(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓄熱室のピラーウォールを構築する工程、または燃焼室を構築する工程に用いられることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のコークス炉の築造方法。
【背景技術】
【0002】
室炉式コークス炉は、炭化室と燃焼室とが炉団長方向(炉幅方向)に交互に配置され、炭化室と燃焼室の上部には炉頂部、下部には蓄熱室が配列されている。燃焼室と蓄熱室との間の部分は蛇腹部とも呼ばれる。蓄熱室の下部にはソールフリューが配置される。通常、炭化室の寸法は、炉高4〜7.5m、炉幅350〜550mm、炉長13〜17mである。燃焼室は炉長方向に配列された燃焼室フリュー列からなる。炭化室と燃焼室との隔壁および燃焼室フリュー同士の隔壁、炉頂部、蛇腹部、蓄熱室、ソールフリューは、いずれも耐火物煉瓦の煉瓦積み構造で形成される。例えば、炭化室を50室有する室炉式コークス炉(以下単に「コークス炉」という。)においては、上記耐火物煉瓦を合計で130万個用いて構成されている。
【0003】
既存のコークス炉は、現在、全国的に、20年〜30年の稼働期間を経て老朽化してきており、新たなコークス炉を建設する必要が迫っている。
【0004】
コークス炉の建設は、従来、築炉工が耐火物煉瓦を手積みすることで行っている。手積みによる建設では、耐火物煉瓦の一つ一つにコテでモルタルを塗り、前後左右に往復させつつ押し込み(揉み作業)、空気と余分なモルタルを押し出して目地を形成するという作業を繰り返し行う必要がある。さらに、コークス炉に使用される耐火物煉瓦は、一つあたり十数kgの重さがあり、これを積み上げる作業は極めて重労働といえる。
【0005】
また、コークス炉は、様々な形状、大きさの多種類の耐火物煉瓦を複雑に組み合わせる必要があり、据付精度については、±2mm以内に抑える必要がある。そのためには、熟練した築炉工が大人数必要であるが、熟練した築炉工は高齢化し、大人数を確保することが難しくなっている。
【0006】
このような事情に対し、工期短縮による必要な築炉工の人数削減を目的とし、予め、築炉現場から離れた作業しやすい広い場所で、複数の耐火物煉瓦を所定の大きさまで積み上げてモルタルにより一体化したブロック(以下、煉瓦ブロックと称す)とし、この煉瓦ブロックを築炉現場で組み込んでコークス炉を積み上げる、プレハブ工法が公知である(特許文献1)。
【0007】
プレハブ工法は、手積みと比べて築炉現場で積み上げるブロック数が減少し、狭い築炉現場での作業が短縮されるため、作業効率が良く、築炉期間が短くなるとされている。
【0008】
一方で、プレハブ工法で用いる煉瓦ブロックは、耐火物煉瓦単体よりも質量と寸法が、はるかに大きい。例えば特許文献1では、煉瓦ブロックの炉長方向長さが炉長の1/4以上、2/3以下であるため、同文献で想定する炉長15mに対して、煉瓦ブロック長が4〜10mに達する。
そのため、人力のみでは煉瓦ブロックを築炉現場で組み込むことができず、トング等の治具で煉瓦ブロックを挟んでクレーンで吊り上げてから積み上げる必要がある(特許文献1)。
特許文献2では、トングの下端部に押さえ具を設け、煉瓦ブロックを吊り上げた状態での滑落を防止するとともに、押さえ具をスペーサとして使用し、炉高方向の位置決めをすることも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
コークス炉の煉瓦構築に際し、耐火物煉瓦をコークス炉内において手積み方式で構築することに比較し、炉外においてプレハブ方式によって煉瓦ブロックを形成することにより、熟練した築炉工の必要人数を多少は低減することができる。
【0011】
一方で、煉瓦ブロックは、特許文献1に記載のように、耐火物煉瓦単体よりも大きいため、炉高方向の位置決めに必要な揉み作業の負担が特に大きい。また、目地厚は常に一定ではなく、煉瓦ブロックの寸法公差によって、厚さを変える必要がある。また、揉み出し後の目地厚を一定に保つためには、塗り付け時のモルタル厚を一定にする必要がある。
【0012】
しかしながら、特許文献1の構造はスペーサが煉瓦と一体に成型されており、スペーサの厚さを変えることができないため、煉瓦の寸法公差等が原因で、目地厚を変えたい場合に対応できなかった。また、特許文献1の構造は、煉瓦ブロックがスペーサに接触した後は煉瓦ブロックを動かせないため、揉み出しができなかった。
特許文献2の構造は、テーパ状の押さえ具の打ち込み深さで目地厚の調整を行うことができるが、煉瓦ブロックがスペーサに接触した後は、やはり煉瓦ブロックを動かせないため、揉み出しができなかった。
そのため、特許文献1、2の構造では、炉高方向の据付精度は、水糸等を用いて、熟練した築炉工の技能に依存することに変わりなかった。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、構築するブロックが大型化しても、炉高方向の据付精度に個人差が生じ難いコークス炉の築造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のコークス炉の築造方法は、既設煉瓦上に、モルタルを介して煉瓦ブロックを設置する工程を有する、コークス炉の築造方法であって、前記既設煉瓦上に、目地を形成するための前記モルタルを、目地厚以上の厚さに塗布する塗布工程と、塗布した前記モルタルの表面を板状部材で均す、レベル出し工程と、目地厚に対応する断面径の棒を、軸方向が炉長方向に垂直になるように前記モルタルに埋め込む、埋め込み工程と、前記モルタル上に前記煉瓦ブロックを設置し、前記棒が前記煉瓦ブロックに接触するまで水平方向に前記煉瓦ブロックをスライドさせる、揉み出し工程と、を実施することを特徴とする。
本発明では、スペーサとして棒を用いるため、揉み出しの際に、棒の断面径(断面が円であれば、直径)で目地厚が決まる。
そのため、揉み出しの際の据付精度に個人差が生じる恐れが無い。
また、棒の断面径で目地厚が決まるため、目地厚を変えたい場合は、断面径の異なる棒を用いればよく、目地厚の変化に容易に対応できる。
また、揉み出しの際に、棒と煉瓦が接触した後でも棒が移動できるため、揉み出しの際に棒の位置がずれてもよく、据付精度に個人差が生じる恐れが無い。
さらに、揉み出し前にモルタルの表面を板状部材で均すので、揉み出し前のモルタルの厚さをある程度均一にでき、揉み出しの際の据付精度をさらに高めることができる。
【0015】
本発明では、前記板状部材は、長板状の本体と、前記レベル出し工程における前記モルタルの目標高さに対応した長さだけ前記本体の長手方向端面から突出して設けられ、かつ間隔が前記モルタルの炉団長方向の幅に対応した一対の突起状のモルタル高さガイド部と、前記一対のモルタル高さガイド部の間から突出し、前記煉瓦ブロックの下面のダボに対応するダボ溝を前記モルタルに形成する凸形状の板状部材側ダボと、を備え、前記レベル出し工程は、前記一対のモルタル高さガイド部を、前記既設煉瓦に接触させて炉長方向にスライドさせることにより、前記モルタルの表面を均す工程であるのが好ましい。
本発明では、板状部材のモルタル高さガイド部を既設煉瓦に接触させてスライドさせるだけで、モルタルの表面を均すことができる。
そのため、モルタルを均す際に、モルタル厚に個人差が生じる恐れが無い。
また、板状部材が、板状部材側ダボを備えるため、煉瓦ブロックの下面にダボが設けられており、対向する既設煉瓦の上面にダボに対応するダボ溝が設けられている場合でも、モルタル厚を均一にできる。
【0016】
本発明では、前記埋め込み工程は、少なくとも2本の前記棒を前記モルタルに埋め込む工程であり、かつ、前記既設煉瓦の炉団長方向と前記棒の軸方向が平行になるように、前記棒を、前記煉瓦ブロックの長手方向の長さ以下の間隔で前記モルタルに埋め込む工程であるのが好ましい。
本発明では、2本の棒を炉団長方向に平行に埋め込むため、煉瓦ブロックが2本の棒に支持された状態で揉み出しが完了する。
そのため、揉み出し時に煉瓦ブロックが傾き難く、据付精度をさらに高めることができる。
【0017】
本発明では、前記揉み出し工程は、前記棒の軸方向に直交する水平方向に前記煉瓦ブロックを往復移動させる工程であるのが好ましい。
本発明では、揉み出し時に2本の棒が、煉瓦ブロックと接触した後に移動するため、揉み出しの際に煉瓦ブロックの移動を妨げることがない。
【0018】
本発明のコークス炉の築造方法は、蓄熱室のピラーウォールを構築する工程、または燃焼室を構築する工程に用いられるのが好ましい。
本発明によれば、蓄熱室のピラーウォールの構築用または燃焼室の構築用に、煉瓦ブロックを用いる場合であっても、炉高方向の位置決めで個人差が生じ難い。
【0019】
本発明では、前記煉瓦ブロックは、複数の煉瓦を多段に積み重ねたプレハブ構造であるのが好ましい。
この発明によれば、コークス炉の構築に煉瓦単体よりも質量と寸法が、はるかに大きいプレハブブロックを用いる場合であっても、位置決めで個人差が生じ難い。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
ここでは、
図1〜
図11を参照して、複数の煉瓦をプレハブ方式で構築した煉瓦ブロックを用い、コークス炉の蓄熱室のピラーウォールの一部を構築する方法を例に、説明する。ただし、本発明はピラーウォールの構築方法に限定されず、プレハブ方式にも限定されない。
図1〜
図11では、築造すべきコークス炉の炉団長方向をX方向、炉長方向をY方向、炉高方向をZ方向とする。
【0022】
まず、予めプレハブ方式によって煉瓦ブロック100を構築しておく。
煉瓦ブロック100は、
図1に示すように、複数の煉瓦をモルタル108を介して多段に積み重ねたプレハブ構造である。
【0023】
煉瓦ブロック100は、炉団長方向の長さL
Xが、ピラーウォールの幅と同じであることが望ましい。炉長方向の長さL
Yは、ピラーウォールの炉長未満である。炉高方向の高さL
Zもピラーウォールの炉高未満であり、複数の煉瓦ブロック100を積み重ねてピラーウォールを構築する。
図2に示すように、煉瓦ブロック100の下面には、炉長方向に沿って複数のダボ102が突出している。
図2に示すように、煉瓦ブロック100の上面には、炉長方向に沿ってダボ102に対応する形状のダボ溝106が設けられている。
煉瓦ブロック100を載置する既設煉瓦103の上面にも、ダボ102に対応するダボ溝106が設けられる(
図3参照)。
【0024】
煉瓦ブロック100の構築場所は、コークス炉の築造場所である必要はない。他の場所で構築した煉瓦ブロック100を、コークス炉の築造場所まで搬送してもよい。
【0025】
次に、
図3に示すように、構築済の煉瓦である既設煉瓦103のうち、これから煉瓦ブロック100を積み重ねる部分に、目地を形成するためのモルタル91を塗布する(塗布工程)。モルタル91は目地厚よりも厚く塗布する。これは、揉み出し作業でモルタル91の一部が排出されるためである。
【0026】
次に、
図4に示すように、モルタル91の表面を板状部材31で均す(レベル出し工程)。具体的な方法は以下の通りである。
まず、
図5に示すような、モルタル91を均す板状部材31を用意する。
図5に示すように、板状部材31は、本体33と、モルタル高さガイド部35A、35Bと、板状部材側ダボ37と、炉団長ガイド部37A、37Bを備える。
本体33は均す際の持ち手になる部分であり、長板状である。
モルタル高さガイド部35A、35Bは、均す際のモルタル91を目標高さにするための部材である。モルタル高さガイド部35A、35Bは、モルタル91の目標高さに対応した長さHだけ、本体33の長手方向端面33Aから突出して設けられ、かつ間隔がモルタル91の幅に対応した一対の突起状の部材である。
具体的には、モルタル高さガイド部35A、35Bの内側の間隔L
1は、既設煉瓦103の炉団長方向の幅L
0(
図3)よりも、若干短くなっている。
板状部材側ダボ37は、モルタル高さガイド部35Aとモルタル高さガイド部35Bの間に設けられ、本体33の長手方向端面33Aから突出し、煉瓦ブロック100の下面のダボ102に対応する凸形状の部材である。
炉団長ガイド部37A、37Bは、均す際に板状部材31が炉団長方向にずれるのを防ぐガイド部であり、ここではモルタル高さガイド部35A、35Bの外側に設けられ、本体33の長手方向端面33Aから突出した凸形状である。
炉団長ガイド部37A、37Bは、モルタル高さガイド部35A、35Bの長さHよりも突出長さTが長い。炉団長ガイド部37A、37Bの内側の幅L
0は、既設煉瓦103(
図3)の炉団長方向の幅L
0に等しい。
【0027】
この板状部材31を、炉団長ガイド部37A、37Bで既設煉瓦103を挟み込むようにして、モルタル高さガイド部35A、35Bをモルタル91に接触させて、炉長方向にスライドさせることにより、長手方向端面33Aが、モルタル91の表面を均す。
【0028】
このように、揉み出しの前にモルタル91の表面を均すことにより、モルタル91の表面が平滑かつ一定になり、煉瓦ブロック100の据付精度をさらに高めることができる。
また、板状部材31によるモルタル91の均しは、モルタル高さガイド部35A、35Bを、既設煉瓦103に接触させて板状部材31をスライドさせるだけでよいので、作業者の技量にあまり左右されずにモルタル91の表面を平滑にできる。
【0029】
なお、
図4に示すように、均す際には既設煉瓦103において、モルタル高さガイド部35A、35Bと接触した、接触面104上のモルタル91は除去されるが、揉み出しの際に排出されるモルタル91で、接触面104上にモルタル91が再度充填される。
【0030】
次に、
図6に示すように、スペーサである棒としての丸棒21を、軸方向が炉長方向に垂直になるように、既設煉瓦103に設置する(埋め込み工程)。具体的には、炉団長方向と丸棒21の軸方向が平行になるように、モルタル91に上面側から埋め込む。ここでは、棒として、丸棒(軸方向に垂直な断面が円形の棒)を例示しているが、丸棒には限定されない。軸方向に垂直な断面が楕円形の棒、四角以上の多角形の棒でもよい。以下の説明では丸棒を例に説明する。
丸棒21は少なくとも2本あるのが望ましく、2本の間隔Dは煉瓦ブロック100の長さL
Y以下が望ましい。これは、煉瓦ブロック100が2本以上の丸棒21に支持された状態で揉み出しできるため、揉み出し時に煉瓦ブロック100が傾斜し難くなるためである。丸棒21が3本以上の場合は、間隔Dは、炉長方向両端の丸棒21の間隔とする。
【0031】
丸棒21の軸方向の長さは、
図6に示すように、炉団長方向に平行な煉瓦壁面120と、煉瓦壁面120から最も近いダボ溝106の距離D
2よりも若干長い程度が好ましい。また、丸棒21は、モルタル91表面に形成された溝122よりも炉団長方向外側に設けられる。これは、丸棒21と、煉瓦ブロック100の下面の、ダボ102(
図2参照)の干渉を防ぐためである。
丸棒21の直径は、目地厚と同程度である。断面が楕円形や多角形の棒を用いる場合は、既設煉瓦103に設置した状態での高さ(断面径)が目地厚と同程度となる寸法とする。丸棒21の材料は特に限定されないが、コスト、強度、入手のし易さ、および加工性を考慮すると、鋼材が望ましい。
【0032】
丸棒21は、
図7に示す構造がより好ましい。具体的には、丸棒21は、埋め込み部21Aと、鍔部21Bと、取手部21Cを備えるのが好ましい。
埋め込み部21Aはモルタル91に埋め込まれる棒状の部材であり、長さは距離D
2(
図6参照)以下である。
鍔部21Bは、埋め込み部21Aの一方の端部に設けられ、埋め込み部21Aより径の大きい円板状の部材である。
取手部21Cは、鍔部21Bの、埋め込み部21Aが設けられた面と逆の面に設けられた棒状の部材である。
この構造では、
図8に示すように、取手部21Cを作業者が手で持って、鍔部21Bの埋め込み部21A側の面が煉瓦壁面120と接触するように、埋め込み部21Aをモルタル91に埋め込む。
丸棒21をモルタル91から取り外す場合は、取手部21Cを作業者が手で持って、炉団長方向に引き抜けばよい。
このように、鍔部21Bを設けることにより、埋め込み部21Aしかモルタル91に埋まらなくなるので、丸棒21がモルタル91に完全に埋まってしまい、取り出せなくなることを防げる。また、取手部21Cを設けることにより、モルタル91の埋め込み、モルタル91からの取り外しが容易にできる。
【0033】
次に、
図9に示すように、煉瓦ブロック100の長手方向側面、具体的には法線方向が炉団長方向に平行な壁面を、両面からトング1で挟み込み、クレーン200で吊り上げて、既設煉瓦103の上方に移動させる。
トング1は
図9に示すように、把持部3と、パンタグラフ13と、連結部19を備える。
把持部3は、煉瓦ブロック100の長手方向側面を挟み込んで保持する部材である。
パンタグラフ13は、上下に伸縮することにより、左右の幅を変え、把持部3の間隔を調整して、煉瓦ブロック100を保持する部材であり、把持部3を連結するように設けられる。
連結部19は、トング1をクレーンと連結するための部材であり、パンタグラフ13に連結される。連結部19は、クレーンのフックが引っかけられる環状部20も備える。
【0034】
次に、
図10に示すように、トング1で釣り上げた煉瓦ブロック100を下降させてモルタル91に接触させ、既設煉瓦103上に設置する。
【0035】
次に、全ての丸棒21が煉瓦ブロック100に接触するまで、煉瓦ブロック100を水平方向にスライドさせる。具体的には、
図11に示すように、煉瓦ブロック100を、丸棒21の軸方向に直交する炉長方向に往復移動させて、煉瓦ブロック100の下面が全ての丸棒21に接触するまで、余分なモルタル91を排出する。この際、先行して煉瓦ブロック100の下面が、一部の丸棒に接触した後も、丸棒21が移動するので、丸棒21が煉瓦ブロック100の移動を妨げることなく、揉み出しを継続できる。
図9〜
図11に示す一連の工程を、揉み出し工程ともいう。
【0036】
煉瓦ブロック100の下面が全ての丸棒21に接触すると、炉長方向の位置合わせを行い、揉み出しを終了する。
最後に、煉瓦ブロック100が位置ずれを生じない程度に、モルタル91が硬化するまで放置し、硬化した後に、トング1を煉瓦ブロック100から取り外す。
丸棒21は、モルタル91から取り外してもよいし、埋め込んだままでもよい。
以上がコークス炉の築造方法の説明である。
【0037】
このように、本実施形態によれば、モルタルを均した後で、目地厚に対応する直径の丸棒21を、軸方向が炉頂方向に垂直になるようにモルタル91に埋め込んでから揉み出しを行うため、揉み出しの際に、丸棒21の直径で目地厚が決まる。
また、丸棒21の直径で目地厚が決まるため、目地厚を変えたい場合は、直径の異なる丸棒21を用いればよく、目地厚の変化に容易に対応できる。
また、揉み出しの際に、丸棒21と煉瓦ブロック100が接触した後は、煉瓦ブロック100をスライドさせても、丸棒21が煉瓦ブロック100と線接触しつつ回転するため、炉高方向の高さが変わらない。そのため、揉み出しの際に丸棒21の位置がずれてもよく、据付精度に個人差が生じる恐れが無い。また、丸棒21が煉瓦ブロック100の移動を妨げることなく、揉み出しを継続できる。
また、本実施形態によれば、モルタル91の表面を板状部材31で均してから、煉瓦ブロック100を設置して揉み出しを行う。
そのため、煉瓦ブロック100の設置前にモルタル91の表面が平滑になり、揉み出しの際の据付精度に個人差が生じる恐れが無い。
【0038】
また、本実施形態によれば、モルタル高さガイド部35A、35Bを、既設煉瓦103に接触させて、板状部材31をスライドさせるだけでモルタル91を均せるので、作業者の技量にあまり左右されずにモルタル91の表面を厚さ一定で平滑にできる。
そのため、煉瓦ブロックの設置前にモルタル91の厚さを一定にでき、据付精度をさらに高められる。
【0039】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の思想の範囲内において各種変形例および改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明の範囲に含まれる。
例えば、上記した実施形態では、本発明をコークス炉の蓄熱室のピラーウォールの一部を構築する方法に適用した場合を挙げたが、本発明は揉み出しの際にブロックを移動させる工程を有するものであれば特に限定されない。例えばコークス炉の燃焼室を構築する工程に適用することも可能である。