特許第6981444号(P6981444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981444発光装置、発光装置の製造方法、およびプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981444
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】発光装置、発光装置の製造方法、およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/42 20060101AFI20211202BHJP
   H01S 5/18 20210101ALI20211202BHJP
   H01S 5/11 20210101ALI20211202BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20211202BHJP
   H01L 33/18 20100101ALI20211202BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20211202BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01S5/42
   H01S5/18
   H01S5/11
   H01L33/08
   H01L33/18
   H01L21/205
   G03B21/14 A
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-69998(P2019-69998)
(22)【出願日】2019年4月1日
(65)【公開番号】特開2020-170746(P2020-170746A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】今井 保貴
(72)【発明者】
【氏名】藤田 徹司
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】羽廣 英樹
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−526806(JP,A)
【文献】 特開2015−166293(JP,A)
【文献】 特開2019−012744(JP,A)
【文献】 特開2009−105182(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/075461(WO,A1)
【文献】 特開2008−016847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 − 5/50
H01L 33/00 − 33/64
H01L 21/205
G03B 21/00 − 21/30
C03B 1/00 − 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた積層体と、
を有し、
前記積層体は、複数の柱状部を有し、
複数の前記柱状部の各々は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部は、正方格子または長方格子で配置され、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線は、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜し、
隣り合う前記柱状部の頂点は、前記直線上に配置されておらず、
複数の前記柱状部の各々は、
互いに導電型の異なる第1半導体層および第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層、および前記発光層は、前記柱状部の側面を構成し、
前記側面は、前記柱状部のm面であり、
隣り合う前記柱状部の各々の前記側面は、互いに離間している、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線は、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する前記柱状部のm面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜している、発光装置。
【請求項3】
基板と、
前記基板に設けられた積層体と、
を有し、
前記積層体は、複数の柱状部を有し、
複数の前記柱状部の各々は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部は、正三角格子で配置され、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線は、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜し、
隣り合う前記柱状部の頂点は、前記直線上に配置されておらず、
複数の前記柱状部の各々は、
互いに導電型の異なる第1半導体層および第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層、および前記発光層は、前記柱状部の側面を構成し、
前記側面は、前記柱状部のm面であり、
隣り合う前記柱状部の各々の前記側面は、互いに離間している、発光装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線は、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する前記柱状部のm面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜している、発光装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線は、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する前記柱状部のm面と時計回りの方向において接続されたm面の垂線に対して、38度以上52度以下で傾斜している、発光装置。
【請求項6】
基板に、複数の柱状部を有する積層体を形成する工程を有し、
複数の前記柱状部の各々は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部を、正方格子または長方格子で配置し、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線を、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜させ、
隣り合う前記柱状部の頂点を、前記直線上に配置させず、
複数の前記柱状部の各々は、
互いに導電型の異なる第1半導体層および第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層、および前記発光層は、前記柱状部の側面を構成し、
前記側面は、前記柱状部のm面であり、
隣り合う前記柱状部の各々の前記側面は、互いに離間する、発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線を、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する前記柱状部のm面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜させる、発光装置の製造方法。
【請求項8】
基板に、複数の柱状部を有する積層体を形成する工程を有し、
複数の前記柱状部の各々は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部を、正三角格子で配置し、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線を、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜させ、
隣り合う前記柱状部の頂点を、前記直線上に配置させず、
複数の前記柱状部の各々は、
互いに導電型の異なる第1半導体層および第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層、および前記発光層は、前記柱状部の側面を構成し、
前記側面は、前記柱状部のm面であり、
隣り合う前記柱状部の各々の前記側面は、互いに離間する、発光装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線を、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する前記柱状部のm面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜させる、発光装置の製造方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線を、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する前記柱状部のm面と時計回りの方向において接続されたm面の垂線に対して、38度以上52度以下で傾斜させる、発光装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光装置の製造方法、およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のナノコラムを光源として備えた小型のプロジェクターの開発が進んでいる。このような小型のプロジェクターは、従来のLED(Light Emitting Diode)光源に比べて、高効率・高輝度かつ長寿命な光源を備えることができ、環境にやさしい省エネルギーのプロジェクターとして注目されている。
【0003】
例えば特許文献1には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やMBE(Molecular Beam Epitaxy)法などにより、半導体基板から複数の開口部を介してマスクパターンの上方に向けてナノコラムを成長させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−239718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、柱状部の成長中に、柱状部が横方向に成長し、隣り合う柱状部が接触する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基板と、
前記基板に設けられた積層体と、
を有し、
前記積層体は、複数の柱状部を有し、
前記柱状部は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部は、正方格子または長方格子で配置され、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線は、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜し、
隣り合う前記柱状部の頂点は、前記直線上に配置されていない。
【0007】
前記発光装置の一態様において、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線は、前記m面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜していてもよい。
【0008】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基板と、
前記基板に設けられた積層体と、
を有し、
前記積層体は、複数の柱状部を有し、
前記柱状部は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部は、正三角格子で配置され、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線は、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜し、
隣り合う前記柱状部の頂点は、前記直線上に配置しない。
【0009】
前記発光装置の一態様において、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線は、前記m面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜していてもよい。
【0010】
前記発光装置の一態様において、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線は、前記m面と時計回りの方向において接続されたm面の垂線に対して、38度以上52度以下で傾斜していてもよい。
【0011】
本発明に係る発光装置の製造方法の一態様は、
基板に、複数の柱状部を有する積層体を形成する工程を有し、
前記柱状部は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部を、正方格子または長方格子で配置し、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線を、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜させ、
隣り合う前記柱状部の頂点を、前記直線上に配置させない。
【0012】
前記発光装置の製造方法の一態様において、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線を、前記m面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜させてもよい。
【0013】
本発明に係る発光装置の製造方法の一態様は、
基板に、複数の柱状部を有する積層体を形成する工程を有し、
前記柱状部は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層体の積層方向からみた平面視で、
複数の前記柱状部を、正三角格子で配置し、
隣り合う前記柱状部の中心を通る直線を、隣り合う前記柱状部の中心の間に位置する、前記柱状部のm面に対して傾斜させ、
隣り合う前記柱状部の頂点を、前記直線上に配置させない。
【0014】
前記発光装置の一態様において、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線を、前記m面の垂線に対して、8度以上22度以下で傾斜させてもよい。
【0015】
前記発光装置の一態様において、
前記積層体を形成する工程では、
前記積層方向からみた平面視で、
前記直線を、前記m面と時計回りの方向において接続されたm面の垂線に対して、38度以上52度以下で傾斜させてもよい。
【0016】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図3】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図4】正方格子で配置された柱状部を模式的に示す平面図。
図5】正方格子で配置された柱状部を模式的に示す平面図。
図6】第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するためのフローチャート。
図7】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図8】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図9】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図10】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図11】正三角格子で配置された柱状部を模式的に示す平面図。
図12】正三角格子で配置された柱状部を模式的に示す平面図。
図13】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図14】第2実施形態の変形例に係る発光装置を模式的に示す平面図。
図15】第3実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
図16】実施例1のSEM像。
図17】実施例2のSEM像。
図18】実施例3のSEM像。
図19】比較例1のSEM像。
図20】比較例2のSEM像。
図21】比較例3のSEM像。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0019】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
1.1.1. 構成
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。図2は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す平面図である。なお、図1は、図2のI−I線断面図である。
【0020】
発光装置100は、図1に示すように、例えば、基板10と、基板10に設けられた積層体12と、第1電極50と、第2電極52と、を有している。積層体12は、バッファー層20と、マスク層22と、柱状部30と、光伝搬層40と、を有している。なお、便宜上、図2では、柱状部30以外の部材の図示を省略している。
【0021】
基板10は、例えば、サファイア基板、GaN基板、Si基板などである。
【0022】
バッファー層20は、基板10上に設けられている。バッファー層20は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層などである。
【0023】
なお、「上」とは、積層体12の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)におい
て、発光層36からみて基板10から遠ざかる方向のことであり、「下」とは、積層方向において、発光層36からみて基板10に近づく方向のことである。積層体12の積層方向は、柱状部30の第1半導体層34と発光層36との積層方向である。また、以下では、積層方向と直交する方向を、「基板10の面内方向」ともいう。
【0024】
マスク層22は、バッファー層20上に設けられている。マスク層22には、複数の開口部23が設けられている。積層方向からみて、開口部23の形状は、例えば、円形である。開口部23には、柱状部30が設けられている。マスク層22は、柱状部30を成長させる際にマスクとして機能する層である。マスク層22の材質は、例えば、SiO層、Si層、SiC層、TiO層、HfO層などである。
【0025】
柱状部30は、バッファー層20上に設けられている。柱状部30は、ガリウム(Ga)および窒素(N)を含むGaN系の材料から構成されている。GaN系の材料は、ウルツ鉱型の結晶構造を有するため、柱状部30は、平面形状が正六角形となるように成長される傾向がある。図2に示す例では、柱状部30の平面形状は、正六角形である。柱状部30の径は、例えば、nmオーダーであり、具体的には50nm以上500nm以下である。柱状部30の積層方向の大きさは、例えば、0.5μm以上3μm以下である。ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質としては、GaN系材料以外にも、例えば、AlN系、ZnO系、ZnS系、InN系の材料が挙げられる。
【0026】
なお、「径」とは、多角形の平面形状を有する柱状部30を内部に含む最小の円、すなわち最小包含円の直径である。また、「平面形状」とは、積層方向からみた形状のことである。なお、柱状部30の中心とは、当該最小包含円の中心である。
【0027】
柱状部30は、複数設けられている。柱状部30は、所定の方向に所定のピッチで周期的に配置されている。柱状部30のピッチは、例えば、200nm以上1μm以下である。ここで、「ピッチ」とは、柱状部30が周期的に配置されている場合の、1周期分の距離をいう。この場合、ピッチは、例えば、隣り合う柱状部30の中心間の距離である。
【0028】
柱状部30は、第1半導体層34と、発光層36と、第2半導体層38と、を有している。
【0029】
第1半導体層34は、バッファー層20上に設けられている。第1半導体層34は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0030】
発光層36は、第1半導体層34上に設けられている。発光層36は、第1半導体層34と第2半導体層38との間に設けられている。発光層36は、例えば、GaN層とInGaN層とから構成された量子井戸構造を有している。発光層36は、電流が注入されることで光を発することが可能な層である。
【0031】
第2半導体層38は、発光層36上に設けられている。第2半導体層38は、第1半導体層34と導電型の異なる層である。第2半導体層38は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。半導体層34,38は、発光層36に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0032】
発光装置100では、p型の第2半導体層38、不純物がドーピングされていない発光層36、およびn型の第1半導体層34により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極50と第2電極52との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加して電流を注入すると、発光層36において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層36において発生した光は、半導体層34,38に
より基板10の面内方向に光伝搬層40を通って伝搬して、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成し、基板10の面内方向に閉じ込められる。閉じ込められた光は、発光層36において利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および−1次回折光を、レーザー光として積層方向に出射する。
【0033】
なお、図示はしないが、基板10とバッファー層20との間、または基板10の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層36において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極52側からのみ光を出射することができる。
【0034】
光伝搬層40は、隣り合う柱状部30の間に設けられている。図示の例では、光伝搬層40は、マスク層22上に設けられている。光伝搬層40の屈折率は、例えば、発光層36の屈折率よりも低い。光伝搬層40は、例えば、酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、酸化チタン層などである。発光層36で発生した光は、光伝搬層40を伝搬することが可能である。ここで、「隣り合う柱状部30」とは、複数の柱状部30のうちの第1柱状部30と、複数の柱状部30のうちの第1柱状部30と中心間の距離が最も小さい第2柱状部30と、のことである。
【0035】
第1電極50は、バッファー層20上に設けられている。バッファー層20は、第1電極50とオーミックコンタクトしていてもよい。図示の例では、第1電極50は、バッファー層20を介して、第1半導体層34と電気的に接続されている。第1電極50は、発光層36に電流を注入するための一方の電極である。第1電極50としては、例えば、バッファー層20側から、Ti層、Al層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0036】
第2電極52は、第2半導体層38上に設けられている。第2半導体層38は、第2電極52とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極52は、第2半導体層38と電気的に接続されている。第2電極52は、発光層36に電流を注入するための他方の電極である。第2電極52の材質は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などである。
【0037】
1.1.2. 柱状部の配置
複数の柱状部30は、図2に示すように、積層方向からみた平面視で、正方格子に配置されている。すなわち、複数の柱状部30のうち、柱状部30aの中心Caと柱状部30bの中心Cbとを結ぶ直線、柱状部30aの中心Caと柱状部30cの中心Ccとを結ぶ直線、柱状部30bの中心Cbと柱状部30dの中心Cdとを結ぶ直線、および柱状部30cの中心Ccと柱状部30dの中心Cdとを結ぶ直線がなす図形Fは、正方形である。積層方向からみた平面視で、柱状部30の中心の位置は、マスク層22に設けられた開口部23の中心の位置と一致するものとする。
【0038】
図示の例では、柱状部30bは、柱状部30aと隣り合い、柱状部30cは、柱状部30aと隣り合っている。図示の例では、20個の柱状部30が設けられているが、柱状部30の数は、特に限定されない。
【0039】
ここで、図3は、柱状部30a,30b,30c,30dを模式的に示す平面図である。図2および図3に示すように、積層方向からみた平面視で、直線L1は、柱状部30aの中心Caと、柱状部30bの中心Cbと、を通る仮想直線である。直線L1は、第1方向に延出している。
【0040】
直線L1は、中心Ca,Cb間に位置するm面31a,31bに対して傾斜している。m面31aは、柱状部30aの面である。m面31bは、柱状部30bの面である。m面31aとm面31bとは、例えば、平行である。柱状部30は、6つのm面を有している
。m面は、柱状部30の側面である。図2に示す例では、直線L1は、全ての柱状部30のm面と直交せず、かつ、全ての柱状部30のm面に平行でない。
【0041】
直線L1は、図3に示すように、m面31aの垂線Pa、およびm面31bの垂線Pbに対して、例えば、8度以上22度以下で傾斜している。垂線Paに対する直線L1の角度θと、垂線Pbに対する直線L1の角度θとは、同じ角度であり、角度θは、8度以上22度以下である。
【0042】
積層方向からみた平面視で、柱状部30a,30bの頂点は、直線L1上に配置されていない。すなわち、直線L1は、柱状部30a,30bの頂点を通らない。図2に示す例では、直線L1は、全ての柱状部30の頂点を通らない。柱状部30の頂点は、m面の接続点である。
【0043】
図2および図3に示すように、積層方向からみた平面視で、直線L2は、柱状部30aの中心Caと、柱状部30cの中心Ccと、を通る仮想直線である。直線L2は、第1方向と直交する第2方向に延出しており、直線L1と直交している。
【0044】
直線L2は、中心Ca,Cc間に位置するm面32a,32cに対して傾斜している。m面32aは、柱状部30aの面である。m面32aは、m面31aに接続されていない。m面32aは、m面31aに対して、例えば、60度で傾斜している。m面32cは、柱状部30cの面である。m面32aとm面32cとは、例えば、平行である。図2に示す例では、直線L2は、全ての柱状部30のm面と直交せず、かつ、全ての柱状部30のm面に平行でない。
【0045】
直線L2は、図3に示すように、m面32aの垂線Qa、およびm面32cの垂線Qcに対して、例えば、8度以上22度以下で傾斜している。垂線Qaに対する直線L2の角度θと、垂線Qcに対する直線L2の角度θとは、同じ角度であり、角度θは、8度以上22度以下である。
【0046】
積層方向からみた平面視で、柱状部30a,30cの頂点は、直線L2上に配置されていない。すなわち、直線L2は、柱状部30a,30cの頂点を通らない。図2に示す例では、直線L2は、全ての柱状部30の頂点を通らない。
【0047】
1.1.3. 特徴
発光装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0048】
発光装置100では、積層体12は、複数の柱状部30を有し、柱状部30は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する物質を含み、積層方向からみた平面視で、複数の柱状部30は、正方格子で配置され、隣り合う柱状部30a,30bの中心Ca,Cbを通る直線L1は、隣り合う30a,30bの中心Ca,Cbの間に位置する、柱状部30a,30bのm面31a,31bに対して傾斜し、隣り合う柱状部30a,30bの頂点は、直線L1上に配置されていない。そのため、発光装置100では、柱状部30の成長中に、柱状部30が横方向、すなわち基板10の面内方向に成長したとしても、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを抑制することができる。隣り合う柱状部が接触すると、発光時の電力効率、最大光出力の大幅な低下を招くことがある。さらに、所望の波長が発光しないことがある。
【0049】
ここで、柱状部30のm面は、安定した面であり、柱状部30の成長時にm面が形成されると、柱状部30は、m面から横方向に成長し難い。そのため、柱状部30が横方向に成長する場合、図3に示す矢印のように、柱状部30は、m面とm面との接続点である頂
点から、柱状部の中心と該頂点とを結ぶ方向に成長する。
【0050】
上記のように、発光装置100では、直線L1は、m面31a,31bに対して傾斜し、隣り合う柱状部30a,30bの頂点は、直線L1上に配置されていなため、中心Caとm面31aの端の頂点とを通る矢印A1と、中心Cbとm面31bの端の頂点とを通る矢印A2と、を接触させないようにすることができる。そのため、発光装置100では、図4に示すように、直線L1がm面31a,31bに対して直交している場合に比べて、柱状部30の成長中に、柱状部30が横方向に成長したとしても、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを抑制することができる。または、仮に、矢印A1と矢印A2とが接触するとしても、例えば、中心Caと、矢印A1と矢印A2との接触点と、の間の距離を大きくすることができる。したがって、図4に示す例に比べて、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを抑制することができる。
【0051】
なお、図4に示す中心Ca,Cb間の距離は、図3に示す中心Ca,Cb間の距離と同じである。また、図4に示す中心Ca,Cc間の距離は、図3に示す中心Ca,Cc間の距離と同じである。
【0052】
同様に、発光装置100では、隣り合う柱状部30a,30cの中心Ca,Ccを通る直線L2は、隣り合う30a,30cの中心Ca,Ccの間に位置する、柱状部30a,30cのm面32a,32cに対して傾斜し、隣り合う柱状部30a,30cの頂点は、直線L2上に配置されていないため、隣り合う柱状部30a,30cが接触することを抑制することができる。
【0053】
発光装置100では、積層方向からみた平面視で、直線L1は、m面31a,31bの垂線Pa,Pbに対して、8度以上22度以下で傾斜している。そのため、発光装置100では、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを、より確実に抑制することができる。
【0054】
ここで、後述する「4. 実施例および比較例」に示すように、θが8度の場合に隣り合う柱状部の接触防止の効果が確認された。一方、θが30度の場合は、図5に示すように、直線L1は、柱状部30a,30bの頂点を通り、実質的に図4に示した例と同じとなる。したがって、30度から8度を引いた8°≦θ≦22°の範囲であれば、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを、より確実に抑制することができる。
【0055】
なお、上記では、InGaN系の発光層36について説明したが、発光層36は、AlGaN系であってもよい。
【0056】
また、上記では、発光装置100がレーザーである場合について説明したが、発光装置100は、LEDであってもよい。
【0057】
また、上記では、柱状部30は、発光層36を有している場合について説明したが、柱状部30は、発光層36を有してなくてもよい。例えば、複数の柱状部30と、第2電極52との間に、構造体を有し、該構造体は、第1半導体層34と、第2半導体層38と、第1半導体層34と第2半導体層38との間に設けられた発光層36と、を有していてもよい。この場合、柱状部30は、n型の半導体層によって構成されていてもよい。
【0058】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図6は、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法を説明するためのフローチャートである。図7は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す
断面図である。
【0059】
図7に示すように、基板10を準備する(ステップS1)。
【0060】
次に、基板10上に、複数の柱状部30を有する積層体12を形成する(ステップS2)。
【0061】
具体的には、バッファー層20をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0062】
次に、マスク層22を形成する。マスク層22は、例えば、スパッタ法により形成される。次に、マスク層22をパターニングして、開口部23を形成する。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって行われる。
【0063】
図1に示すように、マスク層22をマスクとして、複数の開口部23から、バッファー層20上に、第1半導体層34、発光層36、および第2半導体層38をこの順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0064】
本工程では、積層方向からみた平面視で、複数の柱状部30を、正方格子で配置させる。さらに、隣り合う柱状部30a,30bの中心を通る直線L1を、隣り合う柱状部30a,30bの中心Ca,Cbの間に位置する、柱状部30a,30bのm面31a,31bに対して傾斜させる。さらに、隣り合う柱状部30a,30bの頂点を、直線L1上に配置させない。さらに、直線L1を、m面31a,31bの垂線Pa,Pbに対して、例えば、8度以上22度以下で傾斜させる。例えば、ウェハー状の基板10において、オリフラを所定の位置に合わせた後、ウェハーを回転させ、該回転されたウェハーの開口部23から柱状部30を成長させることにより、角度θを8度以上22度以下としてもよい。または、開口部23を形成するためのマスクを調整することにより、角度θを8度以上22度以下としてもよい。
【0065】
次に、隣り合う柱状部30の間に光伝搬層40を形成する。光伝搬層40は、例えば、スピンコート法などによって形成される。
【0066】
以上の工程により、積層体12を形成することができる。
【0067】
次に、バッファー層20上に第1電極50を形成し、第2半導体層38上に第2電極52を形成する(ステップS3)。第1電極50および第2電極52は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。
【0068】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0069】
発光装置100の製造方法は、「1.1.3.特徴」で説明したように、柱状部30の成長中に、柱状部30が横方向に成長したとしても、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを抑制することができる。
【0070】
なお、上記では、複数の柱状部30は、正方格子で配置されていたが、これに限らず、複数の柱状部30は、図8に示すように、長方格子で配置されていてもよい。すなわち、複数の柱状部30のうち、柱状部30aの中心Caと柱状部30bの中心Cbとを結ぶ直線、柱状部30aの中心Caと柱状部30cの中心Ccとを結ぶ直線、柱状部30bの中心Cbと柱状部30dの中心Cdとを結ぶ直線、および柱状部30cの中心Ccと柱状部
30dの中心Cdとを結ぶ直線がなす図形Fは、長方形であってもよい。図示の例では、柱状部30aの中心Caと柱状部30bの中心Cbとの間の距離は、柱状部30aの中心Caと柱状部30cの中心Ccとの間の距離よりも小さい。このような場合であっても、柱状部30の成長中に、柱状部30が横方向に成長したとしても、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを抑制することができる。
【0071】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図9では、柱状部30以外の部材の図示を省略している。
【0072】
以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0073】
上述した発光装置100では、図2に示すように、積層方向からの平面視で、複数の柱状部30は、正方格子で配置されていた。
【0074】
これに対し、発光装置200では、図9に示すように、積層方向からの平面視で、複数の柱状部30は、正三角格子で配置されている。すなわち、複数の柱状部30のうち、柱状部30aの中心Caと柱状部30bの中心Cbとを結ぶ直線、柱状部30bの中心Cbと柱状部30cの中心Ccとを結ぶ直線、および柱状部30aの中心Caと柱状部30cの中心Ccとを結ぶ直線がなす図形Fは、正三角形である。
【0075】
ここで、図10は、柱状部30a,30b,30cを模式的に示す平面図である。図9および図10に示すように、積層方向からみた平面視で、直線L1と直線L2とは、60度で交差している。柱状部30aのm面31a,32aは、互いに接続されている。
【0076】
発光装置200では、積層方向からみた平面視で、複数の柱状部30は、正三角子で配置され、隣り合う柱状部30a,30bの中心Ca,Cbを通る直線L1は、隣り合う30a,30bの中心Ca,Cbの間に位置する、柱状部30a,30bのm面31a,31bに対して傾斜し、隣り合う柱状部30a,30bの頂点は、直線L1上に配置されていない。そのため、発光装置200では、図11に示すように、直線L1がm面31a,31bに対して直交している場合や、図12に示すように、直線L1が頂点を通る場合に比べて、発光装置100と同様に、柱状部30の成長中に、隣り合う柱状部30a,30cが接触することを抑制することができる。
【0077】
なお、図10に示す中心Ca,Cb間の距離は、図11および図12に示す中心Ca,Cb間の距離と同じである。また、図10に示す中心Ca,Cc間の距離は、図11および図12に示す中心Ca,Cc間の距離と同じである。
【0078】
2.2. 発光装置の製造方法
次に、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法について説明する。第2実施形態に係る発光装置200の製造方法は、複数の柱状部30を、正三角格子で配置させること以外は、上述した第1実施形態に係る発光装置100の製造方法と、基本的に同じである。したがって、その詳細な説明を省略する。
【0079】
2.3. 発光装置の変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図13および図14は、第2実施形態の変形例に係る発光装置210を模式的に示す平面
図である。なお、便宜上、図13では、柱状部30以外の部材の図示を省略している。また、図14では、柱状部30a,30b,30c以外の部材の図示を省略している。
【0080】
以下、第2実施形態の変形例に係る発光装置210において、上述した第2実施形態に係る発光装置200の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0081】
発光装置210では、図13および図14に示すように、積層方向からの平面視で、柱状部30aのm面33aの垂線Raに対して、38度以上52度以下で傾斜している点において、上述した発光装置200と異なる。すなわち、垂線Raに対する直線L1の角度φは、38度以上52度以下である。積層方向からの平面視で、m面33aは、m面31aと時計回りの方向において接続されたm面である。
【0082】
発光装置210の製造方法は、直線L1を、m面33aの垂線Raに対して、38度以上52度以下で傾斜させること以外は、上述した発光装置200の製造方法と、基本的に同じである。
【0083】
発光装置210では、積層方向からみた平面視で、直線L1は、m面31aと時計回りの方向において接続されたm面33aの垂線Raに対して、38度以上52度以下で傾斜している。そのため、発光装置210では、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを、より確実に抑制することができる。
【0084】
ここで、後述する「4. 実施例および比較例」に示すように、φが38度の場合に隣り合う柱状部の接触防止の効果が確認された。一方、φが60度の場合は、直線L1がm面と直交し、実質的に図11に示した例と同じとなる。したがって、60度から8度を引いた38°≦θ≦52°の範囲であれば、隣り合う柱状部30a,30bが接触することを、より確実に抑制することができる。
【0085】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図15は、第3実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0086】
プロジェクター900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0087】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、図15では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0088】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1レンズアレイ902Rと、第2レンズアレイ902Gと、第3レンズアレイ902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0089】
赤色光源100Rから出射された光は、第1レンズアレイ902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1レンズアレイ902Rによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0090】
第1レンズアレイ902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0091】
緑色光源100Gから出射された光は、第2レンズアレイ902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2レンズアレイ902Gによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0092】
第2レンズアレイ902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0093】
青色光源100Bから出射された光は、第3レンズアレイ902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3レンズアレイ902Bによって、集光され、例えば重畳されることができる。
【0094】
第3レンズアレイ902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0095】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロスダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0096】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0097】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0098】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0099】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示
装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0100】
本発明に係る発光装置の用途は、上述した実施形態に限定されず、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイのバックライト、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。
【0101】
4. 実施例および比較例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例および比較例によって何ら限定されるものではない。
【0102】
サファイア基板上に、MOCVD法により、n型のGaNをバッファー層として、成長させた。次に、スパッタ法により、バッファー層上にマスク層を形成し、パターニングによりマスク層に平面形状が円形の開口部を形成した。次に、マスク層をマスクとして、n型のGaN層を形成し、複数の柱状部を形成した。上記のような試料において、柱状部の配置を変更した。
【0103】
実施例1は、図2および図3に示した発光装置に対応し、複数の柱状部を正方格子に配置させ、θを8度としたものである。
【0104】
実施例2は、図9および図10に示した発光装置に対応し、複数の柱状部を正三角格子に配置させ、θを8度としたものである。
【0105】
実施例3は、図13および図14に示した発光装置に対応し、複数の柱状部を正三角格子に配置させ、φを38度としたものである。
【0106】
比較例1は、図4に示した発光装置に対応し、複数の柱状部を正方格子に配置させ、直線L1がm面に直交するものである。
【0107】
比較例2は、図11に示した発光装置に対応し、複数の柱状部を正三角格子に配置させ、直線L1がm面に直交するものである。
【0108】
比較例3は、図12に示した発光装置に対応し、複数の柱状部を正三角格子に配置させ、直線L1が頂点を通るものである。
【0109】
実施例1〜3および比較例1〜3のSEM(Scanning Electron Microscope)観察を行った。図16は、実施例1のSEM像である。図17は、実施例2のSEM像である。図18は、実施例3のSEM像である。図19は、比較例1のSEM像である。図20は、比較例2のSEM像である。図21は、比較例3のSEM像である。
【0110】
比較例1〜3では、図19図21に示すように、隣り合う柱状部が接触し、接触した箇所からGaNが成長している部分Eが確認させた。一方、実施例1〜3では、図16図19に示すように、隣り合う柱状部が接触することは、確認されなかった。したがって、実施例1〜3では、隣り合う柱状部が接触することを抑制できることがわかった。
【0111】
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
【0112】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に
同一の構成とは、例えば、機能、方法、および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0113】
10…基板、12…積層体、20…バッファー層、22…マスク層、23…開口部、30,30a,30b,30c,30d…柱状部、31a,31b,32a,32c,33a…m面、34…第1半導体層、36…発光層、38…第2半導体層、40…光伝搬層、50…第1電極、52…第2電極、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、200,210…発光装置、900…プロジェクター、902R…第1レンズアレイ、902G…第2レンズアレイ、902B…第3レンズアレイ、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置
図1
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