特許第6981483号(P6981483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981483インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981483
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20211202BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20211202BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20211202BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C09D11/322
   C09D11/36
   B41M5/00 120
   B41M5/00 112
   B41J2/01 501
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-12291(P2020-12291)
(22)【出願日】2020年1月29日
(62)【分割の表示】特願2015-31892(P2015-31892)の分割
【原出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2020-79404(P2020-79404A)
(43)【公開日】2020年5月28日
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-217525(P2014-217525)
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】小池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】伊東 淳
(72)【発明者】
【氏名】窪田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 真
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−162002(JP,A)
【文献】 特開2009−227812(JP,A)
【文献】 特開2013−104009(JP,A)
【文献】 特開2004−306441(JP,A)
【文献】 特開2010−043149(JP,A)
【文献】 特開2005−023163(JP,A)
【文献】 特開2006−257243(JP,A)
【文献】 特開2009−299005(JP,A)
【文献】 特開2014−237803(JP,A)
【文献】 特開2009−001691(JP,A)
【文献】 特開2009−242649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
C09D 11/36
B41M 5/00
B41J 2/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む溶剤と、
環状エステルと、
体積平均粒子径が100nm以上346nm以下であるピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物の合計の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上90質量%以下であり、
前記一般式(1)の化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記環状エステルがγ−ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して5質量%以上50質量%以下であり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
O−(RO)−R ・・・(1)
[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数2のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]
【請求項2】
請求項1において、
前記インクジェットインク組成物の全量に対して、1質量%以上6質量%以下の前記顔料を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記環状エステルの含有量が、
前記インクジェットインク組成物の全量に対して、5質量%以上40質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
さらに、塩化ビニル系樹脂を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項5】
塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられる、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物を用いて、塩化ビニル系記録媒体に対してインクジェット法により記録する、インクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドのノズル孔からインクの微小な液滴を吐出させ記録媒体に付着させて、画像や文字を記録するインクジェット記録装置が知られている。また、係る記録に用いるインクとして、例えば、色材、界面活性剤、水、有機溶剤等の種々の成分を含むインクジェット用インクが知られている。また、インクジェット用インク組成物においては実質的に水を含まない油性(非水系)のインク組成物の開発も行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には炭化水素系溶剤、エステル基とエーテル基とを持つ溶剤、その双方に溶解する溶剤を含むインク組成物が開示され、特許文献2には、アミド系溶剤(エーテルアミド類)が配合されたインク組成物が開示され、特許文献3には沸点の異なる3種のアルコールが配合されたインク組成物がそれぞれ開示されている。このような、非水系インク組成物は、塩化ビニル系の記録媒体への適応性が良好であり、例えば、屋外の看板等のいわゆるサイン用途の記録に用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−012432号公報
【特許文献2】特開2012−046671号公報
【特許文献3】特開2010−018730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非水系インクジェットインク組成物を、サイン用途に使用する場合には、記録物の耐候性が不十分となる場合があった。すなわち、サイン用途の記録物は、雨や日光等にさらされる屋外環境で使用されることが多く、屋内での使用よりも高い耐候性が求められている。発明者らによると、各色のインクのうちでも、オレンジインク(特色インク)の耐候性を確保することは、ガマットの広い色再現を得るために重要であることが分かってきた。
【0006】
インクジェットインク組成物の耐候性を向上させるための手段の一つとしては、耐候性の高い色材を用いることが考えられる。しかし、インクジェット記録においては、インク組成物、記録装置、記録媒体などの複数の構成のそれぞれに対して多くの性能が要求され、その上、各構成間の高度なバランスが要求される。そのため、単に色材に耐候性の高いものを選択するだけでは、インクジェットインク組成物の他の性能が不十分となることが懸念される。
【0007】
発明者らは、インクジェットインク組成物の総合的な性能を維持しつつ、耐候性を向上させるためには、少なくとも、顔料種、顔料の粒子径及び溶剤の組み合わせをバランス良く調節することが重要であることを見出し本発明を為すに至った。
【0008】
すなわち、本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、耐候性の良好な画像を形成でき、かつ、インクジェット記録における安定性、画質及び画像の耐擦性が良好なインクジェットインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために為されたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]本発明に係るインクジェットインク組成物の一態様は、
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む溶剤と、
体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む顔料と、
を含む。
O−(RO)−R ・・・(1)
[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]
【0011】
このようなインクジェットインク組成物は、耐候性が良好な画像を形成でき、かつ、安定したインクジェット記録が可能で、画質及び耐擦性の良好な画像の記録が可能である。
【0012】
[適用例2]適用例1において、
前記インクジェットインク組成物の全量に対して、1質量%以上6質量%以下の前記顔料を含んでもよい。
【0013】
[適用例3]適用例1又は適用例2において、
前記一般式(1)で表される化合物の合計の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上90質量%以下であってもよい。
【0014】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記インクジェットインク組成物の全量に対して、5質量%以上40質量%以下の環状エステルを含んでもよい。
【0015】
このようなインクジェットインク組成物は、塩化ビニル系の記録媒体に対して、より堅牢性、定着性の良好な画像を形成することができる。
【0016】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
さらに、塩化ビニル系樹脂を含んでもよい。
【0017】
このようなインクジェットインク組成物は、塩化ビニル系の記録媒体に対する定着性がさらに良好である。
【0018】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一例に記載のインクジェットインク組成物は、塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられてもよい。
【0019】
[適用例7]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、適用例1ないし適用例6のいずれか一例に記載のインクジェットインク組成物を用いて、塩化ビニル系記録媒体に対してインクジェット法により記録する。
【0020】
このようなインクジェット記録方法によれば、耐候性が良好な画像を形成でき、かつ、安定したインクジェット記録が可能で、画質及び堅牢性の良好な画像の記録が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0022】
1.インクジェットインク組成物
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤と、顔料と、を含む。本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、非水系インク組成物とすることが好ましく、なかでも、揮発性の溶剤(主に有機溶剤)を主成分とする溶剤系インク組成物とすることが好ましい。記録媒体上に付着させた後、加熱あるいは常温により溶剤を乾燥させて固形分を定着させて記録を行う非光硬化型インクとすることが好ましい。放射線(光)を照射して硬化させる光硬化型インクとしてもよいが、放射線照射を不要とする点で非光硬化型インクが好ましい。
【0023】
非水系インク組成物は、水を主要な溶媒成分とするものではなく、インクの機能や性能を奏するための機能成分としては水を含有しないインク組成物である。非水系インク組成物に対する水の含有量は5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらには水を含有しなくてもよい。溶剤系インク組成物の溶剤の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70〜98質量%である。
【0024】
1.1.溶剤
本実施形態に係るインクジェットインク組成物に含有される溶剤は、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む。
【0025】
1.1.1.式(1)で表される化合物
O−(RO)−R ・・・(1)
[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]
【0026】
ここで、炭素数1以上4以下のアルキル基としては、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基が挙げられる。また、炭素数2又は3のアルキレン基としては、エチレン基(ジメチレン)、プロピレン基(トリメチレン、又は、メチルエチレン)が挙げられる。なお、上記一般式(1)に示す化合物は、アルキレングリコールアルキルエーテルである。上記一般式(1)で表される化合物は、1種単独で含有されてもよいし、2種以上含有されてもよい。
【0027】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(64℃)(「DEGMEE」又は「MEDG」と略記することがある。)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(56℃)(「DEGdME」と略記することがある。)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(65℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(71℃)(「DEGdEE」又は「DEDG」と略記することがある。)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(105℃)(「DEGmME」と略記することがある。)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(112℃)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(101℃)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(141℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(94℃)(「
DEGBME」と略記することがある。)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(122℃)(「DEGdBE」と略記することがある。)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(108℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(117℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(139℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(156℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(113℃)(「TriEGdME」又は「DMTG」と略記することがある。)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(123℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(138℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(104℃)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(177℃)(「TetraEGmBE」又は「BTG−H」と略記することがある。)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(141℃)(「TetraEGdME」と略記することがある。)、等が挙げられる。なお、上記例示における括弧内の数値は、引火点を示す。
【0028】
本実施形態における化合物の引火点は、タグ密閉式引火点試験器による引火点が80℃以下では無い場合はクリーブランド開放式引火点試験器による引火点とし、タグ密閉式引火点試験器による引火点が80℃以下の場合は、当該引火点における溶剤の動粘度が10cSt未満の場合はタグ密閉式引火点試験器による引火点とし、当該引火点における溶剤の動粘度が10cSt以上の場合はセタ密閉式引火点試験器による引火点とする。
【0029】
インクジェットインク組成物の乾燥性をより高くすることができる観点からは、これらの化合物のうち、引火点が140℃以下の化合物を用いることが好ましい。引火点が140℃以下の化合物を用いることにより、インクジェットインク組成物の乾燥性が高まり、形成される画像における凝集ムラ(顔料の凝集等)をより生じにくくすることができる。
【0030】
また、これらの化合物は、溶剤に混合して配合されることができるが、引火点が140℃以下の化合物が配合されることがより好ましい。引火点が140℃を越える化合物のみが配合される場合には、インクジェットインク組成物の乾燥が遅くなる場合があり、インクの記録媒体上での濡れ拡がり性が高まり、形成される画像の光沢性を期待できる反面、例えば、形成される画像における凝集ムラ(顔料の凝集等)が生じてしまう場合がある。他方、引火点が140℃以下の化合物は、インクジェットインク組成物の乾燥性を向上させるため、これを配合することにより、形成される画像における凝集ムラ(顔料の凝集等)を生じにくくすることができる。そして、引火点が140℃を越える化合物と、引火点が140℃以下の化合物との配合量をバランスさせれば、形成される画像の光沢性を高くし、かつ、凝集ムラを抑制することができる。
【0031】
上記式(1)で表される化合物の、インクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、10質量%以上90質量%以下であり、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上75質量%以下、特に好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
【0032】
また、上記式(1)の化合物のうち、引火点が140℃以下の化合物のインクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、10質量%以上90質量%以下であり、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
【0033】
1.1.2.環状エステル
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として環状エステル(環状ラクトン)を含有してもよい。インクジェットインク組成物は、環状エステルが含有されることにより、記録媒体の記録面(好ましくは塩化ビニル系樹脂を含む記録面)の一部を溶解して記録媒体の内部にインクジェットインク組成物を浸透させることができる。このよう
に記録媒体の内部にインク組成物が浸透することで、記録媒体上に記録した画像の耐擦性(摩擦堅牢性)を向上させることができる。換言すると、環状エステルは、塩化ビニル系樹脂との親和性が高いため、インクジェットインク組成物の成分を記録面に浸潤させやすい(食い付かせやすい)。環状エステルがこのような作用を有する結果、これを配合したインクジェットインク組成物が、屋外環境等の厳しい条件下であっても、耐擦性に優れた画像を形成できるものと考えられる。
【0034】
環状エステルとは、ヒドロキシル基とカルボキシル基とを有する1つの分子において、当該分子内で、該ヒドロキシル基と該カルボキシル基とが脱水縮合した構造を有する化合物である。環状エステルは、炭素原子を2個以上、酸素原子を1個含む複素環を有し、当該複素環を形成する酸素原子に隣接してカルボニル基が配置された構造を有し、ラクトンと総称される化合物である。
【0035】
環状エステルのうち、単純な構造を有するものとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、σ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトンなどを例示することができる。なお、環状エステルの複素環の環員数には特に制限が無く、さらに、例えば、複素環の環員には任意の側鎖が結合していてもよい。環状エステルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0036】
本実施形態のインク組成物によって形成される画像の耐擦性をより高める観点からは、上記例示した環状エステルのうち、3員環以上7員環以下の環状エステルが好ましく、5員環または6員環の環状エステルを用いることがより好ましく、いずれの場合でも側鎖を有さないことがより好ましい。このような環状エステルの具体例としては、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、およびγ−バレロラクトンが挙げられる。またこのような環状エステルは、特に、ポリ塩化ビニルとの親和性が高いので、ポリ塩化ビニルが含有される記録媒体に付着された場合に、耐擦性を高める効果を極めて顕著に得ることができる。
【0037】
環状エステルを配合する場合における、インクジェットインク組成物の全量に対する含有量(複数種を使用する場合にはその合計量)は、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0038】
1.1.3.その他の溶剤
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、溶剤として、上記式(1)で表される化合物の他に、以下のような化合物を用いることができる。
【0039】
そのような溶剤としては、例えば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等)等が挙げられる。
【0040】
また、溶剤として、(多価)アルコール類を含有してもよい。(多価)アルコール類と
しては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールや、2−メチルペンタン−2,4−ジオールなどが挙げられる。
【0041】
インクジェットインク組成物に、(多価)アルコール類を含有させる場合の合計の含有量は、記録媒体上での濡れ拡がり性及び浸透性を向上させて濃淡むらを低減させる効果や、保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、インクジェットインク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。(多価)アルコール類の含有量が上記範囲内にあることで、インクの濡れ性、浸透性、乾燥性が良好となり、良好な印刷濃度(発色性)を備えた画像が得られる場合がある。また、(多価)アルコール類の含有量が上記範囲内にあることで、インクの粘度を適正にすることができ、ノズルの目詰まり等の発生を低減できる場合がある。
【0042】
また、インクジェットインク組成物にはアミン類を配合してもよく、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、N,N−ジエチル−2−アミノエタノール等のヒドロキシルアミンが挙げられ、1種または複数種を用いることができる。アミン類を含有させる場合の合計の含有量は、インクジェットインク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
また、溶剤として、ラウリン酸メチル、ヘキサデカン酸イソプロピル(パルミチン酸イソプロピル)、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、炭素数2〜8の脂肪族炭化水素のジカルボン酸(炭素数はカルボキシル基の炭素を除く)を炭素数1〜5のアルキル基でジエステル化した二塩基酸ジエステル、並びに、炭素数6〜10の脂肪族炭化水素のモノカルボン酸(炭素数はカルボキシル基の炭素を除く)をアミド化した(アミド窒素原子を置換している置換基がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基である)アルキルアミド(N,N−ジメチルデカンアミド等)等が挙げられる。
【0044】
ここで例示したその他の溶剤は、一種又は複数種を、インクジェットインク組成物に対して、適宜の配合量で添加することができる。
【0045】
1.2.顔料
本実施形態のインクジェットインク組成物は、顔料として、体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるC.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)を含む。
【0046】
PO−43は、CAS登録番号4424−06−0の顔料であり、化学名は、ビスベンゾイミダゾ[2,1−b:2’,1’−i]ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン−8,17−ジオン、又は、1,8−(1H−ベンゾイミダゾール−2,1−ジイルカルボニル)−5,4−(1H−ベンゾイミダゾール−2,1−ジイルカルボニル)ナフタレンである。PO−43は、ペノリン構造を有し、一般名として「ペノリンオレンジ」が与えられている。PO−43の色相としては、鮮やかな赤味のオレンジである。なお、「C.I.」は、カラーインデックスの略である。
【0047】
PO−43は、市販品を利用することができ、例えば、Clariant社の「Hos
taperm Orange」、「PV Gast Orange GRL」、DIC株式会社製「Fasogen Super Orange 6200」、東洋インキ株式会社製「Lionogen Orange GR−F」等として入手することができる。
【0048】
本実施形態のインクジェットインク組成物に含有されるPO−43の体積平均粒子径は、100nm以上400nm以下であり、好ましくは150nm以上350nm以下、より好ましくは150nm以上300nm以下、さらに好ましくは150nm以上250nm以下である。ここで顔料の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により評価することができる。具体的には、インク化した検体(顔料)を、DEGdEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル)にて1000ppm以下となるように希釈し、これをレーザー回折・散乱測定装置(例えば、マイクロトラックUPA250(日機装株式会社製))を用いて20℃の環境下で、メディアン径D50の値を読み取ることにより測定することができる。したがって、異なる体積平均粒子径を有するPO−43を混合して使用する場合においても、それぞれの体積平均粒子径及び混合物の体積平均粒子径を測定することもできる。
【0049】
体積平均粒子径の異なるPO−43を混合して使用する場合においても、各PO−43の好ましい体積平均粒子径は、100nm以上400nm以下であり、下限はより好ましくは150nm以上であり、上限はより好ましくは350nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下、一層好ましくは250nm以下である。
【0050】
本実施形態のインクジェットインク組成物は、顔料として、体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるC.I.ピグメントオレンジ−43(PO−43)を含むことにより、少なくとも耐候性、印字安定性、耐擦性を含む総合的な性能のバランスを良好にすることができる。PO−43の体積平均粒子径が100nmよりも小さいと、耐候性が悪化する場合がある。一方、PO−43の体積平均粒子径が400nmよりも大きいと、画像の光沢性が悪化する場合があり、また印字安定性が低下してノズル抜けが発生する場合がある。
【0051】
PO−43の体積平均粒子径は、市販のものが上記範囲にあればそのまま使用することができるが、以下のようにして体積平均粒子径を調節することができる。すなわち、溶剤(一部又は全部)を混合した後、ボールミル、ビーズミル、超音波破砕及び/又はジェットミル等で、係る混合物(顔料分散溶剤)を適宜に処理することにより、粒子径の分布や体積平均粒子径を調節することができる。
【0052】
また、PO−43の体積平均粒子径の調節方法としては、一次粒径として小さい顔料を用意して、これを溶剤(一部又は全部)に混合する際に、分散剤(後述)の添加量を変えて分散を行うことを採用できる。すなわち、分散剤を十分添加すれば一次粒子同士の凝集が防げられて一次粒子とあまり変わらない粒径で分散でき小さい一次粒子径に基づく体積平均粒子径とすることができ、逆に分散剤の添加量を少なくすることにより、一次粒子を凝集させて二次粒子の粒径に基づく体積平均粒子径とすることができる。なお、この場合には、出発する顔料の一次粒径は、より小さいものを用いると体積平均粒子径の調節の自由度が高まるためより好ましい。さらに、体積平均粒子径の調節の自由度を高めたい場合には、入手した顔料を一旦上記のようにボールミル等によって粉砕し、より小さなものにしてから、分散剤による平均粒子径の調節を行ってもよい。
【0053】
本実施形態のインクジェットインク組成物の全量に対する、PO−43の含有量は、1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは2質量%以上8質量%以下、より好ましくは3質量%以上7質量%以下である。
【0054】
一方、本実施形態のインクジェットインク組成物は、上述のPO−43以外の色材をさらに含有してもよい。そのような色材としては、PO−43と類似する色相の顔料及び染料が挙げられ、例えば、カラーインデックス番号で、C.I.ピグメントオレンジの番号が与えられている顔料や、C.I.ピグメントレッドの番号が与えられているものなどが挙げられる。
【0055】
1.3.その他の成分
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、さらに塩化ビニル系樹脂、界面活性剤、分散剤等、以下に説明する成分を含んでもよい。
【0056】
1.3.1.塩化ビニル系樹脂
本実施形態に係るインクジェットインク組成物に使用し得る塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体が挙げられる。塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体は、前記式(1)で示される溶媒に溶解させることができる。その結果、前記式(1)で示される溶剤に溶解した塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体により、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面にインクを強固に定着させることができる。
【0057】
塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体は、常法によって得ることができ、例えば、懸濁重合によって得ることができる。具体的には、重合器内に水と分散剤と重合開始剤を仕込み、脱気した後、塩化ビニル及び酢酸ビニルを圧入し懸濁重合を行うか、塩化ビニルの一部と酢酸ビニルを圧入して反応をスタートさせ、残りの塩化ビニルを反応中に圧入しながら懸濁重合を行うことができる。
【0058】
塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体は、その構成として、塩化ビニル単位を70〜90質量%含有することが好ましい。上記の範囲であれば、インクジェットインク組成物中に安定して溶解するため長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。
【0059】
また、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体は、塩化ビニル単位及び酢酸ビニル単位とともに必要に応じて、その他の構成単位を備えていても良く、例えば、カルボン酸単位、ビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキルアクリレート単位が挙げられ、とりわけビニルアルコール単位が好ましく挙げられる。前述の各単位に対応する単量体を用いることで得ることができる。カルボン酸単位を与える単量体の具体例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。ヒドロキシアルキルアクリレート単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。これらの単量体の含有量は本発明の効果を損なわない限り限定されないが、例えば単量体全量の15質量%以下の範囲で共重合させることができる。
【0060】
また、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合体は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソルバインCN、ソルバインCNL、ソルバインC5R、ソルバインTA5R、ソルバインCL(以上、日信化学工業社製)などが挙げられる。
【0061】
塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体の平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは150〜1100、より好ましくは200〜750である。塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体の平均重合度が上記の範囲である場合、本実施形態のインク組成物中に安定して溶解するため長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。なお、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体の平均重合度は、比粘度を測定し、これから算出されるものであり、「JISK6720−2」に記載の平均重合度算出方法に準じて求めることができる。
【0062】
また、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10000〜50000、より好ましくは12000〜42000である。なお、数平均分子量は、GPCによって測定することが可能であり、ポリスチレン換算とした相対値として求めることができる。
【0063】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物中における塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体(塩化ビニル系樹脂)の含有量は、例えば、0.05質量%以上6質量%以下、好ましくは0.5質量%以上4質量%以下とすることができる。塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体の含有量が前記範囲であると、前記一般式(1)で示される溶媒中に溶解した塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体によって、塩化ビニル系樹脂等の記録媒体に対して優れた定着性が得られる。
【0064】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物においては、塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体と前記一般式(1)で示される溶剤とを質量基準で、1:5〜1:40となる量比で含むことが好ましい。前記量比の範囲内であれば、前記一般式(1)で示される溶剤中に前記塩化ビニル及び酢酸ビニルを含む共重合体を容易に溶解させることができるので、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面へのインク定着性を向上できると共に、ノズルの目詰まりが起こりにくくなる。
【0065】
1.3.2.その他
(界面活性剤)
本実施の形態に係るインクジェットインク組成物には、前記有機溶媒の他に、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
【0066】
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0067】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0068】
また、ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0069】
本実施形態に係るインクジェットインク組成物中における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
【0070】
(分散剤)
本実施形態に係るインクジェットインク組成物は、顔料の分散安定性を向上させる観点から、通常のインク組成物において用いられる任意の分散剤を用いることができる。このような分散剤の具体例としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、
T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、Solsperse20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500(いずれもLUBRIZOL社製「ソルスパース」)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0071】
また、分散剤としては、金属石鹸、塩基性基を有する高分子分散剤等を用いることもでき、塩基性基を有する高分子分散剤が好ましい。特に、塩基性基としてアミノ基、イミノ基又はピロリドン基を有するものが好ましい。塩基性基を有する高分子分散剤として、ポリアルキレンポリアミン、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、変性ポリウレタン、ポリエステルポリアミン等を用いることができる。
【0072】
塩基性基を有する高分子分散剤の具体例としては、BYKChemie社製の「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイドリン酸塩)」、「Anti−Terra−204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイドリン酸塩と酸エステル)130(ポリアマイド)を挙げることができる。また、アビシア社製のソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルポリイミン)、17000、18000、19000(ポリエステルポリアミン)、11200(ポリエステルポリイミン)を挙げることができる。また、ISP社製のV−216、V−220(長鎖アルキル基を持ったポリビニルピロリドン)を挙げることができる。
【0073】
本実施形態に係るインク組成物において、前記分散剤を使用する場合の含有量は、含有される顔料に応じて適宜選択することができるが、インク組成物中の顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上200質量部以下、より好ましくは30質量部以上120質量部以下である。
【0074】
(その他)
本実施形態のインクジェットインク組成物は、上記の成分の他にも、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等のキレート化剤、防腐剤・防かび剤、及び防錆剤など、所定の性能を付与するための物質を含有することができる。
【0075】
1.4.作用効果
本実施の形態に係るインクジェットインク組成物は、一般式(1)の溶剤を含む溶剤インクであることにより、塩化ビニル系記録媒体などのフィルムメディアに記録した時の画質が優れるため、屋外で展示するサイン用途などに特に好適となる。屋外で展示するサイン用途などに適用した場合、本実施の形態に係るインクジェットインク組成物は、特定の体積平均粒子径を有するピグメントオレンジ−43を含有するので、画像の耐候性がとりわけ良好となる。また、インクジェット記録ヘッドからの吐出安定性を確保することができ、ノズル抜けの発生を防ぐことができる。
【0076】
2.インクジェット記録方法
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、前述したインクジェットインク組成物を用いて、塩化ビニル系記録媒体に対してインクジェット法により記録することを特徴とする。本実施の形態に係るインクジェット記録方法によれば、前述したインクジェットイ
ンク組成物を用いるので、耐候性が良好な画像を形成でき、かつ、安定したインクジェット記録が可能で、画質及び堅牢性の良好な画像の記録が可能である。
【0077】
また、前述したインクジェットインク組成物には、前記一般式(1)で示される溶剤が含まれており、該溶剤は、塩化ビニル系樹脂と相互作用する。そのため、本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、塩化ビニル系記録媒体の表面に前述したインクジェットインク組成物の液滴を付着させて画像を記録することで、記録媒体上に強固に定着される点で優れている。
【0078】
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における塩化ビニル系記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含有するものであれば特に限定されない。塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体としては、硬質もしくは軟質の塩化ビニル系フィルムまたはシート等が挙げられる。前述したインクジェットインク組成物は、塩化ビニル系樹脂基材における無処理表面への画像の記録を可能ならしめるものであり、従来の受容層を有する記録媒体のごとく、高価な記録媒体の使用を不要とする優れた効果を有するが、インク受容層により表面処理された基材であっても適用できることは言うまでもない。
【0079】
本実施の形態に係るインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、特に限定されないが、ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置が好ましい。ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法を採用したもの、記録ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法を採用したもの等があるが、いずれの記録方法も採用することができる。また、本実施の形態に係るインクジェットインク組成物は、撥インク処理された吐出ノズル表面に対して不活性であるという利点を有するので、例えば撥インク処理された吐出ノズル表面を有するインクジェット記録用ヘッドから吐出させるインクジェット記録方法に有利に用いることができる。
【0080】
3.実施例及び比較例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
【0081】
3.1.インク組成物の調製
3.1.1.顔料分散液の調製
顔料として一次粒径160nmのピグメントオレンジ43(PO−43)を用意した。分散剤としてソルスパース17000(ルーブリゾール社製、ポリエステルポリアミン)を用い、当該顔料に対して質量比0.1〜20質量%の範囲で分散剤の添加量を変えて分散液を作製することにより、所望の体積平均粒子径の分散液とする分散を行った。分散媒としては、各インク組成例ごとに溶剤として最も含有量の多い溶剤を分散媒として用い顔料分散液とした。なお、一次粒径よりも小さい体積平均粒子径を有するPO−43については、ボールミルにより粉砕処理して所望の体積平均粒子径のPO−43を得た。
【0082】
ピグメントオレンジ31、64、71についてもこれと同様にして、所望の体積平均粒子径を有する顔料分散液を得た。
【0083】
顔料の体積平均粒子径は、得られた顔料分散液をジエチレングリコールジエチルエーテルにて1000ppm以下に希釈し、20℃の環境下でレーザー回折・散乱法(マイクロトラックUPA250、日機装株式会社製)によって測定された体積平均粒子径(メディアン径D50)の値を読み取ることにより測定した。
【0084】
3.1.2.インク組成物の調製
上記で調製された顔料分散液を用いて、表2〜表4に示す材料組成にて顔料種及び体積平均粒子径の異なるインク組成物を調製した。各インク組成物は、表中に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間混合撹拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表2〜4中の組成欄の数値は、質量%を示す。
【0085】
3.2.評価試験
3.2.1.耐候性
調製した各インク組成物を用いて、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型式「PX−G930」)により、初期OD値が0.5、1.0、最大値となるようにDutyを調整しながら印刷を行った。記録媒体には、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)を使用した。得られた記録物を一般環境下で1時間放置して乾燥させた。その後、得られた記録物をキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)のチャンバー内に投入し、下表1に示すような試験条件で「光照射40分間」→「光照射+水降雨20分間」→「光照射60分間」→「水降雨60分間」のサイクル試験を行った。このサイクル試験を4週間連続して行い、4週間後にその記録物を取り出した。取り出した各記録物について、グレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いてOD値を測定し、OD値の残存率(%)を求め、初期OD値が0.5、1.0、最大値の3種の記録物のうち、残存率が最も低い記録物を評価の対象とした。耐候性は、下記基準に基づき判定した。その結果を表2〜表4に併せて示す。
5:OD値残存率が90%以上
4:OD値残存率が87%以上90%未満
3:OD値残存率が84%以上87%未満
2:OD値残存率が81%以上84%未満
1:OD値残存率が81%未満
【0086】
【表1】
【0087】
3.2.2.印字安定性(間欠評価)
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型式「PX−G930」)に搭載されているピエゾ素子の振動数を5kHzとし、その駆動波形を最適化した状態で、各インク組成物についてヘッドの各ノズルから300秒間の液滴の連続吐出を行い、その後300秒間液滴の吐出を中断した(1シーケンス)。その後、同様に、液滴の連続吐出、及び、吐出の中断の操作を10シーケンス繰り返し行った。10シーケンス終了時において、ノズル360個中の不吐出ノズル数をカウントすることにより印字安定性評価(間欠評価)を行った。その評価結果を表2〜表4に併せて示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:不吐出ノズル数が0個
3:不吐出ノズル数が1〜2個
2:不吐出ノズル数が3〜4個
1:不吐出ノズル数が5個以上
【0088】
3.2.3.光沢性(画質)
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)上に記録解像度720×720dpiの100%濃度でベタ印刷をした後、25℃−65%RH(相対湿度)にて1日間乾燥させて各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物を、光沢度計MULTI Gloss 268(コニカミノルタ社製)を用いて、記録面20°反射の光沢度を測定した。その評価結果を表2〜表4に併せて示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:50以上
3:40以上50未満
2:30以上40未満
1:30未満
【0089】
3.2.4.凝集ムラ
上記「3.2.3.光沢性の評価」と同様にして各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物の記録面における顔料の凝集ムラを目視にて観察することにより、凝集ムラの評価を行った。その評価結果を表2〜表4に併せて示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
4:凝集ムラが認められない。
3:拡大観察で凝集ムラが認められる。
2:若干の凝集ムラが認められる。
1:凝集ムラが目立つ。
【0090】
3.2.5.耐擦性
上記「3.2.3.光沢性の評価」と同様にして各例の記録物を作製した。このようにして得られた記録物につき、JIS K5701(ISO 11628)に準じて、学振式摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、商品名「AB−301」)を用いて耐擦性の評価を行った。すなわち、記録物の記録面に綿布を載せ、荷重500gで20回往復させて擦り、擦った後の記録物の記録面の剥離状態を目視にて観察した。その評価結果を表2〜表4に併せて示す。なお、評価基準は、以下の通りである。
3:綿布に汚れが無い。記録面に傷が無い。
2:綿布に記録物の付着がある。記録面に傷がほとんど無い。
1:綿布に記録物の付着がある。記録面に傷がある。
【0091】
3.3.評価結果
実施例及び比較例に係るインク組成、評価結果を表2〜表4に示す。表2〜表4の評価結果によれば、本発明に係るインクジェットインク組成物によれば、耐候性が良好な画像を形成でき、かつ、安定したインクジェット記録が可能で、画質及び耐擦性に優れた画像の記録が可能であることが判った。
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
なお、表2〜表4に示した略称又は商品名は、以下の通りである。
<顔料>
・PO−43:C.I.ピグメントオレンジ43
・PO−31:C.I.ピグメントオレンジ31
・PO−64:C.I.ピグメントオレンジ64
・PO−71:C.I.ピグメントオレンジ71
<環状エステル>
・γ−ブチロラクトン:商品名、関東化学株式会社製)
・σ−バレロラクトン:商品名、キシダ化学株式会社製)
<溶剤>
・DEGMEE:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、商品名「ハイソルブEDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点64℃)
・DEGdME:ジエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点56℃)
・DEGDEE:ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点71℃)
・DEGBME:ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、商品名「ハイソルブBDM」、東邦化学工業株式会社製、引火点94℃)
・TriEGdME:トリエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「トリエチレングリコールジメチルエーテル」、キシダ化学株式会社製、引火点113℃)
・TetraEGdME:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「テトラエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点141℃)
・TetraEGmBE:テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチセノール40」、KHネオケム株式会社製、引火点177℃)
<分散剤>
・ソルスパース17000:商品名、ルーブリゾール社製、ポリエステルポリアミン
<界面活性剤>
・BYK340:商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコン系界面活性剤
<定着樹脂>
・ソルバインCL:商品名、日信化学工業株式会社製、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
【0096】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。