(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ガイド機構は、上記支持レールの直交方向に延在するガイドレールと、上記ガイドレールにスライド可能に支持され且つ上記レール部に固定されたスライド部材と、を備える、請求項1に記載の運搬台車。
上記レール部の上記支持レールは、予定された所定数の上記ワークを上記吊り下げ空間に同時に吊り下げるために、上記所定数の上記被支持部を同時に支持可能な溝長さを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の運搬台車。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について説明する。
【0014】
本明細書に記載の「水平方向」とは、完全な水平方向だけでなく、略水平な方向をも含む概念である。従って、ここでいう水平方向には、厳密に水平な方向は勿論、この方向に代えて或いは加えてこの水平に対して僅かに傾斜した方向が包含される。
【0015】
上記の運搬台車は、上記テーブル部から上記吊り下げ空間の上方まで延出したフレーム部を備え、上記フレーム部には、上記レール部を水平面内で移動可能にガイドするガイド機構が設けられているのが好ましい。
【0016】
この運搬台車によれば、レール部は作業者からの荷重入力によってガイド機構を介して水平面内で移動できる。このため、レール部の支持レールに吊り下げられたワークの吊り下げ空間での位置を水平面内で微調整するのに有効である。
ここで、テーブル部を支持する車輪で運搬台車の全体を動かしてワークの位置調整を行う場合は、床面の凹凸などの影響によってワークを所望の位置に合わせるのに時間を要する。これに対して、ガイド機構を用いてワークの位置を水平面内で微調整できるようにしたため、ワークの位置合わせに要する時間を削減することができる。
【0017】
上記の運搬台車において、上記ガイド機構は、上記支持レールの直交方向に延在するガイドレールと、上記ガイドレールにスライド可能に支持され且つ上記レール部に固定されたスライド部材と、を備えるのが好ましい。
【0018】
この運搬台車によれば、ガイド機構においてスライド部材をガイドレールに沿ってスライドさせることによって、ワークを支持レールの直交方向に動かすことができる。このため、レール部の支持レールに吊り下げられたワークの位置を水平面内で支持レールの直交方向に平行移動させて微調整するのに有効である。この場合、支持レールが延在する水平方向と、この水平方向に直交する直交方向の少なくとも二方向について、ワークの位置調整が可能になる。
【0019】
上記の運搬台車は、上記テーブル部から上記吊り下げ空間の上方まで延出したフレーム部を備え、上記フレーム部に上記レール部が固定されているのが好ましい。
【0020】
この運搬台車によれば、レール部がフレーム部を介してテーブル部に固定される簡単なレール支持構造を実現できる。
【0021】
上記の運搬台車は、上記テーブル部を垂直方向に昇降させるための昇降機構部を備えるのが好ましい。
【0022】
この運搬台車によれば、ワークを積み込むときには、導入口の高さがワーク側の被支持部の高さに概ね合うように昇降機構部を調節することができる。また、ワークを積み下ろすときには、ワークの高さが積み下ろし場所の高さに概ね合うように昇降機構部を調節することができる。この場合、支持レールに対する被支持部の導入出を円滑に行うことが可能になる。
【0023】
上記の運搬台車において、上記レール部の上記支持レールは、当該運搬台車の前後方向に延在し、且つレール前端部が台車前端部よりも前方まで突出するように構成されているのが好ましい。
【0024】
この運搬台車によれば、台車前端部が他の設備などに干渉することによって、ワークの積み込み場所や積み下ろし場所に近づきにくいような場合でも、このようなレール前端部の突出構造によってワークの積み込み及び積み下ろしを行うことが可能になる。特に、この突出構造を上記の昇降機構部と組み合わせることによって、台車前端部よりも前方でワークを積み込んで上昇させたり、ワークを台車前端部よりも低所まで下降させて積み下ろしたりするような作業が可能になる。
【0025】
上記の運搬台車において、上記レール部の上記支持レールは、上記被支持部の水平方向の移動を規制するストッパを備えるのが好ましい。
【0026】
この運搬台車によれば、ワークの運搬時に該ワークが水平方向に移動したり落下したりするのを防ぐことができる。
【0027】
上記の運搬台車において、上記被支持部は、上記ワークに着脱可能に取付けられる取付け治具によって構成されているのが好ましい。
【0028】
この運搬台車によれば、共通の取付け治具を使用することによって、この取付け治具を形状や種類の異なるワークの運搬に兼用することできる。
【0029】
上記の運搬台車において、上記取付け治具は、上記支持レールを走行可能な車輪を有し、この車輪によって上記被支持部が構成されているのが好ましい。
【0030】
この運搬台車によれば、取付け治具の車輪を支持レールに導入して走行させることによって、ワークの積み込み及び積み下ろしの際に作業者が受ける抵抗を低く抑えることができる。
【0031】
上記の運搬台車において、上記被支持部に作業者が把持可能なハンドルが設けられているのが好ましい。
【0032】
この運搬台車によれば、作業者は、ワークの積み込み及び積み下ろしの際に、ワーク自体を把持することなくこのハンドルを把持して被支持部を水平方向に簡単に移動させることができる。
【0033】
上記の運搬台車において、上記レール部の上記支持レールは、予定された所定数の上記ワークを上記吊り下げ空間に同時に吊り下げるために、上記所定数の上記被支持部を同時に支持可能な溝長さを有するのが好ましい。
【0034】
この運搬台車によれば、所定数の被支持部を支持レールに導入することによって、所定数のワークを一度に吊り下げて運搬することが可能になる。
【0035】
以下、本実施形態の運搬台車について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
なお、本明細書の説明で使用する図面では、特に断わらない限り、運搬台車の前方を矢印FRで示し、右方を矢印RHで示し、左方を矢印LHで示し、上方を矢印UPで示すものとする。
【0037】
(
参考形態1)
図1及び
図2に示されるように、
参考形態1の運搬台車1(以下、単に「台車1」という。)は、ワークWを運搬するためのものである。この台車1の構成要素は、台座部10と、昇降機構部20と、吊り下げ機構部30と、に大別される。この台車1を、ワークWを搬送する「搬送台車1」ということもできる。
【0038】
台座部10は、ベース11と、このベース11の下部に取付けられた車輪としての複数のキャスター12と、ベース11の後部から上方へ延出した手押し用のハンドル13と、を備えている。キャスター12には、台車1の停車時に使用されるロック装置(図示省略)が内蔵されている。このため、作業者は、このロック装置を有効にした状態で、ワークWの積み込み及び積み下ろしの作業を行うことができる。また、作業者は、このロック装置を無効にした状態で、ハンドル13を把持して台車1を床面2上で走行させることができる。
【0039】
昇降機構部20は、台座部10と吊り下げ機構部30との間に介装されている。この昇降機構部20は、吊り下げ機構部30のテーブル部31を垂直方向X1,X2に昇降させる機能を有する。この機能を実現するために、昇降機構部20は、台座部10のベース11とテーブル部31とを昇降可能に連結するために左右の二箇所に設けられた2つの連結アーム21,22と、これら2つの連結アーム21,22を駆動するための油圧ユニット24と、を備えている。
【0040】
2つの連結アーム21,22は、支軸23によって互いに回転自在に連結されて略X形状を成している。一方の連結アーム21は、一端部21aがベース11に回動可能に固定され、且つ他端部21bがテーブル部31に回動可能且つ前後方向にスライド可能に取付けられている。他方の連結アーム22は、一端部22aがテーブル部31に回動可能に固定され、且つ他端部22bがベース11に回動可能且つ前後方向にスライド可能に取付けられている。
【0041】
油圧ユニット24は、連結軸24aによってベース11に連結され、且つ油圧によって伸縮可能なロッド25を介して支軸23に連結されている。この油圧ユニット24は、足踏み式の装置として構成されている。即ち、この油圧ユニット24では、足踏み用のペダル26を回転軸26aまわりの回動方向Zに繰り返し往復動作させることによってロッド25の突出量が増える一方で、レバー27の手動操作によってロッド25の突出量が減るようになっている。この油圧ユニット24は、「油圧ジャッキ」とも称呼される。
【0042】
油圧ユニット24のロッド25の突出量が増えるときには支軸23が上方へ動かされるため、連結アーム21の他端部21bと連結アーム22の他端部22bがともに後方(
図1の左方向)へスライドする。従って、このときには、吊り下げ機構部30は、ベース11に対して水平状態を維持したまま上向きの垂直方向X1へと平行移動するようになっている。
【0043】
これに対して、油圧ユニット24のロッド25の突出量が減るときには支軸23が下方へ動かされるため、連結アーム21の他端部21bと連結アーム22の他端部22bがともに前方(
図1の右方向)へスライドする。従って、このときには、吊り下げ機構部30は、ベース11に対して水平状態を維持したまま下向きの垂直方向X2へと平行移動するようになっている。
【0044】
吊り下げ機構部30は、平板状のテーブル部31と、テーブル部31の上部に固定されこのテーブル部31から後述の吊り下げ空間37の上方まで延出したフレーム部32と、フレーム部32に固定されたレール部33と、を備えている。
【0045】
テーブル部31は、昇降機構部20を介して台座部10に連結されている。このため、テーブル部31は、台座部10に設けられたキャスター12によって間接的に走行可能に支持されている。
【0046】
フレーム部32は、テーブル部31の上面からそれぞれ垂直方向に延出し、且つ前後方向に互いに離間して配置された2つの第1フレーム32a,32aと、これら2つの第1フレーム32a,32aのそれぞれの上端部から右方向へ水平に延出する第2フレーム32bと、によって構成されている。
【0047】
レール部33は、フレーム部32の2つの第2フレーム32b,32bの下面に固定されている。このため、レール部33は、テーブル部31にワークWを吊り下げる吊り下げ空間37を隔てて取付けられている。
【0048】
レール部33の支持レール33aは、台車1の前後方向に延在し、且つレール前端部33cが台車前端部であるベース11の前端部11aよりも前方まで突出するように構成されている。
図1では、この支持レール33aの突出量をLで示している。
【0049】
レール部33は、支持レール33aと、導入口33bと、収容空間34とを有する。収容空間34は、ワークW側の被支持部としての車輪43を収容可能な空間である。支持レール33aは、テーブル部31の上方に吊り下げ空間37を隔てて水平方向Y1,Y2に延在している。この支持レール33aは、車輪43を水平方向Y1,Y2に移動可能に支持する。導入口33bは、車輪43を水平方向Y1のスライドによって支持レール33aへ導入するための開口部分である。また、車輪43は水平方向Y2のスライドによってこの支持レール33aから導出される。従って、この導入口33bを、「導入出口33b」ということもできる。レール部33は、車輪43が導入口33bから支持レール33aへ導入されることによって、ワークWを吊り下げ空間37に吊り下げるように構成されている。
【0050】
なお、詳細については後述するが、ワークWの上端部Waに着脱可能に取付けられる取付け治具40が上記の車輪43を有する。
【0051】
テーブル部31に対するレール部33の上下方向の間隔は、車輪43が導入口33bを通じて支持レール33aへ導入されたときにワークWの下端部Wbとテーブル部31との間に隙間37aが形成されるように寸法設定されている。これにより、レール部33は、ワークWが吊り下げ空間37に吊り下げられた状態でこのワークWを保持できる。
【0052】
レール部33の支持レール33aは、予定された所定数(
本形態では、4つ)のワークWを吊り下げ空間37に同時に吊り下げるために、所定数の車輪43を同時に支持可能な溝長さを有するように構成されている。本構成によれば、所定数のワークWを一度に吊り下げて運搬することが可能になる。
【0053】
レール部33の支持レール33aは、導入口33bを通じて導入された車輪43の水平方向Y1,Y2の移動を規制するストッパとしての2つのロックピン35,36を備えている。一方のロックピン36は、支持レール33aのレール前端部33cに配置され、他方のロックピン35は、レール前端部33cよりも後方に配置されている。ロックピン35は、吊り下げ空間37に同時に吊り下げられた所定数のワークWが車輪43とともに水平方向Y1,Y2に動くのを阻止するためのものである。ロックピン36は、車輪43が導入口33bを通じて支持レール33aから抜け出してワークWが落下するのを阻止するためのものである。
【0054】
本形態では、成形型を構成する上型と下型とをガイドするための円柱形状の部材、所謂「ガイドポスト」を、運搬対象であるワークWとして使用している。
図3に示されるように、このワークWは、上端部Waに取付け治具40が取付けられた状態で、上型Dに設けられている挿入穴Dhに挿入される。ワークWを上型Dの挿入穴Dhに挿入した後に、このワークWから取付け治具40が取外される。
【0055】
図4に示されるように、取付け治具40は、平板状の本体部41と、この本体部41の両側に回転軸42によって回転自在に連結された一対の車輪43,43と、本体部41から水平方向に延出する一対のハンドル44,44と、を備えている。
【0056】
この取付け治具40は、本体部41から下方へ延出する雄ネジ軸41aを有する。この取付け治具40は、ワークWの上端部Waに設けられている雌ネジ穴Wcにこの雄ネジ軸41aが螺合するように所定の回転方向に回転することによって、ワークWに取付けられる。一方で、ワークWに取付けられた取付け治具40は、取付け時とは逆方向に回転することによってワークWから取外される。この取付け治具40は、「トロリーハンガー」とも称呼される。
【0057】
車輪43は、取付け治具40に支持レール33aを走行可能に設けられた走行車輪である。ハンドル44は、作業者が把持可能な大きさのハンドルである。このため、
図5に示されるように、車輪43が支持レール33aへ導入された状態で、作業者がハンドル44を前後方向に操作することによって、車輪43が支持レール33aを走行できる。これにより、取付け治具40を支持レール33aに沿って前後方向にスライドさせることができる。
【0058】
図6に示されるように、ロックピン35は着脱式の部材であり、レール部33の左右の壁33d,33dを貫通する貫通穴33e,33eに挿入された取付け状態(
図6中の実線で示される状態)で有効になり、この貫通穴33e,33eから抜き出された取外し状態(
図6中の二点鎖線で示される状態)で無効になるように構成されている。
【0059】
特に図示しないものの、ロックピン35と同様にロックピン36も着脱式の部材であり、支持レール33aのレール前端部33cの左右の壁33d,33dを貫通する貫通穴33e,33eに挿入された取付け状態で有効になり、この貫通穴33e,33eから抜き出された取外し状態で無効になるように構成されている。
【0060】
次に、上記の台車1を使用したワークWの運搬作業について、
図7〜
図12を参照しつつ説明する。この運搬作業は、概して、予定された4つのワークWを積み込んで上型Dの近傍まで運搬した後、これら4つのワークWのそれぞれを上型Dの4つの挿入穴Dhのそれぞれに挿入する作業である。
【0061】
図7に示されるように、台車1にワークWを積み込むために、この台車1を先ずワーク保管部50の近傍まで移動させる。そして、ワーク保管部50の保管空間50aに前後方向に一列で保管されている4つのワークWを1つずつ順番に台車1側の吊り下げ空間37に移し替える。
【0062】
ここで、
図7及び
図8に示されるように、ワーク保管部50は、ワークWが垂直に立てられた状態で置かれるテーブル部51と、テーブル部51を支持し且つ床面2に固定された複数の支柱52と、テーブル部51に置かれたワークWの左右を前後方向に延びる2つのガード部材53,53と、を備えている。
【0063】
図8に示されるように、一方のガード部材53の後端側には、ゲート部材54が回動軸54aを介して第1位置Q1(実線で示される位置)と第2位置Q2(二点鎖線で示される位置)との間で回動可能に連結されている。このゲート部材54は、第1位置Q1に設定されることによって、2つのガード部材53,53の間の通路を閉鎖するように構成されている。このため、ゲート部材54によってワークWの転倒及び落下を防止できる。これに対して、ゲート部材54は、第2位置Q2に設定されることによって、2つのガード部材53,53の間の通路の閉鎖を解除するように構成されている。このため、ワーク保管部50から台車1側へのワークWの移し替えが可能になる。
【0064】
図7に戻って説明すると、作業者は、昇降機構部20を調節することによりテーブル部31を第1位置P1に設定する。この第1位置P1では、レール部33の導入口33bの高さが、ワーク保管部50に保管されているワークW側の車輪43の高さと概ね一致する。そして、作業者は、支持レール33aのレール前端部33cがワーク保管部50に保管されているワークWに極力近づくまで台車1を前方へ移動させて停車する。
【0065】
その後、作業者は、ゲート部材54を第2位置Q2に設定し、且つレール部33から2つのロックピン35,36を取外した状態で、第1番目のワークW1を台車1側に移し替える操作を行う。この操作は、ワークW1側のハンドル44を把持してワークW1側の車輪43を水平方向Y1にスライドさせることによって行われる。この操作によれば、ワークW1側の車輪43を導入口33bからレール部33の収容空間34へ押し込んで支持レール33aに沿って走行させることによって、ワークW1を吊り下げ空間37まで移動させることができる。
【0066】
また、作業者は、ワークW1について実行した上述の一連の積み込み操作を、第2番目のワークW2、第3番目のワークW3、第4番目のワークW4について順次実行する。これにより、台車1への4つのワークW1〜W4の積み込みが全て完了する。
【0067】
次に、作業者は、4つのワークW1〜W4が積み込まれた台車1を上型Dの近傍まで運搬する。
【0068】
ここで、作業者は、最初に上型Dの所定の挿入穴Dhに上方からワークW4を挿入するための準備操作を行う。この準備操作は、
図9に示されるように昇降機構部20のペダル26を繰り返し足で踏んで吊り下げ機構部30を上向きの垂直方向X1へ上昇させる第1操作と、
図10に示されるようにレール部33からロックピン35を取外した後にハンドル44を把持してワークW4を水平方向Y2へ移動させる第2操作と、によって行われる。
【0069】
第1操作によれば、吊り下げ機構部30のテーブル部31を第1位置P1(二点鎖線で示される位置)から第2位置P2(実線で示される位置)へと水平状態のまま上昇させることができる。また、第2操作によれば、ワークW4を支持レール33aのレール前端部33cまで移動させて、このワークW4を上型Dの所定の挿入穴Dhに位置合わせすることができる。
【0070】
図11に示されるように、引き続き作業者は、昇降機構部20のレバー27を手動操作して吊り下げ機構部30を下向きの垂直方向X2へ下降させる。最終的には、
図12に示されるように、ワークW4が上型Dの挿入穴Dhに挿入される第3位置P3まで吊り下げ機構部30のテーブル部31を下降させる。このとき、作業者は、吊り下げ機構部30を下降させながら、ワークW4と上型Dの挿入穴Dhとの位置合わせのために、このワークW4に触れてその位置を微調整する操作を行うのが好ましい。その後、レール部33からロックピン36を取外して、台車1を後方へ移動させることで、台車1からのワークW4の積み下ろしが完了する。
【0071】
また、作業者は、ワークW4について実行した上述の一連の積み下ろし操作を、ワークW3、ワークW2、ワークW1について順次実行する。これにより、台車1からの4つのワークW1〜W4の積み下ろしが全て完了する。
【0072】
次に、上記の
参考形態1の作用効果について説明する。
【0073】
参考形態1によれば、ワークWを台車1に積み込むときには、レール部33の導入口33bの高さが取付け治具40の車輪43の高さに概ね合うように昇降機構部20を調節した状態で、ワークWを水平方向Y1に押し込んで車輪43を水平方向Y1にスライドさせる。これにより、車輪43が導入口33bから支持レール33aへ導入され、ワークWは車輪43を介して支持レール33aに支持されることによって吊り下げ空間37に吊り下げられる。そして、この状態で台車1を走行させることによって、ワークWの運搬が可能になる。
【0074】
また、ワークWを積み下ろすときには、ワークWの高さが積み下ろし場所の高さに概ね合うように昇降機構部20を調節した状態で、ワークWを水平方向Y2に押し出して車輪43を支持レール33aから導出させる。これにより、ワークWを台車1から積み下ろすことができる。
【0075】
ここで、ワークWの積み込み及び積み下ろしの際、支持レール33aが車輪43を介してワークWの重量の全部又は一部を受ける。このため、支持レール33aに対する車輪43の導入出のために、作業者がワークWを水平方向Y1,Y2に押し込んだり押し出したりするときの押圧力が少なくて済む。従って、ワークWの積み込み及び積み下ろしの作業を、ワイヤーロープ等の手段による複雑な操作を用いることなく、車輪43の水平方向Y1,Y2のスライド動作を利用して簡単に行うことが可能になる。
特に、台車1が昇降機構部20を備えることによって、支持レール33aに対する車輪43の導入出を円滑に行うことが可能になる。
【0076】
参考形態1によれば、支持レール33aのレール前端部33cがベース11の前端部11aよりも前方まで突出しているため、前端部11aが他の設備などに干渉することによって、ワークWの積み込み場所や積み下ろし場所に近づきにくいような場合でも、このようなレール前端部33cの突出構造によって、ワークWの積み込み及び積み下ろしを行うことが可能になる。特に、この突出構造を昇降機構部20と組み合わせることによって、ベース11の前端部11aよりも前方でワークWを積み込んで上昇させるような作業が可能になる。
【0077】
参考形態1によれば、レール部33の支持レール33aに車輪43のストッパとしてのロックピン35,36を設けることによって、ワークWの運搬時に該ワークWが水平方向Y1,Y2に移動したり落下したりするのを防ぐことができる。
【0078】
参考形態1によれば、共通の取付け治具40を使用することによって、この取付け治具40を形状や種類の異なるワークWの運搬に兼用することできる。特に、取付け治具40の車輪43を支持レール33aに導入して走行させることによって、ワークWの積み込み及び積み下ろしの際に作業者が受ける抵抗を低く抑えることができる。
【0079】
参考形態1によれば、取付け治具40の車輪43に作業者が把持可能なハンドル44が設けられているため、作業者は、ワークWの積み込み及び積み下ろしの際に、ワークW自体を把持することなくこのハンドル44を把持して車輪43を水平方向Y1,Y2に簡単に移動させることができる。
【0080】
参考形態1によれば、レール部33がフレーム部32を介してテーブル部31に固定される簡単なレール支持構造を実現できる。
【0081】
以下、
参考形態1に関連する他
の形態について図面を参照しつつ説明する。他
の形態において、
参考形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0082】
(実施形態
1)
図13及び
図14に示されるように、実施形態
1の台車101は、フレーム部32に、レール部33を吊り下げ空間37の水平面内で移動可能にガイドするガイド機構60が設けられている点で、
参考形態1の台車1と相違している。即ち、フレーム部32とレール部33との間にガイド機構60が介装されている。
その他の構成は、
参考形態1と同様である。
【0083】
ガイド機構60は、ガイドレール61と、スライド部材62と、を備えている。ガイドレール61は、フレーム部32の第2フレーム32bの下面に固定されており、レール部33の支持レール33aの直交方向Z1,Z2(
図14参照)に延在するように構成されている。スライド部材62は、ガイドレール61にスライド可能に支持され、且つレール部33の支持レール33aの上面に固定されている。ガイドレール61の両端部には、スライド部材62のスライド可能範囲を定めるためのストッパ61bが設けられている(
図14参照)。
【0084】
図15に示されるように、ガイドレール61は、水平方向Y1,Y2の両面に直交方向Z1,Z2に延びる係合溝61aを備えている。一方で、スライド部材62は、ガイドレール61の2つの係合溝61aのそれぞれにそれぞれが直交方向Z1,Z2に摺動可能に係合する2つの係合片62aを備えている。
【0085】
なお、スライド部材62の摺動抵抗を低く抑えるために、必要に応じて、ガイドレール61とスライド部材62との間に、複数のベアリング(ボール)などの転動体を自転可能に介装することもできる。
【0086】
実施形態
1の台車101によれば、レール部33は作業者からの荷重入力によってガイド機構60を介して吊り下げ空間37を水平面内で移動できる。このため、レール部33の支持レール33aに吊り下げられたワークWの位置を水平面内で微調整するのに有効である。
【0087】
ここで、テーブル部31を支持するキャスター12で台車1の全体を動かしてワークWの位置調整を行う場合は、床面2の凹凸などの影響によってワークWを所望の位置に合わせるのに時間を要する。これに対して、ガイド機構60を用いてワークWの位置を水平面内で微調整できるようにしたため、ワークWの位置合わせに要する時間を削減することができる。
【0088】
特に、ガイド機構60においてスライド部材62をガイドレール61に沿ってスライドさせることによって、ワークWを支持レール33aの直交方向Z1,Z2に動かすことができる。このため、レール部33の支持レール33aに吊り下げられたワークWの位置を水平面内で支持レール33aの直交方向Z1,Z2に平行移動させて微調整するのに有効である。この場合、支持レール33aが延在する水平方向Y1,Y2と、この水平方向Y1,Y2に直交する直交方向Z1,Z2の二方向について、ワークWの位置調整が可能になる。
その他、
参考形態1と同様の作用効果を奏する。
【0089】
なお、上述の実施形態
1に特に関連する変更例として、ガイド機構60がレール部33を水平面内で直交方向Z1,Z2とは異なる方向にガイドする構造を採用することもできる。この場合、ガイド機構60は、レール部33を水平面内で移動可能にガイドする機能を有していればよく、そのガイド方向は、直交方向Z1,Z2と交差する直線方向であってもよいし、或いは水平面における回転方向であってもよい。
【0090】
(
参考形態
2)
図16に示されるように、
参考形態
2の台車201は、昇降機構部20に相当する部位を備えていない点で、
参考形態1の台車1と相違している。即ち、台座部10のベース11に吊り下げ機構部30のテーブル部31が接合されている。
その他の構成は、
参考形態1と同様である。
【0091】
台車201は、積み込み場所や積み下ろし場所との間でワークWを殆ど上下に動かすことなく移し替えできるような場合や、積み込み場所や積み下ろし場所の設備が昇降機構部20に相当する機能を備えている場合に使用できる。
【0092】
参考形態
2によれば、台車1に比べて安価な台車201を提供できる。
その他、
参考形態1と同様の作用効果を奏する。
【0093】
なお、
参考形態
2の特徴的な構造を、上述の実施形態
1の台車101に適用することもできる。
【0094】
(
参考形態
3)
図17に示されるように、
参考形態
3の台車301は、支持レール33aのレール前端部33cとベース11の前端部11aとの上下方向の位置が概ね一致している点で、
参考形態
2の台車201と相違している。即ち、支持レール33aのレール前端部33cは、ベース11の前端部11aよりも前方まで突出していない。
その他の構成は、
参考形態
2と同様である。
【0095】
参考形態
3の台車301によれば、支持レール33aのレール前端部33cがベース11から前方へ突出しないように支持レール33aの長さを短く抑えることによって、台車201の前後方向の寸法を小さく抑えて小型化できる。
その他、
参考形態
2と同様の作用効果を奏する。
【0096】
なお、
参考形態
3の特徴的な構造を、上述の実施形態
1の台車101に適用することもできる。
【0097】
(
参考形態
4)
図18に示されるように、
参考形態
4の台車401は、支持レール33aのうちレール前端部33c寄りの部位が水平方向に対して僅かに傾斜した傾斜構造(
図18中の傾斜角度θを参照)を有する点で、
参考形態
2の台車201と相違している。この傾斜構造を有する支持レール33aも「水平方向に延在する支持レール」なる範疇に含まれる。
【0098】
この傾斜構造は、昇降機構部20の代わりに設けられた構造であり、車輪43が支持レール33aを水平方向Y1に走行する動作を利用してワークWを上方に僅かに上昇させ、車輪43が支持レール33aを水平方向Y2に走行する動作を利用してワークWを下方に僅かに下降させる機能を有する。
その他の構成は、
参考形態
2と同様である。
【0099】
参考形態
4の台車401によれば、昇降機構部20を備えていない場合でも、ワークWの積み込みの際に支持レール33aの傾斜構造を利用して該ワークWを上方に僅かに上昇させることができ、該ワークWを吊り下げ空間に容易に吊り下げることが可能になる。
その他、
参考形態
2と同様の作用効果を奏する。
【0100】
なお、
参考形態
4の特徴的な構造である傾斜構造を、上述の実施形態
1の台車101に適用することもできる。
【0101】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0102】
上述の実施形態では、レール部33が台車10
1の前後方向に延在する場合について例示したが、これに代えて、レール部33が左右方向や、前後方向及び左右方向の両方に交差する斜め方向などに延在するような構造を採用することもできる。
【0103】
上述の実施形態では、支持レール33aに2つのロックピン35,36を設ける場合について例示したが、必要に応じて、これら2つのロックピン35,36のうちの少なくとも一方を省略したり、別のロックピンを追加したりすることもできる。
【0104】
上述の実施形態では、ワークWに取付けられる取付け治具40の一部が支持レール33aへ導入される場合について例示したが、ワークW自体の一部が支持レール33aへ導入されるようにしてもよい。
【0105】
上述の実施形態では、取付け治具40の車輪43が支持レール33aへ導入される場合について例示したが、この取付け治具40に代えて、車輪43のように回転しない摺動部を有する取付け治具を採用することもできる。この取付け治具によれば、摺動部が支持レール33aへ導入されて摺動する。この場合、摺動部と支持レール33aとの間の摺動抵抗を抑えるために、摺動部と支持レール33aとの少なくとも一方に面粗度を小さく抑えるための加工を施すのが好ましい。
【0106】
上述の実施形態では、取付け治具40にハンドル44を設ける場合について例示したが、ワークW自体を直に操作することができる場合には、このハンドル44を省略することもできる。
【0107】
上述の実施形態では、所定数として4つのワークWを一度に運搬できる溝長さを有する支持レール33aについて例示したが、この支持レール33aの溝長さは適宜に変更可能である。この場合、一度に運搬できるワークWの数は1つであってもよいし、或いは複数であってもよい。
【0108】
上述の実施形態では、油圧ユニット24を用いてテーブル部31を垂直方向X1,X2に昇降させる場合について例示したが、この油圧ユニット24に代えて、電動モータ等のアクチュエータを用いることもできる。
【0109】
上記の実施形態では、ワークWとして金型用のガイドポストを運搬対象とする場合について例示したが、これに代えて、ガイドポスト以外のワークWを運搬対象にできることは勿論である。