(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3コイル導体は、前記第1コイル導体に近接する部分である第1部分と、前記第1コイル導体から離れ、かつ前記第1部分とは電流の周回方向が逆方向である第2部分とを有し、
前記第2コイル導体は前記第1部分より前記第2部分に近接する、
請求項2に記載の複合アンテナ装置。
前記第3コイル導体は、前記第1コイル導体に近接する部分である第1部分と、前記第1コイル導体から離れ、かつ前記第1部分とは電流の周回方向が逆方向である第2部分とを有し、
前記第1コイル導体の巻回軸方向から視て、前記第2コイル開口部の第1開口端が前記第3コイル開口部の外側に位置し、前記第2コイル開口部の第2開口端が前記第3コイル開口部の内側に位置し、前記第2コイル導体の一部が前記第2部分に重なる、
請求項4に記載の複合アンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0023】
以降に示す各実施形態では、非接触電力伝送システムを第1システムとし、近距離無線通信システムを第2システムとし、第1システム用の第1アンテナが非接触電力伝送用のアンテナであり、第2システム用の第2アンテナが近距離無線通信用のアンテナである例について示す。上記非接触電力伝送システムは、例えば、ワイヤレスパワーコンソーシアム(Wireless Power Consortium; WPC)が策定したワイヤレス給電の国際標準規格Qiに従ったものである。また、上記近距離無線通信システムは、例えば、13.56MHzの周波数を利用して近距離通信を行う国際標準規格NFCに従ったものである。
【0024】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る電子機器が備える複合アンテナ装置101の斜視図である。
図2(A)は複合アンテナ装置101の平面図であり、
図2(B)は、
図2(A)におけるB−B部分での複合アンテナ装置101の断面図である。
【0025】
複合アンテナ装置101は、磁性体板5と、第1コイル導体1と、チップコイル20と、第3コイル導体3と、キャパシタ4とを備える。第1コイル導体1は絶縁性基材11の両面に亘って形成されている。第3コイル導体3は絶縁性基材11の上面に形成されている。チップコイル20とキャパシタ4は絶縁性基材11の上面に実装されている。
【0026】
第1コイル導体1は第1システム(非接触電力伝送システム)用の第1アンテナを構成する。チップコイル20と第3コイル導体3とキャパシタ4とで、第2システム(近距離無線通信システム)用の第2アンテナを構成する。
【0027】
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)は、第1コイル導体1による第1コイル開口部、第2コイル導体2による第2コイル開口部、及び第3コイル導体3による第3コイル開口部の関係を示す図である。
図3(A)には、第1コイル導体1による第1コイル開口部1APをハッチングで表している。
図3(B)には、第3コイル導体3による第3コイル開口部3APをハッチングで表している。
図3(C)には、第2コイル導体2による第2コイル開口部2APをハッチングで表している。
【0028】
第1コイル導体1はスパイラル状のコイル導体が2層に亘って形成されたものであり、第1コイル開口部1APを有する。
【0029】
第3コイル導体3は第3コイル開口部を有する。第1コイル導体1の巻回軸方向から視て、第3コイル導体3は第1コイル開口部1AP内に配置されている。
【0030】
チップコイル20は第2コイル導体2を備える。この第2コイル導体2は給電回路に接続される。第2コイル導体2の巻回軸は
図2におけるZ軸方向を向く。つまり、第2コイル導体2は第3コイル導体3が形成する面(X−Y面)に平行な面沿って巻回されている。なお、本件明細書中で述べる「平行」とは、厳密に平行であることのみを意味するものではない。概ね平行であればよく、0°以上10°未満の角度がついていてもよい。
【0031】
第3コイル導体3は、第1コイル導体1に近接する部分である第1部分31と、第1コイル導体1から離れ、かつ第1部分31とは電流の周回方向(旋回方向)が逆の部分である第2部分32を有する。チップコイル20を第1部分31よりも第2部分32に近接して配置することにより、チップコイル20に形成されている第2コイル導体は第3コイル導体3の第2部分32と磁界結合しやすくなる。
【0032】
第2コイル導体2のインダクタンスは第3コイル導体3のインダクタンスより大きい。例えば第2コイル導体2のインダクタンスは、第3コイル導体のインダクタンスの5〜100倍(通常は10倍程度)であることが好ましい。
【0033】
また、第2コイル導体2の第2コイル開口部2APの面積は、第3コイル開口部3APの面積より小さい。ここで、第2コイル開口部の面積は、例えば、第2コイル導体の巻回軸方向から見た場合の、第2コイル開口部の面積をいう。また、第3コイル開口部3APの面積は、例えば、第3コイル導体が形成される絶縁性基材11を平面視した場合の、第3コイル開口部3APの面積をいう。例えば第3コイル開口部の面積は、第2コイル開口の面積の10倍〜500倍であることが好ましい。
【0034】
上記構成により、第2システムに必要となるインダクタンスの大部分を第2コイル導体2のインダクタンスで確保できるため、第3コイル導体3は大きなインダクタンスが不要となり、第3コイル導体3の巻回数を最小限に抑えることができる。これにより、第3コイル導体3の導体面積を小さくできるため、第1アンテナの動作時に悪影響を与え難い。例えば、第1システムが非接触電力伝送システムの場合、正規の受電コイルが結合しているか否かが上記Q値の検出によって行われる場合に、第3コイル導体3が「異物」として誤検知されることがない。また、第2システムの動作時に第3コイル導体3は放射導体として機能するため、第3コイル開口部の面積を大きく採れるため、性能を向上させることができる。例えば第2システムが近距離無線通信システムの場合、通信性能を向上させることができる。
【0035】
本実施形態の複合アンテナ装置は、上記第2コイル導体及び後に示すキャパシタ(
図10中の複数のキャパシタC2)を有する第1共振回路と、第3コイル導体3及びキャパシタ4を有する第2共振回路と、を備え、第1共振回路と第2共振回路との結合によって複合共振回路が構成されている。この複合共振回路は2つの共振周波数を有し、この2つの共振周波数のいずれもが、第1システムで用いられる周波数より高い。
【0036】
図4はチップコイル20の構成を示す斜視図である。チップコイル20は、導電性ペーストによるパターンが形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層されて、焼結されたものある。
図4において、最下層、最上層、中間層は非磁性体層21である。また、最下層と中間層との間に磁性体層22が挟まれている。同様に、最上層と中間層との間に磁性体層22が挟まれている。中間層には、複数の非磁性体層に亘って第2コイル導体2が形成されている。上記非磁性体層21は非磁性シートであり、上記磁性体層22はフェライトシートである。この第2コイル導体2は矩形ヘリカル状であり、コイル巻回軸はZ軸方向を向く。
【0037】
チップコイル20の大きさは、使用する周波数帯における波長λに比べて十分に小さい。チップコイル20の大きさはλ/10以下である。より具体的には、第2コイル導体2の電流経路の長さはλ/10以下である。なお、ここでいう「波長」とは、導体が形成される基材の誘電性や透磁性による波長短縮効果を考慮した実効的な波長のことである。
【0038】
第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する、と予め宣言したとおり、上述のチップコイル20の大きさの関係は、本実施形態だけでなく、後に示す実施形態についても同様である。
【0039】
図5(A)、
図5(B)は、第1コイル導体1で構成される第1アンテナを用いる非接触電力伝送時の各コイル間の結合について示す図である。
図5(A)は、第2コイル導体2及び第3コイル導体3等の平面図である。
図5(B)は電力伝送相手側コイル6と第1コイル導体1との位置関係等を示す断面図である。
図5(A)と
図5(B)とは便宜上図を分けて表しているが、この二つの図を上下に配置したとき、
図5(A)に示すチップコイル20及び第3コイル導体3は、
図5(B)中のチップコイル20及び第3コイル導体3の位置と対応する。
【0040】
図5(B)中に磁束φ1で示すように、第1コイル導体1と電力伝送相手側コイル6とは磁界結合する。第1コイル導体1のコイル開口内に第3コイル導体3及びチップコイル20が存在するが、第3コイル導体3の巻回数は実質的に1ターンであり、第1コイル開口部1APに占める第3コイル導体3及びチップコイル20の占有面積は30%未満である。そのため、第3コイル導体3及びチップコイル20は第1コイル開口部1APを抜ける磁束を殆ど遮蔽しない。このことにより、第1コイル導体1と電力伝送相手側コイル6との結合係数が低下せず、電力伝送効率が維持される。
【0041】
図6(A)、
図6(B)は、近距離無線通信時の各コイル間の結合について示す図である。
図6(A)は、第2コイル導体2及び第3コイル導体3等の平面図である。
図6(B)は通信相手側コイルアンテナ7と第3コイル導体3との位置関係等を示す断面図である。
【0042】
第3コイル導体3の第2部分32はチップコイル20の四辺の略全周に沿って周回している。第3コイル導体3の第2部分には、第1部分31との境界部分に絞り部NAが形成されている。この形状により、第3コイル導体3の実質的なコイル開口(第1部分31の内側から第2部分の外側までの領域)が広く形成されている。
【0043】
チップコイル20に形成されている第2コイル導体2と、絶縁性基材11の平面視で(すなわちZ軸方向から視て)、この第2コイル導体2に沿った第3コイルの第2部分32とは、磁束φ2で示すように磁界結合する。また、第3コイル導体の第1部分31と通信相手側コイルアンテナ7とは磁束φ3で示すように磁界結合する。つまり、第2コイル導体2は第3コイル導体3との磁界結合を介して通信相手側コイルアンテナ7と磁界結合する。
【0044】
なお、第3コイル導体3の第2部分32を流れる電流の周回方向(旋回方向)は第1部分31を流れる電流の周回方向とは逆であるが、第2部分32の周回形成領域は第3コイル導体3の形成領域全体に比べて充分に小さいので、第2部分32から放射される磁界は通信性能に悪影響を殆ど与えない。
【0045】
図7、
図8、
図9は、第3コイル導体の他の例を示す平面図である。
図7に示す例では、第3コイル導体3の第1部分31は1ターン以上の導体パターンで構成されている。
図7において、第1部分31同士の、破線で示す交差部は絶縁されている。
図8に示す例では、第3コイル導体3の第1部分31は1ターンに満たない導体パターンで構成されている。
図9に示す例では、第3コイル導体3は、電流の周回方向が互いに逆方向の関係にある第1部分31を備える。この例では第1部分31が「8の字」形状の導体パターンで構成されている。
【0046】
図9に示す例では、第3コイル導体3の二つの半円形状部分を流れる電流の周回方向は互いに逆方向であるので、この第3コイル導体3と第1コイル導体(
図1、
図2等に示した第1コイル導体1)との不要結合は実質的に無い。また、第3コイル導体3の中心と近距離無線通信相手側コイルの中心とが平面視で一致する位置では結合しない(ヌル点となる)が、そこから
図9に示す向きで左右に変位する位置では第3コイル導体3と近距離無線通信相手側コイルとが結合し、通信か可能となる。
【0047】
これらの例に示すように、第3コイル導体のターン数は実質的に1ターンに限るものではない。また、第3コイル導体パターンの第1部分31は、互いに電流の周回方向が逆の関係にある部分を有していてもよい。
【0048】
図20は、非接触電力伝送のために設けられた磁性体板5の透磁率の周波数依存性と、チップコイル20内に設けられている磁性体層の透磁率の周波数依存性を示す図である。
図20において、「W」で示す特性は磁性体板5の透磁率の周波数依存性を示し、「N」で示す特性はチップコイル20内に設けられている磁性体層の透磁率の周波数依存性を示す。
【0049】
非接触電力伝送システムで用いる周波数帯は例えば100kHzであるので、この周波数帯で透磁率の高い、例えば、Mn−Zn系フェライト等の材料が用いられる。一方、近距離無線通信システムで用いる周波数帯は例えば13.56MHzであるので、この周波数帯で透磁率の高い、例えば、Ni−Zn系フェライト等の材料が用いられる。
【0050】
非接触電力伝送の周波数帯では、磁性体板5は第1コイル導体1の第1コイル開口部1APを通過する磁束を集磁するので、磁性体板5を設けることによって非接触電力伝送効率を高められる。また、近距離無線通信の周波数帯では、磁性体板5の透磁率は非常に小さいので、磁性体板5の存在により、近距離無線通信性能が低下することは殆どない。
【0051】
図10、
図11は、複合アンテナ装置の等価回路と、複合アンテナ装置に繋がる、又は結合する、回路の構成を示す図である。
図10は、複合アンテナ装置101を非接触電力伝送システムで用いる状態を表している。
図11は、複合アンテナ装置101を近距離無線通信システムで用いる状態を表している。
【0052】
破線で囲んだ部分が複合アンテナ装置101に相当する。
図10において、インダクタL1は第1コイル導体1の自己インダクタンス成分に相当し、抵抗R1は第1コイル導体1の抵抗成分に相当する。インダクタL2は第2コイル導体2の自己インダクタンス成分に相当し、抵抗R2は第2コイル導体2の抵抗成分に相当する。インダクタL3は第3コイル導体3に相当し、抵抗R3は第3コイル導体3の抵抗成分に相当する。キャパシタC4はキャパシタ4に相当する。
【0053】
第1コイル導体にはキャパシタC5が直列接続され、この回路が非接触電力伝送の受電回路41に接続されている。
【0054】
第2コイル導体にはキャパシタC2,C2の直列回路が接続されていて、このキャパシタC2,C2と第2コイル導体との並列回路によって共振回路RCが構成されている。そして、近距離無線通信用回路であるRFIC42と第2コイル導体との間に、キャパシタC0,C1,C2及びインダクタL0から構成されるインピーダンス整合回路MCが接続されている。
【0055】
図10において、インダクタL6は電力伝送相手側コイル6のインダクタンス成分であり、抵抗R6は電力伝送相手側コイル6の抵抗成分である。この電力伝送相手側コイル6にキャパシタC6が直列接続され、この直列回路が送電回路51に接続されている。
【0056】
非接触電力伝送を行う場合、
図10に示すように、電力伝送相手側コイル6と第1コイル導体とが磁界結合する。非接触電力伝送システムで用いる周波数は例えば100kHzであり、第1コイル導体とキャパシタC5とによる共振回路の共振周波数は100kHz又はその近傍に定められている。同様に、電力伝送相手側コイル6とキャパシタC6とによる共振回路の共振周波数は100kHz又はその近傍に定められている。
【0057】
キャパシタC4は、近距離無線通信システムで用いる周波数(13.56MHz)で共振電流が流れて、通信が可能となる程度のキャパシタンスを有するものである。しかし、キャパシタC4のインピーダンスは、非接触電力伝送の周波数(100kHz)では非常に高いので、非接触電力伝送時に、キャパシタC4は回路上、実質的にオープン状態となり、第3コイル導体には電流が流れない。つまり、送電回路51からみたQ値が第3コイル導体の存在によって殆ど低下することがない。そして、非接触電力伝送システムにおいて、正規の受電コイルが結合しているか否かが上記Q値の検出によって行われる場合に、第3コイル導体が異物として誤検知されることがない。また、非接触電力伝送システムにおいて、第3コイル導体には電流が実質的に流れないことから、第1コイル導体と第3コイル導体とは実質的に磁界結合をせず、第3コイル導体が悪影響を与えない。
【0058】
図10では、複合アンテナ装置101に接続されている受電回路41が非接触電力伝送システムの送電回路51から電力を受電する例を示したが、これとは逆に、複合アンテナ装置101に非接触電力伝送システムの送電装置を接続し、第1コイル導体1に磁界結合する電力伝送相手側コイル6側へ電力を送電するようにしてもよい。
【0059】
図11において、インダクタL7は通信相手側コイルアンテナ7のインダクタンス成分である。この通信相手側コイルアンテナ7にキャパシタC7が並列接続され、この並列回路が近距離無線通信回路であるRFIC52に接続されている。
【0060】
近距離無線通信を行う場合、
図11に示すように、通信相手側コイルアンテナ7と第3コイル導体とが磁界結合する。また、第3コイル導体と第2コイル導体とは磁界結合する。近距離無線通信システムで用いる周波数は例えば13.56MHzであり、第3コイル導体とキャパシタC4とによる共振回路の共振周波数は13.56MHz又はその近傍に定められている。同様に、第2コイル導体とキャパシタC2,C2とによる共振回路RCの共振周波数は13.56MHz又はその近傍に定められている。
【0061】
図12(A)、
図12(B)は、非接触電力伝送システムにおいて、相手側コイル6と、第3コイル導体及びキャパシタ4による閉ループ回路とが仮に結合したときの関係について示す図である。
図12(B)は、第3コイル導体に電力伝送相手側コイル6が仮に磁界結合した状態での、第3コイル導体とキャパシタ4による等価回路を示す図である。
【0062】
第3コイル導体とキャパシタ4による閉ループ回路の第3コイル導体に電力伝送相手側コイル6が仮に結合すると、
図12(B)に示すように、電力伝送相手側コイル6との結合により、第3コイル導体に誘導される誘導起電圧Eが生じる。
【0063】
図13(A)、
図13(B)は、非接触電力伝送システムにおいて、第3コイル導体3に対してそれぞれ異なる位置にキャパシタ4を接続した状態を示す図である。
図13(A)、
図13(B)において、インダクタL31は第3コイル導体3の第1部分31のインダクタンス成分、抵抗R31は第1部分31の抵抗成分である。また、インダクタL32は第3コイル導体3の第2部分32のインダクタンス成分、抵抗R32は第2部分32の抵抗成分である。
【0064】
図13(B)は、第3コイル導体3の第1部分31と第2部分32との接続位置にキャパシタ4を接続した比較例である。この構成では、キャパシタ4が第3コイル導体の第1部分31に直列接続されないので、非接触電力伝送システムで用いる100kHzでは、キャパシタ4のインピーダンスはハイインピーダンス(例えば、数kΩ〜数十kΩ)となって、実質的に開放状態となるものの、
図13(B)に記載の矢印のルートで電流が流れてしまう。
【0065】
したがって、
図13(B)に示すようなキャパシタ4の配置では、非接触電力伝送システムで用いる100kHzで、第3コイル導体3に電流が流れ、抵抗R31,R32による損失が生じ、Q値が低下する。
【0066】
これに対し、
図13(A)は、
図1、
図2に示したとおり、キャパシタ4を第3コイル導体の第1部分31に直列接続した場合の回路を示す。非接触電力伝送システムで用いる100kHzでは、キャパシタ4のインピーダンスはハイインピーダンスであり、実質的に開放状態となる。そのため、非接触電力伝送システムで用いる100kHzで、第3コイル導体3に電流が流れず、Q値が低下することもない。
【0067】
上述のとおり、
図13(A)では第1部分31と第2部分32を含む第3コイル導体3のループ上に、ループに沿って(ループを分断しないように)キャパシタ4が配置されているため、非接触電力伝送システムで用いる100kHzでは、第3コイル導体3のループに電流が流れず、Q値が低下することもない。一方、
図13(B)では、第1部分31のループの両端部及び第2部分32のループの両端部同士をそれぞれ接続してループを分断するようにキャパシタ4が配置されているため、非接触電力伝送システムで用いる100kHzで、第3コイル導体3に電流が流れ、抵抗R31,R32による損失が生じ、Q値が低下する。
【0068】
図14は複合アンテナ装置101に繋がる、又は結合する、回路の構成を示す図である。
図11に示した例とは、複合アンテナ装置101に繋がる近距離無線通信の回路が異なる。
図14に示す例では、第2コイル導体(L2,R2)にはキャパシタC2が並列接続されていて、共振回路RCが構成されている。近距離無線通信用回路であるRFIC42には、キャパシタC0及びインダクタL0から構成されるインピーダンス整合回路MCが接続されている。このバラン43と共振回路RCとの間にキャパシタC1が接続されている。
【0069】
このように、複合アンテナ装置101に不平衡給電回路を接続してもよい。
【0070】
本実施形態に係る複合アンテナ装置101によれば、次のような作用効果を奏する。
【0071】
(a)装置が大型化することなく、第1コイル導体1による第1アンテナと、第2コイル導体、第3コイル導体、及びキャパシタ4で構成される第2アンテナとの不要結合が抑制されつつ、第3コイル開口部3APを大きくすることで、第2アンテナを用いるシステムの効率(通信性能)が高められる。
【0072】
(b)第2コイル導体2の巻回軸及び第3コイル導体3の巻回軸は互いに平行であり、第3コイル導体3の第2部分32が第2コイル導体の周囲を囲むように配置することで、第2コイル導体2が発生する磁束が第2部分32の実質的に全四辺と鎖交するため、第2コイル導体2と第3コイル導体3との磁界結合を高めることができる。
【0073】
(c)第3コイル導体3のうち、第1コイル導体1から離れ、かつ第1部分31とは電流の周回方向(旋回方向)が逆の部分である第2部分32に第2コイル導体2が近接するので、第2コイル導体2と第1コイル導体1との不要結合が抑制されつつ、第2コイル導体2と第3コイル導体3との結合が高められる。
【0074】
《第2の実施形態》
第2の実施形態は、基本的には、第1の実施形態と構成や作用効果が共通しており、共通する部分の説明は割愛し、異なる部分を中心に説明する。
【0075】
図15(A)は第2の実施形態に係る複合アンテナ装置の一部である第3コイル導体3とチップコイル20との位置関係を示す平面図である。
図15(B)は、この第3コイル導体3とチップコイル20との磁界結合について示す断面図である。
【0076】
本実施形態の複合アンテナ装置では、第3コイル導体3は、略1ターンの円形ループ状を成す。チップコイル20は円形ループの内側で第3コイル導体3に近接する位置に配置されている。そのため、
図15(B)に示すように、破線で示す磁束φがチップコイル20と第3コイル導体3とに鎖交して、第3コイル導体3とチップコイル20とが磁界結合する。
【0077】
本実施形態によれば、第3コイル導体3とチップコイル20との結合係数を高めにくいが、チップコイル20の実装位置の自由度が高い。また、第3コイル導体3のループ内部は、チップコイル20の配置位置以外に無駄なスペースがなく、この第3コイル導体3のループ内部にチップコイル20以外の部品を実装することもでき、複合アンテナ装置の設計自由度が高い。
【0078】
《第3の実施形態》
第3の実施形態も、基本的には、第1の実施形態及び第2の実施形態と構成や作用効果が共通しており、共通する部分の説明は割愛し、異なる部分を中心に説明する。
【0079】
図16は第3の実施形態に係るチップコイル20の内部の構成を示す斜視図である。この例では、X軸に沿った方向に巻回軸を有する矩形ヘリカル状の第2コイル導体2を積層体の内部に備える。第2コイル導体2は、X−Y面に沿った方向に延びる複数の導体パターン2H1,2H2と、Z軸方向に延びる複数の導体パターン2Vと、が順次接続された構造となっている。具体的には、絶縁体層23の上面に導体パターン2H1が形成されていて、絶縁体層25の下面に導体パターン2H2が形成されていて、複数の導体パターン2H1,2H2を順次接続するように層間接続導体による導体パターン2Vが形成されている。
【0080】
第2コイル導体2は、二つの第2コイル開口部2AP1,2AP2を有する。第1の第2コイル開口部2AP1は、第2コイル導体2を平面視して(Z軸方向から視て)第2コイル導体2を構成する複数巻のループのうち、最も−X側に位置する1ターンのループが形成する開口部である。同様に、第2の第2コイル開口部2AP2は、第2コイル導体2を平面視して(Z軸方向から視て)第2コイル導体2を構成する複数巻のループのうち、最も+X側に位置する1ターンのループが形成する開口部である。
【0081】
本実施形態では、第1の第2コイル開口部2AP1の面積と、第2の第2コイル開口部2AP2の面積とは同じである。また、本実施形態では、第2コイル導体2をX軸方向に視て、X軸に沿った方向のどの位置にある1ターンのループが形成する開口部の面積も、第2コイル開口部2AP1,2AP2の面積と同じである。なお、第1開口の面積と、第2開口の面積は実質的に同じであればよい。
【0082】
図17は、本実施形態に係る複合アンテナ装置の一部である第3コイル導体3とチップコイル20との位置関係を示す平面図である。
図17中のチップコイル20は、
図16に示した構成のチップコイルである。第3コイル導体3は、図外の第1コイル導体(
図2における第1コイル導体1)に近接する部分である第1部分31と、第1コイル導体1から離れ、かつ第1部分31とは電流の周回方向(旋回方向)が逆の部分である第2部分32を有する。チップコイル20は、チップコイル20が実装される絶縁性基材11の平面視で、第3コイル導体3の第2部分32に重なる位置に配置されている。そして、チップコイル20の第2コイル導体2の第1開口端E1が第3コイル導体3のループ外に、第2開口端E2が第3コイル導体3のループ内にそれぞれ配置されている。
【0083】
上記第1開口端E1は、上記第2コイル導体2を構成する複数巻のループのうち、最も−X側に位置する1ターンのループが形成する位置である。また、上記第2開口端E2は、上記第2コイル導体2を構成する複数巻のループのうち、最も+X側に位置する1ターンのループが形成する位置である。
【0084】
第1コイル導体と第3コイル導体との相対的位置関係や第1コイルの構成は第1の実施形態で示したものと同じである。第1コイル導体1の巻回軸と第2コイル導体2の巻回軸とが直交する。ここで、「直交」とは、平面視で、−30度を超え、+30度未満の範囲内の角度関係である。
【0085】
図16、
図17に示す構成によれば、磁束がチップコイル20の第2コイル導体と、第3コイル導体3の第2部分32とに鎖交して、第3コイル導体3とチップコイル20とが磁界結合する。
【0086】
なお、キャパシタ4は、平面視で、チップコイル20に形成されている第2コイル導体のコイル巻回軸上に無いことが好ましい。キャパシタ4が第2コイル導体を通る磁束を妨げないからである。
【0087】
本実施形態によれば、つぎのような作用効果を奏する。
【0088】
(a)第1コイル導体1の巻回軸と第2コイル導体2の巻回軸とが直交し、第1コイル導体1の巻回軸と第3コイル導体3の巻回軸とが平行であるので、第1コイル導体1と第2コイル導体2との不要結合を充分に抑制できる。
【0089】
(b)第2コイル開口部の一方が第3コイル導体3の開口部の内側に位置し、第2コイル開口部の他方が第3コイル導体3の開口部の外側に位置して、第2コイル導体2の一部が第2部分32に重なる構造であるので、第2コイル導体2と第3コイル導体3との結合度を容易に高められる。
【0090】
なお、
図16に示したチップコイル20内に第2コイル導体2と磁界結合する導体パターンを備えてもよい。特に、第3コイル導体に繋がり、第2コイルと磁界結合するループ状の導体パターンをチップコイル20内に形成すれば、第2コイル導体と第3コイル導体3(第2部分32)との磁界結合を効果的に高めることができる。
【0091】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、これまでに示した複合アンテナ装置とは主に磁性体板5の配置が異なる複合アンテナ装置と、それを備える電子機器の例を示す。
【0092】
第4の実施形態も、基本的には、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態と構成や作用効果が共通しており、共通する部分の説明は割愛し、異なる部分を中心に説明する。
【0093】
図18は第4の実施形態の複合アンテナ装置を備える電子機器の主要部の断面図である。この例では、第3コイル導体3及びチップコイル20は磁性体板5とは別に、回路基板81上に配置されている。そして、第3コイル導体3及びチップコイル20と第1コイル導体1との間に磁性体板5が介在するように、それらが配置されている。平面視での関係は
図1に示した構成と同じである。磁性体板5は、第1の実施形態で説明したとおり、非接触電力伝送システムで用いる周波数帯で透磁率の高い材料(近距離無線通信システムで用いる周波数帯では透磁率の低い材料)である。
【0094】
回路基板81には、給電回路83が形成されていて、この給電回路83とチップコイル20との間は配線82を介して接続されている。給電回路83は、
図10、
図11、
図14に示したRFIC42、インピーダンス整合回路MC、及び共振回路RCを備える。
【0095】
上記複合アンテナ装置は下部筐体90Lと上部筐体90Uとの間に納められている。
【0096】
図18に示した構造の複合アンテナ装置によれば、非接触電力伝送を行う場合、第1コイル導体1は磁性体板5によって第3コイル導体3及びチップコイル20から磁気遮蔽される。そのため、第3コイル導体3及びチップコイル20の存在によって、非接触電力伝送の効率が低下することがない。一方、第3コイル導体3及びチップコイル20を用いて近距離無線通信を行う際には、磁性体板5の透磁率は低くなるため、磁性体板5による磁気遮蔽はなされず、近距離無線通信の通信性能は低下しにくい。
【0097】
図19は、本実施形態の別の複合アンテナ装置及び電子機器の主要部の断面図である。磁性体板5に開口5APが形成されていて、この開口5APの位置に第3コイル導体3及びチップコイル20が配置されている。また、回路基板81は磁性体板5に近接又は当接している。その他の構成は
図18に示したとおりである。
【0098】
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏する。
【0099】
(a)磁性体板5が、第2コイル導体2内蔵のチップコイル20と給電回路83とを接続する配線82と、第1コイル導体1と、の間に配置され、磁性体板5の主面は第1コイル導体1に対向配置されているので、第1コイル導体1のコイル開口を通る磁束に対して第2コイル導体2及びそれに繋がる配線82が悪影響を与えない。
【0100】
(b)さらに、
図19に示した構造の複合アンテナ装置によれば、チップコイル20及び第3コイル導体3の上に磁性体部材が存在しないため、チップコイル20内の第2コイル導体及び第3コイル導体3がより磁性体の悪影響を受けにくく、さらに、
図18に示した構成の複合アンテナ装置に比べて、第3コイル導体3が通信相手側のコイルにより近接する状態に配置できるため、近距離無線通信の通信特性(通信距離)が向上する。また、
図18に示した構成の複合アンテナ装置に比べて薄型化できる。
【0101】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、これまでに示した複合アンテナ装置を備える電子機器について、一例を示す。ここで、「電子機器」とは、スマートフォンやフィーチャーフォン等の携帯電話端末、スマートウォッチやスマートグラス等のウェアラブル端末、ノートPCやタブレットPC等の携帯PC、カメラ、ゲーム機、玩具等の情報機器、ICタグ、SDカード、SIMカード、ICカード等の情報媒体、ワイヤレス充電台等、様々な電子機器を指す。
【0102】
第5の実施形態も、基本的には、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態と構成や作用効果が共通しており、共通する部分の説明は割愛し、異なる部分を中心に説明する。
【0103】
図21は第5の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
図21において平面図は、電子機器の底面を上面に向けた状態で、且つ筐体90の底面側半分を取り外した状態での平面図である。
【0104】
本実施形態では、第1コイル導体1は絶縁性基材11の両面に亘って形成されている。いずれの面にもスパイラル状の導体パターンが形成されている。つまり、2層のスパイラル状導体パターンで第1コイル導体1が構成されている。
【0105】
第3コイル導体3は絶縁性基材11の上面(
図21に示す向きでの上面)に形成されている。また、この絶縁性基材11の上面にチップコイル20及びキャパシタ4が実装されている。
【0106】
絶縁性基材11の下面には磁性体板5が近接配置されている。この磁性体板5の下方にはバッテリ91が配置されている。電子機器の表面側(
図21に示す向きでは下面側)にディスプレイデバイス92が設けられている。また、筐体90の内部に回路基板93が設けられている。
【0107】
本実施形態によれば、バッテリ91等の金属部材と第1コイル導体1との間に磁性体板5が介在するので、金属部材が磁性体板5で磁気遮蔽されて、金属部材に渦電流が流れることが抑制され、非接触電力伝送の効率低下が抑制される。
【0108】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。
【0109】
例えば、各実施形態では、第1システムとして非接触電力伝送システムを例示し、第2システムとして近距離無線通信システムを例示し、第1システム用の第1アンテナが非接触電力伝送用のアンテナであり、第2システム用の第2アンテナが近距離無線通信用のアンテナである例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば第1システムが近距離無線通信システム、第2システムが非接触電力伝送システムであってもよい。また、例えば第1システム、第2システム共に非接触電力伝送システムであってもよい。また、第1システム、第2システム共に近距離無線通信システムであってもよい。
【0110】
また、例えば、各実施形態では、第1コイル導体1の概形及び1ターン分のループが略円形である例を示したが、これに限られるものではない。これらは楕円形、矩形、多角形など、その他の形状であってもよい。
【0111】
また、例えば、各実施形態では、磁性体板5を備える例を示したが、磁性体板5を備えていなくてもよい。
【0112】
また、例えば、各実施形態では、絶縁性基材11の両面に第1コイル導体1が形成された例を示したが、絶縁性基材11の一方の主面に複数層に亘って第1コイル導体1が形成されてもよい。
【0113】
また、例えば、各実施形態では、絶縁性基材11上に第3コイル導体3が形成され、第2コイル導体2及びキャパシタ4が実装される例を示したが、第3コイル導体3、第2コイル導体2、又はキャパシタ4のいずれかは、又は全ては、絶縁性基材11とは異なる絶縁性基材上に形成されてもよい。さらには、第3コイル導体3、第2コイル導体2、又はキャパシタ4のいずれか、又は全てが絶縁性基材11以外の絶縁性基材に実装されてもよい。
【0114】
また、例えば、各実施形態では、複合アンテナ装置101の非接触電力伝送システムが受電装置として機能する場合は、第1コイル導体は、絶縁性基材11上に形成した導体パターンであることが好ましい。
【0115】
また、複合アンテナ装置101の非接触電力伝送システムが送電装置として機能する場合は、第1コイル導体1は撚り線であることが好ましい。第1コイル導体1の交流抵抗が小さくなって、電力伝送効率が高まるからである。
【0116】
また、例えば、各実施形態では、非接触電力伝送システムとして用いられる第1コイル導体1のインダクタンスは、近距離無線通信システムとして用いられる第2コイル導体2のインダクタンス及び第3コイル導体3のインダクタンスのいずれよりも大きいことが好ましい。
【0117】
また、例えば、各実施形態では、第2システム用の第2アンテナが、第1共振回路と第2共振回路との結合による複合共振回路を有する例を示したが、第2アンテナが3つ以上の共振周波数を有していてもよい。例えば、第2アンテナが、3つ以上のコイル導体や平面導体等から構成される場合は、3つ以上の共振周波数が生じうる。