(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流体の噴射方向に沿った方向から見て、前記摺動部の外形形状が多角形状とされ、 前記シート部材同士の縁部が重なる部位が前記摺動部の角部を避けて配置されている ことを特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に放射性物質の除去を行う場合等には、除去された物質が周囲に拡散することを防止するために、流体の噴射スポットを囲うようなシュラウドを設けることが好ましい。一方で、上述のような流体噴射装置によって処理対象物に流体を噴射した場合には、主に流体が直接噴射される局所的な領域にて流体による処理が行われる。このため、処理対象物の表面の広い範囲にて処理を行う場合には、流体の噴射スポットを処理対象物の表面に沿って移動させる必要がある。
【0005】
しかしながら、噴射スポットを移動させるために噴射ユニットを移動させると、噴射ユニットの移動に伴ってシュラウドも移動される。この結果、シュラウドと処理対象物との間に大きな隙間が発生し、シュラウド内の物質がシュラウドの外部に漏出することが考えられる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、噴射ユニットから処理対象物に流体を噴射する場合に、処理対象物から除去された物質の外部への漏出を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、噴射ユニットから処理対象物に流体を噴射すると共に噴射した流体を回収する流体噴射装置であって、噴射ユニットから噴射される上記流体の噴出経路を囲み、上記流体の噴射方向に向けて開口されたシュラウドと、上記シュラウドを外側から囲って配置されると共に上記シュラウドの移動に伴って上記処理対象物の表面に摺動される摺動部と、上記摺動部を外側から囲って配置されると共に気体遮蔽性を有する可撓性遮蔽部材と、上記シュラウドの内部を排気する排気装置とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記摺動部が、上記流体の噴射方向に沿って配置された複数の線状体からなるブラシ部であるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記可撓性遮蔽部材が、上記噴射ユニットを中心とする周方向にて、隣接する縁部同士が重ねて配置される複数のシート部材を有するという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記噴射ユニットを挟んで一方側に配置された上記シート部材の上記流体の噴射方向に沿った方向の長さ寸法が、他方側に配置された上記シート部材の上記流体の噴射方向に沿った方向の長さ寸法よりも大きく設定されているという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第3または第4の発明において、上記流体の噴射方向に沿った方向から見て、上記摺動部の外形形状が多角形状とされ、上記シート部材同士の縁部が重なる部位が上記摺動部の角部を避けて配置されているという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記流体として液体窒素を上記噴射ユニットに供給する液体窒素供給部を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シュラウドが移動されると、シュラウドを囲む摺動部が処理対象物の表面に摺動される。このため、処理対象物から剥離された物質がシュラウドの外部に出ることを抑止することができる。さらに、本発明によれば、排気装置によってシュラウドの内部が排気されることによって、外部の気体がシュラウドの内部に流れ込むが、外部の気体が流れ込む流路は、可撓性遮蔽部材によって可撓性遮蔽部材と処理対象物の表面との間の極めて狭隘な空間となる。このため、シュラウドの内部に流れ込む外部気体の流速を速めることが可能となり、結果としてシュラウドの内部気体がシュラウドの外部に漏出することを防止できる。このため、内部気体の漏出に伴ってシュラウドの内部の物質が漏出することを防止することができる。したがって、本発明によれば、噴射ユニットから処理対象物に流体を噴射する場合に、処理対象物から除去された物質の外部への漏出を抑止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る流体噴射装置の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の液体窒素噴射装置1の模式図である。また、
図2は、本実施形態の液体窒素噴射装置1が備えるシュラウド3等を液体噴射方向と反対方向から見た概略図である。
図1に示すように、液体窒素噴射装置1(流体噴射装置)は、液体窒素噴射システム2と、シュラウド3と、ブラシ部4(摺動部)と、可撓性遮蔽部材5と、回収ユニット6とを備えている。
【0018】
液体窒素噴射システム2は、噴射ユニット2aと、液体窒素供給部2bとを備えている。噴射ユニット2aは、略棒状の部位であり、液体窒素供給部2bから内部流路に供給された液体窒素を先端から噴射する。液体窒素を噴射する場合における噴射ユニット2aの姿勢は任意であるが、ここでは説明の便宜上、噴射ユニット2aの長手方向(延伸する方向)を鉛直方向と称し、この鉛直方向と直交する方向を水平方向と称する。このような噴射ユニット2aは、液体窒素を噴射する先端部がコンクリート構造物等の処理対象物Xの表面に対向配置された状態で、液体窒素供給部2bから供給された液体窒素を処理対象物Xの表面に向けて噴射する。液体窒素供給部2bは、噴射ユニット2aの後端と接続されており、液体窒素を予め定められた圧力まで昇圧して噴射ユニット2aに供給する。
【0019】
シュラウド3は、噴射ユニット2aから噴射される液体窒素の噴射方向に向けて開口された容器状の部位であり、液体窒素の噴出経路を囲むように配置されている。このシュラウド3は、
図2に示すように、鉛直方向に沿った方向から見た外形形状が矩形状とされている。また、シュラウド3の天井部には、噴射ユニット2aが貫通される貫通孔が設けられている。シュラウド3は、当該貫通孔を介して貫通された噴射ユニット2aが固定されている。このようなシュラウド3は、液体窒素が噴射されることによって処理対象物Xから剥離した物質がシュラウド3の外側に拡散することを抑止する。
【0020】
なお、噴射ユニット2a及びシュラウド3は、例えば不図示の支持部に固定されており、作業者等が支持部を移動することによって処理対象物Xの表面に沿って移動可能とされている。なお、本実施形態の液体窒素噴射装置1においては、ロボットアーム等の移動装置によって、噴射ユニット2a及びシュラウド3を移動可能としても良い。
【0021】
ブラシ部4は、外形形状が矩形状のシュラウド3の外周面に固定されており、
図1に示すように、鉛直方向に沿った方向において、シュラウド3の端部から処理対象物X側に突出して設けられている。また、ブラシ部4は、噴射ユニット2aを中心とする周方向にてシュラウド3を全周に渡って囲うように設けられることで、矩形の環状形状とされている。つまり、ブラシ部4は、鉛直方向から見た外形形状が矩形状(多角形状)とされている。
【0022】
このブラシ部4は、各々が鉛直方向に沿って配置された可撓性を有する線状体が複数集まって形成されている。ブラシ部4は、噴射ユニット2aから液体窒素を処理対象物Xに対して噴射する場合に、先端部が処理対象物Xの表面に当接される。また、ブラシ部4は、噴射ユニット2a及びシュラウド3が処理対象物Xの表面に沿って移動される場合に、処理対象物Xの表面に摺動される。このようなブラシ部4は、処理対象物Xから剥離した物質を掃き集めてシュラウド3の外部に処理対象物Xから剥離した物質が漏出することを抑止する。
【0023】
可撓性遮蔽部材5は、
図2に示すように、噴射ユニット2aを中心とする径方向の外側からブラシ部4を囲って配置されており、噴射ユニット2aを中心とする周方向の全域に渡ってブラシ部4を覆うように設けられている。また、
図1に示すように、可撓性遮蔽部材5は、ブラシ部4を先端部と反対側から覆うように設けられている。つまり、可撓性遮蔽部材5は、ブラシ部4の噴射ユニット2aを中心とする径方向外側の面と、鉛直方向における先端部と反対側端面とを覆うように設けられている。
【0024】
この可撓性遮蔽部材5は、気体の通過を防止する気体遮蔽性を有する複数のシート部材5aによって形成されている。各々のシート部材5aは、液体窒素の噴射によって脆弱化しない例えばゴム材料によって形成されており、外力によって容易に変形が可能な可撓性を有している。つまり、このような可撓性を有する複数のシート部材5aによって形成される可撓性遮蔽部材5も、外力によって容易に変形可能な可撓性を有している。
【0025】
各々のシート部材5aは、
図2に示すように、噴射ユニット2aを中心とする周方向にて、隣接する縁部同士が重ねて配置されている。なお、
図2に示すように、本実施形態においては、シート部材5aとして、矩形状のブラシ部4の角部を覆う角部シート部材5bと、角部シート部材5b同士の間に配置される平部シート部材5cとが設けられている。
【0026】
角部シート部材5bは、ブラシ部4の角部を継ぎ目なく覆う湾曲したシート部材5aである。平部シート部材5cは、縁部が角部シート部材5bの縁部よりもブラシ部4側に配置されるようにブラシ部4の側面に沿って設けられた平板状のシート部材5aである。本実施形態においては、
図2に示すように、角部シート部材5bと平部シート部材5cとが、噴射ユニット2aを中心として径方向における内側と外側との交互に千鳥状に配置されている。このように角部シート部材5bと平部シート部材5cとが配置されることによって、本実施形態においては、シート部材5a同士の縁部が重なる部位がブラシ部4の角部を避けて配置されている。
【0027】
また、
図2に示すように、本実施形態においては、平部シート部材5cが、矩形状のブラシ部4の4辺の各々に1つずつ設置されている。これらの4つの平部シート部材5cのうち1つは、
図1に示すように、他の平部シート部材5cよりも鉛直方向の長さ寸法が大きく設定されている。つまり、本実施形態においては、噴射ユニット2aを挟んで一方側に配置された平部シート部材5cの長さ寸法が、他方側に配置された平部シート部材5cの長さ寸法よりも大きく設定されている。他の平部シート部材5cが配置されている側は、噴射ユニット2a及びシュラウド3を水平移動させる場合に、進行方向の後方に向けられる側である。噴射ユニット2a及びシュラウド3を水平移動させると、進行方向の後ろ側配置された平部シート部材5cは、処理対象物Xとの間に作用する摩擦力によって、より後方に向けて引きずられることになる。このとき、後方側の平部シート部材5cが長いと、平部シート部材5cと処理対象物Xとの間に隙間が生じることを防止できる。
【0028】
なお、シュラウド3の内部は、回収ユニット6によって負圧とされる。このとき、シート部材5aには、シュラウド3の内部に向けて引き込もうとする力が作用する。このとき、ブラシ部4が噴射ユニット2aを中心とする径方向の内側からシート部材5aを支持するため、シート部材5aの形状が保持される。
【0029】
回収ユニット6は、吸引ホース6aと、回収部6bとを備えている。吸引ホース6aは、シュラウド3と接続されており、シュラウド3の内部と回収部6bとを連通させるホースである。回収部6bは、吸引ホース6aを介して吸引するシュラウド3の内部気体に含まれる粉塵を回収するものである。この回収部6bは、シュラウド3の内部の気体を排気すると共に粉塵を捕捉する集塵機6b1(排気装置)等を備えている。
【0030】
このような構成の液体窒素噴射装置1にて処理対象物Xの表面加工(表面処理)を行う場合には、噴射ユニット2a及びシュラウド3を水平方向に移動させながら、噴射ユニット2aの先端から液体窒素を処理対象物Xの表面に噴射する。液体窒素が処理対象物Xに噴射されると、液体窒素の気化膨張力によって処理対象物Xの表面が加工等され、処理対象物Xから物質が剥離される。剥離された物質は、気化した液体窒素と共に回収ユニット6によってシュラウド3の内部から回収される。
【0031】
以上のような本実施形態の液体窒素噴射装置1によれば、シュラウド3が移動されると、シュラウド3を囲むブラシ部4が処理対象物Xの表面に摺動される。このため、処理対象物Xから剥離された物質がシュラウド3の外部に出ることを抑止することができる。さらに、本実施形態の液体窒素噴射装置1によれば、回収ユニット6によってシュラウド3の内部が排気されることによって、外部の気体がシュラウド3の内部に流れ込む。
図3は、外部の気体Yがシュラウド3の内部に流れ込む経路を説明するための模式図である。この図に示すように、外部の気体Yが流れ込む流路は、可撓性遮蔽部材5によって可撓性遮蔽部材5と処理対象物Xの表面との間の極めて狭隘な空間となる。このため、シュラウド3の内部に流れ込む気体Yの流速を速めることが可能となり、結果としてシュラウド3の内部気体がシュラウド3の外部に漏出することを防止できる。このため、内部気体の漏出に伴ってシュラウド3の内部の物質が漏出することを防止することができる。したがって、本実施形態の液体窒素噴射装置1によれば、噴射ユニット2aから処理対象物Xに液体窒素を噴射する場合に、処理対象物Xから除去された物質の外部への漏出を抑止することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の液体窒素噴射装置1においては、摺動部として、鉛直方向に沿って配置された複数の線状体からなるブラシ部4を用いている。このようなブラシ部4によれば、多数の線状体によって効率的に処理対象物Xから剥離した物質を掃き集めることができ、処理対象物Xから剥離した物質がシュラウド3の外部に漏出することをより確実に防止することができる。
【0033】
また、本実施形態の液体窒素噴射装置1においては、可撓性遮蔽部材5が、噴射ユニット2aを中心とする周方向にて、隣接する縁部同士が重ねて配置される複数のシート部材5aを有している。このため、シート部材5a同士の間からシュラウド3の内部の物質が漏出することを抑止しつつ、シート部材5a(すなわち可撓性遮蔽部材5)がより柔軟に変形することが可能となる。このため、処理対象物Xの表面に段差や障害物が存在する場合であっても、段差や障害物に合わせて可撓性遮蔽部材5が柔軟に変形し、シュラウド3の内部から物質が漏出することを抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の液体窒素噴射装置1においては、噴射ユニット2aを挟んで一方側に配置された平部シート部材5cの長さ寸法が、他方側に配置された平部シート部材5cの長さ寸法よりも大きく設定されている。このため、長さ寸法が長く設定された平部シート部材5cを進行方向の後方側に配置した状態で噴射ユニット2a及びシュラウド3を水平移動させることによって、より平部シート部材5cと処理対象物Xとの間に隙間が生じることを防止できる。したがって、本実施形態の液体窒素噴射装置1によれば、より確実にシュラウド3の内部から物質が漏出することを抑制することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の液体窒素噴射装置1においては、ブラシ部4の外形形状が多角形状とされ、シート部材5a同士の縁部が重なる部位がブラシ部4の角部を避けて配置されている。ブラシ部4の角部に合わせてシート部材5a同士の縁部が配置されると、シート部材5a同士の間に隙間が生じやすいが、本実施形態の液体窒素噴射装置1によれば、シート部材5a同士の間に隙間が生じることを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態の液体窒素噴射装置1においては、液体窒素を噴射ユニット2aに供給する液体窒素供給部2bを備えている。このため、液体窒素を噴射することで処理対象物Xを加工等することができる。このような液体窒素は、噴射後に気化するため、噴射ユニット2aから噴射した流体が液体窒素噴射装置1の周囲に残存することを防止することができる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態においては、摺動部がブラシ部4である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。処理対象物Xから剥離した物質の漏出を防止できるものであれば、例えばスポンジ等を摺動部として用いることも可能である。
【0039】
また、上記実施形態においては、液体窒素を噴射ユニット2aから噴射する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、水等の液体、窒素ガス等の気体、研磨剤等の粉体を噴射ユニット2aから噴射する構成を採用することも可能である。つまり、噴射ユニット2aから噴射可能な流体には、液体の他、気体や粉体も含まれる。
【0040】
また、上記実施形態においては、ブラシ部4の外形形状が矩形状である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ブラシ部4は、シュラウド3の外形形状に合わせて三角形状や五角形以上の多角形形状あるいは円形状であっても良い。