【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「環境電波発電向けナノワイヤ半導体デバイスの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護層は、GaN、GaP、GaAs、InP、及びInGaPのいずれか1つからなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が検討した事項について説明する。
【0019】
図1は、その検討に使用した化合物半導体装置の断面図である。
【0020】
この化合物半導体装置1は、前述のナノワイヤ型のバルクを採用したバックワードダイオードであり、半絶縁性のGaAs基板2の上にコンタクト層3及びマスク層4がこの順に形成される。
【0021】
このうち、コンタクト層3は、半導体に不純物が高濃度にドープされた高濃度n型のGaAs層である。
【0022】
また、マスク層4は、コンタクト層3の一部が露出する開口4aが設けられたSiO
2層であり、後述するナノワイヤをコンタクト層3の上に選択的に形成するときのマスクとなる。
【0023】
その開口4a内のコンタクト層3からナノワイヤ5が上に向かって伸びている。このナノワイヤ5はn型半導体のn型下部6とp型半導体のp型上部7を有し、このn型下部6とp型上部7が接合したpn接合を形成する。
【0024】
この例では、n型下部6としてn型不純物がドープされたn型InAsの線状体を形成し、p型上部7としてp型不純物が高濃度にドープされた高濃度p型GaAsSbの線状体を形成する。
【0025】
そのナノワイヤ5の側面5aは、外部からの水分の進入を防止する水分防止絶縁層8で覆われる。この例では、水分防止絶縁層8としてAl
2O
3層を形成する。
【0026】
また、コンタクト層3の上には金属のカソード電極9が形成される。このカソード電極9は、熱処理によってコンタクト層3にオーミック接触する。
【0027】
そのカソード電極9を含めGaAs基板2の上側全面には、被覆絶縁膜10としてBCB(benzocyclobutene)のような樹脂膜が形成されており、ナノワイヤ5はこの被覆絶縁膜10に埋め込まれている。
【0028】
被覆絶縁膜10及びナノワイヤ5の上には金属のアノード電極11が形成される。このアノード電極11は、熱処理によってp型上部7にオーミック接触する。
【0029】
また、被覆絶縁膜10にはコンタクトホール10aが形成され、このコンタクトホール10a内及び被覆絶縁膜10の上に引き出し配線12が形成される。この引き出し電極12はカソード電極9に接続されている。
【0030】
このような化合物半導体装置1において、ナノワイヤ5に逆方向の電圧を印加したときには、p型上部7の価電子帯の電子が、バンド間トンネリングによってn型下部6の伝導帯に輸送されて、電流が流れる。
【0031】
一方、ナノワイヤ5に順方向の電圧を印加したときには、ポテンシャル障壁によってn型下部6の伝導帯の電子はp型上部7の価電子帯に移動できず、またp型上部7の価電子帯の正孔もn型下部6の伝導帯に移動できず、電流は流れない。
【0032】
このような化合物半導体装置1によれば、ナノワイヤ5の側面5aが水分防止絶縁層8で覆われているので、水分によるpn接合の劣化を抑えることができ、長期間の使用が可能となる。
【0033】
しかし、このような化合物半導体装置1では、ナノワイヤ5の側面5aを流れるリーク電流が発生することがある。その理由は以下のように考えられる。
【0034】
ナノワイヤ5のn型下部6に含まれるInやp型上部7に含まれるSbは、酸化して酸化物となったときでも導電性を示す。
【0035】
一方、ナノワイヤ5の側面5aを覆っている水分防止絶縁層8は、ナノレベルの幅のナノワイヤ5にナノレベルの厚さの薄層を形成することが可能なALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成される。
【0036】
しかも、そのALD法は、ナノワイヤ5へのダメージを抑えるためにプラズマを使用しないALD法が採用されることがある。
【0037】
このプラズマを使用しないALD法で水分防止絶縁層8としてAl
3O
2層を形成する場合には、原料ガスとしてAlを含む有機金属ガスと、酸化剤として水蒸気(H
2O)を使用し、基板温度を高温にする。
【0038】
このため、水分防止絶縁層8を形成しているときに、ナノワイヤ5の側面5aのうちのn型下部6の側面6aにInの導電性の酸化物が形成され、またp型上部7の側面7aにSbの導電性の酸化物が形成されてしまう。
【0039】
その結果、これらの導電性の酸化物によってn型下部6とp型上部7が電気的に接続されてしまう。
【0040】
これにより、ナノワイヤ5に順方向の電圧を印加したときに、ナノワイヤ5の内部には電流が流れないにもかかわらず、その側面5aにはリーク電流が流れてしまう。
【0041】
そして、このリーク電流が生じると、ナノワイヤ5に逆方向の電圧を印加したときに流れた電流の一部がリーク電流によって相殺されてしまうので、ダイオードの検波感度や電力変換効率が低下することになる。
【0042】
特に、ナノワイヤ型のpn接合は、その細さからメサ型のpn接合と比べると側面を流れるリーク電流の影響が大きい。その理由は以下の通りである。
【0043】
図2(a)は、メサ型のpn接合の構造を示す斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)のI−I線における断面図である。また、
図3(a)は、ナノワイヤ型のpn接合の構造を示す斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)のII−II線における断面図である。
【0044】
図2(a)に示すように、メサ型のpn接合はn型下部16とp型上部17が接合したものであり、pn接合面15bの幅dmは1μm〜10μm程度である。
【0045】
一方、
図3(a)に示すように、ナノワイヤ型のpn接合は前述のn型下部6とp型上部7が接合したものであり、pn接合面5bの幅dwは100nm(=0.1μm)以下である。
【0046】
このように、ナノワイヤ型のpn接合の幅dwは、メサ型のバルクの幅dmの1/10〜1/100程度であり、メサ型のpn接合に比べて細い。
【0047】
ところで、pn接合の内部を流れる電流の大きさは、電流密度が一定であると仮定すると、基板面に平行な面で切断した断面の面積によって決まる。
【0048】
一方、pn接合の側面を流れるリーク電流の大きさは、単位長さ当たりのリーク電流の大きさが一定であると仮定すると、側面の周囲の長さによって決まる。
【0049】
ここで、pn接合の基板面に平行な面で切断した断面の形状が円形であると仮定すると、
図2(b)に示すように、メサ型のpn接合では、pn接合面15bの断面積Smはπdm
2/4となり、またpn接合面15bの周囲の長さLmはπdmとなる。
【0050】
一方、
図3(b)に示すように、ナノワイヤ型のpn接合では、pn接合面5bの断面積Swはπdw
2/4となり、またpn接合面5bの周囲の長さLwはπdwとなる。
【0051】
そうすると、pn接合の断面積Sに対する周囲の長さLの割合をL/Sとしたときに、ナノワイヤ型のpn接合のLw/Sw(=4/dw)は、メサ型のpn接合のLm/Sm(=4/dm)の10倍〜100倍程度となる。
【0052】
このことから、ナノワイヤ型のpn接合は、内部を流れる電流に対する側面を流れるリーク電流の割合がメサ型のpn接合よりも10倍〜100倍程度大きく、側面を流れるリーク電流の影響がかなり大きいといえる。
【0053】
なお、水分防止絶縁層8として、Al
3O
2層の代わりに、Al
3O
2層と同様の水分防止機能を有するSiO
2層を形成することも考えられる。
【0054】
しかしながら、プラズマを使用しないALD法によってSiO
2層を形成する場合には、酸化剤としてオゾン(O
3)が使用され、基板温度が高温になる。このため、この場合にも、ナノワイヤ5の側面5aに導電性の酸化物が形成されてしまう。
【0055】
このような知見に鑑み、本実施形態では、以下のようにしてナノワイヤ型のpn接合の側面を流れるリーク電流の発生を抑制する。
【0056】
(第1実施形態)
本実施形態に係る化合物半導体装置について、その製造方法を追いながら説明する。
【0057】
図4〜
図23は、本実施形態に係る化合物半導体装置の製造途中の断面図である。
【0058】
本実施形態では、以下のようにしてナノワイヤ型のpn接合を有するバックワードダイオードを備えた化合物半導体装置を製造する。
【0059】
まず、
図4(a)に示すように、基板20として半絶縁性のGaAs基板を用意する。そのGaAs基板の表面の面方位は、表面にV族原子のAsのみが並んだ(111)B面とする。
【0060】
なお、用意する基板20は特に限定されない。例えば、InP基板やGaSb基板などの化合物半導体基板や、Si基板でもよい。
【0061】
また、その基板20は導電性基板でもよい。但し、化合物半導体装置で高周波の電波を使用することを考慮すると、基板20はキャリアが出にくい半絶縁性基板であることが好ましい。
【0062】
そして、その基板20の上にMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法でコンタクト層21としてGaAs層を200nmの厚さに形成する。
【0063】
そのGaAs層を形成するための成長ガスは特に限定されない。例えば、Gaの原料ガスとしてトリエチルガリウム((C
2H
5)
3Ga)を使用し、Asの原料ガスとしてアルシン(AsH
3)を使用し得る。
【0064】
また、前述のGaAs用の成長ガスにシランやジシラン等のシラン系のガスを添加することにより、GaAs層にn型不純物としてSiをドープする。更に、そのシラン系のガスの流量を調節することにより、本実施形態ではGaAs層におけるSiのドープ量を5×10
18cm
−2程度とする。
【0065】
次に、
図4(b)に示すように、基板20の上側全面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法でマスク層22としてSiO
2層を50nm程度の厚さに形成する。
【0066】
次に、
図5(a)に示すように、マスク層22の上に電子線レジストを塗布し、それを電子線によって露光した後に現像することにより、平面視で円形の開口23aを備えた第1のレジスト層23を形成する。
【0067】
続いて、
図5(b)に示すように、第1のレジスト層23の開口23aを通じてマスク層22をドライエッチングすることにより、コンタクト層21の一部が露出する100nm程度の幅の円形の開口22aをマスク層22に形成する。
【0068】
そのドライエッチングで使用するエッチングガスは特に限定されないが、例えば、CF
4のようなフッ素を含むガスをエッチングガスとして使用し得る。
【0069】
次に、
図6(a)に示すように、第1のレジスト層23の上と、マスク層22の開口22a内のコンタクト層21の上に、蒸着法によってAu層24を30nm程度の厚さで形成する。
【0070】
続いて、
図6(b)に示すように、有機溶剤で第1のレジスト層23を除去することにより、開口22a内に形成されたAu層24を触媒24aとしてコンタクト層21の上に残す。このようなAu層24のパターニング方法はリフトオフ法とも呼ばれる。
【0071】
次に、
図7に示す工程について説明する。
【0072】
まず、不図示のチャンバ内に基板20を入れ、基板温度を400℃程度に上げることにより、触媒24aを液体化する。
【0073】
そして、そのチャンバ内にInAs用の成長ガスを供給することにより、コンタクト層21を種結晶とし、液体化した触媒24aを溶媒としたVLS(Vapor Liquid Solid)法でマスク層22の開口22a内のコンタクト層21からInAsの結晶を上に向かって成長させる。
【0074】
このとき、前述したように基板20として表面の面方位が(111)B面のGaAs基板を使用しているので、コンタクト層21が基板20の面方位を引き継ぎ、このコンタクト層21の表面からAsを含むInAsの結晶が上に向かって成長しやすくなる。
【0075】
そのInAs用の成長ガスは特に限定されない。例えば、Inの原料ガスとしてトリエチルインジウム((C
2H
5)
3In)を使用し、Asの原料ガスとしてアルシン(AsH
3)を使用し得る。
【0076】
更に、前述のInAs用の成長ガスにシランやジシラン等のシラン系のガスを添加することにより、InAsにn型不純物としてSiをドープする。本実施形態では、InAsにSiを1×10
17cm
−3程度の濃度でドープしている。
【0077】
また、InAsを成長させるときの基板温度は特に限定されないが、例えば500℃とする。
【0078】
このようにして、コンタクト層21の上にナノワイヤ25のn型下部26としてn型InAsの線状体を形成する。このInAsの線状体の大きさは、例えば、幅はマスク層22の開口22aよりも小さい80nmで、長さは0.5〜1μmとする。
【0079】
続いて、InAs用の成長ガスの供給を停止して、上記のチャンバ内にGaAsSb用の成長ガスを供給することにより、前述の液体化した触媒24aを溶媒としたVLS法でn型下部26からGaAsSbの結晶を上に向かって成長させる。
【0080】
そのGaAsSb用の成長ガスは特に限定されない。例えば、Gaの原料ガスとして前述のトリエチルガリウム((C
2H
5)
3Ga)を使用し、Asの原料ガスとしてアルシン(AsH
3)を使用し、Sbの原料ガスとしてトリメチルアンチモン((CH
3)
3Sb)を使用し得る。
【0081】
また、前述のGaAsSb用の成長ガスにジエチル亜鉛やジメチル亜鉛等の亜鉛を含む有機金属ガスを添加することにより、GaAsSbにp型不純物としてZnをドープする。更に、その有機金属ガスの流量を調節することにより、本実施形態ではGaAsSbにおけるZnのドープ量を1×10
18cm
−3程度とする。
【0082】
また、GaAsSbを成長させるときの基板温度は特に限定されないが、例えば、InAsと同じ500℃とする。
【0083】
このようにして、n型下部26の上にp型上部27として高濃度p型GaAsSbの線状体を形成する。このGaAsSbの線状体の大きさは、例えば、幅はInAsの線状体と同じ80nmで、長さは0.5〜1μmとする。
【0084】
以上により、ナノワイヤ25にn型下部26とp型上部27が接合したpn接合を形成する。
【0085】
その後、GaAsSb用の成長ガスの供給を停止する。
【0086】
次に、
図8に示す工程について説明する。
【0087】
まず、上記のチャンバを引き続き使用し、基板温度を500℃から400℃に下げる。
【0088】
そして、そのチャンバ内にコンタクト層21と同じGaAs用の成長ガスを供給する。但し、コンタクト層21と異なり、そのGaAs用の成長ガスには不純物をドープするためのガスを添加しない。
【0089】
これにより、ナノワイヤ25の側面25aからi型GaAsの結晶を基板面に平行な方向に成長させて、保護層28としてi型GaAs層を形成する。
【0090】
その保護層28は、格子不整合転位が入る直前の臨界膜厚以下の厚さ、例えば5nmの厚さに形成する。なお、保護層28の厚さの範囲は原子層1層分(0.2nm)から10nmくらいが目安であり、臨界膜厚を超えると結晶が壊れてリーク電流の原因となる。
【0091】
このため、この工程では、保護層28の格子定数がn型下部26及びp型上部27の格子定数の各々からずれていても、保護層28をn型下部26の側面26a及びp型上部27の側面27aの各々に成長させることができる。
【0092】
図24は、この工程で得られる構造の基板面に平行な面で切断した断面図である。
図24(a)は、
図8のIII−III線における部分の構造を示し、
図24(b)は、
図8のIV−IV線における部分の構造を示している。
【0093】
図8の工程を行うことにより、
図24(a)に示すようにn型下部26の側面26aが保護層28で覆われる。更に、
図24(b)に示すようにp型上部27の側面27aも保護層28で覆われる。
【0094】
このようにして、ナノワイヤ25の側面25aの全体が保護層28で覆われる。
【0095】
その後、上記のチャンバから基板20を取り出す。
【0096】
次に、
図9に示す工程について説明する。
【0097】
図9に示すように、触媒24aの表面、保護層28の表面の全体、及びマスク層22の上に、プラズマを使用しないALD法で水分防止絶縁層29としてAl
3O
2層を数nmの厚さに形成する。
【0098】
そのAl
3O
2層を形成するための成長ガスは特に限定されない。例えば、Alの原料ガスとしてトリメチルアルミニウム((CH
3)
3Al)を使用し得て、酸化剤として水蒸気(H
2O)を使用し得る。
【0099】
また、このようにプラズマを使用しないALD法を使用することにより、プラズマによるダメージをナノワイヤ25に与えるのを回避することができる。
【0100】
なお、Al
3O
2層の代わりに、ALD法で水分防止絶縁層29としてSiO
2層やSiN層を形成してもよい。但し、SiO
2層やSiN層を形成する場合でも、プラズマによるダメージを回避するために、プラズマを使用しないALD法を使用することが好ましい。
【0101】
次に、
図10に示すように、基板20の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像することにより、開口30aを備えた第2のレジスト層30を形成する。
【0102】
続いて、
図11に示すように、第2のレジスト層30をマスクにしながら、水分防止絶縁層29及びマスク層22をドライエッチングすることにより、これらの層29、22の各々にコンタクト層21の一部が露出する開口29b、22bを形成する。
【0103】
そのドライエッチングで使用するエッチングガスは特に限定されないが、例えば、CF
4のようなフッ素を含むガスをエッチングガスとして使用し得る。
【0104】
次に、
図12に示すように、第2のレジスト層30の上と、開口29b,22b内のコンタクト層21の上に、蒸着法によって金属積層膜31を形成する。
【0105】
その金属積層膜31は、例えば下から順に厚さ約30nmのAuGe層、及び厚さ約300nmのAu層を積層した積層膜である。
【0106】
続いて、
図13に示すように、有機溶剤で第2のレジスト層30を除去することにより、開口29b,22b内に形成された金属積層膜31をカソード電極31aとしてコンタクト層21の上に残す。
【0107】
更に、カソード電極31aに対して熱処理を行うことにより、カソード電極31aをコンタクト層21にオーミック接触させる。
【0108】
次に、
図14に示すように、基板20の上側全面に樹脂材料としてBCBを塗布し、この樹脂を加熱して熱硬化させることにより、被覆絶縁膜32として樹脂膜をナノワイヤ25を完全に埋め込む程度の厚さに形成する。
【0109】
なお、その被覆絶縁膜32の材料は特に限定されない。例えば、BCBの代わりにポリイミドやSOG(Spin on Glass)を使用し得る。
【0110】
但し、化合物半導体装置で高周波の電波を使用することを考慮すると、被覆絶縁膜32の材料は信号の遅延時間が短くなる低誘電率の材料であることが好ましい。
【0111】
続いて、
図15に示すように、被覆絶縁膜32の上面32bをエッチバックすることにより、水分防止絶縁膜29を露出させる。
【0112】
そのエッチバックで使用するエッチングガスは特に限定されないが、例えば、Al
2O
3をエッチング可能なCF
4のようなフッ素を含むガスとO
2ガスとの混合ガスをエッチングガスとして使用する。
【0113】
これにより、この工程では、水分防止絶縁層29の上側の一部も除去される。
【0114】
このようにして、被覆絶縁膜32の上面32bに、触媒24aと保護層28の上面28bが露出する。
【0115】
一方、保護層28の側面28aは水分防止絶縁層29で覆われたままとなる。
【0116】
次に、
図16に示すように、基板20の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像することにより、その内側にナノワイヤ25を含む開口33aを備えた第3のレジスト層33を形成する。
【0117】
続いて、
図17に示すように、第3のレジスト層33の上とその開口33a内に蒸着法によって金属積層膜34を形成する。
【0118】
その金属積層膜34は、例えば下から順に厚さ約30nmのAuZn層、及び厚さ約300nmのAu層を積層した積層膜であり、触媒24aを覆う。
【0119】
次いで、
図18に示すように、有機溶剤で第3のレジスト層33を除去することにより、第3のレジスト層33の開口33a内に形成されていた金属積層膜34をアノード電極34aとして被覆絶縁膜32の上に残す。
【0120】
更に、アノード電極34に対して熱処理を行うことにより、ナノワイヤ25上の触媒24aをアノード電極34aと合金化して一体化させると共に、アノード電極34aをナノワイヤ25のp型上部27にオーミック接触させる。
【0121】
次に、
図19に示すように、基板20の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像することにより、カソード電極31aの上方に開口35aを備えた第4のレジスト層35を形成する。
【0122】
続いて、
図20に示すように、第4のレジスト層35をマスクにしながら、被覆絶縁膜32をドライエッチングすることにより、被覆絶縁膜32にカソード電極31aの一部が露出するコンタクトホール32aを形成する。
【0123】
そのドライエッチングで使用するエッチングガスは特に限定されないが、例えば、前述のエッチバックで使用するエッチングガスと同じエッチングガスを使用し得る。
【0124】
その後、第4のレジスト層35を除去する。
【0125】
次に、被覆絶縁膜32の上、及びコンタクトホール32aの内壁に不図示のバリアメタル膜を形成する。続いて、
図21に示すように、基板20の上側全面にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像することにより、その内側にコンタクトホール32aを含む開口36aを備えた第5のレジスト層36を形成する。
【0126】
続いて、
図22に示すように、バリアメタル膜をシード層にした電解メッキ法によって第5のレジスト層36の開口36aの内壁やコンタクトホール32aを埋め込むAu膜37を形成する。
【0127】
次に、
図23に示すように、有機溶剤で第5のレジスト層36を除去することにより、第5のレジスト層36の開口36a内に形成されたAu膜37を引き出し電極37aとして被覆絶縁膜32の上に残す。その後、図示しないものの余分なシード層を除去する。
【0128】
以上により、本実施形態に係る化合物半導体装置40の基本構造が完成する。
【0129】
図25(a)〜(c)は、その化合物半導体装置40におけるナノワイヤ25のエネルギーバンドを示す図である。
【0130】
なお、
図25(a)は平衡状態であるときのエネルギーバンドを示し、
図25(b)はナノワイヤ25に逆方向の電圧を印加したときのエネルギーバンドを示し、
図25(c)はナノワイヤ25に順方向の電圧を印加したときのエネルギーバンドを示す。
【0131】
本実施形態では、
図7の工程でn型下部26となるInAsのn型不純物の濃度を調整し、またp型上部27となるGaAsSbのp型不純物の濃度を調整している。
【0132】
これにより、
図25(a)に示すように、平衡状態であるときには、n型下部26では、伝導帯の下端E
Cがフェルミ準位E
Fとほぼ一致するようになり、高濃度p型上部27では、価電子帯の上端E
Vがフェルミ準位E
Fよりも高くなる。
【0133】
そして、
図25(b)に示すように、ナノワイヤ25に逆方向の電圧を印加したときには、n型下部26とp型上部27の界面におけるエネルギーバンドの曲がりが生じている部分Aが薄くなる。
【0134】
このため、p型上部27の価電子帯の電子が、バンド間トンネリングによってn型下部26の伝導帯に輸送されて、電流が流れる。
【0135】
一方、
図25(c)に示すように、ナノワイヤ25に順方向の電圧を印加したときには、ポテンシャル障壁PBによってn型下部26の伝導帯の電子はp型上部27の価電子帯に移動できず、またp型上部27の価電子帯の正孔もn型下部26の伝導帯に移動できず、電流は流れない。
【0136】
図26は、ナノワイヤ25の電流−電圧特性を示すグラフである。
【0137】
このようにして、本実施形態のナノワイヤ25は、
図26に示すようにバックワードダイオードとして動作するようになる。
【0138】
図27(a)は、ナノワイヤ25のn型下部26及び保護層28のエネルギーバンドを示す図であり、
図27(b)は、p型上部27及び保護層28のエネルギーバンドを示す図である。
【0139】
本実施形態によれば、
図7の工程でn型下部26となるInAsにn型不純物をドープし、またp型上部27となるGaAsSbにp型不純物をドープし、更に
図8の工程でナノワイヤ25の側面25aの全体をi型半導体の保護層28で覆っている。
【0140】
このようにして、
図27(a)に示すように保護層28の伝導帯の下端E
Cをn型下部26の伝導帯の下端E
Cよりも高くすると共に、
図27(b)に示すように保護層28の価電子帯の上端E
Vをp型上部27の価電子帯の上端E
Vよりも低くしている。
【0141】
これにより、ナノワイヤ25に順方向の電圧を印加したときに、n型下部26の伝導帯の電子は、保護層28によるポテンシャル障壁PBを乗り越えらず、p型上部27の価電子帯に移動できなくなる。また、p型上部27の価電子帯の正孔も、保護層28によるポテンシャル障壁PBを乗り越えらず、n型下部26の伝導帯に移動できなくなる。
【0142】
このため、ナノワイヤ25に順方向の電圧を印加したときに生じるナノワイヤ25の内部を流れるリーク電流を抑制することができる。
【0143】
また、本実施形態によれば、前述したようにナノワイヤ25の側面25aの全体を保護層28で覆っているので、
図9の工程で水蒸気のような酸化剤を使用したとしても、酸化剤の水分や酸素がナノワイヤ25の側面25aに進入するのを阻止することができる。
【0144】
これにより、n型下部26の側面26a及びp型上部27の側面27aは酸化されず、これらの側面26a、27aにInの酸化物やSbの酸化物などの導電性の酸化物が形成されるのを抑制することができる。
【0145】
しかも、保護層28はi型GaAsからなるので、その酸化剤によって酸化されたとしても保護層28自体は導電性の酸化物にはならない。
【0146】
これらにより、ナノワイヤ25の側面25aでは、導電性の酸化物によってn型下部26とp型上部27が電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0147】
このため、ナノワイヤ25に順方向の電圧を印加したときに生じるナノワイヤ25の側面25aを流れるリーク電流を抑制することができる。
【0148】
特に、ナノワイヤ25では、その細さから側面25aを流れるリーク電流の影響が大きいので、このリーク電流の発生を抑制することは効果的である。
【0149】
更に、本実施形態によれば、ナノワイヤ25及び保護層28を同じチャンバ内で連続して形成しているので、ナノワイヤ25を形成してから保護層28を形成するまでの間に基板20が大気に曝されることがない。
【0150】
これにより、ナノワイヤ25の側面25aに導電性の酸化物が形成されるのをより一層抑制することができる。
【0151】
このようにして、本実施形態では、ナノワイヤ25の側面25aを流れるリーク電流を抑制することができるので、ダイオードの検波感度や電力変換効率が優れているというナノワイヤ25本来の電気伝導特性を維持することができる。
【0152】
(第2実施形態)
第1実施形態では、n型下部26の側面26a及びp型下部27の側面27aの両方に保護層28を形成したが、本実施形態では、これらの側面のうちの一方のみに保護層を形成する。
【0153】
図28〜
図32は、本実施形態に係る化合物半導体装置の製造途中の断面図である。なお、
図28〜
図32において、第1実施形態と同じ要素には第1実施形態におけるそれと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0154】
まず、第1実施形態の
図4〜
図6の工程を行うことにより、
図28に示すように、マスク層22の開口22a内のコンタクト層21の上にナノワイヤ形成用の触媒24aが形成された構造を得る。
【0155】
次に、
図29に示す工程について説明する。
【0156】
まず、不図示のチャンバ内に基板20を入れ、基板温度を400℃程度に上げることにより、触媒24aを液体化する。
【0157】
そして、そのチャンバ内にInAs用の成長ガスを供給することにより、コンタクト層21を種結晶とし、液体化した触媒24aを溶媒としたVLS法でコンタクト層21からInAsの結晶を上に向かって成長させる。
【0158】
そのInAs用の成長ガスは第1実施形態と同じく、例えば、Inの原料ガスとしてトリエチルインジウムを使用し、Asの原料ガスとしてアルシンを使用し得る。更に、そのInAsにn型不純物としてSiを1×10
17cm
−3程度の濃度でドープする。
【0159】
また、InAsを成長させるときの基板温度も第1実施形態と同じく、例えば500℃とする。
【0160】
一方、前述のInAs用の成長ガスのうち、III族原子のInの原料ガスの流量を第1実施形態と同じにし、V族原子のAsの原料ガスの流量を第1実施形態よりも少なくすることにより、Inの原料ガスとAsの原料ガスとの流量比を変える。
【0161】
これにより、第1実施形態のInAsは閃亜鉛鉱型の結晶構造となるのに対し、本実施形態のInAsはウルツ鉱型の結晶構造になる。
【0162】
このようにして、コンタクト層21の上にナノワイヤ45のn型下部46としてn型InAsの線状体を形成する。このInAsの線状体の大きさは第1実施形態と同じく、例えば、幅は80nmで、長さは0.5〜1μmとする。
【0163】
一方、そのInAsの線状体の側面は、第1実施形態と異なりウルツ鉱型の結晶構造にすることにより、凹凸が少なくなり、比較的平坦となる。
【0164】
続いて、InAs用の成長ガスの供給を停止し、上記のチャンバ内にGaAsSb用の成長ガスを供給することにより、前述の液体化した触媒24aを溶媒としたVLS法でn型下部46からGaAsSbの結晶を上に向かって成長させる。
【0165】
そのGaAsSb用の成長ガスも第1実施形態と同じく、例えば、Gaの原料ガスとしてトリエチルガリウムを使用し、Asの原料ガスとしてアルシン(AsH
3)を使用し、Sbの原料ガスとしてトリメチルアンチモンを使用し得る。更に、そのGaAsSbにp型不純物としてZnを1×10
18cm
−3程度の濃度でドープする。
【0166】
また、GaAsSbを成長させるときの基板温度も第1実施形態と同じく、例えば500℃とする。
【0167】
更にまた、前述のGaAsSb用の成長ガスにおけるIII族原子のGaの原料ガスとV族原子のSbの原料ガスとの流量比も第1実施形態と同じにする。これにより、本実施形態のGaAsSbは、第1実施形態と同じく閃亜鉛鉱型の結晶構造となる。
【0168】
このようにして、n型下部46の上にp型上部47として高濃度p型GaAsSbの線状体を形成する。このGaAsSbの線状体の大きさは第1実施形態と同じく、例えば、幅が80nmで、長さは0.5〜1μmとする。
【0169】
また、そのGaAsSbの線状体の側面は、第1実施形態と同じく閃亜鉛鉱型の結晶構造にすることにより、凹凸が多くなる。
【0170】
以上により、ナノワイヤ45にn型下部46とp型上部47が接合したpn接合を形成する。
【0171】
その後、GaAsSb用の成長ガスの供給を停止する。
【0172】
次に、
図30に示す工程について説明する。
【0173】
上記のチャンバを引き続き使用し、基板温度を500℃から400℃に下げて、このチャンバ内に第1実施形態と同じi型GaAs用の成長ガスを供給する。
【0174】
これにより、ナノワイヤ45の側面45aのうち、凹凸が多い閃亜鉛鉱型の結晶構造のp型上部47の側面47aからi型GaAsの結晶を基板面に平行な方向に成長させて、保護層28としてi型GaAs層を形成する。
【0175】
その保護層28は、臨界膜厚以下の厚さ、例えば5nmの厚さに形成する。
【0176】
このため、この工程では、保護層28の格子定数がp型上部47の格子定数からずれていても、保護層28をp型上部47の側面47aに成長させることができる。
【0177】
一方、凹凸が少ないウルツ鉱型の結晶構造のn型下部46の側面46aでは、i型GaAsの結晶は基板面に平行な方向に成長しにくい。このため、n型下部46の側面46aからi型GaAsの結晶は殆ど成長しない。
【0178】
図33は、この工程で得られる構造の基板面に平行な面で切断した断面図である。
図33(a)は、
図30のV−V線における部分の構造を示し、
図33(b)は、
図30のVI−VI線における部分の構造を示している。
【0179】
図30の工程を行うことにより、
図33(b)に示すようにp型上部47の側面47aが保護層28で覆われる。一方、
図33(a)に示すようにn型下部46の側面46aは保護層28で覆われずに露出する。
【0180】
このようにして、ナノワイヤ45の側面45aのうちのp型上部47の側面47aのみが保護層28で覆われる。
【0181】
その後、上記のチャンバから基板20を取り出す。
【0182】
次に、
図31に示す工程について説明する。
【0183】
図31に示すように、触媒24aの表面、側面28aを含む保護層28の表面の全体、n型下部46の側面46a、及びマスク層22の上に、プラズマを使用しないALD法で水分防止絶縁層29としてAl
3O
2層を数nmの厚さに形成する。
【0184】
そのAl
3O
2層を形成するための成長ガスは第1実施形態と同じく、例えば、Alの原料ガスとしてトリメチルアルミニウムを使用し得て、酸化剤として水蒸気を使用し得る。
【0185】
なお、Al
3O
2層の代わりに、プラズマを使用しないALD法で水分防止絶縁層29としてSiO
2層やSiN層を形成してもよい。
【0186】
この後は、第1実施形態で説明した
図10〜
図23の工程を行うことにより、
図32に示すように、本実施形態に係る化合物半導体装置50の基本構造を完成させる。
【0187】
以上説明した本実施形態によれば、ナノワイヤ45の側面45aのうちのp型上部47の側面47aを保護層28で覆っているので、
図31の工程で水蒸気のような酸化剤を使用したとしても、酸化剤の水分や酸素がp型上部47の側面47aに進入するのを阻止することができる。
【0188】
これにより、p型上部47の側面47aは酸化されず、この側面47aにSbの酸化物のような導電性の酸化物が形成されるのを抑制することができる。
【0189】
一方、n型下部46の側面46aは保護層28で覆われていないので、その酸化剤によってn型下部46の側面46aが酸化されて、この側面46aにInの酸化物のような導電性の酸化物が形成される可能性がある。
【0190】
しかし、p型上部47の側面47aに導電性の酸化物が形成されないので、ナノワイヤ45の側面45aでは、導電性の酸化物によってn型下部46とp型上部47が電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0191】
このため、ナノワイヤ45に順方向の電圧を印加したときに生じるナノワイヤ45の側面45aを流れるリーク電流を抑制することができる。
【0192】
更に、本実施形態によれば、ナノワイヤ45及び保護層28を同じチャンバ内で連続して形成しているので、ナノワイヤ45を形成してから保護層28を形成するまでの間に基板が大気に曝されることがない。
【0193】
これにより、ナノワイヤ45の側面45aに導電性の酸化物が形成されるのをより一層抑制することができる。
【0194】
このようにして、本実施形態でも、第1実施形態と同じくダイオードの検波感度や電力変換効率が優れているというナノワイヤ45本来の電気伝導特性を維持することができる。
【0195】
なお、本実施形態ではナノワイヤ45の側面45aのうちのp型上部47の側面47aのみを保護層28で覆う場合を例にして説明したが、n型下部46の側面46aのみを保護層28で覆うようにしてもよい。
【0196】
n型下部46の側面46aのみを保護層28で覆う場合には、
図29の工程で、InAs用の成長ガスにおけるIII族原子のInの原料ガスとV族原子のAsの原料ガスとの流量比を第1実施形態と同じにして、n型下部46となるInAsを閃亜鉛鉱型の結晶構造にする。
【0197】
一方、GaAsSb用の成長ガスのうち、III族原子のGaの原料ガスの流量を第1実施形態と同じにし、V族原子のSbの原料ガスの流量を第1実施形態よりも少なくして、Gaの原料ガスとAs、Sbの原料ガスとの流量比を変える。
【0198】
このようにして、p型上部47となるGaAsSbをウルツ鉱型の結晶構造にする。
【0199】
これにより、
図30の工程では、凹凸が多い閃亜鉛鉱型の結晶構造のn型下部46の側面46aからi型GaAsの結晶が基板面に平行な方向に成長する一方で、凹凸が少ないウルツ鉱型の結晶構造のp型上部47の側面47aからはi型GaAsの結晶は殆ど成長しなくなる。
【0200】
このようにして、ナノワイヤ45の側面45aのうちのn型下部46の側面46aのみが保護層28で覆われるようになる。
【0201】
また、結晶構造を閃亜鉛鉱型からウルツ鉱型に変える方法は、前述したInAs用の成長ガス及びGaAsSb用の成長ガスのどちらか一方におけるIII族原子の原料ガスとV族原子の原料ガスとの流量比を変えることに限定されない。
【0202】
例えば、これらの原料ガスの流量比を変えずに、III族原子の原料ガス及びV族原子の原料ガスの流量の総量を増やすことにより、InAs及びGaAsSbのどちらか一方の成長速度を早くするようにしてもよい。
【0203】
このようにしても、InAs及びGaAsSbのどちらか一方の結晶構造を閃亜鉛鉱型からウルツ鉱型に変えることができる。
【0204】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態とは別の方法でナノワイヤの側面に保護層を形成する。
【0205】
図34〜
図38は、本実施形態に係る化合物半導体装置の製造途中の断面図である。なお、
図34〜
図38において、第1実施形態と同じ要素には第1実施形態におけるそれと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0206】
まず、第1実施形態の
図4〜
図6の工程を行うことにより、
図34に示すように、マスク層22の開口22a内のコンタクト層21の上にナノワイヤ形成用の触媒24aが形成された構造を得る。
【0207】
次に、
図35に示す工程について説明する。
【0208】
まず、不図示のチャンバ内に基板20を入れ、基板温度を400℃程度に上げることにより、触媒24aを液体化する。
【0209】
そして、そのチャンバ内にInAs用の成長ガスを供給することにより、コンタクト層21を種結晶とし、液体化した触媒24aを溶媒としたVLS法でコンタクト層21からInAsの結晶を上に向かって成長させる。
【0210】
そのInAs用の成長ガスは第1実施形態と同じく、例えば、Inの原料ガスとしてトリエチルインジウムを使用し、Asの原料ガスとしてアルシンを使用し得る。更に、そのInAsにn型不純物としてSiを1×10
17cm
−3程度の濃度でドープする。
【0211】
また、InAsを成長させるときの基板温度は第1実施形態と同じく、例えば500℃とする。
【0212】
一方、前述のInAs用の成長ガスのうち、III族原子のInの原料ガスの流量を第1実施形態と同じにし、V族原子のAsの原料ガスの流量を第1実施形態よりも少なくすることにより、Inの原料ガスとAsの原料ガスとの流量比を変える。
【0213】
これにより、本実施形態のInAsは、第1実施形態と異なりウルツ鉱型の結晶構造になる。
【0214】
このようにして、コンタクト層21の上にナノワイヤ45のn型下部46としてn型InAsの線状体を形成する。このInAsの線状体の大きさは第1実施形態と同じく、例えば、幅は80nmで、長さは0.5〜1μmとする。
【0215】
続いて、InAs用の成長ガスの供給を停止し、上記のチャンバ内にGaAsSb用の成長ガスを供給することにより、前述の液体化した触媒24aを溶媒としたVLS法でn型下部46からGaAsSbの結晶を上に向かって成長させる。
【0216】
そのGaAsSb用の成長ガスも第1実施形態と同じく、例えば、Gaの原料ガスとしてトリエチルガリウムを使用し、Asの原料ガスとしてアルシン(AsH
3)を使用し、Sbの原料ガスとしてトリメチルアンチモンを使用し得る。更に、そのGaAsSbにp型不純物としてZnを1×10
18cm
−3程度の濃度でドープする。
【0217】
また、GaAsSbを成長させるときの基板温度も第1実施形態と同じく、例えば500℃とする。
【0218】
更にまた、前述のGaAsSb用の成長ガスにおけるIII族原子のGaの原料ガスとV族原子のSbの原料ガスとの流量比も第1実施形態と同じにする。
【0219】
これにより、本実施形態のGaAsSbは、第1実施形態と同じく閃亜鉛鉱型の結晶構造となる。
【0220】
このようにして、n型下部46の上にp型上部47として高濃度p型GaAsSbの線状体を形成する。このGaAsSbの線状体の大きさは第1実施形態と同じく、例えば、幅が80nmで、長さは0.5〜1μmとする。
【0221】
以上により、ナノワイヤ45にn型下部46とp型上部47が接合したpn接合を形成する。
【0222】
次に、
図36に示す工程について説明する。
【0223】
上記のチャンバを引き続き使用し、GaAsSb用の成長ガスのうちのSbの原料ガスと、Znをドープするための有機金属ガスの供給を停止して、基板温度を500℃から400℃に下げる。
【0224】
これにより、ナノワイヤ45の側面45aのうち、凹凸が多い閃亜鉛鉱型の結晶構造のp型上部47の側面47aからi型GaAsの結晶を基板面に平行な方向に成長させて、保護層58としてi型GaAs層を形成する。
【0225】
その保護層58は数原子層分の厚さに形成する。
【0226】
これにより、この工程では、保護層58の格子定数がp型上部47の格子定数からずれていても臨界膜厚より十分に薄いことから、保護層58をp型上部47の側面47aに成長させることができる。
【0227】
図39は、この工程で得られる構造の基板面に平行な面で切断した断面図である。
図39(a)は、
図36のVII−VII線における部分の構造を示し、
図39(b)は、
図36のVIII−VIII線における部分の構造を示している。
【0228】
図36の工程を行うことにより、
図39(b)に示すようにp型上部47の側面47aが保護層58で覆われる。一方、
図39(a)に示すようにn型下部46の側面46aは保護層58で覆われずに露出する。
【0229】
このようにして、ナノワイヤ45の側面45aのうちのp型上部47の側面47aのみが保護層58で覆われる。
【0230】
その後、上記のチャンバから基板20を取り出す。
【0231】
次に、
図37に示す工程について説明する。
【0232】
図37に示すように、触媒24aの表面、側面58aを含む保護層58の表面の全体、n型下部46の側面46a、及びマスク層22の上に、プラズマを使用しないALD法で水分防止絶縁層29としてAl
3O
2層を数nmの厚さに形成する。
【0233】
そのAl
3O
2層を形成するための成長ガスは第1実施形態と同じく、例えば、Alの原料ガスとしてトリメチルアルミニウムを使用し得て、酸化剤として水蒸気を使用し得る。
【0234】
なお、Al
3O
2層の代わりに、プラズマを使用しないALD法で水分防止絶縁層29としてSiO
2層やSiN層を形成してもよい。
【0235】
この後は、第1実施形態で説明した
図10〜
図23の工程を行うことにより、
図38に示すように、本実施形態に係る化合物半導体装置60の基本構造を完成させる。
【0236】
以上説明した本実施形態によれば、ナノワイヤ45の側面45aのうちのp型上部47の側面47aを保護層58で覆っているので、
図37の工程で水蒸気のような酸化剤を使用したとしても、酸化剤の水分や酸素がp型上部47の側面47aに進入するのを阻止することができる。
【0237】
これにより、p型上部47の側面47aは酸化されず、この側面47aにSbの酸化物などの導電性の酸化物が形成されるのを抑制することができる。
【0238】
しかも、保護層58はi型GaAsからなるので、その酸化剤によって酸化されたとしても保護層58自体は導電性の酸化物にはならない。
【0239】
一方、n型下部46の側面46aは保護層58で覆われていない。
【0240】
しかし、p型上部47の側面47aに導電性の酸化物が形成されないので、ナノワイヤ45の側面45aでは、導電性の酸化物によってn型下部46とp型上部47が電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0241】
このため、ナノワイヤ45に順方向の電圧を印加したときに生じるナノワイヤ45の側面45aを流れるリーク電流を抑制することができる。
【0242】
更に、本実施形態によれば、ナノワイヤ45及び保護層58を同じチャンバ内で連続して形成しているので、ナノワイヤ45を形成してから保護層58を形成するまでの間に基板20が大気に曝されることがない。
【0243】
これにより、ナノワイヤ45の側面45aに導電性の酸化物が形成されるのをより一層抑制することができる。
【0244】
以上により、本実施形態でも、第1実施形態と同じくダイオードの検波感度や電力変換効率が優れているというナノワイヤ45本来の電気伝導特性を維持することができる。
【0245】
ところで、上記した本実施形態では、保護層58をi型GaAsのようにAsを含むi型半導体で形成している。
【0246】
そして、p型上部45をp型GaAsSbで形成する場合には、その保護層58を形成する
図36の工程で、GaAsSb用の成長ガスのうちSbの原料ガスと、Znをドープするための有機金属ガスの供給を停止している。
【0247】
これに対し、例えば、p型上部を後述するp型GaSbで形成する場合には、保護層58を形成する
図36の工程では、GaSb用の成長ガスのうちSbの原料ガスと、Znをドープするための有機金属ガスの供給を停止して、Asの原料ガスとしてアルシン(AsH
3)を供給すればよい。
【0248】
また、上記した本実施形態では、ナノワイヤ45の側面45aのうちのp型上部47の側面47aのみを極薄の保護層58で覆う場合を例にして説明したが、n型下部46の側面46aのみを極薄の保護層58で覆うようにしてもよい。
【0249】
n型下部46の側面46aのみを極薄の保護層58で覆う場合には、
図35の工程で、n型下部46のInAsを閃亜鉛鉱型の結晶構造にし、p型上部47のGaAsSbをウルツ鉱型の結晶構造にすればよい。
【0250】
更にまた、第1実施形態のようにn型下部26の側面26a及びp型上部27の側面27aの両方、すなわちナノワイヤ25の側面25aの全体を極薄の保護層58で覆うようにしてもよい。
【0251】
ナノワイヤ25の側面25aの全体を極薄の保護層58で覆う場合には、
図35の工程で、n型下部のInAs及びp型上部のGaAsSbの両方を閃亜鉛鉱型の結晶構造にすればよい。
【0252】
上記の第1実施形態〜第3実施形態では、バックワードダイオードとして動作するナノワイヤ25、45のn型下部26、46をn型InAsで形成し、p型上部27、47をp型GaAsSbで形成する場合を例にして説明した。
【0253】
しかし、n型下部26、46及びp型上部27、47の材料はこれに限定されるものではない。
【0254】
例えば、n型下部を、Inを含むn型III−V族化合物半導体としてn型InGaAsで形成してもよい。また、p型上部を、Sbを含むp型III−V族化合物半導体としてp型GaSbやp型AlGaSbで形成してもよい。
【0255】
更に、そのナノワイヤ25、45のn型下部26、46及びp型上部27、47のうちのp型上部27、47の不純物の濃度を高濃度にした場合を例にして説明したが、n型下部26、46の不純物の濃度を高濃度にしてもよい。
【0256】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、保護層28、58をi型GaAs結晶で形成する場合を例にして説明したが、i型GaAs結晶と同じく酸化されたとしても導電性の酸化物にはならないi型のGaN、GaP、InP、又はInGaPの結晶で保護層を形成してもよい。
【0257】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態〜第3実施形態で製造した化合物半導体装置を使用した電力変換装置について説明する。
【0258】
図40は、その電力変換装置の回路図である。
【0259】
図40に示すように、この電力変換装置70は、アンテナ71、整合回路72、第1実施形態〜第3実施形態で製造した化合物半導体装置のいずれかである電力変換素子73、昇圧回路74、及びコンデンサ75を備える。
【0260】
このうち、整合回路72は、アンテナ71で受信したマイクロ波のような高周波の電波RFのインピーダンスを整合する。
【0261】
電力変換素子73は、前述のバックワードダイオードとして動作するナノワイヤ25、45を備えている。
【0262】
そのナノワイヤ25、45では、n型下部26、46は、コンタクト層21、カソード電極31a、及び引き出し配線37aを介して整合回路72に接続される。一方、p型上部27、47は、アノード電極34aを介して接地される。
【0263】
このようにして、電力変換素子73では、整合回路72でインピーダンス整合された電波を入力し、これをナノワイヤ25、45によって直流電圧に変換する。
【0264】
昇圧回路74は、電力変換素子73で変換された電圧を昇圧する。そして、昇圧された電圧の電荷を電力としてコンデンサ75に一時的に蓄える。
【0265】
そして、電力変換装置70は、このようにして蓄えた電力を外部の機器77、例えば、インターネットと接続可能な通信機能を備えた温度センサや湿度センサに供給する。
【0266】
以上説明した本実施形態によれば、電力変換素子73が電力変換効率に優れたナノワイヤ25、45を備えているので、周囲の環境に微弱な電波しかなくてもその電波を効率良く電力に変換することができる。
【0267】
このため、送電設備のない環境でも前述の機器77を駆動することが可能な電力変換装置70を提供することができる。
【0268】
なお、本実施形態では、電力変換装置70に電力変換素子73を1つ備えた場合を例にして説明したが、電力変換素子73を複数備えてもよい。これにより、電力変換装置70ではより大きな電力を蓄えることができる。
【0269】
その電力変換素子73を複数備えた電力変換装置では、1つの基板20に複数のナノワイヤ25、45を形成して、その複数のナノワイヤ25、45の各々の側面25a、45aを保護層28、58で覆うようにすればよい。
【0270】
また、本実施形態では、第1実施形態〜第3実施形態で製造した化合物半導体装置40、50、60を電力変換装置70の電力変換素子73に適用した場合を例にして説明したが、これらの化合物半導体装置40、50、60を受信装置の検波素子に適用してもよい。
【0271】
このように適用した受信装置によれば、検波素子が検波感度に優れたナノワイヤ25、45を備えているので、微弱な電波に対しても十分な検波特性を得ることができる。
【0272】
(その他の実施形態)
上記の第1実施形態〜第3実施形態では、バックワードダイオードとして動作するナノワイヤ25、45を備えた化合物半導体装置40、50、60を例にして説明したが、ナノワイヤ25、45で動作するダイオードの種類はこれに限定されない。
【0273】
本実施形態では、化合物半導体装置のバリエーションについて説明する。
【0274】
<エサキダイオード>
本例のエサキダイオードは、バックワードダイオードと同じくトンネルダイオードであるが、バックワードダイオードと異なりn型下部及びp型上部の両方に不純物が高濃度にドープされている。
【0275】
図41は、そのエサキダイオードとして動作するナノワイヤを備えた化合物半導体装置の構造の一例を示す断面図である。なお、
図41において、第1実施形態と同じ要素には第1実施形態におけるそれと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0276】
図41に示すように、本例の化合物半導体装置85において、エサキダイオードとして動作するナノワイヤ81は、高濃度n型半導体のn型下部82と高濃度p型半導体のp型上部83を有する。
【0277】
そのn型下部82の材料はn型InGaAsであり、p型上部83の材料はp型GaAsSbである。このように、本例のエサキダイオードはヘテロ接合となっている。
【0278】
図42は、エサキダイオードがヘテロ接合となっている場合のナノワイヤのエネルギーバンドを示す図である。
【0279】
図42に示すように、平衡状態であるときには、n型下部82では、伝導帯の下端E
Cがフェルミ準位E
Fよりも低くなり、p型上部83では、価電子帯の上端E
Vがフェルミ準位E
Fよりも高くなっている。
【0280】
そして、
図41に示すように、本例の化合物半導体装置85でも、第1実施形態と同じく、ナノワイヤ81の側面81aの全体をi型GaAs結晶の保護層28で覆っている。
【0281】
これにより、ナノワイヤ81の側面81aでは、Inの酸化物やSbの酸化物などの導電性の酸化物によってn型下部82とp型上部83とが電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0282】
このため、ナノワイヤ81に電圧を印加したときに生じるナノワイヤ81の側面81aを流れるリーク電流を抑制することができる。
【0283】
なお、エサキダイオードはヘテロ接合に限定されない。
【0284】
図43は、エサキダイオードとして動作するナノワイヤを備えた化合物半導体装置の構造の別例を示す断面図である。なお、
図43において、第1実施形態と同じ要素には第1実施形態におけるそれと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0285】
図43に示すように、本例の化合物半導体装置90において、エサキダイオードとして動作するナノワイヤ86は、前述のナノワイヤ85と同じく、高濃度n型半導体のn型下部87と高濃度p型半導体のp型上部88を有する。
【0286】
一方、そのナノワイヤ85と異なり、n型下部87の材料はn型InGaAsであり、p型上部88の材料はp型InGaAsである。このように、本例のエサキダイオードはホモ接合となっている。
【0287】
図44は、エサキダイオードがホモ接合となっている場合のナノワイヤのエネルギーバンドを示す図である。
【0288】
図44に示すように、平衡状態であるときには、n型下部87では、伝導帯の下端E
Cがフェルミ準位E
Fよりも低くなり、p型上部88では、価電子帯の上端E
Vがフェルミ準位E
Fよりも高くなっている。
【0289】
そして、
図43に示すように、本例の化合物半導体装置90でも、第1実施形態と同じく、ナノワイヤ86の側面86aの全体をi型GaAs結晶の保護層28で覆っている。
【0290】
これにより、ナノワイヤ86の側面86aでは、Inの酸化物などの導電性の酸化物によってn型下部87とp型上部88とが電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0291】
このため、ナノワイヤ86に電圧を印加したときに生じるナノワイヤ86の側面86aを流れるリーク電流を抑制することができる。
【0292】
<通常のダイオード>
本例の通常のダイオードとは、トンネルダイオードではないダイオードのことを意味する。
【0293】
その通常のダイオードは、バックワードダイオードやエサキダイオードと異なりn型下部及びp型上部の両方に不純物が低濃度にドープされている。
【0294】
図45は、通常のダイオードとして動作するナノワイヤを備えた化合物半導体装置の構造の一例を示す断面図である。なお、
図45において、第1実施形態と同じ要素には第1実施形態におけるそれと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0295】
図45に示すように、本例の化合物半導体装置95において、通常のダイオードとして動作するナノワイヤ91は、n型半導体のn型下部92とp型半導体のp型上部93を有する。
【0296】
そのn型下部92の材料はn型InGaAsであり、p型上部93の材料はp型GaAsSbである。このように、本例のダイオードはヘテロ接合となっている。
【0297】
図46は、通常のダイオードがヘテロ接合となっている場合のナノワイヤのエネルギーバンドを示す図である。
【0298】
図46に示すように、平衡状態であるときには、n型下部92では、伝導帯の下端E
Cがフェルミ準位E
Fよりも高くなり、p型上部93では、価電子帯の上端E
Vがフェルミ準位E
Fよりも低くなっている。
【0299】
そして、
図45に示すように、本例の化合物半導体装置95でも、第1実施形態と同じく、ナノワイヤ91の側面91aの全体をi型GaAs結晶の保護層28で覆っている。
【0300】
これにより、ナノワイヤ91の側面91aでは、Inの酸化物やSbの酸化物などの導電性の酸化物によってn型下部92とp型上部93とが電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0301】
このため、ナノワイヤ91に電圧を印加したときに生じるナノワイヤ91の側面91aを流れる側面リーク電流を抑制することができる。
【0302】
なお、その通常のダイオードはヘテロ接合に限定されない。
【0303】
図47は、通常のダイオードとして動作するナノワイヤを備えた化合物半導体装置の構造の別例を示す断面図である。なお、
図47において、第1実施形態と同じ要素には第1実施形態におけるそれと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0304】
図47に示すように、本例の化合物半導体装置100において、通常のダイオードとして動作するナノワイヤ96は、前述のナノワイヤ95と同じく、n型半導体のn型下部97とp型半導体のp型上部98を有する。
【0305】
一方、そのナノワイヤ95と異なり、n型下部97の材料はn型InGaAsであり、p型上部98の材料はp型InGaAsである。このように、本例のダイオードはホモ接合となっている。
【0306】
図48は、ダイオードがホモ接合となっている場合のナノワイヤのエネルギーバンドを示す図である。
【0307】
図48に示すように、平衡状態であるときには、n型下部97では、伝導帯の下端E
Cがフェルミ準位E
Fよりも高くなり、p型上部98では、価電子帯の上端E
Vがフェルミ準位E
Fよりも低くなっている。
【0308】
そして、
図47に示すように、本例の化合物半導体装置100でも、第1実施形態と同じく、ナノワイヤ96の側面96aの全体をi型GaAs結晶の保護層28で覆っている。
【0309】
これにより、ナノワイヤ96の側面96aでは、Inの酸化物などの導電性の酸化物によってn型下部97とp型上部98とが電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0310】
このため、ナノワイヤ96に電圧を印加したときに生じるナノワイヤ96の側面96aを流れる側面リーク電流を抑制することができる。
【0311】
なお、以上説明した本実施形態では、n型下部82、87、92、97及びp型上部83、88、93、98の材料としてInGaAs又はGaAsSbを使用した場合を例にして説明したが、これらの材料としてGaAs、InP、GaN、又はSiを使用してもよい。
【0312】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0313】
(付記1)基板と、
前記基板から上に伸びた線状の化合物半導体であり、第1の導電型の下部と、前記下部の上に伸びた第2の導電型の上部とを備えた線状半導体と、
前記線状半導体の側面を覆うi型化合物半導体結晶の保護層と
を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【0314】
(付記2)前記第1の導電型はn型であり、前記第2の導電型はp型であり、
前記保護層の伝導帯の下端が前記下部の伝導帯の下端よりも高く、前記保護層の価電子帯の上端が前記上部の価電子帯の上端よりも低いことを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0315】
(付記3)前記保護層は、前記線状半導体において前記下部及び前記上部の両方を覆うことを特徴とする付記1又は付記2に記載の化合物半導体装置。
【0316】
(付記4)前記保護層は、前記線状半導体において前記下部及び前記上部のうちの一方を覆うことを特徴とする付記1又は付記2に記載の化合物半導体装置。
【0317】
(付記5)前記保護層は、GaN、GaP、GaAs、InP、及びInGaPのいずれか1つからなることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0318】
(付記6)前記基板から複数の前記線状半導体が上に伸びていて、
前記複数の線状半導体の各々の側面が、前記保護層に覆われたことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0319】
(付記7)前記保護層の表面を覆い、前記保護層への水分の進入を防止する水分防止絶縁層を有することを特徴とする付記1乃至付記6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0320】
(付記8)電波を受信する受信部と、
前記受信部で受信した電波を電圧に変換する変換部と
を有し、
前記変換部は、
基板と、
前記基板から上に伸びた線状の化合物半導体であり、前記電波が入力される第1の導電型の下部と、前記下部の上に伸びた第2の導電型の上部とを備えた線状半導体と、
前記線状半導体の側面を覆うi型化合物半導体結晶の保護層と
を有することを特徴とする受信機。
【0321】
(付記9)基板から第1の導電型の化合物半導体を上に向かって線状に成長させることにより、前記基板の上に線状半導体の下部を形成する工程と、
前記下部から第2の導電型の化合物半導体を上に向かって線状に成長させることにより、前記下部の上に前記線状半導体の上部を形成する工程と、
前記線状半導体の側面にi型化合物半導体結晶の保護層を成長させる工程と
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0322】
(付記10)前記保護層を成長させる工程では、前記線状半導体において前記下部及び前記上部の両方に前記保護層を成長させることを特徴とする付記9に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0323】
(付記11)前記保護層を成長させる工程では、前記線状半導体において前記下部及び前記上部のうちの一方に前記保護層を成長させることを特徴とする付記9に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0324】
(付記12)前記保護層を成長させる工程では、前記保護層を臨界膜厚以下の膜厚にすることを特徴とする付記9乃至付記11のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0325】
(付記13)前記保護層は、GaN、GaP、GaAs、InP、及びInGaPのいずれか1つからなることを特徴とする付記9乃至付記12のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0326】
(付記14)前記線状半導体の前記下部を形成する工程、前記上部を形成する工程、及び前記保護層を成長させる工程を、前記基板を大気に曝すことなく行うことを特徴とする付記9乃至付記13のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0327】
(付記15)前記保護層を成長させる工程の後に、
前記保護層の表面に、前記保護層への水分の進入を防止する水分防止絶縁層を形成する工程を有することを特徴とする付記9乃至付記14のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0328】
(付記16)前記水分防止絶縁層を形成する工程を、プラズマを使用しないALD(Atomic Layer Deposition)法によって行うことを特徴とする付記15に記載の化合物半導体装置の製造方法。