特許第6981488号(P6981488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981488
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20211202BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   E03D11/08
   E03D11/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-34299(P2020-34299)
(22)【出願日】2020年2月28日
(65)【公開番号】特開2021-134642(P2021-134642A)
(43)【公開日】2021年9月13日
【審査請求日】2021年6月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 晶
(72)【発明者】
【氏名】土谷 匠
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−213880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から供給された洗浄水が流れる主導水路と、
前記主導水路の下流側に設けられ前記洗浄水を吐水口から吐出させる下流側導水路と、
前記下流側導水路に形成される凸部と
を備え、
前記凸部は、
前記下流側導水路を流れる前記洗浄水を傾斜面に沿って上方へ誘導する第1誘導部と、
前記第1誘導部の下流側に設けられ、前記洗浄水を傾斜面に沿って下方へ誘導する第2誘導部と
を備え
前記第1誘導部の傾斜面の傾斜角度は、前記第2誘導部の傾斜面の傾斜角度より大きいこと
を特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記第1誘導部は、
前記洗浄水を上方へ誘導して前記下流側導水路の天面に向かう上昇流を形成するように設けられること
を特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記第2誘導部は、
前記天面に衝突した上昇流が下降して形成される下降流に沿うように傾斜する傾斜面
を備えることを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記凸部は、
前記第1誘導部と前記第2誘導部との間に設けられ、上面を流れる前記洗浄水を整流して直進流を形成する整流部
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記整流部は、
前記洗浄水の流れ方向の長さが前記整流部の高さより大きくなるように形成されること を特徴とする請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記整流部は、
前記洗浄水の流れ方向の長さが前記整流部の上面から前記下流側導水路の天面までの距離より大きくなるように形成されること
を特徴とする請求項4または5に記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記下流側導水路は、
前記洗浄水を第1吐水口から吐出させる第1導水路と、
前記洗浄水を第2吐水口から吐出させる第2導水路と
を含み、
前記凸部は、
前記第1導水路および前記第2導水路に形成されること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【請求項8】
前記第1導水路と前記第2導水路との間に設けられ、前記主導水路からの前記洗浄水を前記第1導水路および前記第2導水路へ供給する共通導水路
を備え、
前記共通導水路は、
底面が、前記第1、第2導水路の前記凸部の上面より低くなるように形成されること
を特徴とする請求項7に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水を吐水口から吐水してボウル部へ洗浄水を供給する水洗大便器が知られている(例えば、特許文献1参照)。上記した水洗大便器では、吐水口から吐水された洗浄水を、ボウル部を旋回する旋回流と、ボウル部の下方に設けられた溜水部方向へ流れる下降流の2つの主流に分水し、かかる旋回流および下降流により、汚物を排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−031551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にあっては、吐水口を扁平形状にしたり、吐水口の底面を溜水部側に向かって下り傾斜した形状にしたりすることで、下降流を形成していた。そのため、従来技術では、扁平形状等にした吐水口が使用者によって視認されやすく、意匠性の低下を招くおそれがあった。
【0005】
実施形態の一態様は、吐水口の形状によらず、溜水部方向へ流れる下降流を形成することができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、給水源から供給された洗浄水が流れる主導水路と、前記主導水路の下流側に設けられ前記洗浄水を吐水口から吐出させる下流側導水路と、前記下流側導水路に形成される凸部とを備え、前記凸部は、前記下流側導水路を流れる前記洗浄水を上方へ誘導する第1誘導部と、前記第1誘導部の下流側に設けられ、前記洗浄水を下方へ誘導する第2誘導部とを備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、下流側導水路内で洗浄水を、第1誘導部により上昇させた後に、第2誘導部により下降させるようにしたことから、洗浄水には上昇や下降によって圧力損失が生じる。このような圧力損失が生じると、洗浄水は、下流側導水路の吐水口から吐水されたときに分散しやすくなり、結果としてボウル部では溜水部方向へ流れる下降流が形成されることとなる。すなわち、吐水口の形状によらず、下降流を形成することができる。
【0008】
また、前記第1誘導部は、前記洗浄水を上方へ誘導して前記下流側導水路の天面に向かう上昇流を形成するように設けられることを特徴とする。
【0009】
このように、第1誘導部は、天面に向かう上昇流を形成することで、天面での衝突による下降流を確実に形成することが可能になる。
【0010】
また、前記第2誘導部は、前記天面に衝突した上昇流が下降して形成される下降流に沿うように傾斜する傾斜面を備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、天面から下降する下降流が下流側導水路の底面に衝突しやすくなって、洗浄水に圧力損失を生じさせることができる。圧力損失が生じた洗浄水は、吐水口から吐水されたときに分散しやすく、よって溜水部方向へ流れる下降流が形成されやすくすることができる。
【0012】
また、前記凸部は、前記第1誘導部と前記第2誘導部との間に設けられ、上面を流れる前記洗浄水を整流して直進流を形成する整流部を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、整流部で形成された直進流は、天面から下降する途中の下降流に合流することとなる。そのため、かかる下降流に吐水口側へ向かうよう指向させることができる。これにより、多くの下降流を吐水口側で下流側導水路の底面に衝突させて圧力損失を生じさせることができ、よって洗浄水が吐水口から吐出された直後から溜水部に向かう流れ、すなわち下降流を形成することができる。
【0014】
また、前記整流部は、前記洗浄水の流れ方向の長さが前記整流部の高さより大きくなるように形成されることを特徴とする。
【0015】
これにより、下流側導水路における下降流を確実に形成することができる。すなわち、整流部の高さを高くしすぎると、整流部の上流側で乱流が生じる可能性があるが、上記のような高さに設定されることで、洗浄水は、第1誘導部によって上昇した後に整流部で十分に整流されることとなるため、下流側導水路における下降流を確実に形成することができる。
【0016】
また、前記整流部は、前記洗浄水の流れ方向の長さが前記整流部の上面から前記下流側導水路の天面までの距離より大きくなるように形成されることを特徴とする。
【0017】
これにより、整流部において、天面での距離より洗浄水の流れ方向の長さの方が長くなるため、下流側導水路における下降流を整流部若しくは傾斜面に到達させやすく、また乱流の発生も抑制することができる。
【0018】
また、前記下流側導水路は、前記洗浄水を第1吐水口から吐出させる第1導水路と、前記洗浄水を第2吐水口から吐出させる第2導水路とを含み、前記凸部は、前記第1導水路および前記第2導水路に形成されることを特徴とする。
【0019】
これにより、第1導水路および第2導水路のそれぞれにおいて下降流を形成することができ、よって溜水部方向へ流れる下降流を確実に形成することができる。
【0020】
また、前記第1導水路と前記第2導水路との間に設けられ、前記主導水路からの前記洗浄水を前記第1導水路および前記第2導水路へ供給する共通導水路を備え、前記共通導水路は、底面が、前記第1、第2導水路の前記凸部の上面より低くなるように形成されることを特徴とする。
【0021】
これにより、共通導水路の下流端には、残水が生じることとなる。したがって、主導水路から共通導水路に流入してきた洗浄水が残水で形成された水たまりに衝突する。これにより、洗浄水には圧力損失が生じ、圧力損失が生じた洗浄水は、吐水口から吐水されたときに分散しやすくなり、結果としてボウル部では溜水部方向へ流れる下降流が形成されやすくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
実施形態の一態様によれば、水洗大便器において、吐水口の形状によらず、溜水部方向へ流れる下降流を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器の左側面図である。
図2図2は、実施形態に係る便器本体の平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線断面における便器本体の断面図である。
図5図5は、図4のV−V線断面図である。
図6図6は、図4のVI−VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0025】
<水洗大便器の全体構成>
まず、図1を参照して実施形態に係る水洗大便器1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器1の左側面図である。また、図1では、壁面8および床面9を断面で示している。
【0026】
また、図1には、説明を分かりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、他の図においても図示している場合がある。かかる直交座標系では、Y軸の負方向を前方、Y軸の正方向を後方、X軸の正方向を右方、X軸の負方向を左方と規定している。このため、以下の説明において、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0027】
また、実施形態に係る水洗大便器1は、壁面8に取り付けられる、いわゆる壁掛け式の水洗大便器である。なお、水洗大便器1は、床面9に設置される、いわゆる床置き式の水洗大便器であってもよい。
【0028】
水洗大便器1は、便器本体2と、局部洗浄装置3とを備える。実施形態に係る水洗大便器1は、洗浄水源から供給される洗浄水により便器本体2を洗浄して汚物を排出する洗い落とし式大便器(ウォッシュダウン式便器)である。なお、水洗大便器1は、サイホン式大便器であってもよい。また、便器本体2は、例えば、陶器製である。便器本体2の詳細については、後述する。
【0029】
局部洗浄装置3は、洗浄ノズル、ノズル駆動用モータ、モータ制御装置(いずれも不図示)などを備える。局部洗浄装置3は、使用者の局部洗浄用として便器本体2の上部に設けられ、洗浄ノズルから噴出させた洗浄水によって使用者の局部を洗浄する。
【0030】
水洗大便器1では、貯水タンク4(給水源の一例)に接続された給水配管4aを経て、便器本体2に洗浄水が供給される。また、水洗大便器1は、汚物を洗浄水と共に排水配管5へ排出する。なお、貯水タンク4は便器本体2の後方に載置され、貯水タンク4から便器本体2へ直接洗浄水を供給するものであってもよい。
【0031】
また、水洗大便器1は、局部洗浄装置3に局部洗浄用の洗浄水を供給する給水ホース6aと、局部洗浄装置3に電力を供給する電源ケーブル6bとを備える。
【0032】
<便器本体>
次に、実施形態に係る便器本体2について図2図4を参照し説明する。図2は、実施形態に係る便器本体2の平面図(上面図)である。図3は、図2のIII-III線断面図である。図4は、図3のIV-IV線断面における便器本体2の断面図である。
【0033】
図2図4に示すように、便器本体2は、ボウル部10と、リム部11と、吐水部12(図2で見えず)と、溜水部13と、排出部14とを備える。便器本体2は、吐水部12によって洗浄水を吐水し、汚物を排出部14から排出する。
【0034】
ボウル部10は、ボウル形状に形成され、汚物を受ける。リム部11は、ボウル部10の上縁部に設けられる。リム部11は、洗浄水が外に飛び出さないように、内側にオーバーハングした形状に形成される。
【0035】
吐水部12は、図3および図4に示すように、主導水部20と、共通導水部21と、下流側導水部22とを備える。なお、上記した「下流」とは、吐水部12における洗浄水の流れ方向を意味する。すなわち、「上流」および「下流」は、給水配管4aからボウル部10へ吐水される洗浄水の流れにおける「上流」および「下流」を意味する。
【0036】
主導水部20は、給水配管4a(図1参照)と接続され、給水配管4aから洗浄水が供給される。具体的には、主導水部20には、主導水路20aが形成され、給水配管4aから供給された洗浄水が主導水路20aに流通する。すなわち、主導水路20aには、給水源となる貯水タンク4(図1参照)から供給された洗浄水が流れる。
【0037】
共通導水部21は、主導水部20の下流側に配置され、主導水路20aから洗浄水が流入する。具体的には、共通導水部21には、共通導水路21aが形成され、主導水路20aから供給された洗浄水が共通導水路21aに流通する。なお、共通導水部21には、突出部40が形成されるが、これについては後述する。
【0038】
下流側導水部22は、図4に示すように、共通導水部21の下流側に配置される。下流側導水部22には、複数の下流側導水路30と、複数の吐水口31が形成される。例えば、下流側導水路30は、第1導水路30aと、第2導水路30bとを含む。また、吐水口31は、第1吐水口31aと、第2吐水口31bとを含む。
【0039】
第1導水路30aは、ボウル部10の後方から左方へ向けてリム部11に沿って形成される。第1導水路30aの下流側の端部には、上記した第1吐水口31aが形成される。かかる第1吐水口31aは、例えばリム部11の左方の中央付近に位置される。
【0040】
したがって、主導水路20aから共通導水路21aを介して第1導水路30aへ流れた洗浄水は、上面視で反時計回りに流れ、その後第1吐水口31aからボウル部10へ吐水される。すなわち、第1導水路30aは、供給された洗浄水を第1吐水口31aから吐出させる。
【0041】
第2導水路30bは、ボウル部10の後方にリム部11に沿って形成される。また、第2導水路30bは、流路の途中で洗浄水の流れ方向を屈曲させる屈曲部位30b1を備える。具体的には、第2導水路30bの屈曲部位30b1は、ボウル部10の前方へ向けて流れる洗浄水の流れ方向を屈曲させて、より具体的にはUターンさせて、ボウル部10の後方へ向ける。第2導水路30bの下流側の端部には、上記した第2吐水口31bが形成される。かかる第2吐水口31bは、例えばリム部11の右後方に位置される。
【0042】
したがって、主導水路20aから共通導水路21aを介して第2導水路30bへ流れた洗浄水は、上面視で時計回りに流れた後、屈曲部位30b1で流れ方向が反転されて反時計回りとなる。その後、洗浄水は、第2吐水口31bからボウル部10へ反時計回りに吐水される。すなわち、第2導水路30bは、供給された洗浄水を第2吐水口31bから吐出させる。
【0043】
このように、下流側導水路30は、主導水路20aおよび共通導水路21aの下流側に設けられ、洗浄水を吐水口31から吐出させる。なお、下流側導水路30および吐水口31の数は、上記に限定されるものではない。すなわち、例えば下流側導水路30および吐水口31は、1つあるいは3つ以上設けられてもよい。また、共通導水路21aは、第1導水路30aと第2導水路30bとの間に設けられ、主導水路20aからの洗浄水を第1導水路30aおよび第2導水路30bへ供給する。言い換えると、共通導水部21では、共通導水路21aが第1導水路30aと第2導水路30bとに分岐される。そのため、共通導水部21は、分岐部であるともいえる。
【0044】
また、第1吐水口31aおよび第2吐水口31bから吐水された洗浄水は、ボウル部10において旋回流Da1,Db1と、下降流Da2,Db2とに分水されるが、これについては後述する。
【0045】
第1、第2吐水口31a,31bから吐水された洗浄水は、ボウル部10を洗浄し、溜水部13および排出部14を介して、排水配管5(図1参照)から汚物を排出する。
【0046】
溜水部13は、図3に示すように、ボウル部10の下方に設けられる。溜水部13は、洗浄水の一部が溜まり、封水として機能することで、排出部14からの臭気等がボウル部10側へ逆流することを防止する。排出部14には、排出路14aが形成される。排出路14aは、排水配管5(図1参照)に接続される。
【0047】
ここで、共通導水部21に形成される突出部40について説明する。図3および図4に示すように、突出部40は、共通導水路21aの内側方向に向けて突出するように形成される。具体的には、突出部40は、共通導水路21aを形成する共通導水部21の底面21bから上方に向けて突出する。突出部40は、頂部41と、傾斜部42とを備える。
【0048】
頂部41は、面状に形成される。傾斜部42は、頂部41と底面21bとを接続するように形成される。傾斜部42は、頂部41から左右方向、および前方に向けて下り傾斜で形成される。
【0049】
これにより、共通導水路21aに流入した洗浄水の一部は、突出部40に衝突し、第1導水路30aおよび第2導水路30bに流入する。具体的には、突出部40は、共通導水部21の底面21bから上方に向けて突出しているため、重力によって底面21b側を流れる洗浄水の流れ方向をスムーズに変更し、洗浄水が第1導水路30aおよび第2導水路30bに流入する。これにより、水洗大便器1は、第1、第2導水路30a,30bに洗浄水を分流する際に、第1、第2導水路30a,30bに洗浄水をスムーズに導くことができる。
【0050】
ところで、上記したように、第1、第2吐水口31a,31bから吐水された洗浄水が、旋回流Da1,Db1と、下降流Da2,Db2とに分水されると、水洗大便器1における汚物を効率良く排出させることができる。
【0051】
詳しくは、旋回流Da1,Db1は、ボウル部10の外周側を旋回し、ボウル部10の汚物受け面10aに付着した汚物等を効率良く溜水部13側へ誘導することができる。下降流Da2,Db2は、溜水部13の溜水中に浮いている浮遊汚物等を排出部14の排出路14aへ押し込む流れであるため、浮遊汚物等を効率良く排出することができる。
【0052】
ここで、従来技術では、下降流を形成するため、吐水口を扁平形状にしたり、吐水口の底面を溜水部側に向かって下り傾斜した形状にしたりしていた。しかしながら、このような扁平形状の吐水口は、使用者に視認されやすく、意匠性の低下を招くおそれがあった。
【0053】
そこで、本実施形態に係る水洗大便器1は、第1、第2吐水口31a,31bの形状によらず、溜水部13方向へ流れる下降流を形成することができるような構成とした。
【0054】
以下、かかる構成について詳説すると、本実施形態に係る水洗大便器1は、図4に示すように、下流側導水路30に形成される凸部50を備える。具体的には、凸部50は、下流側導水路30である第1導水路30aおよび第2導水路30bに形成される。なお、凸部50は、第1導水路30aおよび第2導水路30bのいずれか一方に形成されてよい。
【0055】
以下、第1導水路30aに形成される凸部50を「第1凸部51」、第2導水路30bに形成される凸部50を「第2凸部52」と記載する場合があるが、これらを特に区別せずに説明する場合には「凸部50」と記載する。
【0056】
第1凸部51は、例えば第1導水路30aの上流端付近から、下流端にある第1吐水口31aに亘って形成される。言い換えると、第1凸部51は、第1導水路30aの洗浄水の流れ方向において全域あるいは略全域に亘って形成される。
【0057】
なお、上記した第1凸部51が形成される第1導水路30aの領域は、あくまでも例示であって限定されるものではない。すなわち、例えば、第1凸部51は、第1導水路30aの下流側の領域や上流側の領域など部分的に形成されてもよい。
【0058】
第2凸部52は、例えば第2導水路30bの上流端付近から屈曲部位30b1に亘って形成される。詳しくは、第2凸部52は、第2導水路30bの上流端付近から、屈曲部位30b1において洗浄水の流れ方向を屈曲させる部分の上流側の位置に亘って形成される。
【0059】
なお、上記した第2凸部52が形成される第2導水路30bの領域は、あくまでも例示であって限定されるものではない。すなわち、例えば、第2凸部52は、第2導水路30bの屈曲部位30b1より下流側の領域など部分的に形成されてもよし、第2導水路30bの全域あるいは略全域に亘って形成されてもよい。
【0060】
第1凸部51は、第1誘導部51aと、整流部51bと、第2誘導部51cとを備える。同様に、第2凸部52は、第1誘導部52aと、整流部52bと、第2誘導部52cとを備える。
【0061】
以下では、第1凸部51について詳細に説明するが、第1凸部51と第2凸部52とは、同様の構成であるため、以下の第1凸部51の説明は、第2凸部52にも概ね妥当する。
【0062】
図5は、図4のV−V線断面図である。なお、図5は、第1導水路30aに形成された第1凸部51の断面図である。図5に示すように、第1凸部51は、第1導水路30aの内側方向に向けて突出するように形成される。例えば、第1凸部51は、第1導水路30aの底面30a1から上方に向けて突出するように形成される。
【0063】
具体的には、上記した第1凸部51の第1誘導部51aは、第1導水路30aの底面30a1から上方に向かって立設される。言い換えると、第1誘導部51aは、第1導水路30aの底面30a1から立設される壁部である。詳しくは、第1誘導部51aは、傾斜面51a1を有し、第1導水路30aを流れる洗浄水を傾斜面51a1に沿って上方へ誘導する。
【0064】
第2誘導部51cは、第1誘導部51aの下流側に設けられる。第2誘導部51cも、第1導水路30aの底面30a1から上方に向かって立設される。言い換えると、第2誘導部51cは、第1導水路30aの底面30a1から立設される壁部である。また、第2誘導部51cは、傾斜面51c1を有し、第1導水路30aを流れる洗浄水を傾斜面51c1に沿って下方へ誘導する。
【0065】
このように、本実施形態にあっては、第1導水路30a内で洗浄水を、第1誘導部51aにより上昇させた後に、第2誘導部51cにより下降させるようにしたことから、洗浄水には上昇や下降によって圧力損失が生じる。このような圧力損失が生じると、洗浄水は、第1導水路30aの第1吐水口31aから吐水されたときに分散しやすくなり、結果としてボウル部10では溜水部13方向へ流れる下降流Da2(図4参照)が形成されることとなる。すなわち、本実施形態にあっては、第1吐水口31aなどの吐水口31の形状を変更することなく、下降流Da2を形成することができる。
【0066】
また、第1凸部51は、第1導水路30aおいて、第1吐水口31aの付近に設けられるため、第2誘導部51cで下降させられた洗浄水が第1吐水口31aに近い位置で形成されることとなる。これにより、洗浄水は、第1吐水口31aから吐水されたときにより分散しやすくなり、下降流Da2を確実に形成することができる。
【0067】
第1凸部51についてさらに詳しく説明する。第1誘導部51aは、上記したように、第1導水路30aの底面30a1から上方に向かって立設される。そのため、矢印A1で示すように、共通導水路21aから流入される洗浄水の一部は、第1誘導部51aに衝突し、上方へ誘導される(矢印A2参照)。詳しくは、洗浄水の一部は、傾斜面51a1に衝突した後、傾斜面51a1に沿って上方へ誘導される。
【0068】
このとき、第1誘導部51aによって上方へ誘導された洗浄水の多くは、第1導水路30aの天面30a2に衝突する。すなわち、第1誘導部51aは、洗浄水を上方へ誘導して第1導水路30aの天面30a2に向かう上昇流を形成するように設けられる。
【0069】
このように、本実施形態にあっては、第1誘導部51aとの衝突により洗浄水に圧力損失を生じさせ、よって洗浄水が第1吐水口31aから吐水されたときに分散して、下降流Da2が形成されやすくすることができる。また、第1誘導部51aは、天面30a2に向かう上昇流を形成することで、後述するように、天面30a2での衝突による下降流を確実に形成することが可能になる。
【0070】
上記のように、上昇流が天面30a2に衝突すると、矢印A3で示すような、下方に向かう下降流が形成される。かかる下降流が形成される位置には、第2誘導部51cが設けられる。第2誘導部51cの傾斜面51c1は、天面30a2に衝突した上昇流が下降して形成される下降流に沿うように傾斜している。
【0071】
これにより、天面30a2から下降する下降流が第1導水路30aの底面30a1に衝突しやすくなって、洗浄水に圧力損失を生じさせることができる。圧力損失が生じた洗浄水は、第1吐水口31aから吐水されたときに分散しやすく、よって下降流Da2が形成されやすくすることができる。
【0072】
整流部51bは、第1誘導部51aと第2誘導部51cとの間に設けられる。整流部51bは、上面51b1を流れる洗浄水を整流して直進流(矢印A4参照)を形成する。
【0073】
整流部51bで形成された直進流は、天面30a2から下降する途中の下降流に合流することとなる。そのため、かかる下降流に第1吐水口31a側へ向かうよう指向させることができる。これにより、多くの下降流を第1吐水口31a側で底面30a1に衝突させて圧力損失を生じさせることができ、よって洗浄水が第1吐水口31aから吐出された直後から溜水部13に向かう流れ、すなわち下降流Da2を形成することができる。
【0074】
なお、例えば仮に、第1凸部51が整流部51bを備えていない場合、第1凸部51を乗り越えた洗浄水が壁面に沿った流れとなって乱流が形成されてしまい、所望の下降流Da2が形成されにくくなる。
【0075】
次いで、第1凸部51の寸法について説明する。第1凸部51において、整流部51bは、洗浄水の流れ方向の長さDが整流部51bの高さHより大きくなるように形成される(D>H)。
【0076】
例えば仮に、整流部51bの高さHを高くしすぎると、整流部51bの上流側で乱流が生じる可能性があるが、上記のような高さHに設定されることで、洗浄水は、第1誘導部51aによって上昇した後に整流部51bで十分に整流されることとなるため、第1導水路30aにおける下降流を確実に形成することができる。
【0077】
また、整流部51bは、洗浄水の流れ方向の長さDが整流部51bの上面51b1から第1導水路30aの天面30a2までの距離Wより大きくなるように形成される(D>W)。
【0078】
このように、整流部51bにおいて、天面30a2までの距離Wより洗浄水の流れ方向の長さDの方が長くなるため、第1導水路30aにおける下降流を整流部51b若しくは傾斜面51c1に到達させやすく、また乱流の発生も抑制することができる。
【0079】
なお、例えば第1誘導部51aの傾斜面51a1の傾斜角度は、第2誘導部51cの傾斜面5c1の傾斜角度より大きく設定される。すなわち、傾斜面51a1は、傾斜面5c1より傾斜が急になるように形成される。これにより、洗浄水の一部を、傾斜面51a1に衝突させやすくすることができ、洗浄水に圧力損失を生じさせ、よって洗浄水が第1吐水口31aから吐水されたときに分散して、下降流Da2が形成されやすくすることができる。
【0080】
なお、上記では、傾斜面51a1の傾斜角度が傾斜面5c1の傾斜角度より大きく設定されるようにしたが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、例えば、傾斜面51a1の傾斜角度が傾斜面5c1の傾斜角度と同じに設定されたり、小さく設定されたりしてもよい。
【0081】
上記のように構成された凸部50(第1凸部51および第2凸部52)は、図4に示すように、第1導水路30aおよび第2導水路30bに形成される。
【0082】
これにより、第1導水路30aおよび第2導水路30bのそれぞれにおいて下降流を形成することができ、よって溜水部13方向へ流れる下降流Da2,Db2を確実に形成することができる。
【0083】
なお、第1凸部51と第2凸部52とは、互いに形状が異なるように形成されるが、これに限られず、同じ形状に形成されてもよい。すなわち、第1凸部51と第2凸部52とは、例えば第1誘導部51a,52aの傾斜角度、第2誘導部51c,52cの傾斜角度、整流部51b,52bの長さD、高さH、天面30a2までの距離Wなどが、互いに異なる値に設定されてもよいし、同じ値に設定されてもよい。
【0084】
次に、凸部50と共通導水路21aとの高さの関係について図6を参照して説明する。図6は、図4のVI−VI線断面図である。図6に示すように、共通導水路21aは、底面21bが、第1、第2導水路30a,30bの第1凸部51および第2凸部52の上面(すなわち整流部51b,52bの上面51b1,52b1)より所定高さHaだけ低くなるように形成される。なお、上記した共通導水路21aの底面21bには、突出部40も含まれる。
【0085】
これにより、共通導水路21aの下流端には、残水Bが生じることとなる。したがって、主導水路20a(図4参照)から流入してきた洗浄水が残水Bで形成された水たまりに衝突する。これにより、洗浄水には圧力損失が生じ、圧力損失が生じた洗浄水は、第1吐水口31aや第2吐水口31bから吐水されたときに分散しやすくなり、結果としてボウル部10では溜水部13方向へ流れる下降流Da2,Db2(図4参照)が形成されやすくすることができる。
【0086】
上述してきたように、実施形態に係る水洗大便器1は、主導水路20aと、下流側導水路30と、凸部50とを備える。主導水路20aは、給水源から供給された洗浄水が流れる。下流側導水路30は、主導水路20aの下流側に設けられ洗浄水を吐水口31から吐出させる。凸部50は、下流側導水路30に形成される。また、凸部50は、下流側導水路30を流れる洗浄水を上方へ誘導する第1誘導部51a,52aと、第1誘導部51a,52aの下流側に設けられ、洗浄水を下方へ誘導する第2誘導部51c,52cとを備える。これにより、吐水口31の形状によらず、溜水部13方向へ流れる下降流Da2,Db2を形成することができる。
【0087】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 水洗大便器
4 貯水タンク(給水源)
10 ボウル部
12 吐水部
14 排出部
20 主導水部
20a 主導水路
21 共通導水部
21a 共通導水路
22 下流側導水部
50 凸部
51a,52a 第1誘導部
51c,52c 第2誘導部
図1
図2
図3
図4
図5
図6