(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記診断コストと、前記漏洩検知により削減されるコストとに基づいて、前記設置間隔に対する運用コストを出力する運用コスト出力手段を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の診断コスト出力装置。
前記運用コスト出力手段は、前記漏洩検知の網羅度と、前記漏洩検知の検知精度とに基づいて、前記漏洩検知により検知される漏洩の概数を特定する、請求項6に記載の診断コスト出力装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の各実施形態について、添付の図面を参照して説明する。本発明の各実施形態において、各装置の各構成要素 は、機能単位のブロックを示している。各装置の各構成要素の一部又は全部は、例えば
図15に示すような情報処理装置500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現される。情報処理装置500は、一例として、以下のような構成を含む。
【0014】
・CPU(Central Processing Unit)501
・ROM(Read Only Memory)502
・RAM(Random Access Memory)503
・RAM503にロードされるプログラム504
・プログラム504を格納する記憶装置505
・記録媒体506の読み書きを行うドライブ装置507
・通信ネットワーク509と接続する通信インターフェース508
・データの入出力を行う入出力インターフェース510
・各構成要素を接続するバス511
各実施形態における各装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム504をCPU501が取得して実行することで実現される。各装置の各構成要素の機能を実現するプログラム504は、例えば、予め記憶装置505やRAM503に格納されており、必要に応じてCPU501が読み出す。なお、プログラム504は、通信ネットワーク509を介してCPU501に供給されてもよいし、予め記録媒体506に格納されており、ドライブ装置507が当該プログラムを読み出してCPU501に供給してもよい。
【0015】
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、各装置は、構成要素毎にそれぞれ別個の情報処理装置500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、各装置が備える複数の構成要素が、一つの情報処理装置500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
【0016】
また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、プロセッサ等を含む汎用または専用の回路や、これらの組み合わせによって実現される。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0017】
各装置の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0018】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における診断コスト
出力装置を示す図である。
【0019】
図1に示すとおり、本発明の第1の実施形態における診断コスト出力装置100は、少なくとも、検知性能特定部110と、出力部120とを有する。検知性能特定部110は、配管の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報に基づいて、センサの設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定する。出力部120は、センサの設置コストと前記計測時間での漏洩検知により発生する計測コストとに基づいて、設置間隔に対する診断コストを出力する。
【0020】
また、診断コスト出力装置100は、
図1に示す記憶部150を備えてもよい。記憶部150は、少なくとも、設置コスト及び計測コストに関連する情報を記憶する。設置コスト及び計測コストに関連する情報に関する情報の詳細は後述する。診断コスト出力装置100は、記憶部150と併せて、又は記憶部150に代えて、設置コスト及び計測コストに関連する情報に関する情報を取得する取得部(不図示)を備えてもよい。
【0021】
本実施形態における診断コスト出力装置100は、配管に取り付けられるセンサ等の計測機器を用いて、配管からの漏洩の有無等を含む配管の劣化に関する診断(以下「劣化診断」とする)が行われる場合に関する診断コストを求める。まず、配管の劣化診断に用いられる診断装置の例について説明する。
【0022】
図2は、診断コスト出力装置100による診断コストの出力の対象となる診断装置10の一例を示す。診断装置10は、配管に取り付けられる計測器11等の計測機器を用いて、配管からの漏洩の有無等の判定を含む配管の劣化診断を行う。すなわち、診断装置10は、複数の計測器11による計測の結果に基づいて、配管からの漏洩の有無等を含む配管の状態を診断する。複数の計測器11の各々は、配管1や配管1の内部の流体を伝搬する振動を検知する。計測器11は、漏洩に起因する振動を検知可能な周波数特性や感度を有していればよく、種類は問わない。計測器11として、例えば、振動センサ、水圧センサ又はハイドロフォン等が用いられる。
【0023】
図2においては、一例として2つの計測器11が示されている。以下、2つの計測器11の間の距離Lを「設置間隔」と称する。なお、診断装置10によって用いられる計測器11の数は特に制限されない。診断装置10による診断の対象となる配管1の長さに応じて、必要な数の計測器11が適宜用いられる。
【0024】
計測器11は、配管1が埋設されている場合には、例えば、外部から容易にアクセスが可能である消火栓や止水栓等の弁栓2等に取り付けられる。配管1が直に接することが可能な場所に設けられている場合等には、計測器11は、配管1の外面等に直接に取り付けられてもよい。
【0025】
上述のように、配管の劣化には、配管からの流体の漏洩が含まれる。配管からの流体の漏洩は、一般に、配管1に上述した漏洩孔3が生じることによって発生する。以下の各実施形態においては、主に、診断装置10が配管1からの流体の漏洩検知を劣化診断の対象とする場合を例として想定する。診断装置10は、計測器11が検知した振動の大きさが予め定められた条件を満たす(例えば、予め定められた大きさを超える)場合に、配管1に漏洩等の問題が生じていると判定する。
図2には、配管1に漏洩孔3が形成された例が示されている。
【0026】
診断装置10では、振動の大きさとして、例えば、振動の変位、速度、加速度等の大きさが用いられる。ただし、振動の大きさとして、振動に関連する他の指標が用いられてもよい。診断装置10は、振動の大きさ等に基づいて、漏洩検知とは異なる種類の劣化診断を行ってもよい。
【0027】
また、診断装置10は、流体の漏洩等を含む配管1の劣化に起因する振動(以下「漏洩振動」とする)が2つの計測器11へ到達するまでの時間差に基づいて、漏洩孔3のような劣化が生じた位置を特定する。この時間差は、2つの計測器11で計測された振動を表す波形の相関などに基づいて求められる。
【0028】
本実施形態における診断コスト出力装置100は、診断装置10による配管1の漏洩検知等の劣化診断が行われる場合に必要となる費用を、診断コストとして求める。本実施形態における診断コスト出力装置100は、主に、計測器11の設置に要する費用、及び診断装置10による劣化診断を行う際に必要となる費用の和を診断コストとして求める。つまり、診断コストには、計測器11の設置に要する費用及び診断装置10による劣化診断を行う際に必要となる費用が含まれる。なお、計測器11の設置に要する費用は、設置コストとも呼ばれる。
【0029】
計測器11の設置に要する費用には、例えば、計測器11を設置する人員の人件費や、計測器11の設置に用いられる機器の費用等が含まれる。診断装置10による劣化診断を行う際に必要となる費用には、例えば、診断装置10の運用に要する費用や、診断装置10による劣化診断を行う際に必要となる人員の人件費等が含まれる。また、上述した費用とは異なる費用が、計測器11の設置に要する費用又は診断装置10による劣化診断を行う際に必要となる費用の各々に含まれてもよい。
【0030】
以下、診断装置10による配管1の劣化診断と、診断コスト出力装置100によって求められる費用との関係について説明する。
【0031】
上述した診断装置10を用いた配管の劣化診断では、上水道網が主な対象となる。上水道網は、一般に、多数の配管1によって構成される。そのため、上水道網が診断装置10による診断の対象となる場合には、配管1の多くの範囲が網羅されるように、多数の計測器11が上水道網を構成する配管1に取り付けられる必要が生じる場合がある。
【0032】
一方で、上述した診断装置10による漏洩検知等の配管1の劣化診断が行われる場合には、診断に関連する費用が抑制されることが好ましい。そのため、診断装置10を用いて配管の劣化診断を行う際には、複数の計測器11の各々の間の設置間隔を大きくすることが考えられる。複数の計測器11の設置間隔を大きくすることで、配管の単位長さ当たりの計測器11の数が削減される。したがって、計測器11の設置に
要する費用が削減される可能性がある。
【0033】
しかしながら、配管や配管の内部を流れる流体を伝搬する漏洩振動は、漏洩が生じた地点からの距離に応じて減衰する。そのため、計測器11が設けられた位置と漏洩が生じた地点とが離れている場合には、計測器11によって検知される漏洩振動の大きさが、減衰によって上述した予め定められた条件を満たさなくなる可能性がある。例えば、漏洩振動の大きさが予め定められた大きさを超えない可能性がある。
【0034】
また、この場合には、診断装置10が計測器11によって検知された振動の分析を行う際に、漏洩振動と、配管を流体が流れることで生じる定常的な振動やその他のノイズ等との区別が困難となる可能性がある。すなわち、計測器11の設置間隔が大きくなることで、診断装置10による漏洩の有無が正しく判定されない可能性がある。また、漏洩の有無が正しく判定される場合においても、漏洩が発生した位置の特定等の診断が困難になる可能性がある。
【0035】
更に、診断装置10による漏洩の有無の判定や漏洩が発生した位置の特定等の診断が可能な場合においても、計測器11の設置間隔が大きくなることで、ノイズ等の影響が増加する。この場合には、計測器11の設置間隔が相対的に小さい場合と比較して、計測器11による計測等に長い時間を要する必要が生じる可能性がある。
【0036】
すなわち、診断装置10による診断においては、計測器11の設置間隔には、一般に、漏洩振動の適切な検知等の適切な劣化診断が可能となる上限がある。また、設置間隔が大きくなることによって、適切な劣化診断が可能であっても、計測に長い時間が必要となる場合が生じる。その結果として、診断装置10による劣化診断に必要となる費用が増加する可能性がある。言い換えると、計測器11の設置間隔を小さくすることによって、診断装置10による劣化診断に必要となる費用が削減される可能性がある。
【0037】
つまり、計測器11の設置間隔を適切に定めることで、計測器11の設置に要する費用と診断装置10による劣化診断に必要となる費用との総和の削減が可能になると想定される。
【0038】
配管を伝搬する振動の減衰と、漏洩振動が検知可能となる計測器11の設置間隔の上限との関係について、更に説明する。なお、以下の説明では、漏洩振動が検知可能となる計測器11の設置間隔の上限の距離を「検知可能距離」と称する。なお、上述した漏洩振動が検知可能となる場合は、例えば漏洩振動がノイズ等と区別し得る場合を表す。漏洩振動が検知可能となる場合は、診断装置10による劣化診断が行われることで、漏洩が生じた位置を特定できる場合であってもよい。
【0039】
配管を伝搬する振動の減衰の様子について更に説明する。配管を伝搬する振動の減衰の特性は、減衰特性と呼ばれる。減衰特性は、配管の材質や径等の配管の種類や、配管を流れる流体の種類、配管が埋設されている箇所の条件等に応じて変化する。減衰特性は、例えば実験的に求められる。また、減衰特性は、配管に関するモデルを用いて理論的に求められてもよい。減衰特性αは、一例として以下の(1)式に示す減衰モデルを用いて求められる。
【0041】
(1)式の例では、aは配管の径、hは配管の肉厚、Eは配管のヤング率、ηは配管の減衰比を表す。これらは、配管に関する特性である。なお、配管の減衰比ηは、振動の減衰の程度を示す。また、Bは流体の体積弾性係数、C
fcfは流体の音速、ωは流体を伝搬する振動の角振動数を表す。これらは、配管を流れる流体に関する特性である。つまり、上述した減衰モデルは、配管に関する特性と、配管を流れる流体に関する特性とに依存する。
【0042】
なお、減衰特性がモデルを用いて理論的に求められる場合には、減衰モデルとして、上述した(1)式と異なるモデルが用いられてもよい。また、減衰特性は、実験的な手法とモデルを用いる手法とを組み合わせて求められてもよい。
【0043】
(1)式等を用いて得られた減衰特性αを用いると、検知可能距離l
detは、例えば以下の(2)式を用いて求められる。
【0045】
(2)式の例では、αは(1)式で表される減衰特性、S
srcは漏洩が発生している地点において漏洩に起因して生じる振動の大きさを表す。N
totはノイズレベルを表す。ノイズレベルは、計測器11が検知した振動を示す信号に含まれるノイズの大きさを表す。ノイズには、例えば、漏洩振動以外の原因に起因する振動、計測器の回路雑音等の観測雑音、計測器11が計測した信号がアナログ信号からデジタル信号へ変換される際の量子化雑音等が含まれる。ノイズレベルは、例えば、計測器11が設置された環境における漏洩振動以外の振動である暗振動や、計測器11の機器雑音等を実測する等によって求められる。また、PSR
thは、漏洩が生じていると判断される場合の閾値を示す。すなわち、計測器11によって検知される振動の大きさが、PSR
thよりも大きい(又は大きさがPSR
th以上である)場合に、配管1の劣化である漏洩が生じていると判断される。また、βは定数を表し、必要に応じて値が適宜定められる。
【0046】
検知可能距離の例を、
図3等を用いて説明する。
図3は、配管の径である管径と検知可能距離との関係の一例を示す概念図である。
図3の例では、横軸は管径を示し、縦軸は(2)式等を用いて求められた検知可能距離を示す。
図3に示すように、管径が大きくなると、検知可能距離は小さくなる傾向にある。
【0047】
図3に示す管径と検知可能距離との関係は、配管の種類毎に異なる。つまり、材質や肉厚が異なる等、減衰特性αが異なる配管のそれぞれに対して、管径と検知可能距離との関係は変化する。したがって、減衰特性αが異なる配管のそれぞれに対して、
図3に示すような配管の管径と検知可能距離との関係が求められる。
図3に示すグラフでは、種類が異なる配管A及び配管Bの2つの配管に対する管径と検知可能距離との関係が求められている。
【0048】
そして、診断装置10を用いた漏洩検知等の配管1の劣化診断に際しては、計測器11の設置間隔は、上述のように、
図3に示すように計測の対象となる配管1の種類に応じて定められる検知可能距離より小さいことが必要となる。
【0049】
一方、計測器11の設置間隔が上述した検知可能距離と比較して小さい(すなわち、計測器11の間の配管1に生じた漏洩が検知可能である)場合においても、診断に要する時間は、計測器11の設置間隔に応じて変化する。つまり、計測器11の設置間隔が大きくなることで、ノイズ等の影響の軽減のため、漏洩検知に関する計測には長い時間が必要となる場合がある。診断に要する時間は、診断装置10による劣化診断を行う際に必要となる費用に関係する。
【0050】
図4は、計測器11による配管1に生じた漏洩振動の計測に要する時間(以下「計測時間」と称する)と、当該時間の計測によって計測器11が検知可能となる漏洩振動が生じた場所までの計測器11からの距離との関係を示す。
図4に示すグラフでは、横軸は、計測器11による漏洩振動の計測に要する計測時間を示す。また、
図4のグラフでは、縦軸は、計測器11が検知可能となる漏洩振動が生じた場所までの計測器11からの距離を示す。
【0051】
なお、
図4に示すグラフは、例えば、漏洩振動や、漏洩振動に類似した擬似的な振動等を実際に計測する等によって得られる。例えば、いくつかの距離又は計測時間に関して漏洩振動や漏洩振動に類似した擬似的な振動等を実際に計測し、計測に要した時間を求めることで、計測器11から漏洩が生じた場所までの特定の距離と計測時間との関係が得られる。この関係を、計測器11から漏洩が生じた場所までの複数の距離に関して得ることで、
図4に示すグラフが求められる。
【0052】
また、計測器11から漏洩が生じた場所までのいくつかの距離と計測時間との関係に基づいて近似式を求める等によって
図4に示すグラフが求められてもよい。
図4に示すグラフは、振動の減衰等に関連するモデル等に基づいて理論的に求められてもよい。
【0053】
図4に示すように、計測時間の増加に伴って、計測器11から相対的に遠い距離にある地点(すなわち、計測器11から離れた地点)で生じた漏洩振動が計測器11によって検知可能となる。ただし、計測器11から漏洩振動が生じた場所までの距離には、上限がある。すなわち、計測器11によって検知可能となるような漏洩振動が生じた場所までの計測器11からの距離は、例えば上述した検知可能距離等に応じて収束する。
【0054】
図4に示す関係によると、計測器11による計測時間を増加させた場合においても、計測器11によって検知可能となるような漏洩振動が生じた場所までの計測器11からの距離の増加の程度は小さい場合がある。言い換えると、計測器11によって検知可能となるような漏洩振動が生じた場所までの計測器11からの距離が大きくなると、必要となる計測時間は急激に増加する傾向にある。また、診断装置10による劣化診断に要する費用は、計測器11による計測時間に応じて変化する。
【0055】
すなわち、診断装置10による劣化診断に要する費用の観点では、計測器11の設置間隔が広いことは、効率的ではない場合がある。
【0056】
そこで、本実施形態における診断コスト出力装置100は、計測器11の設置に要する費用に限らず、診断装置10による劣化診断に必要となる費用に着目して、漏洩検知等の配管1の劣化診断に必要となる診断コストを求める。診断コストとして計測器11の設置に要する費用及び診断装置10による劣化診断に必要となる費用の双方が考慮されることで、診断コストが小さくなるような計測器11の設置間隔等が容易に決定可能となる。
【0057】
続いて、本実施形態における診断コスト出力装置100の各構成要素の詳細について説明する。
【0058】
検知性能特定部110は、上述のように、配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報に基づいて、計測器11の設置間隔に対する、配管1の劣化診断の一つである漏洩検知に必要な計測時間を特定する。計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間は、計測器11の設置間隔を何らかの間隔に定めた場合に必要となる計測時間である。計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間は、計測器11の検知性能に関する一つの指標である。
【0059】
上述のように、計測器11の設置間隔が変化することで、漏洩検知に必要となる計測器11の計測時間が変化する。すなわち、漏洩検知に必要となる計測器11の計測時間が変化することで、診断装置10による劣化診断に要する費用が変化する。
【0060】
そこで、検知性能特定部110は、漏洩検知等の配管1の劣化診断に必要となる費用を求めるために必要な情報として、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定する。検知性能特定部110は、予め定められた特定の設置間隔に関して漏洩検知に必要な計測時間を特定してもよい。又は、検知性能特定部110は、ある設置間隔の範囲に関して漏洩検知に必要な計測時間を特定してもよい。
【0061】
センサの設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間は、一例として、
図5のように表される。
図5に示すグラフは、横軸は計測器11の設置間隔であり、縦軸は漏洩検知に必要とされる計測時間を示す。すなわち、ある設置間隔で配管1に取り付けられた複数の計測器11に対して、
図5に示す計測時間が少なくとも必要とされる。
図5に示す例では、計測器11の設置間隔が大きくなると、必要とされる計測時間が増加することが示される。
【0062】
なお、
図5に示すグラフにおける計測器11の設置間隔は、
図4に示すグラフにおける計測器11から漏洩振動が生じた場所までの距離と対応する。すなわち、
図5に示すグラフは、
図4に示すグラフの縦軸と横軸を入れ替えたグラフに相当する。
【0063】
なお、
図5に示すグラフは、
図4に示すグラフと同様に、例えば、漏洩振動や、漏洩振動に類似した擬似的な振動等を実際に計測する等によって求められる。また、
図5に示すグラフは、実際に計測された値等に基づいて定められる近似式や、振動の減衰等に関連するモデル等に基づいて求められてもよい。
【0064】
図5に示す計測器11の設置間隔と漏洩検知に必要な計測時間との関係は、漏洩検知の対象となる配管1の振動伝搬特性等によって異なる。つまり、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間は、例えば上述した配管1の減衰特性α等に応じて変化する。そのため、検知性能特定部110は、配管の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報に基づいて、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定する。
【0065】
配管の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報には、例えば、配管1の種類、配管1の長さ、配管1が埋設された地点の周囲の環境等が含まれ
る。配管1の種類は、配管1の材質、肉厚、管径等によって定められる。また、配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報として、上述した(1)式又は(2)式にて用いられるパラメータが含まれてもよい。そして、検知性能特定部110は、これらの配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報に基づいて、例えば振動伝搬特性が異なる配管毎に、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定する。すなわち、計測時間は、例えば材質や径等が異なる配管1の種類毎に特定される。なお、以下の説明では、特定の配管1に対する振動伝搬特性に影響を及ぼす情報を、計測条件と呼ぶ場合がある。
【0066】
検知性能特定部110によって用いられる、配管の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報は、上述の条件に限られない。例えば、計測時間は、計測器11による計測が行われる時間帯に応じて変化する場合がある。一例として、昼間の時間帯は、一般に環境騒音が大きくなる傾向にある。計測器11による計測においては、環境騒音は、ノイズとして影響を及ぼす可能性がある。そのため、昼間の時間帯は、計測時間が増加する傾向にある。
【0067】
したがって、配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報には、計測器11による計測が行われる時間帯が含まれてもよい。検知性能特定部110は、計測器11による計測が行われる時間帯に応じて、漏洩検知に必要となる計測時間をそれぞれ特定してもよい。また、上述した情報と異なる情報が、必要に応じて配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報として用いられてもよい。
【0068】
検知性能特定部110は、配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報や、漏洩検知の対象となる配管に関する計測条件を指定する情報を、例えば図示しない入力手段や通信ネットワーク等を介して取得する。また、上述した(1)式又は(2)式にて用いられるパラメータ等配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報は、例えば
図1に示す記憶部150等に予め格納されてもよい。検知性能特定部110は、必要に応じてこれらの情報を記憶部150から取得して参照する。
【0069】
記憶部150は、例えば情報処理装置500の記憶装置505にて実現される。記憶部150は、有線又は無線の通信ネットワークを介して診断コスト出力装置100と接続される外部の記憶装置等によって実現されてもよい。
【0070】
検知性能特定部110は、
図5に示すグラフのような、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を様々な手法にて特定する。
【0071】
一例として、検知性能特定部110は、計測器11によって予め実測された結果を用いて、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定する。
【0072】
実測の結果は、例えば以下のように求められる。まず、特定の間隔で設置された複数の計測器11を用いて、漏洩が生じている(又は、漏洩振動に相当する擬似的な振動を加えられている)配管1を伝搬する振動の検知が、例えば上述した計測条件毎に行われる。振動の検知は、例えば計測する時間を変化させて複数回行われる。
【0073】
この場合には、計測時間が短い場合には漏洩が検知されず、計測時間が長い場合に、漏洩が検知されると想定される。そのため、例えば漏洩が検知された最小の時間が設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間となる。そして、検知性能特定部110は、上述のように求められた計測時間に基づいて、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定する。
【0074】
予め実測された結果は、例えば記憶部150に格納される。一例として、実測された結果は、計測条件毎に、設置間隔と漏洩検知に必要な計測時間との関係を示すテーブルの形式にて記憶部150に格納される。この場合には、例えば、検知性能特定部110は、指定された計測条件に応じて関連するテーブルを選択する。そして、検知性能特定部110は、当該テーブルに格納されている、計測器11の設置間隔に対して実測された計測時間を参照して、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間とする。
【0075】
また、実測された値が用いられる場合においては、計測器11の特定の設置間隔に対してのみ実測が行われている場合がある。そして、検知性能特定部110は、実測された設置間隔とは異なる他の設置間隔に対して漏洩検知に必要な計測時間を特定する必要が生じる場合がある。この場合には、検知性能特定部110は、実測された値に基づいて、実測された計測器11の設置間隔とは異なる他の設置間隔に対して漏洩検知に必要な計測時間を特定してもよい。
【0076】
例えば、計測器11の複数の設置間隔に対して漏洩検知に必要な計測時間が予め実測されている場合が想定される。この場合には、検知性能特定部110は、このように実測された結果に基づいて、計測器11の設置間隔と漏洩検知に必要な計測時間との関係を示す近似式等を生成してもよい。
【0077】
そして、検知性能特定部110は、実測された設置間隔とは異なる他の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間の特定に際して、生成された近似式等を用いてもよい。また、検知性能特定部110は、予め別途生成された近似式等を用いて、指定された計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定してもよい。
【0078】
また、計測器11の設置間隔と漏洩検知に必要な計測時間との関係を表すモデル等が利用可能である場合には、検知性能特定部110は、当該モデルを用いて計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定してもよい。この場合には、計測器11の設置間隔と漏洩検知に必要な計測時間との関係を表すモデルは、予め生成され
て記憶部150に格納されていてもよいし、必要に応じて検知性能特定部110が適宜生成してもよい。検知性能特定部110は、実測された値とモデル等との双方を組み合わせて用いて、計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間を特定してもよい。
【0079】
また、特定の計測条件に関して計測器11の設置間隔に対する漏洩検知に必要な計測時間が特定された場合が想定される。この場合には、検知性能特定部110は、当該計測条件に関して特定した結果を用いて、他の計測条件に関する計測器11の設置間隔に対する計測時間を特定してもよい。
【0080】
出力部120は、計測器11の設置コストと、検知性能特定部110によって特定された計測時間での漏洩検知により発生する計測コストとに基づいて、計測器11の設置間隔に対する診断コストを出力する。本実施形態において、診断コストは、特定の延長の配管1に対して診断装置10を用いた劣化診断が行われる際に必要となる費用を示す。計測器11の設置間隔に対する診断コストは、計測器11の設置間隔を何らかの間隔に定めた場合に発生する診断コストである。この場合に、診断コストの出力の対象となる配管1は、上水道網のように、複数の配管によって構成されてもよい。診断コストである診断装置10を用いた配管1の劣化診断が行われる際に必要となる費用には、上述した、計測器11の設置に要する費用、及び計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用が主に含まれる。
【0081】
上述のように、複数の計測器11の設置間隔が大きくなることで、必要とされる計測器11の数が削減できる可能性がある。すなわち、計測器11の設置に要する費用を削減できる可能性がある。一方、計測器11の設置間隔が広がることで、漏洩検知に長い時間が必要となる可能性がある。
【0082】
そこで、本実施形態における診断コスト出力装置100は、検知性能特定部110によって特定された計測時間を用いて、出力部120が計測器11の設置間隔に対する診断コストを出力する。詳しくは、出力部120は、計測器11の設置に要する費用と、計測器11を用いた漏洩検知等の診断の実行に必要となる費用との和が診断コストに含まれるとして、診断コストを出力する。
【0083】
出力部120によって計測器11の様々な設置間隔に対する診断コストが出力されることで、診断装置10を用いた配管の劣化診断が行われる際に必要となる診断コストの把握が可能となる。この結果として、診断コストが小さくなるような計測器11の設置間隔の把握が容易となる。
【0084】
図6は、計測器11の設置間隔に対して必要となる診断コストの関係を示す概念図である。
図6に示すグラフでは、横軸は計測器11の設置間隔を表し、縦軸は費用を表す。また、
図6に示すグラフでは、実線は、出力部120の出力となる診断コストの例を表す。点線は、計測器11の設置に要する費用を表す。破線は、計測器11を用いた配管1の劣化診断を行う際に必要となる費用を表す。
【0085】
上述のように、複数の計測器11の設置間隔が大きくなることで、配管の単位長さ当たりの計測器11の数が少なくなる。計測器11の数が少なくなることで、計測器11自体の費用や、計測器11の設置に要する費用は少なくなる。したがって、複数の計測器11の設置間隔が広がることで、計測器11の設置に要する費用は少なくなる。
図6の例においても、点線のグラフは、設置間隔の拡大に伴って費用が減ることを示している。なお、上述のように、計測器11の設置に要する費用には、例えば、計測器11を設置する人員の人件費や、計測器11の設置に用いられる機器の費用その他作業費が含まれる。
【0086】
一方で、複数の計測器11の設置間隔が大きくなることで、上述のように漏洩検知に長い時間が必要となる可能性がある。上述のように、計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用には、診断を行う人員の人件費や診断装置10又は計測器11の運用費等が含まれる。そして、漏洩検知に長い時間を要する場合には、時間に応じた人件費等が必要になる。したがって、複数の計測器11の設置間隔が大きくなることで、計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用は一般に増加する。
図6の例においても、破線のグラフは、設置間隔の拡大に伴って費用が増加することを示している。
【0087】
以下の(3)式は、診断コストに関する評価関数の一例を示す。計測器11の設置に要する費用と、計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用との和が診断コストに含まれる場合が想定される。(3)式は、計測器11の設置間隔lに対して、予め定められた長さの配管1に対する劣化診断に必要となる診断コストを示す。出力部120は、例えば(3)式に沿って診断コストを出力する。
【0089】
C
t(l)は、計測器11の設置に要する費用を表す。C
t(l)は、計測器11の1つあたりの費用と、配管1に設置される計測器11の個数とに基づいて求められる。一例として、C
t(l)は、計測器11の1つあたりの費用と、配管1に設置される計測器11の個数とを乗ずることで求められる。1つあたりの費用には、計測器11自体の費用や、計測器11の設置に要する費用等が含まれる。配管1に設置される計測器11の個数は、例えば、予め定められた長さから計測器11の設置間隔を除することで求められる。
【0090】
C
s(l)は、計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用を表す。一例として、C
s(l)は、漏洩検知に必要な単位時間当たりの費用と漏洩検知に必要な計測時間とを乗ずることで求められる。漏洩検知に必要な単位時間当たりの費用には、検知を行う人員の人件費や診断装置10又は計測器11の運用費等が含まれる。また、漏洩検知に必要な計測時間は、上述した検知性能特定部110にて特定された結果が用いられる。
【0091】
なお(3)式において、γ
1及びγ
2は、補正係数である。γ
1及びγ
2は、例えば計測器11の設置に要する費用及び計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用の各々の診断コストに対する寄与の程度に応じて適宜定められる。また、γ
1及びγ
2は、劣化診断の対象となる配管1の状況等に応じて適宜定められてもよい。
【0092】
出力部120は、計測器11の設置コストと、計測器11の設置間隔に対して必要となる計測時間での漏洩検知により発生する計測コストとに基づいて、当該設置間隔に対する診断コストを出力する。出力部120は、例えば、振動伝搬特性が異なる配管毎に診断コストを出力する。つまり、材質や径等が異なる配管1の種類毎に応じて診断コストを出力する。また、漏洩検知に必要な単位時間当たりの費用として時間帯に応じた複数の費用が定められる場合等、同じ配管1の漏洩検知に対して複数の条件が想定される場合には、また、出力部120は、複数の場合の各々に対して診断コストを出力する。
【0093】
出力部120にて用いられる情報は、検知性能特定部110にて用いられる情報と同様に、例えば記憶部150に記憶される。記憶部150に記憶される情報には、配管1の種類に関する情報、計測器11の設置に要する費用に関する情報、又は計測器11が検知した結果を用いた診断装置10による配管1の劣化診断に要する費用に関する情報等が含まれる。出力部120は、記憶部150に参照された情報を適宜取得して診断コストを出力する。
【0094】
計測器11の設置に要する費用に関する情報には、例えば、計測器11の1つ当たりの価格や、計測器11の配管1への設置に要する作業費等が含まれる。複数の種類の計測器11が用いられる場合には、各々に関する1つ当たりの価格が計測器11の設置に要する費用に関する情報に含まれる。また、計測器11の配管1への設置に要する作業費には、計測器11の種類や計測器11が設置される場所に応じた作業費が含まれる。
【0095】
診断装置10による漏洩検知等の劣化診断に要する費用に関する情報には、劣化診断に要する単位時間当たりの人件費や診断装置10の運用費等が含まれる。劣化診断に要する単位時間当たりの人件費が種々の条件に応じて異なる場合には、これらの条件に応じた当該人件費が、診断装置10による劣化診断に要する費用に関する情報に含まれてもよい。
【0096】
出力部120は、漏洩検知に関する上述した要因とは異なる様々な条件に応じて診断コストを出力してもよい。例えば、出力部120は、検知性能特定部110による計測時間の特定の際と同様に、計測器11による計測が行われる時間帯に応じて診断コストを出力してもよい。
【0097】
上述のように、計測に必要な人員の人件費は、診断が行われる時間帯に応じて変化する場合がある。夜間に診断が行われる場合の人件費は、日中に診断が行われる場合の人件費と比較して高い傾向にある。また、計測が行われる時間帯に応じて漏洩検知に必要な時間が異なる場合がある。例えば、日中に計測が行われる場合の計測に要する時間は、環境騒音が大きいことから、夜間に計測が行われる場合の計測に要する時間に比較して長い可能性がある。そこで、出力部120は、診断が行われる時間帯毎に診断コストを出力してもよい。
【0098】
計測器11による計測が行われる時間帯に応じて診断コストが出力される場合には、記憶部150には、時間帯に応じた単位時間当たりの計測器11による劣化診断に要する費用に関する情報が格納されてもよい。出力部120は、これらの情報を参照して、診断が行われる時間帯毎に診断コストを出力する。
【0099】
なお、記憶部150に記憶される情報は特に限定されない。出力部120による診断コストの出力の際に必要となる他の費用に関する情報等が記憶されてもよい。出力部120は、必要に応じて記憶部150に記憶された情報を取得して診断コストを出力する。
【0100】
また、出力部120は、上述した条件とは異なる条件に基づいて診断コストを出力してもよい。すなわち、出力部120は、計測器11の設置に要する費用及び計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用とは異なる他の要因に関する情報を用いて、これらの他の要因を考慮しつつ診断コストを出力してもよい。この場合に、他の要因は、配管1を保有する水道事業者の運営状況や、配管1に関連する他の状況等に応じて適宜定められる。
【0101】
更に、出力部120は、例えば上述した検知可能距離の範囲に含まれる計測器11の設置間隔に関して診断コストを求める。検知可能距離の範囲に含まれる設置間隔に限って出力部120が診断コストを出力することで、出力された診断コストに基づいて定められる計測器11の設置間隔は、上述した検知可能距離の範囲に含まれる。すなわち、出力部120は、診断装置10による漏洩の有無の判定が可能な範囲での診断コストを出力する。
【0102】
続いて、
図7に示すフローチャートを用いて、本発明の第1の実施形態における診断コスト出力装置100の動作の一例を説明する。
【0103】
検知性能特定部110は、配管1の振動伝搬特性に影響を及ぼす情報に基づいて、計測器11の設置間隔に対する計測時間を特定する(ステップS101)。なお、配管1に関する振動伝搬特性に影響を及ぼす情報等は、本ステップの実行に際して予め適宜取得される。
【0104】
続いて、出力部120は、計測器11の設置コストとステップS101にて特定された計測時間等での漏洩検知により発生する計測コストとに基づいて、に当該計測時間に対する診断コストを出力する(ステップS102)。出力部120は
、計測器11の設置に要する費用や、計測器11の結果を用いた診断装置10による劣化診断に必要な単位時間あたりの費用等を記憶部150から適宜取得して診断コストを出力する。
【0105】
なお、複数の計測条件等に対して診断コストの取得が必要となる場合等に、上述したステップS101及びS102の処理が適宜繰り返して実行されてもよい。
【0106】
以上のとおり、本発明の第1の実施形態における診断コスト出力装置100は、診断装置10による劣化診断に際して必要となる診断コストを出力する。
【0107】
診断コストは、診断装置10に含まれる計測器11の設置間隔に応じて変化する。計測器11の設置間隔に応じて、計測時間が変化する。計測器11の計測時間は、計測器11による計測の結果を用いた、診断装置10による漏洩検知等の配管1の劣化診断に要する費用に影響する。そこで、診断コスト出力装置100においては、検知性能特定部110は、計測器11の設置間隔に対する計測時間を特定する。そして、出力部120は、計測器11の設置に要する費用や、診断装置10による漏洩検知等の配管1の劣化診断の実行に要する費用に基づいて診断コストを出力する。
【0108】
したがって、診断コスト出力装置100は、計測器の設置に要するコストや、計測器による計測の結果を用いた配管の劣化診断の実行に要するコストが考慮された診断コストの出力を可能とする。
【0109】
診断コスト出力装置100が用いられることで、例えば計測器1
1が設置される前の段階において、診断コストの把握が可能となる。診断装置10を用いた配管1の劣化診断が行われる場合に、診断コストが小さくなるような設置間隔での計測器11の設置が可能となる。すなわち、診断コスト出力装置100は、診断装置10を用いた配管1の劣化診断が行われる場合における診断コストの低減を可能とする。
【0110】
また、診断コスト出力装置100では、検知可能距離が考慮される。したがって、診断装置10による漏洩検知が可能な範囲での診断コストの出力が可能となる。
【0111】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態における診断コスト
出力装置を示す図である。
図8に示すように、本発明の第2の実施形態における診断コスト出力装置200は、検知性能特定部110と、出力部120と、運用コスト出力部230とを備える。
【0112】
診断コスト出力装置200において、検知性能特定部110及び出力部120は、上述した第1の実施形態における診断コスト出力装置100に含まれる要素と同様の要素である。運用コスト出力部230は、診断コストと、配管1における漏洩検知によって削減されるコストに基づいて、計測器11の設置間隔に対する運用コストを出力する。本実施形態においては、運用コストは、上述した診断コストに対して、更に漏洩検知によって削減されるコストが考慮された費用を示す。
【0113】
また、
図8に示すように、診断コスト出力装置200は、記憶部250を備えてもよい。記憶部250は、第1の実施形態における記憶部150と同様の情報を記憶する。記憶部250は、また、運用コストの出力に必要となる情報を記憶する。
【0114】
第1の実施形態における診断コスト出力装置100は、診断装置10による漏洩検知等の劣化診断に必要となる費用である診断コストを出力する。すなわち、診断コスト出力装置100によって、劣化診断に際して直接的に必要となる費用が求められる。そして、様々な条件を比較する等によって、診断装置10による劣化診断に直接的に要する費用の削減が可能となる。
【0115】
一方、診断装置10によって漏洩等の配管1の劣化が存在するとの診断がなされた場合には、一般に、配管1の漏洩等が生じていると診断された箇所において修繕が行われる。その結果として、漏洩等の劣化が検出されず放置された場合と比較すると、漏洩孔の修繕等、配管1に対する修繕が行われることで、漏洩等の劣化に起因して生じるコストが削減される可能性がある。
【0116】
例えば、配管1が上水道の水道管であり、劣化によって配管1に漏洩孔3が生じている場合には、配管1の修繕が行われることで、漏洩による水の損失が抑えられる。そのため、漏洩した水の造水や配水等に要する費用が削減される。また、診断装置10による劣化診断が行われることで、漏洩等の配管1の劣化が軽微な段階で検知される場合がある。この場合には、配管1の劣化が進行した段階にて検知される場合や、劣化が更に進行して配管1に破裂等が生じた場合と比較して、配管1の修繕に要する費用の削減が可能となる場合がある。
【0117】
つまり、配管1が上水道の水道管である場合には、診断装置10によって漏洩検知等の配管1の劣化診断が行われることで、上述した場合において配管1の修繕に要する費用の削減が可能となる場合がある。
【0118】
したがって、診断装置10による劣化診断に必要となる費用の検討に際しては、上述した診断コストに限らず、当該診断によって削減され得る費用を考慮することが好ましい場合がある。言い換えると、第1の実施形態における診断コスト出力装置100にて求められる診断コストを減らすだけではなく、削減される費用を増やすことで、配管1の運用の全般に関する費用を更に削減できる可能性がある。
【0119】
そこで、本実施形態における診断コスト出力装置200は、診断装置10による劣化診断によって削減される費用を要因の一つとして、配管1の診断に要するコストを求める。なお、本実施形態においては、上述のように、診断コストに対して、更に診断装置10による漏洩検知等の劣化診断によって削減されるコストが考慮された費用を運用コストと称する。運用コストは、例えば、診断コストから診断装置10による漏洩検知等の劣化診断によって削減されるコストを差し引くことで求められる。
【0120】
以下、
図9及び
図10等を参照して、診断装置10による劣化診断によって削減される費用について説明する。
【0121】
上述のように、本実施形態では、主に、診断装置10が配管1からの流体の漏洩の有無を劣化診断の対象とする場合が例として想定される。この場合には、診断装置10による配管1の劣化診断によって削減され得る費用は、一般に、診断装置10によって検知される漏洩の数に応じて変化すると想定される。また、診断装置10によって検知される漏洩の数は、計測器11の設置間隔に関連すると想定される。最初に、計測器11の設置間隔と検知される漏洩の数との関係を説明する。
【0122】
一例として、配管1に取り付けられる計測器11の数が予め一定に定められている場合には、計測器11同士の設置間隔が広がることで、診断装置10による劣化診断の対象となる配管1の範囲が増加する。すなわち、
図9(1)の概念図に示すように、計測器11の設置間隔が広がることで、診断装置10による劣化診断の対象となる配管1の割合は高まる。すなわち、診断装置10による劣化診断の網羅度は高まる。したがって、劣化診断の網羅度の観点では、例えば上述のように計測器11の数が予め一定に定められている場合には、計測器11の設置間隔の拡大は、診断装置10によって検知される漏洩の数を増加させる要因にあると想定される。
【0123】
なお、本実施形態においては、網羅度は、診断装置10による診断の対象となりうる配管1の総延長のうち、配管1に取り付けられた計測器11によって実際に診断装置10に診断される配管1の延長の比を示す。例えば、配管1が上水道の水道管である場合には、配管1の総延長は、特定の水道事業者が管理する配管1の全ての長さに相当する。そして、配管1に取り付けられた計測器11によって実際に診断される配管1を延長の上述した長さにて除した値が網羅度となる。
【0124】
一方で、計測器11の設置間隔が大きくことで、計測器11が取り付けられた場所から離れた場所で生じた漏洩を検知する必要が生じる場合がある。上述のように、配管や配管の内部を流れる流体を伝搬する漏洩振動は、漏洩が生じた地点からの距離に応じて減衰する。そのため、計測器11と離れた箇所にて生じた漏洩振動の大きさは、計測器11に到達する段階では小さくなる可能性がある。
【0125】
この結果として、上述のように、計測器11による計測等に長い時間を要する必要が生じる可能性がある。また、計測器11の設置間隔が大きくなることで、診断装置10による漏洩の有無が正しく判定されない可能性がある。また、漏洩の有無が正しく判定される場合においても、漏洩が発生した位置の特定等の診断が困難になる可能性がある。すなわち、計測器11の設置間隔が広がることで、診断装置10による漏洩の有無の診断に関して、誤検知が増加する可能性がある。
【0126】
誤検知には、配管1に漏洩等が生じているにもかかわらず、計測器11によって検知される振動が小さい等の理由で漏洩を検知できない場合が含まれる。また、配管1に漏洩が生じていないにもかかわらず、計測器11によって検知されるノイズ等を漏洩として検知する場合等が誤検知として含まれ得る。更に、漏洩を正しく検知した場合においても、漏洩が生じた位置として特定された位置の誤差が一定の程度を超えた大きさである場合が誤検知に含まれ得る。
【0127】
図9(2)は、計測器11の設置間隔と診断装置10による検知精度との関係を示す概念図である。計測器11の設置間隔が広がることによって、診断装置による検知精度は低下する傾向にある。この結果として、診断の検知精度の観点では、計測器11の設置間隔が広がることは、診断装置10によって検知される漏洩の数を減少させる傾向にあると想定される。
【0128】
なお、本実施形態においては、検知精度は、診断装置10によって検知可能な配管1の漏洩のうち、診断装置10によって漏洩の有無及び漏洩が発生した場所(すなわち、漏洩孔3が生じた場所)が適切に診断される漏洩の比率を示す。検知精度は、一般に、計測器11から配管1において漏洩が生じた位置までの距離に応じて変化する。
【0129】
上述した網羅度及び検知精度の2つの要因を踏まえると、配管1に生じる漏洩のうち、診断装置10によって検知される漏洩の数は、網羅度と検知精度に応じて定まると想定される。例えば、配管1に生じる漏洩のうち、診断装置10によって検知される漏洩の比(以下、「検出率」とする)は、網羅度及び検知精度の積に沿うと想定される。
【0130】
そして、診断装置10によって検知されると想定される、配管1の全体における漏洩の概数は、検出率と、配管1の全体に生じる予想される漏洩の数とに基づいて定まると想定される。つまり、配管1の全体における漏洩の概数は、検出率と、配管1の全体に生じる予想される漏洩の数との積に概ね相当すると想定される。計測器11の設置間隔と配管1の全体おいて診断装置10によって検知される漏洩の概数との関係は、例えば
図9(3)のように表される。
【0131】
すなわち、計測器11の設置間隔を広げることで、計測の網羅度は上述のように高まる傾向にある。この場合には、検知精度は低下する傾向にあるが、一定程度の設置間隔までは、十分な検知精度が保たれることが想定される。すなわち、計測器11の設置間隔が広がることで、一定程度の設置間隔までは、検知される漏洩の概数は増加する傾向にあると想定される。
【0132】
一方で、一定程度の設置間隔を超えた計測器11の設置間隔においては、網羅度は高まるが、検知精度の低下に伴う影響がより顕在化すると想定される。すなわち、一定程度の設置間隔を超えた場合には、計測器11の設置間隔が広がることで、検知される漏洩の数は減少する傾向にあると想定される。
【0133】
したがって、検出率は、一般に、計測器11の特定の設置間隔において極大となり、その前後の設置間隔においては低くなる傾向にあると想定される。そして、配管1の全体おいて診断装置10によって検知されると想定される漏洩の概数と計測器11の設置間隔との関係は、例えば
図9の(3)のように表される。
図9の(3)に表されるように、診断装置10による診断によって削減される費用は、設置間隔に応じて変化する。診断装置10による診断によって削減される費用と計測器11の設置間隔との関係は、上述した検出率と計測器11の設置間隔との関係と類似した関係となる。
【0134】
診断装置10による劣化診断によって削減される費用は、診断装置10によって検知される漏洩の概数と、漏洩の原因となった漏洩孔3を修繕することによって削減される費用との積に基づいて求められる。
【0135】
診断装置10によって検知される漏洩の概数は、上述のように、計測器11の設置間隔に応じて定められる。また、漏洩孔3の一つを修繕することによって削減される費用には、例えば、漏洩の修繕によって損失が抑えられた水量に関する造水や配水等に要する費用が含まれる。漏洩孔3の一つを修繕することによって削減される費用には、バーストとも呼ばれる配管1の破裂が未然に防がれることで削減され得る費用等が含まれてもよい。これらの費用は、例えば過去の配管1からの漏洩が生じた際の実績等に基づいて算出される。
【0136】
そして、例えば漏洩孔3の一つを修繕することによって削減される費用を一定とした場合には、診断装置10による診断によって削減される費用は、
図10に示すグラフのように表される。
図10に示すグラフでは、横軸は計測器の設置間隔を表し、縦軸は診断装置10による診断によって削減される費用を表す。
図10に示すグラフの形状は、概ね
図9(3)と類似した形状となる。
【0137】
運用コスト出力部230は、運用コストの出力に際して、診断装置10による診断によって削減される費用を求める。診断装置10による診断によって削減される費用を求める際には、上述した検出率が用いられる。そのために、運用コスト出力部230は、最初に網羅度及び検知精度を求める。
【0138】
網羅度は、配管1の総延長と、配管1に取り付けられる計測器11の数に基づいて求められる。例えば、運用コスト出力部230は、配管1の総延長に対する配管1に取り付けられる計測器11の数と計測器11の設置間隔との積の比を、網羅度として求める。つまり、網羅度は、配管1の総延長のうち、計測器11による漏洩振動の検知が可能である延長を表す。
【0139】
運用コスト出力部230は、計測器11の設置間隔を変えて網羅度を求める。上述した検知可能距離に関する情報が取得可能である場合には、運用コスト出力部230は、計測器11による検知が可能な範囲での網羅度を求めてもよい。この場合には、運用コスト出力部230は、計測器11の設置間隔が検知可能距離以下の範囲となるようにして、網羅度を求める。運用コスト出力部230は、網羅度を求める際に、計測器11が取り付けられる配管1の種類等を考慮してもよい。
【0140】
また、検知精度は、配管1の種類毎に求められる減衰特性αや検知可能距離、検知可能距離に関連するパラメータ等に応じて変化する。そこで、運用コスト出力部230は、例えば減衰特性αを含む配管1の特性に関連する情報や、検知可能距離又は検知可能距離に関連するパラメータ等に基づいて検知精度を求める。
【0141】
また、運用コスト出力部230は、対象となる配管1と同種の配管における実績に基づいて、検知精度を求めてもよい。運用コスト出力部230は、対象となる配管1や配管1と同種の配管における配管において実際に検知された漏洩や誤検知の状況に関する実績値に基づいて検知精度を求める。この場合には、実績値は例えば後述する記憶部250に格納される。
【0142】
運用コスト出力部230は、これらの手法を適宜組み合わせて検知精度を求めてもよい。
【0143】
なお、上述した減衰特性αや検知可能距離、検知可能距離に関連するパラメータや実績値等の情報として、
図8に示す記憶部250等に予め格納された情報等が適宜用いられる。一例として、記憶部250には、検知精度に関連する情報が配管1の種類、検知
可能距離等に応じて表形式にて格納される。この場合には、運用コスト出力部230は、記憶部250に格納された表形式の情報のうち、対象となる配管1に応じて必要な箇所を参照して検知精度を求める。また、運用コスト出力部230は、通信ネットワーク等を介してこれらの情報を必要に応じて取得してもよい。なお、記憶部250は、第1の実施形態における記憶部150と同様に構成される。
【0144】
網羅度と検知精度が求められると、これらに基づいて検出率が求められる。運用コスト出力部230は、例えば網羅度と検知精度との積を検出率とする。そして、検出率が求められると、検出率及び配管1に実際に生じうる漏洩の数に基づいて、診断装置10によって検出される漏洩の概数が求められる。
【0145】
運用コスト出力部230は、例えば検出率と配管1に実際に生じうる漏洩の概数との積を、診断装置10によって検出される漏洩の概数とする。なお、配管1に実際に生じうる漏洩の概数は、例えば、対象となる配管1と同種の配管における実績や、対象となる配管1の経年等に基づいて予め定められる。
【0146】
また、運用コスト出力部230は、配管1の種類や経年、配管1が埋設されている地点等の条件に基づいて、任意のモデル等を用いて配管1に実際に生じうる漏洩の概数を求めてもよい。運用コスト出力部230は、網羅度や検知精度、検出率に関しても、これらに関連する要素の関係を示す任意のモデルを用いて求めてもよい。
【0147】
漏洩の概数が求められると、漏洩の概数と漏洩の原因となった漏洩孔3の一つを修繕することによって削減される費用とに基づいて、診断装置10による劣化診断によって削減される費用が求められる。例えば、運用コスト出力部230は、配管1に実際に生じうる漏洩の概数と、漏洩の原因となった漏洩孔3の一つを修繕することによって削減される費用との積を、診断装置10による劣化診断によって削減される費用とする。
【0148】
診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用が求められると、運用コスト出力部230は、運用コストを出力する。運用コスト出力部230は、出力部120が求めた診断コスト及び診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用に基づいて、運用コストを求める。例えば、運用コスト出力部230は、出力部120が求めた診断コストと、上述した診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用との差を運用コストとする。
【0149】
なお、運用コストに対して、診断コスト及び診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用の各々の寄与の程度が異なる場合がある。したがって、運用コスト出力部230は、診断コストと診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用との差を運用コストとする場合に、各々に対して係数を付与して差を求めてもよい。
【0150】
続いて、
図11に示すフローチャートを用いて、本発明の第2の実施形態における診断コスト出力装置200の動作の一例を説明する。
【0151】
最初に、検知性能特定部110は、漏洩検知に必要な計測時間を特定する(ステップS201)。続いて、出力部120は、ステップS201にて特定された計測時間等に基づいて、診断コストを出力する(ステップS202)。ステップS201及びS202の動作は、第1の実施形態における診断コスト出力装置100のステップS101及びS102における動作と同様に行われる。
【0152】
続いて、運用コスト出力部230は、診断装置10による漏洩検知等の配管1の劣化診断によって削減される費用を求める(ステップS203)。
【0153】
続いて、運用コスト出力部230は、ステップS202において求められた診断コストと、ステップS203において求められた配管1の劣化診断に起因して削減される費用とに基づいて、運用コストを出力する(ステップS204)。
【0154】
以上のとおり、本発明の第2の実施形態における診断コスト出力装置200では、運用コスト出力部230が、診断装置10による漏洩検知等の配管1の劣化診断によって削減される費用を求める。そして、運用コスト出力部230は、診断装置10による配管1の劣化診断によって削減される費用と、出力部120にて求められる診断コストに基づいて、運用コストを出力する。すなわち、診断コスト出力装置200は、診断装置10を用いた漏洩検知等の配管1の劣化診断が行われる場合において、診断コストに限らず、配管1の運用に要する費用も考慮した運用コストを出力する。
【0155】
診断コストが最小ではないような計測器11の設置間隔であっても、診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用が大きい場合には、配管1の維持に必要となる費用の全体を考慮した場合には有利になる場合がある。
【0156】
本実施形態における診断コスト出力装置200によって出力される運用コストは、診断コストに限らず、診断装置10による配管1の劣化診断によって削減される費用が考慮されたコストである。すなわち、本実施形態における診断コスト出力装置200が用いられることで、配管1の劣化診断によって削減される費用が考慮された、運用コストが小さくなるような設置間隔での計測器11の設置が可能となる。
【0157】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態における診断コスト
出力装置を示す図である。
図12に示すように、本発明の第3の実施形態における診断コスト出力装置300は、検知性能特定部110と、出力部120と、表示制御部340とを備える。検知性能特定部110及び出力部120は、上述した第1の実施形態における診断コスト出力装置100に含まれる要素と同様の要素である。すなわち、
図13に示す診断コスト出力装置300は、表示制御部340を更に備える点が上述した第1の実施形態における診断コスト出力装置100と異なる。
【0158】
また、表示制御部340は、診断コストの表示を制御する。表示制御部340は、計測条件その他の診断コストの出力に必要となる情報取得に関連する情報の表示を制御してもよい。
【0159】
本実施形態においては、診断コスト出力装置300は、
図13に示す構成であってもよい。
図13に示すように、本発明の第3の実施形態における診断コスト出力装置301は、検知性能特定部110と、出力部120と、運用コスト出力部230と、表示制御部340とを備える。検知性能特定部110及び出力部120は、上述した第1の実施形態における診断コスト出力装置100に含まれる要素と同様の要素である。運用コスト出力部230は、上述した第2の実施形態における診断コスト出力装置200に含まれる要素と同様の要素である。すなわち、
図13に示す診断コスト出力装置301は、表示制御部340を更に備える点が上述した第2の実施形態における診断コスト出力装置200と異なる。
【0160】
また、
図13に示す診断コスト出力装置301においては、表示制御部340は、上述した制御の他に、更に運用コストの表示を制御する。表示制御部340は、運用コストの出力に際して必要となる情報の取得に関連する情報の表示を制御してもよい。
【0161】
本実施形態においては、表示制御部340は、上述のように少なくとも診断コストの表示を制御する。より詳しくは、表示制御部340は、診断コスト出力装置300の各構成要素によって出力される診断コストや運用コスト等を表示するよう制御する。この場合に、表示制御部340は、例えば、診断コストや運用コスト等を示す画面の生成や、当該画面の表示装置への表示を制御する。
【0162】
表示制御部340が診断コストや運用コスト等を表示するよう制御する場合には、表示制御部340は、計測器11の特定の設置間隔に対する診断コストや運用コスト等を表示する。表示制御部340は、計測器11の複数の設置間隔の各々に関する診断コストや運用コスト等を表示するよう制御してもよい。
【0163】
また、表示制御部340は、診断コストや運用コスト等をグラフ形式にて表示するように制御してもよい。例えば、表示制御部340は、
図6に示す診断コストに関するグラフを表示するように制御してもよい。表示制御部340は、運用コストに関するグラフを表示するように制御してもよい。
【0164】
表示制御部340は、更に、診断コストや運用コストの出力に際して用いられる情報を表示するように制御してもよい。
【0165】
診断コストの出力に際して用いられる情報には、例えば、計測器11の設置に要する費用や、計測器11を用いた漏洩検知に必要となる費用が含まれる。また、これらの費用を求める際に用いられる情報が、診断コストの出力に際して用いられる情報に含まれてもよい。
【0166】
運用コストの出力に際して用いられる情報には、例えば、診断装置10による漏洩検知等の劣化診断が行われることで削減される費用が含まれる。診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用は、
図10に示すようなグラフの形式で表されてもよい。また、診断装置10による劣化診断が行われることで削減される費用を求める際に必要とされる情報が、運用コストの出力に際して用いられる情報に含まれてもよい。例えば、計測の網羅度又は検知精度に関する情報が、運用コストの出力に際して用いられる情報に含まれてもよい。これらの情報は、
図9に示すようなグラフの形式で表されてもよい。
【0167】
表示制御部340は、診断コスト等の出力の際に必要となる情報を取得する画面を表示させるように制御してもよい。より詳しくは、表示制御部340は、例えば診断コスト等の出力の際に必要となる情報を取得する画面の生成や、当該画面の表示装置への表示を制御する。診断コスト等の出力の際に必要となる情報には、例えば計測条件等を指定する情報が含まれるが、特に限定されない。例えば、計測器11の設置間隔を指定する情報が診断コスト等の出力の際に必要となる情報に含まれてもよい。
【0168】
表示制御部340によって表示するように制御された画面を介して取得された情報は、例えば記憶部150等に格納される。また、このような画面を介して情報が取得されると、診断コスト出力装置300の各構成要素は、取得した情報に基づいて、更に記憶部150等から必要な情報を参照して診断コストや運用コストを出力する。
【0169】
なお、本実施形態において、表示装置は、例えば一般的なディスプレイが想定される。ただし、表示装置の種類は特に限られず、上述した画面等に含まれる情報が表示可能であればよい。また、表示装置は、通信ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータやスマートフォン、タブレット等が備える表示装置であってもよい。
【0170】
図14は、表示制御部340によって表示装置等に表示されるように制御される画面の一例である。
図14に示す画面の例では、図の左側に、上述した計測条件を取得する情報が含まれる。計測条件を取得する情報のうち、「管径」は配管の径、「種類」は配管の種類、「単位時間当たり費用」は、漏洩検知等の配管1の劣化診断に要する単位時間当たりの費用を表す。これらは、診断コスト出力装置300の利用者によって選択されるように、プルダウン形式で表される。表示制御部340によってこのような画面が出力されることで、上述した情報が取得される。
【0171】
また、
図14に示す画面の例では、図の右側に診断コストに関する情報が表される。この例では、計測器11の設置間隔に応じた診断コストがグラフの形式にて表される。また「内訳」の欄には、計測器11の特定の設置間隔に対する診断コストの内訳が示される。「計測器設置費用」は、計測器11の設置に要する費用を表す。「計測費用」は、計測器11を用いた配管1の劣化診断を行う際に必要となる費用を表す。
【0172】
本実施形態における診断コスト出力装置300等は、
図7又は
図11等に示すフローチャートに沿って動作する。表示制御部340は、例えば、ステップS101又はS201の動作に先立って、診断コスト等の出力の際に必要となる情報を取得する画面を表示させるように制御する。また、表示制御部340は、ステップS102又はS204の動作の後に、出力された診断コストや運用コストを表示させるように制御する。
【0173】
以上のとおり、本発明の第3の実施形態における診断コスト出力装置300又は301では、表示制御部340が、診断コストや運用コスト等を表示装置に表示するよう制御する。また、表示制御部340は、必要に応じて、診断コスト等の出力の際に必要となる情報を取得する画面を表示させるように制御する。このようにすることで、診断コスト出力装置300等の利用者による、診断コストや運用コストの把握、計測条件の指定等が容易となる。
【0174】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施形態における構成は、本発明のスコープを逸脱しない限りにおいて、互いに組み合わせることが可能である。
【0175】
この出願は、2017年3月10日に出願された日本出願特願2017−45550を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。