特許第6981404号(P6981404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981404
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】偽造防止構造体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/328 20140101AFI20211202BHJP
   B42D 25/41 20140101ALI20211202BHJP
   B42D 25/36 20140101ALI20211202BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B42D25/328 120
   B42D25/41
   B42D25/36
   G02B5/18
【請求項の数】5
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-518342(P2018-518342)
(86)(22)【出願日】2017年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2017018608
(87)【国際公開番号】WO2017200030
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-101570(P2016-101570)
(32)【優先日】2016年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 静香
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−032724(JP,A)
【文献】 特開2010−131878(JP,A)
【文献】 特開2011−213065(JP,A)
【文献】 特開2001−096959(JP,A)
【文献】 米国特許第03894756(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00−25/485
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基材と、
前記表面に位置する素子構造体と、を備え、
前記素子構造体に対して、前記基材の位置する側とは反対側が観察側であり、
前記素子構造体は、
前記観察側に向けて所定の光を射出する光学素子層と、
所定の情報を含む情報部と、を備え、
前記情報部は、
光透過性を有する第1材料であって、レーザー光線の照射によって前記第1材料とは異なる光物性を有する第2材料に変わる特性を有した前記第1材料と、
前記情報を表現する前記第2材料と、を含み、
前記情報部は、複数の情報要素から構成され、
前記各情報要素は、当該情報要素の略全体に分散する前記第1材料と、当該情報要素の略全体に分散する前記第2材料と、を含むとともに、前記表面と対向する平面視において、前記情報の一部を表現する形状を有し、
前記光学素子層は、前記情報要素のなかの前記第1材料が前記第2材料に変わることによって変性した変性部を前記情報要素と接する部分に備え、かつ前記第1材料と前記第2材料とを含まず、
前記素子構造体は、前記基材の前記表面に位置する面とは反対側の面である表示面を有するとともに、前記表示面を介して、前記情報部の含む情報を表示するように構成されている
偽造防止構造体。
【請求項2】
前記光学素子層が、前記情報部を含む
請求項1に記載の偽造防止構造体。
【請求項3】
前記情報部は、前記第1材料と前記第2材料とを含む層状を有した情報層であり、
前記情報層は、前記表面と対向する平面視において前記光学素子層と重なっている
請求項1に記載の偽造防止構造体。
【請求項4】
前記情報は、第1情報であり、
前記基材は、
光透過性を有する第3材料であって、レーザー光線の照射によって所定の色を有する第4材料に変わる特性を有した前記第3材料と、
前記第1情報に関連付けられて前記第1情報とともに前記偽造防止構造体に固有の情報群を構成する第2情報を表現する前記第4材料と、を含む
請求項1からのいずれか一項に記載の偽造防止構造体。
【請求項5】
前記情報は、第1情報であり、
前記基材は、
光透過性を有する第3材料であって、レーザー光線の照射によって所定の色を有する第4材料に変わる特性を有した前記第3材料と、
前記第1情報を補完し、それによって前記第1情報とともに合成情報を構成する第2情報を表現する前記第4材料と、を含み、
前記表面と対向する平面視において、
前記第1情報を表現する前記第2材料の一部と、前記第2情報を表現する前記第2材料の一部とが連なっている
請求項1からのいずれか一項に記載の偽造防止構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートやID(Identification)カードなどの情報認証媒体には、情報認証媒体を用いた目視による個人の認証を可能にするために、認証の対象である個人の顔画像などの情報が含まれている。情報が付加される前の情報認証媒体は基材を備え、情報認証媒体に情報を付加する方法として、例えば、情報認証媒体の基材に対してレーザー光線を照射することによって、基材に情報を付加する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、情報認証媒体では、情報認証媒体の偽造を防ぐ目的で、光学可変素子(Optical Variable Device:OVD)が基材に付されている。OVDは、例えば、ホログラム、回折格子、および、多層膜であり、多層膜は、各膜から射出される光が他の残りの膜から射出される光と干渉するように構成されている。情報認証媒体では、こうした光学可変素子の真贋の判定が、情報認証媒体の真贋を判定するための1つの手段として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−123174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、情報認証媒体では、本物の情報認証媒体が備える基材からOVDが剥がされ、剥がされたOVDが偽物の情報を含む基材に対して付されることによって、情報認証媒体が偽造される場合がある。これにより、OVDに組み合わされた偽物の情報があたかも本物の情報であるように情報認証媒体が偽造される。そのため、こうした情報認証媒体においては、OVDと偽物の情報とが組み合わされることによる情報認証媒体の偽造を抑えることが望まれている。
【0006】
なお、情報認証媒体などの偽造防止構造体に対する偽造を抑えることは、OVDを備える情報認証媒体に限らず、偽造防止構造体の偽造を抑える目的で付されたOVD以外の他の光学素子、例えば、光を散乱する光学素子などであって、観察側に向けて所定の光を射出する光学素子を備える偽造防止構造体においても共通に望まれている。
本発明は、光学素子層と偽造防止構造体が含む情報との組み合わせによる偽造を難しくすることを可能とした偽造防止構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための偽造防止構造体は、表面を有する基材と、前記表面に位置する素子構造体と、を備える。前記素子構造体に対して、前記基材の位置する側とは反対側が観察側であり、前記素子構造体は、前記観察側に向けて所定の光を射出する光学素子層と、所定の情報を含む情報部と、を備える。前記情報部は、光透過性を有する第1材料であって、レーザー光線の照射によって前記第1材料とは異なる光物性を有する第2材料に変わる特性を有した前記第1材料と、前記情報を表現する前記第2材料と、を含む。前記素子構造体は、前記基材の前記表面に位置する面とは反対側の面である表示面を有するとともに、前記表示面を介して、前記情報部の含む情報を表示するように構成されている。
【0008】
上記構成によれば、光学素子層を含む素子構造体と情報を含む部分とが各別に基材上に位置する構成と比べて、光学素子層と情報部との分離が難しいため、素子構造体に対して真正の偽造防止構造体が有する情報とは異なる情報を付加することが難しい。そのため、光学素子層と偽造防止構造体が含む情報との組み合わせによる偽造を難しくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】偽造防止構造体を個人認証媒体として具体化した第1実施形態の断面構造を示す断面図。
図2】個人認証媒体の平面構造を示す平面図。
図3】個人認証媒体の製造に用いられる転写箔の一部断面構造を示す部分断面図。
図4】転写箔の一部断面構造を拡大して示す部分拡大断面図。
図5】個人認証媒体の製造方法において転写箔を基材に貼り付ける工程を示す工程図。
図6】個人認証媒体の製造方法において転写箔の支持層を取り除く工程を示す工程図。
図7】個人認証媒体の製造方法において被覆層と支持基材とを基材にラミネートする工程を示す工程図。
図8】積層体の平面構造を示す平面図。
図9】個人認証媒体の製造方法においてレーザー光線を照射する工程を示す工程図。
図10】個人認証媒体の一部断面構造を拡大して示す部分拡大断面図。
図11】個人認証媒体の作用を説明するための作用図。
図12】偽造防止構造体を個人認証媒体として具体化した第2実施形態の断面構造を示す断面図。
図13】個人認証媒体の平面構造を示す平面図。
図14図13のIV−IV線に沿う断面構造を示す断面図。
図15】偽造防止構造体を個人認証媒体として具体化した第3実施形態の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1から図11を参照して、偽造防止構造体を個人認証媒体として具体化した第1実施形態を説明する。以下では、個人認証媒体の構成、個人認証媒体の製造方法、個人認証媒体の作用、および、個人認証媒体に関わる詳細な構成を順番に説明する。
【0011】
[個人認証媒体の構成]
図1および図2を参照して、個人認証媒体の構成を説明する。
図1が示すように、個人認証媒体10は、基材11と素子構造体12とを備えている。基材11は、表面11Sを含み、素子構造体12は、表面11Sに位置している。素子構造体12は、表面11Sと対向する平面視において、表面11Sの一部を覆う大きさを有しているが、表面11Sの全体を覆う大きさを有してもよい。素子構造体12に対して、基材11の位置する側とは反対側が観察側である。
素子構造体12は、観察側に向けて所定の光を射出する光学素子層21と、所定の情報を含む情報部22と、を備えている。
【0012】
情報部22は、第1材料と第2材料とを含んでいる。第1材料は、無色または有色、かつ、光透過性である第1の光物性を有する。第1材料は、レーザー光線の照射によって第1材料から第1材料とは異なる光物性を有する第2材料に変わり、第2材料は、無色または有色である第2の光物性を有する。第2材料は、情報を表現する要素である。表面11Sと対向する平面視において、素子構造体12のうち、情報部22に対して基材11が位置する側とは反対側に位置する部分のなかで少なくとも情報部22と重なる部分は、光透過性を有している。すなわち、素子構造体12は、素子構造体12のなかで基材11の表面11Sに位置する面とは反対側の面である表示面を介して、情報部22の含む情報を表示するように構成されている。
【0013】
こうした個人認証媒体10によれば、光学素子層を含む素子構造体と情報を含む部分とが各別に基材上に位置する構成と比べて、光学素子層21と情報部22との分離が難しいため、素子構造体12に対して真正の個人認証媒体10が有する情報とは異なる情報を付加することが難しい。そのため、光学素子層21と個人認証媒体10が含む情報との組み合わせによる偽造を難しくすることができる。
【0014】
より詳しくは、素子構造体12は、剥離層23および接着層24をさらに備え、素子構造体12において、剥離層23、情報部22、光学素子層21、および、接着層24が、観察側からこの順に積み重なっている。剥離層23のうち、情報部22が位置する面とは反対側の面が上述した表示面である。なお、光学素子層21の一部は、素子構造体12の厚さ方向において、情報部22と同じ位置に位置している。
【0015】
接着層24は、素子構造体12を構成する接着層24以外の層を基材11に接着させる機能を有している。接着層24と基材11との間の接着強度は、素子構造体12を構成する各層間における接着強度よりも低い。
【0016】
情報部22の含む情報は、第1情報の一例である第1素子情報である。情報部22は、複数の情報要素22aから構成され、各情報要素22aは、剥離層23における情報部22が位置する面において、他の全ての情報要素22aから離れて位置している。
【0017】
各情報要素22aは、第1材料と第2材料とを含んでいる。各情報要素22aにおいて、第1材料は情報要素22aの略全体に分散し、第2材料も情報要素22aの略全体に分散している。第1材料は、情報要素22aに向けて照射されたレーザー光線を吸収し、それによって第2材料に変性する。第1材料は無色であって、かつ、光透過性を有し、第2材料は、所定の色、例えば黒色を有している。または、第1材料が有色であって、かつ、光透過性を有し、第2材料が無色であってもよい。
【0018】
さらに、第1材料が無色または有色であって、かつ、蛍光性を有し、第2材料も、無色または有色であって、かつ、蛍光性を有してもよい。こうした構成は、例えば、第1材料が、紫外線または赤外線により励起されることによって可視の蛍光を発し、第2材料が、紫外線または赤外線により励起されることによって、第1材料よりも弱い可視の蛍光を発するものであればよい。第1材料には、蛍光染料を含有させることができる。蛍光染料として、有機色素を用いることができる。蛍光染料として用いる有機色素としては、シアニン色素、クマリン色素、および、ローダミン色素などを用いることができる。なお、蛍光性を有する材料として、金属錯体を用いることができる。金属錯体として、キレート配位子を有する有機金属錯体を用いることができる。有機金属錯体が含む金属には、Al、Mg、およびZnを挙げることができる。
【0019】
光学素子層21は、例えばレリーフ型の回折格子層であり、レリーフ構造層21aと反射層21bとを備えている。レリーフ構造層21aは、情報部22に接する層であり、複数の情報部22の間を埋めている。レリーフ構造層21aは、情報部22に接する面とは反対側の面に、回折格子として機能するレリーフ面21aSを有している。レリーフ構造層21aは光透過性を有している。反射層21bは、レリーフ構造層21aのレリーフ面21aSを覆い、レリーフ面21aSにおける光の反射効率を高める機能を有している。
【0020】
剥離層23は、光透過性を有する層であり、素子構造体12のうちで、光学素子層21に対して基材11が位置する側とは反対側に位置する部分である。そのため、個人認証媒体10では、素子構造体12のうち、情報部22に対して基材11が位置する側とは反対側に位置する部分のうち、第2材料によって構成される部分を除く部分が、光透過性を有している。
【0021】
基材11は、第3材料と第4材料とを含み、第3材料は、光透過性を有するとともに、レーザー光線の照射によって第3材料から所定の色を有する第4材料に変わる特性を有している。第4材料は、第2情報の一例である第1基材情報を表現する要素である。基材11は、第1基材情報を含む第1基材情報部11aを備え、第1基材情報部11aは、第3材料と第4材料とを含んでいる。第1基材情報部11aにおいて、第3材料および第4材料の各々は、第1基材情報部11aの略全体に分散している。基材11のうち、第1基材情報部11a以外の部分は第3材料から構成され、光透過性を有している。基材11のうち、表面11Sとは反対側の面が裏面11Rである。
【0022】
個人認証媒体10は、支持基材13および被覆層14をさらに備えている。支持基材13は、基材11の裏面11Rに接することで基材11を機械的に支持する機能を有している。支持基材13は、光透過性を有してもよいし、光透過性を有しなくてもよい。
【0023】
被覆層14は、基材11の表面11Sのうち、素子構造体12によって覆われていない部分と、素子構造体12とを覆っている。被覆層14は、光透過性を有している。被覆層14と素子構造体12との間の接着強度は、素子構造体12を構成する各層間における接着強度よりも低い。
【0024】
そのため、個人認証媒体10の観察側から個人認証媒体10に光が入射すると、個人認証媒体10に入射した光は、被覆層14および剥離層23を透過して、光学素子層21に入射する。光学素子層21に入射した光は、レリーフ構造層21aのレリーフ面21aSにて反射され、光学素子層21から回折光として射出される。光学素子層21から射出された回折光は、剥離層23および被覆層14を透過して、個人認証媒体10の外部に射出される。
【0025】
図2は、基材11の表面11Sと対向する平面視における個人認証媒体10の平面構造を示している。なお、図2では、図示の便宜上、個人認証媒体10が備える被覆層14の図示と剥離層23の図示とが省略されている。また、素子構造体12には、素子構造体12から射出される回折光を模式的に示す便宜上、ドットが付されている。なお、先に参照した図1は、図2におけるI−I線に沿う断面構造を示している。
【0026】
図2が示すように、情報部22を構成する各情報要素22aは、表面11Sと対向する平面視において、第1素子情報の一部を表現する形状を有している。
【0027】
こうした構成では、情報部22の含む情報は、情報部22を構成する各情報要素22aの形状と、各情報要素22aに含まれる第2材料とによって表現されるため、第2材料のみによって情報が表現される構成と比べて、情報の形状がより鮮明になる。
【0028】
情報部22の含む情報は、例えば個人認証媒体10によって認証される個人に紐付けられたIDである。IDは「12345abc」であり、文字の一例であるアルファベットと数字とから構成されている。各情報要素22aは、情報の一部であって、1つのアルファベットを表現する形状、あるいは、1つの数字を表現する形状を有している。
【0029】
より詳しくは、情報部22は、8つの情報要素22aから構成され、各情報要素22aは、上述した「12345abc」のうち、他の全ての情報要素22aが表現する情報とは異なる情報を表現する形状を有している。
【0030】
第1基材情報部11aの含む第1基材情報は、情報部22の含む第1素子情報に関連付けられて、第1素子情報とともに個人認証媒体10に固有の情報群を構成している。
【0031】
このように、1つの個人認証媒体10が、第1素子情報と第1基材情報とから構成される固有の情報群を含んでいるため、個人認証媒体10において、例えば第1素子情報が改ざんされたときには、第1素子情報と第1基材情報との間の齟齬によって、第1素子情報が改ざんされたことが把握される。つまり、個人認証媒体10における情報が改ざんされたことが発覚しないように個人認証媒体10が含む情報を改ざんすることが難しくなる。
【0032】
第1基材情報部11aの含む第1基材情報は、情報部22の含む第1素子情報に関連付けられた情報の一例であって、第1素子情報と同じ情報である「12345abc」と、第1素子情報には含まれない情報である「Security ID.」とを含んでいる。
【0033】
ここで、互いに関連付けられた複数の要素は、1つのカテゴリーを構成し、第1素子情報と第1基材情報とは、1つのカテゴリーにおける複数の要素の中の1つの要素を互いに同じ表現で示している。
【0034】
カテゴリーは、例えば、国名、個人、地域、および、IDなどである。カテゴリーが国名であるとき、カテゴリーには、複数の要素として、例えば、日本、アメリカ、および、中国などが含まれる。カテゴリーが個人であるとき、カテゴリーには、複数の要素として互いに異なる複数の個人が含まれる。カテゴリーが地域であるとき、カテゴリーには、例えば、アジア、欧州、北アメリカ、南アメリカ、および、アフリカなどが含まれる。カテゴリーがIDであるとき、カテゴリーには、複数の要素として、例えば、上述したアルファベットなどの文字や数字の複数の組み合わせが含まれる。
【0035】
上述したように、個人認証媒体10において、第1素子情報および第1基材情報が含まれるカテゴリーはIDであり、第1素子情報および第1基材情報は、IDのうちの1つの要素である「12345abc」を同じ表現で示している。
【0036】
このように、第1素子情報と第1基材情報とが1つのカテゴリーに属する1つの要素を互いに同じ表現によって示しているため、第1素子情報あるいは第1基材情報が改ざんされたとき、第1素子情報と第1基材情報とのみから把握される情報間の齟齬によって、個人認証媒体10が改ざんされたことの把握が可能である。
【0037】
基材11は、第2基材情報を含む第2基材情報部11bを備えている。第2基材情報部11bは、表面11Sと対向する平面視において、基材11のうち、第1基材情報部11aが位置する部位とは異なる部位に位置している。第2基材情報部11bの一部は、表面11Sと対向する平面視において、素子構造体12と重なっている。
【0038】
第2基材情報部11bは、第2基材情報として個人認証媒体10によって認証される個人の上半身画像を含んでいる。なお、第2基材情報は、個人に紐付けられた画像であってもよいし、個人に紐付けられた文字情報であってもよい。また、第2基材情報は、個人に紐付けられた情報ではなく、複数の個人認証媒体において、互いに等しい情報であってもよい。
【0039】
[個人認証媒体の製造方法]
図3から図10を参照して、個人認証媒体の製造方法を説明する。
図3が示すように、個人認証媒体10を製造する際には、まず、素子構造体12を形成するための転写箔30を準備する。転写箔30は、支持層31、剥離層23、情報前駆部22p、光学素子層21、および、接着層24を備えている。
【0040】
転写箔30を製造する際には、まず、支持層31を準備し、支持層31が備える1つの面に剥離層23を形成する。剥離層23は樹脂製の層である。そして、剥離層23のうち、支持層31に接する面とは反対側の面に、複数の前駆要素22p1を形成し、これにより情報前駆部22pを形成する。
【0041】
情報前駆部22pは、剥離層23と同じく樹脂製であり、情報前駆部22pの形成材料である第1材料を含む塗液が、剥離層23のうち、支持層31に接する面とは反対側の面に塗布されることによって形成される。そのため、情報前駆部22pを形成するための塗液の一部が、剥離層23のうち、情報前駆部22pと接する面から剥離層23の内側に浸み込む。
【0042】
これにより、図4が示すように、剥離層23の1つの面上に位置する複数の前駆要素22p1が形成され、かつ、剥離層23の内部には、第1材料が分散した部分である分散部23aが形成される。剥離層23のうち、情報部22が位置する面と対向する方向から見て、各前駆要素22p1は、他の前駆要素22p1が重なる分散部23aとは異なる1つの分散部23aと重なっている。
【0043】
次いで、剥離層23のうち、情報前駆部22pが位置する面に、情報前駆部22pの全体を覆い、かつ、互いに隣り合う前駆要素22p1の間の隙間を埋めるようにレリーフ構造層21aの前駆層を形成する。前駆層は、前駆層のうち、剥離層23に接する面とは反対側の面が略平坦になり、かつ、前駆層に対するレリーフ構造の形成が、情報前駆部22pによって影響されない程度の厚さを有することが好ましい。
【0044】
なお、前駆層を形成する前に、互いに隣り合う前駆要素22p1の間の隙間を埋める厚さを有した中間層を形成してもよい。これにより、中間層を形成した分だけ、前駆層の厚さを薄くすることができる。
【0045】
前駆層のうち、剥離層23に接する面とは反対側の面をレリーフ面に加工し、これにより、レリーフ構造層21aを得る。そして、レリーフ構造層21aのレリーフ面21aSに反射層21bを形成し、反射層21bのうち、レリーフ構造層21aとは反対側の面に接着層24を形成する。
【0046】
図5が示すように、被転写体である基材11を準備し、基材11の表面11Sに、転写箔30が備える接着層24を接触させ、基材11に転写箔30を転写する。転写箔30は、アップダウン方式によるスポット転写によって基材11に転写されてもよいし、ロール転写方式によるストライプ転写によって基材11に転写されてもよい。
【0047】
アップダウン方式を用いて転写箔30を基材11に転写するときには、転写箔30の接着層24が基材11と対向する状態で、転写箔30を、基材11の表面11Sに重ねる。そして、加熱したホットスタンプを転写箔30の支持層31に押し当てる。これにより、接着層24のうち、表面11Sと対向する平面視において、ホットスタンプと重なる部分が軟化し、軟化した部分が基材11に接着する。
【0048】
図6が示すように、基材11に対する転写箔30の相対位置を、転写箔30の一部が接着したときの相対位置から変える。これにより、表面11Sと対向する平面視において、剥離層23のうち、接着層24の中で基材11に接着した部分と重なる部分が支持層31から剥がれ、結果として、転写箔30の一部が基材11に転写される。これにより、素子構造体12を有した基材11を得ることができる。
【0049】
図7が示すように、支持基材13と被覆層14とを準備し、素子構造体12を有した基材11を支持基材13と被覆層14との間に挟んだ状態で、支持基材13、基材11、および、被覆層14を互いに接着させる。これにより、支持基材13、基材11、素子構造体12、および、被覆層14から構成される積層体40を得ることができる。
【0050】
図8は、基材11の表面11Sと対向する方向から見た積層体40の平面構造を示している。図8では、図2と同様、素子構造体12には、素子構造体12から射出される回折光を模式的に示す便宜上、ドットが付されている。なお、先に参照した図7は、図8におけるII−II線に沿う断面構造を示している。
【0051】
図8が示すように、基材11の表面11Sと対向する平面視において、素子構造体12は、表面11Sの一部に位置している。情報前駆部22pは、基材11の表面11Sと対向する平面視において、光学素子層21の一部に位置している。情報前駆部22pを構成する各前駆要素22p1は、基材11の表面11Sと対向する平面視において、第1素子情報の一部を表現する形状を有している。
【0052】
なお、情報前駆部22pが表面11Sの一部に位置している構成では、基材11の表面11Sと対向する平面視において、素子構造体12のなかで情報前駆部22pが位置しない領域をレーザー光線LBが透過することで、基材11のうち、互いに隣り合う前駆要素22p1の間に第1基材情報部11aを形成することができる。
【0053】
図9が示すように、積層体40のうち、素子構造体12が備える情報前駆部22pと、基材11の一部とに、レーザー50を用いてレーザー光線LBを照射する。情報前駆部22pにレーザー光線LBを照射するときには、複数の前駆要素22p1を含む領域の全体にレーザー光線LBを照射する。これにより、各前駆要素22p1の形状に倣って各前駆要素22p1に個別にレーザー光線LBを照射する場合と比べて、各前駆要素22p1の全体に対してレーザー光線LBを照射することが可能になる。
【0054】
前駆要素22p1にレーザー光線LBを照射することで、所定の情報が情報要素22aとして記録される。また上述したように、基材11の表面11Sと対向する平面視において、基材11のなかで情報要素22aが位置しない領域には、第1基材情報部11aが形成されてもよい。この場合には、図1および図2を参照して先に説明した個人認証媒体10が、基材11のなかで、素子構造体12が位置する領域内に第1基材情報部11aを有する。
【0055】
図10が示すように、各前駆要素22p1にレーザー光線LBが照射されると、前駆要素22p1に含まれる第1材料の一部が第2材料に変性し、それによって、前駆要素22p1から情報要素22aが形成される。また、各前駆要素22p1にレーザー光線LBが照射されるときには、剥離層23の分散部23aにもレーザー光線LBが照射される。分散部23aも第1材料を含むため、分散部23aに含まれる第1材料の一部が第2材料に変性し、それによって、変性部23bが黒色を有する。
【0056】
さらには、レリーフ構造層21aのうち、情報要素22aと接する部分は、情報要素22aにおいて第1材料が第2材料に変性する反応によって、レリーフ構造層21aを形成する材料も少なからず変性する。そのため、レリーフ構造層21aのうち、各情報要素22aに接する部分には、変性部21a1であって、変色した部分、すなわち、レリーフ構造層21aのうちで変性部21a1以外の部分とは異なる色を有した部分が形成される。
【0057】
レリーフ構造層21aが変性部21a1を有することにより、例えば、レリーフ構造層21aから情報要素22aを剥がし、情報要素をレリーフ構造層21aに対して不正に加えることが可能であったとしても、レリーフ構造層21aと不可分な変性部21a1がレリーフ構造層21aには残存している。そのため、その変性部21a1に対応する情報要素22aが存在しないこと、または、変性部21a1と不正に加えられた情報要素との齟齬により、個人認証媒体10が改ざんされたことを検知することができる。
【0058】
基材11にレーザー光線LBが照射されると、基材11のうち、レーザー光線LBが照射された部分に第4材料を含む第1基材情報部11aが形成される。なお、基材11のうち、第1基材情報部11aが形成される部位とは異なる部位にレーザー光線LBが照射されることによって、第2基材情報部11bが形成される。
【0059】
[個人認証媒体の作用]
図11を参照して、個人認証媒体10の作用を説明する。
図11が示すように、個人認証媒体10の偽造者は、個人認証媒体10を偽造するために、基材11の表面11Sから被覆層14を剥がし、それによって、個人認証媒体10の内部から素子構造体12を取り出す。
【0060】
上述したように、素子構造体12は、光学素子層21に加えて、光学素子層21と分離し難い第1素子情報を含む情報部22を含んでいる。そのため、第1素子情報を含む情報部22が基材11に位置する構成と比べて、情報部22と光学素子層21とを分離することが難しい。それゆえに、光学素子層21に対して、第1素子情報とは異なる情報であって、第1素子情報を改ざんした情報を組み合わせることが難しく、結果として、光学素子層21と第1素子情報との組み合わせによる個人認証媒体10の偽造が難しくなる。
【0061】
また、取り出した素子構造体12を改ざんされた第1基材情報を有する偽物の基材に貼り付けたとしても、個人認証媒体10において、情報部22が含む第1素子情報と、基材11が含む第1基材情報とが個人認証媒体10に固有の情報群を形成しているため、第1素子情報と第1基材情報との齟齬によって、情報の改ざんが把握されやすい。そのため、上述した個人認証媒体10によれば、素子構造体12を偽物の基材に貼り付けることによる個人認証媒体10の偽造も難しくなる。
【0062】
[個人認証媒体に関わる詳細な構成]
個人認証媒体10に関わる詳細な構成、具体的には、個人認証媒体10を構成する各要素の形成材料、個人認証媒体10が含む第1素子情報および第1基材情報、および、レーザー50の種類をより詳しく説明する。
【0063】
[支持層]
支持層31は、転写箔30の形成に際して支持層31に与えられる熱に対する耐熱性と、転写箔30の形成に際して支持層31に与えられる力に耐え得る機械的な強度とを有していればよい。
【0064】
支持層31の形成材料は、例えば、合成樹脂、天然樹脂、紙、および、合成紙などであり、支持層31は、各形成材料から形成された層のうちの1つの層から構成される単層構造を有していてもよいし、2つ以上の層から構成される多層構造を有していてもよい。
【0065】
支持層31の形成材料が合成樹脂であるとき、形成材料は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、および、ポリビニルアルコールなどであればよい。
【0066】
支持層31の厚さは、支持層31の操作性および加工性の観点から、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0067】
[剥離層]
剥離層23は、光透過性を有し、かつ、転写箔30が熱転写されるときに剥離層23に与えられる熱圧、および、基材11に転写された素子構造体12とラミネートする際に剥離層23に与えられる熱圧に耐えることが可能であればよい。剥離層23は、例えば樹脂から形成され、剥離層23の形成材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、および、電子線硬化性樹脂などであればよい。
【0068】
熱可塑性樹脂として、耐熱性の樹脂を用いることが好ましい。剥離層23の形成材料が熱可塑性樹脂であるとき、形成材料には、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、環状ポリオレフィン共重合体、変性ノルボルネン系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、および、ニトロセルロース樹脂などが用いられる。剥離層23の厚さは、0.5μm以上5μm以下とすることができる。
【0069】
[情報部]
情報部22の形成材料は、近赤外吸収色素と硬化性樹脂とを含む。レーザー光線を照射される前の近赤外線吸収色素と硬化性樹脂とが、第1材料の一例である。近赤外線吸収色素は、近赤外領域、言い換えれば700nm以上2000nm以下の範囲に吸収特性を有する色素である。近赤外線吸収色素は、例えば、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、および、アゾ化合物などであればよい。
【0070】
なお、近赤外線吸収色素は、所定の波長を有した光を吸収し、吸収した光により化学結合が変化する作用、または、吸収した光を熱に変換する作用を有する。こうした作用により、近赤外線吸収色素は、情報部22を形成する第1材料が第2材料に変わり、それによって所定の光物性を有することができる。
【0071】
ちなみに、近赤外線吸収色素が吸収可能な光を射出することができるレーザーと、その発振波長は、例えば以下の通りである。すなわち、GaAlAs半導体レーザーは、635nm以上840nm以下の波長を有するレーザー光線を発振し、GaAs半導体レーザーは、840nmの波長を有するレーザー光線を発振する。InP半導体レーザーは、910nmの波長を有するレーザー光線を発振し、YAGレーザーは1064nmの波長を有するレーザー光線を発振する。
【0072】
硬化性樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、荷電粒子線硬化性樹脂、および、電子線硬化性樹脂などであればよい。硬化性樹脂は、光透過性および耐溶剤性を有していればよい。硬化性樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、および、ポリアミドイミドなどであればよい。なお、硬化性樹脂は、フェノール樹脂およびメラミン樹脂などであってもよく、硬化性樹脂は、これらの樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0073】
情報部22を形成する第1材料は、光学素子層21から射出された光を個人認証媒体10の観察者が視認できる程度に透過することが可能な透過性を有する。観察者が視認できる程度に透過することが可能な透過性とは、例えば透過率が50%以上であればよい。第1材料は、レーザー光線の照射によって第2材料に変わり、第2材料は、近赤外線吸収色素がレーザー光線の吸収によって変性した変性物と、近赤外線吸収色素の発した熱によって変性、例えば炭化した硬化性樹脂とを含む。これらのうち、近赤外線吸収色素と変性した硬化性樹脂とが上述した所定の色を有している。
【0074】
なお、こうした近赤外線吸収色素と硬化性樹脂とを含む形成材料として、例えば、東洋インキSCホールディングス(株)製のElbima Z117のようなレーザーマーキング用のインキを用いることができる(Elbimaは登録商標)。
【0075】
[光学素子層]
光学素子層21が含む光学素子は好ましくはOVDであり、OVDは、OVDの視認される方向が1つの方向から他の方向に変わったときに、OVDの再生する像が変わる光学素子である。OVDは、例えば、ホログラム、回折格子、多層膜、液晶層、および、機能性インク層である。液晶層としては、コレステリック液晶を用いることができ、機能性インクとしては、観察角度によって色が変化するパール顔料を用いることができる。
【0076】
このうち、ホログラムおよび回折格子の各々は、光の干渉縞を微細なレリーフパターンとして平面上に記録するレリーフ型であってもよいし、光学素子層21の厚さ方向に干渉縞を記録する体積型であってもよい。
【0077】
以下では、これらOVDのうち、レリーフ型回折格子を用いた場合における光学素子層21の形成方法と、多層膜を用いた場合における光学素子層21の形成方法とを順番に説明する。なお、レリーフ型ホログラムの形成方法は、以下に説明するレリーフ型回折格子の形成方法と共通である。
【0078】
[レリーフ型回折格子]
光学素子層21は、上述したように、微細なレリーフパターンを有したレリーフ面21aS、言い換えればレリーフ面を有するレリーフ構造層21aと、レリーフ構造層21aのうち、レリーフ面21aSを覆う反射層21bとを備えている。
【0079】
レリーフ型の回折格子を形成するときには、まず、光学的な投影方法によって、微細なレリーフパターンを有するレリーフ面21aSのマスター版を形成し、電気めっき法を用いてレリーフパターンを複製したパターンを有するニッケル製のプレス版を形成する。
【0080】
そして、剥離層23のうち、支持層31に接する面とは反対側の面に、レリーフ構造層21aを形成するための塗膜を形成し、塗膜に対してプレス版を押し当て、プレス版の押し当てられた塗膜を硬化させることによって、レリーフ面21aSを有したレリーフ構造層21aを形成する。
【0081】
次いで、レリーフ構造層21aのレリーフ面21aSの少なくとも一部に、レリーフ型回折格子における回折効率を高めるための反射層21bを形成する。
【0082】
レリーフ構造層21aは、プレス版を押し当てることによって、レリーフ面21aSを形成することが可能な層であればよく、レリーフ構造層21aの形成材料は、例えば、紫外線硬化性樹脂および電子線硬化性樹脂などであればよい。レリーフ構造層21aの形成材料は、例えば、エポキシ(メタ)アクリル、および、ウレタン(メタ)アクリレートなどであればよい。レリーフ構造層21aは、上述した各樹脂から形成される層のうち、1つの層のみから構成される単層構造を有してもよいし、2つ以上の層から構成される多層構造を有してもよい。
【0083】
なお、レリーフ構造層21aの形成材料は、上述した材料に限らず、レリーフ面21aSを有して、光学素子層21の視認される方向が1つの方向から他の方向に変わったときに、光学素子層21の再生する像が変わるように構成することが可能な材料であればよい。
【0084】
レリーフ構造層21aは、フォトポリマー法を用いて形成してもよく、フォトポリマー法を用いるとき、レリーフ構造層21aの形成材料は、エチレン性不飽和結合、または、エチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、および、ポリマーなどであればよい。
【0085】
モノマーは、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどである。オリゴマーは、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、および、ポリエステルアクリレートなどである。ポリマーは、例えば、ウレタン変性アクリル樹脂、および、エポキシ変性アクリル樹脂などである。
【0086】
エチレン性不飽和結合、または、エチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、および、ポリマーは、上述した材料のうち、2つ以上の材料を混合して用いてもよい。また、上述したモノマーなどに対して、予め架橋反応する反応基を持たせ、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋剤、有機ジルコニウム架橋剤、および、有機アルミネートなどを用いて、モノマーなど同士を互いに架橋することもできる。
【0087】
さらには、エチレン性不飽和結合、または、エチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、および、ポリマーと、他の樹脂とを混合して用いてもよい。この場合には、上述したモノマーなどに対して、予め架橋反応する反応基を持たせ、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋剤、有機ジルコニウム架橋剤、有機アルミネートなどを用いて、モノマーなどと、他の樹脂の骨格とを架橋することもできる。
【0088】
こうした方法によれば、エチレン性不飽和結合、または、エチレン性不飽和基を有するポリマーであって、常温において固体であり、かつ、タックが小さいために、レリーフ面21aSの成形性がよく、かつ、プレス版を汚しにくいポリマー得ることができる。
【0089】
レリーフ構造層21aの硬化に光カチオン重合を用いるときには、レリーフ構造層21aの形成材料は、例えば、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、および、ポリマー、オキセタン骨格含有化合物、および、ビニルエーテル類などであればよい。
【0090】
また、上述した樹脂のうち、電子線硬化性樹脂を紫外線などの光によって硬化させるときには、電子線硬化性樹脂に対して、光重合開始剤を添加すればよい。光重合開始剤には、光重合開始剤の添加される樹脂に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、および、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤の併用型、すなわち、ハイブリッド型のいずれかを用いることができる。光重合開始剤には、電子線硬化樹脂の硬化に用いる光源から照射される光の波長に応じた光を吸収する特性を有する光重合開始剤を選択することが好ましい。
【0091】
光ラジカル重合開始剤は、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、および、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾイン系化合物、アントラキノン、および、メチルアントラキノンなどのアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン、および、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、および、ミヒラーズケトンなどであればよい。
【0092】
光カチオン重合開始剤は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、および、混合配位子金属塩などであればよい。
【0093】
ハイブリッド型の光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤と、光カチオン重合開始剤とを混合した光重合開始剤であってもよいし、1つの光重合開始剤であって、光ラジカル重合と光カチオン重合との双方を開始させることができる光重合開始剤であってもよい。光ラジカル重合と光カチオン重合との双方を開始させることができる光重合開始剤は、例えば、芳香族ヨードニウム塩、および、芳香族スルホニウム塩などである。
【0094】
電子線硬化性樹脂に対する光重合開始剤の配合量は、電子線硬化性樹脂、および、光重合開始剤に応じて設定されればよいが、光重合開始剤は、電子線硬化性樹脂に対して、0.1質量%以上15質量%以下の割合で添加すればよい。
【0095】
なお、電子線硬化性樹脂と光重合開始剤とを含む混合物には、さらに、増感色素を添加してもよいし、必要に応じて染料、顔料、各種の添加剤、および、架橋剤などを添加してもよい。また、レリーフ構造層21aの成形性を高めるために、光重合反応に対して非反応性の樹脂を添加してもよい。
【0096】
各種の添加剤は、例えば、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、たれ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、および、窒素含有化合物などであり、架橋剤は、例えば、エポキシ樹脂などである。非反応性の樹脂は、上述した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などであればよい。レリーフ構造層21aの厚さは、1μm以上25μm以下とすることができる。
【0097】
反射層21bは、レリーフ構造層21aの有するレリーフ面21aSでの回折効率を高めるように構成された部分であり、レリーフ面21aSを形成する樹脂、すなわち高分子材料とは、屈折率の異なる材料で形成される。反射層21bの形成材料には、高屈折率材料や金属材料を用いることができる。高屈折率材料は、例えば、MgO2、TiO、Si、SiO、Fe、および、ZnSなどであれよい。金属材料は、例えば、Al、Ag、Sn、Cr、Ni、Cu、および、Auなどであればよい。反射層21bは、上述した各材料から形成された層のうち、1つの層のみから構成される単層構造を有してもよいし、2つ以上の層から構成される多層構造を有してもよい。
【0098】
反射層21bは、真空蒸着法、および、スパッタリング法などを用いて形成することができる。反射層21bの厚さは、反射層21bに求められる機能に応じて設定され、例えば、50Å以上10000Å以下程度である。
【0099】
反射層21bは、レリーフ構造層21aの備えるレリーフ面21aSの全体に形成されてもよいが、レリーフ面21aSの一部に形成されてもよい。反射層21bをレリーフ面21aSの一部に形成するときには、例えば、レリーフ面21aSのうち、反射層21bを形成しない部分に水溶性樹脂を含むインキを印刷し、次いで、反射層21bを形成するための膜をレリーフ面21aSの全体に形成する。そして、水溶性樹脂を洗浄することで、レリーフ面21aSに形成された膜のうち、光学素子層21の厚さ方向において、水溶性樹脂と重なる部分に形成された膜を除去することができる。
【0100】
また例えば、反射層21bをレリーフ面21aSの一部に形成するときには、レリーフ面21aSの全体に反射層21bを形成するための膜を形成し、膜の一部であって、レリーフ面21aSのうちで反射層21bを形成する部分にマスクを形成する。そして、反射層21bを形成するための膜を溶解するアルカリ性の薬品、または、酸性の薬品に膜を曝すことによって、反射層21bを形成するための膜の一部を溶解して除去する。なお、反射層21bを形成するための膜の一部を除去する方法には、例えば、レーザー除去法などの他の方法を用いてもよい。
【0101】
このように、レリーフ面21aSの一部に反射層21bを形成することによって、光学素子層21を備える個人認証媒体10が、反射層21bによって形成される所定の情報を含むため、個人認証媒体10の意匠性を高めることができる。
【0102】
また、接着層24の形成材料が、紫外線の照射や電子線の照射によって硬化する材料であり、かつ、反射層21bの形成材料が、紫外線および電子線をほぼ透過しない材料であるときには、レリーフ面21aSの一部に反射層21bを形成することによって以下の効果を得ることができる。
【0103】
すなわち、剥離層23から接着層24に向けて紫外線あるいは電子線を照射したときには、接着層24のうち、レリーフ面21aSと対向する平面視において、反射層21bと重なる部分には、紫外線あるいは電子線が照射されない一方で、反射層21bと重ならない部分には、紫外線あるいは電子線が照射される。
【0104】
そのため、接着層24のうち、紫外線あるいは電子線が照射された部分は硬化する一方で、紫外線あるいは電子線が照射されない部分は硬化しない。それゆえに、素子構造体12が基材11から剥がされるとき、接着層24のうちで硬化した部分は、基材11から剥がれにくい一方で、硬化していない部分は、基材11から剥がれやすい。結果として、素子構造体12が基材11から剥がされるとき、素子構造体12の一部が素子構造体12に加えられる力によって破壊されやすくなる。接着層24の厚さは、0.1μm以上10μm以下であればよい。
【0105】
[多層膜]
光学素子層21が、複数の薄膜から形成される多層膜であって、光学素子層21の視認される方向が変わることによって、光学素子層21の表示する像の色が変わる多層膜であるとき、光学素子層21は、以下に説明する構成である。
【0106】
光学素子層21は、互いに異なる光学特性を有した複数の層から構成された多層膜である。例えば、屈折率が1.5程度から2よりも小さい材料が低屈折率材料であり、屈折率が2以上である材料が高屈折率材料である。高屈折率材料で形成された層が高屈折率層であり、低屈折率材料で形成された層が低屈折率層である。
【0107】
多層膜は、低屈折率層と高屈折率層とを含む構成であるとき、例えば、2層以上の高屈折率層と、1層の低屈折率層とを有する構成とすることができる。多層膜が備える各層の形成材料は、例えば、以下の表1に示される材料である。
【0108】
【表1】
【0109】
なお、多層膜を構成する層の形成材料は、表1に示される材料の他に、例えば、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、および、Cuなどの金属の単体であってもよい。あるいは、各層の形成材料は、これら金属のうち、少なくとも2つを含む合金であってもよいし、Si、および、Siと上述した金属の群から選択される少なくとも1つの元素との組み合わせであってもよい。
【0110】
また、多層膜を構成する層の形成材料は、低屈折率を有する有機ポリマーであってもよく、有機ポリマーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフロロエチレン、ポリメチルメタアクリレート、および、ポリスチレンなどである。なお、ポリエチレンの屈折率は1.51であり、ポリプロピレンの屈折率は1.49であり、ポリテトラフロロエチレンの屈折率は1.35であり、ポリメチルメタアクリレートの屈折率は1.49であり、ポリスチレンの屈折率は1.60である。これら有機ポリマーで形成された層は、低屈折率層である。
【0111】
多層膜は、上述した高屈折率層、および、30%以上60%以下の光透過率を有する金属層から選択される少なくとも1層であって、所定の厚さを有した層と、低屈折率層から選択される少なくとも1層であって、所定の厚さを有した層とを交互に積層した構成を有してもよい。こうした構成の多層膜は、可視光のうちで所定の波長を有した光を吸収する特性、あるいは、反射する特性を有するように構成することができる。
【0112】
多層膜において、各層の形成材料は、屈折率、反射率、および、透過率などの光学特性、耐候性、および、層間密着性などに応じて、上述した材料から選択されればよい。
【0113】
多層膜が備える各層を形成する方法は、真空蒸着法、および、スパッタリング法などであってもよく、これらの方法によれば、各層において、厚さ、成膜速度、および、光学膜厚(光学膜厚=n・d、n:屈折率、d:膜厚)などを制御することができる。
【0114】
なお、情報部22が光学素子層21に対して観察側に位置していれば、光学素子層21は、光透過性を有してなくてもよい。
【0115】
[接着層]
接着層24は、支持層31、剥離層23、情報部22、および、光学素子層21から構成される構造体を基材11に固定するための層である。
【0116】
接着層24の形成材料は、感圧性の材料、すなわち、接着層24に対して圧力が加えられることによって、基材11に対する接着性を発現する樹脂であることが好ましい。接着層24の形成材料は、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、および、EVAなどの熱可塑性樹脂であればよい。
【0117】
接着層24は、例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、および、ロールコーターなどを用いて光学素子層21に形成されればよい。
これにより、個人認証媒体10の製造に用いられる転写箔30を得ることができる。
【0118】
[基材]
基材11は、レーザー光線の照射によって、照射前の色から照射前の色とは異なる照射後の色に変わるように構成されていればよく、すなわち、レーザー光線の照射によって第3材料から第4材料に変わる特性を備えるように構成されていればよい。基材11の形成材料は、無機系材料、金属系材料、有機系材料、および、高分子材料のいずれであってもよい。基材11の形成材料は、所定の強度以上のレーザー光線によって変性が開始する特性を有する、すなわち、形成材料の変性において、レーザー光線の強度における閾値を有するように構成されていることが好ましい。
【0119】
基材11の形成材料は、例えば、レーザーパルスエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーが所定のエネルギー以上であることによって炭化などが起こることにより、情報を含むことが可能な材料であってもよい。こうした材料は、例えば、ポリカーボネートを主成分とする材料、および、ポリエステルを主成分とする材料などである。すなわち、炭化前のこれらの材料が第3材料の一例であり、炭化後のこれらの材料が第4材料の一例である。
【0120】
また、基材11の形成材料は、例えば、黒色発色層やカラー発色層に用いられる混合物であって、レーザー光線の照射によって発色するように構成された混合物であってもよい。こうした混合物のうち、熱応答性マイクロカプセルを含む混合物は、熱応答性マイクロカプセルを含まない構成と比べて、基材11を発色させるために必要なエネルギーを低くすることができる点で好ましい。
【0121】
また、基材11の形成材料は、例えば、レーザー光線の照射によって変色する変色化合物と、感光性樹脂とを含む混合物であって、レーザー光線の照射によって発色するように構成された混合物であってもよい。感光性樹脂は、例えば、紫外線硬化性樹脂、および、電子線硬化性樹脂などである。こうした混合物においては、混合物が変色するレーザー光線の照射量における閾値を制御する上で、レーザー光線の照射によって変色化合物の改質を促す促進化合物を含むこと、あるいは、促進化合物を感光性樹脂の骨格に結合させることが好ましい。
【0122】
所定の波長を有するレーザー光線を吸収する特性を有した合成樹脂であって、合成樹脂そのものが、レーザー光線の照射によって第3材料から第4材料に変わる特性を有してもよい。あるいは、基材11の形成材料は、合成樹脂と合成樹脂の改質を促す無機材料との組み合わせであってもよい。この場合には、合成樹脂は、単独で第3材料から第4材料に変わる特性を有していなくてもよいし、有してもよい。
【0123】
また、基材11の形成材料は、例えば、透明樹脂と、光吸収材および感熱着色材の少なくとも一方とを含む混合物であってもよい。
【0124】
このように、基材11の形成材料が上述したいずれの場合であっても、基材11に対してレーザー光線が照射される前の材料であって、レーザー光線の照射によって変性し、かつ、所定の色を有する材料が第3材料であり、変性後の材料が第4材料である。
【0125】
基材11は、例えば、上述した基材11の形成材料を用いて形成されたフィルムであってもよい。また、基材11は、基材11の形成材料を溶液に溶解させた塗液、あるいは、液体に分散させた塗液を他の層の1つの面にウェットコーティングすることによって形成されてもよい。また、基材11は、真空蒸着やスパッタリング法などのドライコーティングを用いて、他の層の1つの面に形成されてもよい。基材11の厚さは、50μm以上400μm以下であることが好ましい。
【0126】
[支持基材]
支持基材13の形成材料は、個人認証媒体10が各種のカードであるときには、ポリカーボネート(PC)であることが好ましい。また、支持基材13の形成材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PETの中で非晶質性、すなわち、非結晶性を有するポリエステルであって熱可塑性を有するポリエステル(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、および、ABS樹脂などであることが好ましい。
【0127】
支持基材13は、上述した各樹脂から形成される層のうちいずれか1つの層から構成される単層構造を有してもよいし、2つ以上の層から構成される多層構造を有してもよい。支持基材13の厚さは、50μm以上400μm以下であることが好ましい。
【0128】
[被覆層]
被覆層14は、レーザー光線に対する透過性を有するように構成されていればよく、レーザー光線の一部を吸収する特性、反射する特性、または、散乱する特性を有してもよい。被覆層14において、可視光領域に含まれる光に対する透過率が、60%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましい。被覆層14の厚さは、50μm以上400μm以下であることが好ましい。
【0129】
被覆層14の形成材料は光透過性を有する樹脂を含む。光透過性を有する樹脂は、例えば、ポリカーボネート(PC)、植物由来ポリカーボネート(バイオPC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシロキサン1,4−ジメチルフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂(MABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロプレン(PP)、ポリエチレン(PE)、および、ポリアセタールなどであればよい。
【0130】
[第1素子情報および第1基材情報]
個人認証媒体10が含む第1素子情報および第1基材情報は、上述したIDに限らず、ID以外の情報であって、個人の認証に利用することが可能な他の個人認証情報であってよい。個人認証情報には、生体情報と非生体情報との少なくとも一方が含まれてよい。
【0131】
生体情報は、生体の特徴のうち認証される個人に特有の特徴であり、例えば、人相、指紋、および、静脈などの画像またはパターンである。非生体情報は、生体情報以外の個人情報であって、例えば、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属、および、身分などを含む。非生体個人情報は、タイピングによって形成された文字であってもよいし、所有者の手書きの署名であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0132】
[レーザーの種類]
上述したレーザー50は、例えば、COレーザーを含む遠赤外線レーザー、Nd:YAGレーザーおよびNd:YVOレーザーを含む近赤外線パルスレーザー、可視光のパルスレーザー、および、エキシマレーザーなどであればよい。また、レーザー50は、例えば、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第3高調波を用いた紫外線レーザー、半導体レーザー、フェムト秒レーザー、および、ピコ秒レーザーなどであってもよい。
【0133】
これらレーザーのうち、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第3高調波を用いたレーザーは、高解像度である点、および、レーザー光線の波長が紫外線領域に含まれるため、情報部22および基材11がレーザー光線に対して高い吸収率を有する点などの観点から好ましい。
【0134】
また、フェムト秒レーザー、および、ピコ秒レーザーなどの超短パルスレーザーは、レーザー光線が照射された情報部22および基材11を高温にしない状態で、情報部22および基材11を構成する分子の結合を切断することができる。そのため、情報部22および基材11に対して、ほぼ熱を与えない状態で、情報部22および基材11に対して情報を含ませることができる。
【0135】
また、YAGレーザー、および、半導体レーザーは、他のレーザーと比べて、小型の装置によって大きい熱エネルギーを発する装置とすることができる点、および、オンデマンドにて、情報部22および基材11に対して情報を含ませることができる点で好ましい。
【0136】
以上説明したように、偽造防止構造体の第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)光学素子層21と情報部22との分離が難しいため、素子構造体12に対して真正の個人認証媒体10が有する情報とは異なる情報を付加することが難しい。そのため、光学素子層21と個人認証媒体10が含む情報との組み合わせによる偽造を難しくすることができる。
【0137】
(2)情報部22の含む第1素子情報は、情報部22を構成する各情報要素22aの形状と、各情報要素22aに含まれる第2材料とによって表現されるため、第2材料のみによって情報が表現される構成と比べて、第1素子情報の形状がより鮮明になる。
【0138】
(3)1つの個人認証媒体10が、個人認証媒体10に固有の情報群を含んでいるため、個人認証媒体10において、例えば第1素子情報が改ざんされたときには、第1素子情報と第1基材情報との間の齟齬によって、第1素子情報が改ざんされたことが把握される。つまり、個人認証媒体10における情報が改ざんされたことが発覚しないように個人認証媒体10が含む情報を改ざんすることが難しくなる。
【0139】
[第1実施形態の変形例]
なお、上述した第1実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・第1素子情報および第1基材情報は、1つのカテゴリーに含まれる1つの要素を互いに異なる表現によって示してもよい。こうした構成であっても、第1素子情報と第1基材情報とは互いに関連付けられた情報群を構成することが可能であるため、上述した(3)と同様の効果を得ることはできる。
【0140】
例えば、個人認証媒体10において、第1素子情報および第1基材情報が含まれるカテゴリーが国名であるとき、第1素子情報および第1基材情報は、国名のうちの1つの要素である「日本」を互いに異なる表現で示してもよい。すなわち、第1素子情報は、文字列であって、「日本」の英語表記である「JAPAN」を表現し、第1基材情報は、各国名に固有の識別子によって、「日本」を示してもよい。
【0141】
また、第1素子情報および第1基材情報が「日本」を互いに異なる表現で示す場合には、第1素子情報および第1基材情報のいずれか一方が、「日本」を示す文字列であって、他方が、日本国の国旗を示す画像であってもよい。
【0142】
・第1素子情報と第1基材情報とのいずれか一方が、シリアルナンバーであって、数字および文字の少なくとも一方を含む文字あるいは文字列であり、他方が、各シリアルナンバーに対して紐付けられた情報であってもよい。
【0143】
こうした構成では、シリアルナンバーと、各シリアルナンバーに紐付けられた情報とを含む情報群に関するデータベースを用いることによって、第1素子情報と第1基材情報との組み合わせが真正であるか、あるいは、第1素子情報と第1基材情報とのいずれかが改ざんされているかを把握することができる。
【0144】
なお、シリアルナンバーに関連付けられた情報は、文字、数字、記号、図形、および、所定の画像などの少なくとも1つによって構成されていればよい。
【0145】
・第1素子情報と第1基材情報とのいずれか一方が、文字、数字、記号、図形、および、所定の画像などの少なくとも1つを含み、他方が、一方の情報に対して紐付けられた暗号であって、一方の情報が真正であることを示すための暗号であってもよい。暗号は、文字、数字、および、図形などの少なくとも1つによって構成することができる。
【0146】
こうした構成では、1つの情報と、各情報に紐付けられた暗号との組み合わせに関するデータベースを用いることによって、第1素子情報と第1基材情報との組み合わせが真正であるか、あるいは、第1素子情報と第1基材情報とのいずれかが改ざんされているかを把握することができる。
【0147】
・素子構造体12は、少なくとも光学素子層21と情報部22とを備えていればよい。例えば、光学素子層21を基材11の表面11Sに直に形成し、かつ、光学素子層21のうち、基材11の表面11Sに接する面とは反対側の面に情報部22を形成することが可能であれば、剥離層23と接着層24とを省略することができる。
【0148】
・光学素子層21は、上述したOVDに限らず、他の光学素子を含む層であってもよい。光学素子層は、例えば、光学素子層に入射した光を反射する素子、光学素子層に入射した光を散乱光として射出する素子、光学素子層に入射した入射光を入射光とは異なる色に変換して射出する素子などであってもよい。
【0149】
・情報部22は、光学素子層21に対して基材11が位置する側に位置してもよい。この場合には、光学素子層21が、レーザー光線を透過する特性を有していればよい。こうした構成であっても、素子構造体12が光学素子層21と情報部とを備える以上は、上述した(1)と同等の効果を得ることはできる。
【0150】
・個人認証媒体10として好ましい機械的な強度を基材11が有する場合には、例えば、支持基材13と基材11とによる機械的な強度と同等の効果を得られるだけの厚さを基材11が有していれば、支持基材13を省略してもよい。
【0151】
・個人認証媒体10は被覆層14を有していなくてもよく、こうした個人認証媒体10によっても上述した(1)と同等の効果を得ることができる。ただし、素子構造体12を個人認証媒体10の他の要素から分離することを難しくする上では、また、素子構造体12の損傷を抑える上では、個人認証媒体10は被覆層14を有することが好ましい。
【0152】
・剥離層23は分散部23aを有していなくてもよく、こうした構成であっても、素子構造体12が光学素子層21と情報部22とを備える以上は、上述した(1)と同等の効果を得ることはできる。
【0153】
・偽造防止構造体は、上述した個人認証媒体10に限らず、紙幣、および、商品券などの有価証券、美術品などの高級品などの一部として用いられてもよい。またあるいは、偽造防止構造体は、真正品であることが確認されるべき品物に取り付けられるタグであってもよいし、真正品であることが確認されるべき品物を収容する包装体、または、包装体の一部であってもよい。
【0154】
[第2実施形態]
図12から図14を参照して、偽造防止構造体を個人認証媒体として具体化した第2実施形態を説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、情報部の構成が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態と同じ符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。また、以下では、個人認証媒体の構成、および、実施例を順番に説明する。
【0155】
[個人認証媒体の構成]
図12から図14を参照して、個人認証媒体の構成を説明する。
図12が示すように、個人認証媒体60は、上述した個人認証媒体10と同様、基材11、支持基材13、および、被覆層14を備えている。個人認証媒体60は素子構造体61を備え、素子構造体61において、剥離層23、光学素子層71、および、接着層24がこの順に積み重なっている。
【0156】
個人認証媒体60では、光学素子層71が、情報部の一例である。より詳しくは、光学素子層71は、レリーフ構造層71aと反射層71bとを備え、レリーフ構造層71aは、上述した第1材料から構成される第1要素71a1と、第2材料を含む複数の第2要素71a2とを含んでいる。
【0157】
基材11の表面11Sと対向する平面視において、複数の第2要素71a2は第1素子情報を表現し、各第2要素71a2は、第1素子情報の一部を表現する形状を有している。各第2要素71a2は、第2材料と第1材料とを含むが、第2材料のみから構成されていてもよい。基材11の表面11Sと対向する平面視において、第1要素71a1は、互いに隣り合う第2要素71a2の間を埋めている。
【0158】
こうした個人認証媒体60では、光学素子層71と第1素子情報を含む情報部とを分離することが不可能であるため、個人認証媒体60の偽造をより難しくすることができる。
【0159】
素子構造体61において、第1材料は、上述した近赤外線吸収色素と硬化性樹脂とから構成されていればよく、また、第2材料は、近赤外線吸収色素の変性物と、硬化性樹脂の変性物とから構成されていればよい。
【0160】
図13は、基材11の表面11Sと対向する平面視における個人認証媒体60の平面構造を示している。なお、図13では、素子構造体61には、素子構造体61から射出される回折光を模式的に示す便宜上、ドットが付されている。また、図13では、説明の便宜上、被覆層14の図示と剥離層23の図示とが省略されている。なお、先に参照した図12は、図13におけるIII−III線に沿う断面構造を示している。
【0161】
図13が示すように、レリーフ構造層71aは、上述した第1素子情報に加えて、第1情報の一例である第2素子情報を含んでいる。
【0162】
また、基材11は、第3材料と第4材料とを含んでいる。第3材料は、光透過性を有するとともに、レーザー光線の照射によって第3材料から所定の色を有する第4材料に変わる特性を有している。第4材料は、第2情報の一例である第3基材情報を表現する要素であり、第3基材情報は、第2素子情報を補完し、それによって第2素子情報と第3基材情報とが1つの合成情報を構成している。基材11の表面11Sと対向する平面視において、第2素子情報を表現する第2材料の一部と、第3基材情報を表現する第4材料の一部とが連なっている。
【0163】
個人認証媒体60の含む合成情報が素子構造体61と基材11とに跨っている。そのため、第2素子情報を含む素子構造体61を偽物の基材に貼り付けることによって合成情報を個人認証媒体に含ませるためには、偽物の基材が含む第3基材情報に対する第2素子情報との位置の精度を真正の個人認証媒体60と同程度に高めなければならない。それゆえに、個人認証媒体60の偽造を難しくすることができる。
【0164】
より詳しくは、基材11の表面11Sと対向する平面視において、レリーフ構造層71aは、第2要素71a2とは異なる位置に第3要素71a3を含んでいる。第3要素71a3は、第2要素71a2と同様、少なくとも第2材料を含んでいればよく、例えば第1材料と第2材料とを含んでいるが、第2材料のみから構成されてもよい。第3要素71a3は、基材11の表面11Sと対向する平面視において、第2素子情報を表現する形状を有している。
【0165】
基材11の表面11Sと対向する平面視において、基材11は、第1基材情報部11aとは異なる部分に、第3基材情報部11cを含んでいる。第3基材情報部11cは、少なくとも第4材料を含んでいればよく、例えば第3材料と第4材料とを含んでいるが、第4材料のみから構成されてもよい。第3基材情報部11cは、基材11の表面11Sと対向する平面視において、第3基材情報を表現する形状を有している。
【0166】
合成情報は、個人認証媒体60の所有者の上半身像である。素子構造体61の第3要素71a3は、上半身像の一部を表現し、基材11の第3基材情報部11cは、上半身像の残りの部分を表現している。
【0167】
図14が示すように、レリーフ構造層71aは、第3要素71a3を含み、第3要素71a3の一部は、レリーフ構造層71aの外縁を含んでいる。基材11は、第3基材情報部11cを含み、第3基材情報部11cの一部は、素子構造体61の厚さ方向において、レリーフ構造層71aの外縁と重なっている。言い換えれば、上述したように、基材11の表面11Sと対向する平面視において、レリーフ構造層71aの第3要素71a3と、基材11の第3基材情報部11cとが、互いに連なっている。
【0168】
[実施例]
25μmの厚さを有し、かつ、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを支持層として準備し、支持層の1つの面に下記の組成を有する剥離層用インキを塗布した。そして、120℃にて45秒間にわたって塗液を乾燥させ、1μmの厚さを有する剥離層を形成した。
【0169】
次いで、下記の組成を有するレリーフ構造層用インキを塗布し、120℃にて45秒間にわたって塗液を乾燥させ、3μmの厚さを有する前駆層を剥離層の上に形成した。その後、前駆層のうち、剥離層に接する面とは反対側の面に、ロールエンボス法を用いてレリーフパターンを有するレリーフ面を形成した。これにより、光学素子層のレリーフ構造層を得た。
【0170】
真空蒸着法によって、反射層として1000Åの厚さを有する硫化亜鉛層をレリーフ面の上に形成した。次いで、下記の組成を有する接着層用インキを、乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布して接着層を形成した。これにより、素子構造体を形成するための転写箔を得た。
【0171】
[剥離層用インキ]
ポリアミドイミド系樹脂 40部
ジメチルアセトアミド 30部
テトラヒドロフラン 30部
【0172】
[レリーフ構造層用インキ]
レーザー発色インキ(Elbima Z117) 22部
UV硬化型アクリル樹脂 75部
イルガキュア184 3部
【0173】
[接着層用インキ]
ポリウレタン樹脂 30部
メチルエチルケトン 70部
【0174】
素子構造体を100μmの厚さを有する基材(Bayer社製、Makrofol ID4-4 laserable)(Makrofolは登録商標)に対して、ホットスタンプを用いて転写した。このとき、ホットスタンプのうち、転写箔に接する面である版面の温度を131℃に設定し、ホットスタンプが転写箔を基材に向けて押し付ける圧力を1.2tに設定した。そして、転写箔から支持層を剥離した。
【0175】
400μmの厚さを有する支持基材と、125μmの厚さを有する被覆層(Bayer社製、Makrofol ID6-2_000000)を準備し、支持基材と被覆層との間に素子構造体を有した基材を挟んでラミネートした。これらの層をラミネートするときには、油圧成型機において、温度を190℃に設定し、圧力を100kgf/cmに設定した状態で3分間ラミネートし、次いで、温度を25℃に設定し、圧力を100kgf/cmに設定した状態で3分間ラミネートした。これにより、積層体を得た。
【0176】
YVO4レーザー(Keyence(株)製、MD−V9600A)を用いて積層体にレーザー光線を照射し、第1素子情報、第1基材情報、および、合成情報を含む個人認証媒体を得た。
【0177】
基材から被覆層を剥がすことによって個人認証媒体から素子構造体を取り出しても、素子構造体が含む光学素子層と、レリーフ構造層の第2要素とを分離することが不可能であった。そのため、素子構造体に対して、レリーフ構造層の第2要素が表現する第1情報以外の情報を付加することができなかった。それゆえに、実施例の個人認証媒体によれば、個人認証媒体の偽造が難しいことが認められた。
【0178】
以上説明したように、偽造防止構造体の第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(4)光学素子層71と情報部とを分離することが不可能であるため、個人認証媒体60の偽造をより難しくすることができる。
【0179】
(5)個人認証媒体60の含む合成情報が素子構造体61と基材11とに跨るため、第2素子情報を含む素子構造体61を偽物の基材に貼り付けることによって合成情報を個人認証媒体に含ませるためには、偽物の基材が含む第3基材情報に対する第2素子情報との位置の精度を真正の個人認証媒体60と同程度に高めなければならない。それゆえに、個人認証媒体60の偽造を難しくすることができる。
【0180】
[第2実施形態の変形例]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・レリーフ構造層71aの一部に情報部が含まれていてもよい。すなわち、レリーフ構造層71aの一部が第1材料と第2材料とから形成される一方で、それ以外の部分は、第1材料とは異なる材料であって、レーザー光線の照射前の状態と、レーザー光線の照射後の状態とで異ならない特性を有した材料で形成されていてもよい。レリーフ構造層71aが情報部を含む以上は、上述した(4)と同等の効果を得ることはできる。
【0181】
・光学素子層71はレリーフ型の回折格子層に限らず、他の光学素子を含む層であってもよい。こうした構成であっても、光学素子層が情報部を含んでいれば、上述した(4)と同等の効果を得ることはできる。
【0182】
・合成情報は、上半身像に限らず、例えば、上述した生体情報のうちの少なくとも1つであってもよいし、非生体情報のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0183】
[第3実施形態]
図15を参照して、偽造防止構造体を個人認証媒体として具体化した第3実施形態を説明する。第3実施形態は、第2実施形態と比べて、情報部の構成が異なる。そのため、以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第2実施形態と共通する構成には、第2実施形態と同じ符号を付すことによって、その詳しい説明を省略する。
【0184】
[個人認証媒体の構成]
図15を参照して、個人認証媒体の構成を説明する。
図15が示すように、個人認証媒体80は、上述した個人認証媒体60と同様、基材11、支持基材13、および、被覆層14を備えている。個人認証媒体80は素子構造体81を備え、素子構造体81において、剥離層23、情報層91、光学素子層92、および、接着層24がこの順に積み重なっている。光学素子層92は、レリーフ構造層92aと反射層92bとを備えている。
【0185】
個人認証媒体80において、第1素子情報を含む情報部は、第1材料と第2材料とを含む層状を有した情報層91である。情報層91は、光学素子層92に対して基材11の位置する側とは反対側に位置するとともに、基材11の表面11Sと対向する平面視において光学素子層92と重なっている。
【0186】
情報層91は、上述した第1材料から構成される第1要素91aと、第2材料を含む複数の第2要素91bとを含んでいる。基材11の表面11Sと対向する平面視において、各第2要素91bは、第1素子情報の一部を表現する形状を有している。各第2要素91bは、第2材料と第1材料とを含むが、第2材料のみから構成されていてもよい。基材11の表面11Sと対向する平面視において、第1要素91aは、互いに隣り合う第2要素91bの間を埋めている。
【0187】
光学素子層92が情報部を含む場合には、情報部は、光学素子層92の形成や光学素子層92の機能を損なわない材料で形成されることが必要になる。この点で、個人認証媒体80の素子構造体81によれば、情報層91が光学素子層92とは異なる層であるため、情報層91を構成する材料の自由度が高まる。
【0188】
以上説明したように、偽造防止構造体の第3実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(6)情報層91が光学素子層92と異なる層であるため、情報層91を構成する材料の自由度が高まる。
【0189】
[第3実施形態の変形例]
なお、上述した第3実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・剥離層23が情報層の一例であってもよい。すなわち、剥離層23が、上述した第1材料から構成される第1要素と、第2材料を含む複数の第2要素とを含んでもよい。そして、各第2要素が、基材11の表面11Sと対向する平面視において、第1素子情報の一部を表現する形状を有してもよい。こうした構成であっても、情報層の一例である剥離層23と光学素子層92とが互いに異なる層であるため、上述した(6)と同等の効果を得ることはできる。
【0190】
・接着層24が情報層の一例であってもよい。すなわち、接着層が、上述した第1材料から構成される第1要素と、第2材料を含む複数の第2要素とを含んでもよい。そして、各第2要素が、基材11の表面11Sと対向する平面視において、第1素子情報の一部を表現する形状を有してもよい。この場合には、光学素子層92が、レーザー光線を透過する特性を有していればよい。こうした構成であっても、情報層の一例である接着層24と光学素子層92とが互いに異なる層であるため、上述した(6)と同等の効果を得ることはできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15