(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0014】
<アクリル系ポリマー粒子の製造方法>
本発明の一実施形態であるアクリル系ポリマー粒子の製造方法は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及びカルボキシル基含有単量体を含む単量体(A)と、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)を前記単量体(A)の質量に対して0.5〜5質量%と、アルカリ金属の水酸化物(C)を前記カルボキシル基含有単量体に含まれるカルボキシル基のモル量に対して20〜80モル%と、セルロース系ポリマー(D)を前記単量体(A)の質量に対して0.01〜1質量%とを含有する単量体組成物を用意すること;及び、前記単量体(A)を懸濁重合すること、を含む。本明細書において、単量体組成物を用意することを「用意工程」という場合があり、単量体(A)を懸濁重合することを「重合工程」という場合がある。アクリル系ポリマー粒子の製造方法は、更に任意の工程を含んでよい。
【0015】
[用意工程]
用意工程では、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及びカルボキシル基含有単量体を含む単量体(A)と、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)を前記単量体(A)の質量に対して0.5〜5質量%と、アルカリ金属の水酸化物(C)を前記カルボキシル基含有単量体に含まれるカルボキシル基のモル量に対して20〜80モル%と、セルロース系ポリマー(D)を前記単量体(A)の質量に対して0.01〜1質量%と、を少なくとも含有する単量体組成物を用意する。単量体組成物は、(A)〜(D)の成分以外の任意の成分を更に含有してよい。
【0016】
(単量体(A))
単量体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、カルボキシル基含有単量体とを少なくとも含む。単量体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及びカルボキシル基含有単量体以外の任意の単量体を更に含んでよい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、1つのアルキル基とを分子内に有する単量体である。本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」を総称する語として使用される。本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」と「メタクリロイル」を総称する語として使用される。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に含まれるアルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよく、直鎖状又は分岐状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10である。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オレイル、及び(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、又は(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、アクリル酸アルキルエステル単量体を含むことが好ましく、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0020】
カルボキシル基含有単量体は、少なくとも1つの重合性不飽和基と、少なくとも1つのカルボキシル基とを分子内に有する単量体である。重合性不飽和基は、好ましくは重合性炭素−炭素二重結合含有基であり、より好ましくはCH
2=CH−基(ビニル基)、CH
2=C(CH
3)−基、(メタ)アクリロイル基、及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群から選択される基である。カルボキシル基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、p−カルボキシベンジル(メタ)アクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。カルボキシル基含有単量体は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。カルボキシル基含有単量体は、(メタ)アクリル酸を含むことが好ましく、アクリル酸を含むことがより好ましい。
【0021】
任意の単量体としては、例えば、アルキルジ(メタ)アクリレート、アルキルトリ(メタ)アクリレート等の多官能の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル系単量体;ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、オキセタニル基等のカルボキシル基以外の官能基含有単量体などが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の含有量は、単量体(A)の合計質量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であることが更に好ましい。含有量が50質量%以上である場合、重合速度を高めることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の含有量は、カルボキシル基含有単量体の含有量を考慮し、単量体(A)の合計質量を基準として、例えば、99.5質量%以下、99.0質量%以下、又は98.0質量%以下であってよい。
【0023】
カルボキシル基含有単量体の含有量は、重合時の単量体組成物の分散安定性の観点から、単量体(A)の合計質量を基準として、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることが更に好ましい。カルボキシル基含有単量体の含有量は、単量体(A)の合計質量を基準として、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。含有量が20質量%以下である場合、懸濁重合によって得られる懸濁重合物の粘度を下げることができる。
【0024】
任意の単量体の含有量は、単量体(A)の合計質量を基準として、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。含有量が20質量%以下である場合、重合速度を高めることができる。
【0025】
単量体組成物中の単量体(A)の含有量は、溶媒を除いた単量体組成物の質量を基準として、70質量%以上100質量%未満である。単量体(A)の含有量が70質量%以上である場合、重合速度を高めることができる。単量体(A)の含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0026】
(アニオン性乳化剤(B))
単量体組成物は、前記単量体(A)の質量に対して0.5〜5質量%の、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)を含有する。アニオン性乳化剤(B)は、分子内にエチレンオキサイド構造を含み、更に、親水性基として少なくとも1つのアニオン性官能基と、少なくとも1つの親油性基を有する。アニオン性乳化剤(B)は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
アニオン性官能基の例として、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基等が挙げられる。塩に含まれるカチオンは、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等であってよい。親油性基は炭素原子を含有する1価の基であってよく、親油性基の例として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基等が挙げられる。親油性基は、好ましくは炭素数が6以上の1価の基である。
【0028】
アニオン性乳化剤(B)に含まれるエチレンオキサイド構造は、ポリエチレンオキサイド構造であってよい。アニオン性乳化剤(B)は、例えば、エチレンオキサイド構造の数が2個以上のポリエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤を含有する。ポリエチレンオキサイド構造に含まれるエチレンオキサイド構造の数は、好ましくは10個以上であり、より好ましくは20個以上、更に好ましくは30個以上、特に好ましくは50個以上である。アニオン性乳化剤(B)がポリエチレンオキサイド構造を含む場合、乳化剤の親水性が高まり、懸濁重合時の安定性がより高まる傾向がある。ポリエチレンオキサイド構造に含まれるエチレンオキサイド構造の数は、例えば100個以下であり、好ましくは90個以下であり、より好ましくは80個以下である。エチレンオキサイド構造の数が100個以下である場合、親水性と親油性のバランスが良好であり、懸濁重合時の安定性がより高まる傾向がある。
【0029】
アニオン性乳化剤(B)の重量平均分子量は、好ましくは500以上であり、より好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは1,500以上である。重量平均分子量が500以上である場合、乳化剤の親水性が高まり、懸濁重合時の安定性がより高まる傾向がある。アニオン性乳化剤(B)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは8,000以下であり、更に好ましくは6,000以下である。重量平均分子量が10,000以下である場合、親水性と親油性のバランスが良好であり、懸濁重合時の安定性がより高まる傾向がある。
【0030】
本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルバーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0031】
アニオン性乳化剤(B)は、例えば、下記式(I)で表される化合物又は下記式(II)で表される化合物であってよい。
【0033】
式(I)中、Rは、炭素原子を含む1価の基を表し、Xは、アニオン性官能基を表し、nは、1以上の数を表す。
【0035】
式(II)中、Rは、炭素原子を含む1価の基を表し、R’は、炭素原子を含む2価の基を表し、Xは、アニオン性官能基を表し、nは、1以上の数を表す。
【0036】
Rの例として、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基等が挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。アルキル基の炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは8〜18、更に好ましくは8〜16である。アルケニル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。アルケニル基の炭素数は、好ましくは8〜20、より好ましくは8〜18、更に好ましくは8〜16である。アリール基は、単環、複数の環を含む縮合環(ナフタレン、アントラセン等)、共有結合により結合された複数の環を含む多環(ビフェニル、ターフェニル等)であってよい。アリール基の炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜18、更に好ましくは6〜16である。ヘテロアリール基は、単環、複数の環を含む縮合環(ベンゾチオフェン、ベンゾピリジン等)、共有結合により結合された複数の環を含む多環(ビチオフェン、ビピリジン等)であってよい。ヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜18、更に好ましくは2〜16である。
【0037】
Rは、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。好ましいアルキル基の例として、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。好ましいアリール基の例として、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0038】
R’の例として、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜5である。アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよい。アルケニレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜5である。
【0039】
Xは、アニオン性官能基を表し、Xの例として、−COO
−Y
+、−SO
3−Y
+、−PO(O
−Y
+)
2等が挙げられる。Y
+の例として、それぞれ独立に、H
+、Na
+、K
+、NH
4+等が挙げられる。
【0040】
nは、1以上の数を表し、2以上であることが好ましい。nは、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上又は30以上であり、更に好ましくは50以上である。nは、好ましくは100以下であり、より好ましくは90以下であり、更に好ましくは80以下である。
【0041】
アニオン性乳化剤(B)の例として、カルボン酸型アニオン性乳化剤、スルホン酸型アニオン性乳化剤、硫酸エステル型アニオン性乳化剤、リン酸エステル型アニオン性乳化剤等が挙げられる。懸濁重合時の安定性の観点から、硫酸エステル型アニオン性乳化剤が好ましい。
【0042】
アニオン性乳化剤(B)の市販品として、例えば、日本乳化剤株式会社製の「ニューコール(R)1000−SN」、「ニューコール(R)1105−SN」、「ニューコール(R)1305−SN」、「ニューコール(R)1703−SFD」、「ニューコール(R)707−SF」、「ニューコール(R)707−SFC」、「ニューコール(R)707−SN」、「ニューコール(R)723−SF」、「ニューコール(R)740−SF」(式(I)で表される化合物(Rはアリール基、Xは−SO
3−Y
+、YはNH
4+))、花王株式会社製の「ラテムルE−118B」、「ラテムルE−150」(式(I)で表される化合物(Rはアルキル基、Xは−SO
3−Y
+、YはNa
+))、ライオン株式会社製の「サンノールTD−3130」(式(I)で表される化合物(Rはアルキル基、Xは−SO
3−Y
+、YはNa
+))等が挙げられる。
【0043】
アニオン性乳化剤(B)の含有量は、前記単量体(A)の質量を基準として、0.5〜5質量%である。アニオン性乳化剤(B)の含有量が0.5質量%以上である場合、懸濁重合時の安定性に優れる傾向がある。アニオン性乳化剤(B)の含有量は、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上である。アニオン性乳化剤(B)の含有量が5質量%以下である場合、得られる粘着シートの粘着力が高まる傾向がある。アニオン性乳化剤(B)の含有量は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0044】
(アルカリ金属の水酸化物(C))
単量体組成物は、カルボキシル基含有単量体に含まれるカルボキシル基のモル量に対して20〜80モル%の、アルカリ金属の水酸化物(C)を含有する。アルカリ金属の水酸化物(C)の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0045】
アルカリ金属の水酸化物(C)の含有量は、カルボキシル基含有単量体に含まれるカルボキシル基のモル量を基準として、20〜80モル%である。アルカリ金属の水酸化物(C)の含有量が20モル%以上である場合、懸濁重合時の安定性に優れる傾向がある。アルカリ金属の水酸化物(C)の含有量は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上である。アルカリ金属の水酸化物(C)の含有量が80モル%以下である場合、懸濁重合時の安定性に優れる傾向がある。アルカリ金属の水酸化物(C)の含有量は、好ましくは75モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。
【0046】
(セルロース系ポリマー(D))
単量体組成物は、前記単量体(A)の質量に対して0.01〜1質量%の、セルロース系ポリマー(D)を含有する。セルロース系ポリマー(D)の例には、セルロース、及び、ヒドロキシル基の一部又は全部が炭素原子を含有する1価の基により置換されたセルロースが含まれる。セルロース系ポリマー(D)は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
炭素原子を含有する1価の基として、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1〜3)、アルコキシル基(例えば、炭素数1〜3)、カルボキシアルキル基(例えば、アルキル基の炭素数1〜3)、ヒドロキシアルキル基(例えば、アルキル基の炭素数1〜3)、アルキレンオキサイド含有基(例えば、アルキレン基の炭素数2又は3)等が挙げられる。アルキレンオキサイド含有基の例として、アルコキシアルキル基、カルボキシアルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、ポリ(アルキレンオキサイド)含有基等が挙げられる。
【0048】
セルロース系ポリマー(D)は、エーテル化度が、0.5〜1.5であることが好ましく、0.6〜1.4であることがより好ましく、0.7〜1.3であることが更に好ましい。エーテル化度が0.5以上である場合、懸濁重合時の粘度が十分となり、懸濁重合で得られる粒子の安定性を高めることができる。エーテル化度が1.5以下である場合、セルロース系ポリマー(D)の水への溶解度が高く、取扱いが容易となる傾向がある。
【0049】
セルロース系ポリマー(D)を1質量%の濃度で含有する水溶液を調製し、該水溶液の粘度を測定した場合、粘度は、好ましくは500mP・s以上であり、より好ましくは1,000mP・s以上であり、更に好ましくは1,500mP・s以上である。粘度が500mP・s以上である場合、懸濁重合時の粘度が十分となり、懸濁重合で得られる粒子の安定性を高めることができる。水溶液の粘度は、好ましくは20,000mP・s以下であり、より好ましくは15,000mP・s以下であり、更に好ましくは10,000mP・s以下である。粘度が20,000mP・s以下である場合、セルロース系ポリマー(D)の水への溶解度が高く、取扱いが容易となる傾向がある。粘度は、BL型粘度計を使用し、25℃、ローターNo.4番、60回転、で測定することができる。
【0050】
セルロース系ポリマー(D)は、例えば、下記式(III)で表される構造を含むポリマーであってよい。
【0052】
式(III)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子を含む1価の基を表す。nは、2以上の数を表す。炭素原子を含む1価の基として、例えば、−C
pH
2p+1、−C
pH
2pCOOH、−C
pH
2pCOO
−Y
+、−C
pH
2pOH、−(C
pH
2pO)
qC
rH
2r+1等が挙げられる。pは、1以上の整数を表し、qは、1以上の整数を表し、rは、0以上の整数を表す。Yは、H
+、Na
+、K
+、NH
4+等のカチオンを表す。
【0053】
セルロース系ポリマー(D)の例として、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。懸濁重合時の安定性の観点から、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0054】
セルロース系ポリマー(D)の市販品として、例えば、ダイセルミライズ株式会社製の「CMCダイセル(カルボキシメチルセルロースナトリウム、品番1180、1190、1380、1390、2200、2260、2280)」(式(III)で表される構造を含むポリマー(Rは、それぞれ独立に、−H又は−CH
2COONa))、「HECダイセル(ヒドロキシエチルセルロース、品番SP600、SP850、SP900、SE600、SE850、SE900)」(式(III)で表される構造を含むポリマー(Rは、それぞれ独立に、−H又は−(CH
2CH
2O)
qH(qは2以上の数)));信越化学工業株式会社製の「食品添加物用メトローズ(R)メチルセルロース(MCEタイプ)、グレード:1500、4000」(式(III)で表される構造を含むポリマー(Rは、それぞれ独立に、−H又は−CH
3))、「食品添加物用メトローズ(R)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(SFEタイプ、SEタイプ、NEタイプ)、グレード:4000」(式(III)で表される構造を含むポリマー(Rは、それぞれ独立に、−H、−CH
3又は−CH
2CHOHCH
3))、「メトローズ(R)メチルセルロース(MC)(SMタイプ)、グレード:4000、8000」(式(III)で表される構造を含むポリマー(Rは、それぞれ独立に、−H又は−CH
3))、「メトローズ(R)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(60SHタイプ、65SHタイプ、90SHタイプ)、グレード:4000、10000、15000、30000」(式(III)で表される構造を含むポリマー(Rは、それぞれ独立に、−H、−CH
3又は−CH
2CHOHCH
3))、「メトローズ(R)ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)(SEBタイプ、SNBタイプ)、グレード:04T、30T、60T」(式(III)で表される構造を含むポリマー(Rは、それぞれ独立に、−H、−CH
3又は−CH
2CHOH))等が挙げられる。
【0055】
(任意の成分)
単量体組成物は、(A)〜(D)の成分以外の任意の成分を更に含有してよい。単量体組成物は、通常、溶媒を含有する。溶媒は水を含むことが好ましい。溶媒は、例えば、水のみからなる溶媒であっても、又は、水と、アルコール等の親水性溶媒とを含む混合溶媒であってもよい。任意の成分として、重合開始剤;連鎖移動剤;増粘剤;セルロース系ポリマー以外のポリマー;ノニオン系乳化剤、分子内にエチレンオキサイド構造を含まないアニオン性乳化剤等の乳化剤などが挙げられる。
【0056】
重合開始剤は、油溶性重合開始剤であることが好ましい。油溶性重合開始剤の例として、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t−ブチルペルオキシビバラート、t−ブチルペルオキシベンゾアート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスメチルイソブチラート等が挙げられる。重合開始剤は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。懸濁重合時の反応速度の観点から、有機過酸化物が好ましく、ベンゾイルペルオキシドがより好ましい。
【0057】
重合開始剤の含有量は、単量体組成物の全質量を基準として0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.8質量%であることがより好ましく、0.1〜0.5質量%であることが更に好ましい。0.01質量%以上である場合、懸濁重合時の重合反応が速やかに進む傾向がある。1質量%以下である場合、懸濁重合時の重合反応が急激に発生せず、反応熱を制御できる。
【0058】
連鎖移動剤は、例えば、スルフヒドリル基又はヒドロキシル基を有する化合物であってよい。スルフヒドリル基を有する化合物の例として、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエチルアルコール、ドデシルメルカプタン、メルカプトコハク酸等チオール;メルカプトプロピオン酸n−ブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸アルキル;メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキルなどが挙げられる。ヒドロキシル基を有する化合物の例として、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコールなどが挙げられる。連鎖移動剤は、1種を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
連鎖移動剤の含有量は、単量体組成物の全質量を基準として0〜0.5質量%であることが好ましく、0〜0.4質量%であることがより好ましく、0〜0.3質量%であることが更に好ましい。0.5質量%以下である場合、懸濁重合で得られるアクリル粒子のゲル分率が高まり、アクリル粒子から得られる粘着シートの再剥離性が良好になる。
【0060】
(単量体組成物)
単量体組成物を用意することは、(A)〜(D)の成分、及び、必要に応じて任意の成分を混合して単量体組成物を得ることであってよい。混合方法に特に限定はなく、容器内に順に全ての成分を加え、撹拌する方法を用いることができる。又は、1つの容器内に一部の成分を順に加え撹拌して組成物を得て、別の容器内に残りの成分を順に加え撹拌して組成物を得て、その後に2つの組成物を混合して撹拌する方法を用いることができる。
【0061】
単量体組成物の粘度は、例えば、100〜5,000mPa・sである。粘度が100mPa・s以上である場合、単量体組成物の安定性が高まり、親水性成分と親油性成分が分離しにくくなる。粘度は、好ましくは150mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上である。粘度が5,000mPa・s以下である場合、懸濁重合時の粘度が低くなり、重合が進みやすくなる。粘度は、好ましくは3,000mPa・s以下、より好ましくは1,000mPa・s以下である。本明細書において、粘度は、BL型粘度計を使用し、25℃、ローターNo.3番、回転数60rpmで測定できる。
【0062】
粘度を調整する方法として、例えば、単量体組成物中のセルロース系ポリマー(D)の含有量を増やす、単量体組成物中の溶媒の含有量を減らして単量体(A)の含有量を増やす、単量体(A)中のカルボキシル基含有単量体の含有量を増やすなどにより粘度を高めることができる。一方で、例えば、単量体組成物中のセルロース系ポリマー(D)の含有量を減らす、単量体組成物中の溶媒の含有量を増やして単量体(A)の含有量を減らす、単量体(A)中のカルボキシル基含有単量体の含有量を減らすなどにより粘度を低くすることができる。
【0063】
[重合工程]
重合工程では、単量体(A)を懸濁重合する。重合反応温度は、重合速度を高める観点から、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。重合反応温度は、安全性の観点から、96℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。重合反応時間は、安全性の観点から、4時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましい。重合反応時間は、生産性の観点から、12時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。
【0064】
単量体組成物を用いた単量体(A)の懸濁重合により、アクリル系ポリマー粒子を含有する懸濁重合物が得られる。アクリル系ポリマー粒子は、単量体(A)が懸濁重合することにより得られる粒子である。懸濁重合物には、更に、反応することなく残存した各成分、反応副生物等が含まれ得る。
【0065】
[任意の工程]
アクリル系ポリマー粒子の製造方法は、任意の工程として、アクリル系ポリマー粒子を中和する工程、アクリル系ポリマー粒子を懸濁重合物から分離する工程、アクリル系ポリマー粒子を洗浄する工程等を更に含んでもよい。中和には、塩基性化合物を使用することができる。塩基性化合物として、例えば、アンモニア;モノエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0066】
[アクリル系ポリマー粒子]
アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは60μm以上である。アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは95μm以下、更に好ましくは90μm以下である。本明細書においてアクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は、体積基準の粒度分布により求められるメジアン径(D50)である。平均粒子径は、レーザー式粒子径測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT−3300」)を用いて測定できる。なお、測定には、測定に適した濃度になるように、必要に応じて懸濁重合物を水で希釈して調製した試料を使用することができる。
【0067】
本発明の実施形態の製造方法によれば、所望の平均粒子径、特に大きな平均粒子径を有するアクリル系ポリマー粒子を製造することができる。製造方法に使用される単量体組成物は、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)とセルロース系ポリマー(D)とを含有する。これにより、懸濁重合において単量体組成物の分散安定性が向上し、単量体(A)を適度な大きさで単量体組成物中に分散させ、かつ、単量体組成物が単量体(A)を含む層と溶媒を含む層とに分離することを防止できると考えられる。その結果、大きな平均粒子径を有するアクリル系ポリマー粒子を得ることが可能となる。
【0068】
アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は、例えば、単量体組成物に含まれるアニオン性乳化剤(B)、アルカリ金属水酸化物(C)等の成分の含有量を変更することによって調整できる。アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は、単量体組成物の分散安定性が良好な場合に大きくできる傾向がある。
【0069】
例えば、アニオン性乳化剤(B)の含有量が大きいほどアクリル系ポリマー粒子の平均粒子径が小さくなる傾向があり、アニオン性乳化剤(B)の含有量が小さいほどアクリル系ポリマー粒子の平均粒子径が大きくなる傾向がある。例えば、アルカリ金属の水酸化物(C)の含有量が大きいほどアクリル系ポリマー粒子の平均粒子径が小さくなる傾向があり、アルカリ金属水酸化物(C)の含有量が小さいほどアクリル系ポリマー粒子の平均粒子径が大きくなる傾向がある。
【0070】
アクリル系ポリマー粒子は、種々の用途に使用できる。アクリル系ポリマー粒子は、例えば、充填剤、スペーサー、担体等として、粘着剤、接着剤、塗料、ペースト、化粧品、医薬品等の各種の分野で用いることができる。
【0071】
<アクリル系ポリマー粒子>
本発明の一実施形態であるアクリル系ポリマー粒子は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及びカルボキシル基含有単量体を含む単量体(A)と、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)を前記単量体(A)の質量に対して0.5〜5質量%と、アルカリ金属の水酸化物(C)を前記カルボキシル基含有単量体に含まれるカルボキシル基のモル量に対して20〜80モル%と、セルロース系ポリマー(D)を前記単量体(A)の質量に対して0.01〜1質量%とを含有する単量体組成物中で、前記単量体(A)を懸濁重合して得られる。
【0072】
アクリル系ポリマー粒子の製造方法に関する説明を、ここでのアクリル系ポリマー粒子に適用することができる。すなわち、各成分、単量体組成物、懸濁重合の方法、アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径等については、上述のとおりである。
【0073】
<アクリル系ポリマー粒子含有組成物>
本発明の一実施形態であるアクリル系ポリマー粒子含有組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及びカルボキシル基含有単量体を含む単量体(A)と、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)を前記単量体(A)の質量に対して0.5〜5質量%と、アルカリ金属の水酸化物(C)を前記カルボキシル基含有単量体に含まれるカルボキシル基のモル量に対して20〜80モル%と、セルロース系ポリマー(D)を前記単量体(A)の質量に対して0.01〜1質量%とを含有する単量体組成物の懸濁重合物を含む。
【0074】
アクリル系ポリマー粒子の製造方法に関する説明を、ここでのアクリル系ポリマー粒子含有組成物に適用することができる。すなわち、各成分、単量体組成物、懸濁重合の方法、懸濁重合物、アクリル系ポリマー粒子等については、上述のとおりである。アクリル系ポリマー粒子含有組成物は、単量体組成物の懸濁重合物であってよい。又は、アクリル系ポリマー粒子含有組成物は、単量体組成物の懸濁重合物に、溶媒、添加剤等の任意の成分を加えた組成物であってよい。
【0075】
アクリル系ポリマー粒子含有組成物中のアクリル系ポリマー粒子(A)の含有量は、アクリル系ポリマー粒子含有組成物の質量を基準として、例えば20〜70質量%である。前記の含有量は、アクリル系ポリマー粒子含有組成物を用いて後述の水性粘着剤を製造する場合に適した含有量である。アクリル系ポリマー粒子(A)の含有量は、30〜65質量%であってよく、40〜60質量%であってよい。
【0076】
<水性粘着剤>
本発明の一実施形態である水性粘着剤は、前記実施形態のアクリル系ポリマー粒子の製造方法により得られるアクリル系ポリマー粒子、前記実施形態のアクリル系ポリマー粒子、又は、前記実施形態のアクリル系ポリマー粒子含有組成物と、アクリル系ポリマー微粒子とを含有する。アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は好ましくは40〜100μmであり、アクリル系ポリマー微粒子の平均粒子径は好ましくは0.1〜0.6μmである。
【0077】
アクリル系ポリマー微粒子は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、カルボキシル基含有単量体及びヒドロキシル基含有単量体からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する単量体組成物を用い、乳化重合により得ることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及びカルボキシル基含有単量体の例は、上述のとおりである。ヒドロキシル基含有単量体の例として、上述のカルボキシル基含有単量体の例において、カルボキシル基をヒドロキシル基に置き換えた単量体が挙げられる。
【0078】
アクリル系ポリマー微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは0.6μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.4μm以下である。本明細書においてアクリル系ポリマー微粒子の平均粒子径は、アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径と同様の方法により測定できる。
【0079】
水性粘着剤を使用し、粘着剤層を形成することができる。粘着剤層では、アクリル系ポリマー微粒子がバインダーとして機能し、粘着剤層に粘着性を付与する。アクリル系ポリマー粒子はアクリル系ポリマー微粒子中に分散し、粘着剤層の表面に多数の突起を形成する。突起部分(凸部分)は、粘着剤層のタックを低下させる機能を有する。水性粘着剤は、アクリル系ポリマー粒子とアクリル系ポリマー微粒子とを含有することによって、適度な粘着力を有し、かつ、再剥離しやすい粘着剤層を形成できる。特にアクリル系ポリマー粒子の粒径が40〜100μmである場合に、良好な粘着剤層が得られる。
【0080】
アクリル系ポリマー微粒子の含有量は、アクリル系ポリマー粒子の質量を基準として、10〜100質量%であることが好ましい。アクリル系ポリマー微粒子の含有量が10質量%以上である場合、粘着力を高めることができる。アクリル系ポリマー微粒子の含有量が100質量%以下である場合、再剥離性が良好になる傾向がある。アクリル系ポリマー微粒子の含有量は、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは10〜50質量%である。
【0081】
水性粘着剤は、溶媒として水を含有する。水性粘着剤は、必要に応じて一般的な水性粘着剤に使用される添加剤を含有してもよい。添加剤の例として、中和剤、消泡剤、防腐剤、湿潤剤、レベリング剤、増粘剤、着色顔料、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などを配合することができる。
【0082】
水性粘着剤の不揮発分濃度は、水性粘着剤の質量を基準として、40〜60質量%であることが好ましい。不揮発分濃度が40質量%以上である場合、粘着剤の塗工時の乾燥性が良好である。不揮発分濃度が60質量%以下である場合、水性粘着剤の貯蔵安定性が良好である。不揮発分濃度は、より好ましくは40〜55質量%、更に好ましくは40〜50質量%である。
【0083】
水性粘着剤のゲル分率は、70〜100質量%であることが好ましい。ゲル分率が70質量%以上である場合、再剥離性が良好になる傾向がある。ゲル分率は、より好ましくは70〜95質量%、更に好ましくは70〜90質量%である。本明細書において「水性粘着剤のゲル分率」とは、溶媒を除いた水性粘着剤のゲル分率であり、水性粘着剤を基材に塗布した後、乾燥させて得られる粘着剤層(例えば、厚さ20g/m
2)を用いて測定できる。具体的には、水性粘着剤のゲル分率は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0084】
<粘着シート>
本発明の一実施形態である粘着シートは、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に接する粘着剤層とを有し、前記粘着剤層が、前記実施形態の水性粘着剤を用いて形成されている。粘着剤層の塗工量は、例えば、1〜20g/m
2である。
【0085】
基材の例として、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙等の紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。紙は、サイズ剤を定着させる方法により酸性紙と中性紙とに分類される。基材に中性紙を使用した場合、経時で粘着力が低下し難い粘着剤層が得られる傾向がある。
【0086】
粘着シートは、更に、粘着剤層の基材が接する面とは反対側の面に、剥離性シートを有していてもよい。剥離性シートの例として、シリコーン等により剥離性が付与された紙又はプラスチックフィルムが挙げられる。
【0087】
粘着シートは、例えば、水性粘着剤を剥離性シートに塗工し、乾燥させた後に、基材と貼り合わせる方法により製造できる。又は、粘着シートは、基材に水性粘着剤を塗工し、乾燥させた後に、剥離性シートと貼り合わせる方法により製造できる。粘着剤の塗工には、例えば、コンマコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等のロールコーター、スロットダイコーター、リップコーター、カーテンコーター等の公知の塗工装置を使用できる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例において「部」は、「質量部」、「%」は、「質量%」を示す。
【0089】
<製造例1>
[モノマー分散液(単量体組成物)の調製]
容器に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体として2−エチルヘキシルアクリレート95.0部を加え、更に油溶性開始剤として「ナイパーBW」(ベンゾイルパーオキサイドの75%粉末、日本油脂社製)0.27部を添加し、油溶性開始剤を2−エチルヘキシルアクリレートに溶解した。その後、容器にカルボキシル基含有単量体としてアクリル酸5.0部を添加してモノマー成分を得た。次に、別の容器に溶媒として脱イオン水47.3部と、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)として「ニューコール740SF」(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の30%水溶液、重量平均分子量3,000、日本乳化剤社製)3.3部と、アルカリ金属の水酸化物(C)として水酸化ナトリウムの25%水溶液9.5部と、セルロース系ポリマー(D)として「CMCダイセル2260」(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エーテル化度0.9、粘度3,000mPa・s、ダイセルミライズ社製)0.2部を加えて、水成分を得た。水成分にモノマー成分を加えて撹拌して混合し、単量体組成物として粘度800mPa・s、pH5のモノマー分散液を得た。モノマー分散液の安定性を以下の方法により評価した。各成分の含有量(固形分含有量(部))と、安定性の評価結果を表1に示す。
【0090】
重量平均分子量は、GPC測定装置(島津製作所社製LC−2030)を使用して測定した。セルロース系ポリマー(D)の粘度は、BL型粘度計を使用し、25℃、ローターNo.4番、60回転、で測定した。単量体組成物の粘度は、BL型粘度計を使用し、25℃、ローターNo.3番、60回転、で測定した。
【0091】
(モノマー分散液の安定性)
モノマー分散液を1時間静置させた後、モノマー分散液の安定性を下記の基準で評価した。
〇 :モノマー成分と水成分の分離無し。
× :モノマー成分と水成分の分離有り。
【0092】
[モノマー(単量体(A))の懸濁重合]
得られたモノマー分散液を滴下ロートに入れた。別途、撹拌機、冷却管、温度計及び前記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水46.3部を加え、フラスコ内部を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を80℃まで加熱した。その後、モノマー分散液を添加して、懸濁重合反応を開始した。内温を80℃に保持したままモノマー分散液を120分かけて滴下した後に、更に内温を80℃に保持したまま撹拌しながら反応を6時間にわたり継続した。その後、懸濁重合後に得られた組成物を冷却し、懸濁重合物としてアクリル系ポリマー粒子を含有するエマルションを得た。エマルションの不揮発分濃度は50%、粘度は100mPa・s、アクリル系ポリマー粒子の平均粒子径D50は70μmであった。
【0093】
粘度は、BL型粘度計を使用し、25℃、ローターNo.2番、60回転で測定した。平均粒子径D50は、レーザー式粒子径測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT−3300」)を用いて測定した。
【0094】
【表1】
【0095】
<製造例2〜22>
表1に示す化合物及び含有量に変更した以外は、製造例1と同様の方法によりアクリル系ポリマー粒子を含有するエマルションを得た。
【0096】
表1中に記載の略称は下記のとおりである。また、表1中に記載の成分として使用した商品は下記のとおりである。
・EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・BA:アクリル酸ブチル
・AA:アクリル酸
・ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩:ニューコール740SF、日本乳化剤社製
・ラウリル硫酸ナトリウム:エマール2FG、花王社製
・カルボキシメチルセルロースナトリウム:CMCダイセル2260、ダイセルミライズ社製(エーテル化度0.9、粘度3,000mPa・s)
・ヒドロキシエチルセルロース:HECダイセルSP900、ダイセルミライズ社製(粘度4, 000mPa・s)
・メチルセルロース:メトローズMCE−100TS、信越化学社製(粘度5, 000mPa・s)
・ポリアクリル酸:プライマルASE60、ダウ社製
・ウレタン増粘剤:アデカノールUH−541VF、ADEKA製
【0097】
表1に示すとおり、実施例の製造方法により、平均粒子径D50が45〜90μmであるアクリル系ポリマー粒子を製造することができた。
【0098】
<実施例1>
[バインダー(アクリル系ポリマー微粒子)の準備]
バインダーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とカルボキシル基含有単量体とを含有する単量体組成物を使用した乳化重合により調製されたアクリル系ポリマー微粒子を含有する水分散体を用意した。水分散体の不揮発分濃度は50%、アクリル系ポリマー微粒子の平均粒子径D50は0.3μmであった。アクリル系ポリマー微粒子の平均粒子径D50は、上記アクリル系ポリマー粒子と同じ装置を使用して測定した。
【0099】
[水性粘着剤の調製]
上記アクリル系ポリマー粒子を含有するエマルション(懸濁重合物)70部に対し、上記バインダーを含有する水分散体を30部、中和剤として25%アンモニア水を0.5部、消泡剤として「SNデフォーマー364」(鉱物油系消泡剤、サンノプコ社製)を0.3部、防腐剤として「レバナックスBX−150」(イソチアゾリン系防腐剤を含む、昌栄化学社製)を0.2部、レベリング剤として「ペレックスOT−P」(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、花王社製)0.4部、更にアルカリ型増粘剤として「プライマルASE−60」(ポリアクリル酸、ダウケミカル社製)1.0部を加えて、水性粘着剤を得た。水性粘着剤の粘度は、2,000mPa・sであった。粘度は、BL型粘度計を使用し、25℃、ローターNo.4番、回転数60rpmの条件で測定した。
【0100】
[粘着シートの作製(PETフィルム)]
得られた水性粘着剤を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに乾燥膜厚が約20g/m
2となるように塗工後、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ80μmの剥離性シート(グラシン紙)を貼り合わせ、温度23℃相対湿度50%の条件で24間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETフィルム」という構成の粘着シートを得た。得られた粘着シートを用いて以下の方法により粘着剤のゲル分率を測定した。
【0101】
(粘着剤のゲル分率(%))
200メッシュ金網の質量を測定する(その質量をMとする)。得られた粘着シートを5cm×5cmの大きさに切断し、200メッシュ金網に貼り合わせて試験片を得る。得られた試験片の質量を測定する(その質量をAとする)。なお200メッシュはJIS G3555で規定されたメッシュである。
その試験片を50mlの酢酸エチル中に50℃で1日放置する。その後に取り出し、100℃にて20分間乾燥させた後、質量を測定する(その質量をTとする)。
続いて試験片からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを取り出し、酢酸エチルを用いて粘着剤層を除去し、PETフィルムの質量を測定する(その質量をKとする)。得られた数値を下記数式(1)に代入してゲル分率を求める。
数式(1) ゲル分率=(T−M−K)×100/(A−M−K)
【0102】
[粘着シートの作製(コピー紙)]
シリコーン剥離液を厚さ70μmのコピー紙にアプリケーターで塗工し、100℃で1分間乾燥させて2枚の基材(基材1と基材2)を得た。次に、得られた水性粘着剤を、基材1のシリコーン剥離液が塗工されていない基材面に、乾燥後の厚さが5g/m
2になるようにアプリケーターで塗工を行い、100℃で1分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、基材2のシリコーン剥離液が塗工されている基材面を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で24間熟成することで「コピー紙(シリコーン未処理面)/粘着剤層/コピー紙(シリコーン処理面)」という構成の粘着シートを得た。
【0103】
<実施例2〜15、比較例1〜4>
表2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法により水性粘着剤及び粘着シートを製造した。
【0104】
【表2】
【0105】
<粘着シートの評価>
実施例及び比較例で得た粘着シートについて、以下の方法に従い、粘着力、再剥離性、及び保持力を評価した。
【0106】
(粘着力)
粘着シート(コピー紙)を23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさにカットし、試料とした。次いで、試料を23℃50%RH環境下で24時間放置した後、試料上で2kgロールを1往復させた。次いで、2枚のコピー紙を引き剥がして粘着力を測定した。なお、粘着力の測定は引張試験機(テンシロン社製RTG−1210)を用いて、180度の方向で、剥離速度:300mm/分で行い、平均粘着力を測定した。
粘着力は、下記の基準で評価した。
◎ :粘着力20mN/25mm以上。極めて良好。
〇 :粘着力10mN/25mm以上、20mN/25mm未満。良好。
△ :粘着力5mN/25mm以上、10mN/25mm未満。実用可。
× :粘着力5mN/25mm未満。実用不可。
【0107】
(再剥離性)
粘着シート(コピー紙)を23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさにカットし、試料とした。次いで、23℃50%RH環境下の雰囲気下で24時間放置した後、試料上で2kgロールを1往復させた。次いで、2枚のコピー紙を手で引き剥がして再剥離性を測定した。
再剥離性は、下記の基準で評価した。
◎ :再剥離性 紙破れ全く無し。極めて良好。
△ :再剥離性 紙破れわずかに発生。実用可。
× :再剥離性 紙破れ大きく発生。実用不可。
【0108】
(保持力)
粘着シート(コピー紙)を23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅15mmの大きさにカットし、試料とした。次いで、長さ15mm×幅15mmの面積の試料のコピー紙(シリコーン処理面)を剥がし、露出した粘着剤層をSUSに貼付け、2kgロールで1往復して粘着剤層とSUSとを圧着し、SUS付試料を得た。SUS付試料は測定環境の23℃50%RH条件で20分放置した後、200gの荷重を掛けて120分測定を行った。
保持力は、下記の基準で評価した。
◎ :保持力20分以上。極めて良好。
〇 :保持力10分以上、20分未満。良好。
△ :保持力5分以上、10分未満。実用可。
× :保持力5分未満。実用不可。
【0109】
表2に示すとおり、実施例のアクリル系ポリマー微粒子を用いることにより、優れた粘着力、再剥離性、及び保持力を有する粘着シートを製造することができた。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体及びカルボキシル基含有単量体を含む単量体(A)と、分子内にエチレンオキサイド構造を含むアニオン性乳化剤(B)を前記単量体(A)の質量に対して0.5〜5質量%と、アルカリ金属の水酸化物(C)を前記カルボキシル基含有単量体に含まれるカルボキシル基のモル量に対して20〜80モル%と、セルロース系ポリマー(D)を前記単量体(A)の質量に対して0.01〜1質量%とを含有する単量体組成物を用意すること、及び前記単量体(A)を懸濁重合することを含む、アクリル系ポリマー粒子の製造方法。