(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記録制御部は、前記自動ブレーキが動作していない場合は、前記イベントの発生時点を含める第1期間における前記第1映像データを前記記録部に記録し、前記自動ブレーキが動作している場合は、前記イベントの発生時点を含める前記第1期間よりも長い期間である第2期間における前記第1映像データを前記記録部に保存する、
請求項1または2のいずれか1項に記載の記録制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
以下に説明される複数の実施形態は、独立に実施されることもできるし、適宜組み合わせて実施されることもできる。これら複数の実施形態は、互いに異なる新規な特徴を有している。したがって、これら複数の実施形態は、互いに異なる目的又は課題を解決することに寄与し、互いに異なる効果を奏することに寄与する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る記録制御装置の一例であるドライブレコーダ100が車両900に設置されている様子を示す概略図である。ドライブレコーダ100は、カメラユニット110を含む。カメラユニット110は、車両900の周囲を撮像するカメラを備える。カメラユニット110は、例えば前方の周辺環境を撮像できるように、車両900の進行方向に向かってウィンドシールドの上部に設置されている。なお、その視野は、例えば一点鎖線で示すように対角130°程度の拡がりを有する。
【0016】
車両900は、車両900が受ける衝撃等の加速度を検出する加速度センサ920を備える。加速度センサ920は、検出結果である加速度信号をドライブレコーダ100へ出力する。加速度センサ920は、ドライブレコーダ100に内蔵されていてもよい。
【0017】
また、本実施形態において車両900は、前方の複数箇所に、他車両や歩行者等の対象物を検知する対象物センサ930を備える。対象物センサ930は、例えばミリ波レーダやステレオカメラであり、他車両や歩行者等の対象物を検知すると、車両900が備える走行制御部に検知信号を出力する。
【0018】
図2は、ドライブレコーダ100の構成を示すブロック図である。ドライブレコーダ100は、主にカメラユニット110および本体ユニット130によって構成される。
【0019】
カメラユニット110は、主にレンズ112、撮像素子114およびAFE(アナログフロントエンド)116を備える。レンズ112は、入射する被写体光束を撮像素子114へ導く。レンズ112は、複数の光学レンズ群から構成されていても良い。
【0020】
撮像素子114は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。撮像素子114は、システム制御部131から指定される1フレームあたりの露光時間に従って電子シャッタにより電荷蓄積時間を調整し、光電変換を行って画素信号を出力する。撮像素子114は、画素信号をAFE116へ引き渡す。AFE116は、画素信号をシステム制御部131から指示される増幅ゲインに応じてレベル調整してデジタルデータへA/D(アナログ/デジタル)変換し、画素データとして本体ユニット130へ送信する。なお、カメラユニット110は、メカニカルシャッタや虹彩絞りを備えても良い。メカニカルシャッタや虹彩絞りを備える場合には、システム制御部131は、これらも利用して、撮像素子114へ入射する光量を調整することができる。
【0021】
本体ユニット130は、システム制御部131、画像入力IF(インターフェイス)132、ワークメモリ133、システムメモリ134、画像処理部135、表示出力部136、メモリ制御部137、メモリIF138、入出力IF139、バスライン140を主に備える。画像入力IF132は、カメラユニット110が撮像した映像データを逐次取得する映像データ取得部としての機能を担い、本体ユニット130と接続されているカメラユニット110から画素データを取得して、バスライン140へ引き渡す。
【0022】
ワークメモリ133は、例えば揮発性の高速メモリによって構成される。ワークメモリ133は、AFE116から画像入力IF132を介して画素データを受け取り、1フレームの映像データとして記憶する。ワークメモリ133は、フレーム単位で画像処理部135へ映像データを引き渡す。また、ワークメモリ133は、画像処理部135が画像処理する途中段階においても一時的な記憶領域として適宜利用される。
【0023】
画像処理部135は、受け取った映像データに対して各種の画像処理を施し、予め定められたフォーマットに即した映像データを生成する。例えば、MPEGファイル形式の動画像データを生成する場合は、各フレームの映像データに対するホワイトバランス処理、ガンマ処理等を施した後に、各フレームの映像データ内および隣接フレームの映像データ間の圧縮処理を実行する。画像処理部135は、生成された映像データから表示用映像データを逐次生成して、表示出力部136へ引き渡す。以下、動画像データを構成する各フレームの映像データをフレーム映像データとし、フレーム映像データで表される画像をフレーム映像とする。
【0024】
表示出力部136は、画像処理部135から受け取った表示用映像データを、表示ユニット160で表示可能な画像信号に変換して出力する。表示ユニット160は、例えばカーナビゲーションシステムの表示パネルであっても良いし、ドライブレコーダ100と一体的に設けられた専用の表示パネルであっても良い。表示ユニット160は、表示出力部136から受け取った画像信号を逐次表示することができる。
【0025】
システムメモリ134は、例えばSSD(ソリッドステートドライブ)などの不揮発性記録媒体により構成される。システムメモリ134は、ドライブレコーダ100の動作時に必要な定数、変数、設定値、制御プログラム等を記録、保持する。
【0026】
メモリIF138は、着脱可能なメモリカード150を装着する接続インターフェイスである。メモリカード150としては、不揮発性メモリであり、例えばフラッシュメモリが利用される。メモリカード150は、映像データを記録する記録部としての機能を担う。
【0027】
メモリ制御部137は、メモリIF138に装着されたメモリカード150に、映像データを書き込むためのメモリ制御を実行する。すなわち、メモリ制御部137は、メモリカード150に映像データを書き込む記録制御部としての機能を担う。具体的なメモリ制御については後述する。
【0028】
入出力IF139は、外部機器からの信号を取得してシステム制御部131へ引き渡したり、外部機器へ信号要求などの制御信号をシステム制御部131から受け取って外部機器へ送信したりする、外部機器との接続インターフェイスである。入出力IF139は、CAN(Controller Area Network)910等の車内ネットワークを介して、上述した加速度センサ920に接続される。
加速度センサ920の出力した加速度信号は、CAN910及び入出力IF139を介してシステム制御部131へ入力される。入出力IF139は、加速度信号を取得する場合は、システム制御部131と協働して加速度信号取得部としての機能を担う。
【0029】
また、入出力IF139は、CAN910を介して、走行制御部940に接続される。走行制御部940は、車両900に備えられており、運転者の運転操作に基づいて車両900の走行を制御する。すなわち、走行制御部940は、運転者のハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作等に基づいて車両900の走行を制御する。さらに、走行制御部940は、対象物センサ930が出力した検知信号を取得した場合は、運転者の運転操作に優先して、車両900に対してブレーキ制御を行う。すなわち、走行制御部940は、対象物センサ930が出力した検知信号を取得した場合は自動ブレーキを作動させる。
【0030】
走行制御部940は、車両900の走行状態の情報を、走行状態信号として出力する。車両900の走行状態の情報としては、例えば、車両900の速度、ハンドル操作量、アクセル操作量、ブレーキ操作量、自動ブレーキが動作しているか否かの情報が含まれる。入出力IF139は、走行制御部940の出力した走行状態信号を取得する場合は、システム制御部131と協働して車両情報取得部としての機能を担う。このようにして、車両情報取得部は、車両900の自動ブレーキが動作しているか否かの情報等の、車両900の走行状態の情報を取得する。
【0031】
システム制御部131は、例えばCPUであり、ドライブレコーダ100を構成する各要素を直接的または間接的に制御する。システム制御部131による制御は、システムメモリ134から読み出された制御プログラム等によって実現される。
【0032】
また、システム制御部131は、加速度信号の示す加速度が予め設定された閾値以上の大きさである場合などは、イベントが発生したと判断する。一般的なドライブレコーダにおいては、車両に対し他の車両や物体が衝突した場合の加速度に対してイベントが発生したと判断する。本発明のドライブレコーダ100においては、衝突した場合の加速度のみならず、急制動した場合の加速度を検出した場合にイベントが発生したと判断する。したがって、システム制御部131はイベント検出部としての機能も担う。後述するように、イベントが発生したと判断する加速度の閾値は、自動ブレーキが動作しているか否かによって異なる。
【0033】
ここで、メモリ制御部137が行う具体的なメモリ制御について説明する。
図3は、メモリカード150に設定されるリングバッファについて説明する概念図である。ドライブレコーダ100は、カメラユニット110で逐次撮像する画像を画像処理部135で処理して、1分間ごとの動画像ファイルを生成する。そして、メモリ制御部137が、画像処理部135で生成された動画像ファイルを、メモリIF138を介して順次メモリカード150に記録する。
【0034】
メモリカード150は、記憶容量に上限があるので、記録できる動画像ファイルの数にも上限がある。ドライブレコーダ100は、車両900が走行を続ける間は動画像ファイルの生成を継続するので、一定時間が経過すると生成した最新の動画像ファイルをメモリカード150に記録できなくなってしまう。そこで、メモリ制御部137は、メモリカード150が記憶容量の上限に到達したら、最も古い動画像ファイルが記憶された記憶領域に最新の動画像ファイルを上書きするリングバッファ形式により、記録処理を継続する。
【0035】
図3(a)は、メモリカード150のメモリ領域151の全体を、リングバッファ152として利用する場合の概念図である。1つの動画像ファイルを記憶できるメモリ領域をそれぞれX
1,X
2,…,X
nと表すと、メモリ制御部137は、最初の動画像ファイルをX
1、次の動画像ファイルをX
2というように順に記録する。そして、n個目の動画像ファイルをX
nに記録したら、n+1個目の動画像ファイルを、最初の動画像ファイルが記録されているX
1に上書きする。同様にn+2個目の動画像ファイルはX
2に上書きする。このようなリングバッファ形式によって動画像ファイルを記録すれば、リングバッファ152の容量分の最新の動画像ファイルを保持しておくことができる。
【0036】
図3(b)は、ドライブレコーダ100における書き込み制御の概念を説明する概念図である。
図3(b)では、自動ブレーキが動作していない場合にイベントの発生が検出された場合について説明する。
システム制御部131がイベントの発生を検出したときに、自動ブレーキが動作していないと判断された場合、メモリ制御部137は、イベントの発生時点を含める期間における映像データの動画像ファイルを、上書き禁止の領域にコピーする。例えば図示するように、メモリ領域X
4に記録された動画像ファイルがイベント発生時点の映像データを含むのであれば、メモリ領域X
nを不揮発バッファ153に変更して、当該動画像ファイルをイベント記録ファイルとしてここへコピーする。不揮発バッファ153は、リングバッファ形式で記録される記憶領域から除外される領域であり、換言すれば、上書きが禁止される領域である。イベントが複数回発生すれば、その都度X
n-1,X
n-2,…が順に不揮発バッファ153に変更される。すなわち、リングバッファ152は、不揮発バッファ153が増設されるたびに減少する。不揮発バッファ153のメモリ領域は、メモリカード150がフォーマットされたり、ユーザの指示によって対象動画像ファイルが消去されたりすると、再びリングバッファ152として利用される。なお、不揮発バッファ153として用いられる容量は予め設定されていてもよい。
【0037】
図3(c)は、ドライブレコーダ100における書き込み制御の概念を説明する概念図である。
図3(c)では、自動ブレーキが動作している場合にイベントの発生が検出された場合について説明する。
システム制御部131がイベントの発生を検出したときに、自動ブレーキが動作していると判断された場合、メモリ制御部137は、イベントの発生時点を含める期間における映像データの動画像ファイルに自動ブレーキフラグ154を追加し、上書き禁止の領域にコピーする。例えば図示するように、メモリ領域X
4に記録された動画像ファイルがイベント発生時点の映像データを含み、かつイベント発生時に自動ブレーキが作動している場合は、メモリ領域X
4に記録された動画像ファイルに自動ブレーキフラグ154を追加する。その後、メモリ領域X
nを不揮発バッファ153に変更して、当該動画像ファイルをイベント記録ファイルとしてここへコピーする。メモリ領域X
4の動画像ファイルに追加された自動ブレーキフラグ154は、リングバッファ形式で上書きされる際に削除される。
【0038】
次に、ドライブレコーダ100の制御フローについて説明する。
図4は、ドライブレコーダ100の制御フローを示すフロー図である。フローは、車両900の走行開始準備が完了する時点から開始する。車両900の走行開始準備の完了とは、例えば車両900のエンジン始動または電源オンなどである。ドライブレコーダ100は、車両の状態によらず常時動作するようにしてもよい。
フローの開始と共にカメラユニット110は撮像を開始し、画像処理部135で逐次生成される動画像ファイルは、メモリ制御部137により、リングバッファ形式で順にメモリカード150に記録される。また、システム制御部131は、加速度センサ920から受ける加速度信号を監視している。以下の処理は、このような通常走行時の記録制御中に実行される処理である。
【0039】
システム制御部131は、ステップS110で、加速度センサ920から取得した加速度信号の示す加速度が第1加速度以上であるか否かを判定する。第1加速度とは、加速度の絶対値に対して設定される閾値であり、ユーザが任意に設定できるようにしてもよい。ここで言う第1加速度とは、車両900の走行中に走行方向における他車両や歩行者、障害物等を対象物センサ930が検知することで自動ブレーキによって車両900が減速または停止するときの加速度である。つまり、第1加速度は、運転者が予め停止位置を認識しながら減速または停止する場合や、停止状態から加速する場合の加速度よりは絶対値の大きい加速度である。
検出された加速度が第1加速度以上である場合(ステップS110のYES)は、ステップS120に進む。加速度が第1加速度未満である場合(ステップS110のNO)は、ステップS160に進む。
【0040】
システム制御部131は、ステップS120に進むと、走行制御部940から取得した走行状態信号に基づいて、自動ブレーキが動作しているか否かを判定する。システム制御部131は、自動ブレーキが動作していると判断した場合(ステップS120のYES)は、イベントの発生を検出してステップS130に進む。システム制御部131が自動ブレーキが動作していないと判断した場合(ステップS120のNO)は、ステップS150に進む。自動ブレーキが動作することで第1加速度以上の加速度が検出された場合とは、車両900が走行中に衝突可能性のある物体を進行方向に検出したことで、自動ブレーキが動作した場合である。言い換えると、衝突可能性のある物体への衝突を回避する運転者によるブレーキ操作が行われなかったか遅れたかのいずれかの場合である可能性が高い。
【0041】
システム制御部131は、ステップS130に進むと、イベントの発生時点を含める期間における映像データの動画像ファイルに自動ブレーキフラグ154を追加するよう、メモリ制御部137を制御する。すなわち、システム制御部131は、ステップS130の処理として、自動ブレーキが動作している旨の情報を映像データに関連付ける。その後、ステップS140に進む。
【0042】
システム制御部131は、ステップS140に進むと、イベントの発生時点を含める期間における映像データの動画像ファイルを上書き禁止の領域にコピーするよう、メモリ制御部137を制御する。すなわち、システム制御部131は、ステップS140の処理として、イベントの発生時点を含める期間における映像データを記録部に記録する。その後、ステップS160に進む。
【0043】
システム制御部131は、ステップS160に進むと、録画停止信号を取得したか否かを判断する。録画停止信号は、例えば車両900の走行終了と共に発生する信号であるほか、ユーザによる停止ボタンの操作によっても発生する信号である。システム制御部131は、録画停止信号を取得したと判断したら、カメラユニット110による撮像を停止させ、生成された動画像ファイルのリングバッファ形式による記録を停止して、一連の処理を終了する。録画停止信号を取得していないと判断したら、ステップS110へ戻って、一連の処理を継続する。
【0044】
システム制御部131は、ステップS150に進んだ場合は、加速度センサ920から取得した加速度信号の示す加速度の大きさが、第1加速度よりも大きい第2加速度以上であるか否かを判定する。第2加速度とは、加速度の絶対値に対して設定される閾値であり、ユーザが任意に設定できるようにしてもよいが、第1加速度よりは絶対値が大きい値が設定される。システム制御部131は、加速度が第2加速度以上である場合(ステップS150のYES)は、イベントの発生を検出してステップS140に進む。加速度が第2加速度未満である場合(ステップS150のNO)は、イベントが発生していないと判断してステップS160に進む。自動ブレーキが動作せずに第2加速度以上の加速度が検出された場合とは、車両900の走行中、車両900の進行方向に衝突可能性のある物体が存在することを運転者が認識し、急ブレーキ操作した場合である。言い換えると、第2加速度とは、自動ブレーキが動作する前に運転者が急ブレーキ操作を行ったことによる加速度である。
【0045】
第1加速度と第2加速度との絶対値を大きさの差異について説明する。自動ブレーキを動作させるシステムは、対象物センサ930による物体検出を常時行っているとともに車両900の走行速度も考慮して、車両900の進行方向の物体に対して衝突しないような距離からブレーキを動作させる。これに対し、運転者が咄嗟の急ブレーキ操作を行う場合とは、急ブレーキ操作を行うまで車両900の進行方向における衝突可能性のある物体に運転者が気付かず、運転者が気付いた後にパニックブレーキをかける場合であることが多い。このため、予め物体との距離と走行速度とを考慮して衝突を回避するための自動ブレーキによる加速度に比して、パニックブレーキである運転者によるブレーキ操作による加速度は、絶対値が大きい。
【0046】
以上で説明したステップS110〜S160を繰り返すことにより、システム制御部131は、自動ブレーキが動作している場合は、車両900の加速度が第1加速度以上である場合にイベントの発生を検出する。また、システム制御部131は、自動ブレーキが動作していない場合は、車両900の加速度が第2加速度以上である場合にイベントの発生を検出する。また、システム制御部131がイベントの発生を検出した場合に、メモリ制御部137は、イベントが発生したと判断された時点を含める期間における、車両900の周囲を撮像した映像データを記録部に保存する。このようにすることで、衝突には至らない場合であっても運転者の不注意が発生した状況の映像データを適切に保存することができる。
【0047】
一方、自動ブレーキが動作していない状態で第1加速度以上第2加速度未満の加速度によるブレーキ操作が運転者によって行われた場合は、運転者は車両900の進行方向に存在する物体を十分認識した上でブレーキ操作を行っている。このような安全運転上支障のないブレーキ操作は、イベントとして含めない。しかし、自動ブレーキが動作することで第1加速度以上の加速度によるブレーキ動作が行われた場合、そのブレーキ動作による加速度が第2加速度未満であったとしても、運転者が衝突可能性のある物体に気付いていなかった可能性が高い。このため、自動ブレーキが動作した場合と動作していない場合の急ブレーキに対し、異なる加速度でイベント発生と判断し、映像を保存することで、運転者の不注意によって発生した急ブレーキの状況を適切に保存することができる。なお、メモリ制御部137が保存する映像データの期間の長さは、数秒〜数分の間で設定するのが望ましいが、特に時間を制限するものではないし、ファイル単位やデータ長単位であってもよい。
【0048】
また、自動ブレーキの動作の有無を問わず、衝突に該当する加速度が検出された場合は、イベントが発生したと判断してもよい。衝突に該当する加速度とは、第2加速度より加速度が大きい場合、つまりブレーキによる停止より急峻な速度の傾きで停止したときの加速度である。逆に言えば、第1加速度および第2加速度は、衝突に該当せず急ブレーキによる加速度である。ドライブレコーダ100は、ステップS110の前に、この判断処理を行ってもよい。
【0049】
また、ステップS130において動画像ファイルに自動ブレーキフラグ154を追加することで、イベントの発生時点に自動ブレーキが動作していたか否かの情報を、映像データと関連付けて記録部に記録することができる。すなわち、車両900の走行状態の情報として、自動ブレーキが動作しているか否かの情報を映像データと関連付けて保存することができる。このように構成することで、イベント発生時に自動ブレーキが動作している場合の動画像ファイルと、イベント発生時に自動ブレーキが動作していない場合の動画像ファイルとを、区別した状態で保存することができる。
【0050】
また、本実施形態のステップS140において、システム制御部131は、走行制御部940から取得した走行状態信号に基づいて、車両900の走行状態の情報を映像データに関連付けて記録させるようにメモリ制御部137を制御してもよい。
このように構成することで、例えばイベント発生時点における車両900の速度や、アクセル操作量などの情報を記録することができる。このような情報は、イベントの発生原因を解析する上で有用である。
【0051】
あるいは、メモリ制御部137は、イベント発生時に運転者がブレーキ操作をしているか否かの情報を記録することができる。このような情報は、イベントの発生時における運転者の反応を解析する上で重要である。例えば、運転者の注意力が著しく欠けている場合や居眠り運転をしている場合は、自動ブレーキが動作しても反応できないが、運転者の不注意が一時的なものである場合は、自動ブレーキが動作した時に反射的にブレーキを踏むことがある。したがって、イベント発生時に運転者がブレーキ操作をしているか否かを解析することで、運転者の不注意の度合いを測ることができる。
【0052】
また、本実施形態のステップS140において、システム制御部131は、イベントの発生時点を含める所定期間における映像データの動画像ファイルを、メモリカード150の上書き禁止領域にコピーすることに代えて、図示しない通信制御部および通信部を介して、イベントの発生時点を含める期間における映像データの動画像ファイルを他の装置やサーバに送信してもよい。本実施形態において、急ブレーキがイベントとして判断されたときの映像データは、運転者が進行方向に対して注意が散漫になっている状態などを記録した映像データである。したがって、当該データは、運転状況に伴う運転者の注意力の変化などを知る上で、有用な情報となりうる。
例えば、運転者が所有している装置に映像データが送信される場合は、運転者が自らの傾向を把握することができ、自らの運転の安全性を高めるための有用な情報となりうる。また、運転者を雇用する事業者や、運転者または運転者を雇用する事業者が加入している自動車保険事業者のサーバ等に映像データが送信される場合は、運転者の状況や傾向などを当該事業者等が把握するための有用な情報となりうる。さらには、ナビゲーション情報や地図情報を提供する事業者や、道路を管轄する官公庁などのサーバに映像データが送信される場合は、当該事業者や官公庁等がイベントの発生しやすい位置情報を把握するための有用な情報となりうる。なお、この場合、映像データは位置情報とともに匿名性を確保した上で送信されることが好ましい。
【0053】
また、上記で説明したフローの変形例として、ステップS110とステップS120を入れ替えてもよい。
図5は、ドライブレコーダ100の制御フローの変形例を示すフロー図である。
【0054】
変形例においては、
図5に示すように、システム制御部131は、まずステップS120に進み、自動ブレーキが動作しているか否かを判定する。自動ブレーキが動作している場合(ステップS120のYES)はステップS110に進む。システム制御部131は、ステップS110に進んだ場合は、車両900の加速度が第1加速度以上であるか否かを判定し、加速度が第1加速度以上である場合(ステップS110のYES)は、ステップS130に進む。その他のフローについては、
図4で示した構成と同様である。
このようなフロー構成とした場合でも、自動ブレーキが動作している場合は第1加速度以上の加速度でイベントの発生を検出し、自動ブレーキが動作していない場合は第2加速度以上の加速度でイベントの発生を検出することができる。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態に係る記録制御装置の一例であるドライブレコーダ200が車両900に設置されている様子を示す概略図である。ドライブレコーダ200は、第1の実施形態のドライブレコーダ100に対して、カメラユニット110の他に、車両900の運転席を撮像するカメラユニット210を備える点で異なる。
【0056】
このように構成されたドライブレコーダ200は、車両900の周囲を撮像した第1映像データに加えて、車両900の運転席を撮像した第2映像データを記録することができる。特にイベント発生時に自動ブレーキが動作している場合は、運転者に不注意があった等の状況が考えられるため、車両900の運転席を撮像した第2映像データはイベントの発生原因を探る上で有用である。
【0057】
本実施形態のドライブレコーダ200は、メモリIF138にメモリカード150を2つ装着できるように構成してもよい。この場合、一方のメモリカード150を第1映像データ用とし、他方のメモリカード150を第2映像データ用とすることもできる。もちろん、1つのメモリカード150のメモリ領域を第1映像データ用と第2映像データ用に区分して利用しても良い。
【0058】
図7は、ドライブレコーダ200の制御フローを示すフロー図である。
図7のフロー図は、
図4のフロー図におけるステップS130、S140が削除され、代わりにステップS230、S241、S242が加えられている。このため、
図4のフロー図と共通する処理については同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0059】
ステップS120で、システム制御部131が自動ブレーキの動作を検出した場合(ステップS120のYES)、ステップS230に進む。
システム制御部131は、ステップS230に進むと、イベントの発生時点を含める期間における第1映像データの動画像ファイルと第2映像データの動画像ファイルに自動ブレーキフラグ154を追加する。その後、ステップS241に進む。
【0060】
システム制御部131は、ステップS241に進むと、イベントの発生時点を含める所定期間における第1映像データの動画像ファイルと第2映像データの動画像ファイルを上書き禁止の領域にコピーするよう、メモリ制御部137を制御する。すなわち、システム制御部131は、ステップS241の処理として、イベントの発生時点を含める所定期間における第1映像データ及び第2映像データを記録部に保存する。その後、ステップS160に進む。
【0061】
また、ステップS150で、車両900の加速度が第1加速度とは異なる第2加速度以上であった場合(ステップS150のYES)、ステップS242に進む。
システム制御部131は、ステップS242に進むと、イベントの発生時点を含める所定期間における第1映像データの動画像ファイルを上書き禁止の領域にコピーするよう、メモリ制御部137を制御する。すなわち、システム制御部131は、ステップS140の処理として、イベントの発生時点を含める所定期間における第1映像データを記録部に保存する。その後、ステップS160に進む。
【0062】
以上で説明したフローに基づいて、ドライブレコーダ200は、自動ブレーキが動作している場合、イベントの発生時点を含める所定期間の車両900の運転席を撮像した第2映像データを保存することができる。
【0063】
なお、本実施形態のステップS150において、車両900の加速度が第2加速度以上であった場合(ステップS150のYES)は、ステップS241に進むフロー構成にしてもよい。この場合、システム制御部131は、第1映像データと第2映像データとを上書き禁止領域にコピーする。したがって、自動ブレーキが動作していないときであっても、車両900の運転席を撮像した第2映像データを記録部に保存することができる。
【0064】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態においては、メモリ制御部137は、イベントの発生時点を含める所定期間の映像データを保存する。また、当該所定期間の長さは、自動ブレーキが動作しているときのイベントが発生した場合、自動ブレーキが動作していないときのイベントが発生した場合よりも長い。
【0065】
図8は、本実施形態に係るメモリ制御部137のメモリ制御について説明する概念図である。
図8(a)では、イベント発生時に自動ブレーキが動作していない場合について説明する。
システム制御部131がイベントの発生を検出すると、メモリ制御部137は、イベントの発生時点を含める第1期間における映像データを含む動画像ファイルを保存する。例えば、図示するように、3つのメモリ領域X
3〜X
5に記録された動画像ファイルがイベントの発生時点を含める第1期間における映像データを含む場合は、3つのメモリ領域X
n−2〜X
nを不揮発バッファ153に変更して、当該動画像ファイルをイベント記録ファイルとしてここへコピーする。
【0066】
図8(b)では、イベント発生時に自動ブレーキが動作している場合について説明する。
システム制御部131がイベントの発生を検出すると、メモリ制御部137は、イベントの発生時点を含める第2期間における映像データを含む動画像ファイルに自動ブレーキフラグ154を追加して、当該ファイルを保存する。例えば、図示するように、5つのメモリ領域X
2〜X
6に記録された動画像ファイルが、イベントの発生時点を含める第2期間の映像データを含む場合は、メモリ領域X
2〜X
6に記録された動画像ファイルに自動ブレーキフラグ154を追加する。そして、5つのメモリ領域X
n−4〜X
nを不揮発バッファ153に変更する。そして、当該動画像ファイルをイベント記録ファイルとしてここへコピーする。
【0067】
このように、メモリ制御部137は、自動ブレーキが動作していない場合は、イベントの発生時点を含める第1期間における映像データを保存し、自動ブレーキが動作している場合は、イベントの発生時点を含める第2期間における映像データを保存する。このようにすることで、イベント発生前後の映像データを保存することができる。
【0068】
ところで、自動ブレーキが動作していない状態で第2加速度以上の加速度が検出された場合とは、運転者が覚醒はしているが他の状態に気を取られていた場合などである。この場合、記録対象となる映像データはイベントの発生時点を含む第1期間で十分である。これに対し、自動ブレーキが動作することで第1加速度以上の加速度が検出された場合とは、自動ブレーキが動作するまで運転者が覚醒していなかった可能性が高い。したがって、自動ブレーキが動作するまでの状況をより長く保存することが求められる。この場合、ドライブレコーダ100は、イベントの発生時点を含む、第1期間よりも長い第2期間の映像データを保存することで、イベント発生時前の状況を適切に記録することができる。また、このとき、第2期間は、イベント発生時点より前の期間がイベント発生時点より後の期間よりも長く設けることが適切である。
【0069】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記の実施形態においては、メモリ領域151を、連続するリングバッファ152と連続する不揮発バッファ153に区分する例を説明したが、もちろん物理的に連続していなくても良い。また、以上の実施形態においては、リングバッファ152の一部を不揮発バッファ153に変更して、そこへ対象となる動画像ファイルをコピーする形態について説明したが、上書きを禁止する書込制御はこれに限らない。例えば、対象となる動画像ファイルが記録されているメモリ領域に上書き禁止のフラグを立てることにより、その領域を不揮発バッファ153と扱うこともできる。この場合は、動画像ファイルのコピー処理を省略できる。
【0070】
また、上記の実施形態においては、一つのメモリカード150のメモリ領域151をリングバッファ152と不揮発バッファ153に区分する例を説明したが、それぞれに対応するメモリカード150を装着可能な構成にしてもよい。すなわち、リングバッファ152として利用するメモリカード150と、不揮発バッファ153として利用するメモリカード150とをそれぞれ装着できる構成にしてもよい。また、着脱可能なメモリカード150を利用するのではなく、本体ユニット130に実装されたメモリであっても構わない。さらには、メモリIF138を無線IFとして構成し、物理的には隣接しないメモリや他の装置に対して上述の書き込み制御を実行しても良い。
【0071】
また、上記の実施形態においては、例えば1分の動画像ファイルを書込制御の一単位として説明したが、書込制御の一単位はひとつの動画像ファイルに限らない。例えば、フレーム単位で書込制御を行っても良い。また、対象とする映像データは、動画像データにかぎらず、例えば、インターバル撮影される静止画像データであっても構わない。
【0072】
例えばフレーム単位で書き込み制御を行う場合には、既に生成されている例えば1分の動画像ファイルから、対象となる期間のファイルを切り出して新たな動画像ファイルを生成し、これをイベント記録ファイルとして不揮発バッファへ記録しても良い。この場合は、イベントが発生した時点を起点とする動画像ファイルを残すことができる。もちろん、イベントの発生時点から所定期間遡った時刻から不揮発バッファへ記録する場合も、この起点に対して所定時間遡った時刻を事前期間の開始時点とすることができる。このように起点を管理すれば、通常時の動画像ファイル時間に関係なく、例えばイベント発生前の10秒間とイベント発生後の10秒間とからなる動画像ファイルを、イベント記録ファイルとして確実に残存させることができる。
【0073】
また、上記の実施形態においては、イベントの発生を検出するセンサとして加速度センサ920を採用したが、他のセンサであっても構わない。例えば、対象物の衝突による変形を検出する歪みセンサであっても構わないし、異常温度を検出する温度センサであっても構わない。もちろん、複数のセンサを組み合わせて採用しても構わない。また、加速度センサ920等のセンサは、ドライブレコーダに組み込まれて構成されても良い。
【0074】
また、上記実施の形態において、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラム等によって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又はそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0075】
また、上記のプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、CD−R(CD-Recordable)、CD−R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。