(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の一方の面上に設けられた熱膨張層と、前記熱膨張層上に設けられ、インクを受容する第1のインク受容層と、前記第1のインク受容層上に設けられたフィルムと、前記フィルム上に設けられ、インクを受容する第2のインク受容層と、を備え、前記第1のインク受容層が、前記第2のインク受容層とは異なる質感を呈する材料を用いて形成される熱膨張性シートを用い、
前記フィルムの少なくとも一部を剥離し、前記第1のインク受容層を露出する剥離工程と、
露出された前記第1のインク受容層に第1の画像を形成する第1の画像形成工程と、
前記第1の画像形成工程と同時に前記第2のインク受容層上に第2の画像を形成する第2の画像形成工程と、
前記熱膨張層の少なくとも一部を加熱して当該熱膨張層を膨張させる工程と、
を有し、
前記剥離工程では、前記第2の画像が印刷される又は印刷された領域が残存するように前記フィルムを剥離する、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法、造形物及び造形物の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
本実施形態では、熱膨張性シート10の表面に、熱膨張層12の隆起によって造形物を表現する。また、本明細書において、「造形物」は、単純な形状、幾何学形状、文字、装飾等、形状を広く含む。ここで、装飾とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。また、「造形(又は造型)」は、単に造形物を形成することに限らず、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。更に装飾性のある造形物とは、加飾又は造飾の結果として形成される造形物を示す。
【0015】
本実施形態の造形物は、三次元空間内の特定の二次元面(例えば、XY平面)を基準とし、その面に対し垂直な方向(例えばZ軸)に凹凸を有する。このような造形物は、立体(3D)画像の一例であるが、所謂3Dプリンタ技術によって製造される立体画像と区別するため、2.5次元(2.5D)画像又は疑似三次元(Pseudo-3D)画像と呼ぶ。また、このような造形物を製造する技術は、三次元画像印刷技術の一例であるが、所謂3Dプリンタと区別するため、2.5D印刷技術又は疑似三次元(Pseudo-3D)印刷技術と呼ぶ。
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る熱膨張性シート10は、
図1に示すように、基材11、熱膨張層12、第1のインク受容層13、フィルム14、及び第2のインク受容層15を備える。
【0017】
基材11は、熱膨張層12等を支持するシート状の部材である。基材11の一方の面(表面、
図1では上面)上には、熱膨張層12が形成される。基材11としては、上質紙、等の紙、又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製のシート(フィルムを含む)を使用する。基材11としては、PETに限らず、一般に使用されているポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂等の材料から適宜選択して形成されるシートを使用することができる。また、基材11は、熱膨張層12が全体的又は部分的に発泡により膨張した時に、基材11の反対側(
図1に示す下側)に隆起せず、また、しわが生じたり、大きく波打ったりしない程度の強度を備える。加えて、熱膨張層12を発泡させる際の加熱に耐える程度の耐熱性を有する。また、後述するように、基材11の他方の面(裏面、
図1に示す下面)には、熱膨張層12を膨張させるために使用する電磁波熱変換層が形成される。このため、基材11がPET等の樹脂から形成される場合、基材11の他方の面(裏面、
図1に示す下面)上に、電磁波熱変換層として用いられるインクを良好に受容するためのインク受容層を更に形成してもよい。
【0018】
熱膨張層12は、基材11の一方の面(
図1では、上面)上に形成される。熱膨張層12は、加熱温度、加熱時間に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に複数の熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル、マイクロカプセル)が分散配置されている。また、詳細に後述するように、本実施形態では、基材11の下面(裏面)に電磁波を熱へと変換させる電磁波熱変換層(以下、単に熱変換層とも呼ぶ)を形成し、電磁波を照射することで、電磁波熱変換層が設けられた領域を発熱させる。電磁波熱変換層は、電磁波の照射により、熱を帯びるため、帯熱層とも呼べる。熱膨張層12は、熱膨張性シート10の裏面の電磁波熱変換層で生じた熱を吸収して発泡し、膨張し、少なくとも一部において熱膨張層12の層表面が隆起する。これを利用し、電磁波熱変換層の濃度、形状を調整することで、熱膨張性シート10の特定の領域のみを選択的に任意の形に膨張させることができる。
【0019】
熱膨張層12のバインダとしては、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂を用いる。また、熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点気化性物質を、熱可塑性樹脂の殻内に含むものである。殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいは、それらの共重合体等の熱可塑性樹脂から形成される。熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、約5〜50μmである。このマイクロカプセルを熱膨張開始温度以上に加熱すると、樹脂からなる高分子の殻が軟化し、内包されている低沸点気化性物質が気化し、その圧力によってカプセルが膨張する。用いるマイクロカプセルの特性にもよるが、マイクロカプセルは膨張前の粒径の5倍程度に膨張する。なお、マイクロカプセルの粒径には、ばらつきがあり、全てのマイクロカプセルが同じ粒径を有するものではない。また、熱膨張層12は、例えば白色である。
【0020】
第1のインク受容層13は、熱膨張層12上に形成される。第1のインク受容層13は、印刷工程で使用されるインク、例えば、インクジェットプリンタのインクを受容し、定着させる層である。第1のインク受容層13は、印刷工程で使用されるインクに応じて、既知の材料を使用して形成される。例えば水性インクを利用する場合で、空隙を利用してインクを受容するタイプでは、第1のインク受容層13は、例えば多孔質シリカ、アルミナ等を用いて形成される。空隙を利用してインクを受容するタイプでは、いわゆるマットな質感が得られ、その形成被膜は白色である。インクを膨潤させて受容するタイプでは、第1のインク受容層13は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等から少なくとも1つ選択される樹脂を用いて形成される。膨潤してインクを受容するタイプでは、いわゆる光沢のある質感が得られ、その形成被膜はほぼ透明である。本実施形態では、例えば第1のインク受容層13は、いわゆるマットな(光沢のない)質感を呈する材料から形成され、例えば多孔質シリカから形成される。この場合、第1のインク受容層13上に形成される画像は、光沢のないマットな質感を呈する。なお、本明細書において、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂には、ポリビニルアルコールと、その変性体又は共重合体が含まれる。ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂についても同様である。
【0021】
フィルム14は、第1のインク受容層13上に形成される。詳細に後述するように、フィルム14は、熱膨張性シート10の表面に形成される造形物(2.5次元画像)に求められる質感により、一部又は全部が剥離されるため、第1のインク受容層13上に剥離可能に接着されている。フィルム14は、樹脂製であり、例えば、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、又はこれらの共重合体等から選択される樹脂から形成される。フィルム14は、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体から形成される。なお、フィルム14は、単層のフィルムに限られず、複数の層を有するラミネートフィルムであってもよい。
【0022】
第2のインク受容層15は、フィルム14上に形成される。第2のインク受容層15は、第1のインク受容層13と同様に、印刷工程で使用されるインク、例えば、インクジェットプリンタのインクを受容し、定着させる層である。第2のインク受容層15は、印刷工程で使用されるインクに応じて、既知の材料を使用して形成される。例えば水性インクを利用する場合で、空隙を利用してインクを受容するタイプでは、第2のインク受容層15は、例えば多孔質シリカ、アルミナ等を用いて形成される。インクを膨潤させて受容するタイプでは、第2のインク受容層15は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等から選択される樹脂を用いて形成される。
【0023】
特に本実施形態では、第1のインク受容層13と第2のインク受容層15とで、異なる質感を呈することが必要であるため、第2のインク受容層15は、第1のインク受容層13とは異なる材料から形成される。また、第1のインク受容層13の材料が呈する質感が、第2のインク受容層15の材料が呈する質感と異なれば、任意の材料から形成されることができる。例えば、本実施形態では、第1のインク受容層13が、いわゆるマットな質感を呈する多孔質シリカから形成される場合、第2のインク受容層15は、いわゆる光沢のある質感を呈するPVA系樹脂等から形成される。なお、この他の組み合わせ、逆の組み合わせも可能である。特に、第2のインク受容層15は、樹脂製のフィルム14上へ形成されるため、インクを膨潤させ受容するタイプを使用することにより、第2のインク受容層15とフィルム14との接着性を良好とすることができ、好適である。また、第1のインク受容層13を多孔質シリカのような空隙タイプを利用して形成することにより、膨潤タイプと比較し、インクを早く乾かすことができる。従って、インクを乾かす時間を短縮することができ、後述する
図5のステップS4からステップS5へと移るために要する時間を短くし、スムーズにステップS4からステップS5へと移ることができる。
【0024】
このように第1のインク受容層13と第2のインク受容層15とで、質感の異なる材料を使用することにより、詳細に後述するように、熱膨張性シート10の表面に、異なる質感の造形物(2.5次元画像)を形成することが可能となる。
【0025】
(熱膨張性シート10の製造方法)
次に、熱膨張性シート10の製造方法を
図2(a)〜
図2(d)及び
図3を用いて説明する。まず、基材11としてシート状の紙を用意する。基材11は、例えばロール紙を使用する。また、以下に示す製造方法はロール式に限らず、枚葉式で行うことも可能である。
【0026】
次に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを混合させ、熱膨張層12を形成するための塗布液を調製する。続いて、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の公知の塗布装置を用いて、塗布液を基材11の一方の面(
図2(a)に示す上面)上に塗布する。続いて、塗膜を乾燥させ、
図2(a)に示すように熱膨張層12を形成する。なお、目標とする熱膨張層12の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。
【0027】
次に、第1のインク受容層13を構成する材料、例えば多孔質シリカを用いて塗布液を調製する。続いて、この塗布液を、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の方式による公知の塗布装置を用いて、熱膨張層12上に塗布する。なお、目標とする第1のインク受容層13の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。続いて、塗膜を乾燥させ、
図2(b)に示すように、第1のインク受容層13を形成する。
【0028】
次に、
図3に示すラミネート装置70を用いて、第1のインク受容層13上にフィルム14を貼り付ける。ラミネート装置70は、
図3に示すように、入力ローラ71、ヒータローラ72、ローラ73、及び出力ローラ74を備える。熱膨張層12及び第1のインク受容層13が形成された基材11は、巻き取られた状態で、装置の巻き出し位置に置かれる。基材11は、入力ローラ71に向かって搬送される。基材11は、一対の入力ローラ71の間を通り、ヒータローラ72及びローラ73に向かって搬送される。フィルム14はヒータローラ72へと供給される。フィルム14は、ヒータローラ72によって熱せられるとともに、ヒータローラ72とローラ73との間を通過する際、圧がかけられ基材11(第1のインク受容層13)に対して剥離可能に接着される。フィルム14の接着後、基材11は、一対の出力ローラ74の間を通り、搬出され、巻き取られる。これにより、
図2(c)に示すように、フィルム14が貼り付けられる。
【0029】
次に、第2のインク受容層15を構成する材料、例えばPVA系樹脂から選択される材料を用いて塗布液を調製する。ここで、本実施形態では、第2のインク受容層15は、第1のインク受容層13と異なる材料を用いて形成する。続いて、この塗布液を、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の方式による公知の塗布装置を用いて、フィルム14上に塗布する。なお、目標とする第2のインク受容層15の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。続いて、塗膜を乾燥させ、
図2(d)に示すように、第2のインク受容層15を形成する。また、ロール状の基材11を用いた場合は、造形物製造システム50に適合する大きさに裁断を行う。
【0030】
なお、第2のインク受容層15は、塗布液を用いて形成する構成に限られない。例えばフィルム14として、表面に予めインク受容層が形成されたフィルムを使用してもよい。この場合、予め形成されているインク受容層が第1のインク受容層13と対向しないように、換言すれば
図2(d)に示す上側に位置するようにフィルム14を貼り付ける。これにより、フィルム14に予め形成されたインク受容層を、第2のインク受容層15として用いることができる。
【0031】
以上の工程により、熱膨張性シート10が製造される。
【0032】
(造形物製造システム)
次に、本実施形態の熱膨張性シート10に立体画像を形成する造形物製造システム50について説明する。
図4(a)〜
図4(c)に示すように、造形物製造システム50は、制御ユニット51と、印刷ユニット52と、膨張ユニット53と、表示ユニット54と、天板55と、フレーム60と、を備える。
図4(a)は、造形物製造システム50の正面図であり、
図4(b)は、天板55を閉じた状態における造形物製造システム50の平面図であり、
図4(c)は、天板55を開いた状態における造形物製造システム50の平面図である。なお、
図4(a)〜
図4(c)において、X方向は水平方向と同一であり、Y方向はシートが搬送される搬送方向Dと同一であり、更にZ方向は鉛直方向と同一である。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する。
【0033】
制御ユニット51、印刷ユニット52、膨張ユニット53は、それぞれ
図4(a)に示すようにフレーム60内に載置される。具体的に、フレーム60は、一対の略矩形状の側面板61と、側面板61の間に設けられた連結ビーム62とを備え、側面板61の上方に天板55が渡されている。また、側面板61の間に渡された連結ビーム62の上に印刷ユニット52及び膨張ユニット53がX方向に並んで設置され、連結ビーム62の下に制御ユニット51が固定されている。表示ユニット54は天板55内に、天板55の上面と高さが一致するように埋設されている。
【0034】
制御ユニット51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、印刷ユニット52、膨張ユニット53及び表示ユニット54を制御する。
【0035】
印刷ユニット52は、インクジェット方式の印刷装置である。
図4(c)に示すように、印刷ユニット52は、熱膨張性シート10を搬入するための搬入部52aと、熱膨張性シート10を排出するための排出部52bと、を備える。印刷ユニット52は、搬入部52aから搬入された熱膨張性シート10の表面又は裏面に指示された画像を印刷し、画像が印刷された熱膨張性シート10を排出部52bから排出する。また、印刷ユニット52には、後述するカラーインク層41,42を形成するためのカラーインク(シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y))、と、裏側熱変換層(電磁波熱変換層)44a,44bとを形成するための黒色インク(カーボンブラックを含む)とが備えられている。なお、カラーインク層41,42において黒又はグレーの色を形成するため、カラーインクとして、カーボンブラックを含まない黒のカラーインクを更に備えてもよい。
【0036】
印刷ユニット52は、熱膨張性シート10の表面に印刷するカラー画像(カラーインク層)を示すカラー画像データを制御ユニットから取得し、カラー画像データに基づいて、カラーインク(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))を用いてカラー画像(カラーインク層41,42)を印刷する。カラーインク層41,42の黒又はグレーの色は、CMYの3色を混色して形成する、もしくは、カーボンブラックを含まない黒のカラーインクを更に使用して形成する。なお、本実施形態では、第1のインク受容層13には、第1のカラー画像データに基づき、第1のカラー画像(第1のカラーインク層41)が形成される。第2のインク受容層15には、第2のカラー画像データに基づき、第2のカラー画像(第2のカラーインク層42)が形成される。
【0037】
また、印刷ユニット52は、熱膨張性シート10の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである裏面発泡データに基づき、黒色インクを用いて裏側熱変換層44a,44bを印刷する。また、カーボンブラックを含む黒色インクは、電磁波を熱に変換する材料の一例である。黒色インクの濃度がより濃く形成された部分ほど、熱膨張層12の膨張高さは高くなる。このため、黒色インクの濃度は、目標高さに対応するように濃淡が決定される。
【0038】
膨張ユニット53は、熱膨張性シート10に熱を加えて膨張させる膨張装置である。
図4(c)に示すように、膨張ユニット53は、熱膨張性シート10を搬入するための搬入部53aと、熱膨張性シート10を排出するための排出部53bと、を備える。膨張ユニット53は、搬入部53aから搬入された熱膨張性シート10に熱を加えて膨張させ、膨張した熱膨張性シート10を排出部53bから排出する。膨張ユニット53は内部に照射部(図示せず)を備える。照射部は、例えば、ハロゲンランプであり、熱膨張性シート10に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)又は中赤外領域(波長1400〜4000nm)の光(電磁波)を照射する。カーボンブラックを含む黒色インクが印刷された熱膨張性シート10に電磁波を照射すると、黒色インクが印刷された部分では、黒色インクが印刷されていない部分に比べて、より効率良く電磁波が熱に変換される。そのため、熱膨張層12のうち、黒色インクが印刷された領域が主に加熱されて、その結果、熱膨張層12は、黒色インクが印刷された領域が膨張する。なお、照射部はハロゲンランプに限られず、電磁波を照射可能であれば、他の構成を採ることも可能である。また、電磁波の波長も上記の範囲に限定されるものではない。
【0039】
表示ユニット54は、タッチパネル等から構成される。表示ユニット54は、例えば
図4(b)に示すように、印刷ユニット52によって熱膨張性シート10に印刷される画像(
図4(b)に示す星)を表示する。また、表示ユニット54は、操作ガイド等を表示し、ユーザは、表示ユニット54に触れることで、造形物製造システム50を操作することが可能である。
【0040】
(造形物製造処理)
次に、
図5に示すフローチャート及び
図6(a)〜
図6(f)に示す熱膨張性シート10の断面図と
図7(a)〜
図7(c)に示す平面図とを参照して、造形物製造システム50によって熱膨張性シート10上に造形物を製造する処理の流れを説明する。
【0041】
第1に、ユーザは、造形物が形成される前の熱膨張性シート10を準備し、表示ユニット54を介して、第1のカラー画像データ、第2のカラー画像データ、裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート10の表面(第2のインク受容層15上)に第2のカラーインク層42を印刷する(ステップS1)。具体的には、印刷ユニット52は、指定された第2のカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、
図6(a)に示すように、第2のインク受容層15上に第2のカラーインク層42が形成される。また、
図7(a)は、第2のカラーインク層42が印刷された状態を示す平面図であり、
図7(a)に示すA−A’線断面図が、
図6(a)に相当する。なお、
図6(a)では、A−A’線断面図のうち両端を省略して図示している。
図6(a)及び
図7(a)に示すように、ステップS1の終了時点では、フィルム14は熱膨張性シート10の表面全体に設けられており、熱膨張性シート10の表面には、第2のインク受容層15が存在する。
【0042】
第2に、ユーザは、フィルム14のうち、第2のカラーインク層42が形成された領域及びその周囲の近傍の領域のみを剥離後に残存させることが可能なように、カット線CLに沿って、第2のインク受容層15及びフィルム14へ切り込み43を形成する(ステップS2)。切り込み43は、ナイフ等、任意の手段により形成することができる。その結果、
図6(b)に示すように、第2のインク受容層15及びフィルム14中へ切り込み43が形成される。また、
図7(b)は、第2のカラーインク層42が印刷された状態を示す平面図であり、
図7(b)に示すB−B’線断面図が、
図6(b)に相当する。なお、
図6(b)では、B−B’線断面図のうち両端を省略して図示している。
図6(b)、
図7(b)に示すように、ステップS2の終了時点では、フィルム14は熱膨張性シート10の表面全体に設けられた状態であり、熱膨張性シート10の表面には、第2のインク受容層15が存在する。更に、第2のカラーインク層42の周囲に、カット線CLに沿って切り込み43が形成されている。
【0043】
なお、カット線CLは、図示した構成に限らず、第2のカラーインク層42が印刷された領域が剥離後に残存する限りにおいて、任意の場所に設けることができる。例えば、後のステップS4で第1のカラーインク層41が形成される領域のみを剥離できるよう、第1のカラーインク層41が形成される領域の近傍にカット線CLを設けることも可能である。また、第1のカラーインク層41が形成される領域と第2のカラーインク層42が形成される領域との中間であってもよい。加えて、フィルム14へ切り込みを形成するタイミングは、本実施形態の例に限定されない。例えば、第2のカラーインク層42を印刷する前に切り込み43を形成する、換言すればステップS1とS2とを入れ替えることも可能である。加えて、熱膨張性シート10の製造時点で切り込み43を入れておくことも可能である。また、切り込み43は、フィルム14より下層の第1のインク受容層13、熱膨張層12まで及んでいてもよい。
【0044】
第3に、ユーザは、第2のカラーインク層42が形成された領域が残存するように、フィルム14を剥離して除去する(ステップS3)。その結果、
図6(c)に示すように、第1のインク受容層13が部分的に露出する。
【0045】
第4に、ユーザは、フィルム14の一部が剥離された熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート10の表面(第1のインク受容層13上)に第1のカラーインク層41を印刷する(ステップS4)。具体的には、印刷ユニット52は、指定された第1のカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、
図6(d)に示すように、第1のインク受容層13上に第1のカラーインク層41が形成される。また、
図7(c)は、第1のカラーインク層41が印刷された状態を示す平面図であり、
図7(c)に示すC−C’線断面図が、
図6(d)に相当する。なお、
図6(d)では、C−C’線断面図のうち両端を省略して図示している。
図7(c)に示すように、ステップS4の終了時点では、フィルム14は第2のカラーインク層42の下にのみ存在する状態であり、第2のカラーインク層42の周囲では、第1のインク受容層13が露出する。また、第1のインク受容層13上には、図示するように第1のカラーインク層41が形成される。
【0046】
第5に、ユーザは、第1のカラーインク層41及び第2のカラーインク層42が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート10の裏面に熱変換層(裏側熱変換層44a,44b)を印刷する(ステップS5)。裏側熱変換層44a,44bは、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷ユニット52は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート10の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、
図6(e)に示すように、基材11の裏面に裏側熱変換層44a,44bが形成される。なお、裏側熱変換層44a,44bの黒色インクの濃度を、濃くすることに従い、印刷された領域をより高く膨張させることが可能となる。また、裏側熱変換層44a,44b内で濃度を変え、膨張高さを異ならせることも可能である。
図6(e)では、第1のカラーインク層41が形成された領域の熱膨張層12を膨張させるため、基材11の裏面において、基材11及び熱膨張層12を介して第1のカラーインク層41と少なくとも一部が対向する領域に裏側熱変換層44aを形成している。同様に第2のカラーインク層42が形成された領域の熱膨張層12を膨張させるため、基材11の裏面において、基材11及び熱膨張層12を介して第2のカラーインク層42と少なくとも一部が対向する領域に裏側熱変換層44bを形成している。
【0047】
第6に、ユーザは、裏側熱変換層44a,44bが印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット53に挿入する。膨張ユニット53は、挿入された熱膨張性シート10へ裏面から電磁波を照射して加熱する(ステップS6)。具体的に説明すると、膨張ユニット53は、照射部によって熱膨張性シート10の裏面に電磁波を照射させる。熱膨張性シート10の裏面に印刷された裏側熱変換層44a,44bは、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、
図6(f)に示すように、熱膨張性シート10のうちの裏側熱変換層44a,44bが印刷された領域が発泡し、膨張する。
【0048】
以上のような手順によって、熱膨張性シート10に造形物が形成される。
【0049】
本実施形態では、フィルム14の上面に設けられた第2のインク受容層15と、フィルム14の下面に設けられた第1のインク受容層13とで、質感の異なる材料を使用し、更にフィルム14の少なくとも一部を剥離して除去することで、第1のインク受容層13を露出させることにより、1枚の熱膨張性シート10上において、異なる質感を呈する造形物を形成することができる。例えば、
図7(c)を例に示すと、第1のインク受容層13上に形成された星を、マットな質感を呈する造形物とし、第2のインク受容層15上に形成された星を、光沢のある質感を呈する造形物とすることが可能となる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態に係る造形物製造処理について、図を用いて説明する。第2実施形態の造形物製造処理が、第1実施形態に係る造形物製造処理と異なるのは、熱膨張性シートの表面にも電磁波熱変換層を形成する点にある。また、熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法及び造形物製造システムは、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同様の部分についても詳細な説明は省略する。
【0051】
(造形物製造処理)
次に、
図8に示すフローチャート及び
図9(a)〜
図10(h)に示す熱膨張性シート10の断面図と
図11(a)〜
図11(d)に示す平面図とを参照して、造形物製造システム50によって熱膨張性シート10上に造形物を形成する処理の流れを説明する。
【0052】
第1に、ユーザは、造形物が形成される前の熱膨張性シート10を準備し、表示ユニット54を介して、第1のカラー画像データ、第2のカラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート10の表面(第2のインク受容層15上)に熱変換層(表側熱変換層45a〜45c)を印刷する(ステップS21)。表側熱変換層45a〜45cは、電磁波を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷ユニット52は、指定された表面発泡データに従って、熱膨張性シート10の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、
図9(a)及び
図11(a)に示すように、第2のインク受容層15上に表側熱変換層45a〜45cが形成される。実施形態1と同様に、理解を容易にするため、
図9(a)では、第2のインク受容層15上に表側熱変換層45a,45bが形成されているように図示している。また、
図11(a)は、表側熱変換層45a〜45cが印刷された状態を示す平面図であり、
図11(a)に示すD−D’線断面図が、
図9(a)に相当する。なお、
図9(a)では、D−D’線断面図のうち両端を省略して図示している。
図9(a)及び
図11(a)に示すように、ステップS21の終了時点では、フィルム14は熱膨張性シート10の表面全体に設けられた状態であり、第2のインク受容層15が熱膨張性シート10の表面に存在する。
【0053】
第2に、ユーザは、表側熱変換層45a〜45cが印刷された熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて膨張ユニット53に挿入する。膨張ユニット53は、挿入された熱膨張性シート10へ表面から電磁波を照射して加熱する(ステップS22)。具体的に説明すると、膨張ユニット53は、照射部によって熱膨張性シート10の表面に電磁波を照射する。熱膨張性シート10の表面に印刷された表側熱変換層45a〜45cは、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、
図9(b)に示すように、熱膨張性シート10のうちの表側熱変換層45a,45bが印刷された領域が盛り上がって膨張する。同様に熱膨張性シート10のうちの表側熱変換層45cが印刷された領域も膨張する。
【0054】
第3に、ユーザは、熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート10の表面(第2のインク受容層15上)に第2のカラーインク層46を印刷する(ステップS23)。具体的には、印刷ユニット52は、指定された第2のカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、
図9(c)に示すように、第2のインク受容層15上に第2のカラーインク層46が形成される。本実施形態では、表側熱変換層45aの上のみに第2のカラーインク層46が形成される。なお、ステップS23の終了時点では、フィルム14は熱膨張性シート10の表面全体に載置された状態である。
【0055】
第4に、ユーザは、フィルム14のうち、第2のカラーインク層46が形成された領域及びその周囲の領域のみを剥離後に残存させることが可能なように、カット線CLに沿って、ナイフ等を用いて、第2のインク受容層15及びフィルム14へ切り込みを入れる(ステップS24)。その結果、
図9(d)に示すように、第2のインク受容層15及びフィルム14中へ切り込み43が形成される。また、
図11(b)は、第2のカラーインク層42が印刷された状態と切り込み43の位置とを示す平面図であり、
図11(b)に示すE−E’線断面図が、
図9(d)に相当する。なお、
図9(d)では、E−E’線断面図のうち両端を省略して図示している。
図9(d)に示すように、ステップS24の終了時点では、フィルム14は熱膨張性シート10の表面全体に載置された状態であり、第2のカラーインク層46の周囲に、カット線CLに沿って切り込み43が形成された状態である。
【0056】
第5に、ユーザは、第2のカラーインク層46が形成された領域が残存するように、フィルム14を剥離して除去する(ステップS25)。その結果、
図10(e)に示すように、第2のカラーインク層46が形成された領域を除き、第1のインク受容層13が露出する。なお、表側熱変換層45b,45cは、フィルム14の剥離と共に除去される。また、
図11(c)は、フィルム14が剥離された後の状態を示す平面図であり、
図11(c)に示すF−F’線断面図が、
図10(e)に相当する。なお、
図10(e)では、F−F’線断面図のうち両端を省略して図示している。
図10(e)及び
図11(c)に示すように、表側熱変換層45b,45cが設けられていた領域下の熱膨張層12は膨張した状態である。特に
図11(c)では、表側熱変換層45b,45cが設けられていた領域が破線で示されている。
【0057】
第6に、ユーザは、フィルム14の一部が剥離された熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート10の表面(第1のインク受容層13上)に第1のカラーインク層47a,47bを印刷する(ステップS26)。具体的には、印刷ユニット52は、指定された第1のカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、
図10(f)に示すように、第1のインク受容層13上に第1のカラーインク層47a,47bが形成される。また、
図11(d)は、第1のカラーインク層47a,47bが印刷された状態を示す平面図であり、
図11(d)に示すG−G’線断面図が、
図10(f)に相当する。なお、
図10(f)では、G−G’線断面図のうち両端を省略して図示している。
図10(f)に示すように、ステップS26の終了時点では、フィルム14は第2のカラーインク層46の下にのみ存在する状態であり、第1のインク受容層13上には、図示するように第1のカラーインク層47a,47bが形成される。なお、第1のカラーインク層47bは、表側熱変換層45bを使用し、膨張された領域に形成される。ここで、特に熱膨張層12が白色である場合に、カーボンブラックを含む黒色インクを用いて形成された熱変換層は目立つ、又は黒色インクによってカラーインク層の色味が濁ってしまうという問題があった。しかし、本実施形態では、表側熱変換層45bはフィルム14の剥離と同時に除去することができる。また、表側熱変換層45bとして用いられたインクが、第1のカラーインク層47bの色味へ影響を及ぼすことを防ぐことができるという優れた効果がある。
【0058】
第7に、ユーザは、第1のカラーインク層47a,47b及び第2のカラーインク層46が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート10の裏面に熱変換層(裏側熱変換層48)を印刷する(ステップS27)。印刷ユニット52は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート10の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、
図10(g)に示すように、基材11の裏面に裏側熱変換層48が形成される。
図10(g)では、第1のカラーインク層47aが形成された領域の熱膨張層12を膨張させるため、基材11の裏面において、基材11及び熱膨張層12を介して第1のカラーインク層47aと少なくとも一部が対向する領域に裏側熱変換層48を形成している。
【0059】
第8に、ユーザは、裏側熱変換層48が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット53に挿入する。膨張ユニット53は、挿入された熱膨張性シート10へ裏面から電磁波を照射して加熱する(ステップS28)。具体的に説明すると、膨張ユニット53は、照射部によって熱膨張性シート10の裏面に電磁波を照射させる。熱膨張性シート10の裏面に印刷された裏側熱変換層48は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、
図10(h)に示すように、熱膨張性シート10のうちの裏側熱変換層48が印刷された領域が盛り上がって膨張する。
【0060】
以上のような手順によって、熱膨張性シート10に造形物が形成される。
【0061】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、フィルム14の上面に設けられた第2のインク受容層15と、フィルム14の下面に設けられた第1のインク受容層13とで、質感の異なる材料を使用し、更にフィルム14の少なくとも一部を剥離することで、1枚の熱膨張性シート10上において、異なる質感を呈する造形物を形成することができる。加えて、本実施形態では、フィルム14に設けられた第2のインク受容層15上に表側熱変換層45a〜45cを形成することで、熱膨張性シート10の表面から発泡、膨張させることが可能となる。表側熱変換層45a〜45cを利用した発泡、膨張は、裏側熱変換層48を利用した場合と比較し、シャープな形状を再現しやすいという特徴がある。特にフィルム14の剥離される領域に表側熱変換層45b,45cを形成することにより、シートの表側から発泡、膨張をさせた上で表側熱変換層45b,45cを残存させないことも可能となる。また、熱変換層の形成に使用されるインクによる濁りなどの影響を防ぎ、第1のカラーインク層47bを所望の色味、特に鮮やかな色味とすることもできる。なお、表側熱変換層45cが形成されていた領域のように、カラーインク層を形成しない構成も可能である。
【0062】
上記実施例では、熱膨張性シート10の裏面の、第1のカラーインク層47aが対応する位置に裏側熱変換層48を印刷したが、第1のカラーインク層47aを形成する前に、第1のインク受容層13上に熱変換層を形成して膨張させることとしてもよい。これにより、表側熱変換層45a〜45cを利用した発泡、膨張と同様に、裏側熱変換層48を利用した場合よりも、シャープな形状を再現することができ、かつ、マットな質感になる。
【0063】
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせることも可能である。例えば、上述した実施形態では、第2のカラーインク層42,46が形成された領域以外においてフィルム14を剥離し、第1のインク受容層13を露出させ、1枚の熱膨張性シート10内で、異なる質感の領域を表現する構成を例に挙げて説明した。これに限られず、フィルム14を剥離せずに使用する、又はフィルム14を全て剥離して、造形物を形成することも可能である。フィルム14を剥離せず使用する場合は、実施形態1のフローチャートを例に挙げると、ステップS2〜S4を省略して実行する。また、フィルム14を全て剥離して使用する場合は、例えばステップS1及びS2を省略して実行する。また、実施形態2のフローチャートでは、例えばステップS24及びS25を省略する。このようにすることにより、1枚の熱膨張性シート10全体で異なる質感、例えば、全体として光沢のある質感を呈する造形物、もしくは全体としてマットな質感を呈する造形物のいずれかを形成することができる。また、異なる質感を呈する熱膨張性シートを個別に用意する必要がないという効果もある。
【0064】
また、上述した各実施形態において、表面発泡データ及び裏面発泡データは、形成しようとする造形物の形状に応じ、適宜変更することが可能である。電磁波照射時の帯熱量は、電磁波熱変換層の有無、又は電磁波熱変換層の印刷濃度(インク濃度)によって変化する。このため、表面発泡データ及び/又は裏面発泡データを決定する際、熱膨張層12の膨張後の形状が、所望の造形物の形状となるよう、少なくとも2領域間において、電磁波熱変換層のインク濃淡(印刷濃度)及び/又は電磁波熱変換層を形成する領域を、決定する。具体的には、i)ある領域では電磁波熱変換層を形成し、別の領域では電磁波熱変換層を形成しない、ii)ある領域ではインク濃度(印刷濃度)を濃くし、別の領域ではインク濃度を薄くする、又はiii)これらを組み合わせることにより、裏面発泡データを決定する。また、上記i)〜iii)の決定は、所定の2領域間で行う場合に限らず、3以上の領域間で行うことも可能である。
【0065】
加えて、上述した実施形態1では、第2のカラーインク層42を印刷後に、フィルム14を剥離させる構成を例に挙げて説明したが、これに限られず、先に剥離工程を行うことも可能である。この場合は、
図5に示すステップS2、S3を実行した後に、ステップS1を実行する。また、先に剥離工程(ステップS2、S3)を行った場合は、ステップS1の前に第1のインク受容層においてステップS4でカラー画像が印刷される領域が露出している。従って、第2のインク受容層上にカラー画像を印刷する工程(ステップS1)と第1のインク受容層上にカラー画像を印刷する工程(ステップS4)とは、別々に行っても、同時に行ってもよい。ステップS1とステップS4とを同時に行うと、カラー画像印刷工程を1回とすることができ好適である。なお、この場合もフィルムをカットする工程(ステップS2)は、剥離工程(ステップS3)の直前に行ってもよく、熱膨張性シート10の製造時点で切り込み43を入れておくことも可能である。
【0066】
また、実施形態2でも同様に、第2のインク受容層上にカラー画像を印刷する工程(
図8に示すステップS23)の前にステップS24及びステップS25を実行してもよい。この場合も、第2のインク受容層上にカラー画像印刷する工程(ステップS23)と第1のインク受容層上にカラー画像を印刷する工程(ステップS26)とは、別々に行っても、同時に行ってもよい。ステップS23とステップS26とを同時に行うと、カラー画像を印刷する工程を1回とすることができ好適である。なお、この場合もフィルムをカットする工程(ステップS24)は、剥離工程(ステップS25)の直前に行ってもよく、熱膨張性シート10の製造時点で切り込み43を入れておくことも可能である。
【0067】
また、表側熱変換層、裏側熱変換層及びカラーインク層が形成される位置は、上述した各実施形態に説明した形態に限られず、任意である。また、所望の造形物を製造するために、表側熱変換層、裏側熱変換層、及びカラーインク層をどのようにして使用するかは任意に決定することができる。
【0068】
例えば、実施形態2では、表側熱変換層、裏側熱変換層、及びカラーインク層の組み合わせが異なる4種類の星型の造形物を例に挙げて説明したが、これらの組み合わせは全てを同時に用いる必要はなく、少なくとも1つの組み合わせを用いてもよい。また、表側熱変換層、裏側熱変換層、及びカラーインク層の組み合わせは、任意に変更可能である。例えば、
図11(a)に示す表側熱変換層45aに代えて、裏側熱変換層を形成してもよい。この場合、カラーインク層46を第2のインク受容層15上に設けることができる。更に
図11(a)に示す表側熱変換層45aに少なくとも一部が対向するように裏側熱変換層を設け、表側熱変換層45aと裏側熱変換層を利用して熱膨張層12を膨張させてもよい。同様に、第1のカラーインク層47a,47bが形成されている領域についても、表側熱変換層と裏側熱変換層とを用いて熱膨張層12を膨張させてもよい。
【0069】
また、
図5に示すフローチャートでは、ステップS5において熱変換層を形成し、続いて、ステップS6において電磁波を照射しているが、ステップS6はステップS5の直後に実行されなくともよく、時間をあけて行うことができる。例えば少なくとも
図5に示すステップS5を行った熱膨張性シート10を流通させ、ユーザの下でステップS6を実行することも可能である。この場合、熱変換層は、基材11の裏面と第2のインク受容層15との少なくともいずれか一方の上に形成される。この場合、フィルム14の剥離はユーザの下で行ってもよい。もしくは、フィルム14の一部が剥離されており、第1のインク受容層13と基材11の裏面と第2のインク受容層15との少なくともいずれかの上に熱変換層が形成されていてもよい。更に、ステップS6だけでなく、カラーインク層の形成工程(ステップS4)についてもユーザの下で行うこともできる。実施形態2についても同様である。
【0070】
上述した各実施形態に記載の「表」、「上」、「下」又は「裏」は、説明の便宜のために使用しているものであり、熱膨張性シート10の使用方法を限定することを意図しない。従って、熱膨張性シート10の裏面が、表として使用されることもある。
【0071】
また、上述した実施形態で挙げた熱膨張性シート10を構成する各層の材料は、一例であって、これに限られず、例示した材料以外の材料を使用することを排除するものではない。また、熱膨張性シート10の各層の厚みは、図示の都合、誇張して表現されており、図示されている比率に限定されるものではない。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0073】
[付記]
[付記1]
基材の一方の面上に設けられた熱膨張層と、
前記熱膨張層上に設けられ、インクを受容する第1のインク受容層と、
前記第1のインク受容層上に設けられたフィルムと、
前記フィルム上に設けられ、インクを受容する第2のインク受容層と、を備え、
前記第1のインク受容層は、前記第2のインク受容層とは異なる質感を呈する材料から形成される、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
【0074】
[付記2]
前記第2のインク受容層は、光沢のある質感を呈する材料から形成される、
ことを特徴とする付記1に記載の熱膨張性シート。
【0075】
[付記3]
前記フィルムは樹脂製であり、前記第2のインク受容層は当該フィルムとの接着性を有する膨潤タイプのインク受容層である、
ことを特徴とする付記1に記載の熱膨張性シート。
【0076】
[付記4]
前記第1のインク受容層は、マットな質感を呈する材料から形成される、
ことを特徴とする付記2又は3に記載の熱膨張性シート。
【0077】
[付記5]
前記熱膨張性シートの前記一方の面の一部では、前記フィルムと前記第2のインク受容層が取り除かれることで前記第1のインク受容層が露出しており、
前記一部以外の領域では、前記第2のインク受容層が残存する、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の熱膨張性シート。
【0078】
[付記6]
前記一方の面の一部で露出された前記第1のインク受容層の上に、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層を更に備える、
ことを特徴とする付記5に記載の熱膨張性シート。
【0079】
[付記7]
前記基材の他方の面と、前記第1のインク受容層と、前記第2のインク受容層との少なくともいずれか1つの上に、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層を更に備える、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載の熱膨張性シート。
【0080】
[付記8]
付記1乃至5のいずれか1つに記載の熱膨張性シートを備え、
前記基材の他方の面と、前記一方の面の一部において露出する前記第1のインク受容層と、前記第2のインク受容層との少なくともいずれか1つの上に、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層を更に備え、
少なくとも前記電磁波熱変換層が形成された領域において前記熱膨張層が膨張されている、
ことを特徴とする造形物。
【0081】
[付記9]
基材の一方の面上に熱膨張層を形成する工程と、
前記熱膨張層上に、インクを受容する第1のインク受容層を形成する工程と、
前記第1のインク受容層上にフィルムを設ける工程と、
前記フィルム上に、インクを受容する第2のインク受容層を形成する工程と、を有し、
前記第1のインク受容層を、前記第2のインク受容層とは異なる質感を呈する材料を用いて形成する、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
【0082】
[付記10]
前記第2のインク受容層を、光沢のある質感を呈する材料を用いて形成する、
ことを特徴とする付記9に記載の熱膨張性シートの製造方法。
【0083】
[付記11]
前記第1のインク受容層を、マットな質感を呈する材料を用いて形成する、
ことを特徴とする付記10に記載の熱膨張性シートの製造方法。
【0084】
[付記12]
基材の一方の面上に設けられた熱膨張層と、前記熱膨張層上に設けられ、インクを受容する第1のインク受容層と、前記第1のインク受容層上に設けられたフィルムと、前記フィルム上に設けられ、インクを受容する第2のインク受容層と、を備え、前記第1のインク受容層が、前記第2のインク受容層とは異なる質感を呈する材料を用いて形成される熱膨張性シートを用い、
前記第2のインク受容層上に第2の画像を形成する第2の画像形成工程と、
前記フィルムの少なくとも一部を剥離し、前記第1のインク受容層を露出する剥離工程と、
露出された前記第1のインク受容層に第1の画像を形成する第1の画像形成工程と、
前記基材の他方の面に、電磁波を熱に変換する第1の電磁波熱変換層を形成する第1の電磁波熱変換層形成工程と、
前記第1の電磁波熱変換層に電磁波を照射し、前記熱膨張層の少なくとも一部を膨張させる工程と、を有し、
前記剥離工程では、前記第2の画像が印刷される又は印刷された領域が残存するように前記フィルムを剥離する、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
【0085】
[付記13]
前記第2の画像形成工程に先立って、前記第2のインク受容層上に、電磁波を熱に変換する第2の電磁波熱変換層を形成する工程と、
前記第2の電磁波熱変換層に電磁波を照射し、前記熱膨張層の少なくとも一部を膨張させる工程と、
を更に有することを特徴とする付記12に記載の造形物の製造方法。
【0086】
[付記14]
前記第2のインク受容層上に、電磁波を熱に変換する第2の電磁波熱変換層を形成する工程と、
前記第2の電磁波熱変換層に電磁波を照射し、前記熱膨張層の少なくとも一部を膨張させる工程と、を有し、
前記剥離工程では、前記第2の電磁波熱変換層が形成された領域が膨張した後に、前記第2の電磁波熱変換層が形成された領域を含む前記第2のインク受容層及び前記フィルムを剥離する、
ことを特徴とする付記12に記載の造形物の製造方法。
【0087】
[付記15]
前記第1の電磁波熱変換層形成工程では、前記基材の他方の面の、前記第1の画像に対応する位置に、前記第1の電磁波熱変換層を形成する、
ことを特徴とする付記12乃至14のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
【0088】
[付記16]
前記基材の他方の面の、前記第2の画像に対応する位置に、電磁波を熱に変換する第3の電磁波熱変換層を形成する第3の電磁波熱変換層形成工程と、
前記第3の電磁波熱変換層に電磁波を照射し、前記熱膨張層の少なくとも一部を膨張させる工程と、有する。
ことを特徴とする付記12乃至15のいずれか1つに記載の造形物の製造方法。
【0089】
[付記17]
前記剥離工程を行った後、前記第1の画像形成工程と前記第2の画像形成工程とを同時に行う、
ことを特徴とする付記12に記載の造形物の製造方法。