特許第6981452号(P6981452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許6981452-二次電池 図000002
  • 特許6981452-二次電池 図000003
  • 特許6981452-二次電池 図000004
  • 特許6981452-二次電池 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981452
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20211202BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20211202BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20211202BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20211202BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20211202BHJP
   H01M 50/528 20210101ALN20211202BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M10/058
   H01M50/533
   H01M4/64 A
   H01M4/70 A
   !H01M10/052
   !H01M50/528
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-140857(P2019-140857)
(22)【出願日】2019年7月31日
(65)【公開番号】特開2021-26808(P2021-26808A)
(43)【公開日】2021年2月22日
【審査請求日】2020年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慈
(72)【発明者】
【氏名】奥田 匠昭
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/168286(WO,A1)
【文献】 特開2016−201199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00−10/39
H01M 4/64
H01M 4/70
H01M50/531−50/541
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質を含む複数の柱状負極と、
各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、
正極活物質を含み、隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、
すべての前記柱状負極の一方の端面が露出するように設けられた絶縁層と、
前記絶縁層から露出したすべての前記柱状負極の一方の端面を覆うように設けられた第1負極集電層と、
前記第1負極集電層上に間欠的に設けられた複数の第2負極集電層と、
前記第1負極集電層と接触せず、前記第2負極集電層を架け渡すように設けられ、前記第2負極集電層よりも少ない数の第3負極集電層と、
を備え、
前記第1負極集電層の電流経路の電気抵抗Ra1と、前記第2負極集電層の電流経路の電気抵抗Ra2と、前記第3負極集電層の電流経路の電気抵抗Ra3は、Ra1>Ra2>Ra3の関係を満たす、
二次電池。
【請求項2】
前記電気抵抗Ra1は、前記第2負極集電層と重複していない前記柱状負極の前記端面から前記第1負極集電層を経由して前記第2負極集電層に至る最短経路の電気抵抗であり、前記電気抵抗Ra2は、前記第2負極集電層の端部から前記第2負極集電層を経由して前記第3負極集電層に至る経路の電気抵抗であり、前記電気抵抗Ra3は、前記第3負極集電層の一端から他端に至る経路の電気抵抗である、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電気抵抗Ra1に対する前記電気抵抗Ra2の比は0.1以下であり、前記電気抵抗Ra2に対する前記電気抵抗Ra3の比は0.1以下である、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記柱状負極の前記端面は、周期的に配置され、
前記第2負極集電層は、同一直線上に並んだ複数の前記柱状負極の前記端面と平行に重なるように且つ隣合う前記第2負極集電層同士の間隔が一定になるように設けられている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第3負極集電層は、前記第2負極集電層を架け渡すように設けられた1本の導電線である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池としては、集電効率を高めるために集電体部分の材料を工夫したもの(特許文献1〜3)や、複数の集電板や導線を固定する集電構造に関するもの(特許文献4〜6)などが知られている。また、エネルギー密度の高い二次電池としては、複数の柱状負極と、各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、隣合う分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極とを備えたものも知られている(特許文献7)。この二次電池は、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された構造である。この二次電池の正極は、正六角柱からなる柱状正極を空間充填して得られたものであり、分離膜で囲われた柱状負極が、柱状正極の中心孔に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019−32966号公報
【特許文献2】特開2019−33066号公報
【特許文献3】特開2018−116910号公報
【特許文献4】特許第6159719号公報
【特許文献5】特開2014−154272号公報
【特許文献6】特開2015−103318号公報
【特許文献7】特開2018−152229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献7の二次電池では、負極集電構造は柱状負極の一方の端面を金属製の集電板に接続するものであったため、集電を効率的に行うことができず、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度が十分高いとはいえなかった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された二次電池において、エネルギー密度を十分高めることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された二次電池において、負極集電構造を工夫することによりエネルギー密度を十分高めることができることを見い出し、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する二次電池は、
負極活物質を含む複数の柱状負極と、
各柱状負極の周囲を囲うように設けられた分離膜と、
正極活物質を含み、隣合う前記分離膜同士の間を埋めるように設けられた正極と、
すべての前記柱状負極の一方の端面が露出するように設けられた絶縁層と、
前記絶縁層から露出したすべての前記柱状負極の一方の端面を覆うように設けられた第1負極集電層と、
前記第1負極集電層上に間欠的に設けられた複数の第2負極集電層と、
前記第1負極集電層と接触せず、前記第2負極集電層を架け渡すように設けられ、前記第2負極集電層よりも少ない数の第3負極集電層と、
を備え、
前記第1負極集電層の電流経路の電気抵抗Ra1と、前記第2負極集電層の電流経路の電気抵抗Ra2と、前記第3負極集電層の電流経路の電気抵抗Ra3は、Ra1>Ra2>Ra3の関係を満たす、
ものである。
【0008】
この二次電池によれば、柱状負極の集電を効率的に行うことができるため、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を十分高くすることができる。負極集電構造を第1負極集電層のみとした場合には、第1負極集電層を電流が流れる経路の電気抵抗が高いためすべての柱状負極からの電流を実用的な電圧低下範囲で流すのは難しい。しかし、ここでは、負極集電構造を、第1負極集電層と、第1負極集電層の上に間欠的に設けられた低抵抗な第2負極集電層と、更に第2負極集電層の上に設けられたより低抵抗な第3負極集電層とで構成したため、すべての柱状負極からの電流を第1負極集電層、第2負極集電層及び第3負極集電層の順に経由して比較的低い電気抵抗で集電することができる。その結果、すべての柱状負極からの電流を実用的な電圧低下範囲で流すことができる。したがって、分離膜で周囲を囲われた柱状負極が正極内に配置された二次電池において、エネルギー密度を十分高めることできる。
【0009】
本明細書で開示する二次電池において、前記電気抵抗Ra1は、前記第2負極集電層と重複していない前記柱状負極の前記端面から前記第1負極集電層を経由して前記第2負極集電層(例えば第2負極集電層の中心線)に至る最短経路の電気抵抗であり、前記電気抵抗Ra2は、前記第2負極集電層の端部から前記第2負極集電層を経由して前記第3負極集電層(例えば第3負極集電層の中心線)に至る経路の電気抵抗であり、前記電気抵抗Ra3は、前記第3負極集電層の一端から他端に至る経路の電気抵抗としてもよい。
【0010】
本明細書で開示する二次電池において、前記電気抵抗Ra1に対する前記電気抵抗Ra2の比は0.1以下であり、前記電気抵抗Ra2に対する前記電気抵抗Ra3の比は0.1以下であってもよい。こうすれば、エネルギー密度を一層高めることができる。
【0011】
本明細書で開示する二次電池において、前記柱状負極の前記端面は、周期的に配置され、前記第2負極集電層は、同一直線上に並んだ複数の前記柱状負極の前記端面と平行になるように且つ隣合う前記第2負極集電層同士の間隔が一定になるように設けられていてもよい。こうすれば、第2負極集電層は周期的な構造になるため形成しやすくなる。
【0012】
本明細書で開示する二次電池において、前記第3負極集電層は、前記第2負極集電層を架け渡すように設けられた1本の導電線であってもよい。こうすれば、第3負極集電層が複数本存在する場合に比べて構成が簡素化される。
【0013】
本明細書で開示する二次電池において、前記正極は、空間充填可能な正多角柱からなる複数の柱状正極を空間充填して得られたものであり、前記分離膜で囲われた前記柱状負極は、前記柱状正極の中心孔に配置されていてもよい。こうすれば、正極を比較的容易に作製することができる。
【0014】
本明細書で開示する二次電池は、固体電解質を用いた全固体電池としてもよいし、電解質液を用いた二次電池としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】二次電池10の概略構成を示す斜視図。
図2】柱状正極26を空間充填して得られた正極16の斜視図。
図3】分離膜14付きの柱状負極12を有する柱状正極26の斜視図。
図4】第1負極集電層21の経路Pa1の電気抵抗Ra1を求める方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本実施形態で開示する二次電池10について図面を用いて説明する。ここでは、説明の便宜のため、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池を一例として以下に説明する。図1は二次電池10の概略構成を示す斜視図、図2は柱状正極26を空間充填して得られた正極16の斜視図、図3は分離膜14付きの柱状負極12を有する柱状正極26の斜視図、図4は第1負極集電層21の経路Pa1の電気抵抗Ra1を求める方法の説明図である。なお、本実施形態で上下方向、左右方向及び前後方向は図1及び図2に示すとおりとするが、これらは相対的な位置関係を表すために便宜上用いたに過ぎない。
【0017】
二次電池10は、柱状負極12と、分離膜14と、正極16と、負極集電体20と、正極集電体30とを備えている。
【0018】
柱状負極12は、負極活物質を含む円柱体である。二次電池10は、複数の柱状負極12を有している。柱状負極12は、負極活物質である炭素繊維を束ねたものとしてもよいし、炭素繊維を撚ったものとしてもよい。柱状負極12は、二次電池10全体の負極容量の1/n(nは2以上の整数、以下同じ)の容量を有し、n本が負極集電体20の第1負極集電層21に並列接続されている。柱状負極12は、長手方向に垂直な断面の直径が10μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。この直径が10μm以上であれば、電極構造体としての強度を担保することができ安定した充放電ができる。また、この直径が200μm以下であれば、キャリアのイオンの移動距離が長くなりすぎず、高出力性能が得られる。また、この直径がこの範囲であれば、単位体積あたりのエネルギー密度をより高めることができる。あるいは、この範囲であれば、キャリアのイオンの移動距離をより短くすることができ、より大きな電流で充放電を行うことができる。この炭素繊維の長手方向の長さは、二次電池10の用途などに応じて適宜定めることができ、例えば、20mm以上200mm以下の範囲などとしてもよい。炭素繊維の長さが20mm以上であれば、電池容量をより高めることができ好ましく、200mm以下であれば、柱状負極12の電気抵抗をより低減することができ好ましい。柱状負極12の上端面12aは、正極16の上端面に設けられた絶縁層18から露出するように設けられている。すなわち、絶縁層18は、すべての柱状負極12の上端面12aが露出するように設けられている。絶縁層18は、例えば電気絶縁性ポリマーで形成されている。柱状負極12の上端面12aは、絶縁層18に格子状になるように周期的に配置され、左右方向にi個(iは2以上の整数)、前後方向にj個(jは2以上の整数)並んでいる。
【0019】
分離膜14は、柱状負極12の外周面及び下端面を囲うように設けられている。分離膜14は、柱状負極12の上端面12aには設けられていない。分離膜14は、キャリアであるイオン(本実施形態ではリチウムイオン)のイオン伝導性を有し、柱状負極12と正極16とを絶縁するものである。分離膜14としては、イオン伝導性と絶縁性とを有するポリマーが好適である。この分離膜14は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体や、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。この分離膜14の厚さは、例えば、絶縁性を確保することを考慮すると、0.5μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であるものとしてもよい。また、分離膜14の厚さは、イオン伝導性の低下を抑制することを考慮すると、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。そのため、分離膜14の厚さは、0.5〜20μmの範囲であることが、イオン伝導性と絶縁性とを両立させる上で好適である。この分離膜14は、例えば、原料を含む溶液へ柱状負極12を浸漬させてその表面にコートすることにより形成されるものとしてもよい。
【0020】
電解液は、本実施形態では、非水系溶媒にリチウムイオンを含む支持塩を溶解したもの(非水系電解液)とした。非水系溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0021】
正極16は、正極活物質を含み、隣合う分離膜14同士の間を埋めるように設けられている。正極16は、例えば図2に示すように、正六角柱からなる複数の柱状正極26を空間充填して得られたものとしてもよい。柱状正極26の中心孔26aには、外周面及び下端面が分離膜14で囲われた柱状負極12が配置されている。中心孔26aは、柱状正極26の中心軸に沿って柱状正極26の上端面から下端面の手前まで設けられた有底筒状の孔である。そのため、柱状負極12の外周面及び下端面と、柱状正極26の中心孔26aの内壁及び底面とは、分離膜14によって絶縁されている。図3に、分離膜14付きの柱状負極12を有する柱状正極26の斜視図を示す。
【0022】
正極16は、正極活物質を含んでいるが、正極活物質が導電性を有さない場合は、導電性を有する導電材を混合して成形したものとしてもよい。正極16は、例えば、正極活物質と、必要に応じて導電材と、結着剤とを混合し成形したものとしてもよい。正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、リチウムと遷移金属とを有する化合物が挙げられる。こうした化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物やリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMnc2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMnc4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32やLiNi0.4Co0.3Mn0.32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
【0023】
正極16に導電材を含ませる場合、その導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。正極16に結着材を含ませる場合、その結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであれば特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
【0024】
負極集電体20は、図1に示すように、第1負極集電層21と、第2負極集電層22と、第3負極集電層23とを備えたものであり、二次電池10の上部に配置されている。
【0025】
第1負極集電層21は、絶縁層18から露出したすべての柱状負極12の上端面12aと絶縁層18の表面とを覆うように、例えば蒸着、スパッタ、印刷などで形成されている。そのため、第1負極集電層21には、n本の柱状負極12の上端面12aが並列接続されている。第1負極集電層21の材料としては、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性(還元性)を向上させる目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。第1負極集電層21の形状は、本実施形態では板状とした。
【0026】
第2負極集電層22は、第1負極集電層21上に間欠的に設けられた線状又は板状の部材である。第2負極集電層22は、図1に示すように、左右方向の同一直線上に並んだ複数の柱状負極12の上端面12aと平行になるように且つ隣合う第2負極集電層22同士の間隔が一定になるように設けられていることが好ましい。図1では、第2負極集電層22は、同一直線上に並んだ複数の柱状負極12の上端面12aと重なるように設けられており、第2負極集電層22の前後方向のピッチは、柱状負極12の上端面12aの前後方向のピッチの2倍になっている。そのため、左右方向の同一直線上に並んだ複数の柱状負極12の上端面12aは、第2負極集電層22と重なるものと重ならないものとが前後方向に交互に存在する。第2負極集電層22の材料としては、第1負極集電層21で例示した材料の中から適宜使用することができ、第1負極集電層21と同じ材料であってもよいし異なる材料であってもよい。
【0027】
第3負極集電層23は、第1負極集電層21と接触せず、第2負極集電層22を架け渡すように設けられた線状又は板状の部材である。第3負極集電層23は、第2負極集電層22よりも少ない数であり、本実施形態では1本である。第3負極集電層23の材料としては、第1負極集電層21で例示した材料の中から適宜使用することができ、第1負極集電層21や第2負極集電層22と同じ材料であってもよいし異なる材料であってもよい。
【0028】
第1負極集電層21を電流が流れる経路の電気抵抗を、電気抵抗Ra1[Ω]とする。本実施形態では、電気抵抗Ra1は、第2負極集電層22と重ならない柱状負極12の上端面12aから第1負極集電層21を経由して第2負極集電層22に至る最短経路の電気抵抗とする。具体的には、電気抵抗Ra1は、図4に示すように、直上に第2負極集電層22が設けられていない柱状負極12の上端面12aの中心線から第1負極集電層21を経由して第2負極集電層22の中心線22cに至る経路Pa1(図4の網掛けを施した長方形部分)の電気抵抗とする。この経路Pa1は、第1負極集電層21における長さLa1[m]、幅wa1[m]、厚さta1[m]の直方体である。第1負極集電層21の体積抵抗率をρa1[Ωm]とすると、第1負極集電層21の電気抵抗Ra1は、下記式で表される。式中、Sa1は経路Pa1の断面積(=wa1×ta1)である。
Ra1=ρa1×La1/Sa1
【0029】
第2負極集電層22を電流が流れる経路の電気抵抗を、電気抵抗Ra2[Ω]とする。本実施形態では、電気抵抗Ra2は、第2負極集電層22の端部から第2負極集電層22を経由して第3負極集電層23に至る経路の電気抵抗とする。具体的には、電気抵抗Ra2は、図1に示すように、第2負極集電層22の端部(右端)から第2負極集電層22を経由して第3負極集電層23の中心線23cに至る経路の電気抵抗とする。第2負極集電層22の体積抵抗率をρa2[Ωm]とすると、電気抵抗Ra2は、下記式で表される。長さLa2[m]と断面積Sa2[m2]を図1に示す。
Ra2=ρa2×La2/Sa2(Sa2は第2負極集電層22の断面積)
【0030】
第3負極集電層23を電流が流れる経路の電気抵抗を、電気抵抗Ra3[Ω]とする。本実施形態では、電気抵抗Ra3は、第3負極集電層23の長手方向の一端から他端に至る電気抵抗とする。第3負極集電層23の体積抵抗率をρa3[Ωm]とすると、電気抵抗Ra3は、下記式で表される。長さLa3[m]と断面積Sa3[m2]を図1に示す。
Ra3=ρa3×La3/Sa3(S3は第3負極集電層23の断面積)
【0031】
本実施形態では、電気抵抗Ra1,Ra2,Ra3は、Ra1>Ra2>Ra3の関係を満たす。また、電気抵抗Ra1に対する電気抵抗Ra2の比は0.1以下であり、電気抵抗Ra2に対する電気抵抗Ra3の比は0.1以下であることが好ましい。
【0032】
正極集電体30は、導電性を有する部材であり、正極16の下面に電気的に接続されている。正極集電体30には、n本の柱状正極26(図2参照)の下端面が並列接続されている。この正極集電体30の材料としては、負極集電体20の第1負極集電層21の材料として例示したものが挙げられる。正極16の下面は正極集電体30に直接接続されている。
【0033】
以上詳述した本実施形態の二次電池10によれば、3層構造の負極集電体20を採用したことにより柱状負極12の集電を効率的に行うことができるため、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を十分高くすることができる。負極集電構造を第1負極集電層21のみとした場合には、第1負極集電層21を電流が流れる経路の電気抵抗が高いためすべての柱状負極12からの電流を実用的な電圧低下範囲で流すのは難しい。しかし、ここでは、負極集電構造を、第1負極集電層21と、第1負極集電層21の上に間欠的に設けられた低抵抗な第2負極集電層22と、更に第2負極集電層22の上に設けられたより低抵抗な第3負極集電層23とで構成したため、すべての柱状負極12からの電流を第1負極集電層21、第2負極集電層22及び第3負極集電層23の順に経由して比較的低い電気抵抗で集電することができる。その結果、すべての柱状負極12からの電流を実用的な電圧低下範囲で流すことができる。したがって、分離膜14で周囲を囲われた柱状負極12が正極16内に配置された二次電池10において、エネルギー密度を十分高めることできる。
【0034】
また、電気抵抗Ra1に対する電気抵抗Ra2の比は0.1以下であり、電気抵抗Ra2に対する電気抵抗Ra3の比は0.1以下であるため、エネルギー密度を一層高めることができる。
【0035】
更に、第2負極集電層22は、同一直線上に並んだ複数の柱状負極12の上端面12aと平行になるように且つ隣合う第2負極集電層22同士の間隔が一定になるように設けられている。これにより、第2負極集電層22は周期的な構造になるため形成しやすくなる。
【0036】
更にまた、第3負極集電層23は、第2負極集電層22を架け渡すように設けられた1本の導電線であるため、第3負極集電層23が複数本存在する場合に比べて構成が簡素化される。
【0037】
そして、正極16は、正六角柱からなる複数の柱状正極26を空間充填して得られたものであり、分離膜14で囲われた柱状負極12は、柱状正極26の中心孔26aに配置されている。そのため、正極16を比較的容易に作製することができる。
【0038】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、二次電池10のキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水系電解液としてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、炭素繊維は、円柱形状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱などの形状としてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、第1負極集電層21の形状を箔状としたが、特に箔状に限定されるものではなく、例えば、板状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチングシート、ガラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などでもよい。第2及び第3負極集電層22,23の形状についても同様である。また、第1〜第3負極集電層21〜23は、3つとも同じ形状であってもよいし、2つが同じ形状で残り1つが異なる形状であってもよいし、3つとも異なる形状であってもよい。
【0042】
上述した実施形態では、二次電池10として電解液を用いるものを例示したが、電解液を用いない全固体電池としてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、第2負極集電層22は、一直線上に並んだ柱状負極12の上端面12aに重なるように設けたが、特にこれに限定されるものではなく、一直線上に並んだ柱状負極12の上端面12aに重ならないように設けてもよいし、重なるものと重ならないものとを混在させてもよい。また、第2負極集電層22の前後方向のピッチは、柱状負極12の上端面12aの前後方向のピッチの2倍としたが、特に2倍に限定されるものではなく、例えば3倍とか4倍であってもよい。また、第2負極集電層22は等間隔となるように設けたが、特に等間隔である必要はなく、間欠的に設けてあればよい。
【0044】
上述した実施形態では、柱状正極26を正六角柱としたが、空間充填可能な正多角柱であればよく、例えば正三角柱や正四角柱などであってもよい。
【0045】
上述した実施形態では、柱状負極12として、負極活物質である炭素繊維を束ねたものや撚ったものを例示したが、特にこれに限定されるものではなく、キャリア(例えばリチウムイオン)を吸蔵放出可能な材料を含むものであればよい。また、必要に応じて導電材や結着材を含むものとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 二次電池、12 柱状負極、12a 上端面、14 分離膜、16 正極、18 絶縁層、20 負極集電体、21 第1負極集電層、22 第2負極集電層、22c 第2負極集電層の中心線、23 第3負極集電層、23c 第3負極集電層の中心線、26 柱状正極、26a 中心孔、30 正極集電体。
図1
図2
図3
図4