(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ以上の弁部の前記最小部の流路断面積の合計値に対応する第1の水力直径をD1とし、前記1つ以上のノズル部の前記絞り部の流路断面積の合計値に対応する第2の水力直径をD2としたとき、
前記第1の水力直径と前記第2の水力直径とは、下記の式(1)を満たす、請求項1に記載のエジェクタ。
0.95≦D1/D2≦1.2・・・(1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム10は、燃料電池12と、燃料ガス供給経路14と、オフガス供給経路16と、エジェクタ20とを備えている。
【0016】
燃料電池12は、燃料ガスと酸化剤ガスとの化学反応により電気エネルギを発生させる。本実施形態では、燃料ガスとして水素ガスが用いられ、酸化剤ガスとして空気中の酸素が用いられる。水素と酸素との電気化学反応により電気エネルギが発生する。
【0017】
燃料ガス供給経路14は、燃料電池12へ燃料ガスを導く。オフガス供給経路16は、燃料電池12から排出されたオフガスを燃料ガス供給経路14に合流させる。オフガスには、燃料電池12に供給された燃料ガスのうち上記化学反応に用いられなかった未反応ガスが含まれる。エジェクタ20は、燃料ガス供給経路14のうちオフガス供給経路16の合流部位に設けられている。エジェクタ20は、燃料ガスを吐出する。さらに、エジェクタ20は、オフガスを吸引し、吸引したオフガスを燃料ガスとともに吐出する。
【0018】
図2に示すように、エジェクタ20は、ノズル部202と、本体部206と、開閉弁212とを備える。
【0019】
ノズル部202は、燃料ガスが流れるノズル部流路204を内部に形成している。ノズル部202は、ノズル部流路204を流れる燃料ガスを噴出する。ノズル部流路204は、燃料ガスの流れ方向に進むにつれて流路断面積が減少している減少部205を含む。本実施形態では、ノズル部流路204の全部が、減少部205である。したがって、ノズル部流路204は、ノズル部流路204の下流側端部に、ノズル部流路204において流路断面積が最小となる絞り部204aを有する。燃料ガスは、圧縮性流体である。燃料ガスは、第1流体に相当する。
【0020】
本体部206は、吸引部208と、ディフューザ部210とを含む。吸引部208は、ノズル部202からの燃料ガスの噴出によって、オフガス供給経路16からオフガスを吸引する。吸引部208は、オフガスが流れる吸引部流路209を内部に形成している。オフガスは、圧縮性流体である。オフガスは、第2流体に相当する。
【0021】
ディフューザ部210は、ノズル部202から噴出された燃料ガスと吸引部208から吸引されたオフガスとの混合ガスを昇圧させる。ディフューザ部210は、昇圧させた混合ガスを吐出する。ディフューザ部210は、混合ガスが流れるディフューザ部流路211を内部に形成している。本実施形態では、ディフューザ部210は、ノズル部202から噴出した燃料ガスと吸引部208から吸引されたオフガスとを混合させる混合部を兼ねている。なお、混合部とディフューザ部210とが分けられていてもよい。
【0022】
本実施形態では、開閉弁212を除き、エジェクタ20の流路形状が固定されている。このため、本実施形態では、エジェクタ20は流路形状を変更するための可動部を持たない。エジェクタ20の流路形状には、ノズル部流路204の形状、ディフューザ部流路211の形状などが含まれる。エジェクタ20の流路形状が固定されているとは、エジェクタ20の使用時に、ノズル部流路204の流路断面積、ノズル部流路204を形成するノズル部202の内壁面の角度、ノズル部流路204の長さ、ディフューザ部流路211の流路断面積等が、変化せず一定であることを意味する。
【0023】
開閉弁212は、ノズル部202の上流側の流路を開閉する。開閉弁212は、弁部214と、弁部214を駆動させる図示しない駆動部とを有する。弁部214は、ノズル部流路204に連なる弁部流路215を内部に形成している。弁部214は、この弁部流路215を開閉する。弁部214は、燃料ガスが流れる
図1に示す1つの弁部上流側流路244と接続されている。弁部上流側流路244は、燃料ガス供給経路14の一部である。
【0024】
より詳細には、弁部214は、弁部本体部216と、弁体218と、弁座220とを含む。弁部本体部216には、燃料ガスが流れる流路となる内部空間が形成されている。弁体218と弁座220とは、弁部本体部216の内部空間によって構成される流路を開閉する。弁部214が開弁状態のとき、弁体218と弁座220との間を燃料ガスが流れる。したがって、弁部本体部216の内部空間と、開弁状態のときの弁体218と弁座220との間の空間とが、弁部流路215を構成している。
【0025】
弁部流路215は、弁部214が開弁状態のときに、弁部流路215において流路断面積が最小となる最小部215aを含む。本実施形態では、
図3に示すように、開弁状態のときに、弁部流路215のうち弁体218と弁座220との間の空間よりも下流側の部分が、最小部215aとなっている。なお、弁部流路215のうち弁体218と弁座220との間の空間が、最小部215aとなっていてもよい。
【0026】
ノズル部流路204および弁部流路215を含む燃料ガスの流路は、最小部215aと絞り部204aとの間の燃料ガスの流路である絞り部上流側流路222を含む。絞り部上流側流路222には、最小部215aの下流側端部と、絞り部204aの上流側端部とが含まれる。
【0027】
ここで、
図3に示すように、弁部214の絞り径をD1とする。弁部214の絞り径D1とは、最小部215aの水力直径である。水力直径とは、流路の断面と等価な円管の直径である。水力直径は、4×(流路断面積)/(濡れ縁長さ)で表される。濡れ縁長さとは、流路断面における壁面の長さである。流路の断面形状がリング形状の場合、濡れ縁長さは、リングの内周の濡れ縁長さと、リングの外周の濡れ縁長さとの和である。
【0028】
また、
図4に示すように、ノズル部202の絞り径をD2とする。ノズル部202の絞り径D2とは、絞り部204aの水力直径である。
【0029】
このとき、本実施形態では、弁部214の絞り径D1とノズル部202の絞り径D2とは、次の式(1)を満たすように設定されている。
【0030】
0.95≦D1/D2≦1.2・・・(1)
これにより、弁部214が開弁状態の期間における絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値は、燃料ガスの臨界圧力比と、最小部215aの入口側の圧力とに基づいて定まる臨界圧力よりも小さくなる。最小部215aの入口側の圧力は、弁部上流側流路244内の燃料ガスの圧力である。
【0031】
ここで、臨界圧力比と臨界圧力とのそれぞれは、圧縮性流体力学で定義されているものと同じである。圧縮性流体力学についての文献として、次の文献が挙げられる。
松尾一泰著、圧縮性流体力学 内部流れの理論と解析、第1版、理工学社、1994.11.10.
臨界圧力比は、最小部215aを通る流体の流速が音速に達するときの最小部215aの入口側の圧力と出口側の圧力との比である。臨界圧力比は、最小部215aを通る流体の流れがチョーク流れとなるときの、最小部215aの入口側の圧力と出口側の圧力との比の最大値である。最小部215aの入口側の圧力と出口側の圧力との比が、臨界圧力比よりも小さいときに、最小部215aを通る流体の流速が音速になる。このときの流体の流れがチョーク流れである。流れの中で、ある点の速度がその点における音速に等しい状態が、圧縮性流体力学で定義されている臨界状態である。臨界圧力は、最小部215aを通る流体の流速が音速であるとき、すなわち、最小部215aを通る流体が臨界状態であるときの最小部215aの出口側の圧力の大きさである。したがって、臨界圧力は、燃料ガスの臨界圧力比と、最小部215aの入口側の圧力とに基づいて定まる。
【0032】
臨界圧力比をbとし、最小部215aの入口側の圧力をP
0とし、最小部215aの出口側の圧力が臨界圧力であるときの圧力をP
*とし、流体の比熱比をγとする。このとき、臨界圧力比および臨界圧力は、次の式(2)、(3)で示される。
【0033】
【数1】
P
*=b・P
0・・・(3)
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム10では、燃料ガスが燃料電池12に向けて燃料ガス供給経路14を流れる。燃料電池12は、供給された燃料ガスと供給された空気との化学反応により発電する。燃料電池12から排出されたオフガスは、エジェクタ20によってオフガス供給経路16を流れて、燃料ガス供給経路14に合流する。
【0034】
このとき、エジェクタ20では、
図2中の矢印F1、F2、F3のように、ノズル部202から燃料ガスが噴出される。これにより、
図2中の矢印F4のように、オフガス供給経路16から吸引部208へオフガスが吸引される。ノズル部202から噴出された燃料ガスと、吸引部208から吸引されたオフガスとは、ディフューザ部210で合流して混合ガスとなる。
図2中の矢印F5のように、混合ガスは、ディフューザ部210から燃料ガス供給経路14に吐出される。
【0035】
ここで、上記の通り、エジェクタ20は、ノズル部202、吸引部208、ディフューザ部210とを有する流体ポンプである。エジェクタ20は、ノズル部202から噴流となって流れる駆動流の運動エネルギを、圧力エネルギに変換する。より詳細には、ノズル部202からの駆動流の減圧および牽引効果により、吸引部208から作動流体が吸引される。
図2中の矢印F3が駆動流を示している。
図2中の矢印F4が吸引流を示している。ディフューザ部210で作動流体が減速することにより、運動エネルギが圧力エネルギに変換されて、圧力エネルギが増大する。
【0036】
本実施形態のエジェクタ20のように、流路形状が固定されたエジェクタは、流路形状を変化させるための可動部を持たない。このため、一般的に、流路形状が固定されたエジェクタは、機械式のポンプに比べて、耐久性、信頼性および製造コストのいずれにも優れる。
【0037】
エジェクタ20の性能は、駆動流の持つ運動エネルギの大きさとエジェクタ20の流路形状とに強く依存する。このため、駆動流の運動エネルギまたはエジェクタの流路形状を変化させることで、エジェクタの性能を変えることができる。
【0038】
しかし、エジェクタの流路形状を変化させることは、可動部を持たせることになる。このため、エジェクタの流路形状を変化させることは、上記のエジェクタの可動部を持たないという特長を失わせてしまう。したがって、多くの場合、エジェクタの性能の可変のために、駆動流の運動エネルギを変化させることが行われる。この運動エネルギの変化は、ノズル部の絞り部の入口側の圧力または温度を変化させるか、駆動流の流量を変化させることで実現できる。
【0039】
駆動流の流量を変化させるには、ノズル部の絞り部の径を変化させるか、ノズル部の入口側の流路を断続的に開閉することなどの方法がある。本願では、後者のノズル部202の入口側の流路を、断続的に開閉する方法に注目する。流路の開時間と流路の閉時間とを調節することで、駆動流の流量を変化させることができる。
【0040】
そこで、燃料電池システム10は、制御装置22を備えている。制御装置22は、駆動流の流量が所望の流量となるように、弁部214の開閉を制御する。弁部214の開閉制御では、弁部214の開弁状態と閉弁状態とが交互に繰り返される。1回の開弁状態と1回の閉弁状態との組み合わせが、1つの制御周期とされる。1つの制御周期の長さや、Duty比が変更されることで、駆動流の流量が変更される。Duty比は、1つの制御周期において、開弁状態の時間長さと閉弁状態の時間長さの和に対する開弁状態の時間長さの比である。
【0041】
なお、本実施形態の弁部214の開閉制御では、弁部214の全開状態と閉弁状態とが切り替えられる。しかしながら、全開状態を第1の開弁状態とし、全開と全閉との間の開度のときを第2の開弁状態として、第1の開弁状態と、第2の開弁状態と、閉弁状態とが切り替えられてもよい。
【0042】
次に、本実施形態のエジェクタ20が解決する課題について説明する。
【0043】
一般に、定常流を前提として、弁部214とノズル部202とを備える流体機器を設計する場合では、弁部214の絞り径D1は、ノズル部202の絞り径D2に対して十分大きく設定される。これは、弁部214の全開時における弁部214での圧力損失の低減のためである。このように設定されたエジェクタ20を比較例1のエジェクタ20と呼ぶ。
【0044】
比較例1のエジェクタ20において、弁部214の開弁状態と閉弁状態とが交互に繰り返される。このとき、
図2中の流体の流れF2の流量は、
図5、6に示すように、時間経過に伴い変化する。この流体の流れF2は、弁部214からノズル部202に流入する流体の流れである。ここでいう流量は、質量流量である。
図5は、比較例1のエジェクタ20での経過時間に対する流体の流れF2の流量変化を示している。経過時間は、弁部214の開弁直後からの経過時間である。
図5では、1制御周期はT1である。開弁時間はT2である。閉弁時間はT3である。
図6は、
図5に示す流量波形のうちの1制御周期の部分を示している。
【0045】
図6に示すように、開弁直後からの期間である開弁初期では、流量は大きな流量である第1流量Q1となる。その後、第1流量Q1から第1流量Q2よりも小さな第2流量Q2まで、流量は減少する。その後、流量は第2流量Q2で一定となる。以下では、
図6に示す流量波形のうち流量が第2流量Q2よりも大きい部分を突入流量部分と呼ぶ。
【0046】
このような流量変化が生じた理由は、次の通りである。すなわち、弁部214の開弁直後では、弁部214の入口側と出口側との圧力比は、臨界圧力比以下である。この圧力比は、弁部214の入口側の圧力に対する弁部214の出口側の圧力の比である。このため、流体の流れF2は、チョーク(すなわち、音速)流れとなる。第1流量Q1は、このチョーク流れのときの流量である。
【0047】
弁部214の開弁直後から時間が経過するにつれて、弁部214の出口側の圧力が上昇する。弁部214の出口側の圧力とは、絞り部上流側流路222の圧力のことである。弁部214の出口側の圧力が上昇すると、弁部214の入口側と出口側との圧力比は、臨界圧力よりも大きくなる。このため、流体の流れF2は、チョーク流れではなくなり、流速が低下する。流体の流れF2の流量は、第1流量Q1から第2流量Q2まで減少する。
【0048】
その後、絞り部204aの入口側と出口側との圧力比は、臨界圧力比以下となる。このため、絞り部204aからの流体の流れF3は、チョーク流れとなる。第2流量Q2は、このチョーク流れのときの流体の流れF2の流量である。絞り部204aの入口側と出口側との圧力比は、絞り部204aの入口側の圧力に対する絞り部204aの出口側の圧力の比である。絞り部204aの入口側の圧力は、弁部214の出口側の圧力と同じである。
【0049】
ここで、流体の流れF2がチョーク流れとなるときの流量は、弁部214の絞り径D1と、弁部214の入口側の流体の状態(すなわち、流体の温度、圧力)とによって決まる。同様に、流体の流れF3がチョーク流れとなるときの流量は、絞り部204aの絞り径D2と、絞り部204aの入口側の流体の状態(すなわち、流体の温度、圧力)とによって決まる。弁部214の絞り径D1は、絞り部204aの絞り径D2よりも十分に大きい。このため、第1流量Q1は、第2流量Q2よりも大きい。よって、
図6に示す流量波形において突入流量部分が生じる。
【0050】
ところで、弁部214の開弁制御の1つの方法として、Duty比を固定して、開弁時間を短くする方法がある。この制御方法は、Duty比を固定することで駆動流の流量を変えずに、開弁時間を短くすることで駆動流の脈動を抑制することを目的とする。なお、駆動流の流量は、
図2の流体の流れF2の流量と同じである。
【0051】
しかし、
図5に示す流量波形のときの開弁制御に対して、Duty比を変えずに、1制御周期の時間を半分にした場合、駆動流の時間に対する流量変化は、
図7に示す流量波形となる。
図7では、1制御周期は1/2・T1である。開弁時間は1/2・T2である。閉弁時間は1/2・T3である。
図7に示す流量波形では、
図5に示す流量波形に対して、流量が第2流量Q2で一定となる時間は短くなるが、突入流量部分の流量および時間は変わらない。このように、流量波形の突入流量部分は、1制御周期での開弁状態の時間の長さを短くしても、1制御周期の流量波形内に、同じ形状で存在する。したがって、1制御周期の時間を短くするほど、突入流量部分の影響が大きくなる。
【0052】
このため、
図8に示すように、Duty比を一定として、1制御周期の開弁時間を短くすると、駆動流の流量が変わってしまう。すなわち、開弁時間に対して流量は一定ではない。
図8は、Duty比を固定したまま、1制御周期の開弁時間を変化させたときの1制御周期当たりの開弁時間の長さに対する駆動流の流量の変化を示している。
図8の縦軸は、単位時間における
図6中の斜線が付された領域の面積の総和である。単位時間内に複数の制御周期が含まれる場合、複数の制御周期のそれぞれの流量波形の面積の総和である。
【0053】
また、弁部214の開弁制御の他の方法として、制御周期の時間長さを固定して、Duty比を変化させる方法がある。この制御方法は、Duty比の変化で、駆動流の流量を調整する。
【0054】
しかし、
図9に示すように、突入流量部分の影響により、Duty比の変化に対して、駆動流の流量は直線的な変化をしない。
図9は、制御周期の時間長さを固定したまま、Duty比を変化させたときの1制御周期当たりの開弁時間の長さに対する駆動流の流量の変化を示している。横軸の1制御周期当たりの開弁時間の長さを、Duty比に換算することができる。
【0055】
このように、弁部214の絞り径D1がノズル部202の絞り径D2に対して十分大きく設定される場合、エジェクタ20は、1制御周期当たりの開弁時間に対する駆動流の流量の変化の直線性が低いという特性を持つ。この場合、燃料電池システム10において、エジェクタ20の駆動流の流量を正確に調整するためには、駆動流の流量を検知する検知部を用いてのフィードバック制御が必要となる。このフィードバック制御では、検知部で検知した駆動流の流量に応じて、弁部214の開弁時間を調整する。このため、燃料電池システム10に検知部が必要となる。さらに、フィードバック制御を行うために、制御装置22の構成が複雑となる。
【0056】
次に、本実施形態のエジェクタ20の効果について説明する。
【0057】
本実施形態では、弁部214の絞り径D1とノズル部202の絞り径D2とが、上記の式(1)を満たすように設定されている。
【0058】
図10は、
図2に示すエジェクタにおいて、D1/D2の値が2.2〜0.95のそれぞれの値のときにおける、絞り部上流側流路222の圧力の時間変化を示すシミュレーション結果である。
図10の横軸は、弁部214が開閉制御されるときの1制御周期での経過時間を示している。
図11は、D1/D2の値が2.2〜0.95のそれぞれの値のときにおける、
図10中の開弁時間内の圧力の平均値を示すグラフである。
図12は、D1/D2の値が2.2〜0.95のそれぞれの値のときにおける、流体の流れF2の流量の時間に対する変化を示すシミュレーション結果である。
図12の横軸は、弁部214が開閉制御されるときの1制御周期での経過時間を示している。
【0059】
これらのシミュレーションでは、弁部214の上流側の圧力と、絞り部204aの下流側の圧力とのそれぞれを変えずに、D1/D2の値を変えた。また、D1/D2の値を変えることは、ノズル部202の絞り径D2の大きさを固定して、弁部214の絞り径D1を変えることで行われた。
【0060】
D1/D2の値が2.2〜0.95のそれぞれの値のとき、絞り部上流側流路222の圧力は、開弁直後から閉弁に切り替わるまで、
図10に示すように変化する。そして、D1/D2の値が2.2〜0.95のそれぞれの値のときの
図10中の開弁時間内の圧力の平均値は、
図11に示す通りであった。
図11に示すように、D1/D2の値が1.2よりも小さいとき、圧力の平均値は、臨界圧力よりも小さくなっている。
【0061】
図12に示すように、D1/D2の値が1.2よりも小さいとき、D1/D2の値が1.3以上のときと比較して、
図6に示す突入流量部分を小さくすることができる。すなわち、D1/D2の値が1.2よりも小さいとき、流量を一定に近づけることができる。
【0062】
ここで、流量波形が
図6に示す波形となるのは、最小部215aからの流れが臨界状態に維持されないことが原因である。これに対して、本実施形態によれば、絞り部上流側流路222の圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなっている。このため、弁部214が開弁状態の期間、最小部215aからの流れが臨界状態またはそれに近い状態に維持される。よって、最小部215aからの流量が一定に近づくと考えられる。上記のシミュレーション結果は、絞り部上流側流路222の体積が特定の大きさであるときの結果である。しかしながら、絞り部上流側流路222の体積がこの特定の大きさでない場合であっても、類似の結果が得られるものと考えられる。
【0063】
なお、一般的に、流量の目標値に対する誤差は5%以内であることが望まれる。本発明者は、エジェクタ20を用いたシステムにおいて、D1/D2の値が1.2のときに、弁部214を開閉制御したときの駆動流の目標値に対する誤差を試算した。この結果、誤差を5%以内に抑えることができた。したがって、D1/D2の値が1.2以下のとき、誤差を5%以内に抑えることができる。
【0064】
D1/D2の値を0.95以上とする理由は、次の通りである。ノズル部202の絞り径D2の大きさを固定して、弁部214の絞り径D1を減少させることで、D1/D2の値を減少させる場合を考える。この場合、D1/D2の値が減少するにつれて、絞り部上流側流路222を流れる流体の流量が小さくなる。絞り部上流側流路222を流れる流体の流量を維持するためには、ノズル部202の絞り径D2を大きくしなければならない。しかし、ノズル部202の絞り径D2を大きくすることは、好ましくない。エジェクタ20の大型化によって、エジェクタ20のコストが増大するからである。そこで、本実施形態では、D1/D2の値を0.95以上とする。これにより、ノズル部202の絞り径D2が大きくなることを抑制でき、エジェクタ20の大型化を抑制できる。
【0065】
本実施形態によれば、
図13に示すように、Duty比を固定して、開弁時間を変化させたときに、流量が一定に近いという特性を、エジェクタ20に持たせることができる。
図13は、本実施形態のエジェクタ20において、Duty比を固定したまま、1制御周期の開弁時間を変化させたときの1制御周期当たりの開弁時間の長さに対する駆動流の流量の変化を示している。
【0066】
さらに、本実施形態によれば、
図14に示すように、制御周期の時間長さを固定して、Duty比を変化させたときに、流量がDuty比(すなわち、開弁時間の長さ)に対して直線的に変化するという特性を、エジェクタ20に持たせることができる。
図14は、本実施形態のエジェクタ20において、制御周期の時間長さを固定したまま、Duty比を変化させたときの1制御周期当たりの開弁時間の長さに対する駆動流の流量の変化を示している。
【0067】
このように、1制御周期当たりの開弁時間に対する流量の変化の直線性が高いという特性を、エジェクタ20に持たせることができる。
【0068】
このため、制御装置22は、エジェクタ20の駆動流を目的の流量に調整する場合、目的の流量に応じて開弁時間に設定する。すなわち、制御装置22は、目的の流量に応じて、1制御周期の時間およびDuty比を設定する。これにより、エジェクタ20の駆動流を目的の流量に調整することができる。
【0069】
したがって、本実施形態では、制御装置22のフィードバック制御が不要となる。このため、駆動流の流量を検知する検知部が不要となる。さらに、制御装置22の構成が簡素化される。この結果、本実施形態のエジェクタ20が適用された燃料電池システム10の生産コストを低減することができる。
【0070】
(第2実施形態)
図15に示すように、本実施形態では、弁部本体部216が形成する流路の形状が第1実施形態と異なる。弁部本体部216が形成する流路の一部は、拡大部224となっている。拡大部224は、減少部205において流路断面積が最大となる部分205aよりも流路断面積が拡大されている。したがって、絞り部上流側流路222は、減少部205よりも上流側に、拡大部224を含む。
【0071】
そして、絞り部上流側流路222の容積をVとする。燃料ガスの臨界密度をρ
cとする。燃料ガスの臨界流速をu
cとする。最小部215aでの流路断面積をAとする。1制御周期内の弁部214の開弁時間をτとする。弁部214が閉弁状態から開弁状態に切り替わる直前のときに、吸引部208の入口でのオフガスの密度をρ
0とする。
【0072】
このとき、絞り部上流側流路222の容積は、下記の式(4)を満たすように設定されている。
【0073】
【数2】
なお、臨界密度は、臨界密度比と、弁部214の入口側での密度とによって定まる密度である。臨界密度と臨界密度比とのそれぞれは、圧縮性流体力学で定義されているものと同じである。臨界密度は、最小部215aの出口側での流体が臨界状態であるときの最小部215aの出口側での流体の密度である。
【0074】
臨界密度比をdとし、最小部215aの入口側での燃料ガスの密度をρ
0とし、最小部215aの出口側での状態が臨界状態であるときの密度をρ
*とし、流体の比熱比をγとする。このとき、臨界密度比および臨界密度は、次の式(5)、(6)で示される。
【0075】
【数3】
ρ
*=d・ρ
0・・・(6)
臨界流速は、圧縮性流体力学で定義されているものと同じである。臨界流速は、流体が臨界状態のときの流速である。臨界流速をu
cとし、比熱比をγとしたとき、臨界流速は次の式(7)で示される。
【0076】
【数4】
式(7)中のRは気体定数、T
0は最小部215aの入口での流体の温度である。
【0077】
上記の式(4)は、最小部215aでの流体の状態が臨界状態を維持できるように、絞り部上流側流路222内の圧力の開弁期間中の平均値が臨界圧力を下回るための絞り部上流側流路222の容積の条件を示している。
【0078】
上記の式(4)は、次のようにして導かれる。すなわち、絞り部上流側流路222から流体が流出しないと仮定する。開弁状態の期間中に絞り部上流側流路222に流体が流入する。このときの閉弁状態から開弁状態に切り替えられたときから、閉弁状態に切り替えられるまでの質量の変化をΔmとする。最小部215aでの流体の状態が臨界状態になるとき、この質量の変化は、次の式(8)、(9)の2通りの式で示される。
Δm=ρ
c・u
c・A・τ・・・(8)
Δm=(ρ
c−ρ
0)・V・・・(9)
【0079】
式(9)は、開弁前後の燃料ガスの密度変化と燃料ガスの体積とによって質量の変化を示している。開弁後の密度の最大値は、燃料ガスの臨界密度である。本実施形態では、吸引部208の入口で計測されるオフガスの密度を、開弁前の燃料ガスの密度、すなわち、ノズル部202よりも下流側での燃料ガスの密度とみなしている。
【0080】
式(8)、(9)より、式(10)が導かれる。
V=ρ
c・u
c・A・τ/(ρ
c−ρ
0)・・・(10)
式(10)は、最小部215aでの流体の状態が臨界状態になるときの絞り部上流側流路222の容積を示している。
【0081】
ここで、絞り部上流側流路222内の流体の圧力と密度は1対1の関係がある。圧力が増大すると、密度も増大する。このため、絞り部上流側流路222内の流体の平均圧力が臨界圧力よりも下回ることは、部上流側流路222内の流体の密度が臨界密度よりも下回ることと等しい。また、質量が一定のとき、容積が増大すると、密度が低下するという関係がある。この関係より、流体の密度を下げるためには、容積を増大させればよい。
したがって、式(10)から式(4)が導かれる。
【0082】
エジェクタ20の他の構成は、第1実施形態と同じである。燃料電池システム10の構成は、第1実施形態と同じである。
【0083】
本実施形態によれば、絞り部上流側流路222の容積が式(4)を満たしている。これにより、第1実施形態と同様に、絞り部上流側流路222での圧力の平均値は、第1流体の臨界圧力よりも小さくなる。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
なお、本実施形態では、弁部214の絞り径D1の大きさは、第1実施形態に記載の式(1)を満たさないほど、ノズル部202の絞り径D2より大きくてもよい。また、弁部214の絞り径D1の大きさは、第1実施形態に記載の式(1)を満たす大きさでもよい。
【0085】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の弁部214は第1弁部214である。本実施形態では、
図16に示すように、エジェクタ20が第2弁部230を備える点が、第1実施形態と異なる。
【0086】
第2弁部230は、絞り部上流側流路222の圧力が所定の上限値を超えると、絞り部上流側流路222の燃料ガスを、絞り部204aを介さずに、絞り部上流側流路222の外部に放出する圧力逃がし弁である。
【0087】
第1弁部214の弁部本体部216には、逃がし流路232が形成されている。逃がし流路232は、絞り部上流側流路222につながっている。逃がし流路232は、絞り部上流側流路222内の燃料ガスの一部を絞り部上流側流路222の外部に放出するための流路である。第2弁部230は、逃がし流路232に接続されている。第2弁部230は、逃がし流路232を開閉する。
【0088】
第2弁部230は、絞り部上流側流路222の圧力が所定の上限値を超えると、機械的に開弁状態になる。この上限値は、弁部214が開弁状態の期間における絞り部上流側流路222での圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなるように、設定される。これにより、弁部214が開弁状態の期間における絞り部上流側流路222での圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなる。
【0089】
したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。なお、圧力センサが絞り部上流側流路222の圧力を検出する。圧力センサの検出値が所定値を超えた場合に、第2弁部230が開弁状態にされるようになっていてもよい。
【0090】
なお、本実施形態では、1つの第2弁部230が絞り部上流側流路222に接続されていた。しかしながら、2つ以上の第2弁部230が絞り部上流側流路222に接続されていてもよい。
【0091】
(第4実施形態)
図17に示すように、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル30は、圧縮機32と、放熱器34と、エジェクタ20と、気液分離器36と、蒸発器38とを主な構成部品として備えている。各構成部品は、冷媒配管によって接続されている。各構成部品は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する。
【0092】
圧縮機32は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。放熱器34は、圧縮機32から吐出された冷媒を放熱させる。放熱器34は、冷凍サイクルの冷媒と他の熱交換媒体とを熱交換させる熱交換器である。
【0093】
エジェクタ20は、
図2に示す第1実施形態のエジェクタ20と同じものである。エジェクタ20は、放熱器34から流出した冷媒をノズル部202から噴出する。エジェクタ20は、蒸発器38から流出した冷媒を吸引部208から吸入する。エジェクタ20は、吸引部208から吸入した冷媒と、ノズル部202から噴出した冷媒との混合冷媒をディフューザ部210から吐出する。冷媒は、圧縮性流体である。ノズル部202を流れる冷媒が、第1流体に相当する。吸引部から吸引される冷媒が、第2流体に相当する。
【0094】
気液分離器36は、エジェクタ20のディフューザ部210に接続されている。気液分離器36は、ディフューザ部210から流出した冷媒を、気相冷媒と液相冷媒とに分離する。気液分離器36の気相冷媒出口側に、圧縮機32の冷媒吸入口が接続されている。気液分離器36の液相冷媒出口側に、蒸発器38の冷媒入口側が接続されている。蒸発器38は、吸引部208に向かって流れる冷媒を蒸発させる。蒸発器38は、冷凍サイクルの冷媒と他の熱交換媒体とを熱交換させる熱交換器である。
【0095】
このように構成されたエジェクタ式冷凍サイクル30では、圧縮機32から吐出された冷媒が放熱器34で放熱される。放熱器34から流出した冷媒は、エジェクタ20のノズル部202に流入する。ノズル部202に流入した冷媒は、
図2中の矢印F1、F2、F3のように、ノズル部202から噴射される。このとき、ノズル部202では、冷媒の圧力エネルギが速度エネルギに変換されることで、冷媒が減圧膨張される。また、ノズル部202からの冷媒の噴出によって、
図2中の矢印F4のように、蒸発器38から流出した冷媒が、吸引部208から吸引される。ノズル部202から噴出された冷媒と吸引部208から吸引された冷媒とは、ディフューザ部210で合流する。
図2中の矢印F5のように、合流した冷媒は、ディフューザ部210から吐出される。このとき、ディフューザ部210では、流路断面積の拡大によって冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換されることで、冷媒が昇圧される。
【0096】
ディフューザ部210から吐出された冷媒は、気液分離器36で気相冷媒と液相冷媒とに分離される。気液分離器36から流出した液相冷媒は、蒸発器38で蒸発した後、蒸発器38から流出する。気液分離器36から流出した気相冷媒は、圧縮機32に吸引される。
【0097】
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル30においても、第1実施形態と同じエジェクタ20が用いられている。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
(第5実施形態)
図18に示すように、本実施形態では、弁部214とノズル部202とが、中間流路240を介して、接続されている。中間流路240は、弁部214とノズル部202との間の流路である。中間流路240は、弁部214とノズル部202との両方に対して別体として構成された管によって形成される。
【0099】
ノズル部202のノズル部流路204、中間流路240および弁部214の弁部流路215を含む燃料ガスの流路は、最小部215aと絞り部204aとの間の燃料ガスの流路である絞り部上流側流路222を含む。
【0100】
エジェクタ20の他の構成は、第1実施形態と同じである。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。なお、第2〜第4実施形態のそれぞれにおいて、本実施形態の構成が採用されてもよい。
【0101】
(第6実施形態)
図19に示すように、本実施形態では、エジェクタ20は、2つの弁部214A、214Bを備える。2つの弁部214A、214Bは、ノズル部202の上流側で、並列に接続されている。2つの弁部214A、214Bのそれぞれの構成は、第1実施形態の弁部214と同じである。
【0102】
2つの弁部214A、214Bのそれぞれの上流側は、分岐部242を介して、1つの弁部上流側流路244に接続されている。このため、矢印F1で示す弁部上流側流路244を流れる燃料ガスは、分岐部242で分岐する。分岐した燃料ガスのそれぞれは、2つの弁部214A、214Bのそれぞれに流入する。
【0103】
2つの弁部214A、214Bのそれぞれの下流側は、合流部246を介して、ノズル部202に接続されている。このため、2つの弁部214A、214Bのそれぞれから流出した燃料ガスは、合流部246で合流した後、矢印F2で示すように、ノズル部202に流入する。
【0104】
2つの弁部214A、214Bのそれぞれは、開弁期間が同じ、または、開弁期間がずれるように、開閉される。換言すると、2つの弁部214A、214Bのそれぞれは、開弁期間の少なくとも一部が重複するように、開閉制御される。
【0105】
本実施形態では、エジェクタ20は、2つの弁部214A、214Bのそれぞれの最小部215aと、絞り部204aとの間の燃料ガスの流路である絞り部上流側流路222Aを有する。
【0106】
そして、2つの弁部214A、214Bのそれぞれの最小部215aの流路断面積の合計値に対応する水力直径である第1の水力直径をD1とする。絞り部204aの水力直径である第2の水力直径をD2としたとき、第1の水力直径と第2の水力直径とは、式(1)を満たしている。換言すると、式(1)を満たすように、2つの弁部214A、214Bのそれぞれの最小部215aの絞り径と、絞り部204aの絞り径とが設定されている。
【0107】
0.95≦D1/D2≦1.2・・・(1)
これにより、2つの弁部214A、214Bのうち少なくとも1つの弁部が開弁状態である期間における絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、燃料ガスの臨界圧力比と、弁部上流側流路244内の燃料ガスの圧力とに基づいて定まる臨界圧力よりも小さくなる。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0108】
なお、本実施形態において、第2実施形態のように、絞り部上流側流路222の容積は、式(4)を満たすように設定されていてもよい。これによって、絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなるように、エジェクタ20が構成されていてもよい。
【0109】
この場合、式(4)中のAは、2つの弁部214A、214Bの最小部215aの流路断面積の合計値である。式(4)中のρ
cは、燃料ガスの臨界密度比と、弁部上流側流路244内の燃料ガスの密度とに基づいて定まる、第1流体の臨界密度である。式(4)中のτは、2つの弁部214A、214Bが同時に開閉されるときのそれぞれの弁部の1回の開弁状態と1回の閉弁状態との組み合わせを1制御周期としたときの1制御周期内の開弁時間である。式(4)中のρ
0は、2つの弁部214A、214Bのそれぞれが同時に開閉されるときのそれぞれの弁部が閉弁状態から開弁状態に切り替わる直前のときの吸引部208の入口でのオフガスの密度である。
【0110】
また、本実施形態において、第3実施形態のように、エジェクタ20が1つ以上の第2弁部230を備えていてもよい。これによって、絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなっていてもよい。
【0111】
なお、本実施形態では、ノズル部202の上流側で、2つの弁部214A、214B同士が並列に接続されている。しかしながら、ノズル部202の上流側で、3つ以上の弁部同士が並列に接続されていてもよい。この場合、本実施形態の記載において、2つの弁部214A、214Bを3つ以上の弁部と読み替えればよい。
【0112】
(第7実施形態)
図20に示すように、本実施形態では、エジェクタ20は、2つのノズル部202A、202Bを備える。2つのノズル部202A、202Bは、1つの弁部214の下流側で、並列に接続されている。2つのノズル部202A、202Bのそれぞれの構成は、第1実施形態のノズル部202と同じである。
【0113】
2つのノズル部202A、202Bのそれぞれの上流側は、分岐部250を介して、1つの弁部214の下流側に接続されている。1つの弁部214の上流側は、1つの弁部上流側流路244に接続されている。このため、
図20中の矢印F1のように、燃料ガスは、弁部上流側流路244、弁部214の順に流れる。弁部214から流出した燃料ガスは、分岐部250で分岐する。分岐した燃料ガスのそれぞれは、
図20中の矢印F2a、F2bのように、2つのノズル部202A、202Bのそれぞれに流入する。したがって、2つのノズル部202A、202Bに流入する燃料ガスの流量の合計は、第1実施形態のノズル部202に流入する燃料ガスの流量と同じである。
【0114】
図21に示すように、2つのノズル部202A、202Bは、1つの本体部206に対して設けられる。
図21中の矢印F3a、F3bのように、2つのノズル部202A、202Bのそれぞれから噴出された燃料ガスは、1つのディフューザ部210のディフューザ部流路211を流れる。2つのノズル部202A、202Bのうち少なくとも1つのノズル部からの燃料ガスの噴出によって、
図21中の矢印F4のように、吸引部208からオフガスが吸引される。2つのノズル部202A、202Bのうち少なくとも1つのノズル部から噴出された燃料ガスと、吸引部208から吸引されたオフガスとは、ディフューザ部210で合流して混合ガスとなる。
図21中の矢印F5のように、混合ガスは、ディフューザ部210から吐出される。
【0115】
本実施形態では、
図20に示すように、エジェクタ20は、最小部215aと、2つのノズル部202A、202Bの絞り部204aとの間の燃料ガスの流路である絞り部上流側流路222Bを有する。本実施形態の絞り部上流側流路222Bは、最小部215aと分岐部250との間の流路と、分岐部250と一方のノズル部202Aの絞り部204aとの間の流路と、分岐部250と他方のノズル部202Bの絞り部204aとの間の流路とを含む。
【0116】
そして、最小部215aの水力直径である第1の水力直径をD1とする。2つのノズル部202A、202Bのそれぞれの絞り部204aの流路断面積の合計値に対応する水力直径である第2の水力直径をD2とする。このとき、第1の水力直径と第2の水力直径とは、式(1)を満たしている。換言すると、式(1)を満たすように、最小部215aの絞り径と、2つのノズル部202A、202Bのそれぞれの絞り部204aの絞り径とが設定されている。
【0117】
0.95≦D1/D2≦1.2・・・(1)
これにより、弁部214が開弁状態である期間における絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、燃料ガスの臨界圧力比と、弁部上流側流路244内の燃料ガスの圧力とに基づいて定まる臨界圧力よりも小さくなる。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0118】
なお、本実施形態において、第2実施形態のように、絞り部上流側流路222の容積は、式(4)を満たすように設定されていてもよい。これによって、絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなっていてもよい。
【0119】
また、本実施形態において、第3実施形態のように、エジェクタ20が1つ以上の第2弁部230を備えていてもよい。これによって、絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなっていてもよい。
【0120】
なお、本実施形態では、1つの弁部214の下流側で、2つのノズル部202A、202B同士が並列に接続されている。しかしながら、1つの弁部214の下流側で、3つ以上のノズル部同士が並列に接続されていてもよい。この場合、本実施形態の記載において、2つのノズル部202A、202Bを3つ以上のノズル部と読み替えればよい。
【0121】
(第8実施形態)
図22に示すように、第6実施形態と同様に、エジェクタ20は、2つの弁部214A、214Bを備える。さらに、第7実施形態と同様に、エジェクタ20は、2つのノズル部202A、202Bを備える。
【0122】
本実施形態では、
図22に示すように、エジェクタ20は、2つの弁部214A、214Bの最小部215aと、2つのノズル部202A、202Bの絞り部204aとの間の燃料ガスの流路である絞り部上流側流路222Cを有する。本実施形態の絞り部上流側流路222Cは、一方の弁部214Aの最小部215aと合流部246との間の流路と、他方の弁部214Bの最小部215aと合流部246との間の流路と、合流部246と分岐部250との間の流路と、分岐部250と一方のノズル部202Aの絞り部204aとの間の流路と、分岐部250と他方のノズル部202Bの絞り部204aとの間の流路とを含む。
【0123】
そして、2つの弁部214A、214Bのそれぞれの最小部215aの流路断面積の合計値に対応する水力直径である第1の水力直径をD1とする。2つのノズル部202A、202Bのそれぞれの絞り部204aの流路断面積の合計値に対応する水力直径である第2の水力直径をD2とする。このとき、第1の水力直径と第2の水力直径とは、式(1)を満たしている。換言すると、式(1)を満たすように、2つの弁部214A、214Bのそれぞれの最小部215aの絞り径と、2つのノズル部202A、202Bのそれぞれの絞り部204aの絞り径とが設定されている。
【0124】
0.95≦D1/D2≦1.2・・・(1)
これにより、2つの弁部214A、214Bのうち少なくとも1つの弁部が開弁状態である期間における絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、燃料ガスの臨界圧力比と、弁部上流側流路244内の燃料ガスの圧力とに基づいて定まる臨界圧力よりも小さくなる。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0125】
なお、本実施形態においても、第2実施形態のように、絞り部上流側流路222の容積は、式(4)を満たすように設定されていてもよい。これによって、絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなっていてもよい。このときの式(4)中の各記号の説明は、第6実施形態での説明と同じである。
【0126】
また、本実施形態においても、第3実施形態のように、エジェクタ20が1つ以上の第2弁部230を備えていてもよい。これによって、絞り部上流側流路222内の燃料ガスの圧力の平均値が、臨界圧力よりも小さくなっていてもよい。
【0127】
また、本実施形態においても、3つ以上の弁部同士が並列に接続されていてもよい。3つ以上のノズル部同士が並列に接続されていてもよい。
【0129】
(1)第1〜第3実施形態では、ノズル部202と弁部本体部216とが別体として構成されている。しかしながら、ノズル部202と弁部本体部216とが一体成形品として構成されていてもよい。
【0130】
(2)上記各実施形態では、ノズル部流路204は、ノズル部流路204の下流側端部に、絞り部204aを有している。しかしながら、ノズル部流路204は、ノズル部流路204の下流側端部よりも上流側に、絞り部204aを有していてもよい。
【0131】
(3)第2実施形態では、弁部本体部216が形成する流路の一部は、拡大部224となっている。しかしながら、ノズル部202が形成する流路の一部が、拡大部224となっていてもよい。この場合であっても、絞り部上流側流路222は、減少部205よりも上流側に、拡大部224を有する。
【0132】
(4)第2実施形態では、絞り部上流側流路222は、減少部205よりも上流側に、拡大部224を有している。しかしながら、絞り部上流側流路222は、拡大部224を有していなくてもよい。絞り部上流側流路222の容積が式(4)を満たすように、絞り部上流側流路222の長さが設定されていてもよい。例えば、絞り部上流側流路222の容積が式(4)を満たすように、中間流路240の長さが設定されていてもよい。
【0133】
(5)第1〜第3実施形態では、ノズル部202から噴出される第1流体は、燃料ガスである。第4実施形態では、ノズル部202から噴出される第1流体は、冷凍サイクルの冷媒である。しかしながら、ノズル部202から噴出される第1流体は、他の圧縮性流体であってもよい。
【0134】
(6)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0135】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、エジェクタは、1つ以上のノズル部と、吸引部と、ディフューザ部と、1つ以上の弁部とを備える。1つ以上の弁部のうち少なくとも1つの弁部が開弁状態である期間における絞り部上流側流路内の第1流体の圧力の平均値が、第1流体の臨界圧力比と、弁部上流側流路内の第1流体の圧力とに基づいて定まる臨界圧力よりも小さい。
【0136】
また、第2の観点によれば、1つ以上の弁部の最小部の流路断面積の合計値に対応する第1の水力直径をD1とし、1つ以上のノズル部の絞り部の流路断面積の合計値に対応する第2の水力直径をD2とする。このとき、第1の水力直径と第2の水力直径とは、下記の式(1)を満たす。
【0137】
0.95≦D1/D2≦1.2・・・(1)
これによれば、D1/D2を1.2以下とすることで、絞り部上流側流路内の第1流体の圧力の平均値を臨界圧力よりも小さくすることができる。このように、第1の観点の構成を実現するための具体的な構成として、第2の観点の構成を採用することができる。
【0138】
さらに、D1/D2を0.95以上とすることで、ノズル部が大きくなることを抑制できる。よって、エジェクタの大型化を抑制することができる。
【0139】
また、第3の観点によれば、絞り部上流側流路の容積をVとする。第1流体の臨界密度比と、弁部上流側流路内の第1流体の密度とに基づいて定まる臨界密度をρ
cとする。第1流体の臨界流速をu
cとする。1つ以上の弁部の最小部の流路断面積の合計値をAとする。1つ以上の弁部のそれぞれが同時に開閉されるときの当該弁部の1回の開弁状態と1回の閉弁状態との組み合わせを1制御周期としたときの1制御周期内の開弁時間をτとする。1つ以上の弁部のそれぞれが同時に開閉されるときの当該弁部が閉弁状態から開弁状態に切り替わる直前のときの吸引部の入口での第2流体の密度をρ
0とする。このとき、絞り部上流側流路の容積は、下記の式(4)を満たす。
【0140】
【数2】
これによれば、式(4)を満たすように、絞り部上流側流路の容積が設定されている。これにより、絞り部上流側流路内の第1流体の圧力の平均値を臨界圧力よりも小さくすることができる。このように、第1の観点の構成を実現するための具体的な構成として、第3の観点の構成を採用することができる。
【0141】
また、第4の観点によれば、ノズル部流路は、第1流体の流れ方向に進むにつれて流路断面積が徐々に減少する減少部を含む。絞り部上流側流路は、減少部よりも上流側に、減少部において流路断面積が最大となる部分よりも流路断面積が拡大されている拡大部を含む。第3の観点において、具体的には、第4の観点の構成を採用することができる。
【0142】
また、第5の観点によれば、1つ以上の弁部は、1つ以上の第1弁部である。絞り部上流側流路の圧力が所定の上限値を超えると、絞り部上流側流路の第1流体を、1つ以上のノズル部の絞り部を介さずに絞り部上流側流路の外部に放出する1つ以上の第2弁部をさらに備える。
【0143】
これによれば、絞り部上流側流路内の第1流体の圧力の平均値が臨界圧力よりも小さくなるために、エジェクタは、1つ以上の第2弁部を備える。所定の上限値は、絞り部上流側流路内の第1流体の圧力の平均値が臨界圧力よりも小さくなるように設定される。これにより、絞り部上流側流路内の第1流体の圧力の平均値を臨界圧力よりも小さくすることができる。このように、第1の観点の構成を実現するための具体的な構成として、第5の観点の構成を採用することができる。
【0144】
また、第6の観点によれば、エジェクタは、ノズル部と、吸引部と、ディフューザ部と、弁部とを備える。弁部が開弁状態である期間における絞り部上流側流路内の第1流体の圧力の平均値が、第1流体の臨界圧力比と、最小部の入口側の圧力とに基づいて定まる臨界圧力よりも小さい。
【0145】
また、第7の観点によれば、エジェクタ式冷凍サイクルは、第1〜第6の観点のいずれか1つのエジェクタを備える。第1〜第6の観点のエジェクタをエジェクタ式冷凍サイクルに用いることができる。
【0146】
また、第8の観点によれば、燃料電池システムは、第1〜第6の観点のいずれか1つのエジェクタを備える。第1〜第6の観点のエジェクタを燃料電池システムに用いることができる。