(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鋼板の搬送経路に配置され、前記鋼板を上側から押し付けて張力を発生させる昇降ロールと、前記昇降ロールが前記鋼板を押し付ける力を調整するカウンタバランスウェイトと、を備えるルーパと、
前記鋼板の搬送経路に配置され、前記鋼板を前記ルーパに排出する排出装置と、
前記ルーパから排出された前記鋼板を引き込む引込装置と、
前記昇降ロールの上下方向の位置がロール基準高さ以下のとき、前記排出装置と前記引込装置との間の領域である判定領域に破断した前記鋼板の端部である破断部があると判定する破断判定手段と、を備えることを特徴とする判定システム。
前記破断判定手段は、予め設定された基準時間の間、前記昇降ロールの上下方向の位置が前記ロール基準高さ以下となる状態が継続したとき、前記判定領域に前記破断部があると判定することを特徴とする請求項1に記載の判定システム。
鋼板の搬送経路に配置され、前記鋼板を上側から押し付けて張力を発生させる昇降ロールと、前記昇降ロールが前記鋼板を押し付ける力を調整するカウンタバランスウェイトと、を備えるルーパと、
前記鋼板の搬送経路に配置され、前記鋼板を前記ルーパに排出する排出装置と、
前記ルーパから排出された前記鋼板を引き込む引込装置と、を備える設備で使われる判定装置であって、
前記昇降ロールの上下方向の位置がロール基準高さ以下のとき、前記排出装置と前記引込装置との間の領域である判定領域に破断した前記鋼板の端部である破断部があると判定する破断判定手段を備えることを特徴とする判定装置。
鋼板の搬送経路に配置され、前記鋼板を上側から押し付けて張力を発生させる昇降ロールと、前記昇降ロールが前記鋼板を押し付ける力を調整するカウンタバランスウェイトと、を備えるルーパと、
前記鋼板の搬送経路に配置され、前記鋼板を前記ルーパに排出する排出装置と、
前記ルーパから排出された前記鋼板を引き込む引込装置と、を備える設備で使われる判定装置の制御方法であって、
前記昇降ロールの上下方向の位置がロール基準高さ以下のとき、前記排出装置と前記引込装置との間の領域である判定領域に破断した前記鋼板の端部である破断部があると判定する破断判定ステップを備えることを特徴とする判定装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[制御システムの構成]
まず、
図1を参照して制御システム1の構成について説明する。制御システム1は、鋳造圧延設備100と、制御装置500と、鋳造圧延設備100及び制御装置500を繋ぐネットワーク700と、を備え、鋼板10の鋳造、及び、圧延を行う。なお、本実施形態において、下とは重力の方向であり、上とは、重力の反対方向である。制御システム1は、判定システムの一例である。
鋳造圧延設備100は、双ロール式連続鋳造機150と、処理室250と、冷却設備252と、カメラ251と、搬送機300と、圧延機350と、ルーパ400と、コイラ450と、を備える。
【0010】
双ロール式連続鋳造機150は、溶鋼から鋼板10を製造する鋳造機であり、注入部160と、鋳造部200と、を備える。
注入部160は、溶鋼を鋳造部200に注入する装置であり、タンディッシュ161と、ストッパ162と、を備える。
タンディッシュ161は、レードルから注入される溶鋼を一時的に受け止める容器である。タンディッシュ161に注入された溶鋼は、タンディッシュ161の下部に設けられた貫通孔である注ぎ口を通り、鋳造部200の湯溜まり210に注入される。
ストッパ162は、タンディッシュ161の下部に設けられた注ぎ口を開閉でき、注ぎ口の上方に配置され、上下方向に伸びるような棒状の部材である。ストッパ162が上下方向に動くことで、タンディッシュ161から鋳造部200に注入される溶鋼の量が変わる。また、ストッパ162が最も下に移動してタンディッシュ161の注ぎ口を閉じたとき、タンディッシュ161から鋳造部200に溶鋼が注入されなくなる。
【0011】
鋳造部200は、注入部160から注入された溶鋼から鋼板10を製造する。鋳造部200は、一対の鋳造ロール201と、堰202と、鋳造機ロードセル203と、鋳造機動力シリンダ204と、鋳造電動機205と、鋳造機速度計206と、を備える。
【0012】
一対の鋳造ロール201は、それぞれ円柱状のロールであり、中心軸を回転軸として回転可能である。一対の鋳造ロール201は同形状であり、それぞれの回転軸は、同じ水平面上にほぼ平行になるように配置される。また、一対の鋳造ロール201の間には鋳造ロールギャップと呼ばれる隙間が設けられる。一対の鋳造ロール201は、鋳造ロールギャップ側の端部が下方に進むように、互いに逆方向に回転する。鋳造ロールギャップの上側と堰202とで囲まれた領域が、注入部160から注入された溶鋼が溜まる湯溜まり210である。
湯溜まり210に溶鋼が注入された状態で一対の鋳造ロール201が回転すると、鋳造ロール201は、鋳造ロール201の表面で溶鋼を冷却して凝固させる。そして、一対の鋳造ロール201は、凝固した溶鋼である凝固シェルを圧接して、鋳造ロールギャップから下方に鋼板10を排出する。
【0013】
堰202は、一対の鋳造ロール201の回転軸方向の両端であって、少なくとも鋳造ロールギャップの上方に設けられ、溶鋼が湯溜まり210から鋳造ロール201の回転軸方向にこぼれることを防止する。
鋳造機ロードセル203は、一方の鋳造ロール201に取り付けられて、鋳造ロール押付力を計測するロードセルである。鋳造ロール押付力は、鋳造ロール201が、鋳造ロールギャップ内の溶鋼や鋼板10を押し付ける力である。
鋳造機動力シリンダ204は、例えば油圧サーボシリンダであり、鋳造機ロードセル203が取り付けられていない方の鋳造ロール201に力を加えて、鋳造ロール押付力を変更したり、鋳造ロールギャップを変更したりする。
鋳造電動機205は、一対の鋳造ロール201を回転させる。
鋳造機速度計206は、鋳造電動機205の回転速度を計測する。後述の制御装置500の測定値取得部559は、鋳造機速度計206の計測結果に基づいて、鋳造機速度を決定する。鋳造ロール速度は、鋳造ロール201の表面の速度であり、双ロール式連続鋳造機150から排出される鋼板10の速度である。
【0014】
処理室250は、例えば、アルゴンのガスで満たされ、双ロール式連続鋳造機150から排出された鋼板10の酸化を防止する。
カメラ251は、処理室250の中の鋼板10を撮影する。制御装置500は、カメラ251の撮影画像に基づいて、後述の鋼板高さを決定する。
冷却設備252は、後述の第1搬送機300Aと第2搬送機300Bとの間に配置されて、搬送される鋼板10に冷却水を吹き付ける等によって鋼板10を冷却する。
【0015】
搬送機300は、鋼板10を引き込んで搬送方向に排出することで、鋼板10を搬送する。搬送機300は、一対のピンチロール301と、搬送機ロードセル305と、搬送電動機303と、搬送機速度計304と、搬送機ロードセル305と、電流計306と、を備える。
一対のピンチロール301は、それぞれ円柱状のロールであり、中心軸を回転軸として回転可能であって、上下に並ぶように配置される。一対のピンチロール301の間にはピンチロールギャップと呼ばれる隙間が設けられる。一対のピンチロール301は、ピンチロールギャップに鋼板10を通して鋼板10を挟み、鋼板10の表面を押し付けながら、互いに逆方向に回転することで、鋼板10を搬送する。
搬送機動力シリンダ302は、例えば油圧サーボシリンダであり、上側のピンチロール301に対して力を加えて、ピンチロール押付力を変更したり、ピンチロールギャップを変更したりする。ピンチロール押付力は、ピンチロール301が鋼板10を押し付ける力である。
搬送電動機303は、一対のピンチロール301を回転させる。搬送電動機303のトルクは搬送電動機303に流れる電流に比例する。
搬送機速度計304は、搬送電動機303の回転速度を計測する。後述の制御装置500の測定値取得部559は、搬送機速度計304の計測結果に基づいて、ピンチロール速度を決定する。ピンチロール速度は、ピンチロール301の表面の速度であり、搬送機300が搬送する鋼板10の速度である。
搬送機ロードセル305は、下側のピンチロール301に取り付けられて、ピンチロール押付力を計測するロードセルである。
電流計306は、搬送電動機303に流れる電流を計測する。
【0016】
鋳造圧延設備100は、搬送機300として、第1搬送機300Aと、第2搬送機300Bと、を備える。
第1搬送機300Aは、上から見たときに双ロール式連続鋳造機150の鋳造ロールギャップとずれた位置に配置される。第1搬送機300Aは、双ロール式連続鋳造機150から排出された鋼板10を引き込んで、第2搬送機300Bの方向に排出することで、鋼板10を搬送する。第2搬送機300Bは、第1搬送機300Aから搬送された鋼板10を引き込んで、圧延機350の方向に排出することで、鋼板10を圧延機350に搬送する。
【0017】
第1搬送機300Aのピンチロール301、搬送機動力シリンダ302、搬送電動機303、搬送機速度計304、搬送機ロードセル305、電流計306、ピンチロール速度、ピンチロールギャップ、及び、ピンチロール押付力を、それぞれ、第1ピンチロール301A、第1搬送機動力シリンダ302A、第1搬送電動機303A、第1搬送機速度計304A、第1搬送機ロードセル305A、第1電流計306A、第1ピンチロール速度、第1ピンチロールギャップ、及び、第1ピンチロール押付力と呼ぶ。
また、第2搬送機300Bのピンチロール301、搬送機動力シリンダ302、搬送電動機303、搬送機速度計304、搬送機ロードセル305、電流計306、ピンチロール速度、ピンチロールギャップ、及び、ピンチロール押付力を、それぞれ、第2ピンチロール301B、第2搬送機動力シリンダ302B、第2搬送電動機303B、第2搬送機速度計304B、第2搬送機ロードセル305B、第2電流計306B、第2ピンチロール速度、第2ピンチロールギャップ、及び、第2ピンチロール押付力と呼ぶ。
【0018】
圧延機350は、第2搬送機300Bから搬送された鋼板10を圧延する。圧延機350は、鋼板10を引き込みながら圧延して、鋼板10を搬送方向に排出する。圧延機350は、一対の圧延ロール351と、一対のバックアップロール352と、圧延機動力シリンダ353と、圧延電動機354と、圧延機速度計355と、圧延機ロードセル356と、を備える。圧延機350は、鋼板10を排出する排出装置の例である。
一対の圧延ロール351は、それぞれ円柱状のロールであり、中心軸を回転軸として回転可能であって、それぞれの回転軸が互いに平行になるように上下に並んで配置される。一対の圧延ロール351の間には圧延ロールギャップと呼ばれる隙間が設けられる。一対の圧延ロール351は、圧延ロールギャップに鋼板10を通して鋼板10を挟み、鋼板10を押し付ける力を加えながら、互いに逆方向に回転することで、鋼板10を圧延する。
一対のバックアップロール352は、それぞれ円柱状のロールであり、中心軸を回転軸として回転可能であって、一対の圧延ロール351を挟んで上下に並ぶように配置される。上側のバックアップロール352は、上側の圧延ロール351と接触するように、上側の圧延ロール351の上側に配置される。下側のバックアップロール352は、下側の圧延ロール351と接触するように、下側の圧延ロール351の下側に配置される。
【0019】
圧延機動力シリンダ353は、例えば油圧サーボシリンダであり、上側のバックアップロール352に力を加えて、圧延機押付力を変更したり、圧延ロールギャップを変更したりする。搬送機動力シリンダ302によって、上側の圧延ロール351を介して、鋼板10に圧延機押付力が与えられる。圧延機押付力は、圧延ロール351が鋼板10を押し付けて、鋼板10を圧延する力である。
圧延電動機354は、一対の圧延ロール351を回転させる。
圧延機速度計355は、圧延電動機354の回転速度を計測する。後述の制御装置500の測定値取得部559は、圧延機速度計355の計測結果に基づいて、圧延機速度を決定する。圧延機速度は、圧延ロール351の表面の速度であり、圧延機350を通る鋼板10の速度である。
圧延機ロードセル356は、下側のバックアップロール352に取り付けられて、圧延機押付力を計測するロードセルである。
【0020】
ここで、
図2を参照して、メカタイ型である圧延機350での回転の伝達について説明する。
図2は、圧延機350の側面図である。
圧延電動機354は、シャフト360、第1ギヤ361A、第1前側ユニバーサルジョイント362A、第1スピンドル363A、及び、第1後側ユニバーサルジョイント364Aを介して、下側の圧延ロール351を回転させる。
また、第1ギヤ361Aは、第1ギヤ361Aと噛み合う第2ギヤ361Bを回転させる。第2ギヤ361Bは、第2前側ユニバーサルジョイント362B、第2スピンドル363B、及び、第2後側ユニバーサルジョイント364Bを介して、上側の圧延ロール351を回転させる。
【0021】
圧延機350は、このような構成であるため、一対の圧延ロール351は同じ回転速度で回転する。しかし、摩耗等により上側の圧延ロール351と下側の圧延ロール351とは径が異なる。よって、一対の圧延ロール351が鋼板10を圧延せずに一対の圧延ロール351が接触する状態のとき、接触部分に速度差が生じて、圧延ロール351にトルクがかかる。したがって、圧延機押付力が強いほど、一対の圧延ロール351が接触したときに圧延ロール351にトルクがかかるが強くなり、圧延機350を構成するユニバーサルジョイントやスピンドル等が破損するおそれが高くなる。
しかしながら、制御システム1では、後に説明するように、一対の圧延ロール351が接触しないように制御したり、接触する可能性がある場合でも圧延機押付力が弱い状態で接触するように制御したりすることで、圧延機350が破損するおそれを低減させている。
【0022】
図1に戻って制御システム1の説明を続ける。
ルーパ400は、カウンタバランスウェイト型ルーパであり、鋼板10に張力を与える。ルーパ400は、昇降ロール401と、カウンタバランスウェイト402と、ワイヤ403と、滑車404と、第1補助ロール405と、第2補助ロール406と、ポテンショメータ407と、を備える。
昇降ロール401は、上下方向に移動可能であり、搬送される鋼板10に上から載せることで、昇降ロール401の重さ、及び、カウンタバランスウェイト402の重さに基づく力を鋼板10に与えて、鋼板10に張力を発生させる。
カウンタバランスウェイト402は、鋼板10に与える張力を調整するための重りである。
【0023】
ワイヤ403は、昇降ロール401から、滑車404を経由して、カウンタバランスウェイト402に至り、昇降ロール401とカウンタバランスウェイト402とを繋ぐ。カウンタバランスウェイト402を軽くすると鋼板10の張力が大きくなり、カウンタバランスウェイト402を重くすると鋼板10の張力が小さくなる。
第1補助ロール405は、圧延機350から搬送される鋼板10を昇降ロール401に案内するロールであり、予め設定された高さに配置される。
第2補助ロール406は、昇降ロール401を通った鋼板10をコイラ450に案内するロールであり、予め設定された高さに配置される。
鋼板10は、第1補助ロール405の上側、昇降ロール401の下側、及び、第2補助ロール406の上側を通る。よって、鋼板10には、昇降ロール401の重さ、及び、カウンタバランスウェイト402の重さに基づく力が与えられて、鋼板10に張力が生じる。
ポテンショメータ407は、昇降ロール401の上下方向の位置を計測する。なお、ポテンショメータ407は、カウンタバランスウェイト402の位置、又は、ワイヤ403の予め決められた位置のように、昇降ロール401の鉛直方向の位置を表す情報を計測してもよい。
【0024】
コイラ450は、鋼板10を引き込んで、鋼板10を巻取る。コイラ450は、コイラ本体451と、第1コイラロール452と、第2コイラロール453と、加圧部454と、コイラ電動機455と、コイラ速度計456と、を備える。
コイラ本体451は、ボビンであり、側面に鋼板10が巻取られる。
第1コイラロール452、及び、第2コイラロール453は、コイラ本体451の下側に配置されて、コイラ本体451を支える。また、第1コイラロール452、及び、第2コイラロール453は、回転することで、第1コイラロール452、及び、第2コイラロール453と、コイラ本体451との間の鋼板10を、コイラ本体451に巻取らせる。
加圧部454は、コイラ本体451に下方向のコイラ押付力を与えて、コイラ本体451を第1コイラロール452、及び、第2コイラロール453に押し付けて、コイラ本体451を安定させる。
コイラ電動機455は、第1コイラロール452、及び、第2コイラロール453を回転させる。
コイラ速度計456は、コイラ電動機455の回転速度を計測する。後述の制御装置500の測定値取得部559は、コイラ速度計456の計測結果に基づいて、コイラ速度を決定する。コイラ速度は、第1コイラロール452の表面の速度であり、コイラ450が鋼板10を巻取る速度である。
搬送機300、及び、コイラ450は、鋼板10を引き込む引込装置の例である。
【0025】
次に、鋳造圧延設備100における鋼板10の搬送経路について説明する。まず、鋼板10は、双ロール式連続鋳造機150の一対の鋳造ロール201の間から例えば1600℃で排出される。次に、鋼板10は、第1搬送機300Aの一対の第1ピンチロール301Aの間、及び、第2搬送機300Bの一対の第2ピンチロール301Bの間を通り、圧延機350の一対の圧延ロール351の間で圧延されて、例えば1000℃でルーパ400に排出される。次に、鋼板10は、ルーパ400の昇降ロール401の下側を通り、コイラ450で巻取られる。
【0026】
次に、鋳造圧延設備100における前方領域601、第1中間領域602、第2中間領域603、及び、後方領域604について説明する。
前方領域601は、双ロール式連続鋳造機150と第1搬送機300Aとの間の領域である。より具体的には、前方領域601は、双ロール式連続鋳造機150の鋳造ロールギャップと第1搬送機300Aの第1ピンチロールギャップとの間の領域である。
第1中間領域602は、第1搬送機300Aと第2搬送機300Bとの間の領域である。より具体的には、第1中間領域602は、第1搬送機300Aの第1ピンチロールギャップと第2搬送機300Bの第2ピンチロールギャップとの間の領域である。
第2中間領域603は、第2搬送機300Bと圧延機350との間の領域である。より具体的には、第2中間領域603は、第2搬送機300Bの第2ピンチロールギャップと圧延機350の圧延ロールギャップとの間の領域である。
後方領域604は、圧延機350とコイラ450との間の領域である。より具体的には、後方領域604は、圧延機350の圧延ロールギャップとコイラ450との間の領域である。後方領域604は、判定領域の一例である。
【0027】
次に、
図3を参照して、制御装置500のハードウェア構成について説明する。
図3は、制御装置500のハードウェア構成図である。制御装置500は、判定装置の一例である。
制御装置500は、鋳造圧延設備100を制御するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等のコンピュータであり、CPU501と、記憶装置502と、モジュール503と、これらを接続するバス504と、を備える。
CPU501は、制御装置500の全体を制御する。CPU501が記憶装置502等に記憶されているプログラムに基づき処理を実行することによって、
図4に示す制御装置500の機能や、
図14、
図15、
図17から
図19までの処理が実現される。
【0028】
記憶装置502は、RAM、ROM、HDD等であって、プログラムを記憶したり、CPU501が使う一時的なデータを保存したりする。
モジュール503は、CPU501からの命令に基づいて、ネットワーク700を介して、モジュール503に対応付けられた鋳造圧延設備100の装置の制御を行う。制御装置500が備えるモジュールは複数あり、それぞれのモジュール503に、例えば、圧延電動機354や圧延機ロードセル356等の鋳造圧延設備100の装置が対応付けられている。モジュール503は、CPU501からの命令に基づいて、鋳造圧延設備100の装置の制御を直接行ってもよく、鋳造圧延設備100の装置に対応するインバータ等を介して、鋳造圧延設備100の装置の制御を行ってもよい。
【0029】
制御装置500は、CPU501を仮想的に分割する機能を備え、並列処理が可能である。また、CPU501は、鋳造圧延設備100の計測器の情報を、計測器に対応するモジュール503を介して取得できる。CPU501は、鋳造圧延設備100の計測器の情報を、制御装置500が備える通信インターフェースを介して、鋳造圧延設備100の計測器から取得してもよい。鋳造圧延設備100の計測器とは、鋳造圧延設備100の各種の情報を取得する装置であり、カメラ251や、鋳造機ロードセル203等のロードセル、鋳造機速度計206等の速度計、及び、電流計306が含まれる。
【0030】
次に、
図4を参照して、制御装置500の機能について説明する。
図4は、制御装置500の機能構成図である。制御装置500は、鋳造機制御部550と、溶鋼制御部551と、圧延機制御部552と、コイラ制御部553と、搬送機制御部554と、破断判定部555と、推定部556と、通過判定部557と、処理管理部558と、測定値取得部559と、を備える。
鋳造機制御部550は、モジュール503を介して鋳造電動機205を制御して、鋳造ロール速度を制御する。また、鋳造機制御部550は、モジュール503を介して、鋳造機動力シリンダ204を制御して、鋳造ロール押付力、及び、鋳造ロールギャップを制御する。
【0031】
溶鋼制御部551は、モジュール503を介してストッパ162の位置を制御する。
圧延機制御部552は、モジュール503を介して圧延電動機354を制御して、圧延機速度を制御する。また、圧延機制御部552は、モジュール503を介して、圧延機動力シリンダ353を制御して、圧延機押付力、及び、圧延ロールギャップを制御する。
コイラ制御部553は、モジュール503を介してコイラ電動機455を制御して、コイラ速度を制御する。また、コイラ制御部553は、モジュール503を介して加圧部454を制御して、コイラ押付力を制御する。
【0032】
搬送機制御部554は、モジュール503を介して第1搬送電動機303A、及び、第2搬送電動機303Bを制御して、第1ピンチロール速度、及び、第2ピンチロール速度を制御する。また、搬送機制御部554は、モジュール503を介して第1搬送機動力シリンダ302A、及び、第2搬送機動力シリンダ302Bを制御して、第1ピンチロールギャップ、第2ピンチロールギャップ、第1ピンチロール押付力、及び、第2ピンチロール押付力を制御する。
破断判定部555は、前方領域601で鋼板10が破断したか否かを判定する。また、破断判定部555は、後方領域604に鋼板10の破断部があるか否かを判定する。鋼板10の破断部は、破断した鋼板10の端部である。
推定部556は、第1中間領域602、又は、第2中間領域603で鋼板10が破断したか否かを推定する。
【0033】
通過判定部557は、鋼板10の破断部が、第1搬送機300A、又は、第2搬送機300Bを通過したか否かを判定する。より具体的には、通過判定部557は、鋼板10の破断部が、第1ピンチロールギャップ、又は、第2ピンチロールギャップを通過したか否かを判定する。
処理管理部558は、制御装置500の各機能の動作を制御する。
測定値取得部559は、鋳造圧延設備100の計測器から、測定値を取得する。
【0034】
[前方領域での鋼板の破断]
次に、
図5(a)、(b)を参照して、前方領域601での鋼板10の破断について説明する。
図5(a)は、前方領域601で鋼板10が破断する前の前方領域601の概念図である。
図5(b)は、前方領域601で鋼板10が破断した後の前方領域601の概念図である。
図5(a)に示すように、前方領域601で鋼板10が破断する前は、双ロール式連続鋳造機150から排出された鋼板10は、まず、下方に進み、次に、後方に進みながら持ち上げられて第1搬送機300Aに進む。なお、後方とは、鋼板10の搬送方向であり、上から鋳造圧延設備100を見たときに、双ロール式連続鋳造機150から第1搬送機300Aに向かう方向である。
【0035】
図5(a)に示すように、前方領域601における双ロール式連続鋳造機150からの排出直後の鋼板10の領域で、鋼板10が破断した場合を考える。この場合、双ロール式連続鋳造機150が鋼板10の排出を続けると、鋼板10が破断しているため、
図5(b)に示すように、前方領域601における最も下の位置となる処理室250の床253に到達する。したがって、破断判定部555は、前方領域601における鋼板10の最も下方の位置に基づいて、前方領域601で鋼板10が破断したか否かを判定できる。
【0036】
次に、
図5(a)、(b)を参照して、前方領域601における鋼板高さ21について説明する。鋼板高さ21は、鋳造ロールギャップとつながっている鋼板10の、前方領域601における上下方向の最も下方の位置である。
図5(a)に示すように前方領域601で鋼板10が破断していない場合、鋼板高さ21は床253より上方となる。
図5(b)に示すように前方領域601で鋼板10が破断した場合、鋼板高さ21は床253と同じ高さになる。
カメラ251は、前方領域601における鋼板10を撮影する。測定値取得部559は、カメラ251が撮影した鋼板10の画像を解析して、鋼板高さ21を取得する。鋼板高さ21は、カメラ251が配置される上下方向の位置20を基準として定められる。本実施形態では、鋼板高さ21は、カメラ251の位置20より上側のとき正の値として表し、鋼板高さ21がカメラ251の位置20より下側のとき負の値として表す。
【0037】
次に、
図6を参照して、破断判定部555による前方領域601で鋼板10が破断したか否かの判定方法について説明する。
図6は、鋼板高さ21の時間変化を表す鋼板高さグラフの例を示す図である。線30は、第1基準高さを表す。第1基準高さは、予め設定された値であり、前方領域601で鋼板10が破断したことを表す閾値となる高さである。第1基準高さは、双ロール式連続鋳造機150の鋳造ロールギャップより下の高さに設定される。第1基準高さは、床253の高さとしてもよく、測定値取得部559が取得する鋼板高さ21の誤差等を考慮して、床253の高さよりも高い位置にしてもよい。
破断判定部555は、鋼板10が第1基準高さに到達したとき、すなわち、鋼板高さ21が第1基準高さ以下になったときに、前方領域601で鋼板10が破断したと判定する。本実施形態では、誤った判定を防止するために、破断判定部555は、鋼板10が、予め設定された第1基準時間の間、鋼板高さ21が第1基準高さに達した状態が継続したとき、前方領域601で鋼板10が破断したと判定する。
図6の例では、時刻11(sec)のときに、前方領域601で鋼板10が破断したことが表されている。
図6に示すように、鋼板10が破断した後、鋼板高さ21は急激に低くなり、第1基準高さに到達する。したがって、破断判定部555は、前方領域601で鋼板10が破断した直後に、鋼板10が破断したと判定できる。
【0038】
[前方領域以外の領域での鋼板の破断]
次に、
図7(a)から(d)までを参照して、前方領域以外の領域である第2中間領域603での鋼板10の破断について説明する。
図7(a)は、第2中間領域603で鋼板10が破断する前の第2中間領域603、及び、後方領域604の図である。
図7(b)は、第2中間領域603で鋼板10が破断した後の第2中間領域603、及び、後方領域604の図である。
図7(c)は、破断部15が後方領域604に到達したときの第2中間領域603、及び、後方領域604の図である。
図7(d)は、破断部15が後方領域604に到達した後の第2中間領域603、及び、後方領域604の図である。
【0039】
まず、
図7(a)に示すように、第2中間領域603で鋼板10の破断が発生したとする。この場合、
図7(b)に示すように、コイラ450側の鋼板10の破断部15は、圧延ロール351の回転によって、圧延機350の方向に移動する。
その後、
図7(c)に示すように、コイラ450による鋼板10の巻取りの動作によって、破断部15は圧延機350を通過して、後方領域604に到達する。破断部15が後方領域604に到達すると、鋼板10が圧延機350の圧延ロール351で挟まれなくなるため、昇降ロール401は、自重で、昇降ロール401の下限位置まで落下する。このとき、カウンタバランスウェイト402は、滑車404を介して、昇降ロール401に引っ張られて、上方に移動する。昇降ロール401の下限位置は、ルーパ400で昇降ロール401が取り得る位置のうちで最も下の位置である。
【0040】
昇降ロール401が昇降ロール401の下限位置まで落下するとき、
図7(d)に示すように、昇降ロール401の落下の衝撃によって、ルーパ400とコイラ450との間で鋼板10の破断が生じることがある。
後方領域604で鋼板10の破断が発生した場合も、
図7(c)に示すように、昇降ロール401が落下する。したがって、破断判定部555は、昇降ロール401の上下方向の位置に基づいて、後方領域604に鋼板10の破断部15があるか否かを判定できる。後方領域604に鋼板10の破断部15があるという条件を満たすのは、鋼板10が第1中間領域602又は第2中間領域603で破断した後に破断部15が後方領域604に到達した場合、及び、鋼板10が後方領域604で破断した場合の少なくともいずれかの場合である。
【0041】
次に、
図8を参照して、ルーパ高さ41について説明する。
図8は、ルーパ400の側面図である。ルーパ高さ41は、昇降ロール401の上下方向の位置であり、昇降ロール401の高さを表す。ルーパ高さ41は、予め設定された上下方向の位置40を基準として定められる。本実施形態では、ルーパ高さ41は、位置40より上側のとき正の値として表し、位置40より下側のとき負の値として表す。ルーパ高さ41は、ポテンショメータ407が計測する。
【0042】
次に、
図9を参照して、破断判定部555による後方領域604に鋼板10の破断部15があるか否かの判定方法について説明する。
図9は、ルーパ高さの時間変化を表すルーパ高さグラフの例を示す。線31は、第2基準高さを表す。第2基準高さは、予め設定された値であり、破断部15が後方領域604にあることを表す閾値となる高さである。
破断判定部555は、ルーパ高さ41が第2基準高さ以下になったときに、後方領域604に鋼板10の破断部15があると判定する。本実施形態では、誤った判定を防止するために、破断判定部555は、鋼板10が、予め設定された第2基準時間の間、ルーパ高さ41が第2基準高さ以下である状態が継続したとき、後方領域604に鋼板10の破断部15があると判定する。第2基準高さは、ロール基準高さの一例である。
図9の例では、時刻12.9(sec)以降で、
図7(c)に示すように、破断部15が後方領域604に到達したり、鋼板10が後方領域604で破断したりして、破断部15が後方領域604に存在することを表す。このとき、
図9に示すように、時刻が12.9(sec)以降でルーパ高さが下がっていき、時刻13.15(sec)でルーパ高さが第2基準高さに到達する。したがって、破断判定部555は、時刻13.15(sec)で、後方領域604に鋼板10の破断部15があると判定できる。
【0043】
次に、
図10を参照して、第2基準高さの定め方について説明する。
図10は、ルーパ高さ、コイラ速度、及び、第1ピンチロール速度の時間変化を表すルーパ高さ・速度グラフの例を示す図である。第1線50はコイラ速度(mpm(メートル/分))を表し、第2線51は第1ピンチロール速度(mpm)を表し、第3線52はルーパ高さ(mm)を表す。
図10において、第1線50と第2線51とはほぼ一致している。
図10のルーパ高さ・速度グラフは、鋼板10に破断が生じずに、圧延機350で正常に圧延が行われているときの状態を表す。
第2基準高さは、ルーパ高さの通常範囲の下限値とする。ルーパ高さの通常範囲は、圧延機350で正常に圧延が行われているときに、ルーパ高さが収まる範囲である。ルーパ高さの通常範囲の下限値とは、ルーパ高さの通常範囲で最も下方を表す値である。
図10の例では、ルーパ高さは+100(mm)から−100(mm)までの範囲に収まっているが、操業条件の変更等を考慮してルーパ高さの通常範囲を+150(mm)から−150(mm)までと定める。したがって、
図10の例では、第2基準高さは−150(mm)である。
【0044】
[鋼板の破断の推定]
次に、
図11(a)、(b)を参照して、推定部556が、第1搬送電動機303Aに流れる電流の変化量に基づいて、第1中間領域602で鋼板10が破断したか否かを推定する方法について説明する。
図11(a)は、第1搬送電動機303Aの電流微分値の時間変化を表す電流微分値グラフの例を示す図である。第1搬送電動機303Aの電流微分値とは、第1搬送電動機303Aに流れる電流の値を微分した値である。
図11(b)は、第1ピンチロール速度の時間変化を表すピンチロール速度グラフの例を示す図である。
【0045】
図11(a)、(b)において、時刻0(sec)から時刻12(sec)まで鋳造圧延設備100は定常鋳造状態であり、時刻12(sec)のときに第1中間領域602で鋼板10が破断したことが表されている。鋳造圧延設備100の定常鋳造状態とは、鋳造圧延設備100において鋼板10が破断しておらず、双ロール式連続鋳造機150による鋳造や、圧延機350による圧延が正常に行われている状態である。
図11(a)、(b)は、鋳造圧延設備100をモデル化したシミュレーションによって得られたグラフである。
【0046】
鋳造圧延設備100が定常鋳造状態のとき、鋼板10の速度はほぼ一定である。また、鋼板10の張力もほぼ一定に保たれており、第1ピンチロール301Aを回転させる第1搬送電動機303Aのトルクもほぼ一定である。ここで、既に説明したように、第1搬送電動機303Aのトルクは第1搬送電動機303Aに流れる電流の値に比例する。したがって、鋳造圧延設備100が定常鋳造状態のとき、第1搬送電動機303Aの電流がほぼ一定であるため、第1搬送電動機303Aの電流微分値はほぼ0となる。
【0047】
第1中間領域602で鋼板10が破断すると、鋼板10の張力が急激に減少して、第1搬送電動機303Aに加わるトルクが大きく変動する。したがって、第1搬送電動機303Aの電流も大きく変動するため、第1搬送電動機303Aの電流微分値も大きく変動する。
図11(a)の例でも、第1中間領域602で鋼板10が破断した時刻12(sec)のとき、第1搬送電動機303Aの電流微分値がパルス状に大きく変動していることが分かる。
また、第1中間領域602で鋼板10が破断すると、鋼板10の張力が急激に変動する衝撃によって、第1ピンチロール速度が大きく変動する。
図11(b)の例でも、第1中間領域602で鋼板10が破断した時刻12(sec)のとき、第1ピンチロール301Aのピンチロール速度が大きく変動している。
【0048】
このような事実から、推定部556は、第1電流計306Aから取得する第1搬送電動機303Aに流れる電流の変化量に基づいて、第1中間領域602で鋼板10が破断したか否かを推定する。より具体的には、推定部556は、第1搬送電動機303Aの電流微分値が変化量閾値以上になったとき、第1中間領域602で鋼板10が破断したと推定する。変化量閾値は、予め設定された値であり、第1搬送電動機303Aの電流微分値で鋼板10の破断を推定する閾値となる値である。変化量閾値は、
図11(a)に示す電流微分値グラフに基づいて定められる。
図11(a)の例では、変化量閾値を例えば1000(A/sec)とする。
【0049】
第1中間領域602で鋼板10が破断した後は、第1搬送電動機303Aの電流微分値は
図11(a)に示すように0に近づいていき、第1ピンチロール301Aのピンチロール速度は
図11(b)に示すように一定の速度に近づいていく。
ここで、鋼板10の破断によるピンチロール速度のパルス状の変動が始まってから、パルス状の変動が収まるまでの時間をハンチング収束時間と呼ぶ。
図11(b)の例から、ハンチング収束時間を例えば0.5(sec)と定めることができる。
【0050】
次に、推定部556が、第2搬送電動機303Bの電流に流れる変化量に基づいて、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断したか否かを推定する方法について説明する。
第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断したとき、第2搬送電動機303Bの電流微分値、及び、第2ピンチロール速度は、
図11(a)、(b)に示すような電流微分値グラフ、及び、ピンチロール速度グラフと同様の値になる。これは、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断すると、鋼板10の張力の変化が第2ピンチロール301Bに伝わって第2搬送電動機303Bのトルクが変動するためである。
推定部556は、第2電流計306Bから取得する第2搬送電動機303Bに流れる電流の変化量に基づいて、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断したか否かを推定する。より具体的には、推定部556は、第2搬送電動機303Bの電流微分値が変化量閾値以上になったとき、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断したと推定する。
【0051】
次に、推定部556が、鋼板10が破断していないにも関わらず、誤って鋼板10が破断したと推定する可能性について説明する。
まず、
図12(a)、(b)、(c)を参照して、外乱の例である鋼板10のホットバンド13について説明する。
図12(a)は、双ロール式連続鋳造機150の鋳造部200の斜視図である。
図12(b)は、鋳造部200の平面図である。
図12(c)は、ホットバンド13が形成された鋼板10の斜視図である。
ホットバンド13は、
図12(c)に示すように、堰202の側面の地金12が鋳造時に入り込んで形成された鋼板10の厚肉部である。
図12(a)に示すような堰202の側面の地金12は、鋳造時の湯面レベル(溶鋼11の表面高さ)の変動等によって、堰202の側面に付着した溶鋼11が凝固することで形成される。
堰202の側面の地金12は、鋳造時の衝撃等によって堰202から剥がれ落ちて、
図12(b)に示すように、一対の鋳造ロール201の間に入り込むことがある。地金12が一対の鋳造ロール201の間に入り込むと、地金12の硬さによって、一対の鋳造ロール201の間隔が開き、
図12(c)に示すように、ホットバンド13が形成された鋼板10が双ロール式連続鋳造機150から排出される。
【0052】
次に、
図13を参照して、推定部556が、誤って鋼板10が破断したと推定する例について説明する。
図13は、第1搬送電動機303Aの電流微分値グラフの例を示す図である。
図13は、鋳造圧延設備100をモデル化したシミュレーションによって得られたグラフである。
図13は、時刻11(sec)のときに、鋼板10のホットバンド13が一対の第1ピンチロール301Aの間を通過する例を示す。
鋼板10のホットバンド13が第1ピンチロール301Aを通過すると、一対の第1ピンチロール301Aの間の距離が急激に変動する。この変動によって、第1ピンチロール301Aを回転させる第1搬送電動機303Aのトルクが急激に変動する。したがって、
図13の時刻11(sec)の近傍に示されるように、第1搬送電動機303Aの電流が急激に変動し、第1搬送電動機303Aの電流微分値が大きく変動する。
ホットバンド13の大きさや鋼板10の速度等によっては、ホットバンド13が第1ピンチロール301Aを通過したときに、第1搬送電動機303Aの電流微分値が変化量閾値以上になることがある。この場合、推定部556は誤って鋼板10が破断したと推定する。
【0053】
次に、前方領域601で鋼板10が破断した後の、通過判定部557による、鋼板10の破断部15が第1搬送機300Aを通過したか否かの判定方法について説明する。
前方領域601で鋼板10が破断した後、破断部15よりも第1搬送機300Aの側にある鋼板10は、コイラ450の側に搬送されていき、時間が経過すると、破断部15が一対の第1ピンチロール301Aの間を通過する。破断部15が一対の第1ピンチロール301Aの間を通過すると、一対の第1ピンチロール301Aの間には鋼板10が存在しなくなるため、第1ピンチロール301Aを回転させる第1搬送電動機303Aのトルクが急激に変動する。したがって、
図11(a)や
図13と同様に、第1搬送電動機303Aの電流微分値が大きく変動する。
【0054】
このような事実から、通過判定部557は、第1電流計306Aから取得する第1搬送電動機303Aに流れる電流の変化量に基づいて、鋼板10の破断部15が第1搬送機300Aを通過したか否かを判定する。より具体的には、通過判定部557は、第1搬送電動機303Aの電流微分値が搬送閾値以上になったとき、破断部15が一対の第1ピンチロール301Aの間を通過したと判定する。搬送閾値は、予め設定された値であり、破断部15が一対のピンチロール301の間を通過したことを表す閾値である。搬送閾値は、破断部15が一対のピンチロール301の間を通過したときの、
図11(a)に示すような電流微分値グラフに基づいて定められる。本実施形態では、搬送閾値を500(A/sec)とする。同様に、通過判定部557は、第2電流計306Bから取得する第2搬送電動機303Bに流れる電流の変化量に基づいて、鋼板10の破断部15が第2搬送機300Bを通過したか否かを判定する。
【0055】
[鋳造圧延制御処理]
次に、
図14を参照して、鋳造圧延制御処理について説明する。
図14は、鋳造圧延制御処理のフローチャートである。鋳造圧延制御処理は、鋳造圧延設備100を制御して、鋼板10の鋳造、及び、圧延を行う処理である。
ステップS100において、処理管理部558は、記憶装置502を参照したり、ネットワーク通信によって外部装置から情報を受信したりして、鋳造圧延設備100の各種パラメータを取得する。そして、処理管理部558は、鋳造圧延設備100が、取得した各種パラメータに対応する動作を行うように初期設定する。処理管理部558が取得する各種パラメータには定常鋳造状態の目標値を表す目標パラメータが含まれる。目標パラメータには、双ロール式連続鋳造機150の鋳造目標を表す目標鋳造パラメータや圧延機350の圧延目標を表す目標圧延パラメータが含まれる。目標圧延パラメータに含まれる目標となる圧延機押付力は、例えば200(tonf)であり、目標となる第1ピンチロール押付力、及び、第2ピンチロール押付力は、例えば1(tonf)である。
【0056】
ステップS101において、鋳造機制御部550、及び、溶鋼制御部551は、目標パラメータに基づく双ロール式連続鋳造機150の制御を開始する。また、圧延機制御部552は、目標パラメータに基づく圧延機350の制御を開始する。また、搬送機制御部554は、目標パラメータに基づく搬送機300の制御を開始する。また、コイラ制御部553は、目標パラメータに基づくコイラ450の制御を開始する。こうして、鋳造、及び、圧延が開始し、鋳造圧延設備100が定常鋳造状態になる。
ステップS102において、処理管理部558は、ステップS103、ステップS108、及び、ステップS113の処理が並列に開始するための制御を行う。
【0057】
ステップS103において、測定値取得部559は、カメラ251が撮影した画像に基づいて、鋼板高さ21を取得する。破断判定部555は、鋼板高さ21に基づいて、双ロール式連続鋳造機150と第1搬送機300Aとの間の前方領域601で、鋼板10が破断したか否かを判定する。より具体的には、
図6を参照して説明したように、破断判定部555は、鋼板10が、予め設定された第1基準時間の間、継続して、鋼板高さ21が第1基準高さ以下であるとき、前方領域601で鋼板10が破断したと判定する。
破断判定部555は、前方領域601で鋼板10が破断したと判定したとき、処理をステップS104に進め、破断していないと判定したとき再度ステップS103を実行する。
【0058】
ステップS104において、処理管理部558は、ステップS105、及び、ステップS106の処理が並列に開始するための制御を行う。
ステップS105において、制御装置500は、後に説明する鋳造機停止制御処理を実行する。
ステップS106において、制御装置500は、後に説明する第1破断制御処理を実行する。
ステップS107において、処理管理部558は、ステップS105、及び、ステップS106の処理が終了した後に、
図14の処理を終了する。
【0059】
ステップS108において、測定値取得部559は、ポテンショメータ407からルーパ高さ41を取得する。そして、破断判定部555は、ルーパ高さ41に基づいて、圧延機350とコイラ450との間の領域である後方領域604に破断部があるか否かを判定する。より具体的には、
図9を参照して説明したように、破断判定部555は、鋼板10が、予め設定された第2基準時間の間、継続して、ルーパ高さ41が第2基準高さ以下であるとき、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定する。
破断判定部555は、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定したとき、処理をステップS109に進め、後方領域604に鋼板10の破断部がないと判定したとき再度ステップS108を実行する。
【0060】
ステップS109において、処理管理部558は、ステップS110、及び、ステップS111の処理が並列に開始するための制御を行う。
ステップS110において、制御装置500は、後に説明する鋳造機停止制御処理を実行する。
ステップS111において、制御装置500は、後に説明する第2破断制御処理を実行する。
ステップS112において、処理管理部558は、ステップS110、及び、ステップS111の処理が終了した後に、
図14の処理を終了する。
【0061】
ステップS113において、処理管理部558は、ステップS114、及び、ステップS115の処理が並列に開始するための制御を行う。
ステップS114において、測定値取得部559は、第1電流計306Aから第1搬送電動機303Aに流れる電流の値を取得する。推定部556は、測定値取得部559によって取得された第1搬送電動機303Aに流れる電流の変化量に基づいて、第1搬送機300Aと第2搬送機300Bとの間の第1中間領域602で、鋼板10が破断したか否かを推定する。より具体的には、既に説明したように、推定部556は、第1搬送電動機303Aの電流微分値が、変化量閾値以上になったとき、第1中間領域602で鋼板10が破断したと推定する。
推定部556は、第1中間領域602で鋼板10が破断したと推定したとき処理をステップS116に進め、第1中間領域602で鋼板10が破断したと推定しないとき再度ステップS114を実行する。
【0062】
ステップS115において、測定値取得部559は、第2電流計306Bから第2搬送電動機303Bに流れる電流の値を取得する。推定部556は、測定値取得部559によって取得された第2搬送電動機303Bに流れる電流の変化量に基づいて、第1搬送機300Aと第2搬送機300Aとの間の第1中間領域602、及び、第2搬送機300Aと圧延機350との間の第2中間領域603の少なくともいずれかで、鋼板10が破断したか否かを推定する。より具体的には、既に説明したように、推定部556は、第2搬送電動機303Bの電流微分値が、変化量閾値以上になったとき、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断したと推定する。
推定部556は、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断したと推定したとき処理をステップS116に進め、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断したと推定しないとき再度ステップS115を実行する。
【0063】
ステップS116において、処理管理部558は、ステップS114、及び、ステップS115のいずれかから処理がステップS116に進んだとき、ステップS117に処理を進める。
ステップS117において、圧延機制御部552は、後に説明する破断推定時制御処理を実行する。その後、処理をステップS113に戻す。
【0064】
次に、
図15、
図16(a)から(d)を参照して、鋳造機停止制御処理について説明する。
図15は、鋳造機停止制御処理のフローチャートである。
図16(a)から(d)は、双ロール式連続鋳造機150が停止するときの様子を表す図である。
ステップS200において、溶鋼制御部551は、湯溜まり210への溶鋼11の注入を停止する制御を行う。より具体的には、溶鋼制御部551は、ストッパ162を制御して、タンディッシュ161の注ぎ口を閉じる制御を行う。これにより、
図16(a)に示すように、ストッパ162が下方に移動して、タンディッシュ161の注ぎ口が閉じて、湯溜まり210への溶鋼11の注入が停止する。
ステップS201において、鋳造機制御部550は、鋳造ロール201の回転速度を下げる制御を行う。より具体的には、鋳造機制御部550は、鋳造ロール速度が、鋳造目標を満たすための鋳造ロール速度より遅くなるように、鋳造電動機205の回転速度を下げて、鋳造ロール201の回転速度を下げることで、鋳造ロール速度を下げる制御を行う。
【0065】
ステップS202において、鋳造機制御部550は、ステップS201の処理が行われてから排出時間が経過したか否かを判定する。排出時間は、湯溜まり210に溜まった溶鋼11が湯溜まり210から排出されるまでの時間として予め設定された時間である。鋳造機制御部550は、排出時間が経過したとき処理をステップS203に進め、経過していないとき再度ステップS202を実行する。
湯溜まり210への溶鋼11の注入が停止されることで、
図6(b)に示すように、湯溜まり210の溶鋼11の量が減少していく。更に排出時間が経過すると、
図6(c)に示すように、湯溜まり210に溶鋼11がなくなる。
【0066】
ステップS203において、鋳造機制御部550は、鋳造電動機205の回転を停止させて、鋳造ロール201の回転を停止させる制御を行う。
ステップS204において、鋳造機制御部550は、鋳造ロール201を開放する制御を行う。より具体的には、
図6(d)に示すように、鋳造機制御部550は、鋳造機動力シリンダ204を制御して、一対の鋳造ロール201間の距離を広げて、一対の鋳造ロール201間の距離が最大になるように制御する。本実施形態の双ロール式連続鋳造機150は、電源が落ちると自動的に一対の鋳造ロール201間の距離が最大になるように動く。ステップS204で、予め一対の鋳造ロール201間の距離が最大になるため、仮に電源が落ちても、突然一対の鋳造ロール201間の距離が開く、という事態を回避できる。
【0067】
次に、
図17を参照して、第1破断制御処理について説明する。
図17は、第1破断制御処理のフローチャートである。
ステップS300において、搬送機制御部554は、第1ピンチロール301A、及び、第2ピンチロール301Bの回転速度を下げる制御を行う。より具体的には、搬送機制御部554は、第1ピンチロール速度、及び、第2ピンチロール速度が、定常鋳造状態の目標値となる第1ピンチロール速度、及び、第2ピンチロール速度より遅くなるように、第1搬送電動機303A、及び、第2搬送電動機303Bの回転速度を下げて、第1ピンチロール301A、及び、第2ピンチロール301Bの回転速度を下げる制御を行う。
また、圧延機制御部552は、圧延ロール351の回転速度を下げる制御を行う。より具体的には、圧延機制御部552は、圧延機速度が、定常鋳造状態の目標値となる圧延機速度より遅くなるように、圧延電動機354の回転を減速させて、圧延ロール351の回転速度を下げる制御を行う。
また、コイラ制御部553は、コイラによる鋼板10の巻取りの速度を下げる制御を行う。より具体的には、コイラ制御部553は、コイラ速度が、定常鋳造状態の目標値となるコイラ速度より遅くなるように、コイラ電動機455の回転速度を下げて、コイラによる鋼板10の巻取りの速度を下げる制御を行う。
減速前の第1ピンチロール速度、第2ピンチロール速度、圧延機速度、及び、コイラ速度は同じ速度であり、本実施形態では80(mpm)である。
減速後の第1ピンチロール速度、第2ピンチロール速度、圧延機速度、及び、コイラ速度は同じ速度であり、本実施形態では5(mpm)である。
【0068】
ステップS301において、圧延機制御部552は、圧延ロール351を開放する制御を行う。より具体的には、圧延機制御部552は、圧延機動力シリンダ353を制御して、少なくとも一方の圧延ロール351が鋼板10から離間するように、一対の圧延ロール351の間の距離を広げる制御を行って、圧延ロール351による鋼板10の圧延を停止する。
ステップS302において、測定値取得部559は、第1電流計306Aから第1搬送電動機303Aに流れる電流の値を取得する。通過判定部557は、取得された第1搬送電動機303Aに流れる電流の変化量に基づいて、鋼板10の破断部が第1ピンチロール301Aを通過したか否かを判定する。より具体的には、通過判定部557は、第1搬送電動機303Aの電流微分値が、搬送閾値以上のとき、鋼板10の破断部が第1ピンチロール301Aを通過したと判定する。
通過判定部557は、鋼板10の破断部が第1ピンチロール301Aを通過したと判定したとき処理をステップS303に進め、それ以外の場合、再度ステップS302を実行する。
【0069】
ステップS303において、搬送機制御部554は、第1ピンチロール301Aを開放する制御を行う。より具体的には、搬送機制御部554は、第1搬送機動力シリンダ302Aを制御して、一対の第1ピンチロール301Aの間の距離を、定常鋳造状態のときより広げる制御を行う。
ステップS304において、搬送機制御部554は、第1搬送電動機303Aの回転を停止させて、第1ピンチロール301Aの回転を停止させ、第1搬送機300Aによる搬送を停止する制御を行う。
ステップS305において、搬送機制御部554は、鋼板10の破断部が第1ピンチロール301Aを通過してからハンチング収束時間が経過したか否かを判定する。搬送機制御部554は、ハンチング収束時間が経過したとき処理をステップS306に進め、経過していないとき再度ステップS305を実行する。
【0070】
ステップS306において、測定値取得部559は、第2電流計306Bから第2搬送電動機303Bに流れる電流の値を取得する。通過判定部557は、取得された第2搬送電動機303Bに流れる電流の変化量に基づいて、鋼板10の破断部が第2ピンチロール301Bを通過したか否かを判定する。より具体的には、通過判定部557は、第2搬送電動機303Bの電流微分値が、搬送閾値以上のとき、鋼板10の破断部が第2ピンチロール301Bを通過したと判定する。
通過判定部557は、鋼板10の破断部が第2ピンチロール301Bを通過したと判定したとき処理をステップS307に進め、それ以外の場合、再度ステップS306を実行する。
【0071】
ステップS307において、搬送機制御部554は、第2ピンチロール301Bを開放する制御を行う。より具体的には、搬送機制御部554は、第2搬送機動力シリンダ302Bを制御して、一対の第2ピンチロール301B間の距離を、定常鋳造状態のときより広げる制御を行う。
ステップS308において、搬送機制御部554は、第2搬送電動機303Bの回転を停止させて、第2ピンチロール301Bの回転を停止させ、第2搬送機300Bによる搬送を停止する制御を行う。また、圧延機制御部552は、圧延電動機354の回転を停止させて、圧延ロール351の回転を停止させる制御を行う。また、コイラ制御部553は、コイラ電動機455の回転を停止させて、鋼板10の巻取りを停止する制御を行う。
【0072】
次に、
図18を参照して、第2破断制御処理について説明する。
図18は、第2破断制御処理のフローチャートである。
ステップS400において、搬送機制御部554は、第1搬送電動機303Aの回転を停止させて、第1ピンチロール301Aの回転を停止させ、第1搬送機300Aによる搬送を停止する制御を行う。また、搬送機制御部554は、第2搬送電動機303Bの回転を停止させて、第2ピンチロール301Bの回転を停止させ、第2搬送機300Bによる搬送を停止する制御を行う。また、圧延機制御部552は、圧延電動機354の回転を停止させて、圧延ロール351の回転を停止させる制御を行う。また、コイラ制御部553は、コイラ電動機455の回転を停止させて、鋼板10の巻取りを停止する制御を行う。
ステップS401において、圧延機制御部552は、
図17のステップS301と同様に、圧延ロール351を開放する制御を行う。
ステップS402において、搬送機制御部554は、
図17のステップS303と同様に、第1ピンチロール301Aを開放する制御を行う。
ステップS403において、搬送機制御部554は、
図17のステップS307と同様に、第2ピンチロール301Bを開放する制御を行う。
【0073】
次に、
図19を参照して、破断推定時制御処理について説明する。
図19は、破断推定時制御処理のフローチャートである。
ステップS500において、圧延機制御部552は、圧延機350が鋼板10を軽圧下する制御を行う。より具体的には、圧延機制御部552は、圧延機動力シリンダ353を制御して、定常鋳造状態のときよりも圧延機押付力を弱くする制御を行う。本実施形態では、定常鋳造状態のときよりも弱い圧延機押付力を1(tonf)とする。
【0074】
ステップS501において、圧延機制御部552は、ステップS500の処理が行われてから誤検知判定時間が経過したか否かを判定する。誤検知判定時間は、第1中間領域602、及び、第2中間領域603の少なくともいずれかで鋼板10が破断してから、鋼板10の破断部が後方領域604に到達するまでの時間を表す。誤検知判定時間として、鋼板10が第1搬送機300Aに到達してから圧延機350に到達するまでの時間以上の時間を使うことができる。本実施形態では、誤検知判定時間を1(sec)とする。第1中間領域602、又は、第2中間領域603で鋼板が実際に破断した場合は、誤検知判定時間が経過するまでに鋼板10の破断部が後方領域604に到達するため、破断判定部555は、鋼板10の破断部が後方領域604に到達したと判定できて、
図18の第2破断制御処理が実行される。
圧延機制御部552は、誤検知判定時間が経過したとき処理をステップS502に進め、経過していないとき再度ステップS501を実行する。
【0075】
図14のステップS114又はステップS115で推定部556が鋼板10の破断を推定し、かつ、この推定が正しくて鋼板10が実際に破断した場合、処理がステップS501からステップS502に進むことなく、
図19の破断推定時制御処理が終了する。この点について次に説明する。
図14を参照して説明したように、ステップS102の後に、ステップS103、ステップS108、及び、ステップS113の処理が並列に開始する。したがって、ステップS113の処理の先にあるステップS114又はステップS115において、推定部556が鋼板10の破断を推定したとき、ステップS114及びステップS115の処理の先にあるステップS501と、ステップS108とが並列に動作する。
ここで、
図14のステップS114又はステップS115の推定が正しくて、鋼板10が実際に破断した場合を考える。この場合、
図19の破断推定時制御処理では、誤検知判定時間の間、ステップS501から先に処理が進まない。そして、誤検知判定時間の間に、鋼板10の破断部は、後方領域604に到達する。よって、ステップS501と並列で動作するステップS108において、破断判定部555は、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定し、ステップS110の鋳造機停止制御処理、及び、ステップS111の第2破断制御処理が終了した後に、
図14の鋳造圧延制御処理が終了する。
図19の破断推定時制御処理は、
図14の鋳造圧延制御処理に含まれる処理であり、
図14の鋳造圧延制御処理の終了により、
図19の破断推定時制御処理が終了する。
したがって、
図14のステップS114又はステップS115で推定部556が鋼板10の破断を推定し、かつ、この推定が正しくて鋼板10が実際に破断した場合、処理がステップS501からステップS502に進むことなく、
図19の破断推定時制御処理が終了することになる。
【0076】
ステップS502において、圧延機制御部552は、定常鋳造状態における圧延機350の状態になるように、圧延機350を制御する。より具体的には、圧延機制御部552は、圧延目標を満たすように圧延機350を制御する。したがって、ステップS502において、圧延機350が鋼板10を軽圧下する状態が解除されて、圧延機押付力は、ステップS500の前の状態に戻る。
【0077】
[第1動作例]
次に、
図20から
図24までを参照して、制御システム1の第1動作例について説明する。
第1動作例は、時刻20(sec)までは定常鋳造状態であり、時刻20(sec)のとき鋼板10が前方領域601において破断した場合の制御システム1の動作例である。時刻20(sec)のとき、破断判定部555は、
図14のステップS103において、前方領域601で鋼板10が破断したと判定する。
まず、
図20(a)、(b)を参照して、第1動作例での双ロール式連続鋳造機150の状態変化を説明する。
図20(a)は、第1動作例での鋳造ロール速度の時間変化を表す鋳造ロール速度グラフを示す図である。
図20(b)は、第1動作例での鋳造ロールギャップの大きさの時間変化を表す鋳造ロールギャップを示す図である。
図20(a)に示すように、時刻20(sec)のとき、
図15の処理で、鋳造ロール速度が下がり始めて、鋳造ロール速度が80(mpm)から5(mpm)になる。また、排出時間である1(sec)経過後に、再び鋳造ロール速度が下がり始めて、鋳造ロール速度が0(mpm)になる。さらに、
図20(b)に示すように、鋳造ロールが開放されて、一対の鋳造ロール201の間の距離が50(mm)まで広がる。
【0078】
次に、
図21(a)、(b)を参照して、第1動作例での第1搬送機300Aの状態変化を説明する。
図21(a)は、第1動作例での第1ピンチロール速度の時間変化を示す第1ピンチロール速度グラフを示す図である。
図21(b)は、第1動作例での第1ピンチロールギャップの時間変化を表す第1ピンチロールギャップグラフを示す図である。
図21(a)に示すように、
図17の処理によって、時刻20(sec)のとき、第1ピンチロール速度が下がり始めて、第1ピンチロール速度が80(mpm)から5(mpm)になる。
また、第1動作例では、前方領域601で鋼板10が破断してから2(sec)後の時刻22(sec)のとき、鋼板10の破断部が第1ピンチロール301Aを通過する。通過判定部557は、
図17のステップS302において、時刻22(sec)のとき、鋼板10の破断部が第1ピンチロール301Aを通過したと判定する。
時刻22(sec)のとき、
図21(a)に示すように、
図17の処理によって、第1ピンチロール速度が下がり始めて、第1ピンチロール速度が0(mpm)になる。また、第1ピンチロール301Aが開放されて、一対の第1ピンチロール301Aの間の距離が50(mm)まで広がる。
【0079】
次に、
図22(a)、(b)を参照して、第1動作例での第2搬送機300Bの状態変化を説明する。
図22(a)は、第1動作例での第2ピンチロール速度の時間変化を表す第2ピンチロール速度グラフを示す図である。
図22(b)は、第1動作例での第2ピンチロールギャップの時間変化を表す第2ピンチロールギャップグラフを示す図である。
図21(a)に示すように、
図17の処理によって、時刻20(sec)で、第2ピンチロール速度が下がり始めて、第2ピンチロール速度が80(mpm)から5(mpm)になる。
また、第1動作例では、前方領域601で鋼板10が破断してから3(sec)後の時刻23(sec)で、鋼板10の破断部が第2ピンチロール301Bを通過する。通過判定部557は、
図17のステップS306において、時刻23(sec)のとき、鋼板10の破断部が第2ピンチロール301Bを通過したと判定する。
時刻23(sec)のとき、
図17の処理によって、
図22(a)に示すように、再び第2ピンチロール速度が下がり始めて、第2ピンチロール速度が0(mpm)になる。また、
図22(b)に示すように、第2ピンチロール301Bが開放されて、一対の第2ピンチロール301Bの間の距離が50(mm)まで広がる。
【0080】
次に、
図23(a)、(b)、(c)を参照して、第1動作例での圧延機350の状態変化を説明する。
図23(a)は、第1動作例での圧延機速度の時間変化を表す圧延機速度グラフを示す図である。
図23(b)は、第1動作例での圧延ロールギャップの時間変化を表す圧延ロールギャップグラフを示す図である。
図23(c)は、第1動作例での圧延機押付力の時間変化を表す圧延機押付力グラフを示す図である。
図23(a)に示すように、
図17の処理によって、時刻20(sec)のとき、圧延機速度が下がり始めて、圧延機速度が80(mpm)から5(mpm)になる。そして、鋼板10の破断部が第2ピンチロール301Bを通過した時刻23(sec)のとき、再び圧延機速度が下がり始めて、圧延機速度が0(mpm)になる。また、
図23(b)に示すように、
図17の処理によって、時刻20(sec)で、圧延ロール351を開放されて、一対の圧延ロール351の間の距離が50(mm)まで広がる。また、
図23(c)に示すように、時刻20(sec)のとき、一対の圧延ロール351の間の距離が広がり始めて圧延機350が鋼板10を圧延しなくなるため、時刻20(sec)のとき圧延機押付力が200(tonf)から下がっていって0(tonf)になる。
【0081】
次に、
図24を参照して、第1動作例でのコイラ450の状態変化を説明する。
図24は、第1動作例でのコイラ速度の時間変化を表すコイラ速度グラフを示す図である。
図24に示すように、
図17の処理によって、時刻20(sec)のとき、コイラ速度が下がり始めて、コイラ速度が80(mpm)から5(mpm)になる。そして、鋼板10の破断部が第2ピンチロール301Bを通過した時刻23(sec)のとき、再びコイラ速度が下がり始めて、コイラ速度が0(mpm)になる。
【0082】
[第2動作例]
次に、
図25から
図28までを参照して、制御システム1の第2動作例について説明する。
第2動作例は、時刻20(sec)までは定常鋳造状態であり、時刻20(sec)のときに鋼板10が後方領域604において破断して、昇降ロール401が落下した場合の制御システム1の動作例である。時刻20(sec)のとき、破断判定部555は、
図14のステップS108において、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定する。
第2動作例での双ロール式連続鋳造機150の状態変化は、
図20(a)、(b)を参照して説明した第1動作例での双ロール式連続鋳造機150の状態変化と同様である。
【0083】
次に、
図25(a)、(b)を参照して、第2動作例での第1搬送機300Aの状態変化を説明する。
図25(a)は、第2動作例での第1ピンチロール速度の時間変化を表す第1ピンチロール速度グラフを示す図である。
図25(b)は、第1動作例での第1ピンチロールギャップの時間変化を表す第1ピンチロールギャップグラフを示す図である。
時刻20(sec)のとき、
図25(a)に示すように、
図18の処理によって、第1ピンチロール速度が下がり始めて、第1ピンチロール速度が80(mpm)から0(mpm)になる。また、
図25(b)に示すように、第1ピンチロール301Aが開放されて、一対の第1ピンチロール301Aの間の距離が50(mm)まで広がる。
【0084】
次に、
図26(a)、(b)を参照して、第2動作例での第2搬送機300Bの状態変化を説明する。
図26(a)は、第2動作例での第2ピンチロール速度の時間変化を表す第2ピンチロール速度グラフを示す図である。
図26(b)は、第2動作例での第2ピンチロールギャップの時間変化を表す第2ピンチロールギャップグラフを示す図である。
時刻20(sec)のとき、
図26(a)に示すように、
図18の処理によって、第2ピンチロール速度が下がり始めて、第2ピンチロール速度が80(mpm)から0(mpm)になる。また、
図26(b)に示すように、
図18の処理によって、第2ピンチロール301Bが開放されて、一対の第2ピンチロール301Bの間の距離が50(mm)まで広がる。
【0085】
次に、
図27(a)、(b)、(c)を参照して、第2動作例での圧延機350の状態変化を説明する。
図27(a)は、第2動作例での圧延機速度の時間変化を表す圧延機速度グラフを示す図である。
図27(b)は、第2動作例での圧延ロールギャップの時間変化を表す圧延ロールギャップグラフを示す図である。
図27(c)は、第2動作例での圧延機押付力の時間変化を表す圧延機押付力グラフを示す図である。
図27(a)に示すように、
図18の処理によって、時刻20(sec)のとき、圧延機速度が下がり始めて、圧延機速度が80(mpm)から0(mpm)になる。また、
図27(b)に示すように、
図18の処理によって、時刻20(sec)のとき、圧延ロール351が開放されて、一対の圧延ロール351の間の距離が50(mm)まで広がる。また、
図27(c)に示すように、時刻20(sec)のとき、一対の圧延ロール351の間の距離が広がり始めて圧延機350が鋼板10を圧延しなくなるため、時刻20(sec)のとき圧延機押付力が200(tonf)から下がっていって0(tonf)になる。
【0086】
次に、
図28を参照して、第2動作例でのコイラ450の状態変化を説明する。
図28は、第2動作例でのコイラ速度の時間変化を表すコイラ速度グラフを示す図である。
図28に示すように、
図18の処理によって、時刻20(sec)のとき、コイラ速度が下がり始めて、コイラ速度が80(mpm)から0(mpm)になる。
【0087】
[第3動作例]
次に、制御システム1の第3動作例について説明する。
第3動作例は、時刻19.5(sec)までは定常鋳造状態であり、時刻19.5(sec)のとき、鋼板10が第2中間領域603において破断した場合の制御システム1の動作例である。時刻19.5(sec)のとき、推定部556は、
図14のステップS115において、第1搬送機300Aと圧延機350との間の領域で鋼板10が破断したと推定する。
図29を参照して、第3動作例での圧延機350の状態変化を説明する。
図29は、第3動作例での圧延機押付力の時間変化を表す圧延機押付力グラフを示す図である。
図29に示すように、
図19のステップS500の処理によって、時刻19.5(sec)のとき、圧延機押付力が下がり始めて、200(tonf)から1(tonf)まで弱くなり、圧延機350が鋼板10を軽圧下する状態になる。
【0088】
また、第3動作例は、鋼板10の破断部が、時刻20(sec)のとき、圧延機350を通過して後方領域604に到達する動作例である。このため、時刻20(sec)以降の制御システム1の状態は、
図25から
図28までを参照して説明した第2動作例と同様となる。
【0089】
第3動作例では、
図19のステップS500は実行されるが、
図19のステップS502は実行されない。これは次のように処理が行われるためである。
まず、時刻19.5(sec)からのとき、上記のように、
図19のステップS500が実行される。その後、
図19の処理では、誤検知判定時間である1(sec)が経過して時刻20.5(sec)になるまでステップS501が実行される。
一方、時刻20(sec)のとき、
図14のステップS108において、破断判定部555は、圧延機350とコイラ450との間の領域である後方領域604に破断部があると判定し、
図15の鋳造機停止処理、及び、
図18の第2破断制御処理が実行されて、その後、
図14の鋳造圧延制御処理が終了する。
したがって、第3動作例では、
図19のステップS501が実行される前に、
図14の鋳造圧延制御処理が終了するため、鋳造圧延制御処理の中の処理である
図19のステップS501は実行されない。
なお、鋼板10が第1中間領域602において破断した場合も、制御システム1は、第3動作例と同様の動作をする。
【0090】
[第4動作例]
次に、制御システム1の第4動作例について説明する。
第4動作例は、推定部556が、時刻20(sec)のとき、誤って第2中間領域603において鋼板10が破断したと推定した場合の制御システム1の動作例である。第4動作例では、実際には鋼板10は破断していない。
第4動作例での圧延機350以外の鋳造圧延設備100の動作は、定常鋳造状態のときの動作となる。
【0091】
図30を参照して、第4動作例での圧延機350の状態変化を説明する。
図30は、第4動作例での圧延機押付力の時間変化を表す圧延機押付力グラフを示す図である。
図30に示すように、
図19のステップS500の処理によって、時刻20(sec)のとき、圧延機押付力が下がり始めて、200(tonf)から1(tonf)まで弱くなり、圧延機350が鋼板10を軽圧下する状態になる。また、誤検知判定時間である1(sec)が経過した後は、
図30に示すように、圧延機350が鋼板10を軽圧下する状態が解除されて、定常鋳造状態のときの圧延機押付力である200(tonf)に戻る。
第4動作例では、第3動作例の場合と異なり、鋼板10は実際には破断していない。よって、破断判定部555は、圧延機350とコイラ450との間の領域である後方領域604に破断部があると判定することはなく、
図14の鋳造圧延制御処理は終了しない。したがって、誤検知判定時間の経過後に、
図19のステップS502が実行されて、圧延機押付力が200(tonf)に戻る。
【0092】
[効果]
以上説明したように、制御装置500は、前方領域601で鋼板10が破断したとき、排出時間が経過した後に、一対の鋳造ロール201の回転を停止させる制御を行う。よって、鋼板10が破断した場合でも、湯溜まり210が空になってから鋳造ロール201が停止するため、湯溜まり210の中で溶鋼11が凝固することがない。したがって、鋳造ロール201に接着した鋼材を鋳造ロール201から引きはがす作業が不要になる。このため、鋼材を鋳造ロール201から引きはがす作業に伴って、鋳造ロールの表面ディンプルが削れる等により鋳造ロール201の寿命が短くなることを回避でき、双ロール式連続鋳造機150を保護できる。更に、メンテナンス作業の煩雑さを低減させることができる。このように、制御システム1では、鋼板が破断した場合に、双ロール式連続鋳造機を適切に停止できる。
また、制御装置500は、鋼板10が、双ロール式連続鋳造機150の鋳造ロールギャップより下の第1基準高さに達したとき、前方領域601で鋼板10が破断したと判定する。したがって、制御装置500は、正確に鋼板10の破断を判定できる。
【0093】
また、制御装置500は、第1基準時間の間、鋼板10が第1基準高さに達した状態が継続したとき、前方領域601で鋼板10が破断したと判定する。したがって、誤判定のおそれが低減する。
【0094】
また、制御装置500は、前方領域601で鋼板10が破断したと判定したとき、ストッパ162を制御して、タンディッシュ161の注ぎ口を閉じる制御を行う。したがって、前方領域601で鋼板10が破断したとき、湯溜まり210への溶鋼11の注入が停止し、湯溜まり210を空にできる。
【0095】
また、制御装置500は、昇降ロール401の上下方向の位置が第2基準高さ以下のとき、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定する。よって、鋼板10の熱によって破損するおそれがある張力検出器等の計測器を使うことなく、鋼板10の破断をタイムラグなく正確に検知できる。また、制御装置500は、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定したとき、圧延ロール351の回転を停止させて、圧延機350による鋼板10の排出を停止させる制御を行う。また、制御装置500は、コイラ電動機455の回転を停止させて、コイラ450による鋼板10の引き込みを停止する制御を行う。したがって、後方領域604に鋼板10の破断部があるとき、迅速に鋼板10の搬送を停止させることができる。
【0096】
また、制御装置500は、第2基準時間の間、昇降ロール401の上下方向の位置が第2基準高さ以下のとき、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定する。したがって、誤判定のおそれが低減する。
【0097】
また、制御装置500は、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定したとき、排出時間が経過した後に、一対の鋳造ロール201の回転を停止させる制御を行う。したがって、湯溜まり210が空になってから鋳造ロール201が停止するため、湯溜まり210の中で溶鋼11が凝固することがない。
【0098】
また、制御装置500は、前方領域601で鋼板10が破断したと判定したときや、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定したとき、少なくとも一方の圧延ロール351が鋼板10から離間するように、一対の圧延ロール351の間の距離を広げる制御を行う。したがって、鋼板10の搬送が停止したときに、鋳造圧延設備100から鋼板10を取り出す等のメンテナンス作業が容易になる。
【0099】
また、制御装置500は、第1搬送電動機303Aに流れる電流の変化量、又は、第2搬送電動機303Bに流れる電流の変化量に基づいて、第1搬送機300Aと圧延機350との間の領域で鋼板10が破断したか否かを推定する。そして、制御装置500は、鋼板10が破断した推定したとき、鋼板10が破断したと推定してから誤検知判定時間が経過するまで、圧延機押付力を弱める。よって、実際に鋼板10が破断していた場合であって、鋼板10の破断部が圧延ロール351を通過して一対の圧延ロール351が接触したとしても、圧延機押付力が弱くなっているため、
図2を参照して説明したように、圧延機350が破損するおそれが低減する。
また、鋼板10の破断部が圧延ロール351を通過すると、通過の直後に、制御装置500は、ルーパ高さ41に基づいて、後方領域604に鋼板10の破断部があると判定し、圧延ロール351を開放する。よって、一対の圧延ロール351の接触を回避できたり、仮に一対の圧延ロール351が接触したとしても接触時間を短くできたりできる。したがって、圧延機350が破損するおそれが低減する。
【0100】
また、制御装置500は、誤検知判定時間が経過した後は、圧延機350の圧延機押付力を戻す制御を行う。よって、制御装置500が誤って鋼板10が破断したと推定したときは、制御システム1は定常鋳造状態を継続でき、鋼板10の鋳造、及び、圧延を継続できる。
また、制御装置500は、誤検知判定時間が経過するまでの間、圧延機押付力を弱めているが、圧延ロール351を開放していない。よって、圧延ロール351が鋼板10に接触する状態は継続される。したがって、制御装置500が誤って鋼板10が破断したと推定したときに、圧延機350の圧延機押付力を戻しても、一度鋼板10から離れた圧延ロール351が再び鋼板10に接触し、鋼板10の動きが乱れて、熱せられた鋼板10が各装置に接触する等の不安定な状態になってしまうことを回避できる。
【0101】
また、制御装置500は、鋼板10が前方領域601で破断したと判定し、鋼板10の破断部が第1搬送機300Aを通過したと判定したとき、第1搬送機300Aによる搬送を停止させる制御を行う。また、制御装置500は、鋼板10の破断部が第1搬送機300Aを通過したと判定してから、ハンチング収束時間が経過した後に、鋼板10の破断部が第2搬送機300Bを通過したと判定したとき、第2搬送機300Bによる搬送を停止させる制御を行う。ここで、ハンチング収束時間が経過するまでは、鋼板10の動きが不安定であり、制御装置500は、誤って、鋼板10の破断部が第2搬送機300Bを通過したと判定するおそれがある。しかし、制御装置500は、ハンチング収束時間が経過した後の破断部の通過判定に基づいて、第2搬送機300Bによる搬送を停止させる制御を行う。したがって、制御装置500が誤って鋼板10の破断部が第2搬送機300Bを通過したと判定するおそれが低減する。
【0102】
また、制御装置500は、鋼板10が前方領域601で破断したと判定し、かつ、破断部が第2搬送機300Bを通過したと判定したとき、圧延ロール351の回転を停止して鋼板10の排出を停止する制御を行い、更に、コイラ450による鋼板10の巻取りを停止して鋼板10の引き込みを停止させる制御を行う。よって、制御装置500は、鋼板10の破断部が第2搬送機300Bを通過したと判定するまでは、圧延ロール351の回転を停止せず、更に、コイラ450による鋼板10の巻取りを停止しない。したがって、鋼板10が破断しても、コイラ450は十分に鋼板10を巻取ることができる。
【0103】
また、制御装置500は、鋼板10が前方領域601で破断したと判定したときは、鋳造ロール速度、ピンチロール速度、圧延機速度、及び、コイラ速度を遅くする。したがって、破断した鋼板10が不安定な動きをするおそれが低減し、鋳造圧延設備100の安全性が確保される。
【0104】
[その他の実施形態]
鋳造圧延設備100は、圧延機350を1台備えるが、圧延機350は複数台あってもよい。例えば、鋼板10の搬送経路における第2搬送機300Bとルーパ400との間に複数台の前記圧延機が配置されてもよい。このとき、第2搬送機300Bは、鋼板10の搬送経路における双ロール式連続鋳造機150に最も近い圧延機350に鋼板10を搬送する。鋼板10の搬送経路におけるルーパ400に最も近い圧延機350は、鋼板10をルーパ400に排出する。これにより、複数の圧延機350を使って、圧延機350が1台の場合と比べて、圧延の精度を高めたり、鋼板10がより薄くなるように圧延したりできる。
制御装置500は、
図14のステップS114やS115と同様に、圧延電動機354に流れる電流の変化量に基づいて、隣り合う圧延機350の間の領域で鋼板10の破断が生じたか否かを推定する。制御装置500は、隣り合う圧延機350の間の領域で鋼板10の破断が生じたと推定したとき、
図19の破断推定時制御処理を実行する。破断推定時制御処理で、圧延機350の圧延機押付力が弱くなる。よって、実際に鋼板10が破断していた場合であって、鋼板10の破断部が圧延ロール351を通過して一対の圧延ロール351が接触したとしても、圧延機押付力が弱くなっているため、
図2を参照して説明したように、圧延機350が破損するおそれが低減する。
【0105】
鋳造圧延設備100は、搬送機300を2台備えるが、搬送機300は、1台や3台以上であってもよい。
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。