(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パルス波形の基準値からの変動値であるステップカウンタの値が最大値になると、強制的に前記パルス波形を立ち上げる、請求項1から8のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
前記主流路を通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する分岐流路内に負圧を発生させることにより該分岐流路における前記液体の流れ方向に対する垂直断面が他の部分よりも大きく形成された一部の領域内へ取り込む手順を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
前記手順において、アクチュエータにより前記分岐流路の内空を変形させる力を印加して前記負圧を発生させ、該内空の容積を増大させる、請求項11に記載の微小粒子分取方法。
前記手順において、前記アクチュエータによる前記容積の増大量を、前記主流路への連通口から前記領域までの間の前記分岐流路の容積よりも大きくする、請求項12に記載の微小粒子分取方法。
前記手順において、前記アクチュエータにより前記領域の内空を変形させる力を印加して前記負圧を発生させ、前記分岐流路内の内空の合計容積を増大させる、請求項13に記載の微小粒子分取方法。
前記立上り波形部の印加時間は、該印加時間の終了時から次の前記立下り波形部の印加時までの間に前記液体の流れが前記パルス波形の印加前の状態に戻るための時間が確保されるような印加時間である、請求項1から15のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。
<第1の実施の形態>
1.本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置及び微小粒子分取用マイクロチップ
[装置の全体構成]
[マイクロチップの構成]
2.本技術に係る微小粒子分取方法
[分取動作]
[駆動信号]
3.本技術に係る微小粒子分取方法の変形例
4.微小粒子分取プログラム
<第2の実施の形態>
5. 本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置
[装置の駆動部の全体構成]
[駆動部の詳細]
6.本技術に係る微小粒子分取方法
[動作全般]
[立上りタイミングの計算]
[駆動波形]
<第3の実施の形態>
7.本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置
8.本技術に係る微小粒子分取方法
[動作全般]
[立上りタイミングおよび印加時間の計算]
[駆動波形]
<第4の実施の形態>
9.本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置
10.本技術に係る微小粒子分取方法
【0015】
<第1の実施の形態>
1.本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置及び微小粒子分取用マイクロチップ
[装置の全体構成]
図1は、本技術に係る微小粒子分取方法の実施に適した微小粒子分取装置Aの構成を説明する図である。また、
図26は、微小粒子分取装置Aに搭載されるマイクロチップ1aの構成を説明する図である。
図2は上面図、
図3は斜視図、
図4は
図2中Q−Q断面に対応する断面図である。
【0016】
微小粒子分取装置Aは、マイクロチップ1aと、照射部21、検出部22及び駆動部23とを含んで構成されている。マイクロチップ1aには、分析対象となる微小粒子を含む液体(サンプル液)が通流される主流路15が形成されている(
図2参照)。また、マイクロチップ1aの表面には、アクチュエータ31が配置されている(
図3参照)。
【0017】
照射部21は、マイクロチップ1aの主流路15を通流する微小粒子に光(励起光)を照射する。照射部21は、励起光を出射する光源と、主流路15を通流する微小粒子に対して励起光を集光する対物レンズ等を含んで構成される。光源は、分析の目的に応じてレーザダイオード、SHGレーザ、固体レーザ、ガスレーザ及び高輝度LEDなどから適宜選択される。照射部21は、必要に応じて、光源及び対物レンズ以外の光学素子を有していてもよい。
【0018】
検出部22は、励起光の照射によって微小粒子から発生する蛍光及び散乱光を検出する。検出部22は、微小粒子から発生する蛍光及び散乱光を集光する集光レンズと検出器等を含んで構成される。検出器には、PMT、フォトダイオード、CCD及びCMOSなどが用いられる。検出部22は、必要に応じて、集光レンズ及び検出器以外の光学素子を有していてもよい。
【0019】
検出部22により検出される蛍光は、微小粒子そのものから発生する蛍光及び微小粒子に標識された蛍光物質等から発生する蛍光であってよい。また、検出部22により検出される散乱光は、前方散乱光、側方散乱光、レイリー散乱及びミー散乱などの各種散乱光であってよい。
【0020】
検出部22により検出された蛍光及び散乱光は、電気信号に変換され、駆動部23に出力される。駆動部23は、入力される電気信号に基づいて微小粒子の光学特性を判定する。さらに、駆動部23は、アクチュエータ31に電圧を印加し、該電圧を制御することによって所定の特性を満たすと判定された微小粒子を主流路15から分取流路16内に取り込むために機能する。駆動部23の当該機能については後段で詳しく説明する。駆動部23は、後述する処理を実行するためのプログラムとOSが格納されたハードディスク、CPU及びメモリなどにより構成される。
【0021】
[マイクロチップの構成]
図26を参照して、マイクロチップ1aの構成を詳しく説明する。微小粒子を含むサンプル液は、サンプル液インレット11からサンプル液流路12に導入される。また、シース液インレット13からはシース液が導入される。シース液インレット13から導入されたシース液は、2本のシース液流路14,14に分流されて送液される。サンプル液流路12とシース液流路14,14は合流して主流路15となる。サンプル液流路12を送液されるサンプル液層流と、シース液流路14,14を送液されるシース液層流と、は主流路15内において合流し、サンプル液層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローを形成する(後述の
図5C参照)。
【0022】
図中符号15aは、照射部21により励起光が照射され、検出部22による蛍光及び散乱光の検出が行われる検出領域を示す。微小粒子は、主流路15に形成されるシースフロー中に一列に配列した状態で検出領域15aに送流され、照射部21からの励起光により照射される。
【0023】
主流路15は、検出領域15aの下流において、3つの流路に分岐している。主流路15の分岐部の構成を
図5に示す。主流路15は、検出領域15aの下流において、分取流路16及び廃棄流路17,17の3つの分岐流路と連通している。このうち、分取流路16は、駆動部23によって所定の光学特性を満たすと判定された微小粒子(以下、「目的粒子」と称する)が取り込まれる流路である。一方、駆動部23によって所定の光学特性を満たさないと判定された微小粒子(以下、「非目的粒子」とも称する)は、分取流路16内に取り込まれることなく、2本の廃棄流路17のいずれか一方に流れる。
【0024】
目的粒子の分取流路16内への取り込みは、アクチュエータ31によって分取流路16内に負圧を発生させ、この負圧を利用して目的粒子を含むサンプル液及びシース液を分取流路16内に吸い込むことによって行われる。アクチュエータ31は、ピエゾ素子などの圧電素子とされる。アクチュエータ31は、マイクロチップ1aの表面に接触して配置され、分取流路16に対応する位置に配置されている。より具体的には、アクチュエータ31は、分取流路16において内空が拡張された領域として設けられた圧力室161に対応する位置に配置されている(
図3及び
図4参照)。
【0025】
圧力室161の内空は、
図2に示されるように平面方向(分取流路16の幅方向)に拡張されるとともに、
図4に示されるように断面方向(分取流路16の高さ方向)にも拡張されている。すなわち、分取流路16は、圧力室161において幅方向及び高さ方向に拡張されている。換言すると、分取流路16は、圧力室161においてサンプル液及びシース液の流れ方向に対する垂直断面が大きくなるように形成されている。
【0026】
アクチュエータ31は、印加される電圧の変化に伴って伸縮力を発生し、マイクロチップ1aの表面(接触面)を介して分取流路16内に圧力変化を生じさせる。分取流路16内の圧力変化に伴って分取流路16内に流動が生じると、同時に、分取流路16内の体積が変化する。分取流路16内の体積は、印加電圧に対応したアクチュエータ31の変位量によって規定される体積に到達するまで変化する。より具体的には、アクチュエータ31は、電圧を印加されて伸張した状態においては、圧力室161を構成する変位板311(
図4参照)を押圧して圧力室161の体積を小さく維持している。そして、印加される電圧が低下すると、アクチュエータ31は収縮する方向へ力を発生し、変位板311への押圧を弱めることによって圧力室161内に負圧を発生させる。
【0027】
アクチュエータ31の伸縮力を効率良く圧力室161内へ伝達するため、
図4に示すように、マイクロチップ1aの表面を圧力室161に対応する位置において陥凹させ、該陥凹内にアクチュエータ31を配置することが好ましい。これにより、アクチュエータ31の接触面となる変位板311を薄くでき、変位板311がアクチュエータ31の伸縮に伴う押圧力の変化によって容易に変位して、圧力室161の容積変化をもたらすようにできる。
【0028】
図4及び
図5中、符号156により、主流路15への分取流路16の連通口を示す。主流路15内に形成されたシースフロー中を送流される目的粒子は、連通口156から分取流路16内に取り込まれる。
【0029】
主流路15から分取流路16への目的粒子の取り込みを容易にするため、連通口156は、
図5Cに示すように、主流路15内に形成されるシースフロー中のサンプル液層流Sに対応する位置に開口されていることが望ましい。連通口156の形状は、特に限定されないが、例えば
図5Aに示すような平面に開口する形状や、
図5Bに示すように2本の廃棄流路17の流路壁を切り欠いて開口とする形状を採用できる。
【0030】
マイクロチップ1aは、主流路15等が形成された基板層を貼り合わせて構成できる。基板層への主流路15等の形成は、金型を用いた熱可塑性樹脂の射出成形により行うことができる。熱可塑性樹脂には、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリジメチルシロキサン(PDMS)などの従来マイクロチップの材料として公知のプラスチックを採用できる。
【0031】
2.本技術に係る微小粒子分取方法
[分取動作]
次に、本技術に係る微小粒子分取方法について、微小粒子分取装置Aの動作とともに説明する。
【0032】
ユーザが分析を開始すると、微小粒子分取装置Aは、ポンプを駆動して、サンプル液及びシース液をマイクロチップ1aのサンプル液インレット11及びシース液インレット13に送液する。これにより、主流路15内に、サンプル液層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローが形成される。
【0033】
微小粒子はシースフロー中を一列に配列された状態で検出領域15aまで送流され、照射部21からの励起光によって照射される。励起光の照射により微小粒子から発生する蛍光及び散乱光は、検出部22によって検出され、電気信号に変換され、駆動部23に出力される。
【0034】
駆動部23は、入力される電気信号に基づいて微小粒子の光学特性を判定する。微小粒子が目的粒子と判定された場合、駆動部23は、
図6A及びBに示すように、当該目的粒子が検出領域15aから分岐部に移動するまでの時間(遅れ時間)を経過した後に、アクチュエータ31に当該微小粒子を取得するための駆動信号を発生する。その際、必要であれば、アンプを介してアクチュエータ31を駆動させるようにしてもよい。
【0035】
具体的には、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、駆動部23は、ピエゾ収縮となる電圧を印加し、圧力室161内を負圧にすることで、目的粒子を主流路15から分取流路16へ引き込む。
【0036】
一方、微小粒子が非目的粒子と判定された場合、駆動部23は、
図6C及びDに示すように、アクチュエータ31に非取得の駆動信号を発生し、次の微小粒子の光学特性判定を行う。なお、非取得の駆動信号を受けたアクチュエータ31は動作しない。
【0037】
駆動部23は、微小粒子の光学特性の判定と、アクチュエータ31への駆動信号の出力とを分析終了まで繰り返し(
図6E〜F参照)、目的粒子のみを分取流路16内に蓄積する(
図6F参照)。分析終了後、分取流路16内に分別された目的粒子はユーザによって回収される。なお、廃棄流路17に流された非目的粒子は、廃棄流路17内に蓄積するか、外部に排出すればよい。
【0038】
分取流路16内へ引き込まれた目的粒子は、
図7Aに示すように、圧力室161内にまで取り込まれる。図中、符号Pは、圧力室161内に取り込まれた目的粒子を示し、符号162は、圧力室161への目的粒子Pの取込口を示す。目的粒子Pを含むサンプル液及びシース液の流れは、内空が拡張された圧力室161に流入する際に噴流(ジェット)となり、流路壁面から剥離する(
図7A中矢印参照)。このため、目的粒子Pは、取込口162から離れて、圧力室161の奥まで取り込まれる。
【0039】
目的粒子を主流路15から圧力室161内にまで引き込むため、圧力室161の容積の増大量は、連通口156から引込口162までの分取流路16の容積(
図4参照)よりも大きくされる。また、圧力室161の容積の増大量は、目的粒子Pを含むサンプル液及びシース液の流れを取込口162において流路壁面から剥離させるために十分な負圧を発生するような大きさとされる。駆動部23は、これらの容積増大量に見合った電圧幅のピエゾ収縮信号をアクチュエータ31に出力する。
【0040】
分取流路16の連通口156から引込口162までの長さは、
図8、
図11、
図12に示す変形例のように、より短くなるように設計してもよい。連通口156から引込口162までの長さを短くする程、連通口156から引込口162までの分取流路16の容積が小さくなるため、目的粒子を主流路15から圧力室161内にまで引き込むための圧力室161の容積の増大量を小さくできる。その結果、アクチュエータ31への印加電圧幅を小さくでき、効率的な分取動作が可能となる。換言すれば、低駆動電圧で噴流を発生させて粒子を捕獲することができる。
【0041】
このように、目的粒子Pを分取流路16において内空が拡張された圧力室161の奥にまで取り込むようにすることで、分取流路16内の圧力が逆転して正圧になった場合にも、目的粒子Pが圧力室161から主流路15側へ再流出することを防止できる。すなわち、
図7Bに示すように、分取流路16内が正圧となった場合にも、サンプル液及びシース液が取込口162の近傍から広く流出していくため、取込口162から離れた位置まで取り込まれた目的粒子Pそのものの移動量は小さくなる。このため、目的粒子Pは、再流出することなく、圧力室161内に保持される。
【0042】
[駆動信号]
図9を参照して、駆動部23からアクチュエータ31に印加される電圧の波形(目的粒子を取得する際の駆動信号)を説明する。アクチュエータ31に印加される電圧の波形は、「パルス波形」(
図A)、「ステップ波形」(
図B)及び「アンダーシュート付ステップ波形」(
図C)のいずれであってもよい。
【0043】
ここで「アンダーシュート付ステップ波形」とは、「ステップ波形」において、ステップ部分よりも電圧値が低くなるアンダーシュート部分が付加された波形を意味する。「アンダーシュート付ステップ波形」は、「ステップ波形」と「パルス波形」との合成波ということもできる。
【0044】
パルス波形の振幅は、目的粒子を主流路15から圧力室161内にまで引き込むため及び目的粒子Pを含むサンプル液及びシース液の流れを取込口162において流路壁面から剥離させるため、十分な容積増加を圧力室161にもたらすように設定される。また、ステップ波形及びアンダーシュート付ステップ波形における一波形分の電圧値の低下幅も、同様の条件を満たすように設定される。
【0045】
パルス波形及びアンダーシュート付ステップ波形では、ピエゾ伸張となる波形成分が含まれるため、圧力室161の容積が増加し、分取流路16内に正圧が発生する。また、ステップ波形においても、予期せぬ電圧値の変動によって分取流路16内に正圧が発生する場合がある。上述のように、目的粒子Pは圧力室161の奥にまで取り込まれるため、分取流路16内に正圧が生じても圧力室161から主流路15側へ再流出することがない。
【0046】
アクチュエータ31に印加される電圧の波形は、特にパルス波形を採用することができる。ステップ波形及びアンダーシュート付ステップ波形においては、アクチュエータ31に印加される電圧が0となると、アクチュエータ31が可動範囲の限界に達し、目的粒子の分取が不能となるため、分取可能な微小粒子の最大数に制限がある。一方、パルス波形では、このような制限がない。
【0047】
以上のように、本技術に係る微小粒子分取方法によれば、主流路15中の目的粒子を、分取流路16において内空が拡張された圧力室161内へ取り込むことで、分取流路16内に引き込んだ目的粒子を再流出させないようにできる。このため、目的粒子の分別を安定して行うことができる。また、本技術に係る微小粒子分取方法では、分取流路16内が正圧になることがあっても、目的粒子を圧力室161内に保持できる。このため、アクチュエータ31への駆動電圧の制御をロバストな条件で行うことが可能となる。さらに、本技術に係る微小粒子分取方法では、アクチュエータ31の駆動をパルス波形の電圧によって行うことができる。このため、アクチュエータ31の可動範囲によらず、目的粒子の分取を数量の制限なく行うことができる。
【0048】
3.本技術に係る微小粒子分取方法の変形例
上述の例では、アクチュエータ31により圧力室161の内空を変化させ、分取流路16の内空の合計容積を増大させることにより負圧を発生させ、目的粒子を圧力室161内に取り込んで保持、蓄積する場合を説明した。この例では、圧力室161は負圧の発生と目的粒子の収容との両方に機能している。
【0049】
図10には、負圧の発生と目的粒子の収容とを分取流路16に設けられた別々の領域によって行う場合の微小粒子分取用マイクロチップの構成を示す。図に示されるマイクロチップ1bは、分取流路16において直列に配置された捕獲室163と圧力室164とを有する。
【0050】
捕獲室163は、上述のマイクロチップ1aにおける圧力室161と同様に、内空が平面方向(分取流路16の幅方向)に拡張されるとともに、断面方向(分取流路16の高さ方向)にも拡張されている。すなわち、分取流路16は、捕獲室163において幅方向及び高さ方向に拡張されている。換言すると、捕獲室163は、サンプル液及びシース液の流れ方向に対する垂直断面が大きくなるように形成されており、ここに引き込まれた目的粒子が再流出し得ないような形状とされている。
【0051】
他方、圧力室164も、分取流路16において内空が拡張された領域として形成されている。圧力室164に対応するマイクロチップ1bの表面には、アクチュエータ31が配置されている。アクチュエータ31は、マイクロチップ1bの表面(接触面)を介して圧力室164内に圧力変化を生じさせる。圧力室164内の圧力変化に伴って分取流路16内に流動が生じると、同時に、圧力室164内の体積が変化する。圧力室164内の体積は、印加電圧に対応したアクチュエータ31の変位量によって規定される体積に到達するまで変化する。このアクチュエータ31の機能は、上述のマイクロチップ1aにおける機能と同様である。
【0052】
マイクロチップ1bでは、目的粒子は、圧力室164の内空容積の増加により生じた負圧によって捕獲室163内に取り込まれて保持される。すなわち、この変形例では、圧力室164が負圧の発生に、捕獲室163が目的粒子の収容に機能する。なお、アクチュエータ31に印加される電圧の波形は、上述のマイクロチップ1aと同様に、パルス波形、ステップ波形及びアンダーシュート付ステップ波形のいずれであってもよく、特にパルス波形を採用することで目的粒子の分取数量の制限をなくすことができる。
【0053】
本変形例では、負圧の発生のための領域としての圧力室と、目的粒子の収容のための捕獲室とをそれぞれ1つずつ設ける例を説明したが、圧力室及び捕獲室はそれぞれ複数を配してもよい。この場合、分取流路16において圧力室及び捕獲室を直列に接続するとともに、圧力室に対して捕獲室が主流路15側に位置するように配置する。
【0054】
4.微小粒子分取プログラム
上述の微小粒子分取装置Aの駆動部23には、上述の動作を実行するための微小粒子分取プログラムが格納されている。
【0055】
プログラムは、ハードディスクに格納・保持され、CPU及びOSの制御の下でメモリに読み込まれて、上述の分取動作を実行する。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたものとできる。記録媒体としては、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば特に制限はないが、具体的には、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM等の円盤形記録媒体が用いられる。また、磁気テープ等のテープ型記録媒体を用いてもよい。また、一部の処理をDSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programing Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成し、上記ソフトウエアプ
ログラムと連携させて高速処理を行う構成も採用できる。
【0056】
<第2の実施の形態>
5.本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置
[装置の駆動部の全体構成]
図13は、本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置の駆動部を説明する図である。なお、本実施形態においては、
図1に示した微小粒子分取装置Aの構成要素に対応するものについては、同一の符号を用いて説明する。
図13に示すように、駆動部23は、バス2301にそれぞれ接続された複数の回路2302〜2309を有している。
【0057】
具体的には、同図中の符号2302で示される回路は、アナログ―デジタル変換回路2302である。また、符号2303で示される回路は、イベント検出回路2303である。さらに、符号2304で示される回路は、到達時間計算回路2304である。さらにまた、符号2305で示される回路は、ゲーティング回路2305である。また、符号2306で示される回路は、出力待ち行列回路2306である。さらに、符号2307で示される回路は、出力タイミング生成回路2307である。さらにまた、符号2308で示される回路は、出力信号生成回路2308である。また、符号2309で示される回路は、MPU(マイクロプロセッシングユニット)2309である。なお、アナログ―デジタル変換回路2302は、同図において「A/D」と表されている。
【0058】
また、
図13に示すように、駆動部23は、クロックカウンタ2310を有している。このクロックカウンタ2310は、イベント検出回路2303、到達時間計算回路2304、ゲーティング回路2305、出力待ち行列回路2306、出力タイミング生成回路2307および出力信号生成回路2308に接続されている。
【0059】
さらに、
図13に示すように、駆動部23は、MPU2309に接続されたPC I/
O部(パーソナルコンピュータ接続用のInput/Output Interface回路)2311と、このPC I/O部2311に接続された制御PC2312とを有している。
【0060】
さらにまた、
図13に示すように、駆動部23は、出力信号生成回路2308に接続されたデジタル−アナログ変換回路2313を有している。なお、デジタル―アナログ変換回路2313は、同図において「D/A」と表されている。
【0061】
[駆動部の詳細]
[アナログ−デジタル変換回路]
アナログ−デジタル変換回路2302は、検出部22(
図1参照)の後段(出力側)の回路であり、検出部22と接続されている。また、アナログ−デジタル変換回路2302は、複数配置されている。ここで、アナログ−デジタル変換回路2302は、検出部22によって検出される複数の光(波長領域)にそれぞれ対応するように、検出部22のチャンネル(
図13におけるCh)数と同数配置されていてもよい。あるいは、アナログ−デジタル変換回路2302は、検出部2302のセンサ数と同数配置されていてもよい。
【0062】
各アナログ−デジタル変換回路2302には、検出部2から出力された各アナログ−デジタル変換回路2302にそれぞれ対応する電気信号が入力する。該電気信号は、検出部22によって検出された光(蛍光および散乱光)が検出部22によって光電変換されたアナログ信号である。そして、各アナログ−デジタル変換回路2302は、入力された各電気信号をそれぞれアナログ信号からデジタル信号へと変換する。さらに、各アナログ−デジタル変換回路2302は、デジタル信号に変換された電気信号を後段に出力する。
【0063】
[イベント検出回路]
イベント検出回路2303は、各アナログ−デジタル変換回路2302の後段の回路であり、各アナログ−デジタル変換回路2302と接続されている。
【0064】
イベント検出回路2303には、各アナログ−デジタル変換回路2302から出力された電気信号が入力される。そして、イベント検出回路2303は、入力された各電気信号のうちの特定の信号を微小粒子を認知するためのトリガ信号として用いる。すなわち、イベント検出回路2303は、トリガ信号の値が所定の条件を満足する場合に、各電気信号が微小粒子から検出されたものであることを認知する。なお、トリガ信号は、検出部22によって検出される複数の光のうちの強度が最大の光(例えば、前方散乱光)の電気信号であってもよいが、これに限定されなくてもよい。
【0065】
また、イベント検出回路2303は、
図14に示すように、入力された各電気信号の波形を読み込み、読み込まれた波形の幅、高さおよび面積を計算する。さらに、イベント検出回路2303は、算出された該波形の各値等を用いて、
図15に示すように、各電気信号をこれらに対応する1つの微小粒子に関連付けたイベントデータパケットを作成する。このイベントデータパケットは、1つの微小粒子に対する測定データの一例である。そして、イベント検出回路2303は、作成されたイベントデータパケットを後段に出力する。
【0066】
ここで、イベントデータパケットには、該パケットの作成時にデータの記録が完了する項目(以下、第1の項目と称する)が含まれている。また、イベントデータパケットには、該パケットの作成後における該パケットに対応する電気信号に関する処理が進むにつれて更新される項目(以下、第2の項目と称する)が含まれている。
【0067】
第1の項目には、例えば、以下の項目が含まれている。
・電気信号の波形の幅、高さおよび面積
・認知された微小粒子の番号(イベント番号)
・トリガ信号となった電気信号の番号
・トリガ信号の検出時刻
なお、トリガ信号となった電気信号の番号は、チャンネル番号であってもよい。また、トリガ信号の検出時刻の記録には、クロックカウンタ2310から入力される信号を用いてもよい。この信号は、クロックカウンタ2310が、自身に入力されたクロック生成回路(図示せず)からのクロック信号を計数したものであってもよい。
【0068】
一方、第2の項目には、例えば、以下の項目が含まれている。
・微小粒子の取り込みを行うべき時刻
・微小粒子の取り込みを行うか否かを示す第1のフラグ
・微小粒子の取り込みを行うか否かを示す第2のフラグ
なお、第1のフラグは、ゲーティング回路2305によって設定されるフラグである。一方、第2のフラグは、出力待ち行列回路2306によって設定されるフラグである。これら第1のフラグおよび第2のフラグは、基本的に1または0に設定されていて、対応する微小粒子の取り込みを行うか否かの判断に供されるようにしてもよい。各フラグの更なる詳細については後述する。
【0069】
[到達時間計算回路]
図13に示すように、到達時間計算回路2304は、イベント検出回路2303の後段の回路であり、イベント検出回路2303と接続されている。
【0070】
到達時間計算回路2304には、イベント検出回路2303から出力されたイベントデータパケットが入力される。そして、到達時間計算回路2304は、入力されたイベントデータパケットに基づいて、第2の項目に含まれる微小粒子の取り込みを行うべき時刻として、微小粒子(目的粒子)が連通口156に到達する到達時刻を計算する。以下、「微小粒子の取り込みを行うべき時刻」を、「到達時刻」に置き換えて説明する。到達時間計算回路2304は、該計算によって算出された到達時刻をイベントデータパケットに記録し、この記録後のイベントデータパケットを後段に出力する。
【0071】
到達時刻の計算は、第2の項目に含まれるトリガ信号の検出時刻に、目的粒子が検出領域15aから連通口156に到達するまでの所要時間(遅れ時間)を加算することによって行うようにしてもよい。また、到達時刻をクロックカウンタ値として計算しても良い。
【0072】
[ゲーティング回路]
ゲーティング回路2305は、イベント検出回路2303の後段の回路であり、イベント検出回路2303と接続されている。
【0073】
ゲーティング回路2305には、イベント検出回路2303から出力されたイベントデータパケットが入力される。そして、ゲーティング回路2305は、入力されたイベントデータパケットに対して、第1のフラグの設定を行う。さらに、ゲーティング回路2305は、第1のフラグを設定した後のイベントデータパケットを後段に出力する。
【0074】
第1のフラグの設定は、イベントデータパケットに含まれる各電気信号のパラメータについての予め設定されている閾値に基づいて行うようにしてもよい。この場合、閾値は、波形の幅、高さおよび面積の少なくとも1つであってもよい。そして、パラメータが閾値を満足する場合には、第1のフラグの値を、微小粒子の取り込みを行うことを示す値(例えば、「1」)に設定してもよい。一方、パラメータが閾値を満足しない場合には、第1のフラグの値を、微小粒子の取り込みを行わないことを示す値(例えば、「0」)に設定してもよい。
【0075】
また、閾値は、ゲーティングによって予め設定された範囲であってもよい。ここで、ゲーティングは、微小粒子集団中における微小粒子の特性分布を表す分布図上において、目的粒子に該当する範囲を囲い込んで指定する処理である。このゲーティングは、目的粒子の取り込み動作の開始前に行われる。なお、分布図は、制御PC2312上のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)によって作成するようにしてもよい。また、ゲーティングは、ゲーティング回路2305によって行うようにしてもよい。
【0076】
ここで、
図16Aは、分布図の一例としてのヒストグラムチャートに対するゲーティングの結果を示したものである。このヒストグラムチャートは、横軸がパラメータを示し、縦軸が粒子数を示す。同図におけるパラメータは、チャンネル番号1番(Ch1)に該当する電気信号の波形の面積であるが、これ以外のパラメータを用いてもよい。そして、同図における矩形枠が、目的粒子に該当する範囲を指定したゲートであり、該範囲が第1のフラグの設定のための閾値として用いられてもよい。
【0077】
一方、
図16Bは、分布図の他の一例としての2D(2次元)チャートに対するゲーティングの結果を示したものである。この2Dチャートは、横軸および縦軸に互いに異なるパラメータが割り当てられている。同図における横軸のパラメータは、チャンネル番号2番(Ch2)に該当する電気信号の波形の面積であり、縦軸のパラメータは、チャンネル番号3番(Ch3)に該当する電気信号の波形の面積である。しかし、これら両電気信号の波形の面積以外のパラメータを用いてもよい。そして、同図における矩形枠が、目的粒子に該当する範囲を指定したゲートであり、該範囲が第1のフラグの設定のための閾値として用いられてもよい。
【0078】
[出力待ち行列回路]
図13に戻って、出力待ち行列回路2306は、到達時間計算回路2304およびゲーティング回路2305の後段の回路であり、これら到達時間計算回路2304およびゲーティング回路2305と接続されている。
【0079】
出力待ち行列回路2306には、到達時間計算回路2304から出力されたイベントデータパケットおよびゲーティング回路2305から出力されたイベントデータパケットが入力される。そして、出力待ち行列回路2306は、入力された両イベントデータパケットであって、互いに同一の微小粒子すなわちイベント番号を示すもの同士を、1つのイベントデータパケットに統合(合成)する。この統合されたイベントデータパケットは、遅延時刻および第1のフラグの双方が書き込まれたものである。なお、イベントデータパケットの統合は、到達時間計算回路2304とゲーティング回路2305との間での通信によって、両回路2304、2305のいずれかで行うようにしてもよい。また、到達時間計算回路2304とゲーティング回路2305とは直列に接続されていてもよい。
【0080】
また、出力待ち行列回路2306は、逐次入力された互いに異なる微小粒子のイベントデータパケットを、イベントデータパケットに含まれる到達時刻が早い順に並べる。ここで、出力待ち行列回路2306に入力されたイベントデータパケットであって、該当する微小粒子の取り込みのための駆動波形の出力待ちのものを、「出力待ち行列」と定義する。出力待ち行列は、出力待ち行列回路2306への新たなイベントデータパケットの入力に応じて更新される。
【0081】
さらに、出力待ち行列回路2306は、純度優先モードまたは取得率優先モードに応じて、各イベントデータパケットに対応する微小粒子の取り込みを行うか否かを判断する。なお、純度優先モードおよび取得率優先モードは、微小粒子の取り込み動作の開始前に予め選択的に設定されている駆動部23の動作モードである。該モードの設定は、各種のユーザインターフェースを介して制御PC2312によって行うようにしてもよい。
【0082】
ここで、純度優先モードとは、目的粒子と非目的粒子とが互いに近接した状態で流通してきた場合であって、両粒子が一緒に捕捉される可能性が高い場合に、敢えて当該目的粒子を「非目的粒子(非取得)」とみなして捕獲粒子の純度を高めるモードである。つまり、純度優先モードが設定されている場合には、非目的粒子に近接する目的粒子は取り込まれず廃棄されることになる。
【0083】
一方、取得率優先モードとは、目的粒子と非目的粒子とが互いに近接した状態で流通してきた場合であって、両粒子が一緒に捕捉される可能性が高い場合に、両粒子をともに取得し、捕獲粒子の純度が下がっても取得粒子数をより多くするモードである。
【0084】
そして、出力待ち行列回路2306は、設定されているモードに応じた微小粒子の取り込みの有無の判断の結果に基づいて、第2のフラグの設定を行う。このとき、出力待ち行列回路2306は、微小粒子の取り込みを行うと判断した場合には、第2のフラグを「1」に設定してもよい。一方、出力待ち行列回路2306は、微小粒子の取り込みを行わないと判断した場合には、第2のフラグを「0」に設定してもよい。なお、このようなフラグの設定の態様に限定されなくてもよい。
【0085】
さらにまた、出力待ち行列回路2306は、アクチュエータ31に印加すべき駆動波形の印加タイミングをメモリに書き出す。このメモリは、RAM(ランダムアクセスメモリ)であってもよい。また、メモリは、バス2301に接続されていてもよく、また、駆動部23の回路や制御PC2312に内蔵されていてもよい。さらに、印加タイミングを書き出すにあたっては、第1のフラグおよび第2のフラグの設定値を参照してもよい。この場合、両フラグがともに取り込み実行を示す値に設定されている場合に、該当する微小粒子を取り込むような印加タイミングを書き出してもよい。さらにまた、駆動波形は、駆動電圧であってもよい。
【0086】
ここで、出力待ち行列回路2306は、駆動波形としてパルス波形を印加する場合には、立下り波形部の印加タイミングと立上り波形部の印加タイミングとをメモリに書き込む。立下り波形部および立上り波形部は、
図17に例示するように、パルス波形の一部であり、立下り波形部は、該パルス波形の前部をなし、立上り波形部は、該パルス波形の後部をなす。また、立下り波形部は、L字状を呈しており、立上り波形部は、傾斜部の後端(
図17における右端)に平坦部を繋いだ形状を呈している。さらに、立下り波形部の高さ(振幅)と立上り波形部の高さとは、互いに同一とされている。なお、図中における各波形部の互いに異なるハッチングは、両者を識別するために便宜上施したものに過ぎない。
【0087】
立下り波形部は、分取流路16(圧力室161)の内空に負圧を発生させて微小粒子の取り込みを行うために印加される。負圧の発生は、アクチュエータ31に、該内空をこれの容積が増大する方向に変形させる力を生じさせることによって行われる。この力は、第1の実施の形態において説明したように、圧力室161内の容積を増大させるために変位板311への押圧を弱める力であってもよい。また、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、立下り波形部は、伸張されているピエゾ素子に印加されている駆動電圧を低減させて、ピエゾ素子を収縮させる波形であってもよい。
【0088】
一方、立上り波形部は、アクチュエータ31を、負圧の発生のために分取流路16(圧力室161)の内空を変形させた状態から復帰させるために印加される。この復帰は、アクチュエータ31に、該内空をこれの容積を減少させる方向に変形させる力を生じさせることによって行われる。この力は、第1の実施の形態において説明したように、圧力室161内の容積を減少させるために変位坂311への押圧を強める力であってもよい。また、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、立上り波形部は、収縮されているピエゾ素子に印加されている駆動電圧を増大させて、ピエゾ素子を伸張させる波形であってもよい。
【0089】
出力待ち行列回路2306は、以上のような立下り波形部および立上り波形部の印加タイミングをメモリに書き出す場合、立下り波形部の印加タイミングとして、イベントデータパケットに含まれる到達時刻を書き出してもよい。
【0090】
また、出力待ち行列回路2306は、立上り波形部の印加タイミングをメモリに書き出す場合、該印加タイミングを、時系列的に前後する立下り波形部の印加タイミング同士の間の時間間隔(換言すれば、イベントの時間間隔)に基づいて計算する。
【0091】
この計算は、該時間間隔が短く、立上り波形部を印加した場合に次の立下り波形部の印加を妨げるとみなされる場合に、該時間間隔内において立上り波形部を印加しないようなタイミングを算出するアルゴリズム(プログラム)に基づく。詳細は、後述の「6.本技術に係る微小粒子分取方法」に説明を譲る。
【0092】
[出力タイミング生成回路]
図13に示すように、出力タイミング生成回路2307は、出力待ち行列回路2306と接続されている。出力タイミング生成回路2307は、出力待ち行列回路2306がRAMに書き出した出力待ち行列の最も先頭に配列されたイベントデータパケットの到達時刻を、該RAMから読み出す。そして、出力タイミング生成回路2307は、読み出された到達時刻をクロックカウンタ2310からの信号の値と比較して、該到達時刻に出力タイミング信号を生成する。ここで、出力タイミング信号は、駆動波形の出力タイミングを割り当てるための信号である。出力タイミング生成回路2307は、生成された出力タイミング信号を後段に出力する。さらに、出力待ち行列回路2307は、出力タイミング信号の出力後、出力待ち行列回路2306に完了信号を送信して、出力待ち行列の更新を促してもよい。
【0093】
駆動波形がパルス波形の場合、出力タイミング生成回路2307は、出力待ち行列回路2306によって立下り波形部および立上り波形部の印加タイミングが書き出されたメモリを参照する。そして、出力タイミング生成回路2307は、メモリ内の立下り波形部および立上り波形部の印加タイミングと、クロックカウンタ2310からの信号の値とを比較して、波形部ごとの出力タイミング信号を生成する。さらに、出力タイミング生成回路2307は、生成された出力タイミング信号を後段に出力する。
【0094】
[出力信号生成回路]
出力信号生成回路2308は、出力タイミング生成回路2307の後段の回路であり、出力タイミング生成回路2307と接続されている。
【0095】
出力信号生成回路2308には、出力タイミング生成回路2307から出力された出力タイミング信号が入力される。そして、出力信号生成回路2308は、入力された出力タイミング信号に対応する駆動波形(出力信号)を生成して後段に出力する。さらに、出力信号生成回路2308は、駆動波形の出力後、ステップカウンタおよび出力ステータス信号を更新する。なお、出力ステータス信号は、波形停止中/出力中(出力可(enable)/不可(disable))の状態を表す信号である。
【0096】
ここで、ステップカウンタは、駆動波形の段階的な出力レベルを示す。換言すれば、ステップカウンタは、駆動波形の印加の回数の増加にともなって段階的に変動する駆動波形の基準値からの変動値を示す。このステップカウンタの1段分のレベル差ごとの出力の差は一定である。ステップカウンタおよび出力ステータス信号は、出力待ち行列回路2306や出力タイミング生成回路2307に入力されて各回路2306、2307の処理に利用されてもよい。
【0097】
駆動波形がパルス波形の場合には、出力信号生成回路2308は、立下り波形部と立上り波形部とを個別に生成して出力する。
【0098】
[デジタル−アナログ変換回路]
デジタル−アナログ変換回路2313には、出力信号生成回路2308から出力された駆動波形が入力される。そして、デジタル−アナログ変換回路2313は、入力された駆動波形をデジタル信号からアナログ信号に変換して、アクチュエータ31の駆動回路へと出力する。
【0099】
なお、
図13の駆動部23を、パルス波形以外の駆動波形の印加に適用してもよい。
【0100】
6.本技術に係る微小粒子分取方法
次に、
図13の駆動部23を備えた微小粒子分取装置を適用した本技術に係る微小粒子分取方法の第2の実施の形態について、微小粒子分取装置の動作とともに説明する。本実施形態における微小粒子分取方法は、アクチュエータ31に対するパルス波形の印加を、立下り波形部の印加と立上り波形部の印加とで個別に制御する方法である。
【0101】
本実施形態における微小粒子分取方法は、この方法を具現化するアルゴリズムの一例を視覚化した
図18および
図19のフローチャートにしたがうようにしてもよい。ここで、
図18および
図19は、主として出力待ち行列回路2306の動作を示すフローチャートである。より具体的には、
図18は、動作全般を、
図19は、立上り波形部の立上りタイミングすなわち印加タイミングの計算を示す。以下、各図のフローチャートについて順次説明する。
【0102】
[動作全般]
図18のフローチャートにおいては、以下の第1〜第3の処理を個別かつ並行して行う。
[第1の処理]
第1の処理においては、まず、ステップ181−1(S181−1)において、イベント(イベントデータパケット)の入力の有無を判定する。この判定には、前段回路(例えば、到達時間計算回路2304およびゲーティング回路2305)から入力されたイベントデータパケットを利用する。そして、ステップ181−1(S181−1)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ181−2(S181−2)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ181−1(S181−1)を繰り返す。
【0103】
次いで、ステップ181−2(S181−2)において、ステップ181−1(S181−1)において「入力有り」と判定された新たなイベントを出力待ち行列に追加することによって、出力待ち行列を更新する。
【0104】
最後に、ステップ181−3(S181−3)において、ステップ181−2(S181−2)において更新された出力待ち行列に基づいて、微小粒子を取り込むか否か(取得/非取得)を再評価して、ステップ181−1(S181−1)に戻る。ここで、「再評価」と表現している理由は、本ステップにおける評価が、既に待ち行列にあるイベント(既に評価され第2のフラグが設定されているイベント)を再び評価する処理に当たるためである。純度優先の場合、後から待ち行列に加わるイベントが前に加えられたイベントと近接している可能性があるため、本ステップの処理が有効にはたらく。
【0105】
[第2の処理]
第2の処理においては、まず、ステップ182−1(S182−1)において、次に取得すべきイベント(目的粒子)についての立下り波形部の立下りタイミングを、メモリ(
図18においてはRAM)に書き出す。この書き出された立下りタイミングは、出力タイミング生成回路2307によって参照されることになる。
【0106】
次いで、ステップ182−2(S182−2)において、立下り波形部の立下りトリガ出力が完了したか否かを判定する。ここで、「立下りトリガ出力」とは、出力タイミング生成回路2307によって生成された立下り波形部の出力タイミングが出力信号生成回路2308に出力されることである。本ステップにおける判定には、出力タイミング生成回路2307から入力された立下りトリガ出力の完了を知らせる完了信号を利用する。
【0107】
最後に、ステップ182−3(S182−3)において、立下りトリガ出力が完了したイベントを出力待ち行列から削除することによって、出力待ち行列を更新して、ステップ182−1(S182−1)に戻る。
【0108】
[第3の処理]
第3の処理においては、まず、ステップ183−1(S183−1)において、立上り波形部の立上りタイミングを計算する。
【0109】
次いで、ステップ183−2(S183−2)において、ステップ183−1(S183−1)において算出された立上りタイミングをメモリ(
図18におけるRAM)に書き出す。この書き出された立上りタイミングは、出力タイミング生成回路2307によって参照されることになる。
【0110】
次いで、ステップ183−3(S183−3)において、立上り波形部の立上りトリガ出力が完了したか否かを判定する。ここで、「立上りトリガ出力」とは、出力タイミング生成回路2307によって生成された立上り波形部の出力タイミング信号が出力信号生成回路2308に出力されることである。本ステップにおける判定には、出力タイミング生成回路2307から入力された立上りトリガ出力の完了を知らせる完了信号を利用する。そして、ステップ183−3(S183−3)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ183−1(S183−1)に戻り、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ183−3(S183−3)を繰り返す。
【0111】
[立上りタイミングの計算]
図19のフローチャートは、
図18のステップ183−1(S183−1)すなわち立上りタイミングの計算の詳細を示したものである。
【0112】
図19のフローチャートにおいては、まず、ステップ191(S191)において、ステップカウンタの値が0よりも大きいか否かを判定する。そして、ステップ191(S191)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ192(S192)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ191(S191)に戻る。
【0113】
ここで、ステップ191(S191)において否定的な判定結果が得られる場合とは、
図20Aに示すように、ステップカウンタの値が0の場合である。これは、パルス波形の値が基準値(
図21参照)である場合に相当する。この基準値は、パルス波形のホールド値であってもよく、更に、このホールド値は、ピークホールド値あってもよい。基準値をピークホールド値とする場合、
図20Aの状態は、アクチュエータ31に対して駆動波形の最大値が印加されている状態に相当する。更に、その場合において、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、
図20Aの状態は、ピエゾ素子が、予定されている最大の伸張を示している状態に相当する。
【0114】
そして、
図20Aに示すように、ステップカウンタの値が0である場合には、該当するイベント(次に取得すべきイベント)について、立上りタイミングを計算しない(何もしない)ようにする。
【0115】
次いで、
図19のステップ192(S192)において、ステップカウンタの値が最大値よりも小さいか否かを判定する。そして、ステップ192(S192)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ193(S193)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ194(S194)に進む。
【0116】
ここで、ステップ192(S192)において否定的な判定結果が得られる場合とは、
図20Bに示すように、ステップカウンタの値が最大値の場合である。基準値がピークホールド値であり、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、
図20Bの状態は、ピエゾ素子が、予定されている最大の伸張状態からの最大の収縮を示している状態に相当する。なお、同図におけるステップカウンタの最大値は「3」であるが、これに限定される必要はない。
【0117】
そして、
図20Bに示すように、ステップカウンタの値が最大値である場合には、ステップ194(S194)において、該当するイベントについて強制的に立上りタイミグを計算する。「強制的に」とは、次の立下りまでの時間の長短を問わない意義である。ステップ194(S194)の詳細については後述する。
【0118】
次いで、
図19のステップ193(S193)に進んだ場合には、次の立下りまでの時間が予め設定された第1の設定値以上か否かを判定する。ここで、次の立下りまでの時間は、現在印加した立下り波形部の印加の終了時(換言すれば、現在時刻)を起算点としている。また、第1の設定値は、立上り波形部の固定された印加時間に、回路の動作マージンの時間(既知の時間)を加算したものであってもよい。そして、ステップ193(S193)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ194(S194)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ193(S193)に戻る。
【0119】
ここで、ステップ193(S193)において否定的な判定結果が得られる場合とは、
図20Cに示すように、前後の立下りタイミング同士の時間間隔(次の立下りまでの時間)が短い場合である。この場合は、該当するイベントについて立上りタイミングを計算せずに、連続的な立下り波形部の印加が行われるようにする。
【0120】
一方、
図20Dに示すように、前後の立下りタイミング同士の時間間隔が十分に長い場合は、ステップ194(S194)において、該当するイベントについての立上りタイミグを計算する。
【0121】
ステップ194(S194)における立上りタイミングの計算は、現在時刻に、回路の動作マージンの時間を加算することによって行ってもよい。
【0122】
また、ステップ194(S194)においては、次の立下りまでの時間によっては、
図20B、
図20Dのような1回分の立上りのタイミングにとどまらず、複数回分の連続的な立上りのタイミング(複数のタイミング)を計算してもよい。例えば、現在のステップカウンタの値が「2」以上であり、次の立下りまでの時間が前述した第1の設定値と立上り波形部の固定された印加時間との合計値以上である場合には、2回分の立上りタイミングを計算するようにしてもよい。連続的な立上りの回数は、現在のステップカウンタの値またはステップカウンタがとり得る値の総数(段数)に応じて異なってもよい。
【0123】
[駆動波形]
本実施形態の微小粒子分取方法によれば、例えば、
図21のタイムチャートに示すような駆動波形(駆動信号)の印加が行われる。なお、同図には、駆動波形(
図21D)以外にも、イベントの検出時刻(
図21A)、立下りタイミング(
図21B)、立上りタイミング(
図21C)、および、立下りタイミングごとの目的粒子の取得の成否を表す記号(成功が○、失敗が×)(
図21E)が示されている。なお、
図21Aの検出時刻は、
図22に示すように、前後のイベント同士の時間間隔(検出時刻の間隔)の分布がポアソン分布を示し、平均的な時間間隔が200μsecとなるものであってもよい。
【0124】
図21に示すように、本実施形態においては、前後の立下りタイミング同士の間に第1の所定時間T1以上の時間が確保される期間Taにおいては、通常の立下り波形部および立上り波形部の印加(換言すれば、基本的なパルス波形の印加)が行われる。なお、第1の所定時間T1は、立上り波形部の印加時間(固定時間)よりも長い時間であり、立下り波形部の印加時間(固定時間)と前述した第1の設定値との合計時間であってもよい。
【0125】
一方、前後の立下りタイミング同士の間に第1の所定時間T1以上の時間が確保されない期間Tbにおいては、立上り波形部の印加を行わずに立下り波形部の印加を連続的に行う。
【0126】
また、前後の立下りタイミング同士の間に第1の所定時間T1よりも長い第2の所定時間T2以上の時間が確保される期間Tcにおいては、立上り波形部の印加を連続的に行う。なお、第2の所定時間T2は、前述した第1の所定時間と第1の設定値との合計時間であってもよい。
【0127】
そして、このような駆動波形が印加されることにより、
図21Eに示すように、立下りタイミングごとの目的粒子の取得の成否がいずれも成功(○)を示すものとなる。
【0128】
これに対して、
図23Cは、比較例として、基本的なパルス波形のみを印加する場合に得られる駆動波形の一例を示したものである。
図23においては、前のパルス波形の印加が終了する前に次の立下りタイミング(
図23B)が来る場合がある。しかし、この場合、次の立下りタイミングは、論理的にアボートされるか、または、前のパルス波形の出力中として無視されることになる。この結果、前後で近接するイベントについては、
図23Dに示すように、取得失敗(×)となる。
【0129】
以上説明したように、本実施形態によれば、パルス波形の印加を、立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御することで、アクチュエータ31による微小粒子の取り込み動作に対して、アクチュエータ31による復帰動作を独立して制御することができる。これにより、次の目的粒子の取り込み動作の妨げとなるような復帰動作を未然に回避することができ、ひいては、目的粒子の取得率を向上させることができる。
【0130】
また、本実施形態によれば、立下り波形部の印加を、微小粒子が分取流路16における主流路15との連通口156に到達するタイミングで行うことで、目的粒子に対して、最適なタイミングで負圧を作用させることができる。これにより、目的粒子を圧力室161(領域)内に効率的かつ適正に取り込むことができる。
【0131】
さらに、本実施形態によれば、立上り波形部の印加を、次の微小粒子が連通口156に到達するまでの所要時間が第1の所定時間以上の場合に行うことで、次の微小粒子の取り込み動作の妨げとなるような復帰動作を簡便に回避することができる。
【0132】
<第3の実施の形態>
7.本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置
次に、本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置の第3の実施の形態について説明する。なお、本実施形態においては、
図1に示した微小粒子分取装置および
図13に示した駆動部23の構成要素に対応するものについては、同一の符号を用いて説明する。ただし、第2の実施の形態との相違点以外の詳細な説明は省略する。
【0133】
本実施形態における駆動部23は、基本的な構成は第2の実施の形態(
図13)と同様である。ただし、本実施形態における駆動部23は、出力待ち行列回路2306および出力信号生成回路2308の動作が第2の実施の形態とは異なる。
【0134】
すなわち、出力待ち行列回路2306は、立上り波形部の傾斜部(
図17参照)の印加時間を、該印加時間の終了時から次の立下り波形部の印加時までの間に液体の流れ場が復帰する(戻る)ための時間が確保されるような印加時間に制御する。なお、流れ場は、検出領域15a側から圧力室161までの所定の流路区間の流れ場であってもよい。また、流れ場の復帰先は、立下り波形部(パルス波形)の印加前の状態である。このような印加時間の制御に対応するために、立上り波形部の傾斜部の印加時間は、変更可能な時間となっている。なお、立上り波形部を傾斜部のみからなるものとする場合、傾斜部の印加時間は、立上り波形部そのものの印加時間となる。印加時間の制御の詳細は、後述の「8.本技術に係る微小粒子分取方法」に説明を譲る。
【0135】
また、出力信号生成回路2308は、第2の実施の形態において説明したステップカウンタの値の代わりに、駆動波形の出力信号レベルの値を出力待ち行列回路2306に供給する。ここで、出力信号レベルの値は、ステップカウンタの値のように一定間隔ごとに段階的に変動する値とは異なり、連続的に変動し得る値である。このように出力信号レベルの値を用いることは、立上り波形部の傾斜部の印加時間(換言すれば、高さ)を可変とする本実施形態の構成に適している。
【0136】
8.本技術に係る微小粒子分取方法
次に、微小粒子分取装置の第3の実施の形態を適用した本技術に係る微小粒子分取方法の第3の実施の形態について、微小粒子分取装置の動作とともに説明する。
【0137】
本実施形態における微小粒子分取方法は、パルス波形の印加を立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御する点では第2の実施の形態と共通するが、立上り波形部の具体的な制御において相違点を有する。この相違点は、後述の[第3の処理]を参照のこと。
【0138】
本実施形態における微小粒子分取方法は、
図24および
図25のフローチャートにしたがうようにしてもよい。ここで、
図24は、主として出力待ち行列回路2306の動作全般を示すフローチャートである。また、
図25は、立上り波形部の立上りタイミングおよび印加時間の計算を示すフローチャートである。以下、各図のフローチャートについて順次説明する。
【0139】
[動作全般]
図24のフローチャートにおいては、以下の第1〜第3の処理を個別かつ並行して行う。
【0140】
[第1の処理]
図24に示すように、第1の処理は、ステップ241−1(S241−1)、ステップ241−2(S241−2)およびステップ241−3(S241−3)の一連の工程を含む。ここで、ステップ241−1(S241−1)は、
図18のステップ181−1(S181−1)と同一の工程である。また、ステップ241−2(S241−2)は、
図18のステップ181−2(S181−2)と同一の工程である。さらに、ステップ241−3(S241−3)は、
図18のステップ181−3(S181−3)と同一の工程である。すなわち、第1の処理は、第2の実施の形態と同一の処理である。
【0141】
[第2の処理]
図24に示すように、第2の処理は、ステップ242−1(S242−1)、ステップ242−2(S242−2)およびステップ242−3(S242−3)の一連の工程を含む。ここで、ステップ242−1(S242−1)は、
図18のステップ182−1(S182−1)と同一の工程である。また、ステップ242−2(S242−2)は、
図18のステップ182−2(S182−2)と同一の工程である。さらに、ステップ242−3(S242−3)は、
図18のステップ182−3(S182−3)と同一の工程である。すなわち、第2の処理も、第2の実施の形態と同一の処理である。
【0142】
[第3の処理]
第3の処理においては、まず、ステップ243−1(S243−1)において、立上り波形部の立上りタイミングと、立上り波形部の傾斜部の印加時間(波形長)とを計算する。
【0143】
次いで、ステップ243−2(S243−2)において、ステップ243−1(S243−1)において算出された立上りタイミングおよび印加時間をメモリ(
図24におけるRAM)に書き出す。この書き出された立上りタイミングおよび印加時間は、出力タイミング生成回路2307によって参照されることになる。
【0144】
次いで、ステップ243−3(S243−3)において、立上り波形部の立上りトリガ出力が完了したか否かを判定する。そして、肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ243−1(S243−1)に戻り、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ243−3(S243−3)を繰り返す。
【0145】
[立上りタイミングおよび印加時間の計算]
図25のフローチャートは、
図24のステップ243−1(S243−1)すなわち立上りタイミングおよび印加時間の計算の詳細を示したものである。
【0146】
図25のフローチャートにおいては、まず、ステップ251(S251)において、出力信号レベルの値がベースレベルよりも小さいか否かを判定する。そして、ステップ251(S251)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ252(S252)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ251(S251)に戻る。
【0147】
ここで、ステップ251(S251)において否定的な判定結果が得られる場合とは、
図26Aに示すように、出力信号レベルの値がベースレベルの場合である。このベースレベルは、パルス波形のホールド値であってもよく、更に、このホールド値は、ピークホールド値あってもよい。ベースレベルをピークホールド値とする場合、
図26Aの状態は、アクチュエータ31に対して駆動波形の最大値が印加されている状態に相当する。
【0148】
そして、
図26Aに示すように、出力信号レベルの値がベースレベルである場合には、該当するイベントについて、立上りタイミングおよび印加時間を計算しない(何もしない)ようにする。
【0149】
次いで、
図25のステップ252(S252)において、出力信号レベルの値が最小範囲に属するか否かを判定する。ここで、最小範囲とは、
図26に示すように、出力信号レベルの最小値から、この最小値よりも1回分の立下り波形部の高さ(振幅)だけ上昇した値に亘る出力信号レベルの範囲である。そして、ステップ252(S252)において否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ253(S253)に進み、肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ254(S254)に進む。
【0150】
ここで、ステップ252(S252)において肯定的な判定結果が得られる場合の一例は、
図26Bに示すように、出力信号レベルの値が最小値の場合である。この場合には、該当するイベントについて、ステップ254(S254)において、強制的に1ステップ分の立上りタイミグおよび印加時間を計算する。
【0151】
次いで、
図25のステップ253(S253)に進んだ場合には、次の立下りまでの時間が予め設定された第2の設定値以上か否かを判定する。ここで、第2の設定値は、流れ場の復帰に要するとみなされる所要時間(以下、流れ場復帰時間と称する)に、回路の動作マージンの時間を加算した値であってもよい。そして、ステップ253(S253)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ254(S254)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ253(S253)に戻る。
【0152】
ここで、ステップ253(S253)において否定的な判定結果が得られる場合とは、
図26Cに示すように、前後の立下りタイミング同士の時間間隔が短い場合である。この場合は、該当するイベントについて立上りタイミングおよび印加時間の計算を行わずに、連続的な立下り波形部の印加が行われるようにする。
【0153】
一方、
図26Dに示すように、前後の立下りタイミング同士の時間間隔が十分に長い場合は、ステップ254(S254)において、該当するイベントについての立上りタイミグおよび印加時間を計算する。
【0154】
ステップ254(S254)における立上りタイミングの計算は、現在時刻に、回路の動作マージンの時間を加算することによって行ってもよい。
【0155】
また、ステップ254(S254)において算出される印加時間は、次の(1)および(2)のいずれかのうちの短い時間であってもよい。
(1)(次の立下りまでの時間間隔)−(流れ場復帰時間)−(回路の動作マージンの時間)
(2)[(ベースレベル)−(現在の出力信号レベル)]/(立上り波形部の傾き)
ただし、(1)の「次の立下りまでの時間間隔」は、現在時刻すなわち現在印加した立下り波形部の印加の終了時点(L字波形の終端部)を起算点(時間間隔の始点)としている。
【0156】
[駆動波形]
本実施形態の微小粒子分取方法によれば、例えば、
図27のタイムチャートに示すような駆動波形の印加が行われる。同図の概要は
図21と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0157】
図27Dに示すように、本実施形態においては、立上り波形部を印加する全ての期間において、傾斜部の印加時間の終了時から次の立下り波形部の印加時までの間に、一定の流れ場復帰時間Trが確保されている。この流れ場復帰時間Trは、50μsecであってもよい。また、前後の立下りタイミング同士の間の時間が短い期間Tsにおいては、傾斜部の印加時間が短くなっている。一方、前後の立下りタイミング同士の間の時間が長い期間Tlにおいては、傾斜部の印加時間が長くなっている。
【0158】
そして、このような駆動波形が得られることにより、
図27Eに示すように、立下りタイミングごとの目的粒子の取得の成否がいずれも成功(○)を示すものとなる。
【0159】
本実施形態によれば、立上り波形部の傾斜部の印加時間を流れ場復帰時間が確保されるような印加時間にすることで、復帰動作によって液体の流れ場に乱れが生じたとしても、次の微小粒子の取り込みタイミングまでに流れ場を復帰させることができる。また、本実施形態によれば、前後の立下りタイミング同士の時間間隔に応じて傾斜部の印加時間を可変とすることで、流れ場復帰時間を有効に確保することができる。この結果、次の目的粒子の取り込みを適切に行うことができる。
【0160】
さらに、本実施形態によれば、前後の立下りタイミング同士の時間間隔が長い期間において、傾斜部の印加時間を長く設定して復帰動作を一気に行うことができる。これにより、取り込み動作の反復性を確保するために必要な復帰動作を、アクチュエータ31の使用可能な電圧範囲を活用して効率的に行うことができる。
【0161】
<第4の実施の形態>
9.本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置
次に、本技術に係る微小粒子分取方法を実施可能な微小粒子分取装置の第4の実施の形態について説明する。なお、本実施形態においては、
図1に示した微小粒子分取装置の構成要素に対応するものについては、同一の符号を用いて説明する。また、
図1に示した微小粒子分取装置との相違点以外の詳細は割愛する。
【0162】
本実施形態における駆動部23は、アクチュエータ31に対して、駆動波形として、
図28に示すようなパルス波形を印加する。
【0163】
図28のパルス波形は、時系列的に順に、第1の立上り波形部、第1の平坦部、立下り波形部、第2の平坦部、第2の立上り波形部および第3の平坦部を含んでいる。
【0164】
ここで、
図29に模式的に示すように、分取流路16の連通口156の近傍の流れを詳細に見ると、主流路15側から大きな運動量を持った流れが分取流路16に流入し、分取流路16内で方向を変えて流路壁の近傍から分岐部へ流出する流れが生じる。そして、分取流路16内の流れは流路壁に拘束されるため遅くなり、連通口156への微小粒子の滞留時間が長くなる場合がある。
【0165】
図28のパルス波形は、このような微小粒子の滞留を解消するのに適している。詳細は、後述の「10.本技術に係る微小粒子分取方法」に説明を譲る。
【0166】
10.本技術に係る微小粒子分取方法
次に、微小粒子分取装置の第4の実施の形態を適用した本技術に係る微小粒子分取方法の第4の実施の形態について、パルス波形の各波形部の印加順にしたがって説明する。
【0167】
[第1の立上り波形部の印加]
駆動部23は、まず、パルス波形における第1の立上り波形部をアクチュエータ31に印加する。この印加により、アクチュエータ31は、圧力室161の内空を、これの容積を減少させる方向に変形させる(第1の内空の変形)。この変形により、圧力室161の内空には、正圧が発生する。そして、この正圧により、連通口156に滞留している微小粒子(非目的粒子)を連通口156から吐出させて、廃棄流路17側に追いやることができる。なお、第1の立上り波形部の印加時間は、滞留粒子を除去するための必要最小限の時間であることが望ましい。
【0168】
[立下り波形部の印加]
次いで、駆動部23は、アクチュエータ31に対して、パルス波形における第1の平坦部の印加の後、立下り波形部を印加する。この印加により、アクチュエータ31は、圧力室161の内空を、これの容積を増大させる方向に変形させる(第2の内空の変形)。この変形により、圧力室161の内空には、負圧が発生する。そして、この負圧により、滞留粒子の除去後に目的粒子をすみやかに圧力室161に取り込むことができる。
【0169】
[第2の平坦部の印加]
次いで、駆動部23は、アクチュエータ31に対して、第2の平坦部を印加する。この印加によって圧力室161の内空の容積は変化しないため、このときの分取流路16の流れの状態は、前述した負圧による目的粒子を含む液体の流動応答待ちの状態となる。
【0170】
[第2の立上り波形部の印加]
次いで、駆動部23は、アクチュエータ31に対して、第2の立上り波形部を印加する。この印加により、アクチュエータ31は、第2の内空の変形からの復帰動作を行う。このとき、第2の立上り波形部が傾斜状であることにより、復帰動作にともなう逆噴射流の流速を遅くすることができ、取り込み後の目的粒子の逆流を抑制することができる。
【0171】
[第3の平坦部の印加]
最後に、駆動部23は、アクチュエータ31に対して、第3の平坦部を印加する。この印加によって圧力室161の内空の容積は変化しないため、このときの分取流路16の流れの状態は、流れ場復帰待ちの状態となる。
【0172】
本実施形態によれば、連通口156の滞留粒子を短時間でフラッシュさせた後に目的粒子をすみやかに取り込むことができるので、目的粒子の純度を、取得効率を犠牲にすることなく向上させることができる。
【0173】
本技術に係る微小粒子分取方法は以下のような構成をとることもできる。
(1)主流路を通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する分岐流路内に負圧を発生させることにより、該分岐流路における前記液体の流れ方向に対する垂直断面が他の部分よりも大きく形成された一部の領域内へ取り込む手順を含む、微小粒子分取方法。
(2)前記手順において、アクチュエータにより前記分岐流路の内空を変形させる力を印加して前記負圧を発生させ、該内空の容積を増大させる上記(1)記載の微小粒子分取方法。
(3)前記手順において、前記アクチュエータによる前記容積の増大量を、前記主流路への連通口から前記領域までの間の前記分岐流路の容積よりも大きくする上記(2)記載の微小粒子分取方法。
(4)前記手順において、前記微小粒子を含む前記液体を、前記領域内に噴流として流入させる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
(5)前記手順において、前記アクチュエータにパルス波形、ステップ波形又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形を印加する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
(6)前記パルス波形の印加を、立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御する上記(5)記載の微小粒子分取方法。
(7)前記分岐流路は、前記微小粒子が取り込まれる分取流路であり、前記立下り波形部の印加は、前記微小粒子が前記分取流路における前記主流路との連通口に到達するタイミングで行う上記(6)記載の微小粒子分取方法。
(8)前記立上り波形部の印加は、前記タイミングから次の前記微小粒子が前記連通口に到達するまでの所要時間が所定時間以上の場合に行う上記(7)記載の微小粒子分取方法。
(9)前記立上り波形部の印加時間は固定されており、前記所定時間は、該印加時間よりも長い時間である上記(8)記載の微小粒子分取方法。
(10)前記立上り波形部の印加時間は、該印加時間の終了時から次の前記立下り波形部の印加時までの間に前記液体の流れが前記パルス波形の印加前の状態に戻るための時間が確保されるような印加時間である上記(7)記載の微小粒子分取方法。
(11)前記印加時間は、変更可能である上記(10)記載の微小粒子分取方法。
(12)前記駆動波形は、前記アクチュエータに第1の前記内空の変形を行わせて正圧を発生させるための立上り波形部と、前記アクチュエータに前記第1の内空の変形後に第2の前記内空の変形を行わせて負圧を発生させるための立下り波形部とを含む上記(5)記載の微小粒子分取方法。
(13)前記駆動波形は、傾斜状の立上り波形部を含む上記(6)〜(12)のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
(14)前記手順において、前記アクチュエータにより前記領域の内空を変形させる力を印加して前記負圧を発生させ、前記分岐流路内の内空の合計容積を増大させる上記(2)〜(13)のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
(15)前記主流路及び前記分岐流路がマイクロチップの内部に形成されており、前記アクチュエータは、前記マイクロチップの表面の前記領域に対応する位置に接触して配置されている上記(2)〜(14)のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
【0174】
また、本技術は、以下のような微小粒子分取装置の構成をとることもできる。
(16)微小粒子を含む液体が流通する主流路と、
該主流路に連通する分岐流路と、
該分岐流路内に負圧を発生させることにより、前記液体中の微小粒子を、前記分岐流路における前記液体の流れ方向に対する垂直断面が他の部分よりも大きく形成された一部の領域内へ取り込むアクチュエータと、
を有する微小粒子分取装置。
(17)前記アクチュエータは、前記分岐流路の内空を変形させる力を印加して前記負圧を発生させ、該内空の容積を増大させる上記(16)記載の微小粒子分取装置。
(18)前記アクチュエータは、前記容積の増大量を、前記主流路への連通口から前記領域までの間の前記分岐流路の容積よりも大きくする上記(17)記載の微小粒子分取装置。
(19)前記アクチュエータは、前記微小粒子を含む前記液体を、前記領域内に噴流として流入させる上記(16)〜(18)のいずれかに記載の微小粒子分取装置。
(20)前記アクチュエータにパルス波形、ステップ波形又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形を印加する駆動部を有する上記(16)〜(19)のいずれかに記載の微小粒子分取装置。
(21)前記駆動部は、前記パルス波形の印加を、立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御する上記(20)記載の微小粒子分取装置。
(22)前記分岐流路は、前記微小粒子が取り込まれる分取流路であり、前記駆動部は、前記立下り波形部の印加を、前記微小粒子が前記分取流路における前記主流路との連通口に到達するタイミングで行う上記(21)記載の微小粒子分取装置。
(23)前記駆動部は、前記立上り波形部の印加を、前記タイミングから次の前記微小粒子が前記連通口に到達するまでの所要時間が所定時間以上の場合に行う上記(22)記載の微小粒子分取装置。
(24)前記立上り波形部の印加時間は固定されており、前記所定時間は、該印加時間よりも長い時間である上記(23)記載の微小粒子分取装置。
(25)前記立上り波形部の印加時間は、該印加時間の終了時から次の前記立下り波形部の印加時までの間に前記液体の流れが前記パルス波形の印加前の状態に戻るための時間が確保されるような印加時間である上記(22)記載の微小粒子分取装置。
(26)前記印加時間は、変更可能である上記(25)記載の微小粒子分取装置。
(27)前記駆動波形は、前記アクチュエータに第1の前記内空の変形を行わせて正圧を発生させるための立上り波形部と、前記アクチュエータに前記第1の内空の変形後に第2の前記内空の変形を行わせて負圧を発生させるための立下り波形部とを含む上記(20)記載の微小粒子分取装置。
(28)前記駆動波形は、傾斜状の立上り波形部を含む上記(20)〜(27)のいずれかに記載の微小粒子分取装置。
(29)前記アクチュエータは、前記領域の内空を変形させる力を印加して前記負圧を発生させ、前記分岐流路内の内空の合計容積を増大させる上記(16)〜(28)のいずれかに記載の微小粒子分取装置。
(30)前記主流路及び前記分岐流路がマイクロチップの内部に形成されており、前記アクチュエータは、前記マイクロチップの表面の前記領域に対応する位置に接触して配置されている上記(16)〜(29)のいずれかに記載の微小粒子分取装置。