(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981446
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
F16B 2/14 20060101AFI20211202BHJP
F16L 3/04 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
F16B2/14 Z
F16L3/04
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-84009(P2019-84009)
(22)【出願日】2019年4月25日
(65)【公開番号】特開2020-180650(P2020-180650A)
(43)【公開日】2020年11月5日
【審査請求日】2021年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈良 達也
(72)【発明者】
【氏名】東原 昭仁
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−031270(JP,A)
【文献】
特開2000−346245(JP,A)
【文献】
特開2011−247350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/14
F16B 7/04
F16B 2/06
F16L 3/04
F16L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材(20)を被取付部材(30)に固定するためのクランプであって、
前記長尺部材が接触し、前記長尺部材に押されて弾性変形する変形保持部(14)と、
前記変形保持部が弾性変形によって変位する側に設けられ、前記変形保持部が弾性変形して変位する方向における剛性が前記変形保持部よりも高い固定保持部(15)とを備え、
前記固定保持部は、前記変形保持部の弾性変形を制限するようになっており、
前記固定保持部には、前記変形保持部と接触する部位に他の部位よりも剛性が低い低剛性部(16)が設けられており、
前記固定保持部は、1つの前記変形保持部に対して複数設けられているクランプ。
【請求項2】
前記変形保持部は板状であり、前記変形保持部の板面は前記長尺部材の長手方向に沿って配置されており、
前記長尺部材の側面が前記変形保持部の板面に接触することで、前記変形保持部が弾性変形する請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記固定保持部は板状であり、前記固定保持部の板面は前記長尺部材の長手方向と交わるように配置されている請求項1または2に記載のクランプ。
【請求項4】
前記長尺部材が前記被取付部材に固定された状態で前記長尺部材を収容する収容部(13)を備え、
前記変形保持部および前記固定保持部は、前記収容部に設けられており、
前記固定保持部における前記変形保持部に対向する側の反対側は、前記収容部の壁面に接している請求項1ないし3のいずれか1つに記載のクランプ。
【請求項5】
前記低剛性部は、弾性変形した前記変形保持部によって押されることで塑性変形する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のクランプ。
【請求項6】
前記低剛性部は、前記長尺部材の長手方向の寸法が前記変形保持部に向かって小さくなっている請求項1ないし5のいずれか1つに記載のクランプ。
【請求項7】
前記低剛性部は、前記変形保持部に対向する部位が2つの面が交わる角部となっている請求項6に記載のクランプ。
【請求項8】
弾性変形により変位した前記変形保持部の板面は、弾性変形していない前記変形保持部の板面に対して傾斜し、
前記低剛性部における前記変形保持部に接触する部位は、弾性変形により変位した前記変形保持部の板面が当接するように設けられている請求項1ないし7のいずれか1つに記載のクランプ。
【請求項9】
前記変形保持部および前記固定保持部は、前記長尺部材を挟んで対称位置に2組設けられている請求項1ないし8のいずれか1つに記載のクランプ。
【請求項10】
前記固定保持部は、前記変形保持部における前記長尺部材の長手方向の両端部に対応する位置に設けられている請求項1ないし9のいずれか1つに記載のクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺部材を固定するクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3では、樹脂材料の弾性変形を利用して棒体や管体等の長尺部材を固定するクランプが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−232063号公報
【特許文献2】特開2008−224003号公報
【特許文献3】特開2017−109671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂材料の弾性変形を利用するクランプは、固定対象である長尺部材の直径バラツキに対する追従性が低い。具体的には、長尺部材の直径が小さいと保持力が小さくなり、直径が大きいと樹脂材料が塑性変形して保持力が低下する。
【0005】
また、樹脂材料の弾性変形を利用するクランプでは、長期間の使用によってクリープ変形し、保持力が徐々に低下する。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、固定対象である長尺部材の寸法バラツキに対応可能とし、さらに保持力低下を抑制することが可能なクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、長尺部材(20)を被取付部材(30)に固定するためのクランプにおいて、長尺部材が接触し、長尺部材に押されて弾性変形する変形保持部(14)と、変形保持部が弾性変形によって変位する側に設けられ、変形保持部が弾性変形して変位する方向における剛性が変形保持部よりも高い固定保持部(15)とを設ける。固定保持部は、変形保持部の弾性変形を制限する。固定保持部には、変形保持部と接触する部位に他の部位よりも剛性が低い低剛性部(16)が設けられて
おり、固定保持部は、1つの前記変形保持部に対して複数設けられている。
【0008】
本発明によれば、長尺部材が接触して弾性変形する変形保持部を固定保持部で支持する。そして、低剛性部の変形によって、長尺部材の寸法バラツキを吸収可能となり、長尺部材を確実に保持することが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、変形保持部は剛性が高い固定保持部によって支持されているため、変形保持部が塑性変形やクリープ変形したしても、変形保持部による長尺部材の保持力が低下することを抑制できる。
【0010】
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のクランプ、長尺部材、被取付部材の斜視図である。
【
図5】長尺部材がクランプで固定される前の状態を示す図である。
【
図6】長尺部材がクランプで固定された状態を示す図である。
【
図7】
図6における変形保持部、固定保持部、低剛性部を拡大した図である。
【
図8】長尺部材の直径が大きい場合の変形保持部、固定保持部、低剛性部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では、クランプを車両用空調装置に適用している。なお、
図1、
図4〜
図8では、紙面の手前側と奥側を結ぶ方向が長尺部材20の長手方向であり、
図2、
図3では、紙面の上下方向が長尺部材20の長手方向である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のクランプ10は、長尺部材20を被取付部材30に取り付けるために用いられる。長尺部材20は、棒体や管体等の細長い長尺物であり、例えば車両用空調装置の配管を用いることができる。本実施形態の長尺部材20は、断面が円形となっている。被取付部材30は、長尺部材20が取り付けられる部材であり、例えば車両用空調装置の構成機器を収納する空調ケースを用いることができる。
【0014】
クランプ10は、例えばポリプロピレンといった合成樹脂によって構成されている。クランプ10は、金型を用いた樹脂成型によって製造することができる。
図1の上下方向を型抜き方向とすることができる。
【0015】
クランプ10は、本体部11を備えている。本体部11には、係合部12と収容部13が設けられている。
【0016】
係合部12は、クランプ10を被取付部材30に固定するため部位であり、被取付部材30の図示しない係合部に引っかかるように形成されている。収容部13は、一端側が開放したコの字状あるいはU字形状に形成されており、長尺部材20を収容するための空間を構成している。収容部13には、長尺部材20の長手方向における一部分が収容される。
【0017】
収容部13には、変形保持部14および固定保持部15が設けられている。変形保持部14および固定保持部15は、被取付部材30に固定される長尺部材20を保持するために用いられる。
【0018】
図5、
図6に示すように、本実施形態では、変形保持部14および固定保持部15が1つの長尺部材20を中心にして2組設けられている。つまり、1つの長尺部材20に対して変形保持部14と固定保持部15が2組設けられている。2組の変形保持部14と固定保持部15は、長尺部材20を挟んで対称位置に配置されている。
【0019】
変形保持部14は、収容部13の板面から突出するように設けられている。変形保持部14は、長尺部材20が挿入される方向に向かって突出している。
【0020】
図3に示すように、変形保持部14は板状に形成されている。変形保持部14の板面は、長尺部材20の長手方向に沿って配置されている。本実施形態では、変形保持部14の板面は、長尺部材20の長手方向に平行となっている。
【0021】
図5に示すように、本実施形態では、1つの長尺部材20に対して一対の変形保持部14が設けられている。一対の変形保持部14は、それぞれの板面が平行となるように配置されている。一対の変形保持部14の間隔は、長尺部材20の直径より短くなっている。変形保持部14は、収容部13に挿入された長尺部材20が接触する。変形保持部14の板面は、収容部13に挿入された長尺部材20の側面と接触可能となっている。一対の変形保持部14によって長尺部材20が挟み込まれる。
【0022】
図6に示すように、変形保持部14は、長尺部材20に押されることで弾性変形し、先端が外側に広がるように変位する。一対の変形保持部14は、弾性変形によって、互いの先端が離れる方向に変位する。
【0023】
図3、
図4に示すように、固定保持部15は、変形保持部14に近接して設けられている。変形保持部14と固定保持部15との間には、所定の隙間が設けられている。固定保持部15は、弾性変形していない状態の変形保持部14と平行に設けられている。
【0024】
固定保持部15は、一対の変形保持部14の外側に配置されている。固定保持部15は、長尺部材20によって押された変形保持部14が弾性変形によって変位する側に設けられている。弾性変形した変形保持部14は、固定保持部15に接触する。
【0025】
本実施形態では、1つの変形保持部14に対して複数の固定保持部15が設けられている。
図3に示す例では、1つの変形保持部14に対して2つの固定保持部15が設けられている。2つの固定保持部15は、長尺部材20の長手方向において、変形保持部14の両端部に対応する位置に設けられている。
【0026】
固定保持部15は剛体であり、変形保持部14よりも剛性が高い。固定保持部15は、変形保持部14が弾性変形して変位する方向、つまり長尺部材20の長手方向と交わる方向における剛性が変形保持部14よりも高くなっている。
【0027】
図3に示すように、固定保持部15の板面は、長尺部材20の長手方向と交わる方向に配置されている。これにより、長尺部材20の直径方向における剛性を高くすることができる。本実施形態では、固定保持部15の板面は、長尺部材20の長手方向と直交する方向に配置されている。
【0028】
また、固定保持部15における変形保持部14に対向する側の反対側は、収容部13の壁面と接している。これによっても、固定保持部15の長尺部材20の直径方向における剛性を高くすることができる。
【0029】
固定保持部15は、弾性変形した変形保持部14が接触した際に、弾性変形量がゼロであるか、あるいは変形保持部14よりも弾性変形量が小さくなっている。固定保持部15は、弾性変形した変形保持部14を支持し、変形保持部14の弾性変形を制限する。
【0030】
図3、
図4に示すように、固定保持部15には、変形保持部14と対向する部位に低剛性部16が設けられている。低剛性部16は、固定保持部15において、弾性変形した変形保持部14が接触する部位に設けられている。固定保持部15には、弾性変形した変形保持部14の先端側が接触する。このため、低剛性部16は、固定保持部15の先端側に設けられている。
【0031】
図3に示すように、低剛性部16は、変形保持部14に対向する部位がクサビ形状あるいは断面V字形状に形成されている。低剛性部16は、固定保持部15における他の部位より剛性が低くなっている。低剛性部16は、変形保持部14の板面から受ける面圧によって塑性変形する。
【0032】
低剛性部16は、変形保持部14に向かって長尺部材20の長手方向の寸法が小さくなっている。低剛性部16における変形保持部14に対向する部位は、2つの面が交わる角部となっており、長尺部材20との接触面積が小さくなっている。本実施形態では、低剛性部16における変形保持部14に対向する角部は鋭角になっている。
【0033】
弾性変形により変位した変形保持部14の板面(
図6参照)は、弾性変形していない変形保持部14の板面(
図5参照)に対して傾斜している。低剛性部16は、弾性変形した状態の変形保持部14の板面が当接するように設けられており、弾性変形していない変形保持部14の板面に対して傾斜している。
【0034】
ここで、本実施形態のクランプ10を用いた被取付部材30への長尺部材20の固定について説明する。
【0035】
図5に示すように、長尺部材20をクランプ10の収容部13に挿入する。長尺部材20が変形保持部14に接触すると、変形保持部14は長尺部材20の側面によって押される。これにより、変形保持部14は外側に向かって弾性変形を開始する。長尺部材20は、弾性変形を開始した変形保持部14によって保持され始める。
【0036】
図6、
図7に示すように、長尺部材20が収容部13に完全に収容された状態では、弾性変形した変形保持部14は、板面が固定保持部15に接触する。変形保持部14は剛性の高い固定保持部15によって支持され、変形保持部14は弾性変形が制限される。変形保持部14は、長尺部材20と固定保持部15に挟まれた状態で固定される。
【0037】
弾性変形した変形保持部14の板面は、固定保持部15の低剛性部16に接触する。変形保持部14から受ける面圧で低剛性部16がつぶれることによる反力によって長尺部材20を保持することできる。変形保持部14は長尺部材20と固定保持部15に挟まれてクサビ効果を発揮し、長尺部材20に対して大きな保持力を発生する。
【0038】
以上説明した本実施形態では、長尺部材20が接触して弾性変形する変形保持部14を剛性が高い固定保持部15で支持している。このため、変形保持部14が塑性変形やクリープ変形したしても、変形保持部14による長尺部材20の保持力が低下することを抑制できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、固定保持部15における変形保持部14が当接する部位に低剛性部16を設けることで、長尺部材20の直径のバラツキを吸収可能となる。
図8に示す例では、
図7に示す例に比べて長尺部材20の直径が大きくなっている。
図8に示すように、長尺部材20の直径が大きくなっても、低剛性部16の変形量が大きくなることで長尺部材20の寸法バラツキを吸収でき、長尺部材20を確実に保持することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、1つの変形保持部14に対して複数の固定保持部15を設けている。これにより、固定保持部15により変形保持部14を効果的に支持することができ、変形保持部14による長尺部材20の保持を安定させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、1つの長尺部材20を挟むように変形保持部14と固定保持部15を2組設けている。これにより、一対の変形保持部14によって長尺部材20を両側から安定して保持することができる。
【0042】
また、本実施形態では、低剛性部16が弾性変形した変形保持部14の板面に対応して傾斜して設けられている。これにより、弾性変形によって変位した変形保持部14の先端側板面を低剛性部16に適切に接触させることができ、接触面積を大きくすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、変形保持部14の板面が長尺部材20の長手方向に沿って設けられているため、変形保持部14の板面が長尺部材20の側面に当接する。このため、長尺部材20における変形保持部14によって保持される部位の一部に曲げ加工などによって直径が細くなっている部位があっても、長尺部材20における他の部位によって充分な保持力を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態では、クランプ10の各構成要素が一方向(つまり、
図1の上下方向)に形成されている。このため、クランプ10を樹脂成形する際にアンダーカットが不要であり、金型の抜き方向が1方向で成形できる。これにより、クランプ10の製造工程が複雑化することを抑制でき、安価に製造することが可能となる。
【0045】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0046】
例えば、上記実施形態では、1つの変形保持部14に対して2つの固定保持部15が設けられた例について説明したが、1つの変形保持部14に対して1以上の固定保持部15が設けられていればよい。1つの変形保持部14に対して3以上の固定保持部15が設けられていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、長尺部材20を中心として2組の変形保持部14および固定保持部15が設けられた例について説明したが、1つの長尺部材20に対して1組以上の変形保持部14および固定保持部15が設けられていればよい。
【0048】
また、上記実施形態では、低剛性部16における変形保持部14に対向する側を鋭角の角部とした例について説明したが、低剛性部16における変形保持部14に対向する先端側は鋭角でなくてもよく、若干丸まっていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、固定保持部15における変形保持部14に対向する側の反対側が収容部13の壁面と接するようにしたが、必ずしも固定保持部15における変形保持部14に対向する側の反対側が収容部13の壁面と接していなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 クランプ
14 変形保持部
15 固定保持部
16 低剛性部
20 長尺部材
30 被取付部材