋状部を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記クラウン螺旋状部の前記トレッド部の踏面に沿った幅は、前記トレッド補強層の前記トレッド部の踏面に沿った幅の5%以上である、請求項4記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記クラウン螺旋状部を形成する前記帯状プライは、前記補強コードが1本である、請求項4又は5に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー螺旋状部を形成する前記帯状プライは、前記補強コードが1本である、請求項1ないし6のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記一対のミドル補強部は、前記帯状プライが、前記複数の第1傾斜部又は前記複数の第2傾斜部のタイヤ軸方向の内端に連なってタイヤ周方向に沿って延びる複数の内側周方向部を有し、
前記複数の内側周方向部の両端には、タイヤ周方向に隣接する一対の前記第1傾斜部が連なるか、又は、タイヤ周方向に隣接する一対の前記第2傾斜部が連なる、請求項1ないし7のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記一対のミドル補強部は、前記帯状プライが、前記複数の第1傾斜部又は前記複数の第2傾斜部のタイヤ軸方向の内端に連なってタイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向部を有し、
前記複数の周方向部の両端には、前記複数の第1傾斜部のいずれか一つ、及び、前記複数の第2傾斜部のいずれか一つが連なる、請求項1ないし7のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド補強層を有する自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、軸方向中央に位置するセンター部と、センター部の軸方向外側に位置するショルダー部とを有するバンドを含む二輪自動車用のタイヤが記載されている。このバンドでは、ショルダー部がコードを備える帯体を網目状の構造で形成されている。このようなショルダー部は、高いねじり剛性を有し、大きなコーナリングパワーを生じるので、旋回性能を向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−177842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、自動二輪車の高性能化に伴い、自動二輪車用タイヤにも、さらなる旋回性能の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、旋回性能を、より一層向上し得る自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側、かつ、トレッド部の内部に配されたトレッド補強層とを有する自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド補強層は、1本又は複数本の補強コードがトッピングゴムにより被覆された長尺の帯状プライが、各ショルダー領域に巻き付けられている一対のショルダー補強部と、前記帯状プライが、前記各ショルダー領域のタイヤ軸方向内側の領域である各ミドル領域に巻き付けられている一対のミドル補強部とを含み、前記一対のミドル補強部のそれぞれは、前記帯状プライがタイヤ周方向に対して一方側に傾斜する複数の第1傾斜部、前記帯状プライがタイヤ周方向に対して前記複数の第1傾斜部とは逆向きに傾斜する複数の第2傾斜部、及び、前記複数の第1傾斜部の側縁が互いに接触することなく配され、かつ、前記複数の第2傾斜部の側縁が互いに接触することなく配されることにより、前記複数の第1傾斜部と前記複数の第2傾斜部とで囲まれた菱形状の複数の空間部を有する格子状であり、前記一対のショルダー補強部のそれぞれは、前記帯状プライが実質的にタイヤ周方向に沿って螺旋状に1周以上延びているショルダー螺旋状部を含む。
【0007】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記一対のミドル補強部が、前記帯状プライが、前記複数の第1傾斜部又は前記複数の第2傾斜部のタイヤ軸方向の内端に連なってタイヤ周方向に沿って延びる複数の内側周方向部を有し、前記複数の内側周方向部のタイヤ周方向の長さは、前記複数の空間部のタイヤ周方向の最大長さの50%〜150%であるのが望ましい。
【0008】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記ショルダー螺旋状部の前記トレッド部の踏面に沿った幅が、前記トレッド補強層の前記トレッド部の踏面に沿った幅の5%以上であるのが望ましい。
【0009】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記トレッド部が、前記一対のミドル領域間の領域であるクラウン領域を含み、前記トレッド補強層は、前記帯状プライが、前記クラウン領域に巻き付けられているクラウン補強部を含み、前記クラウン補強部は、前記帯状プライが実質的にタイヤ周方向に沿って螺旋状に1周以上延びているクラウン螺旋状部を含むのが望ましい。
【0010】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記クラウン螺旋状部の前記トレッド部の踏面に沿った幅が、前記トレッド補強層の前記トレッド部の踏面に沿った幅の5%以上であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記クラウン螺旋状部を形成する前記帯状プライが、前記補強コードが1本であるのが望ましい。
【0012】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記ショルダー螺旋状部を形成する前記帯状プライが、前記補強コードが1本であるのが望ましい。
【0013】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記一対のミドル補強部において、前記帯状プライが、前記複数の第1傾斜部又は前記複数の第2傾斜部のタイヤ軸方向の内端に連なってタイヤ周方向に沿って延びる複数の内側周方向部を有し、前記複数の内側周方向部の両端には、タイヤ周方向に隣接する一対の前記第1傾斜部が連なるか、又は、タイヤ周方向に隣接する一対の前記第2傾斜部が連なるのが望ましい。
【0014】
本発明に係る自動二輪車用タイヤは、前記一対のミドル補強部において、前記帯状プライが、前記複数の第1傾斜部又は前記複数の第2傾斜部のタイヤ軸方向の内端に連なってタイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向部を有し、前記複数の周方向部の両端には、前記複数の第1傾斜部のいずれか一つ、及び、前記複数の第2傾斜部のいずれか一つが連なるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動二輪車用タイヤは、主に旋回走行時に接地するミドル領域に帯状プライを巻き付けているミドル補強部と、主にフルバンク走行時に接地するショルダー領域に帯状プライを巻き付けているショルダー補強部とを含んでいる。ミドル補強部は、帯状プライがタイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜する第1傾斜部と第2傾斜部とを含んでいる。このようなミドル補強部は、ミドル領域のねじり剛性を大きくして、高いコーナリングパワーを生じさせる。また、ミドル補強部は、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とで囲まれた菱形状の複数の空間部を有する格子状に形成されている。このようなミドル補強部は、その一部に作用する張力を、互いに交差する帯状プライを介して、格子状部の全体にわたって分散することができるので、ミドル領域の剛性を高める。このため、ミドル補強部は、高い旋回性能を発揮する。
【0016】
ショルダー補強部は、前記帯状プライが実質的にタイヤ周方向に沿って螺旋状に1周以上延びているショルダー螺旋状部を含んでいる。このようなショルダー補強部は、ショルダー領域のねじり剛性を小さくして、小さなコーナリングパワーを生じさせる。このため、例えば、路面のギャップ等による反力や振動が小さくなるので、接地感が高められるため、安定したフルバンク走行が可能となり、旋回性能が、より一層向上する。
【0017】
従って、本発明の自動二輪車用タイヤは、優れた旋回性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の自動二輪車用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
図2】帯状プライの斜視図である。
図3】トレッド補強層の概略を示す展開平面図である。
図4】(a)、(b)は、他の実施形態のミドル補強部を概念的に示す平面図である。
図5図3のミドル補強部とショルダー補強部との間の拡大図である。
図6図3のミドル補強部とクラウン補強部との間の拡大図である。
図7】帯状プライの巻き付け工程を概念的に説明する模式図である。
図8】(a)、(b)は、本実施形態のミドル補強部を製造する工程を概念的に示す平面図である。
図9】(a)、(b)は、他の実施形態のミドル補強部を製造する工程を概念的に示す模式図である。
図10】(a)、(b)は、ミドル補強部の傾斜部と周方向部との接続態様を概念的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図が示されている。
【0020】
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、しかも無負荷の状態である。本明細書では特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0021】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、路面に接地する踏面2aを有するトレッド部2と、トロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたトレッド補強層7とを有している。
【0024】
トレッド部2は、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲しており、トレッド端TE、TEがタイヤ1のタイヤ軸方向の最も外側に位置している。本実施形態のトレッド部2は、一対のショルダー領域2S、2Sと、各ショルダー領域2Sのタイヤ軸方向内側の領域である一対のミドル領域2M、2Mとを含んでいる。ショルダー領域2Sは、本実施形態では、トレッド端TEからミドル領域2Mのタイヤ軸方向の端部までの範囲である。ショルダー領域2Sは、主にフルバンク走行時に接地する領域である。ミドル領域2Mは、主に旋回走行時に接地する領域である。
【0025】
トレッド部2は、本実施形態では、一対のミドル領域2M、2M間の領域であるクラウン領域2Cをさらに含んでいる。本実施形態のクラウン領域2Cは、タイヤ赤道Cを含み、主に高速走行となる直進走行時に接地する領域である。
【0026】
カーカス6は、例えば、少なくとも1枚のカーカスプライ6Aにより形成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、タイヤ赤道Cに対して75〜90°の角度で傾けて配列されたカーカスコードを未加硫のトッピングゴムにより被覆して形成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、トレッド部2からサイドウォール部3を経て両側のビード部4、4のビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なる1対の折り返し部6bとを含んでいる。
【0027】
トレッド補強層7は、タイヤ子午線断面において、トレッド部2に沿って湾曲にのびており、トレッド部2のほぼ全幅にわたって形成されている。これにより、トレッド補強層7は、トレッド部2の強度をトレッド部2の全域にわたって高めることができる。このような観点より、トレッド補強層7のトレッド部2の踏面2aに沿った幅Wtは、トレッド端TE、TE間のトレッド部2の踏面2aに沿った幅(以下、単に「トレッド展開幅」という場合がある。)TWの75%〜95%であるのが望ましい。
【0028】
本実施形態のトレッド補強層7は、帯状プライ9が、カーカス6に巻き付けられることにより形成されている。
【0029】
図2には、帯状プライ9の斜視図が示されている。図2に示されるように、帯状プライ9は、例えば、両側縁9s、9sを含み、略矩形状の断面を有している。帯状プライ9の幅W1は、例えば、2.5〜12.0mmの範囲であるのが望ましい。帯状プライ9の厚さt1は、例えば、0.6〜3.0mmの範囲であるのが望ましい。
【0030】
帯状プライ9は、1本又は複数本の補強コード10をトッピングゴム11により被覆して形成されている。補強コード10は、例えば、スチールコードや有機繊維コードが好適に用いられる。補強コード10は、例えば、側縁9sに沿って延びている。
【0031】
図3には、トレッド補強層7をタイヤ周方向に展開した展開平面図が示されている。図3では、便宜上、帯状プライ9が単線(幅方向の中心線)で描かれている。図3のトレッド補強層7の上下間の長さが、トレッド補強層7のタイヤ周方向長さ(周長)を示す。図3に示されるように、トレッド補強層7は、帯状プライ9が各ミドル領域2Mに巻き付けられている一対のミドル補強部7M、7Mと、帯状プライ9が各ショルダー領域2Sに巻き付けられている一対のショルダー補強部7S、7Sとを含んでいる。ミドル補強部7M及びショルダー補強部7Sは、例えば、互いに別々の帯状プライ9で形成される。なお、ミドル補強部7M及びこれに隣接するショルダー補強部7Sは、連続する1本の帯状プライ9で形成されても良い。
【0032】
また、本実施形態のトレッド補強層7は、帯状プライ9がクラウン領域2Cに巻き付けられている1本のクラウン補強部7Cをさらに含んでいる。クラウン補強部7Cは、本実施形態では、ミドル補強部7Mと別々の帯状プライ9で形成される。なお、クラウン補強部7Cは、ミドル補強部7Mの帯状プライ9と連なって形成されても良い。
【0033】
本実施形態の各ミドル補強部7Mは、帯状プライ9が傾斜する複数の傾斜部13を含んでいる。各ミドル補強部7Mは、最もタイヤ赤道C側の内側端部Eiと、最もトレッド端TE側の外側端部Eeとを有している。
【0034】
本実施形態の複数の傾斜部13は、タイヤ周方向に対して一方側(図では右上がり)にのびる複数の第1傾斜部15、及び、複数の第1傾斜部15とは逆向き(図では右下がり)にのびる複数の第2傾斜部16を含んでいる。このような傾斜部13は、ミドル領域2Mのねじり剛性を大きくして、高いコーナリングパワーを生じさせるので、旋回性能を高める。
【0035】
各ミドル補強部7Mは、複数の第1傾斜部15の側縁15sが互いに接触することなく配され、かつ、複数の第2傾斜部16の側縁16sが互いに接触することなく配されている。これにより、ミドル補強部7Mは、複数の第1傾斜部15と複数の第2傾斜部16とで囲まれた菱形状の複数の空間部17を有する格子状で形成されている。このようなミドル補強部7Mは、その一部に作用する張力を、互いに交差する帯状プライ9を介して、格子状に形成されている部分全体にわたって分散することができるので、ミドル領域2Mの剛性を高める。このため、旋回性能が向上する。本明細書では、「菱形状」とは、直線状に延びる隣接する2本の第1傾斜部15、15及び隣接する2本の第2傾斜部16、16で構成された形状をいい、厳密な意味での菱形に限定されず、平行四辺形を含んでも良い。また、前記「直線状」は、トレッド部2が円弧状で形成されるため、厳密な意味での直線に限定されるものではなく、複数の周期を有する波状やジグザグ状を除いて、例えば、円弧状で形成されるものを含む。
【0036】
各ミドル補強部7Mの第1傾斜部15のタイヤ周方向に対する角度θ1、及び、第2傾斜部16のタイヤ周方向に対する角度θ2は、例えば、それぞれ、2度よりも大きいのが望ましい。前記角度θ1及び角度θ2は、好ましくは、3〜10度である。前記角度θ1及び角度θ2は、その値を異ならせることによりタイヤ1に生じるコーナリングパワーが変化する。また、前記角度θ1及び角度θ2は同じであるのが望ましい。
【0037】
本実施形態の各ショルダー補強部7Sは、帯状プライ9が実質的にタイヤ周方向に沿って螺旋状に1周以上延びているショルダー螺旋状部20を含んで形成されている。このようなショルダー螺旋状部20は、ショルダー領域2Sのねじり剛性を小さくして、小さなコーナリングパワーを生じさせる。このため、例えば、路面のギャップ等による反力や振動が小さくなるので、接地感が高められるため、安定したフルバンク走行が可能となり、旋回性能が、より一層向上する。本実施形態では、ショルダー補強部7Sは、ショルダー螺旋状部20のみで形成されている。また、本明細書では、前記「実質的にタイヤ周方向に沿って」とは、帯状プライ9がタイヤ周方向に対して0度で延びる態様は勿論、タイヤ周方向に対して8度以下で延びる態様を含む。なお、ショルダー螺旋状部20のタイヤ周方向に対する角度θ3は、本明細書では、局所的に大きな角度で傾斜する部分を除くために、タイヤ1周の平均で表される。また、ショルダー補強部7Sのタイヤ軸方向の外端は、トレッド補強層7の外端7eと一致する。
【0038】
各ショルダー螺旋状部20のトレッド部2の踏面2aに沿った幅Wsは、トレッド補強層7の前記幅Wtの5%以上が望ましい。これにより、フルバンク走行での接地感を確実に高めることができる。なお、ショルダー螺旋状部20の前記幅Wsが過度に大きくなる場合、フルバンク走行以外の旋回走行で、コーナリングパワーが小さくなり、かえって旋回性能が悪化するおそれがある。このため、ショルダー螺旋状部20の前記幅Wsは、トレッド補強層7の前記幅Wtの10%以下であるのが望ましい。
【0039】
ショルダー螺旋状部20を形成する帯状プライ9は、補強コード10が1本であるのが望ましい。これにより、帯状プライ9の粗密を調整することにより、ショルダー領域2Sのコーナリングパワーを好ましい値に近づけ易くなるので、旋回性能を高めることができる。このような補強コード10が1本である帯状プライ9は、その幅W1が、例えば、2.5〜3.5mm、厚さt1は、例えば、0.6〜3.0mmの範囲であるのが望ましい。
【0040】
本実施形態のクラウン補強部7Cは、帯状プライ9が実質的にタイヤ周方向に沿って螺旋状に1周以上延びているクラウン螺旋状部21を含んで形成されている。このようなクラウン螺旋状部21は、クラウン領域2Cのねじり剛性を小さくして、小さなコーナリングパワーを生じさせる。このため、例えば、路面のギャップ等による反力や振動が小さくなるので、接地感が高められるため、高速安定性能が向上する。本実施形態では、クラウン補強部7Cは、クラウン螺旋状部21のみで形成されている。
【0041】
クラウン螺旋状部21のトレッド部2の踏面2aに沿った幅Wcは、トレッド補強層7の前記幅Wtの5%以上が望ましい。これにより、直進走行での接地感を確実に高めることができる。なお、クラウン螺旋状部21の前記幅Wcが過度に大きくなる場合、旋回走行でのコーナリングパワーが小さくなり、旋回性能が悪化するおそれがある。このため、クラウン螺旋状部21の前記幅Wcは、トレッド補強層7の前記幅Wtの15%以下であるのが望ましい。
【0042】
クラウン螺旋状部21を形成する帯状プライ9は、補強コード10が1本であるのが望ましい。これにより、帯状プライ9の粗密を調整することにより、クラウン領域2Cのコーナリングパワーを好ましい値に近づけ易くなるので、高速安定性能を高めることができる。
【0043】
クラウン螺旋状部21及びショルダー螺旋状部20は、本実施形態では、それぞれタイヤ軸方向に隣接する帯状プライ9同士の側縁9sが接して形成されている。なお、クラウン螺旋状部21及びショルダー螺旋状部20は、例えば、それぞれタイヤ軸方向に隣接する帯状プライ9同士の一部がタイヤ半径方向に重ねられて形成されても良いし、これらがタイヤ軸方向に離間して形成されても良い。
【0044】
各ミドル補強部7Mは、本実施形態では、帯状プライ9がタイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向部14をさらに含んでいる。本実施形態の周方向部14は、そのタイヤ周方向の両端のそれぞれに傾斜部13、13が連なっている。
【0045】
本実施形態の複数の周方向部14は、複数の内側周方向部18と複数の外側周方向部19とを含んでいる。
【0046】
各内側周方向部18は、本実施形態では、第1傾斜部15のタイヤ軸方向の内端15i又は第2傾斜部16のタイヤ軸方向の内端16iに連なっている。このような内側周方向部18は、クラウン領域2Cに近接する部分において、その拘束力を高めるので、高速安定性能を向上する。また、タイヤ周方向に沿って延びる内側周方向部18は、クラウン補強部7Cとミドル補強部7Mとの境界において、クラウン領域2C及びミドル領域2Mの剛性の変化を小さくするので、旋回走行時の過渡特性を高める。このため、タイヤ1の旋回性能が向上する。
【0047】
各内側周方向部18のタイヤ周方向の長さLaは、複数の空間部17のタイヤ周方向の最大長さL1の50%〜150%であるのが望ましい。これにより、クラウン領域2Cとミドル領域2Mとの境界の剛性と、クラウン領域2Cの剛性及びミドル領域2Mの剛性との差が一層小さくなり、過渡特性がさらに高くなり、かつ、内側周方向部18による大きな拘束力が生じる。これにより、旋回性能及び高速安定性能が、一層高められる。本実施形態では、内側周方向部18に最も近い空間部17の最大長さL1が採用される。
【0048】
本実施形態では、内側周方向部18は、第1傾斜部15及び第2傾斜部16の最もタイヤ赤道C側の交差位置K1とタイヤ軸方向に同じ位置で設けられている。これにより、内側周方向部18のタイヤ周方向の長さLaが空間部17のタイヤ周方向の最大長さL1の100%で形成されている。
【0049】
図4(a)は、内側周方向部18のタイヤ周方向の長さLaが空間部17のタイヤ周方向の最大長さL1よりも小さく形成されたミドル補強部7Mを示す平面図である。このミドル補強部7Mは、複数の内側周方向部18が、内側端部Ei上で、タイヤ周方向に並ぶ複数の隙間23と交互にタイヤ周方向に並べられている。また、内側周方向部18は、第1傾斜部15及び第2傾斜部16の最もタイヤ赤道側の交差位置K1とタイヤ軸方向に位置ずれして設けられている。図4(b)は、内側周方向部18のタイヤ周方向の長さLaが空間部17のタイヤ周方向の最大長さL1よりも大きいミドル補強部7Mを示す平面図である。このミドル補強部7Mも、複数の内側周方向部18が、内側端部Ei上で、タイヤ周方向に並ぶ複数の隙間23と交互にタイヤ周方向に並べられている。
【0050】
図3に示されるように、各外側周方向部19は、本実施形態では、複数の第1傾斜部15のタイヤ軸方向の外端15e又は複数の第2傾斜部16のタイヤ軸方向の外端16eに連なっている。このような外側周方向部19は、例えば、第1傾斜部15と第2傾斜部16とが直接連なる場合に比して、帯状プライ9に作用する曲げ応力を低減できる。また、外側周方向部19は、ショルダー補強部7Sとミドル補強部7Mとの境界において、ショルダー領域2S及びミドル領域2Mの剛性の変化を小さくするので、旋回走行時の終期においても過渡特性を高める。このため、タイヤ1の旋回性能が向上する。
【0051】
外側周方向部19は、内側周方向部18と同じ形状で形成されるのが望ましい。外側周方向部19は、第1傾斜部15及び第2傾斜部16の最もトレッド端TE側の交差位置K2とタイヤ軸方向に同じ位置で設けられている。
【0052】
本実施形態では、複数の内側周方向部18によって、タイヤ周方向に連続して1周分延びる仮想の周方向連続部14xが形成されている。また、本実施形態では、複数の外側周方向部19によって、タイヤ周方向に連続して1周分延びる仮想の周方向連続部14yが形成されている。このような内側周方向部18及び外側周方向部19は、過渡特性及びフルバンク走行時の接地感を高め、一層、旋回性能を向上する。
【0053】
内側周方向部18のタイヤ周方向に対する角度θ5、及び、外側周方向部19のタイヤ周方向に対する角度θ6は、第1傾斜部15の角度θ1及び第2傾斜部16の角度θ2よりも小さければよい。内側周方向部18の角度θ5及び外側周方向部19の角度θ6は、好ましくは5度以下、より好ましくは3度以下、さらに好ましくは1度以下である。
【0054】
図5は、ミドル補強部7Mとショルダー補強部7Sとの境界の拡大図である。図5に示されるように、タイヤ軸方向距離Waは、タイヤ軸方向距離Wbの500%よりも小さいのが望ましい。タイヤ軸方向距離Waは、外側周方向部19の最もトレッド端TE側に配された補強コード10aと、この補強コード10aとタイヤ軸方向で隣り合うショルダー補強部7Sの補強コード10bとの間の距離である。タイヤ軸方向距離Wbは、ショルダー補強部7Sのタイヤ軸方向に隣り合う補強コード10、10間の距離である。前記距離Waが前記距離Wbの500%以上の場合、外側周方向部19が配される部分の剛性とショルダー補強部7Sの剛性との差の変化が大きくなり、フルバンクに近い旋回走行の終期において、過渡特性が悪化するおそれがある。前記距離Waは前記距離Wbの50%以上が望ましい。
【0055】
図6は、ミドル補強部7Mとクラウン補強部7Cとの境界の拡大図である。図6に示されるように、タイヤ軸方向距離Wfは、タイヤ軸方向距離Whの500%よりも小さいのが望ましい。タイヤ軸方向距離Wfは、内側周方向部18の最もタイヤ赤道C側に配された補強コード10fと、この補強コード10fとタイヤ軸方向で隣り合うクラウン補強部7Cの補強コード10hとの間の距離である。タイヤ軸方向距離Whは、クラウン補強部7Cのタイヤ軸方向に隣り合う補強コード10、10間の距離である。前記距離Wfが前記距離Whの500%以上の場合、内側周方向部18が配される部分の剛性とクラウン補強部7Cの剛性との差の変化が大きくなり、旋回走行時の初期において、過渡特性が悪化するおそれがある。前記距離Wfは前記距離Whの50%以上が望ましい。
【0056】
次に、このようなタイヤ1の製造方法が説明される。本実施形態のタイヤ1は、生タイヤを形成する工程と、生タイヤを加硫成形する工程とを含んで製造される。生タイヤを形成する工程は、上述のトレッド補強層7を形成するためのトレッド補強層形成工程を含んでいる。トレッド補強層形成工程は、長尺の帯状プライ9を巻き付ける、巻付け工程を含んでいる。なお、トレッド補強層形成工程の巻付け工程を除く生タイヤを形成する工程、及び、生タイヤを加硫成形する工程は、周知の工程が採用されるので、その説明が省略される。
【0057】
本実施形態の巻付け工程は、クラウン巻付け工程、第1ミドル巻付け工程、第2ミドル巻付け工程、第1ショルダー巻付け工程及び第2ショルダー巻付け工程を含んでいる。本実施形態のクラウン巻付け工程では、クラウン補強部7Cが形成される。本実施形態の第1ミドル巻付け工程では、一方のミドル補強部7Mが形成される。本実施形態の第2ミドル巻付け工程では、他方のミドル補強部7Mが形成される。本実施形態の第1ショルダー巻付け工程では、一方のショルダー補強部7Sが形成される。本実施形態の第2ショルダー巻付け工程では、他方のショルダー補強部7Sが形成される。本実施形態では、各補強部は、1本の帯状プライ9で形成される。
【0058】
本実施形態の巻き付け工程は、第1ショルダー巻付け工程、第1ミドル巻付け工程、クラウン巻付け工程、第2ミドル巻付け工程及び第2ショルダー巻付け工程の順で行われる。しかしながら、巻き付け工程は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、クラウン巻付け工程や第1ミドル巻付け工程から始められても良い。
【0059】
図7は、巻付け工程を概念的に示す模式図である。図7に示されるように、巻付け工程は、プロファイルデッキ31の外周面31aに、長尺の帯状プライ9を、直接又はカーカスプライ6Aを介して巻き付けている。
【0060】
本実施形態のプロファイルデッキ31は、半径方向外側に凸の円弧状に湾曲する外周面31aを有する周知構造の回転体である。プロファイルデッキ31は、例えば、セグメント状の複数の部材からなり、プロファイルデッキ31の内部に収容された膨張体35を半径方向に移動させることにより、外周面31aが拡縮径可能に構成されている。
【0061】
プロファイルデッキ31の両側には、例えば、周知構造の一対のカーカス保持装置36が配置されている。カーカス保持装置36は、軸方向に移動可能なリング状部材であり、支持軸37に装着されて、プロファイルデッキ31と同心かつ一体的に回転することができる。カーカス保持装置36は、ビードコア5とともに円筒状のカーカスプライ6Aを保持することができる。
【0062】
帯状プライ9は、例えば、周知のアプリケータ34によって、連続的にプロファイルデッキ31へと供給される。アプリケータ34は、例えば、周知の3次元移動装置(図示省略)等によって、プロファイルデッキ31の外周面31aに沿って、円弧状に往復動される。これにより、帯状プライ9は、外周面31a上に正確に巻き付けられる。
【0063】
先ず、第1ショルダー巻付け工程が行われる。第1ショルダー巻き付け工程で巻き付けられる帯状プライ9は、補強コード10が1本で形成されている。
【0064】
本実施形態の第1ショルダー巻付け工程は、アプリケータ34により、帯状プライ9を、一方のショルダー補強部7Sのタイヤ軸方向の一端側から他端側に向けて1周以上、螺旋状に巻き付ける。なお、第1ショルダー巻付け工程は、帯状プライ9を、一方のショルダー補強部7Sのタイヤ軸方向の他端側から一端側に向けて螺旋状に巻き付けても構わない。第1ショルダー巻付け工程では、帯状プライ9の巻付け始端と巻付け終端とをタイヤ周方向で略等しい位置とするのが望ましい。
【0065】
次に、第1ミドル巻付け工程が行われる。図8は、一方のミドル補強部7Mの拡大図である。図8(a)は、帯状プライ9の巻き付けが開始された直後のミドル補強部7Mの形成状態を示す平面図である。なお、図8(a)では、巻き付けられていない帯状プライ9が仮想線で示され、巻き付け途中の帯状プライ9が符号9fで示されている。図8(b)は、図8(a)よりも帯状プライ9の巻き付けが進んだミドル補強部7Mの形成状態を示す平面図である。図8(b)では、巻き付け途中の帯状プライ9が符号9hで示されている。
【0066】
図8(a)に示されるように、第1ミドル巻付け工程は、先ず、例えば、ミドル補強部7Mの内側端部Eiに、帯状プライ9の巻き付け開始時の巻き付け始端9dを固定する。なお、巻き付け始端9dは、ミドル補強部7Mの外側端部Eeや傾斜部13中に固定されてもよい。第1ミドル巻付け工程で巻き付けられる帯状プライ9は、補強コード10が複数本、例えば、3本で形成されている。
【0067】
その後、第1ミドル巻付け工程は、アプリケータ34により、帯状プライ9を、内側端部Eiと、外側端部Eeとの間を往復移動させながら回転しているプロファイルデッキ31の外周面31aに供給する。この工程では、図8に示されるように、帯状プライ9を、第1傾斜部15と、第2傾斜部16とを含むジグザグ状に巻き付けるとともに、帯状プライ9の側縁9s(図2に示す)が互いに接触しないように巻き付ける。
【0068】
本実施形態の第1ミドル巻付け工程では、帯状プライ9が第1傾斜部15、外側周方向部19、第2傾斜部16、内側周方向部18及び第1傾斜部15…の順で形成するように巻き付けられる。即ち、本実施形態では、内側周方向部18のいずれか一端には、第1傾斜部15が連なり、内側周方向部18の他端には、第2傾斜部16が連なる。また、本実施形態では、外側周方向部19のいずれか一端には、第2傾斜部16が連なり、外側周方向部19の他端には、第1傾斜部15が連なる。この工程により、帯状プライ9は、第1傾斜部15と第2傾斜部16とで囲まれた菱形状の空間部17を有する格子状に形成され得る。
【0069】
第1ミドル巻付け工程は、本実施形態では、内側周方向部18の一端と、この内側周方向部18とタイヤ周方向で隣接する内側周方向部18の他端とがタイヤ周方向で連なって形成されている。これにより、クラウン補強部7Cとミドル補強部7Mとの境界の部分の拘束力をさらに高めて、高速安定性能を、一層高める。また、本実施形態では、外側周方向部19の一端と、この外側周方向部19とタイヤ周方向で隣接する外側周方向部19の他端とがタイヤ周方向で連なって形成されている。これにより、旋回性能がさらに向上する。なお、第1ミドル巻付け工程は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、内側周方向部18の一端と、この内側周方向部18とタイヤ周方向で隣接する内側周方向部18の他端とがタイヤ周方向に離間して形成されていても良い(図示省略)。また、例えば、内側周方向部18の一端と、この内側周方向部18とタイヤ周方向で隣接する内側周方向部18の他端とがタイヤ半径方向で重なって形成されていても良い(図示省略)。
【0070】
第1ミドル巻付け工程では、帯状プライ9の巻き付け終了時の巻き付け終端9eが巻き付け始端9dにタイヤ周方向で連なって固定されるのが望ましい。
【0071】
内側周方向部18は、本実施形態では、第1傾斜部15及び第2傾斜部16によって、角部を形成するように直線状に連なっている。外側周方向部19も、本実施形態では、第1傾斜部15及び第2傾斜部16によって、角部を形成するように直線状に連なっている。
【0072】
次に、クラウン巻付け工程が行われる。クラウン巻付け工程は、本実施形態では、第1ミドル巻付け工程とは異なる1本の帯状プライ9を用いて行われる。クラウン巻き付け工程で巻き付けられる帯状プライ9は、補強コード10が1本で形成されている。
【0073】
本実施形態のクラウン巻付け工程は、アプリケータ34により、帯状プライ9を、クラウン補強部7Cのタイヤ軸方向のいずれか一端側から他端側に向けて1周以上、螺旋状に巻き付ける。なお、クラウン巻付け工程は、帯状プライ9を、クラウン補強部7Cのタイヤ軸方向の他端側から前記一端側に向けて螺旋状に巻き付けても構わない。クラウン巻付け工程では、帯状プライ9の巻付け始端と巻付け終端とをタイヤ周方向で略等しい位置とするのが望ましい。
【0074】
次に、第2ミドル巻付け工程及び第2ショルダー巻付け工程が行われる。第2ミドル巻付け工程は、本実施形態では、クラウン巻付け工程とは異なる1本の帯状プライ9を用いて行われる。第2ショルダー巻付け工程は、本実施形態では、第2ミドル巻付け工程とは異なる1本の帯状プライ9を用いて行われる。なお、第2ミドル巻付け工程は、第1ミドル巻付け工程と同様に行われるので、その詳細な説明が省略される。第2ショルダー巻付け工程は、第1ショルダー巻付け工程と同様に行われるので、その詳細な説明が省略される。このようにして、トレッド補強層7が形成される。
【0075】
図9は、他の実施形態の第1ミドル巻付け工程又は第2ミドル巻付け工程を概念的に示す模式図である。図9(a)は、帯状プライ9の巻き付けが開始された直後のミドル補強部7Mの形成状態を示す平面図である。なお、図9(a)では、巻き付けられていない帯状プライ9が仮想線で、巻き付け途中の帯状プライ9が符号9fで示されている。図9(b)は、図9(a)よりも帯状プライ9の巻き付けが進んだミドル補強部7Mの形成状態を示す平面図である。図9(b)では、巻き付け途中の帯状プライ9が符号9hで示されている。図9(b)には、帯状プライ9の巻き付け順が仮想線で示され、符号a、b、c及びdの順で巻き付けられる。図8の実施形態と同じ構成は、その説明が省略される。また、この実施形態でも、第2ミドル巻付け工程は、第1ミドル巻付け工程と同様となるので、その詳細な説明が省略される。この実施形態の第1ミドル巻き付け工程では、先ず、ミドル補強部7Mの外側端部Eeに、帯状プライ9の巻き付け開始時の巻き付け始端9dが固定される。なお、巻き付け始端9dは、ミドル補強部7Mの内側端部Eiや傾斜部13中に固定されてもよい。
【0076】
次に、アプリケータ34により、帯状プライ9を、内側端部Eiと、外側端部Eeとの間を往復移動させながら回転しているプロファイルデッキ31の外周面31aに供給する。この工程では、図9(a)に示されるように、先ず、帯状プライ9が、第1傾斜部15、内側周方向部18、第1傾斜部15、外側周方向部19、第1傾斜部15…の順で形成するように巻き付けられる。次に、図9(b)に示されるように、帯状プライ9が、第2傾斜部16、内側周方向部18、第2傾斜部16、外側周方向部19、第2傾斜部16…の順で形成するように巻き付けられる。即ち、本実施形態では、ショルダー補強部7Sは、内側周方向部18の両端には、タイヤ周方向に隣接する一対の第1傾斜部15、15が連なるか、又は、タイヤ周方向に隣接する一対の第2傾斜部16、16が連なって形成される。
【0077】
そして、複数の第1傾斜部15の側縁15sが互いに接触することなく配され、及び、複数の第2傾斜部16の側縁16sが互いに接触することなく配される。これにより、ショルダー補強部7Sは、複数の第1傾斜部15と複数の第2傾斜部16とで囲まれた菱形状の複数の空間部17を有する格子状となる。
【0078】
図10(a)は、第1傾斜部15、第2傾斜部16及び内側周方向部18の他の実施形態の接続態様を示す平面図である。この実施形態では、内側周方向部18は、円弧状となる円弧状部18yを含んでいる。この実施形態では、円弧状部18yと第1傾斜部15及び第2傾斜部16とが滑らかに連なって形成されている。この実施形態では、内側周方向部18は、円弧状部18yのみで形成されている。内側周方向部18は、タイヤ周方向に対する角度θ5が5度以下で形成されている。なお、外側周方向部19も、円弧状部(図示省略)によって第1傾斜部15及び第2傾斜部16と滑らかに連なって形成されても良い。これにより、帯状プライ9の曲げ応力が小さくなり、帯状プライ9の浮き上がりが抑制されるので、旋回性能が向上する。
【0079】
図10(b)は、第1傾斜部15と内側周方向部18との他の実施形態の接続態様を示す平面図である。この実施形態では、第1傾斜部15は、タイヤ周方向に対して5度よりも大きな角度θ1で略直線状に延びる主部15xと、主部15xに滑らかに連なりかつ円弧状に延びる円弧状部15yとを含んでいる。内側周方向部18は、第1傾斜部15よりも小さい角度θ5で略直線状に延びる主部18xと、主部18xに滑らかに連なりかつ円弧状に延びる円弧状部18yとを含んでいる。第1傾斜部15の主部15xと内側周方向部18の主部18xとは、これら円弧状部15y及び円弧状部18yを介して滑らかに連なっている。なお、このような接続態様は、第1傾斜部15と外側周方向部19との接続態様、第2傾斜部16と内側周方向部18の接続態様と、及び、第2傾斜部16と外側周方向部19との接続態様に用いられても良いのはいうまでもない(図示省略)。
【0080】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0081】
図1に示す基本構造及び図3に示す格子状のトレッド補強層を有する自動二輪車用タイヤが、表1の仕様に基づいて試作された。これらのタイヤについて、高速安定性能、旋回性能及び旋回力が評価された。各タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
帯状プライ(ミドル補強部):幅4.0mm、厚さ1.0mm、補強コード3本
帯状プライ(クラウン補強部・ショルダー補強部):幅2.5mm、厚さ1.0mm、補強コード1本
トレッド補強層の幅(Wt/TW):90%
比較例1は、ショルダー領域が空間部を有する格子状で形成されている。
【0082】
<高速安定性能・旋回性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量130ccの自動二輪車の全輪に装着された。テストライダーは、上記車両を乾燥アスファルト路面のテストコースを走行させた。このときの各試供タイヤのハンドル安定性、グリップ等に関する高速走行特性、及び、旋回走行の過渡特性、ハンドル操作性等に関する旋回走行特性がテストライダーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
タイヤサイズ:120/70ZR17(前輪) 190/55ZR17(後輪)
リム:17M/CxMT3.50(前輪)/17M/CxMT5.50(後輪)
内圧(全輪):250kPa
【0083】
<旋回力(コーナリングパワー)>
各試供タイヤを、下記条件下で、室内試験器を用いてコーナリングフォースを測定してコーナリングパワーを求めた。結果は、比較例1の値を100とする指数によって表示されている。数値が大きいほどコーナリングパワーが高く、良好である。コーナリングパワーは、スリップ角+1゜の時のコーナリングフォース値CF(+1゜)から、スリップ角−1゜の時のコーナリングフォース値CF(−1゜)を引いた値を2で割って得た次式で示すスリップ角1度当たりのコーナリングフォースである。
{CF(+1゜)−CF(−1゜)}/2
タイヤサイズ:190/55ZR17
内圧:200kPa
荷重:1.3kN
速度:30km/h
【表1】
【0084】
テストの結果、各実施例のタイヤは、比較例のタイヤに対し、バランスよく優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0085】
1 自動二輪車用タイヤ
7Sショルダー補強部
7Mミドル補強部
9 帯状プライ
13 傾斜部
14 周方向部
15 第1傾斜部
15s側縁
16 第2傾斜部
16s側縁
17 空間部
20 ショルダー螺旋状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10