特許第6981284号(P6981284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981284
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】硬さ試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   G01N3/42 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-16865(P2018-16865)
(22)【出願日】2018年2月2日
(65)【公開番号】特開2019-132783(P2019-132783A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 信行
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−181983(JP,A)
【文献】 特開2017−146294(JP,A)
【文献】 米国特許第04277174(US,A)
【文献】 特開2012−018313(JP,A)
【文献】 特開2017−227611(JP,A)
【文献】 実開昭51−003384(JP,U)
【文献】 特開2014−006270(JP,A)
【文献】 特開平03−230544(JP,A)
【文献】 特開2009−014602(JP,A)
【文献】 特開2010−256623(JP,A)
【文献】 特開2004−177732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して圧痕を形成するための圧子と、
前記試料を照明するための照明部と、
前記試料の表面の画像を取得するための光学系と、
前記光学系により取得された試料の画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された試料の画像を表示する表示部と、
前記撮影部により撮影された試料の画像から、前記圧痕の大きさを演算する画像処理部と、
を備えた硬さ試験機において、
前記照明部は、前記試料を白色光で照明する態様と、前記試料を単色光で照明する態様とを有しており、さらに、
前記照明部が有する2つの態様を切り替える照明切替部
を備えることを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記照明切替部が、前記表示部の画像を観察する操作を指示する入力を受けて前記照明部により前記試料を白色光で照明する態様に切り替え、前記圧痕の大きさを演算する操作を指示する入力を受けて前記照明部により前記試料を単色光で照明する態様に切り替える硬さ試験機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の硬さ試験機において、
前記照明部は、各々、R、G、Bの光を照射する3個のLEDを備え、前記試料を白色光で照明するときには前記3個のLEDを同時に点灯させ、前記試料を単色光で照明するときには前記3個のLEDのうちの一つを点灯させる硬さ試験機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の硬さ試験機において、
前記照明部は、白色光源と単色光源とを備え、前記試料を白色光で照明するときには前記白色光源を点灯させ、前記試料を単色光で照明するときには前記単色光源を点灯させる硬さ試験機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の硬さ試験機において、
前記単色光は、青色の光である硬さ試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料に形成された圧痕の大きさに基づいて試料の硬さを測定するための硬さ試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の硬さを評価するための試験として、ビッカース圧子を使用するビッカース硬さ試験(JIS Z 2244)や、ヌープ圧子を使用するヌープ硬さ試験(JIS Z 2251)がある。この2つの試験は、所定の試験力で圧子を試料に押し込んだときに形成された圧痕の対角線長さから圧痕の大きさを測定し、試料の硬さを算出する構成を有する。このような硬さ試験機においては、試料の表面状態は、レンズを介して目視により、あるいは、カメラにより撮影された画像をモニターに表示することにより、確認することができる構成となっている(特許文献1参照)。
【0003】
このような硬さ試験機においては、従来、試料に形成された圧痕の大きさを、顕微鏡を利用して目視により測定する構成が採用されていた。これに対して、近年、画像処理技術を利用して圧痕の大きさを演算する硬さ試験機も提案されている。特許文献2には、四角錐形状の圧子を所定の荷重のもとに試料表面に押し込み、得られた圧痕の大きさと押し込み荷重とから試料の硬度を求める押し込み型硬度計において、試料表面を照明する照明手段と、照明された試料表面を拡大光学系を介して撮像する撮像手段と、その撮像手段の出力を用いた画像処理により上記圧痕の大きさを求める画像処理手段と、求められた圧痕の大きさと圧子の押し込み荷重とから試料の硬度を算出する演算手段を備えるとともに、照明手段内に試料表面に対して複数本の補助線を写し出す補助線投影要素が設けられ、画像処理手段が撮像手段の出力に現れる補助線の圧痕による変曲点を繋ぐ線から当該圧痕の輪郭を求める硬さ試験機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−158478号公報
【特許文献2】特開2005−121416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、カメラにより撮影された画像をモニターに表示するときには、試料の画像をモノクロ画像として表示していた。しかしながら、試料の表面状態を観察するときには、試料の表面をカラー画像で観察することにより、試料の状況をより正確に確認することができる。このため、このような硬さ試験機において、試料の表面に白色光を照射し、試料の表面で反射した光をカラー画像として撮影および表示することが要請されている。
【0006】
一方、白色光には波長の異なる光が含まれていることから、レンズを有する光学系において色収差を生じ、あるいは、最小スポット形が異なることによる像の劣化など、複数の波長が混在することによる観察像の劣化が生じる。このような観察像の劣化は、目視により試料の表面を観察する際には問題とはならないが、この観察像を画像処理することにより圧痕の大きさを演算する場合には、その演算結果に誤差が生じることから、正確な硬さ試験が実行し得ないことになる。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、目視による試料の確認と画像処理による圧痕の大きさの演算とを両立することが可能な硬さ試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、試料に対して圧痕を形成するための圧子と、前記試料を照明するための照明部と、前記試料の表面の画像を取得するための光学系と、前記光学系により取得された試料の画像を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影された試料の画像を表示する表示部と、前記撮影部により撮影された試料の画像から、前記圧痕の大きさを演算する画像処理部と、を備えた硬さ試験機において、前記照明部は、前記試料を白色光で照明する態様と、前記試料を単色光で照明する態様とを有しており、さらに、前記照明部が有する2つの態様を切り替える照明切替部を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、前記照明切替部が、前記表示部の画像を観察する操作を指示する入力を受けて前記照明部により前記試料を白色光で照明する態様に切り替え、前記圧痕の大きさを演算する操作を指示する入力を受けて前記照明部により前記試料を単色光で照明する態様に切り替える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の硬さ試験機において、前記照明部は、各々、赤色、緑色、青色の光を照射する3個のLEDを備え、前記試料を白色光で照明するときには前記3個のLEDを同時に点灯させ、前記試料を単色光で照明するときには前記3個のLEDのうちの一つを点灯させる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の硬さ試験機において、前記照明部は、白色光源と単色光源とを備え、前記試料を白色光で照明するときには前記白色光源を点灯させ、前記試料を単色光で照明するときには前記単色光源を点灯させる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の硬さ試験機において、前記単色光は、青色の光である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、目視による確認時には白色光で試料を照明することにより試料を明確に確認することができるとともに、画像処理による圧痕の大きさの演算時においては、単色光で試料を照明することにより、圧痕の大きさを正確に確認することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、照明切替部の作用により、照明部による試料の照明態様を、試料の観察または圧痕の大きさの測定の各々に適したものに切り替えることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、3個のLEDと1個のLEDとを選択的に点灯させることにより、照明部による試料の照明態様を、試料の観察または圧痕の大きさの測定の各々に適したものに切り替えることが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、白色光源と単色光源とを選択的に点灯させることにより、照明部による試料の照明態様を、試料の観察または圧痕の大きさの測定の各々に適したものに切り替えることが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、波長の短い青色の光を使用することにより、平行光を絞るときの限界の径であるスポット形を小さくすることができ、解像度を向上させて圧痕の大きさをより正確に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明に係る硬さ試験機の正面図である。
図2】この発明に係る硬さ試験機の本体部1の右側面図である。
図3】ターレット40に支持された圧子および対物レンズの配置を示す説明図である。
図4】圧子41および圧子47に対して試験力を付与するための負荷機構と、試験片に形成された圧痕を観察するための光学系の概要図である。
図5】硬さ試験機において照明部71により白色光と単色光を照明する状態を説明する模式図である。
図6】照明部71の正面図である。
図7】この発明に係る硬さ試験機の主要な制御系を示すブロック図である。
図8】硬さ試験機において、第2実施形態に係る照明部71により白色光と単色光を照明する状態を説明する模式図である。
図9】第2実施形態に係る照明部71の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る硬さ試験機の正面図である。また、図2は、この発明に係る硬さ試験機の本体部1の右側面図である。
【0020】
この硬さ試験機は、本体部1に液晶ディスプレイなどのデジタル表示装置である表示部55が接続された構成を有する。本体部1は、試料100を載置するための載置台32と、載置台32の移動機構および入力・表示部39等から成る載置部52と、圧子41、対物レンズ42、43、ターレット40および接眼レンズ36等から成る圧痕観察部51と、載置部52と圧痕観察部51を接続する接続部53により構成されている。この接続部53は、図2に示すように、側面視において略C型の形状を有する。そして、この接続部53には、開口部54が形成されている。
【0021】
この載置部52は、テーブル31上部に配設された、試料100を載置するための載置台32を備える。載置台32は、試料100をX方向(図1における左右方向であり、図2における紙面に垂直な方向)およびY方向(図1における紙面に垂直な方向であり図2における左右方向)に移動させるためのものである。この載置台32には、試料100をX方向に移動させるためのマイクロメータ式のツマミ33と、試料100をY方向に移動させるためのマイクロメータ式のツマミ34とが付設されている。この載置台32はツマミ33、34を操作することにより移動する手動式のXYステージである。なお、載置台32は電動式のXYステージであってもよい。また、載置台32は、昇降ハンドル35の作用により昇降する構成となっている。
【0022】
テーブル31の正面には、入力・表示部39が配設されている。この入力・表示部39は、タッチパネル式の液晶表示パネルから構成され、各種データを入力するための入力キーを表示するとともに、試験条件や計測結果などの各種データを表示する。この入力・表示部39は、入力手段および表示手段として機能する。
【0023】
また、圧痕観察部51は、試料100の表面の拡大画像を目視により観察するための接眼レンズ36と、試料100の表面の拡大画像を取得するとともに、この拡大画像を表示部55に表示させるためのこの発明に係る撮影部としてのカメラ37を備える。接眼レンズ36の側方には、接眼レンズ36を利用して試料100を観察する際に、ゲージを移動させるために使用される一対のツマミ38が配設されている。カメラ37は撮影した試料100の表面の画像をデジタル画像データとして後述する画像処理部11に送信するとともに、表示部55に出力する。
【0024】
さらに、圧痕観察部51は、試料100に一定の試験力で押し込まれる圧子41、47と、これらの圧子41、47に対して試験力を付与するための負荷機構と、複数の対物レンズ42、43と、これらの圧子41および対物レンズ42、43等を支持して回転するターレット40(図1参照)とを備える。このターレット40は、ツマミ46を操作することにより、鉛直方向を向く回転軸Cを中心に回転する。
【0025】
上述した圧子41は、例えば、試料100に対してビッカース硬さ試験を実行するためのビッカース圧子であり、その先端は底辺が正方形の四角錐形状となっている。一方、上述した圧子47は、例えば、試料100に対してヌープ硬さ試験を実行するためのヌープ圧子であり、その先端は底辺が菱形の四角錐形状となっている。
【0026】
図3は、ターレット40に支持された対物レンズ等の配置を示す説明図である。
【0027】
ターレット40には、載置台32上に載置された試料100に押し込まれる圧子41、47が、後述する圧子ユニット90をターレット40に接続することにより配設されている。さらに、ターレット40には、5倍の対物レンズ42、10倍の対物レンズ43、40倍の対物レンズ44および100倍の対物レンズ45が配設されている。これらの圧子41、47および対物レンズ42、43、44、45は、ターレット40の回転軸Cを中心とした円上に配置されている。試料100に形成された圧痕のサイズにより、これらの対物レンズ42、43、44、45が選択的に使用される。
【0028】
図4は、圧子41および圧子47に対して試験力を付与するための負荷機構と、試料100に形成された圧痕を観察するための光学系の概要図である。なお、図4は、図3において一点鎖線で示す位置における断面を示している。
【0029】
この硬さ試験機は、圧痕観察部51に圧子41、47の先端を試料100に対して押し込むための試験力を圧子41、47に対して付与する負荷機構と、載置台32上に載置された試料100を照明するとともに圧痕を観察するための光学系とを備える。
【0030】
図4に示すように、ターレット40は、軸筒48がベアリング49を介して回転軸Cに接続されており、ツマミ46を操作することにより、あるいは、図示を省略したモータの駆動により、鉛直方向を向く回転軸Cを中心に回転する。図4においては、ターレット40の回転により圧子軸86を介して圧子47に試験力が与えられる場合、すなわち、圧子47が図1に示す試料100と対向する位置に配置されている場合を示している。圧子41に対して試験力を付与する場合には、圧子41が、図4に示す圧子47の位置に配置される。
【0031】
負荷機構は、水平方向を向く軸81を中心に揺動可能なレバー82を備える。レバー82には、中空の押圧部85が配設されている。この押圧部85は、レバー82の揺動に伴って、圧子47に接続された圧子軸86の端部に付設された当接部87を押圧する構成となっている。また、レバー82の一端には、このレバー82の揺動に伴って移動する圧子軸86の移動量を検出する差動トランス式の変位検出機構60が接続されている。なお、この変位検出機構60は、試料100の表面の検出に使用される。すなわち、圧子47を極めて小さい力で下降させたときの移動量を常に検出し、圧子47の移動が停止したときに圧子47の先端が試料100の表面と当接したと判断している。
【0032】
レバー82の他端には、永久磁石83が付設されている。この永久磁石83の外部には、電磁コイル84が配設されている。この永久磁石83と電磁コイル84とにより、ボイスコイルモータが構成される。このボイスコイルモータは、電磁式の負荷機構となり、電磁コイル84に流れる電流を制御することにより、圧子軸86の先端に配設された圧子47による試料100への試験力を制御することが可能となる。
【0033】
圧子軸86は、上下の板バネ61を、板バネ支持部62を介してターレット40に接続したロバーバル構造により支持されており、負荷機構により与えられた試験力に応じて昇降可能となっている。なお、板バネ支持部62はターレット40に吊設されている。この板バネ支持部62は、先端がターレット40に当接するネジ部材64を操作することにより、圧子軸86の傾斜を調整する傾き調整部材として機能する。
【0034】
圧子軸86の先端は、板バネ61および板バネ支持部62を収容するケーシング63を貫通しており、圧子ホルダ91を介して圧子軸86の先端に圧子47が接続される。なお、負荷機構による試験力を伝達する当接部87および圧子軸86、圧子軸86を支持する板バネ61および板バネ支持部62、圧子47を圧子軸86に接続する圧子ホルダ91は、圧子ユニット90を構成する。圧子軸86の先端に圧子41が配設される圧子ユニット90も、同様の構成を有する。
【0035】
光学系は、後程詳細に説明する照明部71と、照明部71からの光を水平方向に導く光筒72と、試料100を上から照明するために光筒72により導かれた光を押圧部85の中空部に導光するとともに、試料100の表面からの反射光をカメラ37側に透過させるハーフミラー73と、ハーフミラー73を透過した試料100の表面からの反射光を接眼レンズ36およびカメラ37に分割するハーフミラー74とを備える。対物レンズ42が図4における圧子軸86の位置、すなわち試料100に形成された圧痕の観察位置に配置された場合には、試料100の表面からの反射光が、対物レンズ42、押圧部85の中空部、ハーフミラー73、74を介して、接眼レンズ36およびカメラ37に入射する。これにより、接眼レンズ36により試料100の拡大像を観察することができるとともに、カメラ37により撮影した拡大像を表示部55に表示することができる。その他の対物レンズ43、44、45が圧痕の観察位置に配置された場合も、対物レンズ42による場合と同様である。
【0036】
図5は、上述した硬さ試験機において照明部71により白色光と単色光を照明する状態を説明する模式図である。また、図6は、照明部71の正面図である。なお、図5においては、対物レンズ42を使用した状態を示している。
【0037】
図6に示すように、照明部71は、光学系の光軸を中心に均等配置された3個のLED71R、71G、71Bを備える。LED71Rは、赤色の光を照射する。LED71Gは、緑色の光を照射する。LED71Bは、青色の光を照射する。3個のLED71R、71G、71Bが同時に光を照射したときには、加色混合により、試料100には白色の光が照射される。試料100の表面で反射した光は、カメラ37により撮影される。そして、この画像は表示部55にカラー画像として表示される。また、後述するように、試料100に形成された圧痕の大きさを演算する時には、青色の光を照射するLED71Bのみが点灯される。
【0038】
図7は、この発明に係る硬さ試験機の主要な制御系を示すブロック図である。
【0039】
この硬さ試験機は、装置全体を制御する制御部10を備える。この制御部10は、カメラ37により撮影された試料100の画像から、この試料100に形成された圧痕の大きさを演算する画像処理部11を備える。また、この制御部10は、表示部55の画像を観察するときには照明部71により試料100を白色光で照明し、圧痕の大きさを演算する時には照明部71により試料100を単色光(青色の光)で照明するための照明切替部12を備える。なお、制御部10は、硬さ試験機の本体に設置されるかわりに、パーソナルコンピュータ内に設置されてもよい。
【0040】
以上のような構成を有する硬さ試験機において、オペレータが表示部55あるいは接眼レンズ36を使用して試料100の表面を観察し、あるいは、圧痕が形成された後の圧痕の様子を観察するときには、入力・表示部39等を操作することにより、制御部10における照明切替部12が、照明部71における3個のLED71R、71G、71Bを同時に点灯させる。これにより、LED71Rから照射される赤色の光、LED71Gから照射される緑色の光およびLED71Bから照射される青色の光により、試料100は白色光で照明されることになり、オペレータは表示部55あるいは接眼レンズ36に表示される試料100のカラー画像を確認することが可能となる。このため、試料100の状態をより正確かつ明確に確認することが可能となる。
【0041】
一方、試料100に形成された圧痕の大きさを演算する時には、入力・表示部39等を操作することにより、制御部10における照明切替部12が、照明部71におけるLED71Bのみを点灯させる。これにより、試料100はLED71Bから照射される青色の光により照明される。
【0042】
試験片100に対しては、負荷機構により圧子41または圧子47が押し込まれ、圧痕が形成される。そして、ターレット40の回転により、対物レンズ42、43、44、45のいずれかが圧痕と対向する位置に配置される。この圧痕を含む試料100の領域には、LED71Bからの青色の光が照射され、その画像は、カメラ37により撮像され、画像処理部11に送信される。画像処理部11においては、圧痕を含む画像から、圧痕の大きさを演算する。
【0043】
このときには、試料100は青色の単色光で照明されていることから、光筒72や対物レンズ42、43、44、45から構成される光学系において色収差を生じたり、像の劣化を生じたりすることなく、圧痕を正確に認識することができる。このため、観察像を画像処理することにより圧痕の大きさを演算する場合に、その演算結果に誤差が生じることはなく、正確な硬さ試験を実行することが可能となる。
【0044】
このとき、3個のLED71R、71G、71Bのうち、青色の光を照射するLED71Bを使用している。このように波長の短い青色の光を使用することにより、平行光を絞るときの限界の径であるスポット形を小さくすることができ、解像度を向上させて圧痕の大きさをより正確に測定することが可能となる。
【0045】
なお、青色の光を照射するLED71Bを使用するかわりに、緑色の光を照射するLED71Gを使用してもよい。このときには、緑色の光はカメラ37による感度が高いことから、カメラ37として安価なものを使用した場合においても、圧痕を認識して、その大きさを演算することが可能となる。
【0046】
以上のように、この発明に係る硬さ試験機によれば、目視による確認時には白色光で試料100を照明することにより試料100を明確に確認することができるとともに、画像処理による圧痕の大きさの演算時においては、青色の光で試料100を照明することにより、圧痕の大きさを正確に確認することが可能となる。
【0047】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図8は、上述した硬さ試験機において、第2実施形態に係る照明部71により白色光と単色光を照明する状態を説明する模式図である。また、図9は、第2実施形態に係る照明部71の正面図である。なお、図8においては、対物レンズ42を使用した状態を示している。上述した実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
図8に示すように、第2実施形態に係る照明部71は、光学系の光軸に対応する位置に移動可能な光源71Wと、光学系の光軸に対応する位置に移動可能な第1実施形態と同様のLED71Bとを備える。なお、光源71Wは、白色光を照射するハロゲンランプや白色に発光するLEDランプ等の光源である。光源71WとLED71Bとは、図7に示す照明切替部12の制御により図8および図9に示す矢印の方向に移動可能であり、光学系の光軸に対応する位置に選択的に配置される。
【0049】
光源71Wから白色光を照射したときには、試料100の表面で反射した白色光は、カメラ37により撮影される。そして、この画像は表示部55にカラー画像として表示される。また、試料100に形成された圧痕の大きさを演算する時には、青色の光を照射するLED71Bが点灯される。
【0050】
以上のように、この発明の第2実施形態に係る照明部71を備えた硬さ試験機によっても、目視による確認時には光源71Wを点灯させて白色光で試料100を照明することにより試料100を明確に確認することができるとともに、画像処理による圧痕の大きさの演算時においては、LED71Bを点灯させて青色の光で試料100を照明することにより、圧痕の大きさを正確に確認することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 本体部
10 制御部
11 画像処理部
12 照明切替部
31 テーブル
32 載置台
36 接眼レンズ
37 カメラ
39 入力・表示部
40 ターレット
41 圧子
42 対物レンズ
43 対物レンズ
44 対物レンズ
45 対物レンズ
47 圧子
55 表示部
71 照明部
71R LED
71G LED
71B LED
71W 光源
100 試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9