(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準クロック生成部は、前記矩形波の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングから前記矩形波の半周期にわたって前記制御クロックを繰り返しカウントすることにより、前記基準クロックを生成する、請求項2又は3記載の受電器。
前記動作監視部は、前記検出部によって検出される電圧又は電流が所望の電圧又は電流であり、前記矩形波検出部によって検出される周期に基づいて得られる周波数と、前記基準クロックの周波数とのずれが所定値以下である場合には、前記基準クロック及び前記矩形波の位相差と、前記基準クロックと前記制御クロックとの位相又はデューティ比の差との関係が適切であるかどうかを判定し、前記関係が適切である場合に、前記通信部を介して前記送電器に送電電力の保持を要求する保持要求を送信する、請求項7記載の受電器。
前記動作監視部は、前記検出部によって検出される電圧又は電流が所望の電圧又は電流ではなく、前記検出部によって検出される電圧又は電流が周期的に変化しない場合には、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチをオフにした状態において、受電電力が不足しているかどうかを判定し、受電電力が不足している場合には、前記通信部を介して前記送電器に送電電力の増大を要求する増大要求を送信する、請求項6記載の受電器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の受電器、電力伝送システム、及び受電方法を適用した実施の形態について説明する。
【0011】
<実施の形態>
本発明の受電器、電力伝送システム、及び受電方法を適用した実施の形態について説明する前に、
図1乃至
図3を用いて、実施の形態の受電器、電力伝送システム、及び受電方法の前提技術について説明する。
【0012】
図1は、電力伝送システム50を示す図である。
【0013】
図1に示すように、電力伝送システム50は、交流電源1、一次側(送電側)の送電器10、及び二次側(受電側)の受電器20を含む。電力伝送システム50は、送電器10及び受電器20を複数含んでもよい。
【0014】
送電器10は、一次側コイル11と一次側共振コイル12を有する。受電器20は、二次側共振コイル21と二次側コイル22を有する。二次側コイル22には負荷装置30が接続される。
【0015】
図1に示すように、送電器10及び受電器20は、一次側共振コイル(LC共振器)12と二次側共振コイル(LC共振器)21の間の磁界共鳴(磁界共振)により、送電器10から受電器20へエネルギー(電力)の伝送を行う。ここで、一次側共振コイル12から二次側共振コイル21への電力伝送は、磁界共鳴だけでなく電界共鳴(電界共振)等も可能であるが、以下の説明では、主として磁界共鳴を例として説明する。
【0016】
また、実施の形態では、一例として、交流電源1が出力する交流電圧の周波数が6.78MHzであり、一次側共振コイル12と二次側共振コイル21の共振周波数が6.78MHzである場合について説明する。
【0017】
なお、一次側コイル11から一次側共振コイル12への電力伝送は電磁誘導を利用して行われ、また、二次側共振コイル21から二次側コイル22への電力伝送も電磁誘導を利用して行われる。
【0018】
また、
図1には、電力伝送システム50が二次側コイル22を含む形態を示すが、電力伝送システム50は二次側コイル22を含まなくてもよく、この場合には、二次側共振コイル21に負荷装置30を直接的に接続すればよい。
【0019】
図2は、送電器10から電子機器40A、40Bに磁界共鳴によって電力を伝送する状態を示す図である。
【0020】
電子機器40A及び40Bは、それぞれ、タブレットコンピュータ及びスマートフォンであり、それぞれ、受電器20A、20Bを内蔵している。受電器20A及び20Bは、
図1に示す受電器20(
図1参照)から二次側コイル22を取り除いた構成を有する。すなわち、受電器20A及び20Bは、二次側共振コイル21を有する。なお、
図2では送電器10を簡略化して示すが、送電器10は交流電源1(
図1参照)に接続されている。
【0021】
図2では、電子機器40A、40Bは、送電器10から互いに等しい距離の位置に配置されており、それぞれが内蔵する受電器20A及び20Bが磁界共鳴によって送電器10から非接触の状態で同時に電力を受電している。
【0022】
ここで一例として、
図2に示す状態において、電子機器40Aに内蔵される受電器20Aの受電効率が40%、電子機器40Bに内蔵される受電器20Bの受電効率が40%であることとする。
【0023】
受電器20A及び20Bの受電効率は、交流電源1に接続される一次側コイル11から伝送される電力に対する、受電器20A及び20Bの二次側コイル22が受電する電力の比率で表される。なお、送電器10が一次側コイル11を含まずに交流電源1に一次側共振コイル12が直接的に接続されている場合は、一次側コイル11から伝送される電力の代わりに、一次側共振コイル12から伝送される電力を用いて受電電力を求めればよい。また、受電器20A及び20Bが二次側コイル22を含まない場合は、二次側コイル22が受電する電力の代わりに二次側共振コイル21が受電する電力を用いて受電電力を求めればよい。
【0024】
受電器20A及び20Bの受電効率は、送電器10と受電器20A及び20Bのコイル仕様や各々との間の距離・姿勢によって決まる。
図2では、受電器20A及び20Bの構成は同一であり、送電器10から互いに等しい距離・姿勢の位置に配置されているため、受電器20A及び20Bの受電効率は互いに等しく、一例として、40%である。
【0025】
また、電子機器40Aの定格出力は10W、電子機器40Bの定格出力は5Wであることとする。
【0026】
このような場合には、送電器10の一次側共振コイル12(
図1参照)から伝送される電力は、18.75Wになる。18.75Wは、(10W+5W)/(40%+40%)で求まる。
【0027】
ところで、送電器10から18.75Wの電力を電子機器40A及び40Bに向けて伝送すると、受電器20A及び20Bは、合計で15Wの電力を受信することになり、受電器20A及び20Bは、均等に電力を受電するため、それぞれが7.5Wの電力を受電することになる。
【0028】
この結果、電子機器40Aは、電力が2.5W不足し、電子機器40Bは、電力が2.5W余ることになる。
【0029】
すなわち、送電器10から18.75Wの電力を電子機器40A及び40Bに伝送しても、電子機器40A及び40Bがバランスよく受電することはできない。換言すれば、電子機器40A及び40Bが同時に受電する際における電力の供給バランスがよくない。
【0030】
図3は、送電器10から電子機器40B1、40B2に磁界共鳴によって電力を伝送する状態を示す図である。
【0031】
電子機器40B1、40B2は、同じタイプのスマートフォンであり、それぞれ、受電器20B1、20B2を内蔵している。受電器20B1及び20B2は、
図2に示す受電器20Bと等しい。すなわち、受電器20B1及び20B2は、二次側共振コイル21を有する。なお、
図3では送電器10を簡略化して示すが、送電器10は交流電源1(
図1参照)に接続されている。
【0032】
図3では、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)は等しいが、電子機器40B1は、電子機器40B2よりも送電器10から遠い位置に配置されている。電子機器40B1、40B2がそれぞれ内蔵する受電器20B1及び20B2は、磁界共鳴によって送電器10から非接触の状態で電力を同時に受電している。
【0033】
ここで一例として、
図3に示す状態において、電子機器40B1に内蔵される受電器20B1の受電効率が35%、電子機器40B2に内蔵される受電器20B2の受電効率が45%であることとする。
【0034】
ここでは、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)は等しいため、受電器20B1及び20B2の受電効率は、受電器20B1及び20B2の各々と送電器10との間の距離によって決まる。このため、
図3では、受電器20B1の受電効率は、受電器20B2の受電効率よりも低い。なお、電子機器40B1及び40B2の定格出力は、ともに5Wである。
【0035】
このような場合には、送電器10の一次側共振コイル12(
図1参照)から伝送される電力は、12.5Wになる。12.5Wは、(5W+5W)/(35%+45%)で求まる。
【0036】
ところで、送電器10から12.5Wの電力を電子機器40B1及び40B2に向けて伝送すると、受電器20B1及び20B2は、合計で10Wの電力を受信することになる。また、
図3では、受電器20B1の受電効率が35%であり、受電器20B2の受電効率が45%であるため、受電器20B1は、約4.4Wの電力を受電し、受電器20B2は、約5.6%の電力を受電することになる。
【0037】
この結果、電子機器40B1は、電力が約0.6W不足し、電子機器40B2は、電力が0.6W余ることになる。
【0038】
すなわち、送電器10から12.5Wの電力を電子機器40B1及び40B2に伝送しても、電子機器40B1及び40B2がバランスよく受電することはできない。換言すれば、電子機器40B1及び40B2が同時に受電する際における電力の供給バランスがよくない(改善の余地がある)。
【0039】
なお、ここでは、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)が等しく、電子機器40B1及び40B2の送電器10からの距離が異なる場合の電力の供給バランスについて説明した。
【0040】
しかしながら、受電効率は、送電器10と受電器20B1及び20B2との間の距離と角度(姿勢)によって決まるため、
図3に示す位置関係において電子機器40B1及び40B2の角度(姿勢)が異なれば、受電器20B1及び20B2の受電効率は、上述した35%及び45%とは異なる値になる。
【0041】
また、電子機器40B1及び40B2の送電器10からの距離が等しくでも、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)が異なれば、受電器20B1及び20B2の受電効率は互いに異なる値になる。
【0042】
以上、
図2に示すように、定格出力が互いに異なる電子機器40A、40Bに、送電器10から磁界共鳴によって電力を同時に伝送する際には、電子機器40A及び40Bがバランスよく受電することは困難である。
【0043】
また、
図3に示すように、電子機器40B1及び40B2の定格出力が互いに等しくても、電子機器40B1及び40B2の送電器10に対する角度(姿勢)が異なれば、受電器20B1及び20B2の受電効率は互いに異なるため、電子機器40B1及び40B2がバランスよく受電することは困難である。
【0044】
ところで、熱による影響又はその他の影響等によって、送電器10と受電器20とで共振電力の位相及び/又は周波数がずれる場合があり、送電器10から送電される共振電力を受電器20等が効率的に受電できない場合がある。受電器20が効率的に受電するには、送電器10から送電される共振電力の位相と周波数に合わせた共振を生じさせることが好ましい。なお、これは、送電器10と受電器20A、20B、20B1、及び20B2との間においても同様である。
【0045】
次に、
図4乃至
図12を用いて、実施の形態の受電器、電力伝送システム、及び受電方法について説明する。
【0046】
図4は、実施の形態の電子機器200と送電器80を含む電力伝送システム1を示す図である。送電器80は、交流電源1と送電器10を含む。交流電源1と送電器10は、
図1に示すものと同様であるが、
図4では、より具体的な構成を示す。電子機器200は、受電器100、DC−DCコンバータ210、及びバッテリ220を含む。
【0047】
送電器10は、一次側コイル11、一次側共振コイル12、整合回路13、キャパシタ14、制御部15、及びアンテナ16を有する。
【0048】
受電器100は、二次側共振コイル110、キャパシタ115、電圧計116、初段アンプ117、二値化回路118、整流回路120、調整部130、平滑キャパシタ140、電圧計145、制御装置150、出力端子160X、160Y、アンテナ170、及びクロック生成器180を含む。出力端子160X、160Yには、DC−DCコンバータ210が接続されており、DC−DCコンバータ210の出力側にはバッテリ220が接続されている。
【0049】
まず、送電器10について説明する。
図4に示すように、一次側コイル11は、ループ状のコイルであり、両端間に整合回路13を介して交流電源1に接続されている。一次側コイル11は、一次側共振コイル12と非接触で近接して配置されており、一次側共振コイル12と電磁界結合される。一次側コイル11は、自己の中心軸が一次側共振コイル12の中心軸と一致するように配設される。中心軸を一致させるのは、一次側コイル11と一次側共振コイル12との結合強度を向上させるとともに、磁束の漏れを抑制して、不必要な電磁界が一次側コイル11及び一次側共振コイル12の周囲に発生することを抑制するためである。
【0050】
一次側コイル11は、交流電源1から整合回路13を経て供給される交流電力によって磁界を発生し、電磁誘導(相互誘導)により電力を一次側共振コイル12に送電する。
【0051】
図4に示すように、一次側共振コイル12は、一次側コイル11と非接触で近接して配置されて一次側コイル11と電磁界結合されている。また、一次側共振コイル12は、所定の共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、二次側共振コイル110の共振周波数と等しくなるように設定されている。一次側共振コイル12の両端の間に、共振周波数を調整するためのキャパシタ14が直列に接続される。
【0052】
一次側共振コイル12の共振周波数は、交流電源1が出力する交流電力の周波数と同一の周波数になるように設定されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量によって決まる。このため、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量は、一次側共振コイル12の共振周波数が、交流電源1から出力される交流電力の周波数と同一の周波数になるように設定されている。
【0053】
整合回路13は、一次側コイル11と交流電源1とのインピーダンス整合を取るために挿入されており、インダクタLとキャパシタCを含む。
【0054】
交流電源1は、磁界共鳴に必要な周波数の交流電力を出力する電源であり、出力電力を増幅するアンプを内蔵する。交流電源1は、例えば、数百kHzから数十MHz程度の高周波の交流電力を出力する。
【0055】
キャパシタ14は、一次側共振コイル12の両端の間に、直列に挿入される可変容量型のキャパシタである。キャパシタ14は、一次側共振コイル12の共振周波数を調整するために設けられており、静電容量は制御部15によって設定される。
【0056】
制御部15は、交流電源1の出力電圧及び出力周波数の制御、キャパシタ14の静電容量の制御等を行う。また、制御部15は、アンテナ16を通じて、受電器100とデータ通信を行う。
【0057】
以上のような送電器80は、交流電源1から一次側コイル11に供給される交流電力を磁気誘導により一次側共振コイル12に送電し、一次側共振コイル12から磁界共鳴により電力を受電器100の二次側共振コイル110に送電する。
【0058】
次に、受電器100に含まれる二次側共振コイル110について説明する。ここでは、一例として、共振周波数が6.78MHzである形態について説明する。
【0059】
二次側共振コイル110は、一次側共振コイル12と同一の共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。二次側共振コイル110は、共振コイル部111と、端子112X、112Yとを有する。ここで、共振コイル部111は、実体的には二次側共振コイル110そのものであるが、ここでは、共振コイル部111の両端に端子112X、112Yを設けたものを二次側共振コイル110として取り扱う。
【0060】
共振コイル部111には、共振周波数を調整するためのキャパシタ115が直列に挿入されている。また、キャパシタ115には、調整部130が並列に接続されている。また、共振コイル部111の両端には、端子112X、112Yが設けられている。端子112X、112Yは、整流回路120に接続されている。端子112X、112Yは、それぞれ、第1端子及び第2端子の一例である。
【0061】
二次側共振コイル110は、二次側コイルを介さずに整流回路120に接続されている。二次側共振コイル110は、調整部130によって共振が発生しうる状態にされているときには、送電器10の一次側共振コイル12から磁界共鳴によって送電される交流電力を整流回路120に出力する。
【0062】
キャパシタ115は、二次側共振コイル110の共振周波数を調整するために、共振コイル部111に直列に挿入されている。キャパシタ115は、端子115X及び115Yを有する。キャパシタ115には、調整部130が並列に接続されている。
【0063】
電圧計116は、キャパシタ115に並列に接続されており、キャパシタ115の両端子間電圧を測定する。電圧計116は、二次側共振コイル110が受電する交流電力の電圧を検出し、電圧を表す信号を初段アンプ117及び二値化回路118を介して制御装置150に伝送する。電圧計116で測定する交流電圧は、スイッチ131X及び131Yを駆動する駆動信号を生成するために用いられる。電圧計116は、第1検出部の一例である。なお、電圧計116の代わりに電流計を用いて、電流波形から電圧を測定してもよい。
【0064】
初段アンプ117は、電圧計116と二値化回路118との間に設けられており、電圧計116から見て、二値化回路118側の回路のアイソレーションを確保するために設けられている。電圧計116から初段アンプ117側を見ると、ハイインピーダンス(Hi−Z)の状態になっている。このような初段アンプ117を設けるのは、二次側共振コイル110の共振状態に影響を与えないようにするためである。
【0065】
二値化回路118は、初段アンプ117から入力される高周波の正弦波信号を2値化して制御装置150に出力する。二値化回路118は、高周波の正弦波信号の信号レベルを1と0に分ける閾値を有しており、高周波の正弦波信号から矩形波信号を生成して制御装置150に出力する。二値化回路118は、二値化処理部の一例である。
【0066】
二値化回路118が出力する矩形波信号の周波数は、初段アンプ117から出力される高周波の正弦波信号の周波数に等しい。すなわち、二値化回路118が出力する矩形波信号の周波数は、二次側共振コイル110の共振周波数に等しい。
【0067】
整流回路120は、4つのダイオード121〜124を有する。ダイオード121〜124は、ブリッジ状に接続されており、二次側共振コイル110から入力される電力を全波整流して出力する。
【0068】
調整部130は、二次側共振コイル110の共振コイル部111において、キャパシタ115に並列に接続されている。
【0069】
調整部130は、スイッチ131X、131Y、ダイオード132X、132Y、キャパシタ133X、133Y、及び端子134X、134Yを有する。
【0070】
スイッチ131X及び131Yは、端子134X及び134Yの間で互いに直列に接続されている。スイッチ131X及び131Yは、それぞれ、第1スイッチ及び第2スイッチの一例である。端子134X、134Yは、それぞれ、キャパシタ115の端子115X、115Yに接続されている。このため、スイッチ131X及び131Yの直列回路は、キャパシタ115に並列に接続されている。
【0071】
ダイオード132Xとキャパシタ133Xは、スイッチ131Xに並列に接続されている。ダイオード13Yとキャパシタ133Yは、スイッチ131Yに並列に接続されている。ダイオード132X及び132Yは、互いのアノード同士が接続されるとともに、互いのカソードがキャパシタ115に接続されている。すなわち、ダイオード132X及び132Yは、互いの整流方向が反対向きになるように接続されている。
【0072】
なお、ダイオード132X及び132Yは、それぞれ、第1整流素子及び第2整流素子の一例である。また、調整部130は、キャパシタ133X及び133Yを含まなくてもよい。
【0073】
スイッチ131X、ダイオード132X、及びキャパシタ133Xとしては、例えば、FET(Field Effect Transistor)を用いることができる。Pチャネル型又はNチャネル型のFETのドレイン−ソース間のボディダイオードが、ダイオード132Xのような整流方向を有するように接続すればよい。Nチャネル型のFETを用いる場合は、ソースがダイオード132Xのアノードであり、ドレインがダイオード132Xのカソードである。
【0074】
また、スイッチ131Xは、制御装置150から出力される駆動信号がゲートに入力されることにより、ドレイン−ソース間の接続状態を切り替えることによって実現される。また、キャパシタ133Xは、ドレイン−ソース間の寄生容量によって実現することができる。
【0075】
同様に、スイッチ131Y、ダイオード132Y、及びキャパシタ133Yとしては、例えば、FETを用いることができる。Pチャネル型又はNチャネル型のFETのドレイン−ソース間のボディダイオードが、ダイオード132Bのような整流方向を有するように接続すればよい。Nチャネル型のFETを用いる場合は、ソースがダイオード132Yのアノードであり、ドレインがダイオード132Yのカソードである。
【0076】
また、スイッチ131Yは、制御装置150から出力される駆動信号がゲートに入力されることにより、ドレイン−ソース間の接続状態を切り替えることによって実現される。また、キャパシタ133Yは、ドレイン−ソース間の寄生容量によって実現することができる。
【0077】
なお、スイッチ131X、ダイオード132X、及びキャパシタ133Xは、FETによって実現するものに限られず、スイッチ、ダイオード、及びキャパシタを並列に接続することによって実現してもよい。これは、スイッチ131Y、ダイオード132Y、及びキャパシタ133Yについても同様である。
【0078】
スイッチ131Xと131Yは、互いに逆位相でオン/オフが切り替えられる。スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンのときには、調整部130内では端子134Xからキャパシタ133X及びスイッチ131Yを経て端子134Yに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Xから端子115Yに共振電流が流れ得る状態になる。すなわち、
図4において、二次側共振コイル110には時計回りの方向に共振電流が流れ得る状態になる。
【0079】
また、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフのときには、調整部130内では端子134Xからスイッチ131X及びダイオード132Yを経て端子134Yに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。
【0080】
従って、スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンにされていて、二次側共振コイル110に時計回りの方向に共振電流が流れている状態から、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフの状態に切り替えられると、共振電流が生じなくなる。電流経路にキャパシタが含まれなくなるからである。
【0081】
また、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフのときには、調整部130内では端子134Yからキャパシタ133Y及びスイッチ131Xを経て端子134Xに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Yから端子115Xに共振電流が流れ得る状態になる。すなわち、
図4において、二次側共振コイル110には反時計回りの方向に共振電流が流れ得る状態になる。
【0082】
また、スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンのときには、調整部130内では端子134Yからスイッチ131Y及びダイオード132Xを経て端子134Xに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。
【0083】
従って、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフにされていて、二次側共振コイル110に反時計回りの方向に共振電流が流れている状態から、スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンの状態に切り替えられると、共振電流が生じなくなる。電流経路にキャパシタが含まれなくなるからである。
【0084】
調整部130は、上述のようにスイッチ131X及び131Yを切り替えることにより、共振電流が生じ得る状態と、共振電流が生じない状態とを切り替える。スイッチ131X及び131Yの切り替えは、制御装置150から出力される駆動信号によって行われる。
【0085】
駆動信号の周波数は、二次側共振コイル110が受電する交流周波数に設定される。
【0086】
スイッチ131X及び131Yは、上述のような高い周波数で交流電流の遮断を行う。例えば、2つのFETを組み合わせた調整部130は、高速で交流電流の遮断を行うことができる。なお、調整部130の動作については、
図5を用いて後述する。
【0087】
平滑キャパシタ140は、整流回路120の出力側に接続されており、整流回路120で全波整流された電力を平滑化して直流電力として出力する。平滑キャパシタ140の出力側には、出力端子160X、160Yが接続される。整流回路120で全波整流された電力は、交流電力の負成分を正成分に反転させてあるため、略交流電力として取り扱うことができるが、平滑キャパシタ140を用いることにより、全波整流された電力にリップルが含まれるような場合でも、安定した直流電力を得ることができる。
【0088】
なお、平滑キャパシタ140の上側の端子と出力端子160Xとを結ぶ線路は、高電圧側の線路であり、平滑キャパシタ140の下側の端子と出力端子160Yとを結ぶ線路は、低電圧側の線路である。
【0089】
電圧計145は、出力端子160Xと160Yの間に接続される。電圧計145は、制御装置150が受電器100の受電電力を計算するために用いられる。電圧計145で測定される電圧(受電電圧)と、バッテリ220の内部抵抗値Rとに基づいて受電電力を求めれば、電流を測定して受電電力を測定する場合に比べて損失が少ないため、好ましい測定方法である。しかしながら、受電器100の受電電力は、電流と電圧を測定して求めてもよい。電流を測定する場合は、ホール素子、磁気抵抗素子、検出コイル、又は抵抗器等を用いて測定すればよい。
【0090】
制御装置150は、クロック生成器180から入力される内部クロックに基づいて動作する。制御装置150には、電圧計116によって検出される交流電力の電圧、電圧計145で測定される電圧(受電電圧)、及びバッテリ220の電圧(充電電圧)を表すデータが入力される。
【0091】
制御装置150は、内部メモリにバッテリ220の定格出力を表すデータを保持する。また、送電器10の制御部15からのリクエストに応じて、送電器10から受電器100が受電する電力(受電電力)を測定し、受電電力を表すデータをアンテナ170を介して送電器10に送信する。
【0092】
また、制御装置150は、送電器10から位相差を表すデータを受信すると、受信した位相差を用いて駆動信号を生成して、スイッチ131X及び131Yを駆動する。なお、受電電力は、制御装置150が、電圧計145で測定される電圧(受電電圧)Vと、バッテリ220の内部抵抗値Rとに基づいて求めればよい。受電電力PはP=V
2/Rで求められる。
【0093】
また、制御装置150は、送電器80から受電する電力に基づいてスイッチ131X、131Yを駆動するクロックCLK1、CLK2を生成する。制御装置150の内部構成と、制御装置150がクロックCLK1、CLK2を生成するために行う制御処理との詳細については、
図6を用いて後述する
クロック生成器180は、制御装置150が動作に用いる内部クロックを生成する。クロック生成器180は、水晶発振器を内蔵する。内部クロックは、制御クロックの一例であり、クロック生成器180は、制御クロック生成部の一例である。
【0094】
DC−DCコンバータ210は、出力端子160X、160Yに接続されており、受電器100から出力される直流電力の電圧をバッテリ220の定格電圧に変換して出力する。DC−DCコンバータ210は、整流回路120の出力電圧の方がバッテリ220の定格電圧よりも高い場合は、整流回路120の出力電圧をバッテリ220の定格電圧まで降圧する。また、DC−DCコンバータ210は、整流回路120の出力電圧の方がバッテリ220の定格電圧よりも低い場合は、整流回路120の出力電圧をバッテリ220の定格電圧まで昇圧する。
【0095】
バッテリ220は、繰り返し充電が可能な二次電池であればよく、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。ここでは、受電器100を含む電子機器200がタブレットコンピュータ又はスマートフォン等であるため、バッテリ220は、タブレットコンピュータ又はスマートフォン等のメインのバッテリである。
【0096】
なお、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル110は、例えば、銅線を巻回することによって作製される。しかしながら、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル110の材質は、銅以外の金属(例えば、金、アルミニウム等)であってもよい。また、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル110の材質は異なっていてもよい。
【0097】
このような構成において、一次側コイル11及び一次側共振コイル12が電力の送電側であり、二次側共振コイル110が電力の受電側である。
【0098】
磁界共鳴方式によって、一次側共振コイル12と二次側共振コイル110との間で生じる磁界共鳴を利用して送電側から受電側に電力を伝送するため、送電側から受電側に電磁誘導で電力を伝送する電磁誘導方式よりも長距離での電力の伝送が可能である。
【0099】
磁界共鳴方式は、共振コイル同士の間の距離又は位置ずれについて、電磁誘導方式よりも自由度が高く、ポジションフリーというメリットがある。
【0100】
次に、
図5を用いて、駆動信号でスイッチ131X及び131Yを駆動したときの電流経路について説明する。
【0101】
図5は、キャパシタ115及び調整部130における電流経路を示す図である。
図5では、
図4と同様に、端子134Xからキャパシタ115又は調整部130の内部を通って端子134Yに流れる電流の向きを時計回り(CW(Clockwise))と称す。また、端子134Yからキャパシタ115又は調整部130の内部を通って端子134Xに流れる電流の向きを反時計回り(CCW(Counterclockwise))と称す。
【0102】
まず、スイッチ131Xと131Yがともにオフで電流が時計回り(CW)の場合は、端子134Xからキャパシタ133X及びダイオード132Yを経て端子134Yに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Xから端子115Yに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には時計回りの方向に共振電流が流れる。
【0103】
スイッチ131Xと131Yがともにオフで電流が反時計回り(CCW)の場合は、端子134Yからキャパシタ133Y及びダイオード132Xを経て端子134Xに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Yから端子115Xに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には反時計回りの方向に共振電流が流れる。
【0104】
スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフで、電流が時計回り(CW)の場合は、調整部130内では端子134Xからスイッチ131X及びダイオード132Yを経て端子134Yに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。従って、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。なお、この場合には、スイッチ131Yをオンにしても、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。
【0105】
スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフで、電流が反時計回り(CCW)の場合は、調整部130内では端子134Yからキャパシタ133Y及びスイッチ131Xを経て端子134Xに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Yから端子115Xに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には反時計回りの方向に共振電流が流れる。なお、スイッチ131Xと並列なダイオード132Xにも電流が流れる。
【0106】
スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンで、電流が時計回り(CW)の場合は、調整部130内では端子134Xからキャパシタ133X及びスイッチ131Yを経て端子134Yに向かう方向に共振電流が流れるとともに、キャパシタ115には端子115Xから端子115Yに共振電流が流れる。従って、二次側共振コイル110には時計回りの方向に共振電流が流れる。なお、スイッチ131Yと並列なダイオード132Yにも電流が流れる。
【0107】
スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンで、電流が反時計回り(CCW)の場合は、調整部130内では端子134Yからスイッチ131Y及びダイオード132Xを経て端子134Xに向かう電流経路が生じる。この電流経路は、キャパシタ115に並列であるため、キャパシタ115には電流が流れなくなる。従って、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。なお、この場合には、スイッチ131Xをオンにしても、二次側共振コイル110には共振電流は流れない。
【0108】
なお、共振電流の共振周波数に寄与する静電容量は、キャパシタ115と、キャパシタ132X又は132Yとによって決まる。このため、キャパシタ132Xと132Yの静電容量は等しいことが望ましい。
【0109】
受電器100は、クロックCLK1、CLK2を用いて、スイッチ131Xがオンでスイッチ131Yがオフの状態と、スイッチ131Xがオフでスイッチ131Yがオンの状態とを利用して、二次側共振コイル110に共振電流が流れる状態で受電する。
【0110】
ところで、熱による影響又はその他の影響等によって、送電器10と受電器20とで共振電力の位相及び/又は周波数がずれる場合があり、送電器10から送電される共振電力を受電器20等が効率的に受電できない場合がある。受電器20が効率的に受電するには、送電器10から送電される共振電力の位相と周波数に合わせた共振を生じさせることが好ましい。
【0111】
このように共振電力の位相及び/又は周波数がずれる具体例として、受電器20が受電する共振電力にうなりの成分が含まれる場合がある。送電器10の一次側共振コイル12に生じる共振の周波数をf
TX、受電器100の二次側共振コイル110に生じる共振の周波数をf
RXとすると、うなりの周波数fは、f=|f
TX−f
RX|である。
【0112】
シミュレーションでは、受電器100が送電器10の共振の周波数f
TXの設計値に同期してスイッチ131Xと131Yのスイッチングを行っている状態から、周波数f
TXが周波数f
RXに対して0.1%ずれると、受電器100の受電電力が大幅に減ることが分かっている。
【0113】
実施の形態では、このような受電電圧の減少を抑制するために、受電器100が受電電力に基づいてクロックCLK1、CLK2を生成するようにしている。
【0114】
次に、
図6を用いて制御装置150について説明する。
図6は、制御装置150及びクロック生成器180の内部構成を示す図である。ここでは、制御装置150がスイッチ131X、131Yの駆動に用いるクロックCLK1、CLK2を生成する処理について説明する。
【0115】
制御装置150は、平均化処理部151、基準クロック生成部152、制御部153、動作監視部154、通信部155、及びメモリ156を有する。制御装置150は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び不揮発性のメモリ等を内蔵するマイクロコンピュータである。
【0116】
平均化処理部151、基準クロック生成部152、制御部153、動作監視部154、通信部155は、制御装置150が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ156は、制御装置150のメモリを機能的に表したものである。
【0117】
クロック生成器180が生成するクロックは、平均化処理部151、基準クロック生成部152、制御部153、動作監視部154、通信部155、及びメモリ156に内部クロックとして入力される。内部クロックは、制御装置150が制御処理に利用するシステムクロック又は制御クロックの一例である。
【0118】
ここでは、まず、クロック生成器180の内部構成について説明する。クロック生成器180は、クロックジェネレータ181、水晶発振器182、及びキャパシタ183、184を有する。
【0119】
クロックジェネレータ181は、水晶発振器182の所定の周波数の発振に基づいて、内部クロックを生成する。内部クロックの周波数は、水晶発振器182の発振周波数を逓倍したものであり、一例として、二次側共振コイル110の共振周波数よりも1桁程度高い周波数である。
【0120】
水晶発振器182は、キャパシタ183、184を介して接地されており、所定の周波数で発振し、クロックジェネレータ181に入力する。
【0121】
平均化処理部151は、内部クロックを利用して二値化回路118から入力される矩形波信号を周期をカウントし、カウントした複数の周期を平均化し、平均化した周期を表すデータを基準クロック生成部152に出力する。平均化処理部151は、二値化回路118から出力される矩形波信号の立ち上がり又は立ち下がりのタイミングと周期とを検出する矩形波検出部の一例である。なお、平均化処理部151の処理の詳細については
図7を用いて後述する。
【0122】
基準クロック生成部152は、平均化処理部151によって求められた周期に基づいて、スイッチ131X、131Yの駆動に用いられるクロックCLK1、CLK2の基準になる基準クロックを生成する。基準クロック生成部152が生成する基準クロックは、制御部153に入力される。なお、基準クロック生成部152の処理の詳細については
図7を用いて後述する。
【0123】
制御部153は、電圧計145によって検出される受電電圧に基づいて、基準クロック生成部152から入力される基準クロックの位相を調整してクロックCLK1、CLK2を生成する。制御部153は、クロックCLK1、CLK2を生成する際に、受電電圧と位相とを関連付けた位相制御用のテーブルデータを参照する。位相制御用のテーブルデータは、メモリ156に格納されている。
【0124】
動作監視部154は、制御装置150の動作を監視するために、次の項目を監視する。
【0125】
動作監視部154は、電圧計145によって検出される受電電圧を監視し、受電電圧が所望の電圧値であるかどうかを判定する。所望の電圧値とは、受電器100がバッテリ220を充電するのに必要な電圧である。
【0126】
また、動作監視部154は、受電電圧が所望の電圧値よりも低い場合には、受電電圧が周期的に変化しているかどうかを判定する。矩形波信号にうなりの成分がある場合には、受電電圧が周期的に変化する。矩形波信号にうなりが生じると、受電電圧が低下する場合がある。動作監視部154は、受電電圧が低下した場合に、うなりによる低下であるかどうかを判定するために、受電電圧が周期的に変化しているかどうかを判定する。
【0127】
また、動作監視部154は、基準クロック生成部152によって生成される基準クロックと、二値化回路118から入力される矩形波信号との周波数の差を監視する。基準クロックと矩形波信号との周波数の差が所定値よりも大きくなると、共振状態で受電できなくなるからである。
【0128】
また、動作監視部154は、監視用のテーブルデータを参照し、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、制御部153がクロックCLK1、CLK2を生成する際に基準クロックに与える位相との関係が適切であるかどうかを監視する。基準クロック及び矩形波信号の位相差と、基準クロックに与えられる位相との関係が適切であるとは、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、基準クロックに与えられる位相との差が所定の許容値以下であることをいう。
【0129】
動作監視部154が上述の処理で用いる監視用のテーブルデータは、制御部153がクロックCLK1、CLK2を生成する際に基準クロックに与える位相と、基準クロック及び矩形波信号の位相差とを関連付けたテーブルデータである。監視用のテーブルデータは、メモリ156に格納されている。
【0130】
通信部155は、送電器10と無線通信を行う通信部である。通信部155は、例えば、Bluetooth(登録商標)のような近距離無線通信を行う通信装置である。
【0131】
メモリ156は、制御装置150が受電器100の制御を行うために必要なデータを格納する。メモリ156に格納されるデータには、バッテリ220の定格出力(定格容量)、内部抵抗、及び充電に必要な電力を表すデータと、位相制御用のテーブルデータと、監視用のテーブルデータとが含まれる。
【0132】
次に、
図7を用いて、平均化処理部151が矩形波信号の周期を求める処理と、基準クロック生成部152が基準クロックを生成する処理について説明する。
図7は、平均化処理部151と基準クロック生成部152が実行する処理を説明する図である。
【0133】
まず、平均化処理部151は、(A)に示す二値化回路118から入力される矩形波信号の周期を(B)に示す内部クロックを用いてカウントする。平均化処理部151は、矩形波信号の立ち上がりのタイミングでカウントを開始し、(C)に示すように次の立ち上がりまでに得られるカウント値a
kを求める。平均化処理部151は、複数の周期にわたって連続的にカウント値a
k、a
k+1、a
k+2、a
k+3・・・を求める。kは、矩形波信号の周期を求めた回数を表す値であり、周期をn回求める場合には、1からnまでの値をとる。nの値は予め所定値に決めておけばよい。
【0134】
平均化処理部151は、矩形波信号の周期S
kを次式(1)に基づいて求める。ここで、Tは内部クロックの周期を表す。
【0135】
【数1】
平均化処理部151は、次式(2)を用いて、矩形波信号の複数の周期S
k、S
k+1、S
k+2、S
k+3・・・の平均周期Sm
k、Sm
k+1、Sm
k+2・・・を求める((D)参照)。
【0136】
【数2】
平均化処理部151は、n周期にわたって平均周期Sm
kを求めるため、より多くの回数(n)にわたって矩形波信号の周期S
kを求めることにより、より精度の高い平均周期Sm
nが得られる。平均化処理部151は、n周期分の平均周期Sm
nを求めると、平均周期Sm
nを表すデータを基準クロック生成部152に出力する。
【0137】
基準クロック生成部152は、平均化処理部151から平均周期Sm
nを表すデータを入手すると、内部クロックをカウントして、平均周期Sm
nを1周期とするデューティが50%の基準クロックを生成する。
【0138】
より具体的には、基準クロック生成部152は、
図7の(E)に示すように、内部クロックをカウントし、カウント値がA
high=Sm
n/2TになるまでH(High)レベルの基準クロックを出力し((F)参照)、カウント値がA
Highになると、カウント値がA
Low=Sm
n/2TになるまでL(Low)レベルの基準クロックを出力する((F)参照)。基準クロック生成部152は、このような処理を繰り返し行うことにより、矩形波信号と等しい周期を有し、矩形波信号の立ち上がり及び立ち下がりと位相が等しい基準クロックを生成する。
【0139】
なお、基準クロック生成部152は、Sm
n/2Tが整数ではない場合には、基準クロックのHレベルの期間及びLレベルの期間を次のように設定する。
【0140】
基準クロック生成部152は、Sm
n/2Tが整数ではない場合には、CEILING(天井)関数とFLOOR(床)関数を用いて、次式(3)、(4)により基準クロックのHレベルの期間及びLレベルの期間を設定する。
【0142】
【数4】
式(3)は、カウント値A
Highが小数点以下の値を切り上げた値になり、カウント値A
Lowが小数点以下の値を切り捨てた値になる。また、式(4)は、カウント値A
Highが小数点以下の値を切り捨てた値になり、カウント値A
Lowが小数点以下の値を切り上げた値になる。
【0143】
基準クロック生成部152は、Sm
n/2Tが整数ではない場合には、基準クロックの1周期毎に式(3)と式(4)を交互に用いることによって、基準クロックを生成する。
【0144】
次に、
図8及び
図9を用いて、位相制御用のテーブルデータ及び監視用のテーブルデータについて説明する。
図8は、位相制御用のテーブルデータを示す図である。
図9は、監視用のテーブルデータを示す図である。
【0145】
図8に示すように、位相制御用のテーブルデータは、受電電圧と位相とを関連付けたデータであり、クロックCLK1、CLK2を生成する際に、基準クロックに対して付与される位相を表す。
図8では、受電電圧V1、V2、V3に対して、位相P1、P2、P3が関連付けられている。
【0146】
受電器100がバッテリ220を充電するために所望の受電電力を得るためには、受電電圧が所望の電圧であることが望ましい。受電電圧が所望の電圧よりも高い場合には、共振電力の位相に対してクロックCLK1、CLK2の位相をずらすことによって受電電圧を低下させることができる。このような制御を可能にするために、受電電圧と位相とを関連付けた位相制御用のテーブルデータを用いる。
【0147】
また、
図9に示すように、監視用のテーブルデータは、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、制御部153がクロックCLK1、CLK2を生成する際に基準クロックに与える位相とを関連付けたデータである。
図9では、位相差PD1、PD2、PD3に対して、位相P1、P2、P3が関連付けられている。
【0148】
クロックCLK1、CLK2を生成する際に基準クロックの位相をシフトさせると、基準クロックの位相のシフトに伴って矩形波信号の位相もシフトする。基準クロックの位相を遅延させたクロックCLK1、CLK2でスイッチ131X、131Yを駆動すると、矩形波信号の位相も遅延する。また、基準クロックの位相を進めたクロックCLK1、CLK2でスイッチ131X、131Yを駆動すると、矩形波信号の位相も進む。
【0149】
受電器100の動作監視部154は、監視用のテーブルデータを参照して、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、制御部153がクロックCLK1、CLK2を生成する際に基準クロックに与える位相との関係が適切であるかどうかを監視するようにしている。
【0150】
図10は、制御部153の内部構成を示す図である。
図11は、制御部153によるクロックCLK1、CLK2の生成処理を説明する図である。
【0151】
図10に示すように、制御部153は、主処理部153A、クロック生成部153B、位相決定部153C、及び反転部153Dを有する。
【0152】
主処理部153Aは、制御部153の処理を統括する判定部であり、クロック生成部153B、位相決定部153C、及び反転部153Dが行う処理以外の処理を行う。また、主処理部153Aは、電圧計145で測定される受電電圧と、バッテリ220の内部抵抗値Rとに基づいて受電電力を求める。バッテリ220の内部抵抗値Rを表すデータは、メモリ156に格納されている。なお、バッテリ220の内部抵抗値Rを表すデータをバッテリ220の充電管理を行うICから入手してもよい。
【0153】
位相決定部153Cは、受電電圧と位相とを関連付けた位相制御用のテーブルデータを参照し、電圧計145から入力される受電電圧に基づいて、クロックCLK1、CLK2に付与する位相を決定する。位相決定部153Cは、決定した位相を表すデータをクロック生成部153Bに出力する。
【0154】
クロック生成部153Bは、基準クロック生成部152から入力される基準クロックの位相を位相決定部153Cから入力される位相だけシフトさせることによって、クロックCLK1を生成し、出力する。
【0155】
より具体的には、クロック生成部153Bは、
図11の(A)に示す基準クロックの立ち上がりから内部クロックをカウントし、
図11の(B)に示すようにカウント値が位相決定部153Cによって決定された位相uになると、
図11の(C)に示すようにクロックCLK1を立ち上げる。内部クロックの周期Tを用いると、クロック生成部153Bが位相uとしてカウントするカウント値Bは、B=u/Tである。
【0156】
また、クロック生成部153Bは、所定の場合に、スイッチ131X、131Yの両方をオフ又は両方をオンにするためのクロックCLK1、CLK2を生成する。スイッチ131X、131Yの両方をオフにするクロックCLK1、CLK2は、Lレベルに固定される信号であり、スイッチ131X、131Yの両方をオンにするクロックCLK1、CLK2は、Hレベルに固定される信号である。
【0157】
反転部153Dは、クロック生成部153Bから入力されるクロックCLK1を反転してクロックCLK2を生成し、出力する。
【0158】
以上により、制御部153は、クロックCLK1、CLK2を出力する。そして、スイッチ131X、131Yは、それぞれ、クロックCLK1、CLK2によって駆動される。
【0159】
図12は、制御装置150が実行する処理を示すフローチャートである。
【0160】
制御装置150が処理をスタートさせると、制御部153は、クロックCLK1、CLK2の両方をオフにする(ステップS1)。これにより、スイッチ131X、131Yは、ともにオフにされる。
【0161】
制御部153は、電圧計145から受電電圧が入力されているかどうかを判定する(ステップS2)。制御部153は、電圧計145から受電電圧が入力されていない(S2:NO)場合は、受電電圧が入力されるまでステップS2の処理を繰り返し実行する。
【0162】
制御部153によって電圧計145から受電電圧が入力されている(S2:YES)と判定されると、平均化処理部151は、矩形波信号の周期を求める(ステップS3)。
【0163】
次いで、平均化処理部151は、平均周期を求める(ステップS4)。ステップS3〜S5のループでステップS4の処理を繰り返し行うことにより、矩形波信号の複数の周期S
k、S
k+1、S
k+2、S
k+3・・・が求められる。
【0164】
次いで、平均化処理部151は、n回の平均周期Sm
nを求めたかどうかを判定する(ステップS5)。平均化処理部151は、n回の平均周期Sm
nを求めていない(S5:NO)と判定すると、フローをステップS3にリターンする。
【0165】
平均化処理部151によってn回の平均周期を求めた(S5:YES)と判定されると、基準クロック生成部152は、平均周期Sm
nに基づいて基準クロックを生成する(ステップS6)。
【0166】
次いで、制御部153は、位相制御用のテーブルデータを参照し、受電電圧に基づいて基準クロックに付与する位相を決定する(ステップS7)。
【0167】
次いで、制御部153は、ステップS7で決定した位相を基準クロックに付与することによってクロックCLK1、CLK2を生成し、スイッチ131X、131Yに出力する(ステップS8)。
【0168】
次いで、動作監視部154は、所望の受電電圧が得られているかどうかを判定する(ステップS9)。所望の受電電圧とは、受電器100がバッテリ220を充電するのに必要な電圧である。動作監視部154は、受電器100の受電状態を監視するために、ステップS9の処理を行う。
【0169】
動作監視部154は、所望の受電電圧が得られている(S9:YES)と判定すると、基準クロック生成部152によって生成される基準クロックと、二値化回路118から入力される矩形波信号との周波数の差を監視し、当該差が所定値以下であるかどうかを判定する(ステップS10)。基準クロックと矩形波信号との周波数の差が所定値よりも大きくなると、共振状態で受電できなくなるからである。
【0170】
動作監視部154は、所定差以下である(S10:YES)と判定すると、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、制御部153がクロックCLK1、CLK2を生成する際に基準クロックに与える位相との関係を監視し、当該関係が適切であるかどうかを判定する(ステップS11)。具体的には、動作監視部154は、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、基準クロックに与えられる位相との差が所定の許容値以下であるかどうかを判定する。許容値を超えると、共振状態で受電できなくなる場合があるからである。
【0171】
動作監視部154によって関係が適切である(S11:YES)と判定されると、制御部153は、受電を終了するかどうかを判定する(ステップS12)。受電を終了するのは、例えば、受電器100のユーザが受電を終了する操作を行ったような場合である。ステップS12の処理は、制御部153の主処理部153Aが実行する。
【0172】
制御部153は、受電を終了する(S12:YES)と判定すると、一連の処理を終える(エンド)。
【0173】
また、制御部153は、受電を終了しない(S12:NO)と判定すると、フローをステップS8にリターンする。
【0174】
また、ステップS9において、動作監視部154は、所望の受電電圧が得られていない(S9:NO)と判定すると、受電電圧が周期的に変化しているかどうかを判定する(ステップS13)。うなりが発生しているかどうかを判定するためである。
【0175】
動作監視部154は、受電電圧が周期的に変化している(S13:YES)と判定すると、送電器10に現在の送電電力を維持するように通知する(ステップS14)。うなりが発生している場合には、送電器10の送電電力に問題はなく、受電器100におけるスイッチ131Xと131Yのスイッチングの位相又は周期が原因であると考えられ、矩形波信号に基づいてクロックCLK1、CLK2を生成し直すことにより、受電電力を増大させるための処理を受電器100側で行えるからである。
【0176】
制御部153は、ステップS14の処理を終えると、フローをステップS1にリターンする。ステップS1の処理からやり直してクロックCLK1、CLK2を生成し直すことにより、スイッチ131Xと131Yのスイッチングの位相及び周期を適切な値に設定するためである。
【0177】
また、動作監視部154によって受電電圧が周期的に変化していない(S13:NO)と判定されると、制御部153は、クロックCLK1、CLK2の両方をオフにする(ステップS15)。クロックCLK1、CLK2の両方をオフにして、完全な共振が生じている状態で受電電力が足りているかどうかを判定するための準備を行うためである。
【0178】
次いで、動作監視部154は、受電電力が不足しているかどうかを判定する(ステップS16)。動作監視部154は、主処理部153Aによって算出される受電電力と、メモリ156に格納されているバッテリ220の充電に必要な電力とを比較し、受電電力がバッテリ220の充電に必要な電力以上であるかどうかを判定する。
【0179】
動作監視部154は、受電電力が不足している(S16:YES)と判定すると、送電器10に送電電力を増大するように要求する(ステップS17)。受電器100側でクロックCLK1、CLK2の位相を調整しても、受電電力が増大しない状況であるため、送電電力の増大を要求することとしたものである。
【0180】
ステップS17の処理が終了すると、制御部153は、フローをステップS7に進行させる。送電電力の増大に備えて、位相を決定するためである。
【0181】
また、動作監視部154によって受電電力が不足していない(S16:NO)と判定されると、制御部153は、ステップS17をスキップして、フローをステップS7に進行させる。現在の受電電力における受電電圧に対応して位相を決定するためである。
【0182】
制御装置150は、以上のような一連の処理を繰り返し実行する。
【0183】
以上、実施の形態によれば、受電器100が矩形波信号(受電電力)に基づいてクロックCLK1、CLK2を生成するため、スイッチ131Xと131Yのスイッチングを受電電力の共振に同期させることができる。
【0184】
このため、例えば、受電電力にうなりが生じている場合のように受電電力の周波数が設計値からずれた場合でも、スイッチ131Xと131Yのスイッチングを受電電力の共振に同期させることができる。
【0185】
従って、実施の形態によれば、効率的に受電できる受電器100、電力伝送システム、及び受電方法を提供することができる。
【0186】
また、動作監視部154は、制御装置150の動作を監視するために、受電電圧が所望の電圧値であるかどうかを判定し、受電電圧が所望の電圧値よりも低い場合には、受電電圧が周期的に変化しているかどうかを判定する。そして、動作監視部154は、受電電圧が周期的に変化している場合には、送電器10に現在の送電電力を維持するように通知する。
【0187】
このため、うなりが原因で受電電力が低下している場合に、送電器10の送電電力を増大させることなく、受電器100側でスイッチ131Xと131Yのスイッチングの位相又は周期を調整して、受電電力を増大させることができる。
【0188】
また、動作監視部154は、基準クロックと矩形波信号との周波数の差を監視し、周波数の差が所定値よりも大きくなると、送電器10に現在の送電電力を維持するように通知する。
【0189】
このため、基準クロックと矩形波信号との周波数の差が増大したことが原因で受電電力が低下している場合に、送電器10の送電電力を増大させることなく、受電器100側でスイッチ131Xと131Yのスイッチングの位相又は周期を調整して、受電電力を増大させることができる。
【0190】
また、動作監視部154は、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、基準クロックに与える位相との関係が適切ではない場合には、送電器10に現在の送電電力を維持するように通知する。
【0191】
このため、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、基準クロックに与える位相との関係が適切ではないことが原因で受電電力が低下している場合に、送電器10の送電電力を増大させることなく、受電器100側でスイッチ131Xと131Yのスイッチングの位相又は周期を調整して、受電電力を増大させることができる。
【0192】
なお、以上では、受電器100の制御装置150がクロックCLK1、CLK2の位相差を調整することによって、受電電力を調整する形態について説明したが、受電電力の調整方法は、このような手法に限られるものではない。例えば、クロックCLK1、CLK2の位相差をある位相差に設定した状態で、クロックCLK1、CLK2のデューティ比を調整することによって、受電電力を調整するようにしてもよい。
【0193】
また、以上では、動作監視部154は、ステップS10において所定差以下であると判定すると、ステップS11の処理として、基準クロック及び矩形波信号の位相差と、基準クロックに与える位相との関係を監視する形態について説明したが、ステップS11の処理を行わなくてもよい。
【0194】
また、調整部130のダイオード132X及び132Yの向きは、
図4に示す向きとは反対であってもよい。
【0195】
また、以上では、電子機器200が、一例として、タブレットコンピュータ又はスマートフォン等の端末機である形態について説明したが、電子機器200は、例えば、ノート型のPC(Personal Computer)、携帯電話端末機、携帯型のゲーム機、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の充電式のバッテリを内蔵する電子機器であってもよい。
【0196】
以上、本発明の例示的な実施の形態の受電器、電力伝送システム、及び受電方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。