(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外周方向における幅の広い幅広面および外周方向における幅の狭い幅狭面を有する四角筒形状の巻枠部を備えると共に、長手方向の中途に仕切部が存在するボビン体のコア挿入部に、磁性材料から形成されるコアを挿入するコア挿入工程と、
前記ボビン体に導線を巻回してコイルを形成するコイル形成工程と、
前記コイルを構成する導線を前記ボビン体の長手方向に移動させる導線移動工程と、
を備え、
前記コイル形成工程では、前記ボビン体の一方側から前記仕切部まで前記導線の巻回密度を密な状態で巻回することにより構成される密巻線部と、前記仕切部から前記ボビン体の他方側まで前記導線の巻回密度を疎な状態で巻回することにより形成される疎巻線部とを形成し、
前記疎巻線部では、第1層を巻回した後に、その第1層とは巻線方向が異なる第2層を巻回することで、前記第1層を構成している前記導線と前記第2層を構成している前記導線とは交差しており、
前記導線移動工程では、(a)前記疎巻線部を構成する導線のうち、前記幅広面上かつ前記ボビン体の最も他方側に位置する導線、または、(b)前記疎巻線部を構成する導線のうち、前記幅狭面上かつ前記ボビン体の最も他方側に位置する導線を、前記ボビン体の一方側または他方側に移動させる、
ことを特徴とするアンテナ装置の製造方法(但し、前記アンテナ装置が、前記コアに加えて、前記コイルの巻回方向に対して直交する方向に移動可能なサブコアを備える場合を除く)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、アンテナ装置10Aについて、図面を参照しながら説明する。
【0021】
また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を用いて説明することがある。そのうち、X方向はアンテナ装置10Aの長手方向とし、X1側は後述するコネクタ接続部40Aが位置する側とし、X2側はそれとは逆側とする。また、Z方向はアンテナ装置10Aの厚み方向とし、Z1側は
図2における上側とし、Z2側は
図2における下側とする。また、Y方向はXZ方向に直交する方向(幅方向)とし、Y1側は
図1における右手前側とし、Y2側はそれとは逆の奥左側とする。
【0022】
<アンテナ装置10Aの全体構成について>
図1は、アンテナ装置10Aの全体構成を示す斜視図である。
図2は、アンテナ装置10Aのうち、コイル50Aを除去した状態を示す斜視図である。
図3は、アンテナ装置10Aの構成を示す側面断面図である。
図1から
図3に示すように、アンテナ装置10Aは、コア20Aと、ボビン体30Aと、コイル50Aと、接続端子60Aと、ケース90Aと、を主要な構成要素としている。
【0023】
図2および
図3に示すように、コア20Aは、磁性材料から形成されると共に、X方向に長い長尺状(棒状)に設けられている。また、コア20Aは、正面から見たときの断面を矩形状としている。なお、コア20Aは、その材質を磁性材としているが、磁性材としては、例えば、ニッケル系のフェライトまたはマンガン系のフェライト等の種々のフェライト、パーマロイ、センダスト等、各種の磁性材料および各種の磁性材料の混合物を用いることが可能である。
【0024】
また、
図2に示すように、コア20Aの外周側には、ボビン体30Aのボビン部31Aが取り付けられている。このボビン体30Aは、その材質を絶縁性に優れた熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とするのが好ましい。なお、ボビン体30Aを構成する材質の一例としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が挙げられるが、その他の樹脂を材質としても良い。また、ボビン体30Aは、半田付けや溶接加工などにより熱ダメージを受ける場合があることに鑑みて、耐熱性樹脂を用いることが更に好ましい。
【0025】
図4は、ボビン体30Aの構成を示す斜視図である。
図1から
図4に示すように、ボビン体30Aは、ボビン部31Aと、端子取付部35Aと、コネクタ接続部40Aとが設けられている。ボビン部31Aには、巻枠部32Aと、仕切部33Aと、コア挿入部34Aが設けられている。
【0026】
巻枠部32Aは、筒形状としても良いが、本実施の形態では、適宜打ち抜いた形状に設けられている。具体的には、
図4に示すように、側壁部32A1は残しつつ、天面32A2側(上方側;Z1側)および底面32A3側(下方側;Z2側)に、打ち抜き部分32A4やスリット32A5を設ける構成となっている。特に、スリット32A5は、長手方向(X方向)の他端側(X2側)に設けられている。また、スリット32A5の他端側(X2側)は開放した状態となっている。したがって、巻枠部32Aに導線51Aを所定の張力を付与する状態で巻き付けると、コア挿入部34Aに挿入されているコア20Aが巻締めされることで、コア20Aを部分的に保持する。
【0027】
また、ボビン部31Aには、仕切部33Aも設けられている。仕切部33Aは、コイル50Aの密巻線部53Aと、疎巻線部54Aとを区切るための部分である。
図4に示す構成では、仕切部33Aは、たとえば側壁部32A1を突出させた突起状の部分となっているが、巻枠部32Aの天面32A2や底面32A3側を突出させるようにしても良い。
【0028】
また、コア挿入部34Aは、ボビン部31Aを長手方向(X方向)に貫く穴状の部分であり、コア20Aが挿入される部分となっている。なお、コア挿入部34Aに面する側壁部32A1の内壁側には、コア20Aに当接するコア保持突起32A6が設けられている。コア保持突起32A6の個数は、幾つ設けられていても良いが、
図4に示す構成では、コア挿入部34Aの長手方向(X方向)の一方寄りの部分(X1側)に設けられている。このコア保持突起32A6と、他端側(X2側)における導線の巻締めによるボビン部31Aの内壁とにより、コア20Aがコア挿入部34A内で保持された状態となっている。
【0029】
また、端子取付部35Aは、接続端子60A(
図1および
図2参照)が取り付けられる部分となっている。端子取付部35Aには、上下方向に貫通している開口部35A1が設けられていて、この開口部35A1に、一対の接続端子60Aの絡げ部62Aが露出している。それぞれの絡げ部62Aには、コイル50Aの導線51Aの端末が絡げられ、その絡げ後に、半田付け等によって、コイル50Aと接続端子60Aとが電気的に接続されている。
【0030】
なお、端子取付部35Aとコア挿入部34Aとを区切るために、端子取付部35Aの他端側(X2側)には、隔壁35A2が設けられている。この隔壁35A2にコア20Aが突き当たることにより、コア挿入部34A内においてコア20Aが位置決めされる。
【0031】
ここで、端子取付部35Aには、たとえばコンデンサや抵抗等を実装している基板を取り付ける構成としても良い。基板を取り付ける場合には、絡げ部62A等のような接続端子60Aの一部が、基板を貫き、その貫いた部分で半田付けされる等により、基板の導体パターンと接続端子60Aとが電気的に接続される状態となる。なお、基板を端子取付部35Aに取り付ける場合、端子取付部35Aに対して基板が嵌合される構成とするのが好ましい。
【0032】
また、端子取付部35Aには、コネクタ接続部40Aが連続的に設けられている。本実施の形態では、コネクタ接続部40Aは、長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)に沿うように設けられている。このコネクタ接続部40Aは、有底のコネクタ穴(図示省略)を有していて、そのコネクタ穴の一端側(Y1側)は、仕切壁部41Aで仕切られている。
【0033】
ここで、
図4に示すように、仕切壁部41Aには、幅方向(Y方向)に延伸する端子孔42Aが設けられていて、この端子孔42Aには、接続端子60Aが差し込まれている。したがって、端子孔42Aに挿し込まれた接続端子60Aは、コネクタ穴に突出することを可能としている。なお、本実施の形態では、接続端子60Aは一対設けられているので、端子孔42Aも一対存在している。しかしながら、端子孔42Aの個数は、接続端子60Aの個数に応じて、適宜変更することが可能である。
【0034】
また、コネクタ穴の内部に突出している接続端子60Aには、このコネクタ穴に差し込まれる外部のコネクタが電気的に接続される。それにより、後述するコイル50A等に電流を導通させることが可能となっている。
【0035】
次に、コイル50Aについて説明する。
図5は、ボビン部31Aのうち、コイル50Aが巻回されている部分を示す平面図である。
図5に示すように、コイル50Aには、密巻線部53Aと、疎巻線部54Aとが設けられている。密巻線部53Aは、コイル50Aのうち巻枠部32Aの長手方向(X方向)の一方側(X1側;端子取付部35A側)に巻回されている部分である。一方、疎巻線部54Aは、仕切部33Aを境として、その仕切部33Aから巻枠部32Aの長手方向(X方向)の他方側(X2側)に亘って巻回されている部分である。
【0036】
図5に示す構成では、密巻線部53Aと疎巻線部54Aでは、導線51Aを2層巻回した構成となっており、たとえば巻枠部32Aの長手方向(X方向)の一端側(X1側)から巻回を開始して、巻枠部32Aの他端側(X2側)に到達した後に、再び一端側(X1側)まで巻回しながら到達するような状態となっている。したがって、下層(第1層)の導線51Aと上層(第2層)の導線51Aとは、交差する(クロスする)状態となっている。しかしながら、密巻線部53Aと疎巻線部54Aとは、2層の巻回には限られず、たとえば4層や6層のように幾層巻回しても良い。
【0037】
なお、巻枠部32Aの他端側(X2側)には、導線51Aの位置ずれおよび保持するための係止手段が存在する構成としても良い。この係止手段により、巻枠部32Aの他端側(X2側)で導線51Aが係止されることで、下層(第1層)の導線51Aと上層(第2層)の導線51Aとが、良好に交差する(クロスする)状態を実現しても良い。また、下層(第1層)の導線51Aと上層(第2層)の導線51Aとは、ボビン体30Aの長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)に対して、3度〜177度の範囲内の角度で交差する構成とすることができる。この角度範囲内であれば、上層(第2層)の導線51Aが、隣り合う下層(第1層)の導線51Aの間の凹部に落ち込んだままの状態とならずに済み、インダクタンス値の調整を行い易い状態となる。
【0038】
図5から明らかなように、疎巻線部54Aは、密巻線部53Aと比較して、巻線密度が低い部分となっている。すなわち、疎巻線部54Aにおける単位長さ当たりの導線51Aの巻回の回数は、密巻線部53Aと比較して少なくなっている。したがって、疎巻線部54Aにおいては、隣り合う導線51Aと導線51Aの間には、比較的大きな隙間S1が存在している。
【0039】
ここで、巻枠部32Aの幅広面(XY面)において、隣り合う導線51Aと導線51Aとの間の間隔をピッチP1、P2…Pnと定義する。ピッチP1は最も巻枠部32Aの他端側(X2側)寄りの導線51A、51A間の距離である。同様に、巻枠部32Aの他端側(X2側)から一端側(X1側)に向け、順次導線51A同士間の距離をピッチP2、P3…Pnと呼ぶ。なお、最も巻枠部32Aの一端側(X1側)寄りの導線51A、51A間の距離をPnとする。もちろんピッチP1〜Pnは上層導線51A同士間の距離、または下層導線51A同士間の距離であるが、隣り合う上層導線51Aと下層導線51Aの間の距離ではないことは言うまでもない。
【0040】
さらに、巻枠部32Aの幅狭面(XZ面)において、隣り合う導線51Aと導線51Aとの間の間隔をピッチSP1、SP2…SPmと定義する。ピッチSP1は最も巻枠部32Aの他端側(X2側)寄りの導線51A、51A間の距離である。同様に、巻枠部32Aの他端側(X2側)から一端側(X1側)に向け、順次導線51A同士間の距離をピッチSP2、SP3…SPmと呼ぶ。なお、最も巻枠部32Aの一端側(X1側)寄りの導線51A、51A間の距離をSPmとする。ここでは、後述とおり、巻枠部32Aの側面(幅狭面、XZ面とも呼ばれる)においては、上層導線51Aと下層導線51Aが交互に同じ面内、即ち1層で並べ替えるため、ピッチSP1〜SPmは上層導線51A同士間の距離、または下層導線51A同士間の距離ではなく、隣り合う上層導線51Aと下層導線51Aの間の距離である。
【0041】
ここで、疎巻線部54Aにおいては、既に存在している下層の導線51Aの外側に、上層の導線51Aが隙間S1を有する状態で存在している。したがって、疎巻線部54Aでは、隙間S1の間隔(所謂ピッチP1〜Pn、またはSP1〜SPm中のいずれか)を狭く、または広くするように導線51Aを移動させることにより、インダクタンス値の調整を行うことを可能としている。
【0042】
特に、ピッチP1またはSP1を動かせるのは一番効果的である。その理由は、ピッチP1またはSP1を挟む導線51Aは最もコア20Aの端部に近いため、このコア20Aの端部から発する磁束の分布への影響は最も大きい。同様に、ピッチP2またはSP2を挟む導線51Aの影響力は2番目である。一方、ピッチPnまたはSPmを挟む導線51Aは磁束分布への影響は最も小さく、一般的には移動させたり、ピッチ長を変更させたりしない。よって、ピッチP1の長さはピッチPnの長さに比べて異なるものである。
【0043】
また、インダクタンス値の微小調整においては、最も巻枠部32Aの他端側(X2側)の一本目の導線51Aを動かせれば良いので、このとき、ピッチSP1だけが変化し、他のピッチSP1〜SPm、またはピッチP1〜Pnは変わらない。言い換えれば、この場合、ピッチSP1の長さはピッチSPmと異なるが、ピッチP1の長さはピッチPnと同じである。
【0044】
さらに、上述どおり、インダクタンス値を調整するためには、ピッチP1〜Pn、またはSP1〜SPmの長さを長くしたり、短くしたりすることができるが、各ピッチの長さを短くすることが好ましい。即ち、ピッチP1の長さはピッチPnの長さより短い、またはピッチSP1の長さはピッチSPmの長さより短くすることが好ましい。
【0045】
また、下層の導線51Aと上層の導線51Aとは、交差する(クロスする)状態で巻回されているので、上層の導線51Aは、下層の導線51Aに対して、移動させ易い状態となっている。この様子を、
図6および
図7に示す。
図6は、本実施の形態に係るアンテナ装置10Aにおける下層の導線51Aと上層の導線51Aの巻回状態を拡大して示す平面図である。
図7は、比較例としてのアンテナ装置における下層の導線と上層の導線の巻回状態を拡大して示す平面図である。
【0046】
図6に示すように、下層の導線51Aと上層の導線51Aとが交差する(クロスする)状態のとき、上層の導線51Aは、隣り合う下層の導線51Aの間の凹みに落ち込むことが少なく、その下層の導線51Aに載置されたままスライドする。このとき、上層の導線51Aは、下層の導線51Aに対して接触面積が少ない状態で、スライドする。
【0047】
一方、
図7に示すように、下層の導線51Aと上層の導線51Aとは、交差せずに同じ向きに巻回されている場合、上層の導線51Aは、隣り合う下層の導線51Aの間の凹みに落ち込んだ状態となりがちとなる。そして、隣接する上層の導線51Aも、同様に凹みに落ち込んだ状態となっている。したがって、上層の導線51Aを下層の導線51Aに対してスライドさせる場合、対象となる上層の導線51Aと、隣接部位を含む周囲の上層の導線51Aに対して、凹みから下層の導線51Aの頂部へと持ち上げる必要があり、非常にスライドさせにくい状態となっている。
【0048】
次に、接続端子60Aについて説明する。
図1から
図3に示す接続端子60Aは、金属製の端子に対してプレス成形を行い略L字形状に形成したものである。この接続端子60Aは、外観が略L字形状をなすように設けられている。この略L字形状をなすために、接続端子60Aは、その途中部分で略直角をなすように折り曲げられている。このような略L字形状の接続端子60Aには、差込片部61Aと絡げ部62Aとが設けられている。これらのうち、差込片部61Aは、接続端子60Aのうち幅方向(Y方向)に延伸する部分であり、上述したコネクタ接続部40Aのコネクタ穴に突出する部分である。また、絡げ部62Aは、上下方向(Z方向)に延伸する部分である。この絡げ部62Aは、導線51Aの端末が絡げられる部分となっている。
【0049】
また、ケース90Aは、アンテナ装置10Aの全体を覆う部分であり、上述したコイル50Aやボビン体30Aを覆うような筒形状に設けられている。なお、ケース90Aには、外部機器に取り付けられるための取付部位が存在していても良い。
【0050】
<アンテナ装置10Aの製造方法について>
以上のような構成のアンテナ装置10Aを製造する場合、射出成形によりボビン体30Aを形成し、また別途プレス成形により接続端子60Aを形成する。また、ボビン体30Aの形成後に、接続端子60Aを端子取付部35Aに位置させて、コネクタ接続部40Aのコネクタ穴に突出するように差し込む(接続端子挿入工程に対応)。
【0051】
この取り付けを行うのに前後して、コア挿入部34Aにコア20Aを取り付ける(コア挿入工程に対応)。その取り付けの後に、巻枠部32Aに導線51Aを巻回して、コイル50Aを形成する(コイル形成工程に対応)。このコイル形成工程においては、下層の導線51Aを巻回する場合、仕切部33Aまでは隣接する導線51Aが密接する状態で巻回する。それにより、下層側の密巻線部53Aが形成される。
【0052】
この下層側の密巻線部53Aに連続する状態で、巻枠部32Aのうち仕切部33Aよりも長手方向(X方向)の他方側(X2側)に導線51Aを巻回して、下層側の疎巻線部54Aを形成する。下層側の疎巻線部54Aを形成する場合においては、導線51Aと導線51Aの間に、比較的大きな隙間S1が存在する状態で巻回する。
【0053】
そして、巻枠部32Aの長手方向(X方向)の他方側(X2側)の端部に到達した後に、今度は下層の導線51Aとは逆向きの巻回方向となる状態で、仕切部33Aに向かって導線51Aを巻回する。したがって、上層の導線51Aは、下層の導線51Aに対して交差する(クロスする)状態で巻回される。
【0054】
上述のようなコイル50Aの形成に前後して、導線51Aの一方の端末を、一方の接続端子60A1の絡げ部62Aの先端側に絡げる。また、導線51Aの他方の端末は、コイル50Aの形成の後に、他方の接続端子60A2の絡げ部62Aに絡げる。それらの絡げの後に、たとえばディップ方式による半田付け等により、上述の絡げ部分を固定する。
【0055】
ここで、アンテナ装置10Aを製造した後に、インダクタンス値Lを調整する必要が生じる場合がある。このインダクタンス値Lは、次の式により求められる。
L=k×μ
0×π×a
2×n
2/b …(1)
上述の式(1)において、kは長岡定数であり、μ
0は透磁率であり、aはコイルの半径を表し、nは巻数を表し、bはコイル長さを表す。
【0056】
ここで、インダクタンス値Lを調整する場合、疎巻線部54Aにおいて、治具などを用いてコイル長さbを短くする(即ち、ピッチP1〜Pn、ピッチSP1〜SPmを縮める)方向へ導線51Aを移動させる。すなわち、疎巻線部54Aにおいて、所定の部位の隙間S1が狭くなる向きへと、導線51Aをスライドさせる。それにより、インダクタンス値Lが若干大きくなるように調整することができる。なお、治具などを用いた場合、疎巻線部54Aがアンテナ装置10Aの端部側に設けられることが好ましい。言い換えれば、密巻線部53Aがアンテナ装置10Aの端部側に設けられ、疎巻線部54Aが密巻線部53A及び端子取付部35A、コネクタ接続部40Aの間に配置する場合、隔壁35A2や、端子取付部35Aとコネクタ接続部40Aでの枠壁や、部品などが作業の障害になり、作業しにくいことがある。作業効率を上げるためには、疎巻線部54Aがアンテナ装置10Aの端部側に設けられることが好ましい。
【0057】
さらに、微小の調整を施すためには、疎巻線部54Aにおいては、隣り合う導線51Aは、それらの間にできるだけ所定の距離をおいた状態で隣接することが好ましい。よって、X方向において、疎巻線部54Aの長さは、密巻線部53Aより長さ以上であることが好ましい。更に、疎巻線部54Aの長さは密巻線部の長さと同等であることが更に好ましい。
【0058】
<効果について>
以上のような構成のアンテナ装置10Aによると、コア20Aと、コア20Aの外周側に配置されると共に、長手方向の中途に仕切部33Aが存在するボビン体30Aと、ボビン体30Aに導線51Aを巻回することにより形成されるコイル50Aとを備えている。また、コイル50Aには、ボビン体30Aの一方側(X1側)から仕切部33Aまで導線51Aの巻回密度を密な状態で巻回して形成される密巻線部53Aと、仕切部33Aからボビン体30Aの他方側(X2側)まで導線51Aの巻回密度を疎な状態で巻回することにより形成される疎巻線部54Aとが設けられている。さらに、疎巻線部54Aには、第1層(下層)と第2層(上層)とが設けられていて、第1層と第2層の巻線方向が異なることで、第1層を構成している導線51Aと第2層を構成している導線51Aとは交差する状態で重ねられている。
【0059】
このように、疎巻線部54Aにおいては、第1層(下層)を構成している導線51Aと第2層(上層)を構成している導線51Aとは交差する(クロスする)状態で重ねられている。したがって、第1層(下層)の導線51Aに対して、第2層(上層)の導線51Aをスライドさせ易くなる。したがって、構造が簡素でありながらも、インダクタンス値を容易に調整することが可能となる。
【0060】
また、アンテナ装置10Aでは、特許文献1に開示の構成のように、第2の磁性体コアといった別途の磁性体コアを用いる必要がなく、さらに、第2の磁性体コアに巻回された第2コイルを用いる必要もない。したがって、インダクタンス値の調整のための構造を簡素化することが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態では、ボビン体30Aの一方側(X1側)には、他方の接続端子60Aが取り付けられる端子取付部35Aが設けられていて、密巻線部53Aは、疎巻線部54Aよりも端子取付部35A側に設けられている。したがって、第2層(上層)の導線51Aをスライドさせ易い構成とすることができる。
【0062】
すなわち、疎巻線部54Aが、密巻線部53Aよりも端子取付部35A側に設けられている場合、疎巻線部54Aは、端子取付部35Aと、密巻線部53Aの間に挟まれているので、疎巻線部54Aには、コイル50Aにおいてフリー状態の端部が存在していない。したがって、第2層(上層)の導線51Aをスライドさせ難い。これに対して、密巻線部53Aは、疎巻線部54Aよりも端子取付部35A側に設けられる場合、疎巻線部54Aには、コイル50Aにおいてフリー状態の端部が存在し、それによって第2層(上層)の導線51Aをスライドさせ易くなる。このため、インダクタンス値の調整を容易に行うことが可能となる。
【0063】
さらに、本実施の形態では、疎巻線部54Aでは、ボビン体30Aの側壁部32A1において第1層(下層)を構成する導線51Aと、第2層(上層)を構成する導線51Aとが同一層内に位置するように配置されている。すなわち、第1層(下層)を構成する導線51Aと、第2層(上層)を構成する導線51Aとが、重ねられずに同一層内に位置している。そのため、巻枠部32Aの天面32A2側および底面32A3側では、第1層(下層)における導線51Aの間隔、および第2層(上層)における導線51Aの間隔を、比較的大きく確保することができる。したがって、インダクタンス値の調整を行い易い構成を実現可能となる。
【0064】
また、側壁部32A1では、第2層(上層)の導線51Aをスライドさせると、隙間S1を超えるスライドでは、隣接する第1層(下層)の導線51Aもスライドさせることができる。それにより、たとえば第2層(上層)の導線51Aのみをスライドさせることによる、コイル50Aの巻崩れを防止可能となる。さらに、コイル50Aに対して、スライドした後の位置は固定されることが要求される。ここで、側壁部32A1に対して、第2層及び第1層の導線51Aは共に接触するため、コイル50Aの巻締め力、および導線51Aと側壁部32A1との間の摩擦力により、余計の固定構造を必要とせずに、スライドした後の導線51Aの位置が簡単に固定できる。
【0065】
また、本実施の形態では、第1層(下層)の導線51Aと第2層(上層)の導線51Aとは、ボビン体30Aの長手方向(X方向)に直交する幅方向に対して3度〜177度の範囲内の角度で交差している。このように構成する場合、第1層(下層)の導線51Aに対して、第2層(上層)の導線51Aは、6度〜174度の範囲内の角度で交差する。このため、第1層(下層)の導線51Aの上層側に、第2層(上層)の導線51Aが乗り易い(クロスし易い)構成を実現可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、疎巻線部54Aの長さは、密巻線部53Aの長さより長く設けることができる。この場合には、疎巻線部54Aにおいて導線51A同士の間隔を所定の距離以上設けることができ、それによってインダクタンス値Lの微小な調整を行い易くなる。
【0067】
また、本実施の形態では、疎巻線部54Aの長さは密巻線部53Aの長さと同等とすることもできる。この場合には、密巻線部53Aでインダクタンス値Lを所定以上確保しながら、疎巻線部54Aでインダクタンス値Lの微小な調整を行える。
【0068】
さらに、本実施の形態では、ボビン体30Aの長手方向(X方向)において、最も他方側(X2側)に位置する隣り合う導線51A同士間の距離は、最も一方側(X1側)に位置する隣り合う導線51A同士間の距離と異なっている。このため、最も他方側(X2側)に位置する導線51Aを動かしつつ、最も一方側(X1側)に位置する導線51Aは動かさないようにすることもできる。この場合には、コア20Aの他端側(X2側)に近い最も他方側(X2側)の導線51Aのみを動かすことで、磁束の分布への影響を大きくすることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、ボビン体30Aの長手方向(X方向)において、最も他方側(X2側)に位置する隣り合う導線51A同士間の距離は、最も一方側(X1側)に位置する隣り合う導線51A同士間の距離より短く設けることができる。この場合には、最も他方側(X2側)に位置する導線51Aを動かす場合、インダクタンス値Lの微小な調整を行うことができる。
【0070】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る、アンテナ装置10Bについて、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aと共通の構成については、その説明を省略するものの、その符号の末尾に、第1の実施の形態に関連するアルファベット「A」に代えてアルファベット「B」を付すものとする。なお、アルファベット「B」は、第2の実施の形態に関連する構成とする。したがって、第2の実施の形態では説明および図示等しないものの第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aと同様の構成についても、アルファベット「B」を付して説明する場合があるものとする。
【0071】
図8は、第2の実施の形態に係るアンテナ装置10Bの構成を示す斜視図である。
図9は、
図8に示すアンテナ装置10Bのボビン体30Bおよび接続端子60Bの構成を示す斜視図である。本実施の形態のアンテナ装置10Bの端子取付部35Bにおいては、上述した第1の実施の形態のアンテナ装置10Aの端子取付部35A付近とは異なる構成となっている。また、本実施の形態のアンテナ装置10Bのコネクタ接続部40Bは、上述した第1の実施の形態のアンテナ装置10Aのコネクタ接続部40Aとは異なる構成となっている。
【0072】
具体的には、端子取付部35Bには、接続端子60Bは一対ではなく、合計3つ設けられている。具体的には、接続端子60B1,60B2,60B3が存在している。
図10は、3つの接続端子60B1,60B2,60B3の形状を示す平面図である。
図10に示すように、3つの接続端子60Bのうち、接続端子60B1は、幅方向(Y方向)の手前側(Y1側)に位置する接続端子60B1である。また、接続端子60B2は、接続端子60B1に対して、幅方向(Y方向)の奥側(Y2側)に位置している。さらに、接続端子60B3は、接続端子60B1および接続端子60B2よりも、長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置している。
【0073】
ここで、接続端子60B1には、差込片部61Bと、絡げ部62Bと、上下延伸部63Bとが設けられている。差込片部61Bは、長手方向(X方向)に延伸する部分であり、上述した差込片部61Aと同様の部分となっている。そのため、差込片部61Bの一方側(X1側)は、コネクタ接続部40Bのコネクタ穴の内部に突出し、コネクタ穴に差し込まれる外部のコネクタと電気的に接続可能となっている。
【0074】
また、絡げ部62Bは、上述した絡げ部62Aと同様に、導線51Bの一方の端末が絡げられる部分となっている。また、上下延伸部63Bは、上下方向(Z方向)に延伸している部分である。このため、差込片部61Bと絡げ部62Bとは、高さ方向(Z方向)の位置が異なっている。
【0075】
また、接続端子60B2には、差込片部61Bと、チップ支持片部64Bとが設けられている。差込片部61Bは、接続端子60B1における差込片部61Bと同様の構成である。また、チップ支持片部64Bは、差込片部61Bよりも幅方向(Y方向)の寸法が大きく設けられている部分である。このチップ支持片部64Bは、その両端側がボビン体30Aの樹脂部分に入り込んでいるものの、両端の間の部分は、開口部35B1に露出している。このチップ支持片部64Bには、チップ状のコンデンサ100Bの一方側が、電気的に接続される状態で取り付けられている。
【0076】
また、接続端子60B3には、絡げ部62Bと、チップ支持片部64Bとが設けられている。絡げ部62Bには、導線51Bの他方の端末が絡げられる。また、チップ支持片部64Bには、コンデンサ100Bの他方側が、電気的接続される状態で取り付けられている。
【0077】
また、端子取付部35Bにおいては、接続端子60Bは、ボビン部31Bの底面32B3よりも上方側(Z1側)へ突出しないように設けられている。このような構成とするために、端子取付部35Bの底壁35B3は、底面32B3よりも厚肉に設けられている。そして、この底壁35B3に、上述した接続端子60B1〜60B3の一部が、たとえばインサート成形によって形成されることで、埋め込まれた状態となっている。
【0078】
ここで、第1の実施の形態におけるアンテナ装置10Aのボビン体30Aにおいては、端子取付部35Aとコア挿入部34Aとを区切る隔壁35A2が設けられている。しかしながら、本実施の形態のボビン体30Bにおいては、そのような隔壁に相当する構成が設けられていない。また、
図9に示すように、接続端子60Bは、底面32B3よりも上方側(Z1側)へ突出していない。したがって、コア20Bは、端子取付部35B側に移動可能となっている。
【0079】
なお、コア20Bは、上述の第1の実施の形態におけるコア20Aと同様に、コア保持突起32B6と、他端側(X2側)における導線の巻締めによるボビン部31Bの内壁とにより、コア挿入部34B内で保持された状態となっている。
【0080】
また、コネクタ接続部40Bは、第1の実施の形態におけるコネクタ接続部40Aとは異なり、長手方向(X方向)に沿うように設けられている。そして、端子取付部35Bとコネクタ接続部40Bとを区切る部分には、鍔部43Bが設けられている。鍔部43Bは、本実施の形態では、矩形の板状に設けられていて、この鍔部43Bの外周縁部には、段部44Bが設けられている。この段部44Bには、ケース90Aの開口縁部が嵌合する構成となっている。
【0081】
<効果について>
本実施の形態に係るアンテナ装置10Bに関しても、上述した第1の実施の形態に係るアンテナ装置10Aと同様の効果を発揮させることが可能となる。
【0082】
加えて、本実施の形態では、ボビン体30Bには、隔壁35A2に相当する構成が存在せず、しかも接続端子60Bは、底面32B3よりも上方側(Z1側)へ突出していない。このため、コア挿入部34Bの内部において、端子取付部35B側にスライドさせることが可能となっている。そのため、疎巻線部54Bにおける、第1層(上層)の導線51Bのスライドによるインダクタンス値の調整の他に、コア20Bをスライドさせることで、インダクタンス値を増減(疎巻線部54Bにおいてスライドを行わない場合には、特にインダクタンス値の減少)させるように調整することが可能となる。
【0083】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0084】
上述の第1の実施の形態では、一対の接続端子60Aの間に、電子部品が取り付けられていないが、取り付けるようにしても良い。また、上述の第2の実施の形態では、電子部品としてコンデンサ100Bを取り付ける場合について説明しているが、抵抗等のような他の電子部品を取り付けるようにしても良い。なお、電子部品としては、面実装タイプとピンタイプのいずれでも良い。
【0085】
また、上述の各実施の形態では、疎巻線部54A,54Bが長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置し、密巻線部53A,53Bが長手方向(X方向)の一方側(X1側)に位置する場合について説明している。しかしながら、このような構成には限られず、疎巻線部54A,54Bが長手方向(X方向)の一方側(X1側)に位置し、密巻線部53A,53Bが長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置する構成としても良い。
【0086】
また、疎巻線部54A,54Bを複数設け、疎巻線部54A,54Bの間に密巻線部53A,53Bが位置する構成を採用しても良い。また、密巻線部53A,53Bを複数設け、密巻線部53A,53Bの間に疎巻線部54A,54Bが位置する構成を採用しても良い。
【0087】
また、上述の各実施の形態では、コア20A,20Bが1つのみ存在する場合につい手述べている。しかしながら、コアは複数存在していても良い。また、ボビン体としては、密巻線部と疎巻線部とを形成可能であれば、どのような構成であっても良い。また、接続端子の本数も幾つであっても良く、その接続端子の構成も、どのような構成であっても良い。