特許第6981413号(P6981413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981413
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】無線通信装置および無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/08 20090101AFI20211202BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20211202BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20211202BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20211202BHJP
   H04W 52/18 20090101ALI20211202BHJP
【FI】
   H04W48/08
   H04W84/12
   H04W74/08
   H04W24/10
   H04W52/18
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-528419(P2018-528419)
(86)(22)【出願日】2017年5月22日
(86)【国際出願番号】JP2017019058
(87)【国際公開番号】WO2018016167
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2020年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-141125(P2016-141125)
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠介
(72)【発明者】
【氏名】森岡 裕一
【審査官】 田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−081360(JP,A)
【文献】 特開2007−142722(JP,A)
【文献】 特開2008−131209(JP,A)
【文献】 特開2010−124058(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/104855(WO,A1)
【文献】 特表2017−526245(JP,A)
【文献】 特表2015−534418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
前記無線通信装置と通信する第1の無線通信装置との間の伝送路で観測される受信電力情報を取得する取得部と、
取得される前記受信電力情報に基づいて決定される、キャリアセンスの態様が特定される第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを送信する無線通信部と、を備え、
前記無線通信部は、前記第1の無線通信装置から、前記第1の通信パラメタ情報に基づき決定されたキャリアセンス閾値を用いたキャリアセンスにより送信される、前記送信許可に係るフレームに応じたフレームを受信する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記受信電力情報は、前記無線通信部により前記第1の無線通信装置から受信される受信電力通知フレームから取得される、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記受信電力情報は、前記無線通信部によって前記送信許可に係るフレームに応じたフレームが受信されない場合には、前記送信許可に係るフレームに格納された前記第1の通信パラメタ情報に基づき推定され、
前記取得部は、推定された前記受信電力情報を取得する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第1の通信パラメタ情報は、キャリアセンスの有無が特定される情報を含む、
請求項1〜のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記送信許可に係るフレームにより許可が示される通信は、多元接続通信を含む、
請求項1〜のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記多元接続通信の対象は、前記受信電力情報から決定される目標受信電力情報に基づいて決定される、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記送信許可に係るフレームには、前記第1の通信パラメタ情報と種類が異なる第2の通信パラメタ情報が格納される、
請求項5または6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記第2の通信パラメタ情報は、前記第1の通信パラメタ情報に応じて決定される変調方式または符号化に係る情報を含む、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記無線通信部は、前記送信許可に係るフレームに応じたフレームが受信されない場合、キャリアセンス結果要求フレームを送信する、
請求項1〜のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記無線通信部は、前記キャリアセンス結果要求フレームに対応するキャリアセンス結果通知フレームを受信し、
前記第1の通信パラメタ情報は、前記キャリアセンス結果通知フレームに基づいて決定される、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記キャリアセンス結果通知フレームには、前記キャリアセンスの閾値を示す情報が格納される、
請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
プロセッサを用いて、
第2の無線通信装置と通信する第1の無線通信装置との間の伝送路で観測される受信電力情報を取得することと、
取得される前記受信電力情報に基づいて決定される、キャリアセンスの態様が特定される第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを送信することと、
前記第1の無線通信装置から、前記第1の通信パラメタ情報に基づき決定されたキャリアセンス閾値を用いたキャリアセンスにより送信される、前記送信許可に係るフレームに応じたフレームを受信すること、
を含む無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11に代表される無線LAN(Local Area Network)の普及が進んでいる。また、それに伴って無線LAN対応製品(以下、無線通信装置とも称する。)も増加している。これに対し、通信に利用可能な無線通信リソースには限りがある。そのため、無線通信装置間の通信の効率化が望まれる。
【0003】
通信の効率化のための技術の一例として、通信可能範囲を制御する技術がある。例えば、特許文献1には、信号検出能力を制御することにより受信可能範囲を制御し、送信電力を制御することにより送信可能範囲を制御する無線通信装置が開示されている。当該無線通信装置は、自身の有するトラフィック量に応じて送信可能範囲を設定し、設定された送信可能範囲に応じて受信可能範囲を設定する。これにより、メディアへのアクセスの公平性を確保することができ、結果として通信が効率化されると考えられている。
【0004】
また、通信の効率化のための技術の別の例として、多元接続通信技術がある。例えば、多元接続通信技術としては、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)またはMIMO(Multi Input Multi Output)を利用したSDMA(Space Division Multiple Access)などがある。MIMOを利用したSDMAはマルチユーザMIMO(以下、MU(Multi User)−MIMOとも称する。)と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、多元接続通信においてさらなる通信の効率化が求められている。例えば、従来の多元接続通信では、多元接続通信においてフレームを送信する装置に対して、当該フレームの送信に用いられる通信パラメタ(例えば、送信電力または変調方式)が指定される。そのため、特許文献1で開示される技術のように送信可能範囲の変更に応じて受信可能範囲を変更することができない。その結果、送信が許可されても他の装置からの信号が受信されるSTA100−1は、フレームを送信することができず、当該STA100−1に割当てられた無線通信リソースが活用されない。仮に受信可能範囲が送信可能範囲と独立して変更されるとすると、上述したメディアすなわち伝送路へのアクセスについての公平性が失われかねない。また、通信衝突が頻発し、通信の効率が低下しかねない。
【0007】
そこで、本開示では、通信の衝突を回避しながら無線通信リソースを有効に活用することが可能な仕組みを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、無線通信装置であって、前記無線通信装置と通信する第1の無線通信装置について観測される伝送路における受信電力情報を取得する取得部と、取得される前記受信電力情報に基づいて決定される、キャリアセンスの態様が特定される第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを送信する無線通信部と、を備える無線通信装置が提供される。
【0009】
本開示によれば、無線通信装置であって、前記無線通信装置について観測される周波数帯域における受信電力情報が格納される受信電力通知フレームを送信し、前記受信電力通知フレームの送信後に、第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを受信する無線通信部と、前記第1の通信パラメタ情報に基づいて前記送信許可に係るフレームにより送信が許可されるフレームの送信についてのキャリアセンスを制御する制御部と、を備える無線通信装置が提供される。
【0010】
また、本開示によれば、プロセッサを用いて、第2の無線通信装置と通信する第1の無線通信装置について観測される伝送路における受信電力情報を取得することと、取得される前記受信電力情報に基づいて決定される、キャリアセンスの態様が特定される第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを送信することと、を含む無線通信方法が提供される。
【0011】
また、本開示によれば、プロセッサを用いて、第1の無線通信装置について観測される周波数帯域における受信電力情報が格納される受信電力通知フレームを送信し、前記受信電力通知フレームの送信後に、第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを受信することと、前記第1の通信パラメタ情報に基づいて前記送信許可に係るフレームにより送信が許可されるフレームの送信についてのキャリアセンスを制御することと、を含む無線通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本開示によれば、通信の衝突を回避しながら無線通信リソースを有効に活用することが可能な仕組みが提供される。なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の各実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】本開示の各実施形態に係るSTAおよびAPの機能構成の例を概略的に示すブロック図である。
図3】本開示の第1の実施形態に係る干渉電力情報が格納される干渉電力通知フレームの情報エレメントの構成例を示す図である。
図4】同実施形態に係るAPにおけるUL通信パラメタの決定処理の例を説明するための図である。
図5】同実施形態に係るSTAにおいてキャリアセンス閾値の決定処理の例を説明するための図である。
図6】同実施形態に係る無線通信システムの処理の例を概念的に示すシーケンス図である。
図7】同実施形態に係るSTAにおける干渉電力測定処理の例を概念的に示すフローチャートである。
図8】同実施形態に係るAPにおけるUL通信パラメタ情報の通知処理の例を概念的に示すフローチャートである。
図9】同実施形態に係るSTAにおけるキャリアセンスを用いたフレーム送信処理の例を概念的に示すフローチャートである。
図10】本開示の第2の実施形態に係るキャリアセンス結果通知フレームの情報エレメントの構成例を示す図である。
図11】同実施形態に係るAPにおけるUL通信パラメタの決定処理の例を説明するための図である。
図12】同実施形態に係る無線通信システムの処理の例を概念的に示すシーケンス図である。
図13】同実施形態に係るAPにおけるUL通信パラメタ情報の通知処理の例を概念的に示すフローチャートである。
図14】同実施形態に係るSTAにおけるキャリアセンスを用いたフレーム送信処理の例を概念的に示すフローチャートである。
図15】スマートフォンの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図16】カーナビゲーション装置の概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図17】無線アクセスポイントの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する複数の要素を、同一の符号の後に異なる番号を付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能を有する複数の要素を、必要に応じてSTA100AおよびSTA100Bなどのように区別する。ただし、実質的に同一の機能を有する要素を区別する必要が無い場合、同一符号のみを付する。例えば、STA100AおよびSTA100Bを特に区別する必要がない場合には、単にSTA100と称する。
【0016】
また、説明の便宜上、第1および第2の実施形態に係るSTA100を、STA100−1およびSTA100−2のように、末尾に実施形態に対応する番号を付することにより区別する。
【0017】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.はじめに
2.システムおよび装置の構成
3.第1の実施形態
3.1.装置の機能
3.2.処理の流れ
3.3.第1の実施形態のまとめ
4.第2の実施形態
4.1.装置の機能
4.2.処理の流れ
4.3.第2の実施形態のまとめ
4.4.変形例
5.応用例
6.むすび
【0018】
<1.はじめに>
まず、本開示の各実施形態に係る無線通信装置に関連する技術について説明する。当該技術としては、上述したOFDMAまたはMU−MIMOなどの多元接続技術を利用したアップリンクマルチユーザ(以下、UL−MUとも称する。)通信に係る技術がある。UL−MU通信では、基地局からUL−MU通信を許可する端末へトリガフレームが送信される。当該トリガフレームには、UL−MU通信において用いられるUL通信パラメタ(例えば、送信電力、周波数チャネル、変調方式など)が格納され、トリガフレームを受信した端末は、当該UL通信パラメタを用いてフレームを送信する。
【0019】
フレームを送信する際、端末はキャリアセンスを実行する。例えば、端末は、フレームの送信前に、伝送路の状態がアイドル状態(空いている状態)であるかビジー状態(使用されている状態)であるかを干渉電力レベルの検出により判定する。干渉電力レベルがキャリアセンス閾値以下である(すなわち伝送路の状態がアイドル状態である)場合、端末は、トリガフレームにより通知された送信期間においてフレームを送信することができる。これにより、フレームの衝突を回避することができる。
【0020】
他方で、近年では、キャリアセンス閾値を制御する技術が検討されている。具体的には、動的検出閾値制御(DSC:Dynamic Sensitivity Control)といった技術が提案されている。当該技術では、例えば、送信電力制御(TPC:Transmission Power Control)により送信電力が下げ(上げ)られると、DSCによりキャリアセンス閾値が上げ(下げ)られる。これにより、メディアへのアクセスの公平性が確保されると共に、通信の衝突を回避することができ、結果として通信が効率化されると考えられている。
【0021】
しかし、DSCといったキャリアセンス閾値を制御する技術をUL−MU通信に対して適用することは困難である。例えば、UL−MU通信に対してDSCがそのまま適用された場合、UL−MU通信において用いられるUL通信パラメタとして送信電力または変調方式が基地局から指定されるため、ULフレームを送信する端末はDSCを用いてキャリアセンス閾値を変更することができないおそれがある。従って、例えばキャリアセンス閾値を上げることができないときは、伝送路の状態がビジー状態であると判定されやすくなり、トリガフレームを受信してもULフレームを送信することができなくなる。その結果、端末の送信機会が減少し、通信効率が低下しかねない。変調方式をデータレートが相対的に低い変調方式へ変更してでも送信機会を獲得することが望ましいこともある。また、送信電力に関わらずキャリアセンス閾値のみが変更されると、メディアへのアクセスの公平性が保てなくなるばかりか通信の衝突を回避することもできなくなる。
【0022】
なお、トリガフレームを用いて指定されたUL通信パラメタを用いずにフレームを送信することも考えられる。しかし、この場合、例えば、基地局とUL−MU通信を行う端末の各々が独自に決定した送信電力を用いてフレームを送信すると、基地局で受信されるフレームについての受信電力にばらつきが生じ、受信電力のダイナミックレンジが大きくなる。その結果、基地局の受信処理に負荷が生じ、受信性能が低下しかねない。そのため、端末から送信されるフレームについての受信電力の差が各端末について所定の範囲内に収まるような送信電力でフレームが端末から送信されることが望ましい。
【0023】
そこで、本開示では、通信の衝突を回避しながら無線通信リソースを有効に活用することが可能な無線通信システムおよび当該無線通信システムを実現するための無線通信装置を提案する。
【0024】
<2.システムおよび装置の構成>
次に、本開示の各実施形態に係る無線通信システムおよび無線通信装置の構成について説明する。まず、図1を参照して、当該無線通信システムの構成について説明する。図1は、本開示の各実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【0025】
図1に示したように、無線通信システムは、無線通信装置としてAP200および複数のSTA100を備える。例えば、AP200およびSTA100A〜100Dの各々は互いに通信が可能であり、通信接続を確立した後、通信する。接続が確立されたAP200およびSTA100のグループは、例えばBSS(Basic Service Set)に相当する。なお、図示していないが、図1に示したようなBSSと隣接するBSS(以下、隣接BSSとも称する。)が存在し、隣接BSSに属するSTAから送信される信号は当該BSSの干渉信号となり得る。また、当該BSSの周囲には、無線LAN通信システム以外の通信システムまたは通信以外を目的として電波を発信する装置が設置され得る。当該通信システムまたは装置から送信される電波も干渉電波となり得る。
【0026】
続いて、図2を参照して、STA100およびAP200の機能構成および基本機能について説明する。図2は、本開示の各実施形態に係るSTA100およびAP200の機能構成の例を概略的に示すブロック図である。なお、STA100およびAP200の機能構成は実質的に同一であるため、ここではSTA100についてのみ説明する。
【0027】
図2に示したように、STA100は、データ処理部110、無線通信部120、制御部130および記憶部140を備える。
【0028】
データ処理部110は、取得部の一部として、データに対して送受信のための処理を行う。具体的には、データ処理部110は、通信上位層からのデータに基づいてフレームを生成し、生成されるフレームを無線通信部120に提供する。例えば、データ処理部110は、データからフレーム(またはパケット)を生成し、生成されるフレームにメディアアクセス制御(MAC:Media Access Control)のためのMACヘッダの付加および誤り検出符号の付加等の処理を行う。また、データ処理部110は、受信されるフレームからデータを抽出し、抽出されるデータを通信上位層に提供する。例えば、データ処理部110は、受信されるフレームについて、MACヘッダの解析、符号誤りの検出および訂正、ならびにリオーダ処理等を行うことによりデータを取得する。
【0029】
無線通信部120は、フレームについて変復調等の信号処理およびアンテナを介した信号の送受信を行う。具体的には、無線通信部120は、データ処理部110から提供されるフレームについて、PHY(Physical Layer)ヘッダを付加し、制御部130によって設定されるコーディングおよび変調方式等に従って、エンコード、インタリーブおよび変調を行うことによりシンボルストリームを生成する。次いで、無線通信部120は、得られたシンボルストリームに係る信号を、アナログ信号に変換し、増幅し、フィルタリングし、および周波数アップコンバートする。そして、無線通信部120は、アンテナを介して処理された信号を送信する。また、無線通信部120は、アンテナを介して得られる信号について、信号送信の際と逆の処理、例えば周波数ダウンコンバートおよびデジタル信号変換等を行うことによりシンボルストリームを得る。そして、無線通信部120は、得られたシンボルストリームについて、復調およびデコード等を行うことによりフレームを取得し、取得されるフレームをデータ処理部110または制御部130に提供する。なお、無線通信部120においてPHYヘッダの解析処理が行われてもよい。
【0030】
制御部130は、STA100の通信を全体的に制御する。具体的には、制御部130は、各機能間の情報の受け渡し、UL通信パラメタの設定、およびデータ処理部110におけるフレーム(またはパケット)のスケジューリング等の処理を行う。特に、無線通信装置がAP200である場合、制御部230は、UL−MU通信に係るUL通信パラメタおよびUL−MU通信グループの決定などを行う。
【0031】
記憶部140は、データ処理部110または制御部130の処理に用いられる情報を記憶する。具体的には、記憶部140は、フレームに格納される情報、フレームから取得された情報およびUL通信パラメタの情報等を記憶する。
【0032】
<3.第1の実施形態>
次に、本開示の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、STA100−1から通知される干渉電力情報に基づいて、STA100−1におけるUL−MU通信のためのキャリアセンスの態様が決定される。
【0033】
<3.1.装置の機能>
まず、本実施形態に係る無線通信装置としてのSTA100−1およびAP200−1の各機能について説明する。
【0034】
(干渉電力の測定)
STA100−1は、伝送路における自身が受信すべき信号に対する干渉として扱われる電波(以下、干渉電波とも称する。)の受信電力(以下、干渉電力とも称する。)を観測する。具体的には、無線通信部120は、自身のSTA100−1が属する無線通信ネットワークのグループに属する他の無線通信装置以外の装置から送信される干渉電波について受信電力を観測する。より具体的には、無線通信部120は、電波または信号の受信処理を利用して、受信された電波について干渉電波であるかを判定し、干渉電波であると判定された電波の受信電力を干渉電力として測定する。
【0035】
例えば、制御部130は、無線通信部120による干渉電力の観測の開始および停止を制御する。無線通信部120は、電波が受信されると受信電力のレベル(以下、受信レベルとも称する。)を測定する。また、無線通信部120は、電波が受信されると信号の検出を試みる。詳細には、無線通信部120は、PHYヘッダの検出を試みる。PHYヘッダが検出されると、無線通信部120は、さらに受信信号が自身のSTA100−1の属するBSS(以下、自BSSとも称する。)宛てであるかを判定する。PHYヘッダが検出されない場合または受信信号が自BSS宛てでない場合、無線通信部120は、受信された電波を干渉電波であると判定し、観測された受信レベルを干渉電力情報として記憶部140に記憶させる。なお、受信信号が自BSS宛てであると判定されると、無線通信部120は、PHYヘッダの後続を受信する。
【0036】
ここで、従来では、STAにおいて観測される信号雑音に関する情報がAPへ通知される技術があった。例えば、IEEE802.11規格では、STAが信号雑音の程度(以下、雑音レベルとも称する。)を所定の期間観測し、観測値に基づくヒストグラムデータをAPへ通知することが規定されている。
【0037】
しかし、当該技術では、雑音レベルを観測するSTAの属するBSSに属する他のSTAまたはAPが電波を発射していない状態で観測が行われなければならない。言い換えると、観測期間においては、当該他のSTAまたはAPの電波の発射すなわち通信が停止させられる。そのため、観測期間が長くなると、通信の停止期間も長くなり、無線通信システム全体の通信性能が低下しかねない。他方で、観測期間が短くなると、干渉電力の長期的な変動を把握することができず、干渉電力情報を利用した処理(例えば、後述するキャリアセンス態様の決定処理)の正確性または精度が低下しかねない。
【0038】
これに対し、本実施形態に係るSTA100−1では、上述したような電波または信号の受信処理を利用した干渉電力の測定が行われることにより、通信が停止されることなく干渉電力を観測することができる。
【0039】
なお、干渉電力情報は、観測値または観測値が加工された情報であってよい。例えば、干渉電力情報は、干渉電力値のほか、干渉電力値に基づくヒストグラムデータ、最大値、平均値または累積値のような統計的情報であってよい。
【0040】
また、無線通信部120は、干渉電力情報をリセットしてもよい。例えば、無線通信部120は、干渉電力情報がAP200−1へ通知される度に干渉電力情報をリセットしてもよく、所定の時間経過毎に干渉電力情報をリセットしてもよい。
【0041】
(干渉電力情報の通知)
STA100−1は、観測により得られる干渉電力情報をAP200−1へ通知する。具体的には、制御部130は、所定の時間経過毎に、無線通信部120により得られる干渉電力情報が格納されるフレーム(以下、干渉電力通知フレームとも称する。)をデータ処理部110に生成させ、生成された干渉電力通知フレームを無線通信部120に送信させる。図3を参照して、干渉電力通知フレームの構成要素について説明する。図3は、本実施形態に係る干渉電力情報が格納される干渉電力通知フレームの情報エレメントの構成例を示す図である。
【0042】
干渉電力通知フレームは、干渉電力情報が格納される情報エレメントを有する。例えば、当該情報エレメントは、既存のメジャメントレポートに基づく情報エレメントである。図3に示したように、当該情報エレメントは、Element ID(Identifier)、Length、Measurement Token、Measurement Report Mode、Measurement TypeおよびMeasurement Reportといったフィールドを有する。また、Measurement Reportは、Channel Number、Measurement Start TimeおよびMeasurement Durationに加えて、Interference Powerといったフィールドを有する。Interference Powerフィールドに干渉電力情報が格納される。例えば、干渉電力情報が格納される場合、Measurement Typeフィールドに、例えばビットが追加されることなどにより干渉電力情報を通知するメジャメントレポートである旨を示す情報が格納される。
【0043】
なお、干渉電力通知フレームは、干渉電力情報の通信以外の目的で通信されるフレームであってもよい。例えば、干渉電力通知フレームは、干渉電力情報が格納されたULデータフレームであってもよく、干渉電力情報の伝送専用のフレームであってもよい。
【0044】
(干渉電力情報に基づくUL通信パラメタの決定)
AP200−1は、干渉電力情報に基づいてSTA100−1のUL通信パラメタ情報を決定する。具体的には、制御部230は、受信される干渉電力通知フレームに格納される干渉電力情報に基づいて、第1の通信パラメタ情報としてのSTA100−1におけるキャリアセンス閾値が特定される情報を決定する。例えば、制御部230は、STA100−1から通知された干渉電力情報とキャリアセンス閾値との比較に基づいて送信電力情報を決定し、決定される送信電力情報からAP200−1がSTA100−1から受信する信号についての目標受信レベルを決定する。図4を参照して、UL通信パラメタの決定処理について具体的に説明する。図4は、本実施形態に係るAP200−1におけるUL通信パラメタの決定処理の例を説明するための図である。
【0045】
制御部230は、通知される干渉電力情報の示す干渉電力レベルと標準キャリアセンス閾値との差からSTA100−1の最大送信電力の変更値を決定する。標準キャリアセンス閾値は、上述したDSCが行われない場合のキャリアセンス閾値である。例えば、STA100−1における標準キャリアセンス閾値が−62dBmであり、最大送信電力が15dBmである場合を考える。この場合、図4の例では、STA100−1A、100−1Cおよび100−1Dについては干渉電力レベルが標準キャリアセンス閾値を超えているため、制御部230は、干渉電力レベルから標準キャリアセンス閾値を引くことにより最大送信電力の減少量を算出する。そして、制御部230は、算出された値を最大送信電力値から差し引くことにより最大送信電力を決定する。STA100−1Aの例では、干渉電力レベルが−59dBmであるため、最大送信電力は3dB低い12dBmに決定される。なお、送信電力が5dB単位で設定される場合には、STA100−1Aの最大送信電力は10dBmに決定される。同様に、STA100−1Cの最大送信電力は10dBm、STA100−1Dの最大送信電力は5dBmに決定される。
【0046】
次に、制御部230は、変更後の最大送信電力と推定される伝搬損失との差から目標受信レベルを決定する。例えば、制御部230は、決定されたSTA100−1の最大送信電力から伝搬損失を差し引いた値を目標受信レベルに決定する。STA100−1Aの例では、最大送信電力10dBmから伝搬損失80dBを差し引くことにより得られる−70dBmが目標受信レベルに決定される。なお、伝搬損失は、これまでにAP200−1において受信された信号についての送信電力と受信電力との差から算出されてもよく、外部の装置から通知されてもよい。
【0047】
なお、制御部230は、第1の通信パラメタ情報として、キャリアセンス閾値が特定される情報を決定する代わりに、キャリアセンスの有無が特定される情報を決定してもよい。具体的には、制御部230は、干渉電力情報とキャリアセンス閾値との比較に基づいてキャリアセンスの有無を決定する。例えば、制御部230は、干渉電力情報の示す干渉電力が標準キャリアセンス閾値よりも低い場合、キャリアセンスを実行しない旨が決定され、その旨を示す情報が後述するトリガフレームに格納されてよい。
【0048】
さらに、制御部230は、干渉電力情報に基づいて、第2の通信パラメタ情報としての他の種類のUL通信パラメタ情報を決定する。具体的には、制御部230は、干渉電力情報から決定される目標受信レベルに応じて変調方式または符号化に係る情報を決定する。例えば、制御部230は、目標受信レベルの高さに応じたデータレートまたは冗長性を有するMCS(Modulation and Coding Set)を決定する。STA100−1Aの例では、目標受信レベルがSTA100−1Bの−65dBmよりも低い−70dBmであるため、変調方式はSTA100−1BのMCS6よりもデータレートが低い(すなわち冗長性が高い)MCS4に決定される。なお、変調方式および符号化率は、他の方法に基づいて決定されてもよい。例えば、MCSは、AP200−1の受信環境(例えば雑音レベル)に基づいて決定されてもよい。
【0049】
なお、制御部230は、干渉電力情報が周波数毎に通知される場合には、周波数毎の干渉電力情報に基づいて通信周波数を決定する。例えば、図4に示したような情報が周波数毎に収集されまたは決定され、制御部230は、これらの情報のうちの一部または全部の情報に基づいてSTA100−1に使用させる周波数を決定する。
【0050】
また、AP200−1は、干渉電力情報が通知される度にUL通信パラメタを決定してもよく、干渉電力情報の通知回数が所定の回数に達する度にUL通信パラメタを決定してもよい。例えば、制御部230は、複数の干渉電力情報の平均値などを用いて、目標受信レベルなどのUL通信パラメタを決定してもよい。また、ヒストグラム形式の干渉電力情報が通知される場合、標準キャリアセンス閾値を超える電力範囲(単位データ)のカウント数またはカウントの頻度などに基づいてUL通信パラメタの変更有無が決定されてもよい。
【0051】
(干渉電力情報に基づく多元接続通信グループの決定)
AP200−1は、干渉電力情報に基づいて多元接続通信グループを決定する。具体的には、制御部230は、干渉電力情報から決定される目標受信レベルに基づいてUL−MU通信グループを決定する。例えば、制御部230は、図4に示したような目標受信レベルが同一であるSTA100−1を同じUL−MU通信グループのメンバとして決定する。図4の例では、STA100−1Bおよび100−1Cの目標受信レベルが−65dBmで同一であるため、STA100−1Bおよび100−1CはグループIDが「1」であるUL−MU通信グループのメンバとして決定される。同様に、STA100−1Aおよび100−1Dの目標受信レベルが−70dBmで同一であるため、STA100−1Aおよび100−1DはグループIDが「2」であるUL−MU通信グループのメンバとして決定される。
【0052】
なお、上記では目標受信レベルが同一であるSTA100−1が同一のUL−MU通信グループのメンバに決定される例を説明したが、目標受信レベルの差が所定の範囲内に収まるSTA100−1が同一のUL−MU通信グループのメンバに決定されてもよい。また、STA100−1にバッファされているトラフィックの種類または量などがUL−MU通信グループの決定に際して考慮されてもよい。
【0053】
(送信許可の通知)
AP200−1は、STA100−1へ送信許可を通知する。具体的には、制御部230は、決定されたUL通信パラメタ情報が格納される、多元接続通信についての送信許可に係るフレームをデータ処理部210に生成させ、生成される送信許可に係るフレームを無線通信部220に送信させる。例えば、制御部230は、目標受信レベル、MCS、通信周波数を示す情報が格納される、UL−MU通信グループ宛てのトリガフレームをデータ処理部210に生成させ、生成されるトリガフレームを無線通信部220に送信させる。
【0054】
なお、UL通信パラメタ情報は、トリガフレーム以外のフレームを用いてSTA100−1へ通知されてもよい。例えば、UL通信パラメタ情報は、UL−MU通信グループを通知するグループ通知フレームに格納されてもよく、他の通信目的のDLフレームに格納されてもよい。また、多元接続は、周波数分割多元接続、直交周波数分割多元接続、空間分割多元接続、符号分割多元接続または時分割多元接続であってよい。
【0055】
(キャリアセンス)
STA100−1は、通知される送信許可に基づいてキャリアセンスを制御する。具体的には、制御部130は、送信許可に係るフレームに格納されるUL通信パラメタ情報に基づいて、送信許可フレームにより送信が許可されるフレームについてのキャリアセンスを制御する。例えば、制御部130は、受信されるトリガフレームに格納される目標受信レベルに基づいてキャリアセンス閾値を決定する。図5を参照して、キャリアセンス閾値の決定処理について説明する。図5は、本実施形態に係るSTA100−1においてキャリアセンス閾値の決定処理の例を説明するための図である。
【0056】
まず、制御部130は、受信されたトリガフレームに格納される目標受信レベルと伝搬損失とに基づいて設定送信電力を決定する。例えば、STA100−1Bの例では、通知される目標受信レベルが−70dBmであるため、−65dBmに伝搬損失80dBを加算することにより得られる15dBmがSTA100−1Aの設定送信電力として決定する。同様に、STA100−Cでは10dBmが、STA100−1Aでは10dBmが、STA100−1Dでは5dBmが設定送信電力として決定される。
【0057】
次に、制御部130は、設定送信電力に基づいてキャリアセンス閾値を決定する。具体的には、制御部130は、最大送信電力と設定送信電力との差に基づいてキャリアセンス閾値を決定する。例えば、制御部130は、最大送信電力と設定送信電力との差を算出し、算出される値を標準キャリアセンス閾値に加算することにより得られる値を設定キャリアセンス閾値として決定する。STA100−1Cの例では、設定送信電力は10dBmであるため、最大送信電力との差は5dBである。そのため、設定キャリアセンス閾値は、標準キャリアセンス閾値−62dBmに差5dBを加算することにより得られる値−57dBmに決定される。同様に、STA100−1Bでは−62dBm、STA100−1Aでは−57dBm、STA100−1Dでは−52dBmが設定キャリアセンス閾値として決定される。
【0058】
そして、制御部130は、送信許可に係るフレームにより指定される送信期間の到来に合わせて、設定キャリアセンス閾値を用いてキャリアセンスを実行する。図5の例では、STA100−1A〜100−1Dの全てにおいて、干渉電力レベルが設定キャリアセンス閾値を下回るため、伝送路の状態がアイドル状態であると判定される。なお、標準キャリアセンス閾値を用いてキャリアセンスが行われる場合は、STA100−1B以外のSTA100−1では、干渉電力レベルが標準キャリアセンス閾値を上回るため、伝送路の状態がビジー状態であると判定され、後述するフレームの送信が行われない。
【0059】
(多元接続通信)
STA100−1は、キャリアセンス結果に基づいてフレームを送信する。具体的には、制御部130は、キャリアセンスにより伝送路の状態がアイドル状態であると判定されると、送信許可に係るフレームにより通知されたUL通信パラメタ情報を用いてULフレームをデータ処理部110に生成させ、生成されるフレームを無線通信部120に送信させる。例えば、制御部130は、トリガフレームにより通知される変調方式および通信周波数をUL通信パラメタとして設定し、決定された設定送信電力で無線通信部120にULフレームを送信させる。このようにして、UL−MU通信グループのメンバとしてトリガフレームを受信した複数のSTA100−1がULフレームを同時に送信することにより、当該複数のSTA100−1から送信されるULフレームが多重化される。
【0060】
AP200−1は、トリガフレームに応じて送信される多重化されたULフレームを受信する。具体的には、無線通信部220は、トリガフレームの送信後に受信される多重化フレームから各ULフレームを分離し、分離されたULフレームについてデータ処理部210により受信処理が行われる。そして、受信処理により得られるデータが通信上位層または制御部230などへ提供される。
【0061】
<3.2.処理の流れ>
次に、図6を参照して、本実施形態に係る無線通信システムの処理の流れについて説明する。図6は、本実施形態に係る無線通信システムの処理の例を概念的に示すシーケンス図である。
【0062】
STA100−1A〜100−1Dは、それぞれ定期的に干渉電力を測定する(ステップS301)。そして、STA100−1A〜100−1Dは、測定により得られる干渉電力情報をAP200−1へそれぞれ通知する(ステップS302)。なお、干渉電力情報が格納される干渉電力通知フレームは多重化されてもよい。
【0063】
干渉電力情報を受信したAP200−1は、干渉電力情報に基づいてキャリアセンス閾値が特定されるUL通信パラメタ情報を決定する(ステップS303)。また、AP200−1は、干渉電力情報に基づいてUL多元接続通信グループを決定する(ステップS304)。そして、AP200−1は、UL通信パラメタ情報が格納された送信許可フレームをUL多元接続グループのメンバであるSTA100−1A〜100−1Dへ送信する。
【0064】
送信許可フレームを受信したSTA100−1A〜100−1Dは、それぞれキャリアセンス閾値を設定する(ステップS306)。次に、STA100−1A〜100−1Dは、設定されたキャリアセンス閾値を用いてそれぞれキャリアセンスを実行する(ステップS307)。そして、STA100−1A〜100−1Dは、キャリアセンス結果に基づいてULフレームをAP200−1へ送信する。STA100−1A〜100−Dから送信されるULフレームは、結果として多重化される。
【0065】
続いて、本実施形態に係るSTA100−1およびAP200−1の処理について個別に説明する。
【0066】
(STAの干渉電力測定処理)
まず、図7を参照して、STA100−1における干渉電力測定処理について説明する。図7は、本実施形態に係るSTA100−1における干渉電力測定処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0067】
STA100−1は、受信処理を開始する(ステップS401)。具体的には、制御部130は、無線通信部120に電波または信号の受信処理を開始させる。
【0068】
次に、STA100−1は、受信レベルを測定する(ステップS402)。具体的には、無線通信部120は、電波の受信が検出されると、検出された電波の受信レベルを測定する。
【0069】
また、STA100−1は、PHYヘッダが検出されたかを判定する(ステップS403)。具体的には、無線通信部120は、受信される電波にPHYヘッダが載せられているかを判定する。言い換えると、無線通信部120は、受信される電波が無線LAN通信信号であるかを判定する。
【0070】
PHYヘッダが検出されたと判定されると(ステップS403/YES)、STA100−1は、受信信号が自BSS宛ての信号であるかを判定する(ステップS404)。具体的には、無線通信部120は、PHYヘッダに格納されるBSS情報の示すBSSが自BSSであるかを判定する。例えば、BSS情報は、BSS ColorなどのBSSの識別子であってよい。なお、BSS情報は、AP200−1の識別子であってもよい。
【0071】
受信信号が自BSS宛ての信号であると判定されると(ステップS404/YES)、STA100−1は、信号の受信を継続する(ステップS405)。具体的には、無線通信部120は、PHYヘッダの後続(例えばMPDU)を受信する。すなわち、無線通信部120は、フレームの全体を受信する。
【0072】
他方で、PHYヘッダが検出されない場合(ステップS403/NO)または受信信号が自BSS宛ての信号でない場合(ステップS404/NO)、STA100−1は、受信された電波を干渉電波と判定し、当該電波についての受信レベルに基づいて干渉電力情報を更新する(ステップS406)。具体的には、無線通信部120は、測定された受信レベルを干渉電力情報として制御部130を介して記憶部140に記憶させる。なお、無線通信部120は、当該測定された受信レベルが干渉電力情報として既に記憶されている受信レベルを超過する場合、記憶される干渉電力情報を当該測定された受信レベルの値を用いて更新してもよい。
【0073】
次に、STA100−1は、干渉電力がキャリアセンス閾値未満であるかを判定する(ステップS407)。具体的には、制御部130は、測定された干渉電力(すなわち受信レベル)が設定キャリアセンス閾値未満であるかを判定する。
【0074】
干渉電力がキャリアセンス閾値未満であると判定されると(ステップS407/YES)、STA100−1は、伝送路の状態をアイドル状態に設定する(ステップS408)。具体的には、制御部130は、伝送路が空いているとして、伝送路の状態をアイドル状態に設定する。
【0075】
他方で、干渉電力がキャリアセンス閾値以上であると判定されると(ステップS407/NO)、STA100−1は、伝送路の状態をビジー状態に設定する(ステップS409)。具体的には、制御部130は、伝送路が使用中であるとして、伝送路の状態をビジー状態に設定する。
【0076】
(APにおけるUL通信パラメタ情報の通知処理)
続いて、図8を参照して、AP200−1におけるUL通信パラメタ情報の通知処理について説明する。図8は、本実施形態に係るAP200−1におけるUL通信パラメタ情報の通知処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0077】
AP200−1は、干渉電力情報を取得する(ステップS501)。具体的には、制御部230は、STA100−1から受信される干渉電力通知フレームに格納される干渉電力情報または加工された干渉電力情報を取得する。
【0078】
次に、AP200−1は、干渉電力が標準キャリアセンス閾値よりも大きいかを判定する(ステップS502)。具体的には、制御部230は、取得された干渉電力情報の示す干渉電力が標準キャリアセンス閾値よりも大きいかを判定する。
【0079】
干渉電力が標準キャリアセンス閾値よりも大きいと判定されると(ステップS502/YES)、AP200−1は、STA100−1の最大送信電力を決定する(ステップS503)。具体的には、制御部230は、干渉電力情報の示す干渉電力と標準キャリアセンス閾値との差からSTA100−1の最大送信電力を変更する。
【0080】
次に、AP200−1は、干渉電力情報に基づいてUL通信パラメタ情報を決定する(ステップS504)。具体的には、制御部230は、変更された最大送信電力と伝搬損失とから目標受信レベルを決定する。また、決定された目標受信レベルに基づいてMCSが決定される。
【0081】
次に、AP200−1は、干渉電力情報に基づく目標受信レベルからUL多元接続通信グループを決定する(ステップS505)。具体的には、制御部230は、決定された目標受信レベルが同一の範囲に収まるSTA100−1を同一のUL−MU通信グループのメンバに決定する。
【0082】
次に、AP200−1は、UL通信パラメタが格納される送信許可フレームをUL多元接続通信グループのメンバへ送信する(ステップS506)。具体的には、制御部230は、目標受信レベル、MCS、通信周波数などのUL通信パラメタ情報が格納され、UL−MU通信グループ宛てのトリガフレームをデータ処理部210に生成させ、生成されるトリガフレームを無線通信部220に送信させる。
【0083】
(STAのキャリアセンスを用いたフレーム送信処理)
続いて、図9を参照して、STA100−1におけるキャリアセンスを用いたULフレーム送信処理について説明する。図9は、本実施形態に係るSTA100−1におけるキャリアセンスを用いたULフレーム送信処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0084】
STA100−1は、送信許可フレームが受信されたかを判定する(ステップS601)。具体的には、制御部130は、AP200−1からトリガフレームが受信されたかを判定する。
【0085】
送信許可フレームが受信されたと判定されると(ステップS601/YES)、STA100−1は、目標受信レベルから送信電力を決定する(ステップS602)。具体的には、制御部130は、受信されたトリガフレームに格納される目標受信レベルと伝搬損失とから設定送信電力を決定する。
【0086】
次に、STA100−1は、キャリアセンスの実行有無を判定する(ステップS603)。具体的には、制御部130は、トリガフレームに格納されるキャリアセンスの実行有無を示す情報に基づいてキャリアセンスを実行するかを判定する。なお、キャリアセンスの実行有無を示す情報がトリガフレームに格納されていない場合、本ステップの処理が省略され、ステップS605に処理が進められてもよい。
【0087】
キャリアセンスを実行しないと判定されると(ステップS603/NO)、STA100−1は、ULフレームを送信する(ステップS604)。具体的には、制御部130は、キャリアセンスを実行することなく、トリガフレームにより通知されるULフレームの送信期間の到来に応じてULフレームをデータ処理部110に生成させ、生成されるULフレームを無線通信部120に送信させる。
【0088】
他方で、キャリアセンスを実行すると判定されると(ステップS603/YES)、STA100−1は、キャリアセンス閾値を設定する(ステップS605)。具体的には、制御部130は、決定された設定送信電力と最大送信電力との差および標準キャリアセンス閾値に基づいて設定キャリアセンス閾値を決定する。
【0089】
次に、STA100−1は、キャリアセンスを実行する(ステップS606)。具体的には、制御部130は、決定された設定キャリアセンス閾値を用いてキャリアセンスを無線通信部120に実行させ、伝送路の状態を確認する。
【0090】
次に、STA100−1は、伝送路の状態がアイドル状態であると判定されると(ステップS607/YES)、処理がステップS604へ進められ、ULフレームが送信される。他方で、伝送路の状態がビジー状態であると判定されると(ステップS607/NO)、STA100−1は、ULフレームを送信せず、処理を終了させる。具体的には、制御部130は、伝送路の状態がアイドル状態である、すなわち伝送路が空いていると判定されると、ULフレームをデータ処理部110に生成させ、生成されるULフレームを無線通信部120に送信させる。他方で、伝送路の状態がビジー状態である、すなわち伝送路が使用されていると判定されると、制御部130は、ULフレームを送信させることなく、処理を終了させる。
【0091】
<3.3.第1の実施形態のまとめ>
このように、本開示の第1の実施形態によれば、AP200−1は、AP200−1と通信するSTA100−1について観測される伝送路における受信電力情報を取得し、取得される受信電力情報(干渉電力情報)に基づいて決定される、キャリアセンスの態様が特定される第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを送信する。また、STA100−1は、上記受信電力情報が格納される干渉電力通知フレームを送信し、干渉電力通知フレームの送信後に、上記第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可フレームを受信する。そして、STA100−1は、第1の通信パラメタ情報に基づいて送信許可に係るフレームにより送信が許可されるULフレームの送信についてのキャリアセンスを制御する。
【0092】
従来では、DSCなどを用いて送信電力に応じてキャリアセンス閾値を制御することにより、通信の衝突を回避しながら伝送路へのアクセスについての公平性が確保されていた。しかし、UL−MU通信においては、送信電力などのUL通信パラメタが指定されるため、実質的にキャリアセンス閾値を制御することができなかった。そのため、UL−MU通信などの送信許可に応じて行われる通信において送信機会を与えられたのにもかかわらずULフレームを送信することができず、通信効率が低下するおそれがあった。
【0093】
これに対し、本実施形態によれば、STA100−1の干渉電力情報に基づいてSTA100−1のキャリアセンスの態様が決定されることにより、送信が許可されたSTA100−1のフレーム送信がキャリアセンスにより中止させられることを抑制できる。すなわち、送信が許可されたSTA100−1がULフレームを送信する可能性をより確実に高めることができる。従って、キャリアセンスにより通信の衝突を回避しながら、無線通信リソースを有効に活用することが可能となる。
【0094】
また、上記受信電力情報は、STA100−1から受信される受信電力通知フレームから取得される。このため、STA100−1から通知される干渉電力情報がキャリアセンスの態様の決定に係る処理に用いられることにより、キャリアセンスの態様の正確性を高めることができる。従って、無線通信リソースをより確実に有効活用することが可能となる。
【0095】
また、上記第1の通信パラメタ情報は、キャリアセンスの閾値または有無が特定される情報を含む。また、STA100−1は、第1の通信パラメタ情報に基づいてキャリアセンスの有無または閾値を決定する。このため、干渉電力に応じてキャリアセンス閾値が制御されることにより、送信が許可されるSTA100−1にキャリアセンスを行わせながらULフレームを送信させやすくすることができる。また、干渉電力に応じてキャリアセンスの有無が制御されることにより、送信が許可されるSTA100−1にはキャリアセンスを行わせないことにより、ULフレームをより確実に送信させることができる。また、キャリアセンスに係る処理時間または処理負荷を削減することが可能となる。
【0096】
また、上記送信許可に係るフレームにより許可が示される通信は、多元接続通信を含む。このため、多元接続通信において指定されるUL通信パラメタが干渉電力情報に基づいて決定されることにより、多元接続通信において送信が許可されるSTA100−1に割り当てられる無線通信リソースを有効活用することができる。
【0097】
また、上記多元接続通信の対象は、受信電力情報から決定される目標受信電力情報に基づいて決定される。また、上記第1の通信パラメタ情報は目標受信電力情報を含み、STA100−1は、目標受信電力情報に応じて送信が許可されるULフレームの送信についての送信電力を決定する。このため、多元接続通信グループのメンバから送信されるULフレームについての受信レベルを揃えることができる。従って、多元接続通信におけるAP200−1の受信性能を維持または向上させることが可能となる。
【0098】
また、上記送信許可に係るフレームには、第1の通信パラメタ情報と種類が異なる第2の通信パラメタ情報が格納される。このため、UL通信パラメタと共にキャリアセンスの態様が特定される情報が通知されることにより、別途のフレームでキャリアセンスの態様が特定される情報が送信される場合に比べて通信量を低減することができる。
【0099】
また、上記第2の通信パラメタ情報は、第1の通信パラメタ情報に応じて決定される変調方式または符号化に係る情報を含む。ここで、キャリアセンスの態様が特定される情報にはAP200−1の受信性能に関わる情報(例えば目標受信レベル)が含まれる。そのため、キャリアセンスの態様が特定される情報に応じて変調方式などの受信性能に関わる別のUL通信パラメタが決定されることにより、AP200−1の受信性能を低下させることなくSTA100−1の送信を促すことができる。
【0100】
また、STA100−1は、受信電力情報に係る受信電力を観測し、受信電力情報は、STA100−1が属する無線通信ネットワークのグループに属する他の無線通信装置以外の装置から送信される電波について観測される受信電力情報を含む。従来では、雑音レベルの観測のために同じBSSに属する他の無線通信装置の通信が停止させられる場合があった。そのため、観測により通信効率が低下するおそれがあった。これに対し、STA100−1は、自BSSに属さない装置から送信される電波または信号についてのみ受信電力を干渉電力として測定する。そのため、自BSS内の他のSTA100−1またはAP200−1の通信を停止させることなく、干渉電力を測定することができる。従って、干渉電力の観測と通信効率の維持とを両立させることが可能となる。
【0101】
また、上記受信電力通知フレームは、受信電力情報の通信以外の他の目的で通信されるフレームを含む。このため、干渉電力情報の通信専用のフレームが用意される場合と比べて、通信量を低減することができる。
【0102】
<4.第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、ULフレームを送信しなかったSTA100−2のみが干渉電力情報をAP200−2へ通知する。
【0103】
<4.1.装置の機能>
まず、本実施形態に係る無線通信装置としてのSTA100−2およびAP200−2の各機能について説明する。なお、第1の実施形態に係る機能と実質的に同一である機能については説明を省略する。
【0104】
(キャリアセンス結果の要求)
AP200−2は、キャリアセンス結果をSTA100−2へ要求する。具体的には、AP200−2は、送信許可フレームに応じたULフレームが受信されない場合、当該STA100−2へキャリアセンス結果の送信要求を示すキャリアセンス結果要求フレームを送信する。例えば、制御部230は、トリガフレームの宛先であるUL−MU通信グループのメンバのうちのいずれかのメンバからトリガフレームで指定した送信期間内にULフレームが受信されない場合、キャリアセンス閾値情報および干渉電力情報を有するキャリアセンス結果の通知の要求を示すキャリアセンス結果要求フレームをデータ処理部210に生成させる。制御部230は、生成されたキャリアセンス結果要求フレームを無線通信部220に送信させる。
【0105】
なお、送信許可フレームに応じたULフレームは、送信許可フレームにより割当てが通知された無線通信リソースの全てを用いて送信されるULフレームであってもよい。言い換えると、割当てられた無線通信リソースの一部のみでULフレームが受信される場合、制御部230は、送信許可フレームに応じたULフレームが受信されなかったと判定する。例えば、割当てられた周波数のうちの一部の周波数についてULフレームが送信されなかった場合(例えば、当該一部の周波数について伝送路がビジー状態であった場合)、制御部230は、キャリアセンス結果要求フレームをデータ処理部110および無線通信部120を介して送信する。
【0106】
(キャリアセンス結果の通知)
STA100−2は、AP200−2の要求に応じてキャリアセンス結果を通知する。具体的には、無線通信部120は、トリガフレームの受信に応じて行われたキャリアセンスの結果を記憶部140に記憶させる。その後、キャリアセンス結果要求フレームが受信されると、制御部130は、記憶部140に記憶されているキャリアセンス結果を示す情報が格納されるキャリアセンス結果通知フレームをデータ処理部110に生成させる。そして、制御部130は、生成されたキャリアセンス結果通知フレームを無線通信部120に送信させる。キャリアセンス結果は、キャリアセンスにおいて用いられたキャリアセンス閾値およびキャリアセンスにおいて測定された干渉電力情報である。なお、キャリアセンス結果として、伝送路の状態の判定結果が含まれてもよい。さらに、図10を参照して、キャリアセンス結果通知フレームの構成要素について説明する。図10は、本実施形態に係るキャリアセンス結果通知フレームの情報エレメントの構成例を示す図である。
【0107】
キャリアセンス結果通知フレームは、キャリアセンス閾値情報および干渉電力情報が格納される情報エレメントを有する。例えば、当該情報エレメントは、既存のメジャメントレポートに基づく情報エレメントである。図10に示したように、当該情報エレメントは、Element ID、Length、Measurement Token、Measurement Report Mode、Measurement TypeおよびMeasurement Reportといったフィールドを有する。Measurement Reportは、Channel Number、Measurement Start TimeおよびMeasurement Durationに加えて、Carrier Sense ThresholdおよびInterference Powerといったフィールドを有する。Carrier Sense Thresholdフィールドにはキャリアセンスで用いられた設定キャリアセンス閾値を示す情報が格納される。また、Interference Powerフィールドには干渉電力情報が格納される。例えば、Measurement Typeフィールドに、例えばビットが追加されることなどによりキャリアセンス閾値情報および干渉電力情報を通知するメジャメントレポートである旨を示す情報が格納される。
【0108】
(キャリアセンス結果に基づくUL通信パラメタの決定)
AP200−2は、通知されるキャリアセンス結果に基づいてUL通信パラメタを決定する。具体的には、制御部230は、キャリアセンス結果通知フレームが受信されると、キャリアセンス結果として格納される設定キャリアセンス閾値および干渉電力情報から目標受信レベルを決定する。また、制御部230は、目標受信レベルに応じて変調方式を決定し、通信周波数などの他のUL通信パラメタを決定する。さらに、図11を参照して、UL通信パラメタの決定処理について具体的に説明する。図11は、本実施形態に係るAP200−2におけるUL通信パラメタの決定処理の例を説明するための図である。図11では、STA100−2Aおよび100−2DにおいてULフレームが受信されず、キャリアセンス結果が通知される場合が想定されている。
【0109】
制御部230は、キャリアセンス閾値情報および干渉電力情報に基づいて目標受信レベルを決定する。例えば、STA100−2Aおよび100−2Dからキャリアセンス結果通知フレームが受信されると、制御部230は、キャリアセンス結果通知フレームで通知される設定キャリアセンス閾値と干渉電力レベルとの差分を算出する。図11の例では、STA100−2Aおよび100−2Dの双方で3dBが当該差分として算出される。次に、制御部230は、過去のUL−MU通信について設定されていた目標受信レベルを算出された差分に基づいて更新する。図11の例では、STA100−2Aおよび100−2Dの双方で目標受信レベルが−65dBmに設定されていたため、算出された差分3dBに基づき5dBが差し引かれることにより目標受信レベルが−70dBmに変更される。
【0110】
また、制御部230は、変更後の目標受信レベルに基づいて変調方式を決定する。例えば、STA100−21Aおよび100−2Dについて目標受信レベルが−65dBmから−70dBmに引き下げられたため、変調方式はMCS6からMCS4へ引き下げられる。
【0111】
なお、周波数毎にキャリアセンス結果が通知される場合には、第1の実施形態と同様に、周波数毎のキャリアセンス結果に基づいてUL−MU通信における通信周波数が決定されてもよい。
【0112】
(キャリアセンス結果に基づく多元接続通信グループの決定)
AP200−2は、通知されるキャリアセンス結果に基づいて多元接続通信グループを決定する。具体的には、制御部230は、受信されるキャリアセンス結果通知フレームに格納される干渉電力情報から算出される目標受信レベルに基づいてUL−MU通信グループの見直しを行う。例えば、図11の例では、過去のUL−MU通信は1つのグループで行われたが、目標受信レベルの変更に伴い、STA100−2Bおよび100−2CがメンバであるグループID「1」と、STA100−2Aおよび100−2DがメンバであるグループID「2」とが形成される。
【0113】
なお、図11の例では、1つのグループが2つのグループに分割される例を説明したが、分割されずに元の1つのグループでUL−MU通信が行われてもよい。例えば、図11の例では、STA100−2Bおよび100−2Cの目標受信レベルを−70dBmに変更することにより、1つのUL−MU通信グループが維持されてもよい。なお、この場合、変調方式もMCS6からMCS4へ変更される。
【0114】
<4.2.処理の流れ>
次に、図12を参照して、本実施形態に係る無線通信システムの処理の流れについて説明する。図12は、本実施形態に係る無線通信システムの処理の例を概念的に示すシーケンス図である。
【0115】
STA100−2A〜100−2Dは、AP200−2から送信許可フレームが受信されると、キャリアセンスを実行する(ステップS321)。そして、STA100−2A〜100−2Cは、伝送路の状態がアイドル状態であったため、ULフレームをAP200−2へ送信する(ステップS322)。他方で、STA100−2Dは、伝送路の状態がビジー状態であったため、ULフレームを送信しない。そのため、AP200−2は、キャリアセンス結果をSTA100−2Dに要求する(ステップS323)。要求を受けたSTA100−2Dは、キャリアセンス結果を通知する(ステップS324)。
【0116】
キャリアセンス結果を受けたAP200−2は、キャリアセンス閾値が特定されるUL通信パラメタ情報を決定する(ステップS325)。また、AP200−2は、UL多元接続通信グループを決定する(ステップS326)。そして、AP200−2は、STA100−2A〜100−2Dへ送信許可フレームを送信する(ステップS327)。送信許可フレームを受信したSTA100−2A〜100−2Dは、UL通信パラメタ情報に基づいてキャリアセンス閾値を設定する(ステップS328)。次に、STA100−2A〜100−2Dは、キャリアセンスを実行し(ステップS329)、伝送路の状態がアイドル状態であると判定されると、ULフレームを送信する(ステップS330)。
【0117】
続いて、本実施形態に係るSTA100−2およびAP200−2の処理について個別に説明する。なお、第1の実施形態における処理と実質的に同一である処理については説明を省略する。
【0118】
(APにおけるUL通信パラメタ情報の通知処理)
続いて、図13を参照して、AP200−2におけるUL通信パラメタ情報の通知処理について説明する。図13は、本実施形態に係るAP200−2におけるUL通信パラメタ情報の通知処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0119】
AP200−2は、送信許可フレームをSTA100−2へ送信する(ステップS521)。具体的には、制御部230は、UL通信パラメタ情報が格納され、UL−MU通信グループのメンバであるSTA100−2宛てのトリガフレームをデータ処理部210に生成させ、生成されるトリガフレームを無線通信部220に送信させる。
【0120】
次に、AP200−2は、ULフレームをSTA100−2から受信する(ステップS522)。具体的には、無線通信部220は、トリガフレームの送信後、所定の期間において多重化されたULフレームをSTA100−2から受信する。
【0121】
次に、AP200−2は、全てのULリソースが使用されたかを判定する(ステップS523)。具体的には、制御部230は、受信されたULフレームに割り当てられたULリソース(例えば周波数、時間、空間など)が使い切られたかを判定する。
【0122】
全てのULリソースが使用されたと判定されると(ステップS523/YES)、AP200−2は、UL通信パラメタ情報を決定し(ステップS524)、UL多元接続通信グループを決定する(ステップS525)。具体的には、制御部230は、STA100−2のバッファステータス等のパラメタに基づいてUL通信パラメタ情報およびUL−MU通信グループを決定する。
【0123】
他方で、少なくとも一部のULリソースが使用されなかったと判定されると(ステップS523/NO)、AP200−2は、ULリソースを使用しなかったSTA100−2へキャリアセンス結果を要求する(ステップS526)。具体的には、制御部230は、ULフレームが受信されなかったUL周波数、時間または空間などが割当てられていたSTA100−2宛てのキャリアセンス結果要求フレームをデータ処理部210に生成させる。そして、制御部230は、生成されたキャリアセンス結果要求フレームを無線通信部220に送信させる。
【0124】
次に、AP200−2は、キャリアセンス結果に基づいてUL通信パラメタ情報を決定し(ステップS527)、UL多元接続通信グループを決定する(ステップS528)。具体的には、制御部230は、設定キャリアセンス閾値および干渉電力情報に基づいて目標受信レベルを変更する。また、制御部230は、変更後の目標受信レベルに基づいてUL−MU通信グループを再編する。
【0125】
そして、AP200−2は、送信許可フレームを送信する(ステップS529)。具体的には、制御部230は、目標受信レベルなどのUL通信パラメタ情報が格納されるトリガフレームをデータ処理部210に生成させ、生成されるトリガフレームを無線通信部220に送信させる。
【0126】
(STAのキャリアセンスを用いたフレーム送信処理)
続いて、図14を参照して、STA100−2におけるキャリアセンスを用いたフレーム送信処理について説明する。図14は、本実施形態に係るSTA100−2におけるキャリアセンスを用いたフレーム送信処理の例を概念的に示すフローチャートである。
【0127】
STA100−2は、送信許可フレームが受信されたかを判定する(ステップS621)。具体的には、制御部130は、AP200−2からトリガフレームが受信されたかを判定する。
【0128】
送信許可フレームが受信されたと判定されると(ステップS621/YES)、STA100−2は、通知された目標受信レベルから送信電力を決定する(ステップS622)。具体的には、制御部130は、受信されたトリガフレームに格納される目標受信レベルと伝搬損失とから設定送信電力を決定する。
【0129】
次に、STA100−2は、キャリアセンスの実行有無を判定する(ステップS623)。具体的には、制御部130は、受信されたトリガフレームに格納されるキャリアセンスの実行有無を示す情報に基づいてキャリアセンスの実行有無を判定する。
【0130】
キャリアセンスを実行しないと判定されると(ステップS623/NO)、STA100−2は、キャリアセンスを実行することなくULフレームを送信する(ステップS624)。具体的には、制御部130は、無線通信部120にキャリアセンスを実行させずに、ULフレームを送信させる。
【0131】
他方で、キャリアセンスを実行すると判定されると(ステップS623/YES)、STA100−2は、キャリアセンス閾値を設定し(ステップS625)、キャリアセンスを実行する(ステップS626)。具体的には、制御部130は、設定送信電力の変更量に基づいて設定キャリアセンス閾値を決定し、設定キャリアセンス閾値を用いたキャリアセンスを無線通信部120に実行させる。なお、キャリアセンス結果として、キャリアセンスに用いられた設定キャリアセンス閾値および干渉電力情報が記憶部140に記憶される。
【0132】
次に、STA100−2は、伝送路の状態がアイドル状態であると判定されると(ステップS627/YES)ULフレームを送信する。具体的には、制御部130は、キャリアセンスの結果、伝送路が空いていると判定されると、無線通信部120にULフレームを送信させる。
【0133】
他方で、伝送路の状態がビジー状態であると判定されると(ステップS627/NO)、STA100−2は、キャリアセンス結果が要求されたかを判定する(ステップS628)。具体的には、制御部130は、キャリアセンスにより伝送路が使用中であると判定されると、ULフレームの送信を中止し、キャリアセンス結果要求フレームの受信を待ち受ける。
【0134】
キャリアセンス結果が要求されたと判定されると(ステップS628/YES)、STA100−2は、キャリアセンス結果を通知する(ステップS629)。具体的には、制御部130は、キャリアセンス結果要求フレームが受信されると、記憶部140に記憶されている設定キャリアセンス閾値および干渉電力情報が格納されるキャリアセンス結果通知フレームをデータ処理部110に生成させる。そして、制御部130は、生成されたキャリアセンス結果通知フレームを無線通信部120に送信させる。
【0135】
<4.3.第2の実施形態のまとめ>
このように、本開示の第2の実施形態によれば、AP200−2は、送信許可に係るフレームに応じたフレームが受信されない場合、キャリアセンス結果要求フレームを送信する。このため、キャリアセンスによりULフレームが送信できなかったと推定されるSTA100−2に対してのみ干渉電力情報を取得することができる。従って、干渉電力情報の通信に用いられる無線通信リソースを低減することが可能となる。
【0136】
また、AP200−2は、キャリアセンス結果要求フレームに対応するキャリアセンス結果通知フレームを受信し、上記第1の通信パラメタ情報は、キャリアセンス結果通知フレームに基づいて決定される。このため、キャリアセンス結果に基づいてキャリアセンスの態様が特定されるUL通信パラメタ(例えば、目標受信レベル)が決定されることにより、次回のUL−MU通信においてキャリアセンスによりULフレームの送信が中止させられることを回避することができる。
【0137】
また、上記キャリアセンス結果通知フレームには、キャリアセンスの閾値を示す情報が格納される。このため、伝送路の状態がビジー状態であると判定された際のキャリアセンスにおいて用いられたキャリアセンス閾値に基づいて、次回のUL−MU通信において使用させるキャリアセンス閾値を決定することができる。従って、干渉電力よりも高いキャリアセンス閾値をより確実にSTA100−2に設定させることができ、送信が許可されるSTA100−2にULフレームをより確実に送信させることが可能となる。
【0138】
<4.4.変形例>
以上、本開示の第2の実施形態について説明した。なお、本実施形態は、上述の例に限定されない。以下に、本実施形態の変形例について説明する。
【0139】
本実施形態の変形例として、AP200−2は、キャリアセンス結果に関するフレーム交換なしでUL通信パラメタ情報およびUL多元接続通信グループを変更してもよい。具体的には、制御部230は、UL通信パラメタ情報に基づいて干渉電力情報を推定する。より具体的には、制御部230は、送信許可フレームに応じたフレームが受信されない場合に、送信された送信許可フレームに格納されたUL通信パラメタ情報に基づいて干渉電力情報を推定する。
【0140】
例えば、制御部230は、UL−MU通信に係るトリガフレームの送信後、UL−MU通信グループのメンバのうちの一部のSTA100−2からULフレームが受信されなかった場合、当該一部のSTA100−2について指定したUL通信パラメタ情報(例えば目標受信レベル)を取得する。そして、制御部230は、取得された目標受信レベルよりも低い値へ目標受信レベルを変更する。なお、目標受信レベルの変更に伴い、制御部230は、UL−MU通信グループを再編する。そして、制御部230は、変更後の目標受信レベルを当該一部のSTA100−2へ通知する。
【0141】
このように、本実施形態の変形例によれば、受信電力情報(干渉電力情報)は、第1の通信パラメタ情報に基づく推定により取得される。このため、キャリアセンス結果に関するフレームの交換を省略しながら、キャリアセンスを適正に制御することができる。従って、通信量を低減しながら、送信が許可されたSTA100−2からULフレームが送信される確実性を高めることが可能となる。
【0142】
また、上記推定は、送信許可に係るフレームに応じたフレームが受信されない場合に、送信許可に係るフレームに格納された第1の通信パラメタ情報に基づいて行われる。このため、使用されなかったULリソースが割り当てられたSTA100−2についてのみUL通信パラメタ情報の更新が行われることにより、処理量を低減することができる。
【0143】
<5.応用例>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用可能である。例えば、STA100は、スマートフォン、タブレットPC(Personal Computer)、ノートPC、携帯型ゲーム端末若しくはデジタルカメラなどのモバイル端末、テレビジョン受像機、プリンタ、デジタルスキャナ若しくはネットワークストレージなどの固定端末、又はカーナビゲーション装置などの車載端末として実現されてもよい。また、STA100は、スマートメータ、自動販売機、遠隔監視装置又はPOS(Point Of Sale)端末などの、M2M(Machine To Machine)通信を行う端末(MTC(Machine Type Communication)端末ともいう)として実現されてもよい。さらに、STA100は、これら端末に搭載される無線通信モジュール(例えば、1つのダイで構成される集積回路モジュール)であってもよい。
【0144】
一方、例えば、AP200は、ルータ機能を有し又はルータ機能を有しない無線LANアクセスポイント(無線基地局ともいう)として実現されてもよい。また、AP200は、モバイル無線LANルータとして実現されてもよい。さらに、AP200は、これら装置に搭載される無線通信モジュール(例えば、1つのダイで構成される集積回路モジュール)であってもよい。
【0145】
[5−1.第1の応用例]
図15は、本開示に係る技術が適用され得るスマートフォン900の概略的な構成の一例を示すブロック図である。スマートフォン900は、プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、外部接続インタフェース904、カメラ906、センサ907、マイクロフォン908、入力デバイス909、表示デバイス910、スピーカ911、無線通信インタフェース913、アンテナスイッチ914、アンテナ915、バス917、バッテリー918及び補助コントローラ919を備える。
【0146】
プロセッサ901は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はSoC(System on Chip)であってよく、スマートフォン900のアプリケーションレイヤ及びその他のレイヤの機能を制御する。メモリ902は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含み、プロセッサ901により実行されるプログラム及びデータを記憶する。ストレージ903は、半導体メモリ又はハードディスクなどの記憶媒体を含み得る。外部接続インタフェース904は、メモリーカード又はUSB(Universal Serial Bus)デバイスなどの外付けデバイスをスマートフォン900へ接続するためのインタフェースである。
【0147】
カメラ906は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を有し、撮像画像を生成する。センサ907は、例えば、測位センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ及び加速度センサなどのセンサ群を含み得る。マイクロフォン908は、スマートフォン900へ入力される音声を音声信号へ変換する。入力デバイス909は、例えば、表示デバイス910の画面上へのタッチを検出するタッチセンサ、キーパッド、キーボード、ボタン又はスイッチなどを含み、ユーザからの操作又は情報入力を受け付ける。表示デバイス910は、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどの画面を有し、スマートフォン900の出力画像を表示する。スピーカ911は、スマートフォン900から出力される音声信号を音声に変換する。
【0148】
無線通信インタフェース913は、IEEE802.11a、11b、11g、11n、11ac及び11adなどの無線LAN標準のうちの1つ以上をサポートし、無線通信を実行する。無線通信インタフェース913は、インフラストラクチャーモードにおいては、他の装置と無線LANアクセスポイントを介して通信し得る。また、無線通信インタフェース913は、アドホックモード又はWi−Fi Direct(登録商標)等のダイレクト通信モードにおいては、他の装置と直接的に通信し得る。なお、Wi−Fi Directでは、アドホックモードとは異なり2つの端末の一方がアクセスポイントとして動作するが、通信はそれら端末間で直接的に行われる。無線通信インタフェース913は、典型的には、ベースバンドプロセッサ、RF(Radio Frequency)回路及びパワーアンプなどを含み得る。無線通信インタフェース913は、通信制御プログラムを記憶するメモリ、当該プログラムを実行するプロセッサ及び関連する回路を集積したワンチップのモジュールであってもよい。無線通信インタフェース913は、無線LAN方式に加えて、近距離無線通信方式、近接無線通信方式又はセルラ通信方式などの他の種類の無線通信方式をサポートしてもよい。アンテナスイッチ914は、無線通信インタフェース913に含まれる複数の回路(例えば、異なる無線通信方式のための回路)の間でアンテナ915の接続先を切り替える。アンテナ915は、単一の又は複数のアンテナ素子(例えば、MIMOアンテナを構成する複数のアンテナ素子)を有し、無線通信インタフェース913による無線信号の送信及び受信のために使用される。
【0149】
なお、図15の例に限定されず、スマートフォン900は、複数のアンテナ(例えば、無線LAN用のアンテナ及び近接無線通信方式用のアンテナ、など)を備えてもよい。その場合に、アンテナスイッチ914は、スマートフォン900の構成から省略されてもよい。
【0150】
バス917は、プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、外部接続インタフェース904、カメラ906、センサ907、マイクロフォン908、入力デバイス909、表示デバイス910、スピーカ911、無線通信インタフェース913及び補助コントローラ919を互いに接続する。バッテリー918は、図中に破線で部分的に示した給電ラインを介して、図15に示したスマートフォン900の各ブロックへ電力を供給する。補助コントローラ919は、例えば、スリープモードにおいて、スマートフォン900の必要最低限の機能を動作させる。
【0151】
図15に示したスマートフォン900において、図2を用いて説明したデータ処理部110、無線通信部120および制御部130は、無線通信インタフェース913において実装されてもよい。また、これら機能の少なくとも一部は、プロセッサ901又は補助コントローラ919において実装されてもよい。例えば、制御部130が干渉電力情報をデータ処理部110および無線通信部120を介してスマートフォン900と接続されるAP200へ通知することにより、キャリアセンスを行いながらULフレーム送信の確実性を高めることができる。従って、通信の衝突を回避しながら無線通信リソースを有効に活用することが可能となる。
【0152】
なお、スマートフォン900は、プロセッサ901がアプリケーションレベルでアクセスポイント機能を実行することにより、無線アクセスポイント(ソフトウェアAP)として動作してもよい。また、無線通信インタフェース913が無線アクセスポイント機能を有していてもよい。
【0153】
[5−2.第2の応用例]
図16は、本開示に係る技術が適用され得るカーナビゲーション装置920の概略的な構成の一例を示すブロック図である。カーナビゲーション装置920は、プロセッサ921、メモリ922、GPS(Global Positioning System)モジュール924、センサ925、データインタフェース926、コンテンツプレーヤ927、記憶媒体インタフェース928、入力デバイス929、表示デバイス930、スピーカ931、無線通信インタフェース933、アンテナスイッチ934、アンテナ935及びバッテリー938を備える。
【0154】
プロセッサ921は、例えばCPU又はSoCであってよく、カーナビゲーション装置920のナビゲーション機能及びその他の機能を制御する。メモリ922は、RAM及びROMを含み、プロセッサ921により実行されるプログラム及びデータを記憶する。
【0155】
GPSモジュール924は、GPS衛星から受信されるGPS信号を用いて、カーナビゲーション装置920の位置(例えば、緯度、経度及び高度)を測定する。センサ925は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ及び気圧センサなどのセンサ群を含み得る。データインタフェース926は、例えば、図示しない端子を介して車載ネットワーク941に接続され、車速データなどの車両側で生成されるデータを取得する。
【0156】
コンテンツプレーヤ927は、記憶媒体インタフェース928に挿入される記憶媒体(例えば、CD又はDVD)に記憶されているコンテンツを再生する。入力デバイス929は、例えば、表示デバイス930の画面上へのタッチを検出するタッチセンサ、ボタン又はスイッチなどを含み、ユーザからの操作又は情報入力を受け付ける。表示デバイス930は、LCD又はOLEDディスプレイなどの画面を有し、ナビゲーション機能又は再生されるコンテンツの画像を表示する。スピーカ931は、ナビゲーション機能又は再生されるコンテンツの音声を出力する。
【0157】
無線通信インタフェース933は、IEEE802.11a、11b、11g、11n、11ac及び11adなどの無線LAN標準のうちの1つ以上をサポートし、無線通信を実行する。無線通信インタフェース933は、インフラストラクチャーモードにおいては、他の装置と無線LANアクセスポイントを介して通信し得る。また、無線通信インタフェース933は、アドホックモード又はWi−Fi Direct等のダイレクト通信モードにおいては、他の装置と直接的に通信し得る。無線通信インタフェース933は、典型的には、ベースバンドプロセッサ、RF回路及びパワーアンプなどを含み得る。無線通信インタフェース933は、通信制御プログラムを記憶するメモリ、当該プログラムを実行するプロセッサ及び関連する回路を集積したワンチップのモジュールであってもよい。無線通信インタフェース933は、無線LAN方式に加えて、近距離無線通信方式、近接無線通信方式又はセルラ通信方式などの他の種類の無線通信方式をサポートしてもよい。アンテナスイッチ934は、無線通信インタフェース933に含まれる複数の回路の間でアンテナ935の接続先を切り替える。アンテナ935は、単一の又は複数のアンテナ素子を有し、無線通信インタフェース933による無線信号の送信及び受信のために使用される。
【0158】
なお、図16の例に限定されず、カーナビゲーション装置920は、複数のアンテナを備えてもよい。その場合に、アンテナスイッチ934は、カーナビゲーション装置920の構成から省略されてもよい。
【0159】
バッテリー938は、図中に破線で部分的に示した給電ラインを介して、図16に示したカーナビゲーション装置920の各ブロックへ電力を供給する。また、バッテリー938は、車両側から給電される電力を蓄積する。
【0160】
図16に示したカーナビゲーション装置920において、図2を用いて説明したデータ処理部110、無線通信部120および制御部130は、無線通信インタフェース933において実装されてもよい。また、これら機能の少なくとも一部は、プロセッサ921において実装されてもよい。例えば、制御部130が干渉電力情報をデータ処理部110および無線通信部120を介してカーナビゲーション装置920と接続されるAP200へ通知することにより、キャリアセンスを行いながらULフレーム送信の確実性を高めることができる。従って、通信の衝突を回避しながら無線通信リソースを有効に活用することが可能となる。
【0161】
また、無線通信インタフェース933は、上述したAP200として動作し、車両に乗るユーザが有する端末に無線接続を提供してもよい。その際、例えば、制御部230が干渉電力情報に基づいてキャリアセンス態様が特定される送信許可をカーナビゲーション装置920に接続される端末へデータ処理部210および無線通信部220を介して通知することにより、当該端末にキャリアセンスを実行させながらULフレームをより確実に送信させることができる。従って、通信の衝突を回避しながら無線通信リソースを有効に活用することが可能となる。
【0162】
また、本開示に係る技術は、上述したカーナビゲーション装置920の1つ以上のブロックと、車載ネットワーク941と、車両側モジュール942とを含む車載システム(又は車両)940として実現されてもよい。車両側モジュール942は、車速、エンジン回転数又は故障情報などの車両側データを生成し、生成したデータを車載ネットワーク941へ出力する。
【0163】
[5−3.第3の応用例]
図17は、本開示に係る技術が適用され得る無線アクセスポイント950の概略的な構成の一例を示すブロック図である。無線アクセスポイント950は、コントローラ951、メモリ952、入力デバイス954、表示デバイス955、ネットワークインタフェース957、無線通信インタフェース963、アンテナスイッチ964及びアンテナ965を備える。
【0164】
コントローラ951は、例えばCPU又はDSP(Digital Signal Processor)であってよく、無線アクセスポイント950のIP(Internet Protocol)レイヤ及びより上位のレイヤの様々な機能(例えば、アクセス制限、ルーティング、暗号化、ファイアウォール及びログ管理など)を動作させる。メモリ952は、RAM及びROMを含み、コントローラ951により実行されるプログラム、及び様々な制御データ(例えば、端末リスト、ルーティングテーブル、暗号鍵、セキュリティ設定及びログなど)を記憶する。
【0165】
入力デバイス954は、例えば、ボタン又はスイッチなどを含み、ユーザからの操作を受け付ける。表示デバイス955は、LEDランプなどを含み、無線アクセスポイント950の動作ステータスを表示する。
【0166】
ネットワークインタフェース957は、無線アクセスポイント950が有線通信ネットワーク958に接続するための有線通信インタフェースである。ネットワークインタフェース957は、複数の接続端子を有してもよい。有線通信ネットワーク958は、イーサネット(登録商標)などのLANであってもよく、又はWAN(Wide Area Network)であってもよい。
【0167】
無線通信インタフェース963は、IEEE802.11a、11b、11g、11n、11ac及び11adなどの無線LAN標準のうちの1つ以上をサポートし、近傍の端末へアクセスポイントとして無線接続を提供する。無線通信インタフェース963は、典型的には、ベースバンドプロセッサ、RF回路及びパワーアンプなどを含み得る。無線通信インタフェース963は、通信制御プログラムを記憶するメモリ、当該プログラムを実行するプロセッサ及び関連する回路を集積したワンチップのモジュールであってもよい。アンテナスイッチ964は、無線通信インタフェース963に含まれる複数の回路の間でアンテナ965の接続先を切り替える。アンテナ965は、単一の又は複数のアンテナ素子を有し、無線通信インタフェース963による無線信号の送信及び受信のために使用される。
【0168】
図17に示した無線アクセスポイント950において、図2を用いて説明したデータ処理部210、無線通信部220および制御部230は、無線通信インタフェース963において実装されてもよい。また、これら機能の少なくとも一部は、コントローラ951において実装されてもよい。例えば、制御部230が干渉電力情報に基づいてキャリアセンス態様が特定される送信許可を無線アクセスポイント950に接続される端末へデータ処理部210および無線通信部220を介して通知することにより、当該端末にキャリアセンスを実行させながらULフレームをより確実に送信させることができる。従って、通信の衝突を回避しながら無線通信リソースを有効に活用することが可能となる。
【0169】
<6.むすび>
以上、本開示の第1の実施形態によれば、STA100−1の干渉電力情報に基づいてSTA100−1のキャリアセンスの態様が決定されることにより、送信が許可されたSTA100−1のフレーム送信がキャリアセンスにより中止させられることを抑制できる。すなわち、送信が許可されたSTA100−1がULフレームを送信する可能性をより確実に高めることができる。従って、キャリアセンスにより通信の衝突を回避しながら、無線通信リソースを有効に活用することが可能となる。
【0170】
また、本開示の第2の実施形態によれば、キャリアセンスによりULフレームが送信できなかったと推定されるSTA100−2に対してのみ干渉電力情報を取得することができる。従って、干渉電力情報の通信に用いられる無線通信リソースを低減することが可能となる。
【0171】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0172】
例えば、上記実施形態では、STA100が干渉電力を観測するとしたが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、干渉電力はSTA100の周辺装置により観測されてもよい。この場合、当該周辺装置からSTA100に干渉電力情報が提供される。
【0173】
また、上記実施形態では、キャリアセンス結果要求フレームに応じてキャリアセンス結果通知フレームが送信される例を説明したが、キャリアセンス結果通知フレームは、要求の有無にかかわらずSTA100から自発的に送信されてもよい。また、送信が許可されたSTA100においてキャリアセンスによりULフレームが送信できなかった場合にのみ、STA100がキャリアセンス結果通知フレームを送信するとしてもよい。
【0174】
また、上記実施形態では、キャリアセンス結果通知フレームにキャリアセンス閾値情報および干渉電力情報が格納される例を説明したが、キャリアセンス結果通知フレームには干渉電力情報のみが格納されてもよい。この場合、干渉電力情報を用いて第1の実施形態における処理が行われることにより、UL通信パラメタ情報およびUL多元接続通信グループが見直されてよい。
【0175】
また、上述したキャリアセンス結果の要求、キャリアセンス結果に基づくUL通信パラメタの決定および多元接続通信グループの決定に係る処理は、追加の条件が満たされる場合に行われるとしてもよい。例えば、キャリアセンスによりULフレームの送信が所定の回数中止させられた場合に、上述の処理が実行されるとしてもよい。
【0176】
例えば、上記実施形態では、AP200とSTA100とが多元接続通信を行うとしたが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、複数のSTA100とのダイレクトリンク持つSTA100と当該複数のSTA100とが多元接続通信を行ってもよい。なお、この場合、上述のDL通信が「1機から複数機への同時通信」と、上述のUL通信が「複数機から1機への同時通信」と読み替えられ得る。
【0177】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0178】
また、上記の実施形態のフローチャートに示されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的にまたは個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【0179】
また、無線通信装置100、200に内蔵されるハードウェアに上述した無線通信装置100、200の各機能構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、当該コンピュータプログラムが記憶された記憶媒体も提供される。
【0180】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
無線通信装置であって、
前記無線通信装置と通信する第1の無線通信装置について観測される伝送路における受信電力情報を取得する取得部と、
取得される前記受信電力情報に基づいて決定される、キャリアセンスの態様が特定される第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを送信する無線通信部と、
を備える無線通信装置。
(2)
前記受信電力情報は、前記無線通信部により前記第1の無線通信装置から受信される受信電力通知フレームから取得される、
前記(1)に記載の無線通信装置。
(3)
前記受信電力情報は、前記第1の通信パラメタ情報に基づく推定により取得される、
前記(1)または(2)に記載の無線通信装置。
(4)
前記推定は、前記送信許可に係るフレームに応じたフレームが受信されない場合に、前記送信許可に係るフレームに格納された前記第1の通信パラメタ情報に基づいて行われる、
前記(3)に記載の無線通信装置。
(5)
前記第1の通信パラメタ情報は、キャリアセンスの閾値が特定される情報を含む、
前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(6)
前記第1の通信パラメタ情報は、キャリアセンスの有無が特定される情報を含む、
前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(7)
前記送信許可に係るフレームにより許可が示される通信は、多元接続通信を含む、
前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(8)
前記多元接続通信の対象は、前記受信電力情報から決定される目標受信電力情報に基づいて決定される、
前記(7)に記載の無線通信装置。
(9)
前記送信許可に係るフレームには、前記第1の通信パラメタ情報と種類が異なる第2の通信パラメタ情報が格納される、
前記(7)または(8)に記載の無線通信装置。
(10)
前記第2の通信パラメタ情報は、前記第1の通信パラメタ情報に応じて決定される変調方式または符号化に係る情報を含む、
前記(9)に記載の無線通信装置。
(11)
前記無線通信部は、前記送信許可に係るフレームに応じたフレームが受信されない場合、キャリアセンス結果要求フレームを送信する、
前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(12)
前記無線通信部は、前記キャリアセンス結果要求フレームに対応するキャリアセンス結果通知フレームを受信し、
前記第1の通信パラメタ情報は、前記キャリアセンス結果通知フレームに基づいて決定される、
前記(11)に記載の無線通信装置。
(13)
前記キャリアセンス結果通知フレームには、前記キャリアセンスの閾値を示す情報が格納される、
前記(12)に記載の無線通信装置。
(14)
無線通信装置であって、
前記無線通信装置について観測される周波数帯域における受信電力情報が格納される受信電力通知フレームを送信し、前記受信電力通知フレームの送信後に、第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを受信する無線通信部と、
前記第1の通信パラメタ情報に基づいて前記送信許可に係るフレームにより送信が許可されるフレームの送信についてのキャリアセンスを制御する制御部と、
を備える無線通信装置。
(15)
前記受信電力情報に係る受信電力を観測する観測部をさらに備え、
前記受信電力情報は、前記無線通信装置が属する無線通信ネットワークのグループに属する他の無線通信装置以外の装置から送信される電波について観測される受信電力情報を含む、
前記(14)に記載の無線通信装置。
(16)
前記制御部は、前記第1の通信パラメタ情報に基づいてキャリアセンスの有無または閾値を決定する、
前記(14)または(15)に記載の無線通信装置。
(17)
前記第1の通信パラメタ情報は、前記受信電力情報から決定される目標受信電力情報を含み、
前記制御部は、前記目標受信電力情報に応じて前記送信が許可されるフレームの送信についての送信電力を決定する、
前記(14)〜(16)のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(18)
前記受信電力通知フレームは、前記受信電力情報の通信以外の他の目的で通信されるフレームを含む、
前記(14)〜(17)のいずれか1項に記載の無線通信装置。
(19)
プロセッサを用いて、
第2の無線通信装置と通信する第1の無線通信装置について観測される伝送路における受信電力情報を取得することと、
取得される前記受信電力情報に基づいて決定される、キャリアセンスの態様が特定される第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを送信することと、
を含む無線通信方法。
(20)
プロセッサを用いて、
第1の無線通信装置について観測される周波数帯域における受信電力情報が格納される受信電力通知フレームを送信し、前記受信電力通知フレームの送信後に、第1の通信パラメタ情報が格納される送信許可に係るフレームを受信することと、
前記第1の通信パラメタ情報に基づいて前記送信許可に係るフレームにより送信が許可されるフレームの送信についてのキャリアセンスを制御することと、
を含む無線通信方法。
【符号の説明】
【0181】
100 STA
200 AP
110、210 データ処理部
120、220 無線通信部
130、230 制御部
140、240 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図17