特許第6981428号(P6981428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000003
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000004
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000005
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000006
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000007
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000008
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000009
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000010
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000011
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000012
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000013
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000014
  • 特許6981428-情報処理装置および情報処理方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981428
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20211202BHJP
【FI】
   G06Q10/04
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-553762(P2018-553762)
(86)(22)【出願日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2017041186
(87)【国際公開番号】WO2018101050
(87)【国際公開日】20180607
【審査請求日】2020年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-232173(P2016-232173)
(32)【優先日】2016年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】高松 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 由幸
(72)【発明者】
【氏名】野田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰史
【審査官】 大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−070596(JP,A)
【文献】 特開2006−135412(JP,A)
【文献】 特開2007−080190(JP,A)
【文献】 特開2012−251777(JP,A)
【文献】 特開2004−272506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信装置それぞれに関する情報に基づいて、前記複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を使用装置として選択する選択部
を備え
前記選択部は、前記複数の送信装置以外の複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報と、前記複数の教師用の送信装置から1つを除いた送信装置から送信された観測情報を用いた予測の予測精度とに基づいて、前記複数の送信装置それぞれの予測への寄与度を予測する寄与度予測モデルを生成し、前記寄与度予測モデルを用いて前記寄与度を算出し、前記寄与度に基づいて前記使用装置を選択する
ように構成された
情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の送信装置それぞれに関する情報は、前記複数の送信装置の属性情報であり、
前記複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報は、前記複数の教師用の送信装置の属性情報である
ように構成された
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数の送信装置それぞれに関する情報は、過去に予測に寄与した送信装置と前記複数の送信装置それぞれとの関連度であり、
前記複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報は、前記過去に予測に寄与した送信装置と前記複数の教師用の送信装置それぞれとの関連度である
ように構成された
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数の送信装置それぞれに関する情報は、過去に予測に寄与しなかった送信装置と前記複数の送信装置それぞれとの関連度であり、
前記複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報は、前記過去に予測に寄与しなかった送信装置と前記複数の教師用の送信装置それぞれとの関連度である
ように構成された
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数の送信装置それぞれに関する情報は、他の送信装置と前記複数の送信装置それぞれとの関連度であり、
前記複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報は、他の教師用の送信装置と前記複数の教師用の送信装置それぞれとの関連度である
ように構成された
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記使用装置のうちの一部を前記使用装置として選択しない場合の予測精度の予測値に基づいて、前記使用装置のうちの一部を前記使用装置として選択しないことにより、前記使用装置を更新する
ように構成された
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
複数の機器のそれぞれに、前記複数の送信装置が設置され、
前記選択部は、前記複数の機器に対して同一の前記使用装置を選択する
ように構成された
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記機器ごとに、前記予測の結果に基づく頻度で、前記使用装置から送信されてくる前記観測情報に基づいて前記予測を行う予測部
をさらに備える
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置が、
複数の送信装置それぞれに関する情報に基づいて、前記複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を使用装置として選択する選択ステップ
を含み、
前記選択ステップの処理では、前記複数の送信装置以外の複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報と、前記複数の教師用の送信装置から1つを除いた送信装置から送信された観測情報を用いた予測の予測精度とに基づいて、前記複数の送信装置それぞれの予測への寄与度を予測する寄与度予測モデルを生成し、前記寄与度予測モデルを用いて前記寄与度を算出し、前記寄与度に基づいて前記使用装置を選択する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置および情報処理方法に関し、特に、複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を容易に選択することができるようにした情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量のセンサの観測情報から、ある事象が起こることを予測するシステムは数多く存在する。例えば、挙動や状態を計測するセンサを製造機器に多数取り付け、それらのセンサの観測情報から製造機器の故障を予測するシステムがある。また、気候や農作物の状態を観測するセンサを農地に多数取り付け、それらのセンサの観測情報から農作物の正常な生育を予測するシステムもある。
【0003】
このようなシステムでは、取り付けられた多数のセンサのうちの、ごくわずかな一部のセンサのみで、予測に必要十分な観測情報を取得している場合が多い。また、予測に必要ではない観測情報を用いて予測を行うことは、予測精度の低下、予測演算や通信のリソースの浪費、消費電力の増加などに繋がる。従って、取り付けられた多数のセンサから、予測に用いるセンサを選択する必要がある。
【0004】
そこで、予測システムの利用者や設計者などの人間が、予測分野や予測システムに対する事前知識に基づいて、予測に用いるセンサを選択することが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-109019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、予測に用いるセンサの選択には、予測分野や予測システムに対する高度な事前知識が必要である。従って、予測システムの利用者や設計者などの人間の事前知識によらず、観測情報を送信するセンサなどの複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を容易に選択可能にすることが望まれている。
【0007】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を容易に選択することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面の情報処理装置は、複数の送信装置それぞれに関する情報に基づいて、前記複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を使用装置として選択する選択部を備え、前記選択部は、前記複数の送信装置以外の複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報と、前記複数の教師用の送信装置から1つを除いた送信装置から送信された観測情報を用いた予測の予測精度とに基づいて、前記複数の送信装置それぞれの予測への寄与度を予測する寄与度予測モデルを生成し、前記寄与度予測モデルを用いて前記寄与度を算出し、前記寄与度に基づいて前記使用装置を選択するように構成された情報処理装置である。
【0009】
本開示の一側面の情報処理方法は、本開示の一側面の情報処理装置に対応する。
【0010】
本技術の一側面においては、複数の送信装置それぞれに関する情報に基づいて、前記複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置が使用装置として選択される。なお、前記使用装置を選択する処理では、前記複数の送信装置以外の複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報と、前記複数の教師用の送信装置から1つを除いた送信装置から送信された観測情報を用いた予測の予測精度とに基づいて、前記複数の送信装置それぞれの予測への寄与度を予測する寄与度予測モデルが生成され、前記寄与度予測モデルを用いて前記寄与度が算出され、前記寄与度に基づいて前記使用装置が選択される。
【0011】
なお、本開示の一側面の情報処理装置は、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現することができる。
【0012】
また、本開示の一側面の情報処理装置を実現するために、コンピュータに実行させるプログラムは、伝送媒体を介して伝送することにより、又は、記録媒体に記録して、提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一側面によれば、複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を容易に選択することができる。
【0014】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示を適用した故障予測システムの第1実施の形態の構成例を示す図である。
図2図1の情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図3図2の情報処理装置の故障確率算出処理を説明するフローチャートである。
図4図3の故障予測処理を説明するフローチャートである。
図5図3のセンサ選択処理を説明するフローチャートである。
図6】差分Yを説明する図である。
図7図5のステップS95における処理対象のセンサ集合の例を示す図である。
図8図5の予測精度値算出処理を説明するフローチャートである。
図9図2の学習部の学習処理を説明するフローチャートである。
図10】本開示を適用した故障予測システムの第2実施の形態の構成例を示す図である。
図11図10の情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図12図11の情報処理装置の故障確率算出処理を説明するフローチャートである。
図13】コンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1実施の形態:故障予測システム(図1乃至図9
2.第2実施の形態:故障予測システム(図10乃至図12
3.第3実施の形態:コンピュータ(図13
【0017】
<第1実施の形態>
(故障予測システムの構成例)
図1は、本開示を適用した故障予測システムの第1実施の形態の構成例を示す図である。
【0018】
図1の故障予測システム10は、産業用ロボット11と情報処理装置12により構成され、産業用ロボット11の故障確率を予測する。
【0019】
具体的には、産業用ロボット11は、産業用ロボット11の故障状態や稼働状態などを観測する状態観測部20を有している。状態観測部20は、情報処理装置12からの要求に応じて、産業用ロボット11の故障状態を情報処理装置12に送信する。
【0020】
また、産業用ロボット11には、N個(Nは複数)のセンサ21−1乃至21−Nが設置されている。なお、以下では、センサ21−1乃至21−Nを特に区別する必要がない場合、それらをまとめてセンサ21という。センサ21は、例えば、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、磁気センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、振動センサ、音センサ、およびカメラのいずれかにより構成される。
【0021】
センサ21は、温度情報、湿度情報、気圧情報、磁場情報、加速度情報、振動情報、音声、画像などの観測情報を取得する。センサ21(送信装置)は、情報処理装置12からの要求に応じて、観測情報を情報処理装置12に送信する。
【0022】
情報処理装置12は、N個のセンサ21から、産業用ロボット11の故障確率の予測に用いる観測情報を送信するセンサ21を使用センサ(使用装置)として選択する。情報処理装置12は、使用センサに対して観測情報を要求し、その要求に応じて送信されてくる観測情報を受信する。また、情報処理装置12は、故障状態を状態観測部20に要求し、その要求に応じて送信されてくる故障状態を受信する。
【0023】
情報処理装置12は、使用センサの観測情報と故障状態に基づいて、産業用ロボット11の故障確率を予測する故障予測モデルを生成する。また、情報処理装置12は、使用センサの観測情報と故障予測モデルに基づいて、産業用ロボット11の故障確率を予測し、出力する。
【0024】
なお、第1実施の形態では、産業用ロボット11と情報処理装置12の間の通信は、無線通信であるものとするが、有線通信であってもよい。
【0025】
(情報処理装置の構成例)
図2は、図1の情報処理装置12の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図2の情報処理装置12は、センサ情報データベース41、選択部42、観測情報データベース43、学習部44、および予測部45により構成される。
【0027】
情報処理装置12のセンサ情報データベース41は、各センサ21の属性情報を格納する。センサ21の属性情報としては、センサ21の種類、センサ21の産業用ロボット11上の位置座標、センサ21が設置された産業用ロボット11のパーツ、センサ21が観測情報を取得する間隔(観測情報の時間解像度)、センサ21が取得する観測情報の感度などがある。
【0028】
選択部42は、使用センサの選択の準備処理として、全てのセンサ21に所定の時間の観測情報を要求し、その観測情報を標準観測情報として取得する処理等を行う。選択部42は、取得された全てのセンサ21の標準観測情報等を観測情報データベース43に供給する。
【0029】
また、選択部42は、全てのセンサ21の標準観測情報、センサ情報データベース41に格納されている各センサ21の属性情報などに基づいて、N個のセンサ21から使用センサのセンサ集合Sの初期値を選択する。センサ集合Sの初期値の選択方法としては、例えば、以下の3つの方法がある。
【0030】
第1の選択方法は、各センサ21を属性情報に基づいて複数のクラスタにクラスタリングし、各クラスタから選択された1つのセンサ21を使用センサとして含むセンサ集合をセンサ集合Sの初期値とする方法である。
【0031】
第2の選択方法は、各センサ21の標準観測情報に基づいて、例えば、標準観測情報の時間変化が同一であるセンサ21どうしを同一のクラスタにクラスタリングし、各クラスタから選択された1つのセンサ21を使用センサとして含むセンサ集合をセンサ集合Sの初期値とする方法である。
【0032】
第3の選択方法は、各センサ21の標準観測情報と、その標準観測情報に対応する故障情報(詳細は後述する)との関連度が高いセンサ21を使用センサとして含むセンサ集合をセンサ集合Sの初期値とする方法である。第3の選択方法が用いられる場合、準備処理では、状態観測部20に故障状態が要求され、その要求に応じて送信されてくる故障状態に基づいて、標準観測情報ごとに故障情報が生成される。そして、この故障情報が、センサ集合Sの初期値の選択に用いられる。
【0033】
なお、各観測情報の故障情報は、その観測情報が観測されてから6時間以内に産業用ロボット11の故障が発生したかどうかを示す情報である。故障情報は、例えば、観測情報が観測されてから6時間以内に産業用ロボット11の故障が発生したことを示す場合1であり、発生していないことを示す場合0である。第1乃至第3の選択方法は組み合わされてもよい。
【0034】
選択部42は、使用センサに10分ごとの観測情報を要求する。選択部42は、その要求に応じて使用センサから送信されてくる10分ごとの観測情報を観測情報データベース43と予測部45に供給する。また、選択部42は、使用センサの観測情報および故障情報、各センサ21の属性情報等に基づいて、N個のセンサ21から選択されるセンサ集合Sを更新する。選択部42は、センサ集合Sに含まれる使用センサを示す使用センサ情報を学習部44に供給する。
【0035】
また、選択部42は、状態観測部20に故障状態を要求し、その要求に応じて状態観測部20から送信されてくる故障状態を取得する。選択部42は、故障状態に基づいて、各使用センサの観測情報ごとに故障情報を生成する。選択部42は、生成された故障情報を観測情報データベース43に供給する。
【0036】
観測情報データベース43は、選択部42から供給される使用センサの観測情報と標準観測情報を格納する。また、観測情報データベース43は、選択部42から供給される各使用センサの観測情報ごとの故障情報を、その観測情報に対応付けて格納する。
【0037】
学習部44は、選択部42から供給される使用センサ情報に基づいて、観測情報データベース43に格納されている使用センサの10分ごとの観測情報と、その観測情報に対応付けられている故障情報とを読み出し、故障予測用学習データDBLとする。この故障予測用学習データDBLは、以下の式(1)で表すことができる。
【0038】
【数1】
・・・(1)
【0039】
は、各使用センサのi番目(i=1,2,...)の10分間の観測情報であり、yは、観測情報xに対応する故障情報である。なお、観測情報xと観測情報x(i≠j)に対応する10分間の期間は重ならない。学習部44は、故障予測用学習データDBLを用いて、Stochastic Gradient Descentなどの機械学習アルゴリズムにしたがって、故障予測モデルのパラメータを機械学習する。
【0040】
故障予測モデルは、使用センサの10分間の観測情報xを入力とし、産業用ロボット11の6時間以内の故障確率の予測値fを出力とするパラメータwを有する関数モデルf(x;w)である。故障予測モデルf(x;w)としては、ロジスティック回帰モデルやConvolutional Neural Networkなどを用いることができる。学習部44は、学習されたパラメータwを予測部45に供給する。
【0041】
予測部45は、学習部44から供給されるパラメータwと、選択部42から供給される使用センサの観測情報xとを用いて、故障予測モデルf(x;w)にしたがって、産業用ロボット11の6時間以内の故障確率の予測値fを算出し、出力する。
【0042】
(情報処理装置の処理の説明)
図3は、図2の情報処理装置12の故障確率算出処理を説明するフローチャートである。
【0043】
図3のステップS11において、選択部42は、使用センサの選択の準備処理を行う。具体的には、選択部42は、例えば、所定の時間の観測情報を全てのセンサ21に要求すし、その要求に応じて全てのセンサ21から送信されてくる所定の時間の観測情報を受信する。そして、選択部42は、受信された全てのセンサ21の観測情報を標準観測情報として観測情報データベース43に供給し、格納させる。
【0044】
ステップS12において、選択部42は、N個のセンサ21から、使用センサのセンサ集合Sの初期値を選択する。選択部42は、センサ集合Sの初期値に含まれる各センサ21を使用センサとして示す使用センサ情報を学習部44に供給する。
【0045】
ステップS13において、選択部42は、センサ集合Sに含まれる各使用センサに、その使用センサの観測情報を要求するとともに、状態観測部20に故障状態を要求する。
【0046】
ステップS14において、選択部42は、ステップS13の処理による要求に応じて各使用センサから送信されてくる観測情報と、状態観測部20から送信されてくる故障状態を取得する。選択部42は、取得された各使用センサの観測情報を観測情報データベース43と予測部45に供給する。また、選択部42は、取得された故障状態に基づいて、各使用センサの観測情報ごとの故障情報を生成し、観測情報データベース43に供給する。これにより、観測情報データベース43は、選択部42から供給される各使用センサの観測情報と、その観測情報に対応する故障情報とを対応付けて格納する。
【0047】
ステップS15において、予測部45は、選択部42から供給される10分間の観測情報xに基づいて故障確率の予測値fを算出する故障予測処理を行う。この故障予測処理の詳細は、後述する図4を参照して説明する。
【0048】
ステップS16において、情報処理装置12は、故障確率算出処理を終了するかどうかを判定する。ステップS16で故障確率算出処理を終了しないと判定された場合、処理はステップS17に進む。
【0049】
ステップS17において、選択部42は、前回の準備処理から1週間が経過したかどうかを判定する。なお、準備処理のインターバルは、1週間に限定されない。ステップS17で前回の準備処理からまだ1週間が経過していないと判定された場合、処理はステップS13に戻り、前回の準備処理から1週間が経過するまで、ステップS13乃至S17の処理が繰り返される。
【0050】
一方、ステップS17で前回の準備処理から1週間が経過したと判定された場合、ステップS18において、選択部42は、使用センサの選択の準備処理を行う。
【0051】
ステップS19において、選択部42は、N個のセンサ21から使用センサのセンサ集合Sを選択するセンサ選択処理を行う。このセンサ選択処理の詳細は、後述する図5を参照して説明する。
【0052】
ステップS20において、選択部42は、ステップS19の処理により選択されたセンサ集合Sを示す使用センサ情報を学習部44に供給する。そして、処理はステップS13に戻り、以降の処理が繰り返される。
【0053】
図4は、図3のステップS15の故障予測処理を説明するフローチャートである。
【0054】
図4のステップS41において、予測部45は、選択部42から供給される各使用センサの10分間の観測情報を取得する。
【0055】
ステップS42において、予測部45は、学習部44から供給されるパラメータwと、ステップS41で取得された観測情報xとを用いて、故障予測モデルf(x;w)にしたがって、産業用ロボット11の6時間以内の故障確率の予測値fを算出する。予測部45は、算出された故障確率の予測値fを出力する。そして、処理は図3のステップS15に戻り、ステップS16に進む。
【0056】
図5は、図3のステップS19のセンサ選択処理を説明するフローチャートである。
【0057】
図5のステップS81において、選択部42は、ステップS14により取得された1週間分の各使用センサの10分ごとの観測情報xと、その観測情報xに対応する故障情報yとからなる1週間データDを2分割する。そして、選択部42は、2分割された一方を故障予測用学習データDとし、他方を予測精度算出用データDとする。
【0058】
ステップS82において、選択部42は、pを0に設定する。
【0059】
ステップS83において、選択部42は、センサ集合Sを処理対象のセンサ集合とする。
【0060】
ステップS84において、選択部42は、処理対象のセンサ集合から送信された観測情報を用いた故障確率の予測の予測精度値を算出する予測精度値算出処理を行う。この予測精度値算出処理の詳細は、後述する図8を参照して説明する。
【0061】
ステップS85において、選択部42は、pが0であるかどうかを判定する。ステップS85でpが0であると判定された場合、処理はステップS86に進む。
【0062】
ステップS86において、選択部42は、pを1だけインクリメントする。ステップS87において、選択部42は、センサ集合Sからp番目の使用センサsを除いたセンサ集合S´を処理対象のセンサ集合とし、処理をステップS84に戻す。
【0063】
一方、ステップS85でpが0ではないと判定された場合、ステップS88において、選択部42は、センサ集合S´の予測精度値からセンサ集合Sの予測精度値を減算した差分Yを算出する。選択部42は、センサ集合Sに対応付けて差分Yを保持する。
【0064】
ステップS89において、選択部42は、寄与度予測用学習データDCLに、教師用のセンサ(教師用の送信装置)としての使用センサsのセンサ情報X(教師情報)と差分Yを含める。センサ情報は、センサ21ごとに生成される、センサ21に関する情報である。具体的には、各センサ21のセンサ情報は、そのセンサ21の属性情報、他の使用センサとの関連度、センサ集合Sにおいて過去に故障確率の予測に寄与したセンサ21との関連度、およびセンサ集合Sにおいて過去に故障確率の予測に寄与しなかったセンサ21との関連度の少なくとも1つからなる。
【0065】
他の使用センサとの関連度とは、例えば、標準観測情報に含まれる、センサ情報に対応するセンサ21の観測情報の正規化値と、そのセンサ21以外のセンサ集合Sに含まれる使用センサの観測情報の正規化値との時間変化の相関度である。
【0066】
また、図6に示すように、センサ集合S´は、センサ集合Sから使用センサsを除いたセンサ集合である。従って、差分Yが正である場合、使用センサsは故障確率の予測に用いられない方が良い。即ち、この場合、使用センサsは、故障確率の予測に寄与しないセンサである。一方、差分Yが負である場合、使用センサsは故障確率の予測に用いられた方が良い。即ち、この場合、使用センサsは、故障確率の予測に寄与するセンサである。
【0067】
従って、センサ集合Sにおいて過去に故障確率の予測に寄与した使用センサとの関連度とは、例えば、標準観測情報に含まれる、センサ情報に対応するセンサ21の観測情報の正規化値と、センサ集合Sに対応付けて保持されている過去の差分Yが負である各使用センサsの観測情報の正規化値の時間変化の類似度を表す相関度の平均値である。
【0068】
また、センサ集合Sにおいて過去に故障確率の予測に寄与しなかった使用センサとの関連度とは、例えば、標準観測情報に含まれる、センサ情報に対応するセンサ21の観測情報の正規化値と、センサ集合Sに対応付けて保持されている過去の差分Yが正である各使用センサsの観測情報の正規化値の時間変化の類似度を表す相関度の平均値である。
【0069】
ステップS90において、選択部42は、pが、センサ集合Sに含まれる使用センサの数n以上であるかどうかを判定する。ステップS90でpが、センサ集合Sに含まれる使用センサの数nより小さいと判定された場合、処理はステップS86に進み、上述した処理が行われる。
【0070】
一方、ステップS90でpが、センサ集合Sに含まれる使用センサの数n以上であると判定された場合、処理はステップS91に進む。
【0071】
ステップS91において、選択部42は、寄与度予測用学習データDCLを用いて、機械学習アルゴリズムにしたがって、寄与度予測モデルを機械学習する。寄与度予測モデルは、センサ集合Sに含まれない各センサ21のセンサ情報Xを入力とし、そのセンサ21をセンサ集合Sに追加したときのセンサ21の故障確率の予測への寄与度の予測値fcを出力とする関数モデルfc(X)である。なお、寄与度の予測値fcは、故障確率の予測に寄与している場合正であり、故障確率の予測に寄与していない場合負である。
【0072】
ステップS92において、選択部42は、センサ集合Sに含まれない各センサ21のセンサ情報Xを用いて、寄与度予測モデルfc(X)にしたがって、各センサ21(複数の送信装置それぞれ)の寄与度の予測値fcを算出する。
【0073】
ステップS93において、選択部42は、ステップS92で算出された寄与度の予測値fcに基づいて、寄与度の予測値fcが正であるセンサ21をセンサ集合Sに追加する使用センサである追加センサとして選択する。なお、センサ集合Sに追加可能なセンサ21の数の上限が予め決められていてもよい。この場合、選択部42は、寄与度の予測値fcが大きい方から順に、上限までの数だけセンサ21を追加センサとして選択する。
【0074】
ステップS94において、選択部42は、ステップS88で算出された差分Yが大きい方から順にm個(m<n)の使用センサsを選択する。
【0075】
ステップS95において、選択部42は、ステップS94で選択されたm個の使用センサの各部分集合をそれぞれ、センサ集合Sから除いたセンサ集合を処理対象のセンサ集合として、ステップS84の処理と同様に予測精度値算出処理を行う。
【0076】
例えば、mが3である場合、3個の使用センサsを、使用センサs,s,sとすると、使用センサs,s、およびsの部分集合は、図7に示すように、(s,s,s),(s,s),(s,s),(s,s),(s),(s)、および(s)である。従って、選択部42は、センサ集合Sから(s,s,s)を除いたセンサ集合S1、センサ集合Sから(s,s)を除いたセンサ集合S2、センサ集合Sから(s,s)を除いたセンサ集合S3、センサ集合Sから(s,s)を除いたセンサ集合S4、センサ集合Sから(s)を除いたセンサ集合S5、センサ集合Sから(s)を除いたセンサ集合S6、およびセンサ集合Sから(s)を除いたセンサ集合S7を、それぞれ、処理対象のセンサ集合として予測精度値算出処理を行う。なお、図7において、点線は、センサ集合に含まない使用センサを表している。
【0077】
ステップS96において、選択部42は、ステップS95の予測精度値算出処理で算出された予測精度値が最も高いセンサ集合に対応する部分集合を、センサ集合Sから除去する使用センサである除去センサとして選択する。
【0078】
ステップS97において、選択部42は、センサ集合Sに対して、ステップS93で選択された追加センサを追加し、ステップS96で選択された除去センサを除去することにより、N個のセンサ21から新たなセンサ集合Sを選択する。そして、処理は、図3のステップS19に戻り、ステップS20に進む。
【0079】
なお、センサ集合Sに含まれないセンサ21の数が多い場合、選択部42は、センサ情報に基づいて、そのセンサ21を複数のクラスタにクラスタリングし、各クラスタを代表する1つのセンサ21の寄与度の予測値fcに基づいて追加センサを選択するようにしてもよい。この場合、選択部42は、例えば、寄与度の予測値fcが正であるセンサ21が代表するクラスタに含まれる全てのセンサ21を追加センサとする。なお、選択部42は、寄与度の予測値fcが正であるセンサ21が代表するクラスタに含まれる各センサ21の寄与度の予測値fcを算出し、その予測値fcが正であるセンサ21のみを追加センサとするようにしてもよい。
【0080】
図8は、図5のステップS84の予測精度値算出処理を説明するフローチャートである。
【0081】
図8のステップS111において、選択部42は、処理対象のセンサ集合の故障予測用学習データを用いて、機械学習アルゴリズムにしたがって、パラメータwを機械学習する。なお、処理対象のセンサ集合の故障予測用学習データとは、図5のステップS81で生成されたセンサ集合Sに含まれる全ての使用センサの観測情報xと故障情報yを含む故障予測用学習データDのうちの、処理対象のセンサ集合に含まれる使用センサの観測情報xと故障情報yである。
【0082】
ステップS112において、選択部42は、ステップS111で機械学習されたパラメータwと、処理対象のセンサ集合の10分間の予測精度算出用データとを用いて、故障予測モデルf(x;w)にしたがって、産業用ロボット11の6時間以内の故障確率の予測値fを算出する。
【0083】
なお、処理対象のセンサ集合の予測精度算出用データとは、図5のステップS81で生成されたセンサ集合Sに含まれる全ての使用センサの観測情報xと故障情報yを含む予測精度算出用データのうちの、処理対象のセンサ集合に含まれる使用センサの観測情報xと故障情報yである。
【0084】
ステップS113において、選択部42は、ステップS112で算出された故障確率の予測値fと、その予測値fの算出に用いられた10分間の予測精度算出用データのうちの故障情報yとに基づいて、処理対象のセンサ集合の観測情報を用いた故障確率の予測の予測精度値(評価値)を算出する。なお、ここでは、予測精度値は、予測精度が高いほど大きい値であるものとする。ステップS113の処理後、処理は図5のステップS84に戻り、ステップS85に進む。
【0085】
図9は、図2の学習部44の学習処理を説明するフローチャートである。この学習処理は、例えば、最初の図3のステップS14の処理後から故障確率算出処理が終了するまでの間に、所定の時間(例えば、24時間)ごとに、行われる。
【0086】
図9のステップS161において、学習部44は、使用センサ情報に基づいて、観測情報データベース43に格納されている各使用センサの10分間ごとの観測情報xと、その観測情報xに対応付けられている故障情報yとを読み出し、故障予測用学習データDBLとする。
【0087】
ステップS162において、学習部44は、故障予測用学習データDBLを用いて、機械学習アルゴリズムにしたがって、故障予測モデルf(x;w)のパラメータwを機械学習する。
【0088】
ステップS163において、学習部44は、ステップS162で機械学習されたパラメータwを予測部45に供給し、処理を終了する。
【0089】
以上のように、情報処理装置12は、N個のセンサ21それぞれに関する情報に基づいて、N個のセンサ21から使用センサを選択する。従って、情報処理装置12は、故障予測システム10の利用者や設計者などの人間の予測分野や故障予測システム10に対する事前知識によらず、故障確率の予測に必要十分な観測情報を送信するセンサ21を使用センサとして容易に選択することができる。
【0090】
また、情報処理装置12は、使用センサの観測情報のみを用いて故障確率を予測することにより、N個のセンサ21全ての観測情報を用いて故障確率を予測する場合に比べて、故障確率の予測の予測精度の向上させることができる。また、情報処理装置12は、故障確率の予測における演算やセンサ21との間の通信のリソースの消費を削減することもできる。
【0091】
さらに、情報処理装置12は、使用センサを定期的に更新するので、産業用ロボット11の環境や状況が変化した場合であっても、常に、故障確率の予測に必要十分な観測情報を送信するセンサ21を使用センサとすることができる。
【0092】
また、情報処理装置12が、使用センサとして選択されたセンサ21のセンサ情報を故障予測システム10の利用者に通知する場合、故障予測システム10の利用者は、そのセンサ情報に基づいて、故障の要因を知ることができる。
【0093】
なお、センサ21の数Nが多い場合、選択部42は、各センサ21の属性情報などに基づいて、N個のセンサ21を複数のクラスタにクラスタリングし、センサ21をクラスタ単位で使用センサとして選択するようにしてもよい。
【0094】
<第2実施の形態>
(故障予測システムの構成例)
図10は、本開示を適用した故障予測システムの第2実施の形態の構成例を示す図である。
【0095】
図10の故障予測システム100は、M個(Mは複数)のパーソナルコンピュータ(以下、PCという)101−1乃至101−M(機器)と情報処理装置102により構成され、M個のPC101−1乃至101−Mの故障確率を予測する。
【0096】
具体的には、PC101−k(k=1,2,...,M)は、PC101−kの故障状態や稼働状態などを観測する状態観測部120−kを有する。状態観測部120−kは、情報処理装置102からの要求に応じて、PC101−kの故障状態を情報処理装置102に送信する。また、PC101−kには、N個のセンサ121−k−1乃至121−k−Nが設置されている。
【0097】
なお、以下では、PC101−1乃至101−Mを特に区別する必要がない場合、それらをまとめてPC101という。また、状態観測部120−1乃至120−Mを特に区別する必要がない場合、それらをまとめて状態観測部120という。
【0098】
さらに、センサ121−1−1乃至121−1−N、センサ121−2−1乃至121−2−N、...、およびセンサ121−M−1乃至121−M−Nを特に区別する必要がない場合、それらをまとめてセンサ121という。
【0099】
センサ121は、例えば、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、磁気センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、振動センサ、音センサ、およびカメラのいずれかにより構成される。なお、各PC101のセンサ121−k−1どうしの属性情報は同一である。同様に、各PC101のセンサ121−k−2どうし、センサ121−k−3どうし、...、センサ121−k−Nどうしの属性情報は同一である。センサ121の属性情報としては、センサ121の種類、センサ121のPC101上の位置座標、センサ121が設置されたPC101のパーツ、センサ121が観測情報を取得する間隔(観測情報の時間解像度)、センサ121が取得する観測情報の感度などがある。
【0100】
なお、以下では、属性情報が同一であるセンサ121−k−1どうし、センサ121−k−2どうし、...、センサ121−k−Nどうしを特に区別する必要がない場合、それぞれまとめて、センサ121−1、センサ121−2、...、センサ121−Nという。
【0101】
センサ121は、温度情報、湿度情報、気圧情報、磁場情報、加速度情報、振動情報、音声、画像などの観測情報を取得する。センサ121(送信装置)は、情報処理装置102からの要求に応じて、観測情報を情報処理装置102に送信する。
【0102】
情報処理装置102は、N個のセンサ121−1乃至センサ121−Nから、PC101の故障確率の予測に用いるセンサ121を使用センサとして選択する。この使用センサは、全てのPC101において共通である。情報処理装置102は、PC101ごとに、使用センサに対して観測情報を要求し、その要求に応じて送信されてくる観測情報を受信する。また、情報処理装置102は、PC101ごとに、状態観測部120に対して故障状態を要求し、その要求に応じて送信されてくる故障状態を受信する。
【0103】
情報処理装置102は、全てのPC101の使用センサの観測情報と故障状態に基づいて、情報処理装置12と同様に、全てのPC101において共通の故障予測モデルを生成する。また、情報処理装置102は、PC101ごとに、使用センサの観測情報と故障予測モデルに基づいて、PC101の故障確率を予測し、出力する。
【0104】
なお、第2実施の形態では、PC101と情報処理装置102の間の通信は、無線通信であるものとするが、有線通信であってもよい。
【0105】
(情報処理装置の構成例)
図11は、図10の情報処理装置102の構成例を示すブロック図である。
【0106】
図11に示す構成のうち、図2の構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については適宜省略する。
【0107】
図11の情報処理装置102は、センサ情報データベース141、選択部142、観測情報データベース143、学習部144、および予測部145により構成される。
【0108】
情報処理装置102のセンサ情報データベース141は、センサ121−1乃至121−Nそれぞれの属性情報を格納する。
【0109】
選択部142は、図2の選択部42と同様に、使用センサの選択の準備処理を行う。選択部142は、この準備処理により取得された全てのPC101の全てのセンサ121の観測情報を、センサ121−h(h=1,2,...,N)ごとにまとめて各センサ121−hの標準観測情報とし、観測情報データベース143に供給する。
【0110】
また、選択部142は、選択部42と同様に、全てのセンサ121−hの標準観測情報、センサ情報データベース141に格納されている各センサ121−hの属性情報などに基づいて、N個のセンサ121−1乃至121−Nから、全てのPC101に対して同一のセンサ集合Sの初期値を選択する。即ち、センサ集合Sの1要素は、全てのPC101のセンサ121−hである。
【0111】
選択部142は、各PC101の使用センサに10分ごとの観測情報を要求する。選択部142は、その要求に応じて各PC101の使用センサから送信されてくる10分ごとの観測情報を観測情報データベース143と予測部145に供給する。また、選択部142は、選択部42と同様にセンサ選択処理(図5)を行い、N個のセンサ121から、全てのPC101に対して同一のセンサ集合Sを新たに選択する。
【0112】
なお、選択部142のセンサ選択処理に用いられるセンサ情報は、センサ121−hごとに生成される、センサ121−hに関する情報である。具体的には、各センサ121−hのセンサ情報は、そのセンサ121−hの属性情報、並びに、そのセンサ121−hの他の使用センサとの関連度、センサ集合Sにおいて過去に故障確率の予測に寄与したセンサ121との関連度、およびセンサ集合Sにおいて過去に故障確率の予測に寄与しなかったセンサ121との関連度の全てのPC101における平均値の少なくとも1つからなる。選択部142は、センサ集合Sに含まれる使用センサを示す使用センサ情報を学習部144に供給する。
【0113】
また、選択部142は、各状態観測部120に故障状態を要求し、その要求に応じて各状態観測部120から送信されてくる故障状態を取得する。選択部142は、PC101ごとに、そのPC101の状態観測部120から取得された故障状態に基づいて、各使用センサの観測情報ごとの故障情報を生成する。
【0114】
さらに、選択部142は、PC101ごとに、そのPC101の状態観測部120から取得された故障状態に基づいて、各使用センサの観測情報ごとの頻度決定用故障情報を生成する。なお、使用センサの観測情報ごとの頻度決定用故障情報は、その観測情報が観測されてから24時間以内にPC101の故障が発生したかどうかを示す情報である。頻度決定用故障情報は、例えば、観測情報が観測されてから12時間以内にPC101の故障が発生したことを示す場合1であり、発生していないことを示す場合0である。選択部142は、生成された故障情報と頻度決定用故障情報を観測情報データベース143に供給する。
【0115】
観測情報データベース143は、選択部142から供給される全てのPC101の使用センサの観測情報と標準観測情報を格納する。また、観測情報データベース143は、PC101ごとに、そのPC101の使用センサの観測情報ごとの故障情報と頻度決定用故障情報を、その観測情報に対応付けて格納する。
【0116】
学習部144は、選択部142から供給される使用センサ情報に基づいて、観測情報データベース143に格納されている全てのPC101の各使用センサの10分間ごとの観測情報と、その観測情報に対応付けられている故障情報とを読み出し、故障予測用学習データDBLとする。
【0117】
学習部144は、学習部44と同様に、故障予測用学習データDBLを用いて、機械学習アルゴリズムにしたがって、全てのPC101に共通の故障予測モデルf(x;w)のパラメータwを機械学習する。学習部144は、学習されたパラメータwを予測部145に供給する。
【0118】
また、学習部144は、使用センサ情報に基づいて、観測情報データベース143に格納されている全てのPC101の使用センサの10分間ごとの観測情報と、その観測情報に対応付けられている頻度決定用故障情報とを読み出し、頻度決定用学習データとする。学習部144は、頻度決定用学習データを用いて、Stochastic Gradient Descentなどの機械学習アルゴリズムにしたがって、全てのPC101に共通の頻度決定用故障予測モデルのパラメータを機械学習する。
【0119】
頻度決定用故障予測モデルは、使用センサの10分間の観測情報xを入力とし、PC101の24時間以内の故障確率の予測値f´を出力とするパラメータw´を有する関数モデルf´(x;w´)である。故障予測モデルf´(x;w´)としては、ロジスティック回帰モデルやConvolutional Neural Networkなどを用いることができる。学習部44は、学習されたパラメータw´を予測部145に供給する。
【0120】
予測部145は、PC101ごとに、そのPC101の使用センサの観測情報xとパラメータw´とを用いて、頻度決定用故障予測モデルf´(x;w´)にしたがって、そのPC101の24時間以内の故障確率の予測値f´を算出する。予測部145は、PC101ごとに、算出された故障確率の予測値f´に基づいて、6時間以内の故障確率の予測値fを算出する頻度を決定する。
【0121】
予測部145は、PC101ごとに、決定された頻度で、パラメータwと、そのPC101の使用センサの観測情報xとを用いて、故障予測モデルf(x;w)にしたがって、そのPC101の6時間以内の故障確率の予測値fを算出する。予測部145は、算出された各PC101の故障確率の予測値fを出力する。
【0122】
なお、第2実施の形態では、頻度決定用故障予測モデルが、故障予測モデルとは異なるようにしたが、同一であってもよい。
【0123】
(情報処理装置の処理の説明)
図12は、図11の情報処理装置102の故障確率算出処理を説明するフローチャートである。
【0124】
図12のステップS201において、選択部142は、使用センサの選択の準備処理を行う。具体的には、選択部142は、例えば、所定の時間の観測情報を全てのPC101の全てのセンサ121に要求し、その要求に応じて全てのPC101の全てのセンサ121から送信されてくる所定の時間の観測情報を受信する。そして、選択部142は、受信された観測情報を、センサ121−hごとにまとめて標準観測情報とし、観測情報データベース143に供給し、格納させる。
【0125】
ステップS202において、選択部142は、N個のセンサ121−1乃至121−Nから、全てのPC101に対して同一のセンサ集合Sの初期値を選択する。選択部142は、センサ集合Sの初期値に含まれる各センサ121−hを使用センサとして示す使用センサ情報を学習部144に供給する。
【0126】
ステップS203において、選択部142は、全てのPC101の各使用センサに10分間の観測情報を要求する。
【0127】
ステップS204において、選択部142は、要求に応じて各使用センサから送信されてくる10分間の観測情報を取得し、予測部145に供給する。後述するステップS205乃至S214の処理は、PC101ごとに行われる。
【0128】
ステップS205において、予測部145は、パラメータw´と使用センサの観測情報xとを用いて、頻度決定用故障予測モデルf´(x;w´)にしたがって、PC101の24時間以内の故障確率の予測値f´を算出する頻度決定処理を行う。
【0129】
ステップS206において、予測部145は、PC101の24時間以内の故障確率の予測値f´が閾値以下であるかどうかを判定する。ステップS206で予測値f´が閾値以下ではないと判定された場合、処理はステップS207に進む。
【0130】
ステップS207乃至S210の処理は、図3のステップS13乃至S16の処理と同様であるので、説明は省略する。ステップS210で処理を終了しないと判定された場合、処理はステップS211に進む。
【0131】
ステップS211において、予測部145は、前回の頻度決定処理から24時間が経過したかどうかを判定する。ステップS211で前回の頻度決定処理から24時間が経過していないと判定された場合、処理はステップS207に戻り、24時間が経過するまで、ステップS207乃至S211の処理が繰り返される。即ち、PC101の24時間以内の故障確率の予測値f´が閾値以下ではない場合、頻度決定処理から24時間が経過するまで、各使用センサの観測情報と故障状態の取得および故障予測処理が行われる。
【0132】
一方、ステップS211で前回の頻度決定処理から24時間が経過したと判定された場合、処理はステップS215に進む。
【0133】
また、ステップS206で予測値f´が閾値以下であると判定された場合、ステップS212において、予測部145は、前回の頻度決定処理から24時間が経過したかどうかを判定する。ステップS212で前回の頻度決定処理から24時間が経過していないと判定された場合、24時間が経過するまで待機する。
【0134】
一方、ステップS212で前回の頻度決定処理から24時間が経過したと判定された場合、ステップS213において、選択部142は、処理対象のPC101の各使用センサに10分間の観測情報を要求する。
【0135】
ステップS214において、選択部142は、要求に応じて各使用センサから送信されてくる10分間の観測情報を取得し、予測部145に供給する。そして、処理はステップS215に進む。即ち、PC101の24時間以内の故障確率の予測値f´が閾値以下である場合、頻度決定処理から24時間が経過するまで、各使用センサの観測情報と故障状態の取得および故障予測処理は行われない。
【0136】
ステップS215において、選択部142は、前回の準備処理から1週間が経過したかどうかを判定する。なお、準備処理のインターバルは、1週間に限定されない。ステップS215で前回の準備処理からまだ1週間が経過していないと判定された場合、処理はステップS205に戻り、以降の処理が繰り返される。
【0137】
一方、ステップS215で前回の準備処理から1週間が経過したと判定された場合、ステップS216において、選択部142は、ステップS201の処理と同様に、使用センサの選択の準備処理を行う。
【0138】
ステップS217およびS218の処理は、センサ集合Sの1要素が全てのPC101のセンサ121−hである点を除いて、図11のステップS19およびS20の処理と同様であるので、説明は省略する。ステップS218の処理後、処理はステップS203に戻り、以降の処理が繰り返される。
【0139】
なお、図示は省略するが、学習部144の学習処理は、故障予測用学習データDBLが、全てのPC101の各使用センサの10分間ごとの観測情報と、その観測情報に対応付けられている故障情報である点を除いて、図9の学習処理と同様である。
【0140】
以上のように、情報処理装置102は、PC101ごとに、24時間以内の故障確率の予測値f´を算出し、予測値f´に基づく頻度で故障予測処理を行う。従って、全てのPC101の故障予測処理を常に行う場合に比べて、センサ121の観測情報の取得時間(観測時間)およびセンサ121と情報処理装置102の間の通信時間を削減し、PC101と情報処理装置102の消費電力を削減することができる。これは、PC101の数Mが大きい場合に特に有用である。
【0141】
なお、PC101の数Mが多い場合、PC101の属性情報に基づいてM個のPC101を複数のクラスタにクラスタリングし、クラスタごとに、故障確率算出処理を行うようにしてもよい。また、このクラスタリングは、各PCの6時間以内の故障確率の予測値f、24時間以内の故障確率の予測値f´、センサ121の観測情報等に基づいて更新されるようにしてもよい。
【0142】
また、各PC101に設置されるセンサ121の数Nが多い場合、選択部142は、各センサ121−hの属性情報などに基づいて、N個のセンサ121−hを複数のクラスタにクラスタリングし、センサ121−hをクラスタ単位で使用センサとして選択するようにしてもよい。
【0143】
さらに、第2実施の形態では、センサ121がPC101に設置されたが、センサ121が設置される機器は、PCなどのコンシューマ機器に限定されない。例えば、センサ121は、第1実施の形態のように、産業用ロボットなどの製造機器に設置されるようにしてもよい。
【0144】
同様に、第1実施の形態において、センサ21は、第2実施の形態のように、PCなどのコンシューマ機器に設置されるようにしてもよい。
【0145】
<第3実施の形態>
(本開示を適用したコンピュータの説明)
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0146】
図13は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0147】
コンピュータ200において、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0148】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、通信部209、及びドライブ210が接続されている。
【0149】
入力部206は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部207は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部208は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部209は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動する。
【0150】
以上のように構成されるコンピュータ200では、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0151】
コンピュータ200(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア211に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0152】
コンピュータ200では、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0153】
なお、コンピュータ200が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0154】
また、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0155】
さらに、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0156】
また、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0157】
例えば、故障確率の予測に用いられる観測情報の時間は、10分に限定されない。また、予測される故障確率に対応する時間は、6時間に限定されない。
【0158】
本開示は、複数のセンサからある事象を予測するシステムであれば、どのようなシステムにも適用することができる。
【0159】
なお、本開示は、以下のような構成もとることができる。
【0160】
(1)
複数の送信装置それぞれに関する情報に基づいて、前記複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を使用装置として選択する選択部
を備える情報処理装置。
(2)
前記選択部は、前記複数の送信装置の属性情報に基づいて前記使用装置を選択する
ように構成された
前記(1)に記載の情報処理装置。
(3)
前記選択部は、過去に予測に寄与した送信装置と前記複数の送信装置それぞれとの関連度に基づいて、前記使用装置を選択する
ように構成された
前記(1)または(2)に記載の情報処理装置。
(4)
前記選択部は、過去に予測に寄与しなかった送信装置と前記複数の送信装置それぞれとの関連度に基づいて、前記使用装置を選択する
ように構成された
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の情報処理装置。
(5)
前記選択部は、他の送信装置と前記複数の送信装置それぞれとの関連度に基づいて、前記使用装置を選択する
ように構成された
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の情報処理装置。
(6)
前記選択部は、前記複数の送信装置それぞれの予測への寄与度に基づいて、前記使用装置を選択する
ように構成された
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の情報処理装置。
(7)
前記選択部は、前記寄与度を予測する寄与度予測モデルを用いて前記寄与度を算出する
ように構成された
前記(6)に記載の情報処理装置。
(8)
前記選択部は、前記複数の送信装置以外の複数の教師用の送信装置それぞれに関する教師情報と、前記複数の教師用の送信装置から1つを除いた送信装置から送信された観測情報を用いた予測の予測精度とに基づいて、前記寄与度予測モデルを生成する
ように構成された
前記(7)に記載の情報処理装置。
(9)
前記教師情報は、前記教師用の送信装置の属性情報、過去に予測に寄与した送信装置との関連度、過去に予測に寄与しなかった送信装置との関連度、および他の教師用の送信装置との関連度のうちの少なくとも1つである
ように構成された
前記(8)に記載の情報処理装置。
(10)
前記選択部は、前記使用装置のうちの一部を前記使用装置として選択しない場合の予測精度の予測値に基づいて、前記使用装置のうちの一部を前記使用装置として選択しないことにより、前記使用装置を更新する
ように構成された
前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の情報処理装置。
(11)
複数の機器のそれぞれに、前記複数の送信装置が設置され、
前記選択部は、前記複数の機器に対して同一の前記使用装置を選択する
ように構成された
前記(1)乃至(10)のいずれかに記載の情報処理装置。
(12)
前記機器ごとに、前記予測の結果に基づく頻度で、前記使用装置から送信されてくる前記観測情報に基づいて前記予測を行う予測部
をさらに備える
前記(11)に記載の情報処理装置。
(13)
情報処理装置が、
複数の送信装置それぞれに関する情報に基づいて、前記複数の送信装置から、予測に用いる観測情報を送信する送信装置を使用装置として選択する選択ステップ
を含む情報処理方法。
【符号の説明】
【0161】
12 情報処理装置, 21−1乃至21−N センサ, 42 選択部, 102 情報処理装置, 121−1−1乃至121−1−N センサ, 142 選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13