特許第6981288号(P6981288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6981288-乗物用シート 図000002
  • 特許6981288-乗物用シート 図000003
  • 特許6981288-乗物用シート 図000004
  • 特許6981288-乗物用シート 図000005
  • 特許6981288-乗物用シート 図000006
  • 特許6981288-乗物用シート 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981288
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/897 20180101AFI20211202BHJP
【FI】
   B60N2/897
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-22813(P2018-22813)
(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公開番号】特開2019-137246(P2019-137246A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 隼人
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0280552(US,A1)
【文献】 特開2015−160477(JP,A)
【文献】 特開平09−140504(JP,A)
【文献】 特開昭63−153009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/80−2/897
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストステーが上側から差し込まれて装着されるヘッドレストサポートと、該ヘッドレストサポートが上側から差し込まれて装着されるシートバックのアッパフレームと、を有する乗物用シートであって、
前記アッパフレームが、互いにシート高さ方向に対面する天板部及び底板部を有し、
前記ヘッドレストサポートが、前記天板部に形成された天板孔と前記底板部に形成された底板孔とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部と、該差込み部から差込み方向とは交差する方向に張り出す張出し部と、を有し、
前記天板孔と前記底板孔とが、それぞれ、前記ヘッドレストサポートの前記差込み部をシート高さ方向に差し込み可能な差込み孔領域と、該差込み孔領域に差し込んだ前記ヘッドレストサポートの前記差込み部を前記差込み孔領域から差込み方向に延びる軸回りに旋回させて前記張出し部を前記差込み孔領域から外れた前記天板部と前記底板部との配置間領域に有効に介在させる有効介在位置へと移行可能な移行孔領域と、を有し、
前記張出し部が、前記有効介在位置にて前記天板部と前記底板部との間に作用する接近方向の変形移動を突張りにより抑制可能な突張り部位を有し、
前記張出し部の前記有効介在位置が、前記差込み部の真後ろの位置とされ、前記突張り部位が、前記有効介在位置においてシート幅方向に真っ直ぐ延びる後ろ正面向きの板形状を成す乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記ヘッドレストサポートが、前記差込み部を前記有効介在位置へと回転させることで前記アッパフレームに形成された嵌合溝に弾性的に嵌合して前記差込み部を回り止めする弾性嵌合部を有する乗物用シート。
【請求項3】
ヘッドレストステーが上側から差し込まれて装着されるヘッドレストサポートと、該ヘッドレストサポートが上側から差し込まれて装着されるシートバックのアッパフレームと、を有する乗物用シートであって、
前記アッパフレームが、互いにシート高さ方向に対面する天板部及び底板部を有し、
前記ヘッドレストサポートが、前記天板部に形成された天板孔と前記底板部に形成された底板孔とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部と、該差込み部から差込み方向とは交差する方向に張り出す張出し部と、を有し、
前記天板孔と前記底板孔とが、それぞれ、前記ヘッドレストサポートの前記差込み部をシート高さ方向に差し込み可能な差込み孔領域と、該差込み孔領域に差し込んだ前記ヘッドレストサポートの前記差込み部を前記差込み孔領域から差込み方向に延びる軸回りに旋回させて前記張出し部を前記差込み孔領域から外れた前記天板部と前記底板部との配置間領域に有効に介在させる有効介在位置へと移行可能な移行孔領域と、を有し、
前記張出し部が、前記有効介在位置にて前記天板部と前記底板部との間に作用する接近方向の変形移動を突張りにより抑制可能な突張り部位を有し、
前記張出し部の前記有効介在位置が、前記差込み部の後側位置に設定され、
前記ヘッドレストサポートが、前記差込み部を前記有効介在位置へと回転させることで前記アッパフレームに形成された嵌合溝に弾性的に嵌合して前記差込み部を回り止めする弾性嵌合部を有する乗物用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれかに記載の乗物用シートであって、
前記ヘッドレストサポートと前記アッパフレームとの間に、前記差込み部を前記差込み孔領域から前記有効介在位置とは反対方向へ回転させる動きを回転方向の当接により規制する誤組付け防止構造を有する乗物用シート。
【請求項5】
請求項4に記載の乗物用シートであって、
前記アッパフレームが、前記差込み孔領域の周縁からフランジ状に立ち上がるバーリング部を有し、
該バーリング部が、前記ヘッドレストサポートを回転方向に当接させる前記誤組付け防止構造としての規制面部と、前記差込み孔領域に差し込まれた前記差込み部の外周面に面当接される当接面部と、を有する乗物用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の乗物用シートであって、
前記張出し部が、前記差込み部を前記有効介在位置へと回転させる際の前記バーリング部の前記当接面部との干渉を避ける凹部位を有する乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。詳しくは、ヘッドレストステーが上側から差し込まれて装着されるヘッドレストサポートと、該ヘッドレストサポートが上側から差し込まれて装着されるシートバックのアッパフレームと、を有する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートにおいて、ヘッドレストがシートバックの上部に対して上側から差し込まれて装着された構成が知られている(特許文献1)。具体的には、ヘッドレストは、その下部から延びる左右一対のヘッドレストステーが、シートバックの上部に埋設された左右一対のヘッドレストサポート内にそれぞれ上側から差し込まれることで、これらヘッドレストサポートに位置固定された状態にロックされて保持されるようになっている。
【0003】
上述した左右一対のヘッドレストサポートは、シートバックのアッパフレームを成す上下一対の板部に対して、それぞれ上側から貫通した状態に差し込まれて結合されている。上記結合により、各ヘッドレストポートは、上述したアッパフレームの上下一対の板部によって、高さ方向に広い支持スパンで支えられた状態とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9539922号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、ヘッドレストに車両衝突等に伴う前後方向の過大な負荷が入力された際に、各ヘッドレストサポートを支える上下一対の板部に過大な曲げの負荷が入力されて、各板部による各ヘッドレストサポートの支持形態が崩れてしまうおそれがある。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ヘッドレストサポートを支えるシートバックのアッパフレームの構造強度を合理的に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の乗物用シートは次の手段をとる。
【0007】
第1の発明は、ヘッドレストステーが上側から差し込まれて装着されるヘッドレストサポートと、ヘッドレストサポートが上側から差し込まれて装着されるシートバックのアッパフレームと、を有する乗物用シートである。アッパフレームが、互いにシート高さ方向に対面する天板部及び底板部を有する。ヘッドレストサポートが、天板部に形成された天板孔と底板部に形成された底板孔とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部と、差込み部から差込み方向とは交差する方向に張り出す張出し部と、を有する。天板孔と底板孔とが、それぞれ、ヘッドレストサポートの差込み部をシート高さ方向に差し込み可能な差込み孔領域と、差込み孔領域に差し込んだヘッドレストサポートの差込み部を差込み方向とは交差する方向に移動させて張出し部を差込み孔領域から外れた天板部と底板部との配置間領域に有効に介在させる有効介在位置へと移行可能な移行孔領域と、を有する。張出し部が、有効介在位置にて天板部と底板部との間に作用する接近方向の変形移動を突張りにより抑制可能な突張り部位を有する。
【0008】
この第1の発明によれば、ヘッドレストサポートをアッパフレームに上側から差し込んで装着することで、ヘッドレストサポートに形成された張出し部をアッパフレームの天板部と底板部との配置間領域に有効に介在させて、これらの相対的な接近方向の変形移動を突張り部位の突張りにより抑制できるようになる。上記構成により、ヘッドレストサポートを支えるシートバックのアッパフレームの構造強度を合理的に高めることができる。
【0009】
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成とされているものである。張出し部の有効介在位置が、差込み部の後側位置に設定されている。
【0010】
この第2の発明によれば、ヘッドレストに前方側から過大な負荷が入力された際のアッパフレームの天板部と底板部との相対的な接近方向の変形移動を、差込み部の後側位置にある張出し部によって適切に抑制することができる。
【0011】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、次の構成とされているものである。移行孔領域が、ヘッドレストサポートの差込み部を差込み孔領域から差込み方向に延びる軸回りに旋回させて張出し部を有効介在位置へと移行させる孔形状とされている。
【0012】
この第3の発明によれば、移行孔領域がヘッドレストサポートの差込み部を差込み孔領域から有効介在位置へとスライドさせて移行させる孔形状とされた場合と比べて、移行孔領域を差込み孔領域と重複させて形成することができ、全体の孔形状を小さくすることができる。
【0013】
第4の発明は、上述した第3の発明において、次の構成とされているものである。ヘッドレストサポートが、差込み部を有効介在位置へと回転させることでアッパフレームに形成された嵌合溝に弾性的に嵌合して差込み部を回り止めする弾性嵌合部を有する。
【0014】
この第4の発明によれば、ヘッドレストサポートをアッパフレームに対して簡便に装着位置に固定した状態に取り付けることができる。
【0015】
第5の発明は、上述した第3又は第4の発明において、次の構成とされているものである。ヘッドレストサポートとアッパフレームとの間に、差込み部を差込み孔領域から有効介在位置とは反対方向へ回転させる動きを回転方向の当接により規制する誤組付け防止構造を有する。
【0016】
この第5の発明によれば、ヘッドレストサポートがアッパフレームに対して間違った位置に装着されることを適切に防止することができる。
【0017】
第6の発明は、上述した第5の発明において、次の構成とされているものである。アッパフレームが、差込み孔領域の周縁からフランジ状に立ち上がるバーリング部を有する。バーリング部が、ヘッドレストサポートを回転方向に当接させる誤組付け防止構造としての規制面部と、差込み孔領域に差し込まれた差込み部の外周面に面当接される当接面部と、を有する。
【0018】
この第6の発明によれば、ヘッドレストサポートの間違った方向への回転移動を規制する規制面部と、差込み孔領域に差し込まれた差込み部を外周側から面状に支持する当接面部と、を差込み孔領域の周縁に形成したバーリング部によって合理的に得ることができる。
【0019】
第7の発明は、上述した第6の発明において、次の構成とされているものである。張出し部が、差込み部を有効介在位置へと回転させる際のバーリング部の当接面部との干渉を避ける凹部位を有する。
【0020】
この第7の発明によれば、差込み孔領域の周縁にバーリング部が形成されていても、張出し部を凹部位によってバーリング部と干渉させることなくアッパフレームの天板部と底板部との間にシート高さ方向に広く延出させた状態に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1の乗物用シートの概略構成を表した斜視図である。
図2図1の背面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4】ヘッドレストサポートをアッパフレームに装着する前の状態を表した斜視図である。
図5図4からヘッドレストサポートをアッパフレームに差し込んだ状態を表した斜視図である。
図6図5からヘッドレストサポートを回転させてアッパフレームに装着した状態を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
《シート1の概略構成について》
始めに、実施例1のシート1(乗物用シート)の構成について、図1図6を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、シート1の左右方向を指し、「シート高さ方向」と示す場合には、シート1の上下方向を指すものとする。
【0024】
図1図2に示すように、本実施例のシート1は、自動車の前部側座席として構成されており、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となる不図示のシートクッションと、頭凭れ部となるヘッドレスト3と、を備えた構成とされている。上述したシートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ不図示のリクライナを介してシートクッションの左右両サイドの後端部に連結されている。
【0025】
ヘッドレスト3は、シートバック2の上面部に上側から差し込まれて位置固定された状態として設けられている。具体的には、ヘッドレスト3は、その下面部から垂下する左右一対の円管形状のヘッドレストステー3Aが、シートバック2の上面部に設けられた左右一対の筒状のヘッドレストサポート20の挿通孔20A内にそれぞれ上側から挿通されることで、これらヘッドレストサポート20に位置固定された状態にロックされて装着されている。
【0026】
より詳しくは、上述したヘッドレスト3は、その左右のヘッドレストステー3Aが対応する各側のヘッドレストサポート20の挿通孔20A内に上側から挿通されることにより、右側のヘッドレストステー3Aの外周部に形成された不図示の係止溝内に同側のヘッドレストサポート20の挿通孔20A内に突出する不図示の係止爪が弾性的に嵌り込んで係止されるようになっている。それにより、各側のヘッドレストステー3Aが対応する各側のヘッドレストサポート20に対して位置固定された状態となり、ヘッドレスト3がシートバック2の上面部に一体的に装着された状態となって保持される。
【0027】
上述した右側のヘッドレストサポート20の係止爪によるヘッドレストステー3Aの位置固定状態は、同側のヘッドレストサポート20の頭部21に設けられたツマミ21Aが使用者によって横側から押し込まれることにより解除されるようになっている。具体的には、上述したツマミ21Aが横側から押し込まれることにより、上述した不図示の係止爪が係止溝から外し出されて、ヘッドレストステー3Aの係止状態が解除されるようになっている。
【0028】
《ヘッドレストサポート20の構成について》
上述した各ヘッドレストサポート20は、内部に金属製の芯材が埋設された構造強度の高い樹脂部材によって形成されている。上述した各ヘッドレストサポート20は、それぞれ、台座形状の頭部21と、頭部21の中央箇所から円筒形状に垂下する差込み部22と、差込み部22と頭部21との間の箇所からフランジ状に張り出す係止座23と、差込み部22の外周箇所から張り出す長板状のリブ24と、差込み部22の下端側の外周箇所に形成された一対の嵌合爪25と、を有する構成とされている。ここで、上述したヘッドレストサポート20に形成されたリブ24がそれぞれ本発明の「張出し部」に相当し、一対の嵌合爪25がそれぞれ本発明の「弾性嵌合部」に相当する。
【0029】
そして、図3に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20には、それらの頭部21の中央箇所から差込み部22の下端側箇所までシート高さ方向にストレートに貫通する丸孔形状の挿通孔20Aが形成されている。上述した各ヘッドレストサポート20は、次のようにシートバック2の上部骨格を成すアッパフレーム10に上側から差し込まれて装着されている。すなわち、先ず、図4図5に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20の差込み部22を、上述したアッパフレーム10の左右2箇所に形成されたシート高さ方向に貫通する各天板孔11A及び底板孔12A内に上側から差し込む。
【0030】
詳しくは、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を、それらの外周箇所から張り出すリブ24が対応する各天板孔11Aに形成されたキー溝状のリブ受入孔領域11A2内に入り込む向きとなるように回転方向の向きを合わせた状態で対応する各天板孔11A及び底板孔12A内に上側から差し込む。上記差し込みにより、各ヘッドレストサポート20の差込み部22が、それらの係止板がアッパフレーム10の天板部11に当たって係止される位置まで、対応する天板孔11A及び底板孔12A内に上側から差し込まれる。それにより、各ヘッドレストサポート20の差込み部22は、それらのリブ24がアッパフレーム10の天板部11と底板部12との間の高さ領域内に位置付けられた状態となる。
【0031】
次に、図6に示すように、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を、対応する各天板孔11A及び底板孔12A内で旋回させる形に回転させ、それらの外周箇所から張り出す各リブ24を各差込み部22の真後ろへ向けて移動させる。これにより、各ヘッドレストサポート20の差込み部22の下端側の外周箇所に形成された一対の嵌合爪25が、対応する底板孔12Aの周縁からフランジ状に垂下する形に延びるバーリング部12Bの一対の嵌合溝12B2内にそれぞれ弾性的に嵌り込んで係止される(図3参照)。その結果、各ヘッドレストサポート20の差込み方向、引抜き方向及び回転方向の双方向の移動がそれぞれ規制された状態となってロックされ、各ヘッドレストサポート20がアッパフレーム10に一体的に装着された状態となる。
【0032】
そして、上記組み付けにより、各ヘッドレストサポート20は、図3に示すように、それらの差込み部22から張り出す各リブ24が、アッパフレーム10の天板部11と底板部12との配置間領域にそれぞれ有効に介在する有効介在位置Pへと移行された状態となる。それにより、各ヘッドレストサポート20は、車両の後部衝突の発生時に、ヘッドレスト3に着座者の頭部21が車両前方から強く押し当てられるような過大な負荷が入力されて、各ヘッドレストサポート20を支えるアッパフレーム10の天板部11と底板部12とに過大な曲げの負荷が入力されても、上述した各リブ24の天板部11と底板部12との間に張り出す突張り部位24Aがシート高さ方向に突張る形に張り出して、これらの相対的な接近方向の変形移動を抑止して、アッパフレーム10による各ヘッドレストサポート20の支持形態を崩しにくくすることができるようになっている。
【0033】
《アッパフレーム10の構成について》
ところで、上述したアッパフレーム10は、図1図2に示すように、1枚の金属板がシート幅方向に長尺状に延びる立体形状にプレス加工されて形成されている。具体的には、アッパフレーム10は、図3に示すように、互いにシート高さ方向に対面する天板部11及び底板部12と、これらの前縁部間を繋ぐ立板状の前板部13と、を有する断面略コ字状の曲げ板形状に形成されている。
【0034】
図4に示すように、上述した天板部11には、その左右2箇所の位置に、シート高さ方向に略丸孔形状に貫通する天板孔11Aが形成されている。また、底板部12にも、上述した各天板孔11Aとシート高さ方向に対向する各位置に、シート高さ方向に丸孔形状に貫通する底板孔12Aが形成されている。上述した各天板孔11Aは、詳しくは、丸孔形状に貫通した丸孔領域11A1と、丸孔領域11A1のシート幅方向の内側領域から孔形状をキー溝状に拡張させるリブ受入孔領域11A2と、を有する孔形状に形成されている。また、各底板孔12Aは、丸孔形状に貫通した丸孔領域12A1を有する孔形状に形成されている。
【0035】
上述した各天板孔11Aの丸孔領域11A1は、図3図5に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20の円筒状の差込み部22を上側から差し込んで外周側からあてがえた状態に支持することのできる内径寸法を有し、図6に示すように、各丸孔領域11A1内に差し込んだ各ヘッドレストサポート20の差込み部22を旋回方向に回転させることのできる正円形状に形成されている。
【0036】
また、各天板孔11Aのリブ受入孔領域11A2は、図4図5に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20の差込み部22から径方向に張り出す各リブ24をそれらの孔領域上に位置合わせした状態から、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を各天板孔11Aの丸孔領域11A1内に係止座23が天板部11上に当たる位置まで差し込むことにより、各リブ24をそれらの孔領域内に通して下側へと抜けさせることのできる角孔形状に形成されている。
【0037】
また、上述した各底板孔12Aの丸孔領域12A1も、図3図5に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20の円筒状の差込み部22を上側から差し込んで外周側からあてがえた状態に支持することのできる内径寸法を有し、図6に示すように、各丸孔領域12A1内に差し込んだ各ヘッドレストサポート20の差込み部22を旋回方向に回転させることのできる正円形状に形成されている。ここで、上述した各天板孔11Aの丸孔領域11A1とリブ受入孔領域11A2とを合わせた孔領域が本発明の「差込み孔領域」に相当する。また、上記各天板孔11Aの丸孔領域11A1は、更に、本発明の「移行孔領域」にも相当する。また、各底板孔12Aの丸孔領域12A1が本発明の「差込孔領域」及び「移行孔領域」に相当する。
【0038】
図4に示すように、上述した天板部11の各天板孔11Aの周縁には、各周縁に沿ってフランジ状に形状を垂下させる略円筒形状のバーリング部11Bがバーリング加工によって形成されている。これらバーリング部11Bは、各天板孔11Aの丸孔領域11A1の周縁に沿って略円筒状に形状を垂下させる当接面部11B1と、各天板孔11Aのリブ受入孔領域11A2における角孔形状の前縁部分から平板状に形状を垂下させる規制面部11B2と、を有する形に形成されている。
【0039】
上述した各バーリング部11Bの当接面部11B1は、各天板孔11Aの丸孔領域11A1内に差し込まれた各ヘッドレストサポート20の差込み部22に外周側から面当接した状態に当てられるようになっている。上記面当接により、各バーリング部11Bの当接面部11B1は、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を外周側からシート高さ方向に広く面をあてがえた状態として支持することができるようになっている。
【0040】
また、上述した各バーリング部11Bの規制面部11B2は、上述した各天板孔11Aの丸孔領域11A1内に各ヘッドレストサポート20の差込み部22が差し込まれた後、各差込み部22を旋回方向に回転させる際に、誤って各リブ24を前側へ移す方向に回転させるといった誤操作が生じないよう、そのような操作が行われた際に各リブ24を回転方向に当接させて同方向の移動を規制する構成となっている(誤組付け防止構造B)。
【0041】
ここで、上述した各リブ24は、図3に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20の差込み部22の外周箇所から各差込み部22と横並び状に差込み方向に長く延びる長板形状に張り出した形状とされている。そして、各リブ24は、上記張り出した先の各上端箇所に上側に突出する凸部位24Bを有した形状とされている。上述した各凸部位24Bは、図4に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20の差込み部22を各天板孔11Aの丸孔領域11A1内に係止座23の係止位置まで差し込んだ際に、各天板孔11Aを下側へと通り抜けて上述した各バーリング部11Bの規制面部11B2とは回転方向に対面するが、各バーリング部11Bの当接面部11B1とは径方向に外れた配置とされて回転方向には対面しない関係となる構成とされている。
【0042】
上記構成により、各リブ24は、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を各天板孔11Aの丸孔領域11A1内に係止座23の係止位置まで差し込んだ後、各差込み部22を各リブ24を前側へ移す誤った回転方向に回そうとしても、上述した各凸部位24Bが各バーリング部11Bの規制面部11B2と当接して同方向の回転移動を規制することができるようになっている。また、各リブ24は、上記差し込んだ後、各差込み部22を各リブ24を後側へ移す正しい回転方向に回す時には、上述した各凸部位24Bを各バーリング部11Bの規制面部11B2のない開口11B3側へと移動させて、各凸部位24Bを各当接面部11B1の外周側に通す形で各差込み部22との間の凹部位24C内に各当接面部11B1を通しながら、これら当接面部11B1との干渉を生じることなく図3で前述した有効介在位置Pへと移動されるようになっている。
【0043】
上記構成により、上記各リブ24は、上述した有効介在位置Pにおいて、それらの凸部位24Bを上述した各バーリング部11Bの当接面部11B1とシート高さ方向において重なる高さ位置まで上方側に張り出させて天板部11に接近させた状態として、それらの天板部11と底板部12との間に張り出す突張り部位24Aを天板部11と底板部12との間でシート高さ方向に広く張り出させた状態として設けられるようになっている。
【0044】
また、図4に示すように、上述した底板部12の各底板孔12Aの周縁にも、各周縁に沿ってフランジ状に形状を垂下させる略円筒形状のバーリング部12Bがバーリング加工によって形成されている。これらバーリング部12Bは、各底板孔12Aの丸孔領域12A1の周縁に沿って略円筒状に形状を垂下させる当接面部12B1と、これら当接面部12B1の前後2箇所の下端側部位に凹状に切り抜かれる形に形成された嵌合溝12B2と、を有する形に形成されている。
【0045】
上述した各バーリング部12Bの当接面部12B1は、各底板孔12Aの丸孔領域12A1内に差し込まれた各ヘッドレストサポート20の差込み部22に外周側から面当接した状態に当てられるようになっている。上記面当接により、各バーリング部12Bの当接面部12B1は、各ヘッドレストサポート20の差込み部22を外周側からシート高さ方向に広く面をあてがえた状態として支持することができるようになっている。
【0046】
また、上述した各バーリング部12Bの嵌合溝12B2は、上述した各底板孔12Aの丸孔領域12A1内に各ヘッドレストサポート20の差込み部22が係止位置まで差し込まれた後、各差込み部22を図3で前述した有効介在位置Pへと旋回させることにより、各ヘッドレストサポート20の差込み部22の下端側の外周箇所に形成された一対の嵌合爪25がそれぞれ弾性的に嵌り込んで係止される部位となっている。
【0047】
詳しくは、図4に示すように、上述した各ヘッドレストサポート20の差込み部22の下端側の外周箇所に形成された一対の嵌合爪25は、各ヘッドレストサポート20の差込み部22が各底板孔12Aの丸孔領域12A1内に係止位置まで差し込まれることで、各底板孔12Aから垂下するバーリング部12Bの当接面部12B1との当たりにより径方向の内側に弾性的に押し窄められるようになっている。そして、上記一対の各嵌合爪25は、上述した各ヘッドレストサポート20の差込み部22が図3で前述した有効介在位置Pへと旋回方向に回されることで、上述した各嵌合溝12B2と回転方向に位置合わせされて、それらの弾性的な復元作用により各嵌合溝12B2内に嵌り込むようになっている。
【0048】
上記各嵌合爪25の各嵌合溝12B2内への嵌り込みにより、各嵌合爪25が各嵌合溝12B2に対して、回転方向の双方向に当接すると共に、差込み方向とは反対方向へも当接した状態となる。それにより、各ヘッドレストサポート20の差込み部22が、各バーリング部12Bに対して旋回方向に回り止めされると共に、差込み方向とは反対方向への引き抜き移動も規制されて、各ヘッドレストサポート20の差込み部22がアッパフレーム10に一体的に装着された状態となる。
【0049】
《まとめ》
以上をまとめると、本実施例のシート1は次のような構成となっている。すなわち、ヘッドレストステー(3A)が上側から差し込まれて装着されるヘッドレストサポート(20)と、ヘッドレストサポート(20)が上側から差し込まれて装着されるシートバック(2)のアッパフレーム(10)と、を有する乗物用シート(1)である。アッパフレーム(10)が、互いにシート高さ方向に対面する天板部(11)及び底板部(12)を有する。ヘッドレストサポート(20)が、天板部(11)に形成された天板孔(11A)と底板部(12)に形成された底板孔(12A)とにシート高さ方向に貫通して差し込まれる差込み部(22)と、差込み部(22)から差込み方向とは交差する方向(径方向)に張り出す張出し部(24)と、を有する。
【0050】
天板孔(11A)と底板孔(12A)とが、それぞれ、ヘッドレストサポート(20)の差込み部(22)をシート高さ方向に差し込み可能な差込み孔領域(11A1,11A2,12A1)と、差込み孔領域(11A1,11A2,12A1)に差し込んだヘッドレストサポート(20)の差込み部(22)を差込み方向とは交差する方向(旋回方向)に移動させて張出し部(24)を差込み孔領域(11A1,11A2,12A1)から外れた天板部(11)と底板部(12)との配置間領域に有効に介在させる有効介在位置(P)へと移行可能な移行孔領域(11A1,12A1)と、を有する。張出し部(24)が、有効介在位置(P)にて天板部(11)と底板部(12)との間に作用する接近方向の変形移動を突張りにより抑制可能な突張り部位(24A)を有する。
【0051】
このような構成とされていることにより、ヘッドレストサポート(20)をアッパフレーム(10)に上側から差し込んで装着することで、ヘッドレストサポート(20)に形成された張出し部(24)をアッパフレーム(10)の天板部(11)と底板部(12)との配置間領域に有効に介在させて、これらの相対的な接近方向の変形移動を突張り部位(24A)の突張りにより抑制できるようになる。上記構成により、ヘッドレストサポート(20)を支えるシートバック(2)のアッパフレーム(10)の構造強度を合理的に高めることができる。
【0052】
また、張出し部(24)の有効介在位置(P)が、差込み部(22)の後側位置に設定されている。このような構成とされていることにより、ヘッドレスト(3)に前方側から過大な負荷が入力された際のアッパフレーム(10)の天板部(11)と底板部(12)との相対的な接近方向の変形移動を、差込み部(22)の後側位置にある張出し部(24)によって適切に抑制することができる。
【0053】
また、移行孔領域(11A1,12A1)が、ヘッドレストサポート(20)の差込み部(22)を差込み孔領域(11A1,11A2,12A1)から差込み方向に延びる軸回りに旋回させて張出し部(24)を有効介在位置(P)へと移行させる孔形状とされている。このような構成とされていることにより、移行孔領域(11A1,12A1)がヘッドレストサポート(20)の差込み部(22)を差込み孔領域(11A1,11A2,12A1)から有効介在位置(P)へとスライドさせて移行させる孔形状とされた場合と比べて、移行孔領域(11A1,12A1)を差込み孔領域(11A1,12A1)と重複させて形成することができ、全体の孔形状を小さくすることができる。
【0054】
また、ヘッドレストサポート(20)が、差込み部(22)を有効介在位置(P)へと回転させることでアッパフレーム(10)に形成された嵌合溝(12B2)に弾性的に嵌合して差込み部(22)を回り止めする弾性嵌合部(25)を有する。このような構成とされていることにより、ヘッドレストサポート(20)をアッパフレーム(10)に対して簡便に装着位置に固定した状態に取り付けることができる。
【0055】
また、ヘッドレストサポート(20)とアッパフレーム(10)との間に、差込み部(22)を差込み孔領域(11A1,11A2,12A1)から有効介在位置(P)とは反対方向へ回転させる動きを回転方向の当接により規制する誤組付け防止構造(B)を有する。このような構成とされていることにより、ヘッドレストサポート(20)がアッパフレーム(10)に対して間違った位置に装着されることを適切に防止することができる。
【0056】
また、アッパフレーム(10)が、差込み孔領域(11A1,11A2)の周縁からフランジ状に立ち上がるバーリング部(11B)を有する。バーリング部(11B)が、ヘッドレストサポート(20)を回転方向に当接させる誤組付け防止構造(B)としての規制面部(11B2)と、差込み孔領域(11A1)に差し込まれた差込み部(22)の外周面に面当接される当接面部(11B1)と、を有する。
【0057】
このような構成とされていることにより、ヘッドレストサポート(20)の間違った方向への回転移動を規制する規制面部(11B2)と、差込み孔領域(11A1)に差し込まれた差込み部(22)を外周側から面状に支持する当接面部(11B1)と、を差込み孔領域(11A1,11A2)の周縁に形成したバーリング部(11B)によって合理的に得ることができる。
【0058】
また、張出し部(24)が、差込み部(22)を有効介在位置(P)へと回転させる際のバーリング部(11B)の当接面部(11B1)との干渉を避ける凹部位(24C)を有する。このような構成とされていることにより、差込み孔領域(11A1,11A2)の周縁にバーリング部(11B)が形成されていても、張出し部(24)を凹部位(24C)によってバーリング部(11B)と干渉させることなくアッパフレーム(10)の天板部(11)と底板部(12)との間にシート高さ方向に広く延出させた状態に設けることができる。
【0059】
《その他の実施例について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の乗物用シートの構成は、自動車用のシートの他、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートや、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
【0060】
また、差込み孔領域に差し込んだヘッドレストサポートの差込み部を差込み方向とは交差する方向に移動させて張出し部を差込み孔領域から外れた天板部と底板部との配置間領域に有効に介在する有効介在位置へと移行させられるようにする移行孔領域は、差込み孔領域と連なって差込み部を横スライド或いは前後スライドさせて有効介在位置へと移行させる構成であってもよい。
【0061】
また、張出し部の有効介在位置は、差込み部の後側位置の他、差込み部の左右側の位置や前側の位置であってもよい。また、張出し部は、差込み部の前後左右の複数箇所から張り出す形に設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 シート(乗物用シート)
2 シートバック
3 ヘッドレスト
3A ヘッドレストステー
10 アッパフレーム
11 天板部
11A 天板孔
11A1 丸孔領域(差込み孔領域、移行孔領域)
11A2 リブ受入孔領域(差込み孔領域)
11B バーリング部
11B1 当接面部
11B2 規制面部
11B3 開口
12 底板部
12A 底板孔
12A1 丸孔領域(差込み孔領域、移行孔領域)
12B バーリング部
12B1 当接面部
12B2 嵌合溝
13 前板部
20 ヘッドレストサポート
20A 挿通孔
21 頭部
21A ツマミ
22 差込み部
23 係止座
24 リブ(張出し部)
24A 突張り部位
24B 凸部位
24C 凹部位
25 嵌合爪(弾性嵌合部)
B 誤組付け防止構造
P 有効介在位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6