(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリアリレート樹脂においては未だ改良の余地があり、各種有機溶媒への溶解性、耐熱性及び機械特性の更なる向上が求められているのが現状である。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ガラス転移温度が高く、各種有機溶媒への溶解性、耐熱性及び機械特性に優れる新規な重合体、組成物、成形体、硬化物及び積層体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係る重合体の一態様は、
下記式(1)で表される第1構造単位と、
下記式(2−1)及び(2−2)のうちの少なくとも一方で表される第2構造単位と、
下記式(3−1)及び(3−2)のうちの少なくとも一方で表される第3構造単位と、
を有することを特徴とする。
【化1】
〔式(1)中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。nは、0〜4の整数である。nが2以上の場合、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。〕
【化2】
〔式(2−1)〜(2−2)中、R
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。gは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。hは、それぞれ独立して、1〜8の整数である。hが2以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。R
3は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。cは、0〜2の整数である。cが2の場合、2つのR
3は、同一であっても異なっていてもよい。R
4は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。dは、0〜2の整数である。dが2の場合、2つのR
4は、同一であっても異なっていてもよい。〕
【化3】
〔式(3−1)〜(3−2)中、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。e及びfは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。a及びbは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。aが2以上の場合、複数のR
10は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。bが2以上の場合、複数のR
11は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。Z
1〜Z
4は、それぞれ独立して、−O−、又は、−S−である。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。vは0〜2の整数である。vが2の場合、2つのR
5は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
1は同一であっても異なっていてもよい。wは0〜2の整数である。wが2の場合、2つのR
6は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
4は同一であっても異なっていてもよい。L
aは、下記式(L−1)、(L−2)、(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。yは、1〜3の整数である。yが2以上の場合、複数のL
aは、同一であっても異なっていてもよい。yが2以上かつaが1以上の場合、複数のR
10は、同一であっても異なっていてもよい。L
bは、下記式(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。Gは、−O−、−S−、−C=O−、−SO−、又は、−SO
2−である。〕
【化4】
〔式(L−1)中、R
aは、環員数5〜30の2価の脂環式炭化水素基又は環員数5〜30の2価のフッ素化脂環式炭化水素基である。尚、「*」は結合手を示す。〕
【化5】
〔式(L−2)中、R
20及びR
21は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。j及びkは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。q及びrは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。qが2以上の場合、複数のR
20は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。rが2以上の場合、複数のR
21は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【化6】
〔式(L−3−1)〜(L−3−2)中、Aは、それぞれ独立して、−CO−、−SO−、又は−SO
2−である。Bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、又は−N(R
30)−である。R
30は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基である。R
22は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。lは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。sは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。sが2以上の場合、複数のR
22は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【0009】
[適用例2]
適用例1の重合体において、
前記第3構造単位として、前記式(3−1)で表される単位を有しており、
前記式(3−1)のL
aが前記式(L−1)で表される2価の基であり、
前記式(L−1)におけるR
aが、環員数5〜15の単環の脂環式炭化水素基、又は環員数5〜15の単環のフッ素化脂環式炭化水素基であることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1の重合体において、
前記第3構造単位として、前記式(3−1)で表される単位を有しており、
前記式(3−1)のL
aが前記式(L−1)で表される2価の基であり、
前記式(L−1)におけるR
aが、環員数7〜30の多環の脂環式炭化水素基、又は環員数7〜30の多環のフッ素化脂環式炭化水素基であることができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例の重合体において、
ポリスチレン換算の重量平均分子量が、500以上400,000以下であることができる。
【0012】
[適用例5]
本発明に係る組成物の一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか1例の重合体と、有機溶媒と、を含有することを特徴とする。
【0013】
[適用例6]
本発明に係る成形体の一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか1例の重合体を含有することを特徴とする。
【0014】
[適用例7]
本発明に係る組成物の一態様は、
下記式(1)で表される第1構造単位と、下記式(2)で表される第2構造単位と、下記式(3−1)及び(3−2)のうちの少なくとも一方で表される第3構造単位と、を有する重合体と、
硬化性化合物と、
を含有することを特徴とする。
【化7】
〔式(1)中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。nは、0〜4の整数である。nが2以上の場合、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。〕
【化8】
〔式(2)中、R
2は、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。gは、0〜2の整数である。hは、0〜8の整数である。hが2以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。R
3は、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。cは、0〜2の整数である。cが2の場合、2つのR
3は、同一であっても異なっていてもよい。R
4は、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。dは、0〜2の整数である。dが2の場合、2つのR
4は、同一であっても異なっていてもよい。〕
【化9】
〔式(3−1)〜(3−2)中、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。e及びfは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。a及びbは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。aが2以上の場合、複数のR
10は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。bが2以上の場合、複数のR
11は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。Z
1〜Z
4は、それぞれ独立して、−O−、又は、−S−である。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。vは0〜2の整数である。vが2の場合、2つのR
5は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
1は同一であっても異なっていてもよい。wは0〜2の整数である。wが2の場合、2つのR
6は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
4は同一であっても異なっていてもよい。L
aは、下記式(L−1)、(L−2)、(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。yは、1〜3の整数である。yが2以上の場合、複数のL
aは、同一であっても異なっていてもよい。yが2以上かつaが1以上の場合、複数のR
10は、同一であっても異なっていてもよい。L
bは、下記式(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。Gは、−O−、−S−、−C=O−、−SO−、又は、−SO
2−である。〕
【化10】
〔式(L−1)中、R
aは、環員数5〜30の2価の脂環式炭化水素基又は環員数5〜30の2価のフッ素化脂環式炭化水素基である。尚、「*」は結合手を示す。〕
【化11】
〔式(L−2)中、R
20及びR
21は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。j及びkは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。q及びrは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。qが2以上の場合、複数のR
20は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。rが2以上の場合、複数のR
21は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【化12】
〔式(L−3−1)〜(L−3−2)中、Aは、それぞれ独立して、−CO−、−SO−、又は−SO
2−である。Bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、又は−N(R
30)−である。R
30は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基である。R
22は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。lは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。sは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。sが2以上の場合、複数のR
22は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【0015】
[適用例8]
適用例7の組成物において、
前記硬化性化合物が、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、及びアリル化合物のうちの少なくとも1種であることができる。
【0016】
[適用例9]
適用例7または適用例8の組成物において、
硬化助剤を更に含有することができる。
【0017】
[適用例10]
本発明に係る硬化物の一態様は、
適用例7ないし適用例9のいずれか1例の組成物が硬化してなることを特徴とする。
【0018】
[適用例11]
本発明に係る積層体の一態様は、
基板と、前記基板上に、適用例7ないし適用例9のいずれか1例の組成物を用いて作成された硬化物層と、を備えることを特徴とする。
【0019】
ここで、「炭化水素基」は、特に断らない限り、鎖状炭化水素基及び環状炭化水素基を含む。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「環状炭化水素基」とは、環状構造を含む炭化水素基をいい、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環状構造として脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。ただし、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環状構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいい、単環の芳香族炭化水素基及び多環の芳香族炭化水素基の両方を含む。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。「環員数」とは、環状構造を構成する原子数を意味し、多環の場合は、この多環を構成する原子数を意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラス転移温度が高く、各種有機溶媒への溶解性、耐熱性及び機械特性の性能バランスに優れた新規な重合体、並びにこの重合体を用いた組成物、成形体、硬化物及び積層体を提供することができる。特に、各種有機溶媒への溶解性に優れ、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れているとともに、優れた機械特性(弾性率及び引張伸び)を備えた新規な重合体、並びにこの重合体を用いた組成物、成形体、硬化物及び積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の重合体、組成物、成形体、硬化物及び積層体について詳細に説明する。
【0022】
<重合体>
本発明の重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)は、上記第1構造単位と、上記第2構造単位と、上記第3構造単位と、を有する重合体である。[A]重合体は、上記各構造単位を2種以上有していてもよい。尚、[A]重合体は、上記第1、第2及び第3構造単位を有する限り、各構造単位の配列やその他の構造については特に限定されない。例えば、[A]重合体が第1〜第3構造単位以外の構造単位を有してもよい。また、[A]重合体が、後述するように、第1及び第2構造単位を含む繰り返しユニットと、第1及び第3構造単位を含む繰り返しユニットと、を有してもよく、その他の繰り返しユニットを更に有していてもよい。
【0023】
[A]重合体は、上記第1、第2及び第3構造単位を有するため、各種有機溶媒への溶解性、耐熱性及び機械特性を向上させることができる。[A]重合体が上記構成を有することで上記効果が奏される理由は明確ではないが、主に以下の(1)〜(3)の理由によるものと推察される。
(1)メタ位又はパラ位結合性のジヒドロキベンゼン系単量体に由来する第2構造単位を組み込むことにより、高分子の主鎖が配向し易く高分子鎖の占有断面積が小さくなることから、機械特性を向上させることができる。
(2)また、上記のように第2構造単位を組み込むことにより、嵩高い置換基を有しているため、各種有機溶媒への溶解性を向上させることができる。
(3)芳香環同士が比較的嵩高い環構造を介して連結された第3構造単位を組み込むことにより、高分子鎖の剛直性と各種有機溶媒への溶解性を適度に調整できる。これにより、耐熱性を向上させることができる。
【0024】
以下、第1、第2及び第3構造単位、並びに[A]重合体が任意に有してもよい他の構造単位等について説明する。
【0025】
[第1構造単位]
[A]重合体における第1構造単位は、下記式(1)で表される。
【0026】
【化13】
〔式(1)中、R
1は、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。nは、0〜4の整数である。nが2以上の場合、複数のR
1は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。〕
【0027】
R
1で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0028】
R
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、1価の鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
上記1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
【0030】
上記1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;ノルボルネニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0031】
上記1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0032】
R
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記R
1で表される基として例示した炭素数1〜20の1価の炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換した基等が挙げられる。
【0033】
R
1としては、第1構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1〜6の1価の炭化水素基、炭素数1〜6の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基、及びシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、ニトロ基、及びシアノ基がより好ましい。同様の観点から、nとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0034】
第1構造単位の一方の結合手に対する他方の結合手の位置は特に限定されず、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。特に、第1構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、メタ位、パラ位が好ましい。
【0035】
また、[A]重合体における第1構造単位を与える単量体としては、例えば、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、フタル酸クロライド等が挙げられる。尚、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
[A]重合体における第1構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における第1、第2及び第3構造単位の合計を100モル%とした場合に、10モル%であることが好ましく、より好ましくは15モル%、更に好ましくは20モル%である。また、上記含有割合の上限は、95モル%であることが好ましく、より好ましくは90モル%、更に好ましくは85モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、有機溶媒への溶解性、ガラス転移温度及び成形時の流動性をより適度に調整できる。
【0037】
[第2構造単位]
[A]重合体における第2構造単位は、下記式(2)が挙げられる。
【0038】
【化14】
[式(2)中、R
2は、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。gは、0〜2の整数である。hは、0〜8の整数である。hが2以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。R
3は、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。cは、0〜2の整数である。cが2の場合、2つのR
3は、同一であっても異なっていてもよい。R
4は、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。dは、0〜2の整数である。dが2の場合、2つのR
4は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0039】
R
2で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0040】
R
2で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0041】
R
2で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0042】
R
2としては、炭素数1〜10の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜10の1価の分岐状炭化水素基が更に好ましく、i−ブチル基、sec−ブチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。R
11を上記特定の基とすることにより、各種有機溶媒への溶解性をより向上させることができる。
【0043】
gとしては、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0044】
hとしては、各種有機溶媒への溶解性をより向上させる観点から、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0045】
R
3及びR
4で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基等が挙げられる。
【0046】
R
3としては、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、メチレン基、エチレン基が好ましい。同様の観点から、cとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0047】
R
4としては、第2構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、メチレン基、エチレン基が好ましい。同様の観点から、dとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0048】
[A]重合体における第2構造単位は、下記式(2−1)及び(2−2)のうちの少なくとも一方で表される構造が好ましい。
【0049】
【化15】
〔式(2−1)〜(2−2)中、R
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。gは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。hは、それぞれ独立して、1〜8の整数である。hが2以上の場合、複数のR
2は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。R
3は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。cは、0〜2の整数である。cが2の場合、2つのR
3は、同一であっても異なっていてもよい。R
4は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。dは、0〜2の整数である。dが2の場合、2つのR
4は、同一であっても異なっていてもよい。〕
【0050】
式(2−1)〜(2−2)中、R
2、R
3、R
4、c、d、g、hについては、上記式(2)と同義であり、上記式(2)の説明をそのまま適用することができる。
【0051】
[A]重合体における第2構造単位を与える単量体としては、例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、メチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、2,3,5、6−テトラメチルヒドロキノン、3−t−ブチル−1,4−ジヒドロキシベンゼン、3,5−ジ−t−ブチル−2,6−ジヒドロキシベンゼン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,3−ジシアノヒドロキノン、2−メチルレゾルシノール、4−エチルレソルシノール、3,5−ジ−t−ブチル−2,6−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられる。尚、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
[A]重合体における第2構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における第1、第2及び第3構造単位の合計を100モル%とした場合に、1モル%であることが好ましく、より好ましくは2モル%、更に好ましくは5モル%である。また、上記含有割合の上限は、95モル%であることが好ましく、より好ましくは90モル%、更に好ましくは85モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、各種有機溶媒への溶解性及び機械特性をより向上させることができる。
【0053】
[第3構造単位]
[A]重合体における第3構造単位は、下記式(3−1)及び(3−2)のうちの少なくとも一方で表される。
【0054】
【化16】
〔式(3−1)〜(3−2)中、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。e及びfは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。a及びbは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。aが2以上の場合、複数のR
10は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。bが2以上の場合、複数のR
11は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。Z
1〜Z
4は、それぞれ独立して、−O−、又は、−S−である。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、メチレン基又は炭素数2〜4のアルキレン基である。vは0〜2の整数である。vが2の場合、2つのR
5は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
1は同一であっても異なっていてもよい。wは0〜2の整数である。wが2の場合、2つのR
6は同一であっても異なっていてもよく、2つのZ
4は同一であっても異なっていてもよい。L
aは、下記式(L−1)、(L−2)、(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。yは、1〜3の整数である。yが2以上の場合、複数のL
aは、同一であっても異なっていてもよい。yが2以上かつaが1以上の場合、複数のR
10は、同一であっても異なっていてもよい。L
bは、下記式(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。Gは、−O−、−S−、−C=O−、−SO−、又は、−SO
2−である。〕
【0055】
【化17】
〔式(L−1)中、R
aは、環員数5〜30の2価の脂環式炭化水素基又は環員数5〜30の2価のフッ素化脂環式炭化水素基である。尚、「*」は結合手を示す。〕
【0056】
【化18】
〔式(L−2)中、R
20及びR
21は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。j及びkは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。q及びrは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。qが2以上の場合、複数のR
20は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。rが2以上の場合、複数のR
21は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【0057】
【化19】
〔式(L−3−1)〜(L−3−2)中、Aは、それぞれ独立して、−CO−、−SO−、又は−SO
2−である。Bは、それぞれ独立して、−O−、−S−、又は−N(R
30)−である。R
30は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基である。R
22は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基又はシアノ基である。lは、それぞれ独立して、0〜2の整数である。sは、それぞれ独立して、0〜8の整数である。sが2以上の場合、複数のR
22は、同一であっても異なっていてもよく、任意の組み合わせで結合して環構造の一部を形成してもよい。尚、「*」は結合手を示す。〕
【0058】
R
10〜R
11で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0059】
R
10〜R
11で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0060】
R
10〜R
11で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0061】
R
10〜R
11としては、それぞれ、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1〜6の1価の炭化水素基、炭素数1〜6の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基及びシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、ニトロ基及びシアノ基がより好ましく、フッ素原子、メチル基、t−ブチル基及びフェニル基が更に好ましい。
【0062】
a及びbとしては、それぞれ、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。同様の観点から、e及びfとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0063】
Z
1〜Z
4としては、それぞれ、[A]重合体の構造安定性及び重合活性の観点から、−O−であることが好ましい。
【0064】
R
5及びR
6で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基等が挙げられる。
【0065】
R
5及びR
6としては、それぞれ、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、メチレン基及びエチレン基が好ましい。
【0066】
v及びwとしては、それぞれ、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0067】
yとしては、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、1及び2が好ましく、1がより好ましい。
【0068】
L
aは、上記式(L−1)、(L−2)、(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。
【0069】
上記式(L−1)におけるR
aで表される環員数5〜30の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、環員数5〜15の単環の脂環式炭化水素基、環員数5〜15の単環のフッ素化脂環式炭化水素基、環員数7〜30の多環の脂環式炭化水素基、環員数7〜30の多環のフッ素化脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0070】
上記環員数5〜15の単環の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンタン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロペンテン−3,3−ジイル基、シクロヘキセン−3,3−ジイル基、シクロオクタン−1,1−ジイル基、シクロデカン−1,1−ジイル基、シクロドデカン−1,1−ジイル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基、これらの基の水素原子の一部又は全部が炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基で置換された基等が挙げられる。
【0071】
上記環員数5〜15の単環のフッ素化脂環式炭化水素基としては、例えば、上記環員数5〜15の単環の脂環式炭化水素基として例示した基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0072】
上記環員数7〜30の多環の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[5.2.1.02,6]ヘプタン、ピナン、カンファン、デカリン、ノルトリシクラン、ペルヒドロアントラセン、ペルヒドロアズレン、シクロペンタノヒドロフェナントレン、ビシクロ[2.2.2]−2−オクテン等の多環の脂環式炭化水素の1つの炭素原子に結合している2つの水素原子を除いた基、これらの基の水素原子の一部又は全部が炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基で置換された基などが挙げられる。
【0073】
上記環員数7〜30の多環のフッ素化脂環式炭化水素基としては、例えば、上記環員数7〜30の多環の脂環式炭化水素基として例示した基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0074】
式(L−1)で表される2価の基としては、耐熱性をより向上させる観点から、シクロペンタン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が炭素数1〜3の1価の鎖状炭化水素基で置換された基が好ましく、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、及びシクロヘキサン−1,1−ジイル基の水素原子の一部又は全部が炭素数1〜3の1価の鎖状炭化水素基で置換された基がより好ましく、シクロヘキサン−1,1−ジイル基の水素原子の一部又は全部がメチル基で置換された基が更に好ましい。
【0075】
上記式(L−2)におけるR
20及びR
21で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0076】
R
20及びR
21で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0077】
R
20及びR
21で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0078】
R
20及びR
21としては、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1〜3の1価の炭化水素基、炭素数1〜3の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基及びシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、ニトロ基及びシアノ基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0079】
q及びrとしては、それぞれ、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。同様の観点から、j及びkとしては、それぞれ、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0080】
上記式(L−3−1)及び(L−3−2)におけるR
22で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0081】
R
22で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0082】
R
22で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0083】
R
22としては、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、ハロゲン原子、炭素数1〜3の1価の炭化水素基、炭素数1〜3の1価のハロゲン化炭化水素基、ニトロ基及びシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、ニトロ基及びシアノ基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0084】
sとしては、それぞれ、第3構造単位を与える単量体の重合反応性を向上させる観点から、0及び1が好ましく、0がより好ましい。同様の観点から、lとしては、それぞれ、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0085】
R
30で表されるハロゲン原子としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表されるハロゲン原子として例示したハロゲン原子等が挙げられる。
【0086】
R
30で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。
【0087】
R
30で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基としては、例えば、上記式(1)におけるR
1で表される炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0088】
R
30としては、耐熱性の観点からフェニル基が好ましい。
【0089】
式(L−3−1)及び(L−3−2)におけるAとしては、重合活性及び溶解性の観点から、−CO−、−SO
2−が好ましい。式(L−3−1)及び(L−3−2)におけるBとしては、重合活性及び耐熱性の観点から、−O−、−N(R
30)−が好ましい。
【0090】
また、L
bは、上記式(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である。尚、L
bにおける式(L−3−1)及び(L−3−2)の説明は、上記L
aにおける式(L−3−1)及び(L−3−2)の説明をそのまま適用することができる。
【0091】
Gは、重合活性、耐熱性の観点から−O−が好ましい。
【0092】
第3構造単位としては、各種有機溶媒への溶解性をより高く維持しつつ、耐熱性をより向上させる観点から、上記式(3−1)で表される単位を有しており、式(3−1)のL
aが上記式(L−1)で表される2価の基である構造単位が好ましい。特に、式(L−1)におけるR
aが、環員数5〜15の単環の脂環式炭化水素基、又は環員数5〜15の単環のフッ素化脂環式炭化水素基である構造単位、又は、R
aが、環員数7〜30の多環の脂環式炭化水素基、又は環員数7〜30の多環のフッ素化脂環式炭化水素基である構造単位が好ましい。
【0093】
また、第3構造単位としては、各種有機溶媒への溶解性をより高く維持しつつ、耐熱性をより向上させる観点から、上記式(3−1)で表される単位を有しており、式(3−1)のL
aが上記式(L−3−1)又は(L−3−2)で表される2価の基である構造単位が好ましい。特に、式(L−3−1)及び(L−3−2)におけるAが−CO−又は−SO
2−であり、且つBが−O−又は−N(R
30)−である構造単位が好ましい。
【0094】
更に、第3構造単位としては、各種有機溶媒への溶解性をより高く維持しつつ、耐熱性をより向上させる観点から、上記式(3−2)で表される単位を有しており、Gが−O−であり、L
bを示す式(L−3−1)及び(L−3−2)におけるAが−CO−又は−SO
2−であり、且つBが−O−又は−N(R
30)−である構造単位が好ましい。
【0095】
また、[A]重合体における第3構造単位を与える単量体としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、フェノールフタレイン、o−クレゾールフタレイン、p−キシレノールフタレイン、チモールフタレイン、3’,3’’,5’,5’’−テトラヨードフェノールフタレイン、4,5,6,7−テトラブロモフェノールフタレイン、α−ナフトールフタレイン、フェノールスルホンフタレイン、o−クレゾールスルホンフタレイン、ブロモフェノールレッド、ブロモフェノールブルー、m−クレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ブロモクロロフェノールブルー、2−フェニル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2,3−ジヒドロキシ−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−
1H−イソインドール−1−オン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシンドール、フルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5−アミノフルオレセイン、6−アミノフルオレセイン等が挙げられる。尚、これらの単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
[A]重合体における第3構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における第1、第2及び第3構造単位の合計を100モル%とした場合に、1モル%であることが好ましく、より好ましくは2モル%、更に好ましくは5モル%である。また、上記含有割合の上限は、95モル%であることが好ましく、より好ましくは90モル%、更に好ましくは85モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、耐熱性及び機械特性をより向上させることができる。
【0097】
[他の構造単位]
[A]重合体は、上述した効果を損なわない範囲で、例えば、分子量の調整等のために上記第1、第2及び第3構造単位とは異なる他の構造単位を有してもよい。
【0098】
上記他の構造単位としては、例えば、上記式(3−1)において、L
aが、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−CONH−、−COO−、炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基、炭素数1〜20の2価のフッ素化鎖状炭化水素基、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基[但し、上記式(L−2)、(L−3−1)及び(L−3−2)で表される各基を除く]、又は炭素数6〜20の2価のフッ素化芳香族炭化水素基[但し、上記式(L−2)、(L−3−1)及び(L−3−2)で表される各基を除く]である構造単位等が挙げられる。
【0099】
[A]重合体が上記他の構造単位を含有する場合、他の構造単位の含有割合の下限は、[A]重合体における全構造単位に対して、1モル%であることが好ましく、より好ましくは5モル%、更に好ましくは10モル%である。また、上記含有割合の上限は、50モル%であることが好ましく、より好ましくは45モル%、更に好ましくは40モル%である。上記含有割合を上記範囲とすることにより、上述した効果を損なわない範囲で分子量の調整等を容易に行うことができる。
【0100】
[各構造単位の配列]
[A]重合体は、上記第1、第2及び第3構造単位を有する限り、各構造単位の配列については限定されないが、各種有機溶媒への溶解性をより高め、かつ耐熱性及び機械特性をより向上させる観点から、上記第1、第2及び第3構造単位を主鎖中に有することが好ましい。ここで、「主鎖」とは、重合体中で相対的に最も長い結合鎖をいう。
【0101】
また、[A]重合体が上記第1、第2及び第3構造単位を主鎖中に有すると、[A]重合体を光学部品に適用する場合に低複屈折化が容易となるため、例えば、画像の高精細化等が容易となる。更には、耐熱性及び機械特性に優れるため、例えば、[A]重合体から得られる成形体の熱劣化を抑制できるとともに、高い寸法安定性を付与することができる。
【0102】
[繰り返しユニット]
[A]重合体が第1、第2、及び第3構造単位を主鎖中に有する例としては、例えば、下記式(a−1)に示す繰り返しユニット及び下記式(a−2)に示す繰り返しユニットのうちの少なくとも一方と、下記式に示す繰り返しユニット(b−1)及び下記式(b−2)に示す繰り返しユニットのうちの少なくとも一方と、を主鎖中に有する重合体が挙げられる。
【0105】
上記式(a−1)、(a−2)、(b−1)及び(b−2)において、R
1及びnは、それぞれ、上記式(1)におけるR
1及びnと同義である。R
2〜R
4、c、d、g及びhは、それぞれ、上記式(2−1)〜(2−2)におけるR
2〜R
4、c、d、g及びhと同義である。R
5、R
6、R
10、R
11、L
a、L
b、G、Z
1〜Z
4、a、b、e、f、v及びwは、それぞれ、上記式(3−1)〜(3−2)におけるR
5、R
6、R
10、R
11、L
a、L
b、G、Z
1〜Z
4、a、b、e、f、v及びwと同義である。
【0106】
<[A]重合体の合成方法>
本発明における[A]重合体の合成方法は特に限定されないが、公知のポリ(チオ)エステルの合成方法により合成できる。例えば、第1構造単位を与えるジカルボン酸ハライド単量体と、第2構造単位を与えるジオール単量体と、第3構造単位を与えるジオール単量体又はジチオール単量体と、他の化合物とを、有機溶媒中、又は有機溶媒と水との界面において、所定の条件で反応させることで合成できる。
【0107】
上記他の化合物としては、例えば、アルカリ金属化合物、末端停止剤、相間移動触媒、上述の他の構造単位を与える単量体等が挙げられる。
【0108】
上記アルカリ金属化合物は、[A]重合体の合成の過程で、上記ジオール単量体等と反応してアルカリ金属塩を形成する。このようなアルカリ金属化合物としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩等が挙げられる。これらの中で、水酸化アルカリ金属及びアルカリ金属炭酸塩が好ましく、水酸化ナトリウム及び炭酸カリウムがより好ましい。
【0109】
上記アルカリ金属化合物を使用する場合、その使用量の下限は、[A]重合体の合成に用いる全単量体の水酸基に対するアルカリ金属化合物中の金属原子の量として、1.01倍当量が好ましく、1.03倍当量がより好ましく、1.05倍当量が更に好ましい。一方、上記使用量の上限としては、1.1倍当量が好ましく、1.07倍当量がより好ましい。
【0110】
上記有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリル、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)、トリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等が挙げられる。尚、これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
[A]重合体の合成時の反応温度は、例えば、0℃以上250℃以下である。反応時間は、例えば、5分以上100時間以下である。
【0112】
<[A]重合体の重量平均分子量(Mw)>
[A]重合体の重量平均分子量(Mw)の下限は、500であることが好ましく、より好ましくは1,000、更に好ましくは5,000、特に好ましくは10,000である。また、上記Mwの上限は、400,000であることが好ましく、より好ましくは300,000、更に好ましくは200,000、特に好ましくは150,000である。上記Mwを上記下限以上とすることにより、耐熱性をより向上させることができる。また、成形品(フィルム等)の機械強度を向上させることができる。一方、上記Mwを上記上限以下とすることにより、成形性をより向上させることができる。
【0113】
尚、上記Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により以下に示す測定条件で測定される値である。
カラム:例えば、東ソー社の「TSKgel α―M」と、東ソー社の「TSKgel
guardcоlumn α」とを連結したもの
展開溶媒:N−メチル−2−ピロリドン(LiBr 10mM添加)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:0.75質量%
試料注入量:50μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0114】
<[A]重合体のガラス転移温度(Tg)>
[A]重合体のガラス転移温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。上記ガラス転移温度の上限としては、300℃が好ましく、280℃がより好ましく、270℃が更に好ましい。上記ガラス転移温度を上記下限以上とすることにより、耐熱性をより向上させることができる。一方、上記ガラス転移温度が上記上限を超えると、成形性が低下するおそれがある。尚、このガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定装置を用い、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定した値である。
【0115】
<組成物>
本発明における組成物は、上記[A]重合体及び硬化性化合物を含有することが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で有機溶媒等、他の成分を含有してもよい。この組成物は、各種有機溶媒への溶解性に優れる[A]重合体を含有するため、各種用途に適用可能な汎用性の高い組成物として使用できる。また、本発明における組成物は、耐熱性及び機械特性に優れる[A]重合体を含有するため、この組成物から得られる成形体の熱劣化を抑制できるとともに、高い機械特性及び高い寸法安定性を付与することができる。
【0116】
上記有機溶媒としては、例えば、[A]重合体を合成する際に使用される上述の有機溶媒と同様のものが挙げられる。また、この組成物は、各種有機溶媒への溶解性に優れる[A]重合体を含有するため、[A]重合体を合成する際に使用される上述の有機溶媒以外にも、例えば、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールエーテルを使用することができる。これらの有機溶媒は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0117】
本発明の組成物における[A]重合体の含有量としては、例えば、組成物の全固形分中、10質量%以上100質量%以下とすることができる。
【0118】
本発明の組成物における有機溶媒の含有量としては、例えば[A]重合体100質量部に対して50質量部以上100,000質量部以下とすることができる。
【0119】
上記他の成分としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、離型剤、発泡剤、[A]重合体以外の他の重合体等が挙げられる。尚、これらの他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0120】
上記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物、金属系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
【0121】
ヒンダードフェノール系化合物としては、分子量500以上のものが好ましい。分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス[2−メチル−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−5−t−ブチルフェニル]ブタン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0122】
本発明における組成物が酸化防止剤を含有する場合、この酸化防止剤の含有量としては、例えば[A]重合体100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下である。
【0123】
本発明における組成物は、[A]重合体、有機溶媒、及び必要に応じて酸化防止剤等の他の成分を均一に混合することによって調製される。この組成物は、液体状、ペースト状等に調製される。
【0124】
<硬化性化合物>
本発明における硬化性化合物は、熱や光(例えば、可視光、紫外線、近赤外線、遠赤外線、電子線等)の照射により硬化する化合物であり、後述する硬化助剤を必要とするものであってもよい。このような硬化性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、アリル化合物、アクリル化合物、メタクリル化合物、ウレタン化合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。なかでも、[A]重合体との相溶性、耐熱性等の特性上の観点から、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、及びアリル化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましく、特に、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、アリル化合物、及びシリコーン化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0125】
上記エポキシ化合物としては、例えば、公知のエポキシ樹脂や、「XER−81」(JSR社製エポキシ含有NBR粒子である)]、更には、ジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型液状エポキシ、スチレン−ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0126】
(硬化性化合物の含有割合)
本発明の組成物における硬化性化合物の含有割合は、例えば、組成物全体を100質量%とした場合に、0.05質量%以上99.95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上90質量%以下、更に好ましくは20質量%以上80質量%以下である。この含有割合が上記範囲内である場合、硬化物の靱性、耐熱性、耐薬品性をより向上させる観点から好ましい。また、硬化性化合物及び[A]重合体の合計を100質量%とした場合に、硬化性化合物の含有割合は、1質量%以上99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上95質量%以下、更に好ましくは10質量%以上90質量%以下である。この含有割合が上記範囲内である場合、硬化物の靱性、耐熱性、耐薬品性をより向上させる観点から好ましい。
【0127】
[硬化助剤]
本発明における組成物は、必要に応じて硬化助剤を含有していてもよい。上記硬化助剤としては、例えば、硬化剤、光反応開始剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤)等の重合開始剤を挙げることができる。これらの硬化助剤は、種類を問わず、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0128】
上記硬化性化合物としてエポキシ化合物が用いられる場合における硬化助剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸又は酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、イミダゾール類、ポリメルカプタン系硬化剤、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系硬化剤、ルイス酸等の硬化剤を用いることができる。
【0129】
上記アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン等のポリアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等のポリメチレンジアミン;メンセンジアミン(MDA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、三井化学(株)製のNBDAに代表されるノルボルナン骨格のジアミン等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシリレンジアミン(MXDA)等の芳香環を含む脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0130】
更に、他のアミン系硬化剤としては、例えば、ポリアミンにアルデヒド及び/又はフェノールを反応させることにより得られるマンニッヒ変性ジアミン;アミンアダクト(ポリアミンエポキシ樹脂アダクト)、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、シアノエチル化ポリアミン、脂肪族ポリアミンとケトンとの反応物であるケチミン;テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、ピコリン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノフェノール、ジメチルアミノ−p−クレゾール、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザジシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の第二級アミン類又は第三級アミン類;ダイマー酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させてなる液体ポリアミド等が挙げられる。
【0131】
上記酸又は酸無水物系硬化剤としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等のポリカルボン酸;無水フタル酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンドロトリメリテート)、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物のような芳香族酸無水物;無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水メチルハイミック酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物等の環状脂肪族酸無水物;ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物等の脂肪族酸無水物;クロレンド酸無水物、テトラブロム無水フタル酸、無水ヘット酸等のハロゲン化酸無水物等が挙げられる。
【0132】
上記塩基性活性水素化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0133】
上記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリン−(1)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−エチル−4−メチルイミダゾリン−(1)]−エチル−S−トリアジン等が挙げられる。
【0134】
上記ポリメルカプタン系硬化剤としては、例えば、2,2’−ビスメルカプトエチルエーテルの部分エポキシ付加物;ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレートのようなチオグリコール酸のエステル;末端にメルカプト基を有するポリスルフィドゴムのようなメルカプト基を含む化合物等が挙げられる。
【0135】
上記イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;イソシアネート基を、フェノール、アルコール、カプロラクタム等のブロック化剤と反応させてマスクしてなるブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0136】
上記ルイス酸としては、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0137】
また、この際における硬化助剤としては、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物、トリアジン化合物、ニトロベンジル化合物のほか、有機ハロゲン化物類、ジスルホン等の光酸発生剤を用いることができる。
【0138】
更に、この際における硬化助剤としては、(Z)−{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−N−シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)メタンイミニウム テトラキス(3−フルオロフェニル)ボラート((Z)−{[Bis(dimethylamino)methylidene]amino}−N−cyclohexyl(cyclohexylamino)methaniminium tetrakis(3−fluorophenyl)borate)、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウム n−ブチルトリフェニルボラート、9−アントリルメチル N,N−ジエチルカルバメート(9−anthrylmethyl N,N−diethylcarbamate)、(E)−1−[3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]ピペリジン((E)−1−[3−(2−hydroxyphenyl)−2−propenoyl]piperidine)、1−(アントラキノン−2−イル)エチル イミダゾールカルボキシラート(1−(anthraquinon−2−yl)ethyl imidazolecarboxylate)、2−ニトロフェニルメチル 4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−カルボキシラート、1,2−ジイソプロピル−3−〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオナート等の光塩基発生剤等を用いることができる。
【0139】
上記硬化性化合物としてシアネートエステル化合物が用いられる場合における硬化助剤としては、オクタン酸、ステアリン酸、アセチルアセトネート、ナフテン酸、サリチル酸等の3級アミン、2−エチル−4−イミダゾール、4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等の硬化剤を用いることができる。更には、上記エポキシ化合物が用いられる場合における硬化助剤として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。
【0140】
上記硬化性化合物としてビニル化合物が用いられる場合における硬化助剤としては、カチオン又はラジカル活性種を、熱又は光により発生する化合物等が挙げられる。カチオン重合剤としては、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩等が挙げられる。ラジカル重合剤としては、ベンゾインアセトフェノン等のベンゾイン系化合物、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、2,4−ジエチルチオキサントン等の硫黄系化合物、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンやジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。また、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン等の光ラジカル発生剤等を用いることができる。
【0141】
上記硬化性化合物としてシリコーン化合物が用いられる場合における硬化助剤としては、安息香酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒;ロジウム系触媒;などの白金族金属触媒等の硬化剤を用いることができる。また、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノ−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、シクロヘキシルフェニルケトン等の光反応開始剤等を用いることができる。
【0142】
上記硬化性化合物としてオキサジン化合物が用いられる場合における硬化助剤としては、フェノール及びその誘導体、シアン酸エステル、p−トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸、アジピン酸や、p−トルエンスルホン酸エステルや、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、メラミン等の芳香族アミン化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の塩基、三フッ化ホウ素、ルイス酸等の硬化剤を用いることができる。更には、上記エポキシ化合物が用いられる場合における硬化助剤として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。
【0143】
上記硬化性化合物としてマレイミド化合物が用いられる場合における硬化助剤としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1,4−ジメチルピペラジン、キノリン、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、DBU等の塩基やトリフェニルホスフィン等のリン化合物、アゾビスイソブチルニトリル等の硬化剤を用いることができる。更には、上記エポキシ化合物が用いられる場合における硬化助剤として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。
【0144】
上記硬化性化合物としてアリル化合物が用いられる場合における硬化助剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ開始剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の過酸化物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1,1’−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン系の硫黄系、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン等のベンジル系、パーオキシカーボネイト系等の硬化剤を用いることができる。更には、上記エポキシ化合物が用いられる場合における硬化助剤として説明した、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。
【0145】
(硬化助剤の含有割合)
本発明における組成物が硬化助剤を含有する場合、この硬化助剤の含有割合は、本組成物が良好に硬化して、硬化物が得られる範囲であればよい。例えば、[A]重合体及び硬化性化合物の合計100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以上10質量部以下である。
【0146】
[溶剤]
本発明における組成物は、必要に応じて溶剤を含有してもよい。上記溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン等のケトン系溶剤、1,2−メトキシエタン、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多官能性溶剤、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等のスルホン系溶剤の他、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数;1〜4)、トリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数;1〜4)等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0147】
[組成物の調製方法]
本発明における組成物の調製方法は特に限定されないが、例えば、[A]重合体、硬化性化合物、及び必要に応じて他の添加剤(例えば、硬化助剤、溶剤、酸化防止剤等の他の成分)を均一に混合することによって調製することができる。また、組成物の形態は、液状、ペースト状等とすることができる。特に、本発明における[A]重合体は溶解性に優れるものであるため、液状の硬化性化合物に溶解させることで、無溶剤系の組成物とすることができる。
【0148】
<成形体>
本発明における成形体は、[A]重合体を含有し、例えば、上記組成物により得られる。この成形体は、耐熱性及び機械特性に優れる[A]重合体を含有するため、熱劣化を抑制できるとともに、高い機械特性及び高い寸法安定性を付与することができる。
【0149】
本発明における成形体としては、例えば、光学部品(波長板、位相差板等の光学フィルム、円錐レンズ、球面レンズ、円筒レンズ等の各種特殊レンズ、レンズアレイ等)、プリント配線板用絶縁性フィルム、銅箔積層板、電気電子部品の封止材、層間絶縁膜、耐熱保護膜、積層板(プリント配線基板、カバーレイ、層間接着剤、ソルダレジスト、ソルダペースト等)、接着剤(導電性接着剤、熱伝導性接着剤/接着シート等)、各種コーティング等が挙げられる。特に、“Demonstration of 20μm Pitch Micro−vias by Excimer Laser Ablation in Ultra−thin Dry−film Polymer Dielectrics for Multi−layer RDL on Glass Interposers”、 “2015 IEEE Electronic Components & Technology Conference, 922−927”、 “Demonstration of enhanced system−level reliability of ultra−thin BGA packages with circumferential polymer collars and doped solder alloys”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1377−1385”、 “Modeling, Design, Fabrication and Demonstration of RF Front−End 3D IPAC Module with Ultra−thin Glass Substrates for LTE Applications”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1297−1302”、 “Design, Demonstration and Characterization of Ultra−thin Low−warpage Glass BGA Packages for Smart Mobile Application Processor”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1465−1470”、 “Design and Demonstration of Ultra−thin Glass 3D IPD Diplexers”, 2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 2348−2352”等に記載されている実装構造の材料として好適に使用することができる。
【0150】
本発明における成形体は、例えば、金型成形法、押出成形法、溶剤キャスト法等により製造できる。レンズの製造には、金型成形法が好適である。光学フィルム及びプリント配線板用絶縁性フィルムの製造には、押出成形法及び溶剤キャスト法が好適であり、押出成形法がより好ましい。
【0151】
上記光学フィルムの平均厚みの下限としては、10μmが好ましい。上記平均厚みの上限としては、1,000μmが好ましく、500μmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限未満であると、フィルム強度を十分に確保できなくなるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超えると、フィルムの透明性を確保できなくなるおそれがある。
【実施例】
【0152】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0153】
[
1H−NMR分析]
重合体の
1H−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「ECX400P」)を使用し、測定溶媒として重クロロホルムを用いて行った。
【0154】
[重合体の合成]
(実施例1)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下、「TMC」ともいう)(9.3g、30.0mmol)、3−t−ブチル−1,4−ジヒドロキシベンゼン(以下「tBuHQ」ともいう)(5.0g、30.0mmol)、末端停止剤としてp−t−ブチルフェノール(以下、「PTBP」ともいう)(0.108g、0.72mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(NaOH)(5.1g、126.8mmol)、及び相間移動触媒としてトリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロライド(以下、「TBBAC」ともいう)(0.108g、0.24mmol)を量り入れ、イオン交換水(120g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。
別に、テレフタル酸クロライド(以下、「TPC」ともいう)(6.1g、30.2mmol)及びイソフタル酸クロライド(以下「IPC」ともいう)(6.1g、30.2mmol)をトルエン(116mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。
その後、上記ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を、上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−1)に示す実施例1の重合体P1を得た(収量18g、収率81%)。
【0155】
尚、得られた重合体P1の構造は
1H−NMRにより同定した。この際の化学シフト値を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3−d、400MHz) δ(ppm):8.96−9.94(m,0.5H)、8.47−8.27(m,3.5H)、7.65(m,0.5H)、7.36(d,4H)、7.13(d,4H)、2.62(dd,2H)、2.03(m,2H)、1.40(s,2.5H)、1.24(s、
1H)、1.01(s,6H)、0.91(s,
1H)、0.42(s,3H)
【0156】
【化22】
【0157】
(実施例2)
実施例1の重合体の合成における化合物の使用量について、TMC(18.6g、60.0mmol)、tBuHQ(1.8g、10.6mmol)、PTBP(0.127g、0.85mmol)、TBBAC(0.154g、0.49mmol)、NaOH(6.0g、149.0mmol)、イオン交換水(163g)、TPC(7.2g、35.5mmol)、IPC(7.2g、35.5mmol)、及びトルエン(136mL)に変えた以外は実施例1と同様にし、上記式(P−1)と同構造の実施例2の重合体P2を得た(収量29g、収率97%)。
【0158】
尚、得られた実施例2の重合体P2の構造は
1H−NMRにより同定した。この際の化学シフト値を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3−d、400MHz) δ(ppm):9.0−8.9(m、0.5H)、8.47−8.27(d、3.5H)、7.65(s、0.5H)、7.43(d、2H)、7.27(d、2H)、7.17(d、2H)、7.09(d、2H)、2.73(s、
1H)、2.50(s、
1H)、2.05−1.99(m、2H)、1.55(s、2.5H)、1.24(t、
1H)、1.01(s、6H)、0.91(t、
1H)、0.42(s、3H)
【0159】
(実施例3)
実施例1の重合体の合成における化合物の使用量について、TMC(18.6g、60.0mmol)、tBuHQ(3.3g、20.0mmol)、PTBP(0.144g、0.96mmol)、TBBAC(0.175g、0.56mmol)、NaOH(6.8g、169.0mmol)、イオン交換水(177g)、TPC(10.6g、52.3mmol)、IPC(5.7g、28.2mmol)、及びトルエン(154mL)に変えた以外は実施例1と同様にし、上記式(P−1)と同構造の実施例3の重合体P3を得た(収量28g、収率87%)。
【0160】
(実施例4)
実施例1の重合体の合成における化合物の使用量について、TMC(15.5g、50.0mmol)、tBuHQ(5.0g、30.0mmol)、PTBP(0.144g、0.96mmol)、TBBAC(0.175g、0.56mmol)、NaOH(6.8g、169.0mmol)、イオン交換水(177g)、TPC(9.8g、48.3mmol)、IPC(6.5g、32.2mmol)、及びトルエン(154mL)に変えた以外は実施例1と同様にし、上記式(P−1)と同構造の実施例4の重合体P4を得た(収量31g、収率98%)。
【0161】
(実施例5)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、TMC(12.4g、40.0mmol)、3,5−ジ−t−ブチル−2,6−ジヒドロキシベンゼン(8.9g、40.0mmol)、末端停止剤としてPTBP(0.144g、0.96mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(6.8g、169.0mmol)、及び相間移動触媒としてTBBAC(0.175g、0.56mmol)を量り入れ、イオン交換水(173g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。
別にTPC(8.2g、40.2mmol)及びIPC(8.2g、40.2mmol)をトルエン(154mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。このジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−2)に示す実施例5の重合体P5を得た(収量29g、収率92%)。
【0162】
尚、得られた重合体P5の構造は
1H−NMRにより同定した。この際の化学シフト値を以下に示す。
1H−NMR(CDCl
3−d、400MHz) δ(ppm):9.03−9.00(m,
1H)、8.48−8.42(m,2H)、8.35−8.29(m,4H)、8.48−8.42(m,2H)、7.67(m,
1H)、7.51(s,
1H)、7.43(d,2H)、7.27(d,2H)、7.17(d,2H)、7.09(d,2H)、7.00(s,2H)、2.72(d,
1H)、2.50(d,2H)、2.03−1.99(m,2H)、1.41(s,18H)、1.24(t、
1H)、1.01(s,6H)、0.42(s,3H)
【0163】
【化23】
【0164】
(実施例6)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、フェノールフタレイン(12.7g、40.0mmol)、tBuHQ(6.6g、40.0mmol)、末端停止剤としてPTBP(0.144g、0.96mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(6.8g、169.0mmol)、及び相間移動触媒としてTBBAC(0.175g、0.56mmol)を量り入れ、イオン交換水(161g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。
別にTPC(8.2g、40.2mmol)及びIPC(8.2g、40.2mmol)をトルエン(154mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。このジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−3)に示す実施例6の重合体P6を得た(収量27g、収率90%)。
【0165】
【化24】
【0166】
(実施例7)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、フルオレセイン(13.3g、40.0mmol)、tBuHQ(6.6g、40.0mmol)、末端停止剤としてPTBP(0.144g、0.96mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(6.8g、169.0mmol)、及び相間移動触媒としてTBBAC(0.175g、0.56mmol)を量り入れ、イオン交換水(165g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。
別にTPC(8.2g、40.2mmol)及びIPC(8.2g、40.2mmol)をトルエン(154mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。このジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−4)に示す実施例7の重合体P7を得た(収量27g、収率89%)。
【0167】
【化25】
【0168】
(比較例1)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、TMC(16.6g、53.6mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(28.5g、125.0mmol)、末端停止剤としてPTBP(0.64g、4.3mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(15.1g、380.0mmol)、及び相間移動触媒としてTBBAC(0.39g、1.25mmol)を量り入れ、イオン交換水(157g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。
別にTPC(18.3g、90.4mmol)及びIPC(18.3g、90.4mmol)をトルエン(152mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。このジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(R−1)に示す比較例1の重合体P8を得た(収量69g、収率95%)。
【0169】
【化26】
【0170】
(比較例2)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、TMC(14.0g、45.0mmol)、末端停止剤としてPTBP(0.203g、1.35mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(3.8g、95.9mmol)、及び相間移動触媒としてTBBAC(0.39g、1.25mmol)を量り入れ、イオン交換水(157g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。
別にTPC(4.6g、22.8mmol)及びIPC(4.6g、22.8mmol)をトルエン(186mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。このジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(R−2)に示す比較例2の重合体P9を得た(収量20g、収率97%)。
【0171】
【化27】
【0172】
[重合体の物性評価]
上記のようにして得られた各重合体において、「重量平均分子量(Mw)」、「ガラス転移温度(Tg)」、「溶媒溶解性」、及び「機械特性(弾性率及び引張伸び)」を、以下の方法に従い評価した。この評価結果を表1に示す。尚、表中における「−」は、該当する評価項目について測定していないことを意味する。
【0173】
<重量平均分子量(Mw)>
各重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC装置(東ソー社の「HLC−8320型」)を使用し、下記条件で測定した。
カラム:東ソー社の「TSKgel α―M」と、東ソー社の「TSKgel guardcоlumn α」とを連結したもの
展開溶媒:N−メチル−2−ピロリドン(LiBr 10mM添加)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:0.75質量%
試料注入量:50μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0174】
<ガラス転移温度(Tg)>
各重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(Rigaku社のDSC装置「Thermo Plus DSC8230」)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で得られたサーモグラムのDSC昇温曲線において、ベースラインと変曲点での接線との交点に対応する温度とした。上記変曲点は、DSC昇温曲線の微分曲線であるDDSC曲線におけるピークに対応する温度とした。また、DSCのベースラインの確認には、適宜DDSC曲線を参照した。
【0175】
<各種有機溶媒に対する溶解性>
各重合体の各種有機溶媒に対する溶解性は、各重合体を以下に示す各種有機溶媒にそれぞれ濃度10質量%となるように加え、攪拌した後、目視で沈殿物を確認できなかった場合を「A」、目視で沈殿物が確認された場合を「B」として評価した。
(有機溶媒の種類)
NMP;N−メチル−2−ピロリドン
CPN;シクロペンタノン
EDM;ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
GBL;γ−ブチロラクトン
MMP;3−メトキシプロピオン酸メチル
【0176】
<機械特性(弾性率及び引張伸び)>
各重合体の引張伸び(%)、弾性率(GPa)は、各重合体のフィルムをJIS K6251 7号形ダンベルで短冊状に切り出し、小型卓上試験機(株式会社 島津製作所の「EZ−LX」)を使用して、室温、5.0mm/minの条件で測定した。
尚、各重合体のフィルムは、各重合体12.5gを塩化メチレン250mLに溶解し、ガラス基板に流し込み、室温、窒素雰囲気下で溶媒を12時間かけて蒸発させた後、得られたフィルムを150℃で12時間、真空乾燥を行うことで得た。
【0177】
【表1】
【0178】
表1から明らかなように、実施例1〜7は、いずれもTgが234℃以上の高い値を示していた。また、実施例1〜5は、2種以上の有機溶媒に可溶(即ち、「A」評価が2つ以上)であった。特に、実施例1〜4は、2.1GPa以上の高い弾性率、及び33%以上の高い引張伸びを示しており、良好な機械特性を有していることが確認できた。一方、比較例1は、2種以上の有機溶媒に可溶であり、弾性率が2.0GPa、引張伸びが67%を示していたが、Tgが226℃と実施例に比べ低かった。また、比較例2は、Tgが270℃と高く、弾性率が1.9GPa、引張伸びが61%を示していたが、いずれの有機溶媒にも不溶(即ち、全て「B」評価)であった。これらの結果から、本発明の重合体によれば、高いTgを示しつつ、各種有機溶媒への溶解性、機械特性を向上できることが分かる。
【0179】
[実施例8]
(組成物の調製)
ペイントシェイカー(2.5mmφジルコニアビース使用)にて、上記実施例1で作製した重合体P1を20部、硬化性化合物として商品名「jER828」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270g/eq)を100部、ジシアンジアミド5部、およびメチルエチルケトン180部を混合し、組成物を調製した。
【0180】
(剪断強度)
作製した組成物に、不織布(日本バイリーン社製のナイロン製不織布、膜厚40μm、目付量13g/m
2)をディップコーティングした後、50℃で10分加熱し、次いで、0.04MPaで押圧しながら、70℃で30分加熱し、フィルム状成形体を得た。
作製したフィルム状成形体を、25mm×12.5mmの大きさに切断した後、2枚のアルミニウム板(サイズ:25mm×100mm、厚さ:2mm)の間に挟み、180℃で2時間加熱、硬化させ、剪断強度評価用試験片を作製した。ASTN D1002に準じて試験片を、Instron試験機で180度方向に引っ張り、最大荷重を剪断強度と引張り伸びとして評価した。
剪断強度が20MPa以上である場合を良好、20MPa未満である場合を不良と判断した。評価結果を表2に示す。
【0181】
(伸び)
上記で得られたフィルム状成形体をJIS K6251 7号形ダンベルの短冊状に切り出し、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、「EZ−LX」)を使用して、室温、5.0mm/minの条件で引張り試験を実施して測定した。切断時伸びの結果を表3に示す。
【0182】
(耐熱性)
さらに、作製したフィルム状成形体をポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に載置し、180℃で2時間加熱し、ガラス転移温度評価用試験片を作成した。試験片を、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル社製、「DMS7100」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/分で測定し、23℃〜350℃の温度範囲内で測定した際のTanδのピークトップをガラス転移温度として評価した。
ガラス転移温度が後述する比較例3より10℃以上高くなる場合を良好、低くなる場合を不良と判断した。評価結果を表2に示す。
【0183】
[実施例9]
(重合体P10の合成)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCFL)(15.1g、40.0mmol)、4−t−ブチルカテコール(tBuCat)(6.6g、40.0mmol)、末端停止剤としてp−t−ブチルフェノール(PTBP)(0.168g、1.1mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(NaOH)(6.8g、169.0mmol)、及び相間移動触媒としてトリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロライド(TBBAC)(0.175g、0.56mmol)を量り入れ、イオン交換水(176g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。別にテレフタル酸クロライド(TPC)(8.2g、40.3mmol)及びイソフタル酸クロライド(IPC)(8.2g、40.3mmol)をトルエン(154mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。このジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−5)に示す重合体P10を得た(収量31g、収率95%)。
【0184】
【化28】
【0185】
ペイントシェイカー(2.5mmφジルコニアビース使用)にて、作製した重合体P10を20部、硬化性化合物として商品名「jER828」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270g/eq)を100部、ジシアンジアミド5部、およびメチルエチルケトン180部を混合し、組成物を調製した。作製した組成物を用いて、実施例8と同様に試験片を作製し評価した。結果を表2に示す。
【0186】
[実施例10]
ペイントシェイカー(2.5mmφジルコニアビース使用)にて、上記実施例9で作製した重合体P10を50部、硬化性化合物として商品名「jER828」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270g/eq)を100部、ジシアンジアミド5部、およびメチルエチルケトン225部を混合し、組成物を調製した。作製した組成物を用いて、実施例8と同様に試験片を作製し評価した。結果を表2に示す。
【0187】
[比較例3]
ペイントシェイカー(2.5mmφジルコニアビース使用)にて、硬化性化合物として商品名「jER828」(三菱化学(株)製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量230〜270g/eq)を100部、ジシアンジアミド5部、およびメチルエチルケトン150部を混合し、組成物を調製した。作製した組成物を用いて、実施例8と同様に試験片を作製し評価した。結果を表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2から明らかなように、実施例8〜10の組成物から作成された硬化物は、いずれも剪断強度が20MPa以上であり、17%以上の伸びを示しており、良好な耐熱性を有していることが確認できた。一方、比較例3の組成物から作成された硬化物は、いずれの評価項目においても実施例8〜10の組成物から作成された硬化物に比べて劣っていることが確認できた。これらの結果から、本発明の重合体及び硬化性化合物を含む組成物によれば、剪断強度及び伸びに優れ、良好な耐熱性を有する成形体を作成できることがわかる。
【0190】
[実施例11]
(重合体P11の合成)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、TMC(62.1g、200.0mmol)、4,6−ジクロロピリミジン(Pym)(30.5g、204.9mmol)、及び炭酸カリウム(37.3g、270.0mmol)を量り入れ、N−メチル−2−ピロリドン(214g)を加え、窒素雰囲気下、130℃で6時間反応させた。反応終了後、N−メチル−2−ピロリドン(300g)を加えて希釈し、濾過により塩を除去した後、この溶液をメタノール(10kg)に投入した。析出した固体を濾別し、少量のメタノールで洗浄し、再度濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−6)で表される重合体P11を得た(収量;69.9g、収率;90%、重量平均分子量(Mw);69,000)。末端にOH基が無いことは、
13C−NMRから確認した。
【0191】
【化29】
【0192】
上記実施例1で作成した重合体P1を15部、上記で作製した重合体P11を70部、硬化性化合物としてジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル(日本化薬社製、製品名「XD−1000」)30部、硬化助剤として(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(製品名「BMI12」、三菱化学社製)]1.5部、シクロペンタノン370部を混合し、の組成物を調製した。
【0193】
(耐薬品性)
作製した組成物を、基材(4インチウエハの1/4カット)上にスピンコーター(MIKASA Spindoter1H−D7)で塗布し、70℃15分、120℃15分で溶媒を乾燥させた。焼成オーブン(エスペックSSPH−101M)で、窒素下で150℃30分、200℃180分で硬化して評価用試験片を作成した(厚み10〜20μm)。トルエン50ml中に、塗布・乾燥済みの4インチウエハーの1/4カットサンプルを基材ごと室温で10分浸漬した後、120℃真空下3時間条件で硬化膜を乾燥させた。そして、[(浸漬乾燥後の硬化物塗布基材の重量−基材の重量)/(浸漬前の硬化物の塗布基材の重量−基材の重量)×100]により残存率(%)を算出し、残存率が90%以上の場合を良好と判断して「○」、90%未満の場合を不良と判断して「×」と記載した。結果を表3に示す。
【0194】
(線膨張係数(CTE))
組成物をPETフィルム上に塗膜した後、70℃で15分、120℃で15分、空気中で加熱し、PETフィルムから剥離し、得られたフィルム体をさらに200〜250℃で3時間、空気中で加熱処理することで、評価用フィルムを得た。作製した評価用フィルムの線膨張係数を、Seiko Instruments社製、SSC−5200型TMA測定装置を用いて測定した。この際、評価用フィルムを、そのガラス転移温度よりも20℃低い温度まで5℃/minで昇温した際の100〜150℃でのTMA曲線の勾配から線膨張係数を算出した。結果を表3に示す。
【0195】
(弾性率及び伸び)
上記で得られた評価用フィルムをJIS K6251 7号形ダンベルの短冊状に切り出し、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、「EZ−LX」)を使用して、室温、5.0mm/minの条件で引張り試験を実施して測定した。弾性率が3GPa以上である場合、良好と判断する。弾性率及び切断時伸びの結果を表3に示す。
【0196】
[実施例12]
上記実施例2で作成した重合体P2を15部、上記実施例11で作成した重合体P11を70部、硬化性化合物としてジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル(日本化薬社製、製品名「XD−1000」)30部、硬化助剤として(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(製品名「BMI12」、三菱化学社製)]1.5部、及溶剤(シクロペンタノン)370部を混合し、組成物を調製した。作製した組成物を用いて、実施例11と同様に試験片を作製し評価した。結果を表3に示す。
【0197】
[実施例13]
(重合体P12の合成)
攪拌装置を備えた四つ口セパラブルフラスコに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TMC)(8.7g、28.0mmol)、4−t−ブチルカテコール(tBuCat)(4.7g、28.0mmol)、アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウム(NaOH)(4.7g、118.0mmol)、及び相間移動触媒としてトリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロライド(TBBAC)(0.122g、0.39mmol)を量り入れ、イオン交換水(240g)を加え、ジオール単量体水溶液を調製した。別にテレフタル酸クロライド(TPC)(5.7g、28.0mmol)及びイソフタル酸クロライド(IPC)(5.7g、28.0mmol)をトルエン(228mL)に溶解させ、ジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を調製した。このジカルボン酸ハライド単量体有機溶液を上記ジオール単量体水溶液に強攪拌下で投入し、室温下、3時間かけて界面重縮合反応を行った。反応終了後、酢酸を投入し、残存するアルカリ金属化合物を中和した。静置して水相と有機相とを分離させた後、デカンテーションで水相を抜き取った。残った有機相に対し、等量のイオン交換水で水洗する作業を3回繰り返した。洗浄後の有機相を過剰量のメタノールに強攪拌下で投入し、析出した固体を濾別して回収した後、真空乾燥機を用いて減圧下120℃で12時間乾燥し、下記式(P−7)に示す重合体P12を得た(収量19g、収率90%)。
【0198】
【化30】
【0199】
前記実施例11で作成した重合体P11を70質量部、前記作製した重合体P12を15部、硬化性化合物としてジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル(日本化薬社製、製品名「XD−1000」)30部、硬化助剤として(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(製品名「BMI12」、三菱化学社製))1.5部、シクロペンタノン370部を混合し、組成物を調製した。作製した組成物を用いて、実施例11と同様に試験片を作製し評価した。結果を表3に示す。
【0200】
[比較例4]
前記実施例11で作製した重合体P11を100質量部、シクロペンタノンを300質量部混合し、組成物を調製した。作製した組成物を用いて、実施例11と同様に試験片を作製し評価した。結果を表3に示す。
【0201】
[比較例5]
硬化性化合物としてジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル(日本化薬社製、製品名「XD−1000」)30部、硬化助剤として(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(製品名「BMI12」、三菱化学社製)]1.5部、シクロペンタノン100部を混合し、組成物を調製した。作製した組成物を用いて、実施例11と同様に試験片を作製し評価した。結果を表3に示す。
【0202】
【表3】
【0203】
表3から明らかなように、実施例11〜13の組成物から作成された硬化物は、いずれも弾性率が3.0GPa以上であり、17%以上の伸びを示しており、良好な耐薬品性及び線膨張係数を有していることが確認できた。一方、比較例4の組成物から作成された硬化物は、耐薬品性及び弾性率の点で、実施例11〜13の組成物から作成された硬化物に比べて劣っていることが確認できた。また、比較例5の硬化物から作成された成形体は、弾性率の点で、実施例11〜13の組成物から作成された硬化物に比べて劣っていることが確認できた。これらの結果から、本発明の2種類の重合体及び硬化性化合物を含有する組成物によれば、線膨張係数、伸び及び弾性率に優れ、良好な耐薬品性を有する硬化物を作成できることがわかる。