特許第6981522号(P6981522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6981522-熱硬化性樹脂組成物、およびその利用 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6981522
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、およびその利用
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20211202BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 73/14 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 15/18 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20211202BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H05K1/03 610N
   C08L79/08 C
   C08L63/00 Z
   C08K5/29
   C08K5/56
   C08K3/38
   C08K3/36
   C08L27/12
   C08L101/12
   C08G73/14
   H05K1/03 630H
   B32B27/34
   B32B27/20 Z
   B32B15/18
   B32B15/088
   B32B7/12
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-207200(P2020-207200)
(22)【出願日】2020年12月15日
【審査請求日】2021年9月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若田部 悟史
(72)【発明者】
【氏名】森 祥太
(72)【発明者】
【氏名】阪口 豪
(72)【発明者】
【氏名】田中 基貴
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−119361(JP,A)
【文献】 特開2019−163365(JP,A)
【文献】 特開2016−143751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
C08K 3/36
C08K 3/38
C08K 5/29
C08K 5/56
C08L 27/12
C08L 63/00
C08L 79/08
C08L 101/12
C08G 73/14
B32B 7/12
B32B 15/088
B32B 15/18
B32B 27/20
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイマージアミン(a−1)および、テトラカルボン酸無水物(a−2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、
エポキシ化合物(B−1)、マレイミド化合物(B−2)、イソシアネート基含有化合物(B−3)、金属キレート化合物(B−4)およびカルボジイミド基含有化合物(B−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(B)と、
フィラー(C)とを
含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が(イ)〜(ハ)を満たすことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
【請求項2】
前記硬化物の、0〜280℃における損失正接(tanδ)ピーク値が0.3以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)と反応し得る反応性官能基を1分子中に3個以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記硬化剤(B)を0.1〜20質量部含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(C)を5〜60質量部含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記フィラー(C)は、フッ素フィラー、窒化ホウ素、液晶ポリマーおよびシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種類、であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
プリント配線板の層間接着用部材として用いられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物から形成された、熱硬化性接着シート。
【請求項9】
請求項8記載の熱硬化性接着シートと、剥離フィルムとを具備する、剥離フィルム付き熱硬化性カバーシート。
【請求項10】
銅箔と絶縁性フィルムとが、請求項1〜7いずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物である接着層を介して積層されている、銅張積層板。
【請求項11】
請求項8記載の熱硬化性接着シートを用いてなる、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11記載のプリント配線板を具備する、電子機器。
【請求項13】
ダイマージアミン(a−1)および、テトラカルボン酸無水物(a−2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、
エポキシ化合物(B−1)、マレイミド化合物(B−2)、イソシアネート基含有化合物(B−3)、金属キレート化合物(B−4)およびカルボジイミド基含有化合物(B−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(B)と、
フィラー(C)とを
含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、
(イ)〜(ハ)を満たすことを特徴とする硬化物。
(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物とその硬化物に関する。本発明の熱硬化性樹脂組成物から形成される熱硬化性接着シートや剥離フィルム付き熱硬化性カバーシートは、銅張積層板の製造や、プリント配線板の回路面の保護に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年,電子機器の高密度化、高機能化の進展に伴い、用いられるプリント配線板に使用される材料においても更なる寸法安定性や優れた高周波特性が求められている。
例えば、特許文献1には、金属張積層板における接着層の50℃における貯蔵弾性率が1800MPaであり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下、さらにガラス転移温度(Tg)が180℃以下であることによって、導体の寸法安定性に優れ、高周波信号の伝送においても伝送損失の低減が可能な接着層を備えた多層回路基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020−72198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器、通信機器等の小型化に伴い、用いられるプリント配線板に使用される材料には、寸法安定性や伝送損失の低減の他に、ビア形成のような高い加工性や高レベルの種々の信頼性が求められるようになっている。
【0005】
プリント配線板に、内層回路と外層回路との導通を確保するために、ブラインドビアやスルーホールといった開口を、レーザー加工やドリル加工で、設けることがあり、開口を形成するための加工性が重要となる。省スペース化や回路デザインについての新たな考え方に伴い、より小さい穴径でも加工できる材料が求められる。さらに、加工によって生じるスミアと呼ばされる残渣を除去するための処理液に対する耐性も求められる。
【0006】
また、近年、環境保護の観点から、従来の鉛を含むハンダに代え、鉛フリーハンダの使用への要求が増々高まっている。鉛フリーハンダは従来の鉛含有ハンダに比べ高融点であることから、プリント配線板に電子機器を実装する工程が高温化している(例えば、ハンダリフロー工程等)。そこで、プリント配線板等に使用される材料にも260℃以上の高温の耐熱性が求められる。
【0007】
一方、近年のスマートフォン、タブレット端末等の電子機器の世界的な普及に伴い、低温から高温まで幅広い温度範囲での信頼性が求められる。従来のプリント配線板は、極端な温度変化に曝されると、層間接着剤層と隣接する層との間で剥離するという問題を生じており、プリント配線板を構成する層間接着剤層には高度な冷熱サイクル耐性が要求される。
【0008】
さらに、近年のスマートフォン、タブレット端末等の電子機器は、落下等の物理的衝撃にも耐えることが要求される。
【0009】
また、熱硬化性接着シートを用いて多層プリント配線板を製造したり、剥離フィルム付き熱硬化性カバーシートを用いてプリント配線板の回路面を保護したりする際、加熱下にプレスする工程を経る。そこで、電子機器の高密度化のためには、熱プレス工程時におけるレジンフローが小さい材料が必要とされる。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、熱プレス工程時におけるレジンフローが小さい熱硬化性樹脂組成物であって、硬化後はレーザー加工性、耐熱性、冷熱サイクル耐性、および衝撃吸収性に優れる硬化物を形成し得る熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、以下の態様において本発明の課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、ダイマージアミン(a−1)および、テトラカルボン酸無水物(a−2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、エポキシ化合物(B−1)、マレイミド化合物(B−2)、イソシアネート基含有化合物(B−3)、金属キレート化合物(B−4)およびカルボジイミド基含有化合物(B−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(B)と、フィラー(C)とを含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が以下の(イ)〜(ハ)を満たす。
(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱プレス時にはレジンフローが小さく、硬化後はレーザー加工性、耐熱性、冷熱サイクル耐性、および衝撃吸収性に優れる硬化物を形成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】プリント配線板のレーザー加工によるブラインドビア付近の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。尚、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、これに限定されるものではない。また、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、当該範囲に数Aが下限値として、数Bが上限値として含まれる。また、本明細書における「シート」とは、JISにおいて定義される「シート」のみならず、「フィルム」も含むものとする。また、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。
【0015】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明における熱硬化性樹脂組成物とは、ダイマージアミン(a−1)および、テトラカルボン酸無水物(a−2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、エポキシ化合物(B−1)、マレイミド化合物(B−2)、イソシアネート基含有化合物(B−3)、金属キレート化合物(B−4)およびカルボジイミド基含有化合物(B−5)からなる群より選ばれるいずれかの硬化剤(B)と、フィラー(C)とを含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が以下の(イ)〜(ハ)を満たすものである。
(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
【0016】
<ポリイミド樹脂(A)>
本発明のポリイミド樹脂(A)は、ダイマージアミン(a−1)および、テトラカルボン酸無水物(a−2)を含むモノマー群を反応させてなる熱硬化性樹脂である。ポリイミド樹脂(A)は本発明の熱硬化性接着剤組成物におけるバインダー樹脂として機能する。バインダー樹脂は前記熱硬化性接着剤組成物の基体となり、後述するフィラー(C)の保持等の機能を担う。
【0017】
<ダイマージアミン(a−1)>
本発明のダイマージアミン(a−1)は、炭素数10〜24の二重結合あるいは三重結合を1個以上有する一塩基性不飽和脂肪酸を反応させて得た、炭素数5〜10の環状構造を有する多塩基酸化合物のカルボキシル基をアミノ基に転化したポリアミン化合物を挙げることができる。例えば、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の脂肪酸およびこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等を原料に用いてディールス−アルダー反応させて得た二量体化脂肪酸(ダイマー酸)を含む多塩基酸化合物のカルボキシル基をアミノ基に転化した化合物が例示できる。環状構造は1つでも2つでもよく、2つの場合、2つの環が独立していてもよいし、連続していてもよい。また、環状構造を有していなくてもよく、環状構造と環状構造を有していない化合物の混合物でもよい。ダイマー酸から誘導されたジアミン化合物を用いることにより、容易にポリイミド樹脂に、ダイマー骨格を導入できる。
【0018】
前記環状構造としては、飽和の脂環構造、不飽和の脂環構造、芳香環が挙げられる。アミノ基(カルボキシル基から転化したアミノ基)は環状構造に直接結合することもできるが、溶解性向上、柔軟性向上の観点から、アミノ基は脂肪族鎖を介して環状構造と結合していることが好ましい。アミノ基と環状構造との間の炭素数は2〜25であることが好ましい。また、本発明におけるダイマージアミン(a−1)は、溶解性向上、柔軟性向上の観点から、環状構造以外の部分として自由度および疎水性の高い鎖状のアルキル基を有することが好ましい。アルキル基は1つの環状構造に対し2つ以上有することが好ましい。アルキル基の炭素数は2〜25であることが好ましい。
【0019】
ダイマージアミン(a−1)は、通常ダイマー酸(二量体化脂肪酸)から誘導されるダイマー骨格を残基として含む単量体を主成分(70質量%以上)とし、他に、原料の脂肪酸や三量体化以上の脂肪酸の組成物のカルボキシル基をアミノ基に転化して得られるものが好ましい。また、ダイマー骨格に対して水素添加(水添反応)して不飽和度を下げたものが、耐酸化性(特に高温域における着色)や合成時のゲル化抑制の観点から特に好適に用いられる。
【0020】
ダイマージアミン(a−1)の市販品は、例えば、プリアミン1071、プリアミン1073、プリアミン1074、プリアミン1075(以上、クローダジャパン社製);バーサミン551(BASFジャパン社製)等が挙げられる。ダイマージアミンは単独または2種以上を併用できる。
【0021】
ポリイミド樹脂(A)の重合に用いるポリアミン化合物は、専ら上述したダイマージアミン(a−1)を用いてもよいが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその他のポリアミン化合物を用いてもよい。その他のジアミン化合物は、ポリイミド樹脂(A)に用いるジアミン化合物全量中に50モル%以下とすることが好ましく、25モル%以下とすることがより好ましい。
【0022】
<その他のジアミン化合物>
その他のジアミン化合物としては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミン;
エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’―ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
なお、その他のジアミン化合物は、上記構造に限定されないことはいうまでもない。
【0023】
ポリイミド樹脂(A)の重合には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその他のポリアミン化合物を用いてもよい。その他のジアミン化合物は、ポリイミド樹脂(A)に用いるポリアミン化合物全量中に50モル%以下とすることが好ましく、25モル%以下とすることがより好ましい。
【0024】
その他のポリアミン化合物としては特に、炭素数10〜24の一塩基性不飽和脂肪酸から誘導される、トリカルボン酸を転化して得られたトリアミンであるトリマーを残基として含む単量体を用いることが好ましい。ポリアミン化合物に3官能以上のものを使用することにより、ポリイミド樹脂に分岐構造を導入し、高分子量化でき、得られるポリイミド樹脂の耐熱性を大きくできる。
【0025】
<テトラカルボン酸無水物(a−2)>
本発明のテトラカルボン酸無水物(a−2)は、公知の単量体を用いることができる。具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−シクロヘキセン−1,2ジカルボン酸無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物など)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物など)、9,9−ビス[4−(3,1−、3,2−、3,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物、および1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−デカヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,5,6−ヘキサヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1、3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト(1,2−C)フラン−1,3−ジオン等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、衝撃吸収性の観点から、1分子中に2個以下の芳香環を有するテトラカルボン酸無水物がより好ましい。これらのうちでも、合成時のポリアミン化合物との相溶性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、1、3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト(1,2−C)フラン−1,3−ジオンが特に好ましい。テトラカルボン酸無水物は1種単独または2種以上を併用できる。
【0026】
ポリイミド樹脂(A)は後述する硬化剤(B)と反応する反応性官能基を有する。ポリイミド樹脂(A)の反応性官能基は限定されないが、アミノ基および無水物基の少なくとも一方が好適である。反応性官能基は、ポリイミド樹脂の側鎖または末端に有する。分子末端にアミンまたは無水物基を有するポリイミド樹脂は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物の仕込み量比を調整することにより容易に得られる。より好適には、テトラカルボン酸二無水物を過剰に配合(50モル%以上配合)し、酸無水物基を末端に有するポリイミド樹脂が挙げられる。また、ジアミン化合物を過剰に配合(50モル%以上配合)し、ジアミン化合物を末端に有するポリイミド樹脂を得た後に、マレイン酸無水物と反応させて酸無水物基を末端に導入してもよい。
【0027】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)は、ポリイミド樹脂(A)の有する反応性官能基と反応可能な官能基を有するものであり、反応可能な官能基を複数有することが好ましい。
硬化剤(B)は、エポキシ化合物(B−1)、マレイミド化合物(B−2)、イソシアネート基含有化合物(B−3)、金属キレート化合物(B−4)およびカルボジイミド基含有化合物(B−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。硬化剤(B)がこれらの化合物であることで、高温時の貯蔵弾性率の低下を防ぎ、レーザー加工時のサイドエッチングを抑制することができる。硬化剤は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
<エポキシ基含有化合物(B−1)>
エポキシ基含有化合物(B−1)としては、エポキシ基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するものを好ましく用いることができる。エポキシ基有化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂、グリジシルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、又は環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を用いることができる。
【0029】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、又はテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0030】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、又はテトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0031】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、又はジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
【0032】
環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、又はビス(エポキシシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。
【0033】
エポキシ基含有化合物としては、前記化合物の一種を単独で、若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基含有化合物としては、高接着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、又はテトラグリシジルメタキシリレンジアミンを用いることが好ましく、3官能以上のエポキシ基を含有しているものが高耐熱性の観点から更に好ましい。
【0034】
<マレイミド基含有化合物(B−2)>
マレイミド基含有化合物(B−2)としては、マレイミド基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、1分子中に平均2個以上のマレイミド基を有するものを好ましく用いることができる。
【0035】
本発明におけるマレイミド基含有化合物の具体例としては、o−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(トルエン−2,6−ジイル)ビスマレイミド)、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド(CASNO:67784−74−1、ホルムアルデヒドとアニリンからなるポリマーと無水マレイン酸の反応物)、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−トリメチレンビスマレイミド、N,N’−プロピレンビスマレイミド、N,N’−テトラメチレンビスマレイミド、N,N’−ペンタメチレンビスマレイミド、N,N’−(1,3−ペンタンジイル)ビス(マレインイミド)、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−(1,7−ヘプタンジイル)ビスマレイミド、N,N’−(1,8−オクタンジイル)ビスマレイミド、N,N’−(1,9−ノタンジイル)ビスマレイミド、N,N’−(1,10−デカンジイル)ビスマレイミド、N,N’−(1,11−ウンデカンジイル)ビスマレイミド、N,N’−(1,12−ドデカンジイル)ビスマレイミド、N,N’−[(1,4−フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、N,N’−[(1,2−フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、N,N’−[(1,3−フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N,N′‐[(メチルイミノ)ビス(4,1‐フェニレン)]ビスマレイミド、N,N′‐(2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジイルビスイミノビスカルボニルビスエチレン)ビスマレイミド、N,N′‐(ジチオビスエチレン)ビスマレイミド、N,N′‐[ヘキサメチレンビス(イミノカルボニルメチレン)]ビスマレイミド、N,N′‐カルボニルビス(1,4‐フェニレン)ビスマレイミド、N,N′,N′′‐[ニトリロトリス(エチレン)]トリスマレイミド、N,N’,N’’−[ニトリロトリス(4,1−フェニレン)]トリスマレイミド、N,N′‐[p‐フェニレンビス(オキシ−p−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N′‐[メチレンビス(オキシ)ビス(2−メチル−1,4−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[メチレンビス(オキシ−p−フェニレン)]ビス(マレインイミド)N,N′‐[ジメチルシリレンビス[(4,1−フェニレン)(1,3,4,−オキサジアゾール−5,2−ジイル)(4,1−フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’−[(1,3−フェニレン)ビスオキシビス(3,1−フェニレン)]ビスマレイミド、1,1’−[3’−オキソスピロ[9H−キサンテン−9,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−3,6−ジイル]ビス(1H−ピロール−2,5−ジオン)、N,N’−(3,3’−ジクロロビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレミド、N,N’−(3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイル)ビスマレイミド、N,N’−[メチレンビス(2−エチル−4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[メチレンビス(2,6−ジエチル−4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[メチレンビス(2−ブロモ−6−エチル−4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[メチレンビス(2−メチル−4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[エチレンビス(オキシエチレン)]ビスマレイミド、N,N’−[スルホニルビス(4,1−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[ナフタレン−2,7−ジイルビス(オキシ)ビス(4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[p−フェニレンビス(オキシ−p−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[(1,3−フェニレン)ビスオキシビス(3,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−(3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジイル)ビスマレイミド、N,N’−[イソプロピリデンビス[p−フェニレンオキシカルボニル(m−フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’−[イソプロピリデンビス[p−フェニレンオキシカルボニル(p−フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’−[イソプロピリデンビス[(2,6−ジクロロベンゼン−4,1−ジイル)オキシカルボニル(p−フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’−[(フェニルイミノ)ビス(4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[アゾビス(4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイルビス(4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、2,6−ビス[4−(マレインイミド−N−イル)フェノキシ]ベンゾニトリル、N,N’−[1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイルビス(3,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[ビス[9−オキソ−9H−9−ホスファ(V)−10−オキサフェナントレン−9−イル]メチレンビス(p−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[ヘキサフルオロイソプロピリデンビス[p−フェニレンオキシカルボニル(m−フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’−[カルボニルビス[(4,1−フェニレン)チオ(4,1−フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’−カルボニルビス(p−フェニレンオキシp−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−[5−tert−ブチル−1,3−フェニレンビス[(1,3,4−オキサジアゾール−5,2−ジイル)(4,1−フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’−[シクロヘキシリデンビス(4,1−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[メチレンビス(オキシ)ビス(2−メチル−1,4−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−[5−[2−[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチルスルホニルアミノ]エチルカルバモイル]−1,3−フェニレン]ビスマレイミド、N,N’−(オキシビスエチレン)ビスマレイミド、N,N’−[ジチオビス(m−フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−(3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジイル)ビスマレイミド、N,N’−(エチレンビス−p−フェニレン)ビスマレイミド、DesignerMolecules社製のBMI−689、BMI−1500、BMI−1700、BMI−3000、BMI−5000、BMI−9000、JFEケミカル社製のODA−BMI、BAF−BMI、などの多官能マレイミドを挙げることができる。
【0036】
また、多官能アミンと無水マレイン酸を反応させて得られる多官能マレイミドを挙げることができる。多官能アミンとしては、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミン、ハンツマン・コーポレーション社製の、末端アミノ化ポリプロピレングリコール骨格を有するジェファーミンD−230、HK−511、D−400、XTJ−582、D−2000、XTJ−578、XTJ−509、XTJ−510、T−403、T−5000、末端アミノ化エチレングリコール骨格を有するXTJ−500、XTJ−501、XTJ−502、XTJ−504、XTJ−511、XTJ−512、XTJ−590末端アミノ化ポリテトラメチレングリコール骨格を有するXTJ−542、XTJ−533、XTJ−536、XTJ−548、XTJ−559などが挙げられる。
【0037】
<イソシアネート基含有化合物(B−3)>
イソシアネート基含有化合物(B−3)としては、イソシアネート基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。
1分子中にイソシアネート基を1個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、n−ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
また、1,6−ジイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4’−ジフェニルメタン、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4−ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4−メチル−m−フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、P−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物もイソシアン酸エステル化合物として使用することができる。
【0038】
1分子中にイソシアネート基を2個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、
ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、
3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
また、1分子中にイソシアネート基を3個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、前記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0040】
イソシアネート基含有化合物としては、さらに例示した種々のイソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基がε−カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたブロック化イソシアネート基含有化合物も用いることができる。
具体的には、前記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトン(以下、MEKという)オキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。特に、イソシアヌレート環を有し、MEKオキシムやピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体は、本発明に使用した場合、ポリイミドや銅に対する接着強度や耐熱性に優れるため、非常に好ましい。また耐熱性の観点から3官能以上のイソシアネート基を有していることが好ましい。
【0041】
<金属キレート化合物(B−4)>
金属キレート化合物(B−4)は、金属と有機物からなる有機金属化合物であり、バインダー樹脂の反応性官能基と反応して架橋を形成するものである。有機金属化合物の種類は特に限定されないが、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。また、金属と有機物の結合は金属−酸素結合でもよく、金属−炭素結合に限定されるものではない。加えて、金属と有機物の結合様式は化学結合、配位結合、イオン結合のいずれであってもよい。更に3官能以上であることが耐熱性の観点から好ましい。
【0042】
前記有機アルミニウム化合物はアルミニウム金属キレート化合物が好ましい。アルミニウム金属キレート化合物は、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ−sec−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、アルミニウムエチレート等が挙げられる。
【0043】
前記有機チタン化合物はチタン金属キレート化合物が好ましい。チタン金属キレート化合物は、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタン−1.3−プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)、ポリチタンアセチルアセチルアセトナート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、ダーシャリーアミルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンイソステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物はジルコニウム金属キレート化合物が好ましい。ジルコニウム金属キレート化合物は、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物が熱硬化反応性の点から好ましい。
【0044】
<カルボジイミド基含有化合物(B−5)>
カルボジイミド基含有化合物(B−5)としては分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、カルボジライトV−01、V−03、V−05、V−07、V−09(日清紡ケミカル株式会社)、環状カルボジイミド(帝人株式会社)などが挙げられる。耐熱性の観点から1分子中に平均3個以上のカルボジイミド基を有するものを好ましい。
【0045】
本発明に用いられる硬化剤(B)は、硬化剤中に芳香環構造を含有することが好ましい。嵩高い芳香環を含むことで本発明の熱硬化性樹脂組成物の分子運動を抑制することができ、冷熱サイクル時に起こる応力を緩和する効果を奏する。
【0046】
本発明に用いられる硬化剤(B)は、前記ポリイミド樹脂(A)に対して、エポキシ基、マレイミド基、イソシアネート基、金属キレート化合物、およびカルボジイミド基含有化合物の合計が、1〜20質量部となる範囲で含有することが好ましく、1〜15部含有することがより好ましく、3〜10部含有することがさらに好ましい。硬化剤(B)の添加量を1〜20部とすることで、硬化物の貯蔵弾性率を抑え冷熱サイクル時に急激な温度変化による応力に対し、クラックの発生などを抑制する効果を発現することができる。
【0047】
<フィラー(C)>
次に、本発明で用いるフィラー(C)について詳細に説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の弾性率制御の目的でフィラーを含む。
【0048】
フィラー(C)としては、特に限定されないが、形状としては球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状等が挙げられる。フィラー(C)としては例えば、フッ素フィラー:ポリテトラフルオロエチレン粉末やその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル粉末、テトラフルオロエチレン−エチレン粉末、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン粉末、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン粉末、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル粉末、ポリクロロトリフルオロエチレン粉末、クロロトリフルオロエチレン−エチレン粉末、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末、ポリフッ化ビニル粉末などが挙げられる。それ以外のフィラーとしては、ポリエチレン粉末、ポリアクリル酸エステル粉末、エポキシ樹脂粉末、ポリアミド粉末、ポリイミド粉末、ポリウレタン粉末、液晶ポリマービーズ、ポリシロキサン粉末等の他、シリコーン、アクリル、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等を用いた多層構造のコアシェル等の高分子フィラー;リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート等の(ポリ)リン酸塩系化合物、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ポリエチレンホスフィン酸アルミニウム等のホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物等のリン系フィラー;
ベンゾグアナミン、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系フィラー;
シリカや中空シリカや多孔質シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、ゾノトライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ガラスフレーク、水和ガラス、チタン酸カルシウム、セピオライト、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等の無機フィラー等が挙げられる。
【0049】
また、衝撃吸収性の観点からフッ素フィラー、窒化ホウ素、液晶ポリマーおよびシリカを使用することが好ましい。本発明において、これらフィラー(C)は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0050】
フィラー(C)の平均粒子径D50は、0.1〜25μmであることが好ましい。フィラー(C)の平均粒子径D50は、0.1〜25μmであることで、硬化物の機械特性が向上し、衝撃吸収性が向上できる。フィラー(C)の平均粒子径D50は、2〜10μmの範囲であることがより好ましい。
【0051】
フィラー(C)の含有量は、前記バインダー樹脂成分100質量部に対して5〜60質量部であることが好ましく、フィラー量が60質量部以下にすることで硬化膜の貯蔵弾性率を一定以下にコントロールすることができ、冷熱サイクル時の急激な温度変化による応力に対し、クラックや剥離などの発生を抑制する効果を奏する。またフィラー(C)の含有量が5質量部以上になることで常温付近の貯蔵弾性率を高く保つことができ、レーザー加工後のデスミア工程において膨潤されにくくなり、銅張り積層板と本発明の熱硬化性樹脂組成物との界面において剥がれや浮きが発生しにくくなる。フィラーの含有量は、5〜40質量部であることがより好ましく、5〜30質量部であることがさらに好ましく、5〜20質量部以下であることが最も好ましい。
【0052】
フィラー(C)は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、後述する熱硬化性接着シートとする場合は、フィラー(C)の平均粒径D50と熱硬化性接着シートの膜厚の関係は、(式1)で算出される値が、0.8以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.05以下であることが更に好ましい。0.8以下にすることで、フィラー表面をバインダー樹脂成分が十分に被覆することができ、被着体へ良好な接着力などを発現でき、冷熱サイクル時に剥離や浮きが起こりにくくなる。
(式1)
フィラー(C)の平均粒径D50(μm)/熱硬化性接着シート膜厚(μm)
【0053】
フィラー(C)の添加方法は特に制限されるものではなく、従来公知のいかなる方法を用いても良いが、具体的には、バインダー樹脂の重合前または途中に重合反応液に添加する方法、3本ロールなどを用いてバインダー樹脂にフィラーを混錬する方法、フィラーを含む分散液を用意しこれをバインダー樹脂に混合する方法などが挙げられる。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために分散剤、増粘剤等を熱硬化性樹脂組成物の物性に影響を及ぼさない範囲で用いることもできる。
【0054】
<その他添加剤>
この他、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で任意成分として更に、エネルギー線吸収剤、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤などを添加することができ、レーザー加工性向上の点から、エネルギー線吸収剤を配合することが好ましい。
【0055】
<熱硬化性樹脂組成物の貯蔵弾性率>
貯蔵弾性率の求め方について説明する。貯蔵弾性率はDVA法(動的粘弾性分析法)測定装置等を使用して測定することができる。当該装置によって得られた硬化物についての粘弾性曲線から、各温度の貯蔵弾性率を求めることができる。
【0056】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物は(イ)〜(ハ)を満たす。
(イ)30℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×1011Paである。
(ロ)150℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
(ハ)280℃における貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paである。
【0057】
[30℃における貯蔵弾性率]
本発明の熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物は30℃において、貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×1011Paであり、1.0×10〜1.0×1010Paが好ましく、更に1.0×10〜1.0×10Paが更に好ましい。
【0058】
30℃における貯蔵弾性率を1.0×1011Pa以下とすることで、冷熱サイクル時の急激な温度変化による応力に対し、クラックの発生などを抑制する効果を奏する。また1.0×10Pa以上とすることで、デスミア工程におけるデスミア液の侵入を抑制し、銅張り積層板と本発明の熱硬化性樹脂組成物との界面における剥がれや浮きの発生を抑えることができ、デスミア液耐性を向上させることができる。30℃における貯蔵弾性率はフィラー(C)の種類や添加量を調整することで、制御することができる。
【0059】
[150℃における貯蔵弾性率]
次いで本発明の熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物は150℃において、貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paであり、1.0×10〜1.0×10Paが好ましく、更に1.0×10〜1.0×10Paが更に好ましい。
【0060】
150℃における貯蔵弾性率を1.0×10Pa以下とすることで、30℃の場合と同様に冷熱サイクル時の急激な温度変化による応力に対し、クラックの発生などを抑制する効果を奏する。また1.0×10Pa以上とすることで、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の凝集力を高めることができ、多層プリント配線板の層間接着熱硬化性樹脂として用いられる際に、レジンフローを抑制することができ寸法安定性を担保することができる。150℃における貯蔵弾性率もフィラー(C)の種類や添加量を調整することで、制御することができる。
【0061】
冷熱サイクル耐性は−30℃程度から150℃程度の範囲において、冷熱サイクルを繰り返すため、室温領域と高温領域における両方の貯蔵弾性率が関係する。そのため冷熱サイクル耐性は30℃における貯蔵弾性率が1.0×1011Pa以下であり、かつ150℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であることにより、冷熱サイクル時の急激な温度変化による応力に対し、クラックの発生などを抑制する効果を奏する。特に、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であり、かつ150℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である場合、特に優れた冷熱サイクル耐性を発現することができる。
【0062】
[280℃における貯蔵弾性率]
本発明の熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物は280℃において、貯蔵弾性率が1.0×10〜1.0×10Paであり、1.0×10〜1.0×10Paが好ましく、更に1.0×10〜1.0×10Paが更に好ましい。
【0063】
280℃における貯蔵弾性率を1.0×10Pa以下とすることで、ハンダ実装工程において高温の熱がかかる際の応力を緩和でき、クラックの発生を抑制することができ、耐熱が向上する。また1.0×10Pa以上とすることで、ブラインドビアやスルホールビア形成のためのレーザー加工工程において、レーザーによる高温の熱がかかっても、熱ダレすることなく、サイドエッチングを抑制することができ、レーザー加工性が向上する。280℃における貯蔵弾性率は硬化剤(B)の種類によって調整することができる。
【0064】
<損失正接(tanδ)ピーク>
損失正接(tanδ)のピーク値の求め方について説明する。貯蔵弾性率はDVA法(動的粘弾性分析法)測定装置等を使用して測定することができる。当該装置によって得られた硬化物についての粘弾性曲線から、各温度の貯蔵弾性率、および損失弾性率から、損失正接(tanδ)を各温度で算出し、(式2)に基づきプロットを行い、tanδ曲線が極大となる点をピーク値とする。尚、極大点が複数存在する場合には、温度が最も室温(23℃)に近い値をその硬化物のtanδピークとする。
(式2)
(損失正接;tanδ)=(損失弾性率)/(貯蔵弾性率)
【0065】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物は、0〜280℃における損失正接(tanδ)ピーク値が0.3以上であることが好ましく、また0.5以上がより好ましく、0.7以上であることが更に好ましい。損失正接(tanδ)ピーク値が0.3以上になることにより衝撃拡散性が大きくなり、外部からの衝撃を逃がすことができる。損失正接(tanδ)はポリイミド樹脂(A)におけるテトラカルボン酸無水物(a−2)に由来する構造一単位中に含まれる芳香環が2個以下であることで、ポリイミド樹脂(A)の分子運動自由度を増すことができ、外部衝撃に対して分子運動を柔軟に起こすことで衝撃拡散性を高めることができる。
【0066】
本発明の熱硬化性接着剤組成物は、後述する熱硬化性接着シート、剥離フィルム付き熱硬化性カバーシート、銅張積層板等の実施態様が適用され、それら実施態様が加工されプリント配線板に組み込まれることで、前記熱硬化性接着剤組成物はプリント配線板の層間接着用熱硬化性組成物として機能する。
【0067】
<熱硬化性接着シート>
熱硬化性接着シートは、本発明における熱硬化性樹脂組成物をシート状にしたものである。熱硬化性接着シートは、プリント配線板、および電子機器の接着用部材として用いられ、他の部材を接着・保持する機能を有する。熱硬化性接着シートは接着したい部材同士の間に挟み仮接着を行った後に加熱、もしくは熱プレス工程を経ることにより硬化し、被着体同士を接着する。
【0068】
<熱硬化性接着シートの製造方法>
熱硬化性接着シートの製造方法は、例えば、ポリイミド樹脂(A)と硬化剤(B)とフィラー(C)、およびその他任意成分と溶剤を含む塗布用溶液を剥離フィルムの片面に塗布後、含まれている有機溶剤等の液状媒体を通常40〜150℃で除去・乾燥し、形成された熱硬化性接着シートの表面に別の剥離フィルムを積層するにより、両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートを得ることができる。両面を剥離フィルムで積層することにより、熱硬化性接着シートの表面汚染を予防することができる。剥離フィルムを剥がすことによって、熱硬化性接着シートを単離することができる。
2つの剥離フィルムは、同種または異種のいずれも用いることができる。剥離性の異なる剥離フィルムを用いることによって、剥離力に強弱をつけることができるので順番に剥がしやすくなる。
【0069】
塗布方法としては、例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等、公知の方法を選択することができる。
【0070】
熱硬化性接着シートの乾燥後の厚みは、十分な接着性を発揮させる為、また取り扱い易さの点から、5μm〜500μmであることが好ましく、10μm〜100μmであることが更に好ましい。
【0071】
<剥離フィルム付き熱硬化性カバーシート>
剥離フィルム付き熱硬化性カバーシートは、剥離フィルムとカバー樹脂層との間に、熱硬化性接着シートが挟まれているものである。言い換えると、熱硬化性カバーシートは、両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートにおける一方の面の剥離性フィルムをカバー樹脂層に置き換えたものであり、製造方法も同様である。
【0072】
カバー樹脂層は絶縁性フィルムであり、絶縁性フィルムとしては、例えば、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、及びフッ素系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を用いることができる。
【0073】
絶縁性フィルムとしてのフッ素系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ジフルオロエチレン−トリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、及びポリビニリデンフルオライドからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0074】
<熱硬化性接着シート、剥離フィルム付き熱硬化性接着シート、剥離フィルム付き熱硬化性カバーシートの利用>
本発明の剥離フィルム付き熱硬化性接着シート等を用いて、銅張積層板やプリント配線板を得ることができる。
銅張積層板は、銅箔と絶縁性フィルムとが、本発明の熱硬化性樹脂組成物より得られる熱硬化性接着シートの硬化物である接着層を介して積層されたものである。
このような銅張積層板は、例えば、本発明の剥離フィルム付き熱硬化性接着シートから剥離性フィルムを順次剥がし、熱硬化性接着シート各面に銅箔と絶縁性フィルムをそれぞれ重ね(この工程を仮接着ということがある)、加熱、もしくは熱プレス工程を経ることにより、銅箔と絶縁性フィルムとの間の熱硬化性接着シートを熱硬化することにより得られる。
あるいは、絶縁性フィルム上に熱硬化性接着シート形成用の塗布用溶液を塗布・乾燥し、形成された熱硬化性接着シート上に銅箔を重ね、加熱、もしくは熱プレス工程を経ることにより、銅箔と絶縁性フィルムとの間の熱硬化性接着シートを熱硬化することにより、銅張積層板を得ることもできる。
銅張積層板は、銅箔/接着層/絶縁性フィルム/接着層/銅箔のように両面最外層をともに銅箔としてもよいし、さらに銅箔の内層を設けることもできる。複数の熱硬化性接着シートを利用して銅箔や絶縁性フィルムを積層する場合、仮接着を複数回経た後に、複数の熱硬化性接着シートの加熱硬化を1度に行うこともできる。
【0075】
<プリント配線板>
銅張積層板における銅箔をエッチング等によって加工し、信号回路やグランド回路を形成し、プリント配線板を得ることができる。剥離フィルム付き熱硬化性カバーシートから剥離フィルムを剥がし、熱硬化性接着シート面を回路面に貼り合せ、加熱硬化することで、カバー樹脂層/接着シートの硬化物からなるカバーレイを形成し、信号回路を保護したり、更なる多層化のための基体として利用したりすることもできる。
信号回路やグランド回路を設ける方法としては、例えば、銅張積層板における銅箔上に感光性エッチングレジスト層を形成し、回路パターンを持つマスクフィルムを通して露光させて、露光部のみを硬化させ、次いで未露光部の銅箔をエッチングにより除去した後、残っているレジスト層を剥離するなどして、銅箔から導電性回路を形成することができる。
【0076】
また、本発明のプリント配線板は銅張積層板を用いずに、得ることもできる。
例えば、ポリエステルやポリイミド、液晶ポリマー、PTFEフィルム等のフレキシブル性、絶縁性のあるプラスチックフィルム上に、導体パターンをプリント技術によって形成した後、導体パターンを覆うように、本発明の熱硬化性接着シートを介して保護層を重ね、加熱・加圧することによって、熱硬化性接着シートを硬化させ、保護層を設けたフレキシブルプリント配線板を得ることもできる。
あるいは、フレキシブル性、絶縁性のあるプラスチックフィルム上にスパッタリングやメッキ等の手段で必要な回路のみを設け、以下同様に、本発明の熱硬化性接着シートの硬化物を介して保護層が設けられたフレキシブルプリント配線板を得ることもできる。
【0077】
さらに、複数のフレキシブルプリント配線の間に、本発明の剥離フィルム付き熱硬化性接着シートから剥離フィルムを剥がしてなる熱硬化性接着シートを挟み、加熱・加圧することによって、熱硬化性接着シートを硬化させ、多層フレキシブルプリント配線板を得ることもできる。
【0078】
本発明のプリント配線板は、熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物層や、保護層を挟んで配置された複数の銅箔間での導通を行うために、ブラインドビアやスルーホールといったビア開口を設けることがある。ビア開口はレーザー光を用いたレーザー加工や、ドリルを用いたドリル加工によって形成されるのが一般的であるが、ビア開口の形状精度を高める観点から、レーザー加工を行うことが好ましい。
【0079】
熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物層の280℃における貯蔵弾性率を1.0×10〜1.0×10Paにすることで、レーザー加工によって熱がかかった際にも貯蔵弾性率を保つことができ、サイドエッチングを抑制することができる。
【0080】
一般に、レーザー加工やドリル加工にてビア開口を形成した後、残存した樹脂(スミア)を除去するデスミア工程がある。このデスミア工程はプラズマを用いたドライプロセスや過マンガン酸カリウムなどのエッチング液を用いたウェットプロセスがある。小径のビアのデスミアにはドライプロセスが向いているものの、特殊なガスが必要なことや真空時間にするのに時間がかかるなど、課題は多くあることから、現状でもウェットプロセスでのデスミアが多く用いられている。
【0081】
30℃における貯蔵弾性率を1.0×10〜1.0×1011Paにすることで、デスミア工程におけるデスミア液の侵入を抑制し、銅張り積層板と本発明の熱硬化性樹脂組成物との界面における剥がれや浮きの発生を抑えることができる。
【0082】
本発明のプリント配線板を用いて、スマートフォン、タブレット端末、カメラ等の各種電子機器を製造することができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。
【0084】
なお、樹脂の酸価測定は次の方法で行なった。
《酸価測定》
酸価はJIS K0070に準じて測定した。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密
に量り採り、テトラヒドロフラン/エタノール(容量比:テトラヒドロフラン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、指示薬が淡紅色を30秒間保持した時を終点とした。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
式(3)
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0085】
[合成例1]<ポリイミド樹脂(P1)の合成>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリアミン化合物として炭素数36のダイマージアミン(プリアミン1075)を378.7g、テトラカルボン酸無水物としてビスフェノールA型酸二無水物(4,4’−[プロパン−2,2−ジイルビス(1,4−フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物)(BISDA−1000)を380.0g、溶媒としてシクロヘキサノンを1100g仕込み、均一になるまで撹拌した。均一になった後、110℃まで昇温し、30分後に温度を140℃に昇温し、温度が140℃になったら、そのままの温度で10時間反応を続け、脱水反応を継続させ、重量平均分子量54,000、酸価6.4mgKOH/g、アミン価0.3mgKOH/gのポリイミド樹脂(A1)を得た。
【0086】
[合成例2〜6]
表1に示すように、ダイマージアミン(a−1)、テトラカルボン酸無水物類(a−2)、の種類や量を変更した以外は、合成例1と同様にして、ポリイミド樹脂(A2)〜(A6)をそれぞれ同様に得た。
【0087】
【表1】

【0088】
[実施例1]
<<熱硬化性樹脂組成物(塗布液)の製造>>
固形分換算でポリイミド樹脂(A1)を100部、後述するエポキシ基含有化合物(B−1−1)を5部、窒化ホウ素を20部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるように混合溶剤(トルエン:MEK=9:1(重量比))を加えディスパーで10分攪拌して熱硬化性樹脂組成物(塗布液)を得た。
後述する方法に従って、硬化物の貯蔵弾性率、損失弾性率を求め、熱硬化性接着シートとしてのレジンフロー、デスミア液浸漬前後のレーザー加工性、耐熱性、冷熱サイクル耐性、衝撃吸収性を評価し、結果を表2〜4に示す。
【0089】
[実施例2〜22、比較例1〜5]
表2〜4に示すように、バインダー樹脂、硬化剤、フィラーの種類や量を変更した以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物(塗布液)を得、同様に評価した。
【0090】
《原料:バインダー樹脂》
ポリイミド樹脂(A):合成例1〜6記載の(A1)〜(A6)
(A7):バイロン637、酸価5mgKOH/g、重量平均分子量は30000、Tgは21℃のポリエステル樹脂(東洋紡社製)
【0091】
《原料:硬化剤(B)》
エポキシ基含有化合物(B−1−1):「ELM−434」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ当量100g/eq、4官能)住友化学社製
エポキシ基含有化合物(B−1−2):「YX−8800」(グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ当量180g/eq、2官能)三菱ケミカル社製
マレイミド基含有化合物(B−2): 「MIR―3000」(ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂、多官能)日本化薬社製
イソシアネート基含有化合物(B−3): 「TKA−100」(イソシアヌレート型イソシアネート化合物、イソシアネート当量:180g/eq、3官能)旭化成社製
金属キレート化合物(B−4):「オルガチックスZC−150」(有機ジルコニア化合物、4官能)マツモトファインケミカル社製
カルボジイミド基含有化合物(B−5):「カルボジライトV―05」(カルボジイミド当量:262g/eq、多官能)日清紡ケミカル社製
ポリアミノ基含有化合物:「BAPP」(2官能)セイカ社製
【0092】
《原料:フィラー(C)》
窒化ホウ素:「SP−2」(平均粒子径D50;4.0μm)デンカ社製
シリカ:「SC2050−MB」(平均粒子径D50;0.5μm)アドマテックス社製
アルミナ:「H−Tグレード」(平均粒子径D50=1.2μm、平均円形度=0.90)徳山社製
PTFE:「KT−300」(平均粒子径D50;10.0μm)喜多村社製
液晶ポリマー:「E101―S」(平均粒径D50;17.5μm)住友化学社製
【0093】
《硬化物の貯蔵弾性率、および損失正接の測定》
<測定用の硬化物の作成>
各実施例、各比較例で得られた塗布液を、ドクターブレードを使用して乾燥後の厚さが200μmとなるように厚さ50μmの重剥離フィルム(重離型剤がコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)上に均一塗工して100℃で2分乾燥させた後、室温まで冷却し片面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートを形成した。
次いで、得られた片面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートの熱硬化性接着シート面を厚さ50μmの軽剥離フィルム(軽離型剤がコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)に重ね合わせ、重剥離フィルム/熱硬化性接着シート/軽剥離フィルムからなる両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートを得た。
得られた熱硬化性接着シートを、180℃、1時間、2MPaで熱硬化させ、重剥離フィルムと軽剥離フィルムを剥離することで200μmの熱硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。
【0094】
<貯蔵弾性率、および損失正接の測定方法>
得られた硬化物から5mm×30mmの大きさに切り出した測定用試験片について、動的粘弾性測定装置「DVA200」(アイティー計測制御(株)製)を用い、0℃まで冷却後、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温させ、振動周波数10Hzで粘弾性を測定した。
得られた粘弾性曲線から、30℃、150℃、280℃における貯蔵弾性率を求めると共に、損失弾性率から損失正接(tanδ)を各温度で算出し、プロットを行い、tanδ曲線が極大となる点を算出した。尚、極大点が複数存在する場合には、温度が最も室温(23℃)に近い値をその硬化物のtanδピークとする。
表2〜4では、例えば、「1.0×10」という貯蔵弾性率の値を「1.0E+06」と記した。
【0095】
(レジンフロー)
[評価用サンプルAの作製]
<<両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートの製造>>
貯蔵弾性率、および損失弾性率の測定用試料作製の場合と同様にして、各実施例、各比較例で得られた塗布液を用いて、乾燥後の厚さが25μmの熱硬化性接着シートの両面をそれぞれ厚さ50μmの重剥離フィルムと厚さ50μmの軽剥離フィルムとで覆った、両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートを得た。
前記両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートから軽剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面をデュポン社のカプトン100Hに仮接着した。その後、直径7mmの円形の穴を打ち抜き機によって形成した。
次いで、重剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面に、50μmのポリイミドフィルムの両面に12μmの銅箔が積層されてなる両面銅張積層板の一方の面の銅箔に真空ラミネーターにて仮接着した後、熱プレスにて180℃、1時間、2MPaで熱硬化させ、評価サンプルAを作製した。
【0096】
[評価方法]
上記にて作製した評価サンプルAにおいて、カプトン100H側から直径7mmの穴を光学顕微鏡(キーエンス社製VHX−7000)にて20〜300倍程度で観察し、円の端部からしみだした樹脂の長さを測長し、以下の基準で評価を行った。
◎:レジンフローが100μm以下 極めて良好な結果である。
○:レジンフローが100μm超〜150μm以下 良好な結果である。
△:レジンフローが150μm超〜200μm以下 実用範囲内である。
×:レジンフローが200μm超 実用不可。
【0097】
(レーザー加工性(デスミア液処理前))
[評価用サンプルBの作製]
貯蔵弾性率、および損失弾性率の測定用試料作製の場合と同様にして、各実施例、各比較例で得られた塗布液を用いて、乾燥後の厚さが25μmの熱硬化性接着シートの両面をそれぞれ厚さ50μmの重剥離フィルムと厚さ50μmの軽剥離フィルムとで覆った、両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートを得た。
前記両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートから軽剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面を、50μmのポリイミドフィルムの両面に12μmの銅箔が積層されてなる両面銅張積層板の一方の面の銅箔に真空ラミネーターにて仮接着した。
次いで、重剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面に、50μmのポリイミドフィルムと12μmの銅箔とが積層されてなる片面銅張積層板のポリイミドフィルム側を同様に真空ラミネーターにて仮接着した後、熱プレスにて180℃、1時間、2MPaで熱硬化させ、銅箔1/ポリイミドフィルム2/銅箔1/熱硬化性接着シートの硬化物3/ポリイミドフィルム2/銅箔1という積層構成の評価サンプルBを得た。
【0098】
[評価方法]
上記のサンプルBに対し、UV−YAGレーザー(Model5330、ESI社製)を用いて、図1の上面よりレーザーを照射し、熱硬化性接着シートの硬化物と両面銅張積層板との境界まで直径150μmのブラインドビア加工を行った。
次いで、ブラインドビア部の断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−X100)にて倍率20〜500倍程度で観察し、熱硬化性接着シートの硬化物に生じたサイドエッチング(設計した開口径以上に水平方向が削られること)の最大長を測定し、以下の基準で評価を行った。
◎:5μm以下 極めて良好な結果である。
〇:5μmより大きく7μm以下 良好な結果である。
△:7μmより大きく10μm以下 実用範囲内である。
×:10μmより大きい 実用不可。
【0099】
(レーザー加工性(デスミア液処理後))
熱硬化性接着シートの硬化物と両面銅張積層板との境界まで直径150μmのブラインドビア加工を行った試料を、日本マクダーミッド社製の「マキュタイザー9221−S」に60℃で7分間、「マキュタイザー9275」に75℃で7分間、「マキュタイザー9276」に45℃で5分間、順次浸漬した後、23℃の水シャワーで5分間洗い、40℃のオーブンで10分間乾燥した。
次いで、ブラインドビア部の断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−X100)にて倍率20〜500倍程度で観察し、銅箔と熱硬化性接着シートの硬化物と境界の剥がれ、ポリミドフィルムと熱硬化性接着シートの硬化物と境界の剥がれの状態を評価した。
◎:30穴中、剥がれの発生した穴が3以下 極めて良好な結果である。
○:30穴中、剥がれの発生した穴が4以上〜6以下 良好な結果である。
△:30穴中、剥がれの発生した穴が7以上〜10以下 実用範囲内である。
×:30穴中、剥がれの発生した穴が11以上 実用不可。
【0100】
(耐熱性)
[評価方法]
評価用サンプルBを用意し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で24時間以上保管し、その後288℃の溶融ハンダに3分間浮かべるハンダフロート試験を行った。その後、断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−X100)にて倍率20〜500倍程度で観察し、銅箔と熱硬化性接着シートの硬化物と境界の剥がれ、ポリミドフィルムと熱硬化性接着シートの硬化物と境界の剥がれの状態を評価した。評価サンプルは30個とした。
◎:剥がれの発生数が10%以下 極めて良好な結果である。
○:剥がれの発生数が10%超え〜20%以下 良好な結果である。
△:剥がれの発生穴数が20%超え〜30%以下 実用範囲内である。
×:剥がれの発生穴数が30%超え 実用不可。
【0101】
(冷熱サイクル耐性)
評価用サンプルBを用意し、冷熱サイクル特性の評価を行った。処理条件は−30℃で15分、150℃で15分を1サイクルとして、2000サイクル経過後、断面をレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−X100)にて倍率20〜500倍程度で観察した。評価サンプルは30個とした。
◎:剥がれの発生数が10%未満 極めて良好な結果である。
○:剥がれの発生数が10〜20%未満 良好な結果である。
△:剥がれの発生穴数が20%〜30%未満 実用範囲内である。
×:剥がれの発生穴数が30%以上 実用不可。
【0102】
(衝撃吸収性試験)
[評価サンプルCの作製]
貯蔵弾性率、および損失弾性率の測定用試料作製の場合と同様にして、各実施例、各比較例で得られた塗布液を用いて、乾燥後の厚さが25μmの熱硬化性接着シートの両面をそれぞれ厚さ50μmの重剥離フィルムと厚さ50μmの軽剥離フィルムとで覆った、両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートを得た。
前記両面剥離フィルム付き熱硬化性接着シートから軽剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面をテストピース社製の厚み3mmのフロートガラスに真空ラミネーターにて仮接着した。
次いで、重剥離フィルムを剥がし、露出した熱硬化性接着シート面に50μmのポリイミドフィルムと12μmの銅箔とが積層されてなる片面銅張積層板のポリイミドフィルム側を同様に真空ラミネーターにて仮接着した後、熱プレスにて180℃、1時間、2MPaで熱硬化させた、フロートガラス/硬化物/ポリイミドフィルム/銅箔という積層構成の評価サンプルCを得た。
[評価方法]
次に試験片の試験面(片面銅張り積層板側)に、300gの円錘を20cmの高さから頂点を下に向けて自由落下させた。試験片のフロートガラス側を目視で観察し、クラックや円錘の痕跡がないかを確認し、以下の基準で評価した。試験サンプルは10個とした。
◎:クラック・痕跡いずれもなし 極めて良好な結果である。
○:クラック・痕跡が合わせて1〜2個 良好な結果である。
△:クラック・痕跡が合わせて3〜4個 実用範囲内である。
×:クラック・痕跡が合わせて5個以上 実用不可。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明により、レーザー加工性、耐熱性、冷熱サイクル耐性、および衝撃吸収性に優れる硬化物を提供でき、レジンフローの小さい熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。これらは、高い加工性や信頼性が必要とされる種々のプリント配線板や電子機器等の製造に好適である。
【符号の説明】
【0107】
1 銅箔
2 ポリイミドフィルム
3 熱硬化性接着シートの硬化物
4 サイドエッチング
【要約】
【課題】 本発明の目的は、熱プレス工程時におけるレジンフローが小さい熱硬化性樹脂組成物であって、硬化後はレーザー加工性、耐熱性、冷熱サイクル耐性、および衝撃吸収性に優れる硬化物を形成し得る熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 ダイマージアミン(a−1)および、テトラカルボン酸無水物(a−2)を含むモノマー群の反応物生成物であるポリイミド樹脂(A)と、エポキシ化合物(B−1)、マレイミド化合物(B−2)、イソシアネート基含有化合物(B−3)、金属キレート化合物(B−4)およびカルボジイミド基含有化合物(B−5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(B)と、フィラー(C)とを含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂組成物を180℃で60分加熱して得られる硬化物が所定の温度で特定の貯蔵弾性率を示す、熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 図1
図1