(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
インターコネクタには、優れた耐熱性が求められる。そのため、インターコネクタの材料として、通常、クロム含有率の高いステンレス鋼(クロム基合金)が用いられる。クロム基合金は硬く、加工性が低下し易い。例えば、特許文献2のように、インターコネクタにディンプル加工を行って複雑なガス流路を形成するには、特殊な設備や条件が必要となり、コストが上昇し、また、生産効率が低下する。燃料電池は、MEAとインターコネクタとを含むものを構成単位として、通常、複数(例えば、50枚以上)を積層することにより構成されている。そのため、インターコネクタ一枚当たりの加工コストの上昇により、燃料電池のコストは大きく上昇する。
本開示は、水素の新規な製造方法および製造装置を提供することを目的の1つとする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、優れたガス拡散性能を有する固体酸化物型の燃料電池(SOFC)が得られる。本開示によれば、水素の新規な製造方法および製造装置が得られる。
【0012】
[発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)アルカリ性水溶液を収容する電解槽と、
前記アルカリ性水溶液に浸漬される陽極および陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、を備え、
前記陽極および前記陰極の少なくとも一方が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素製造装置。
(2)前記金属多孔体は、異なる気孔率を持つ複数の金属多孔体を組み合わせて、1つの電極を構成する、(1)に記載の水素製造装置。
(3)陽極、陰極およびアルカリ性水溶液を、それぞれ準備する工程と、
前記アルカリ性水溶液に、前記陽極および前記陰極を浸漬する工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する工程と、を備え、
前記陽極および前記陰極の少なくとも一方が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含み、
前記金属多孔体は、異なる気孔率を持つ複数の金属多孔体を組み合わせて、1つの電極を構成する、水素の製造方法。
(4)陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に介在する高分子電解質膜と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、を備え、
少なくとも前記陽極が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素製造装置。
(5)前記陽極が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Sと、前記金属多孔体S以外の三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Hとを有し、
前記金属多孔体Sの気孔率Psと、前記金属多孔体Hの気孔率Phとが、Ps<Phの関係を満たしており、
前記金属多孔体Sが水の供給口に対向するように配置された、(4)に記載の水素製造装置。
(6)陽極、陰極、および、前記陽極と前記陰極との間に介在する高分子電解質膜を準備する工程と、
前記陽極に水を導入する工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する工程と、を備え、
少なくとも前記陽極は、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Sと、前記金属多孔体S以外の三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Hとを有し、
前記金属多孔体Sの気孔率Psと、前記金属多孔体Hの気孔率Phとが、Ps<Phの関係を満たしている、水素の製造方法。
(7)陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に介在する固体酸化物電解質膜と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、を備え、
前記陽極および前記陰極の少なくとも一方が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素製造装置。
(8)前記少なくとも一方が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Sと、前記金属多孔体S以外の三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Hとを有し、
前記金属多孔体Sの気孔率Psと、前記金属多孔体Hの気孔率Phとが、Ps<Phの関係を満たしており、
前記金属多孔体Sが水蒸気の供給口に対向するように配置された、(7)に記載の水素製造装置。
(9)陽極、陰極、および、前記陽極と前記陰極との間に介在する固体酸化物電解質膜を準備
する工程と、
前記陽極または前記陰極に水蒸気を導入する工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する工程と、を備え、
前記陽極および前記陰極のうち、少なくとも前記水蒸気が導入される電極が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Sと、前記金属多孔体S以外の三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Hとを有し、
前記金属多孔体Sの気孔率Psと、前記金属多孔体Hの気孔率Phとが、Ps<Phの関係を満たしている、水素の製造方法。
(1)本発明の燃料電池は、カソード、アノード、および、前記カソードおよび前記アノードの間に介在する固体電解質層を備えており、前記固体電解質層がイオン伝導性を有する固体酸化物を含むMEAと、前記カソードおよび前記アノードの少なくとも一方に対向するように配置される少なくとも1つの第1金属多孔体と、前記第1金属多孔体に対向するように配置され、かつ、ガス供給口およびガス排出口が形成されたインターコネクタと、を備える。このとき、前記第1金属多孔体は、前記ガス供給口に対向し、かつ、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Sと、前記金属多孔体S以外の三次元網目状の骨格を有する金属多孔体Hと、を有し、前記金属多孔体Sの気孔率Psと、前記金属多孔体Hの気孔率Phとが、Ps<Phの関係を満たす。これにより、ガス拡散性能が向上する。
【0013】
(2)前記金属多孔体Sは、さらに前記ガス排出口に対向しており、かつ、前記ガス供給口の中心と前記ガス排出口の中心とを最短距離で結ぶ直線に沿った帯状の形状であっても良い。(3)また、前記金属多孔体Sは、前記ガス供給口の中心に対応する中心を有する円形または多角形の形状であっても良い。これにより、ガス拡散性能がさらに向上する。
【0014】
(4)前記気孔率Psは、85体積%以上であることが好ましい。ガス拡散性がさらに向上するためである。
【0015】
(5)前記インターコネクタの前記第1金属多孔体に対向する面は、平滑であることが好ましい。インターコネクタの加工コストが削減されるためである。
【0016】
(6)さらに、前記第1金属多孔体に積層され、かつ、三次元網目状の骨格を有する第2金属多孔体を備えていても良い。さらなるガス拡散性の向上、あるいは、集電性の向上が期待できるためである。
【0017】
(7)前記第1金属多孔体と前記第2金属多孔体とは接合されており、前記接合する部分において、前記第1金属多孔体の前記骨格と前記第2金属多孔体の前記骨格とは絡み合っていることが好ましい。生産性の向上が期待できるためである。
【0018】
(8)前記第2金属多孔体は、前記第1金属多孔体と前記カソードまたは前記アノードとの間に介在しており、気孔径が100〜1000μmであることが好ましい。これにより、集電性がさらに向上する。
【0019】
(9)本発明に係る燃料電池は、少なくとも前記アノードに対向する前記第1金属多孔体を備えることが好ましい。さらなる発電効率の向上が期待できるためである。
(10)前記気孔率Psに対する前記気孔率Phの割合が1.05〜2であることが好ましい。これによりガス拡散性能が向上する。
(11)前記金属多孔体Sの気孔径が100〜1000μmであり、前記金属多孔体Hの気孔径が300〜3500μmであることが好ましい。これにより圧力損失を低減できることができる。
【0020】
[発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態を具体的に以下に説明する。なお、本発明は、以下の内容に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
(燃料電池)
以下、本実施形態に係る燃料電池を、
図1〜
図4、
図5Aおよび
図5Bを参照しながら説明する。
図1は、燃料電池の一実施態様を模式的に示す断面図である。
図2は、金属多孔体の骨格の一部の構造の一例を示す模式図であり、
図3は、その骨格の一部の断面を模式的に示す断面図である。
図4は、一実施形態に係るインターコネクタを模式的に示す上面図である。
図5Aおよび
図5Bは、一実施形態に係る第1金属多孔体の構成を模式的に示す上面図である。なお、図示例では、MEA、インターコネクタおよび第1金属多孔体が円形である場合を示しているが、これに限定されるものではない。MEA1、インターコネクタ3および第1金属多孔体2は、例えば、矩形、楕円形、多角形等であっても良い。
【0022】
図1に示すように、燃料電池10は、MEA1を備える。MEA1は、カソード1cと、アノード1aと、カソード1cおよびアノード1aの間に介在し、イオン伝導性を有する固体酸化物を含む固体電解質層(以下、固体電解質層1bと称する)と、を備える。アノード1aに対向するように、三次元網目状の骨格を有する第1金属多孔体2が配置されている。さらに、第1金属多孔体2に対向するように、インターコネクタ3が配置されている。
【0023】
インターコネクタ3には、MEA1に第1金属多孔体2を介して原料ガス(燃料ガスまたは空気)を供給するためのガス供給口4と、未反応の原料ガスを排出するためのガス排出口5aおよび5b(以下、まとめて単にガス排出口と称する場合がある)とが形成されている。
図4では、円形のガス供給口4がインターコネクタ3の中央部に配置され、2つの円形のガス排出口5aおよび5bがインターコネクタ3の外周部に、ガス供給口4と直線状に並ぶように配置されている。ガス供給口4およびガス排出口の数、形状および配置はこれに限定されない。ガス供給口4およびガス排出口の形状は矩形であっても良い。また、ガス供給口4は、例えば、インターコネクタ3の外周部に配置されていても良い。この場合、ガス排出口は、インターコネクタ3のガス供給口4とは反対側の外周部に1つ以上配置されていても良い。
【0024】
また、
図1では、アノード1aに対向するように第1金属多孔体2が配置されているが、これに限定されない。第1金属多孔体2は、カソード1cに対向するように配置されても良いし、アノード1aおよびカソード1cに対向するように、複数の第1金属多孔体2が配置されても良い。なかでも、燃料ガスの利用効率が高まることにより、ランニングコストが低減される点で、第1金属多孔体2は、少なくともアノード1aに対向するように配置されることが好ましい。また、アノード1a側は還元雰囲気下であるため、金属多孔体の材料が制限されない点においても、上記のように配置されることが好ましい。以下、アノード1aに対向するように第1金属多孔体2が配置される場合を例に挙げて、説明する。
【0025】
(金属多孔体)
第1金属多孔体2(金属多孔体S、H)および後述する第2金属多孔体6は、三次元網目状の骨格を有しており、例えば、不織布状の構造や、スポンジ状の構造を有する。このような構造は、空孔および金属製の骨格を有する。例えば、スポンジ状の構造を有する金属多孔体は、空孔および金属製の骨格を有する複数のセルにより構成される。
【0026】
上記セルの1つは、
図2に示すように、例えば、正十二面体として表わすことができる。空孔101は、繊維状または棒状の金属部分(繊維部102)により区画されており、
複数が三次元的に連なっている。セルの骨格は、繊維部102が連結することにより形成される。セルには、繊維部102により囲まれた略五角形の開口(または窓)103が形成されている。隣接するセル同士は、1つの開口103を共有しながら、互いに連通している。すなわち、金属多孔体の骨格は、連続する複数の空孔101を区画しながら、網目状のネットワークを形成する繊維部102により形成される。このような構造を有する骨格を、三次元網目状の骨格という。
【0027】
図3に示すように、繊維部102は、内部に空洞102aを有していても良く、つまり、中空であっても良い。中空の骨格を有する金属多孔体は、嵩高い三次元構造を有しながらも、極めて軽量である。
【0028】
このような金属多孔体は、例えば、連通孔を有する樹脂製の多孔体を、金属で被覆することにより形成できる。金属による被覆は、例えば、メッキ処理法、気相法(蒸着、プラズマ化学気相蒸着、スパッタリングなど)、金属ペーストの塗布などにより行うことができる。金属による被覆処理により、三次元網目状の骨格が形成される。なかでも、金属による被覆には、メッキ処理法が好ましく用いられる。
【0029】
メッキ処理法としては、樹脂製多孔体の表面(内部の空隙の表面も含む)に、金属層を形成できる方法であればよく、公知のメッキ処理方法、例えば、電解メッキ法、溶融塩メッキ法などが採用できる。メッキ処理法により、樹脂製多孔体の形状に応じた、三次元網目状の金属多孔体が形成される。つまり、得られる金属多孔体の気孔径は、上記樹脂製多孔体の気孔径により制御することができる。一方、金属粉末の焼結体の場合、その気孔径は、混合されるバインダ粉末の種類や粒径、混合割合などに影響される。そのため、焼結体の気孔径を制御することは非常に困難である。
【0030】
なお、電解メッキ法によりメッキ処理を行う場合、電解メッキに先立って、導電性層を形成することが望ましい。導電性層は、樹脂製多孔体の表面に、無電解メッキ、蒸着、スパッタリングなどの他、導電剤の塗布などにより形成してもよく、導電剤を含む分散液に樹脂製多孔体を浸漬することにより形成してもよい。
【0031】
樹脂製の多孔体としては、連通孔を有する限り特に制限されず、樹脂発泡体、樹脂製の不織布などが使用できる。なかでも、得られる金属多孔体に連通孔が形成され易い点で、樹脂発泡体が好ましい。これらの多孔体を構成する樹脂としては、金属被覆処理後に、金属の三次元網目状骨格の形状を維持した状態で、分解または溶解などにより骨格の内部を中空にすることができるものが好ましい。例えば、熱硬化性ポリウレタン、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂;オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などが例示できる。なかでも、サイズや形状がより均一な空孔が形成されやすい観点から、熱硬化性ポリウレタンなどを用いることが好ましい。
【0032】
骨格内の樹脂は、加熱処理などにより、分解または溶解され、除去されることが望ましい。加熱処理後、骨格内に残存した成分(樹脂、分解物、未反応モノマー、樹脂に含まれる添加剤など)を洗浄などにより除去してもよい。樹脂は、必要に応じて、適宜電圧を印加しながら加熱処理を行うことにより除去してもよい。また、この加熱処理は、溶融塩メッキ浴に、メッキ処理した多孔体を浸漬した状態で、電圧を印加しながら行ってもよい。このように、金属被覆処理の後、内部の樹脂を除去すると、金属多孔体の骨格の内部に空洞が形成されて、中空となる。このようにして得られる金属多孔体は、樹脂製発泡体の形状に対応する三次元網目構造の骨格を有する。なお、市販の金属多孔体としては、住友電気工業株式会社製の「アルミセルメット」(登録商標)や銅またはニッケルの「セルメット」(登録商標)を用いることができる。
【0033】
(第1金属多孔体)
第1金属多孔体2は、MEA1とインターコネクタ3との間に介在している。第1金属多孔体2は、主に、ガス供給口4から供給された原料ガスを拡散し、MEA1に供給する役割を有する。
【0034】
第1金属多孔体2は、気孔率の異なる少なくとも2種類の金属多孔体をそれぞれ所望の形状に切断し、インターコネクタ3の形状に組み合わせることにより構成される。各金属多孔体は、例えばシート状であって、三次元網目状の骨格を有しており、それぞれの気孔率は均一である。金属多孔体は三次元網目状の骨格を有しているため、塑性変形し易い。そのため、複数の金属多孔体を同一平面上に隙間なく配置することができる。第1金属多孔体2を構成する複数の金属多孔体は、その骨格同士が絡み合うことにより接合されていても良い。金属多孔体同士の接合(骨格同士の絡み合い)については、後述する。
【0035】
第1金属多孔体2は、少なくともガス供給口4に対向するように配置される金属多孔体Sと、上記以外の部分に配置される金属多孔体Hとを有している。言い換えれば、第1金属多孔体2のガス供給口4に対向する部分s(
図5A参照)に配置される金属多孔体が金属多孔体Sであり、第1金属多孔体2を構成する金属多孔体S以外の金属多孔体が、金属多孔体Hである。このとき、金属多孔体Sの気孔率Psと、金属多孔体Hの気孔率Phとは、Ps<Phの関係を満たす。なかでも、気孔率Psに対するPhの割合(Ph/Ps)は1.05〜2であることが好ましい。
【0036】
ガス供給口4から第1金属多孔体2に供給される原料ガスは、ガス供給口4付近に滞留し易い。第1金属多孔体2におけるガス供給口4に対向する部分sに配置される金属多孔体Sの気孔率を、他の部分より小さくすることにより、原料ガスは、ガス供給口4から離れた気孔率の大きい金属多孔体Hへと移動しやすくなる。よって、ガス拡散性が向上し、ガス利用率が向上する。その結果、発電効率が高くなる。以下、第1金属多孔体2のうち、金属多孔体Sが占める領域を第1領域SR、金属多孔体Hが占める領域を第2領域HRと称する。
【0037】
第1領域SRを第1金属多孔体2の主面の法線方向からみたときの形状は特に限定されない。例えば、第1領域SRは、
図5Aに示すように、ガス供給口4、さらにはガス排出口5aおよび5bに対向し、ガス供給口4の中心C
4とガス排出口5(5a、5b)の中心C
5(C
5a、C
5b)とを最短距離で結ぶ直線LI(
図4参照)に沿った帯状の形状であっても良い。この場合、第2領域HR(HR
1およびHR
2)を第1金属多孔体2の主面の法線方向からみたときの形状は、例えば、第1領域SRを挟んで向かい合う略半円形である。
【0038】
第1金属多孔体2に供給された原料ガスは、ガス供給口4付近に滞留するか、あるいは、ガス供給口4からガス排出口5aおよび5bに向かう方向、すなわち直線LIの方向に移動し易い。そのため、原料ガスは、第1金属多孔体2の直線LIに対応する直線Lから離れた部分には、特に拡散し難い。直線Lを含む第1領域SRの気孔率(金属多孔体Sの気孔率Psと同じ。以下、第1領域SRの気孔率を気孔率Psと称する場合がある。)を、第2領域HRの気孔率(金属多孔体Hの気孔率Phと同じ。以下、第2領域HRの気孔率を気孔率Phと称する場合がある。)より小さくすることにより、原料ガスは、第1金属多孔体2の直線L上から離れた部分にまで拡散し易くなる。
【0039】
第1領域SRの形状は、第1金属多孔体2の主面の法線方向からみたとき、
図6Aに示すように、ガス供給口4の中心C
4(
図4参照)に対応する点Cを中心とする円形であっても良い。これにより、ガス供給口4から第1金属多孔体2(2C)に供給された原料ガスは、点Cから、気孔率のより大きな第2領域HRに向かって拡散する。
【0040】
第1領域SRの形状は、第1金属多孔体2の主面の法線方向からみたとき、
図7Aに示すように、ガス供給口4の中心C
4に対応する点Cを中心とする多角形であっても良い。この場合も、上記と同様、ガス供給口4から第1金属多孔体2に供給された原料ガスは、点Cから、気孔率のより大きな第2領域HRに向かって拡散する。
図7Aでは、第1領域SRの形状が正多角形(正八角形)である場合を示しているが、第1領域SRの形状は特に限定されず、例えば、3角形〜12角形であり得る。また、図示例のようにすべての辺の長さが等しい正多角形であっても良いし、辺の長さが同じではない多角形であっても良い。
【0041】
第2領域HRは、複数の金属多孔体から構成されていても良い。例えば、
図5Bに示すように、第2領域HRを、第1領域SRに隣接し、直線Lに平行な帯状の分割領域HR
1およびHR
2と、分割領域HR
1およびHR
2にそれぞれ隣接し、残りの部分を占める分割領域HR
3およびHR
4とに分割し、複数の金属多孔体を用いて各分割領域HR
1〜HR
4を構成しても良い。また、例えば、
図6Bに示すように、第2領域HRを、円形の第1領域SRを取り囲み、第1領域SRと同心の環状領域である分割領域HR
1と、分割領域HR
1を取り囲み、第1領域SRと同心の環状領域である分割領域HR
2とに分割し、複数の金属多孔体を用いて各分割領域HR
1およびHR
2を構成しても良い。さらに、
図7Bに示すように、第2領域HRを、多角形の第1領域SRを取り囲み、第1領域SRと同じ外形を有する多角形の分割領域HR
1と、分割領域HR
1を取り囲む分割領域HR
2とに分割し、複数の金属多孔体を用いて各分割領域HR
1およびHR
2を構成しても良い。このとき、各分割領域を構成する金属多孔体の気孔率は異なっていても良い。なお、分割領域の形状はこれに限定されない。
【0042】
上記の場合、気孔率Psが、第2領域HR全体の気孔率Phよりも小さくなるように、各分割領域(HR
1等)を構成する各金属多孔体の気孔率を設定すれば良い。例えば、各分割領域のいずれかは、気孔率が第1領域SRよりも小さい金属多孔体により構成されても良い。すなわち、第2領域HRが複数の金属多孔体から構成される場合、気孔率Phは、当該複数の金属多孔体の気孔率および体積割合を考慮して求められる。具体的には、気孔率Ph(体積%)は、分割領域HR
1の気孔率(体積%)×分割領域HR
1の第2領域HRに占める体積割合+・・・+分割領域HR
nの気孔率(体積%)×分割領域HR
nの第2領域HRに占める体積割合により求められる。各分割領域の気孔率(体積%)は、{1−(各分割領域の見掛けの比重/各分割領域を構成する金属の真の比重)}×100で求められる。
【0043】
図5Bに示す金属多孔体2Bの場合、ガス拡散性の観点から、各分割領域の気孔率が直線Lからの最短距離が遠いほど大きくなるように、各分割領域に気孔率の異なる複数種類の金属多孔体を配置することが好ましい。具体的には、分割領域HR
1、HR
3の各気孔率Ph
1、Ph
3がPh
1<Ph
3の関係を満たし、かつ、分割領域HR
2、HR
4の各気孔率Ph
2、Ph
4がPh
2<Ph
4の関係を満たすように、各分割領域に気孔率の異なる金属多孔体を配置する。気孔率Ph
1とPh
2、または、気孔率Ph
3とPh
4とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。分割領域HR
1とHR
3の形状、または、分割領域HR
2とHR
4の形状とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0044】
なお、
図5Bでは、第2領域HRを4つの金属多孔体で構成する場合を示しているが、これに限定されない。例えば、第2領域HRを3〜7つの金属多孔体で構成しても良い。このとき、各金属多孔体の気孔率は、同じであっても良いし異なっていても良い。第2領域HRを構成する各金属多孔体の形状も特に限定されない。例えば、
図5Aおよび5Bに示すように、第2領域HRを構成する各金属多孔体は、第1領域SR(金属多孔体S)に平行な帯状の形状であっても良いし、第2領域HRを直線Lに垂直な方向に複数に分割したような形状(図示せず)であっても良い。さらに、第2領域HRを構成する各金属多孔体は、これらを組み合わせた形状であっても良い。
【0045】
図6Bおよび7Bに示す金属多孔体2Dおよび2Fの場合、ガス拡散性の観点から、分割領域HR
1およびHR
2の気孔率が、点Cからの最短距離が遠いほど大きくなるように、各分割領域に気孔率の異なる複数種類の金属多孔体を配置することが好ましい。具体的には、分割領域HR
1およびHR
2の各気孔率Ph
1、Ph
2がPh
1<Ph
2の関係を満たすように、各分割領域として気孔率の異なる金属多孔体を配置する。
【0046】
また、第1領域SRを、複数の金属多孔体から構成しても良い。すなわち、第1領域SRには、部分sの一部を含む金属多孔体が複数配置されていても良い。言い換えれば、部分sを一部でも含む金属多孔体は、すべて金属多孔体Sである。第1領域SRが複数の分割領域(a
1、
・・・、a
n)を備える場合、気孔率Psは、各分割領域(a
1、
・・・、a
n)の気孔率および体積割合を考慮して求められる。すなわち、気孔率Ps(体積%)は、分割領域a
1の気孔率(体積%)×分割領域a
1の第1領域SRに占める体積割合+
・・・+分割領域a
nの気孔率(体積%)×分割領域a
nの第1領域SRに占める体積割合により求められる。
【0047】
さらに、第1金属多孔体2において、直線Lを含む領域の気孔率が小さくなるとともに、点Cから外周部に向かって気孔率が大きくなるように、気孔率の異なる複数の金属多孔体を配置しても良い。ガス拡散性のさらなる向上が期待できるためである。具体的には、例えば
図8AおよびBに示すように、第1金属多孔体2Gが、点Cを中心とする円形の第1領域SRとこれを取り囲む第2領域HRとを含む場合、第1領域SRを放射状に8つに等分する。すなわち、金属多孔体Sを、異なる気孔率を有し、点Cを頂点とする扇形の複数の金属多孔体a
1〜a
3により構成する。このとき、金属多孔体a
1〜a
3は、それぞれ部分sの一部を含んでいる。
図8では、それぞれ2個の金属多孔体a
1〜a
3が、第1領域SRに配置されている。この場合、第1領域SRにおいて、直線Lを含む分割領域a
1の気孔率Pa
1を、他の分割領域a
2およびa
3の気孔率(Pa
2、Pa
3)よりも小さくする(Pa
1<Pa
2、Pa
3)。さらに、分割領域a1に隣接する分割領域a
2の気孔率は、分割領域a
3よりも小さいことが好ましい(Pa
2<Pa
3)。
【0048】
さらに、第2領域HRを環状の分割領域HR
1およびHR
2に分割しても良い。この場合、第1領域SR全体の気孔率Psが第2領域HR全体(HR
1およびHR
2)の気孔率Phよりも小さくなるように、分割領域HR
1およびHR
2の各気孔率を設定すれば良い。
【0049】
分割領域HR
1およびHR
2をさらに複数の部分(b
1〜b
3、c
1〜c
2)に分割するように、各分割領域を複数の気孔率の異なる金属多孔体により構成しても良い。このとき、分割領域HR
1およびHR
2についても、直線Lあるいはその延長線を含む部分b
1およびc
1の気孔率が、他の部分(b
2、b
3およびc
2)より小さくなるように、各金属多孔体を配置することが好ましい。
図8では、分割領域HR
1を放射状に8つに等分し、分割領域HR
2を4つに分割している。分割領域HR
1において、部分b
1に隣接する部分b
2の気孔率は、部分b
3よりも小さいことが好ましい(Pb
2<Pb
3)。
【0050】
分割領域HR
1およびHR
2の気孔率の大小関係は、特に限定されない。なかでも、第1金属多孔体2Gに点Cを中心とする放射状の直線を引いたとき、この直線上において、点Cから外周部に向かって気孔率が大きくなる関係、つまり、分割領域HR
1の気孔率<分割領域HR
2の気孔率を満たすことが好ましい。これにより、ガス供給口4から外周部に向かって、さらにガスが拡散し易くなる。
【0051】
分割領域HR
1およびHR
2をさらに複数の部分に分割する場合、同じ分割領域内における気孔率の分布は特に限定されない。例えば、
図9に示すように、点Cと、直線Lの延長線と第1金属多孔体2の外縁との交点の一方と、を結ぶ直線L1を引く。直線L1との成す角度がθ(0°≦θ≦90°)である直線L
θを引いた場合、角度θが大きくなるに従い、この直線L
θ上における気孔率が大きくなることが好ましい。つまり、直線L1と直線L
θとが直交(θ=90°)する場合、直線L
θを含む部分の気孔率は、同じ領域の他の部分よりも大きい。これにより、ガス排出口5(5a、5b)から離れた外周部にも、ガスが拡散し易くなる。
【0052】
第1領域SR(金属多孔体S)の第1金属多孔体2に占める割合Rsは、特に限定されない。なかでも、ガス拡散性の観点から、割合Rsは、1〜20体積%であることが好ましく、20〜50体積%であることがより好ましい。割合Rsは、金属多孔体Sの骨格部分(繊維部102)および空孔101部分の体積の和(金属多孔体Sの見掛けの体積)を第1金属多孔体2の見掛けの体積で除したものに100を掛けて求められる。
【0053】
金属多孔体Sの気孔率Psは特に限定されない。なかでも、ガス拡散性の観点から、気孔率Psは、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、85体積%以上であることが特に好ましい。気孔率Psは、100体積%未満であり、98体積%以下であることが好ましく、96体積%以下であることがより好ましく、94体積%以下であることが特に好ましい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0054】
金属多孔体Hの気孔率Phは、気孔率Psより大きい限り、特に限定されない。なかでも、ガス拡散性の観点から、気孔率Phは、85体積%以上であることが好ましく、88体積%以上であることがより好ましく、95体積%以上であることが特に好ましい。気孔率Phは、100体積%未満であり、99.5体積%以下であっても良いし、99体積%以下であっても良い。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0055】
金属多孔体Sの気孔径Dsは特に限定されない。金属多孔体Sの気孔径Dsは、金属多孔体Hの気孔径Dhより小さくても良い。なかでも、圧力損失の観点から、気孔径Dsは、100〜1000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがより好ましい。金属多孔体Hの気孔径Dhは特に限定されない。なかでも、圧力損失の観点から、気孔径Dhは、100〜5000μmであることが好ましく、250〜1700μmであることがより好ましい。
【0056】
気孔径Dsは、例えば、以下のようにして求められる。まず、金属多孔体Sから任意の開口103aを1つ選択する。この開口103aに収容される最大の正円C(
図2参照)の直径Dpと、同じ開口103aを収容することのできる最小の正円の直径とを測定し、これらの平均値を求める。これを開口103aの気孔径Daとする。同様にして、金属多孔体が有する他の任意の複数(例えば、9個)の開口103b〜103jの各気孔径Db〜Djを求め、これら10個の開口103a〜103jの各気孔径Da〜Djのすべての平均値を、気孔径Dsとする。
【0057】
具体的には、金属多孔体Sの主面のSEM写真において、開口103の全体が10個以上含まれる領域Rを決める。領域Rに含まれる開口103のうち、例えば10個をランダムに選択し、各開口103a〜103jについて、上記の方法により気孔径Da〜Djを算出する。算出された各開口103a〜103jの気孔径Da〜Djのすべての平均値を気孔径Dsとする。
【0058】
金属多孔体Sが複数の金属多孔体から構成されている場合、上記の方法により、各金属多孔体の気孔径を求め、各金属多孔体の気孔径に金属多孔体Sに占める各金属多孔体の体積割合を掛けた数値の和を、金属多孔体S全体の気孔径Dsとする。気孔径Dhも上記と同様にして求められる。以下の各物性値に関しても、金属多孔体Sおよび/または金属多孔体Hが複数の金属多孔体から構成されている場合、上記のように、各金属多孔体の体積割合を考慮して求めることができる。
【0059】
金属多孔体Sにおける空孔101の径(セル径)Vsは、特に限定されない。なかでも、圧力損失の観点から、セル径Vsは、100〜1000μmであることが好ましく、100〜500μmであることがより好ましい。金属多孔体Hのセル径Vhは特に限定されない。なかでも、圧力損失の観点から、セル径Vhは、300〜3500μmであることが好ましく、500〜3200μmであることがより好ましい。金属多孔体Sのセル径Vsは、金属多孔体Hのセル径Vhより小さくても良い。
【0060】
セル径Vsは、例えば、以下のようにして求められる。まず、金属多孔体Sにおける空孔101の中から任意の空孔101aを1つ選択する。この空孔101aに収容される最大の球体の直径と、空孔101aを収容することのできる最小の球体S(
図2参照)の直径とを測定し、これらの平均値を求める。これを空孔101aのセル径Vsaとする。同様にして、金属多孔体Sにおける他の任意の複数(例えば、9個)の空孔101b〜101jの各セル径Vsb〜Vsjを求め、これら10個の空孔101a〜101jの各セル径Vsa〜Vsjのすべての平均値を、セル径Vsとする。
【0061】
具体的には、金属多孔体Sの主面のSEM写真から、外縁の明瞭な空孔101を10個、ランダムに選択する。この10個の空孔101a〜101jについて、上記の方法によりセル径Vsa〜Vsjを算出する。算出された各空孔101a〜101jのセル径Vsa〜Vsjの平均値をセル径Vsとする。セル径Vhも上記と同様にして求められる。
【0062】
第1金属多孔体2を構成する金属は、使用環境に応じて適宜選択すれば良い。例えば、第1金属多孔体2がアノード1aに隣接するように配置される場合、金属の種類は特に制限されない。上記金属としては、例えば、銅(Cu)、Cu合金(銅と、例えば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)等との合金)、NiまたはNi合金(Niと、例えば錫(Sn)、クロム(Cr)、タングステン(W)等との合金)、アルミニウム(Al)またはAl合金(Alと、例えばFe、Ni、Si、Mn等との合金)、ステンレス鋼等が挙げられる。第1金属多孔体2がカソード1cに隣接するように配置される場合、第1金属多孔体2は、Crなどの高い耐酸化性を有する金属とNiとの合金により構成されることが好ましい。金属多孔体Sを構成する金属と金属多孔体Hを構成する金属とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0063】
金属多孔体Sおよび金属多孔体Hの比表面積(BET比表面積)も特に限定されない。上記比表面積は、例えば、それぞれ100〜9000m
2/m
3であっても良く、200〜6000m
2/m
3であっても良い。金属多孔体Sの比表面積は、金属多孔体Hの比表面積より大きくても良い。
【0064】
金属多孔体Sおよび金属多孔体Hにおける開口103の密度(セル密度)は、特に限定されない。なかでも、ガス拡散性の観点から、セル密度は、それぞれ5〜100個/2.54cmであることが好ましく、5〜70個/2.54cmであることがより好ましい。なお、セル密度とは、金属多孔体の表面に長さ1インチ(=2.54cm)の直線を引いたとき、この直線上に存在する開口103の数である。金属多孔体Sのセル密度は、金属多孔体Hのセル密度より大きくても良い。
【0065】
金属多孔体Sおよび金属多孔体Hの骨格(繊維部102)の幅Wfも特に限定されない。幅Wfは、例えば、それぞれ3〜500μmであっても良く、10〜500μmであっても良い。金属多孔体Sの幅は、金属多孔体Hの幅より大きくても良い。
【0066】
金属多孔体Sおよび金属多孔体Hの厚みも特に限定されない。なかでも、ガス拡散性の観点から、第1金属多孔体2全体の厚みT1は、0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜2mmであることがより好ましい。厚みT1は、例えば、第1金属多孔体2の任意の10箇所の厚みの平均値である。
【0067】
(第2金属多孔体)
第1金属多孔体2に、三次元網目状の骨格を有する第2金属多孔体6を積層しても良い。第2金属多孔体6の気孔率P2は特に限定されず、配置場所および目的等に応じて適宜設定すれば良い。第2金属多孔体6も、複数の金属多孔体を組み合わせて形成されても良い。
【0068】
第2金属多孔体6は、例えば
図10Aに示すように、第1金属多孔体2とインターコネクタ3との間に配置しても良い。この場合、第2金属多孔体6の気孔率P2は、第2領域HRの気孔率Phよりも大きいことが好ましい。これにより、圧力損失が低下し、ガス拡散性がさらに向上する。気孔率P2は、気孔率Psと同様にして求められる。
【0069】
第2金属多孔体6は、例えば
図10Bに示すように、第1金属多孔体2とMEA1のいずれかの電極(
図10Bではアノード1a)との間に配置しても良い。この場合、第2金属多孔体6の気孔率P2は特に限定されない。第2金属多孔体6の気孔径D2は、集電性の観点から、第1金属多孔体2全体(金属多孔体Sおよび金属多孔体H)の気孔径D1よりも小さいことが好ましく、金属多孔体Sの気孔径Ds以下であることがより好ましい。気孔径が小さい場合、その表面の凹凸は小さくなる。そのため、第2金属多孔体6の気孔径D2が小さいほど、電極(アノード1a)との接触性が向上し易い。よって、抵抗が小さくなる。なかでも、電気抵抗およびガス拡散性のバランスの点で、第1金属多孔体2全体の気孔径D1と第2金属多孔体6の気孔径D2との比(D1/D2)は、1.2〜10であることが好ましく、1.5〜5であることがより好ましい。気孔径D2は、気孔径Dsと同様にして求められる。
【0070】
第2金属多孔体6のセル径、セル密度、BET比表面積、骨格102の幅Wfは特に限定されず、配置場所および目的等に応じて適宜設定すれば良い。各数値範囲としては、金属多孔体Sまたは金属多孔体Hで例示したのと同じ数値範囲が例示できる。
【0071】
第2金属多孔体6の厚みT2も特に限定されない。なかでも、抵抗またはガス拡散性の観点から、厚みT2は、0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜2mmであることがより好ましい。また、同様の観点から、第1金属多孔体2の厚みT1と第2金属多孔体6の厚みT2との比(T1/T2)は、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
【0072】
第2金属多孔体6を構成する金属は、使用環境に応じて適宜選択すれば良い。第1金属多孔体2および第2金属多孔体6を構成する金属は、同じであっても良いし、異なっていても良い。上記金属としては、第1金属多孔体2で例示したものと同じ金属が例示される。
【0073】
集電性およびガス拡散性、さらには生産性の観点から、第1金属多孔体2と第2金属多孔体6とは、その骨格同士が絡み合うことにより接合されていることが好ましい。金属多孔体Sおよび金属多孔体Hも同様に、その骨格同士が絡み合うことにより接合されていることが好ましい。骨格同士が絡み合っているとは、例えば、第1金属多孔体2(あるいは、金属多孔体S)の端部近傍に存在する開口103に、第2金属多孔体6(あるいは、金属多孔体H)の繊維部102の端部近傍が入り込んだ状態であり得る。また、各金属多孔体の端部近傍に存在する繊維部102が塑性変形して、係合している状態であり得る。これにより、第1金属多孔体2と第2金属多孔体6(あるいは、金属多孔体Sと金属多孔体H)とは、接着剤を介在させることなく、互いの主面近傍で強固に接合される。そのため、第1金属多孔体2と第2金属多孔体6(あるいは、金属多孔体Sと金属多孔体H)とは、電気的に接続し、かつ、連通する。
【0074】
例えば、第1金属多孔体2と第2金属多孔体6とが接合された複合材料は、第1金属多孔体2の前駆体(第1前駆体)と第2金属多孔体6の前駆体(第2前駆体)とを積層し、プレス加工することにより得ることができる。なお、プレス加工により、各前駆体の気孔率、気孔径およびセル径は、例えば、それぞれ2〜10%減少しうる。そのため、各前駆体の気孔率、気孔径およびセル径は、プレス加工後の第1金属多孔体2および第2金属多孔体6の気孔率、気孔径およびセル径が所望の範囲となるように、適宜設定する。なお、前駆体の気孔率、気孔径およびセル径は、第1金属多孔体2の気孔率、気孔径およびセル径と同様にして求められる。
【0075】
プレス加工の方法は特に限定されず、例えば、ロールプレス、平板プレス等が挙げられる。プレス加工は、加熱下で行っても良い。なかでも、コストおよび生産効率の観点から、第1前駆体と第2前駆体とは、常温下でロールプレスにより接合されることが好ましい。プレス圧は特に限定されず、適宜設定すれば良い。プレス圧は、例えば、0.1〜5MPaであっても良いし、1〜5MPaであっても良い。
【0076】
(MEA)
MEA1は、カソード1cと、アノード1aと、カソード1cおよびアノード1aの間に介在し、イオン伝導性を有する固体電解質層1bと、を備える。カソード1cと、アノード1aと、固体電解質層1bとは、例えば、焼結により一体化されている。
【0077】
(カソード)
カソード1cは、酸素分子を吸着し、解離させてイオン化することができる多孔質の構造を有している。カソード1cの材料としては、例えば、燃料電池、ガス分解装置または水素製造装置のカソードとして用いられる公知の材料を用いることができる。カソード1cの材料は、例えば、ランタンを含み、ペロブスカイト構造を有する化合物である。具体的には、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF、La
1−aS
aFe
1−bCo
bO
3−δ、0.2≦a≦0.8、0.1≦b≦0.9、δは酸素欠損量である)、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM、La
1−cS
cMnO
3−δ、0.2≦c≦0.8、δは酸素欠損量である)、ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC、La
1−HRS
HRCoO
3−δ、0.2≦HR≦0.8、δは酸素欠損量である)等が挙げられる。
【0078】
カソード1cは、ニッケル、鉄、コバルト等の触媒を含んでいても良い。触媒を含む場合、カソード1cは、触媒と上記材料とを混合して、焼結することにより形成することができる。カソード1cの厚みは、特に限定されないが、5μm〜100μm程度であれば良い。
【0079】
(アノード)
アノード1aは、イオン伝導性の多孔質構造を有している。例えば、プロトン伝導性を有するアノード1aでは、後述する流路から導入される水素などの燃料を酸化して、水素イオン(プロトン)と電子とを放出する反応(燃料の酸化反応)が行われる。
【0080】
アノード1aの材料としては、例えば、燃料電池、ガス分解装置または水素製造装置のアノードとして用いられる公知の材料を用いることができる。具体的には、触媒成分である酸化ニッケル(NiO)と、酸化イットリウム(Y
2O
3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ、ZrO
2−Y
2O
3)、イットリウムがドープされたジルコン酸バリウム(BZY、BaZr
1−eY
eO
3−δ、0.05≦e≦0.25、δは酸素欠損量である)、イットリウムがドープされたセリウム酸バリウム(BCY、BaCe
1−fY
fO
3−δ、0.05≦f≦0.25、δは酸素欠損量である)、イットリウムがドープされたジルコン酸バリウム/セリウム酸バリウムの混合酸化物(BZCY、BaZr
1−g−hCe
gY
hO
3−δ、0<g<1、0.05≦h≦0.25、δは酸素欠損量である)等の固体酸化物と、の複合酸化物等が挙げられる。このような複合酸化物を含むアノード1aは、例えば、NiO粉末と粉末状の上記固体酸化物等とを混合して焼結することにより形成することができる。
【0081】
アノード1aの厚みは、例えば、10μm〜1000μm程度であれば良い。アノード1aは、その厚みを大きくして、MEA1の支持体として機能させても良い。
図1は、アノード1aの厚みをカソード1cよりも大きく示し、アノード1aがMEA1の支持体として機能する場合を示している。アノード1aの厚みは、これに限定されるものではなく、例えば、カソード1cと同じ厚みであっても良い。
【0082】
(固体電解質層)
固体電解質層1bは、イオン伝導性を有する固体酸化物を含む。固体電解質層1bを移動するイオンとしては特に限定されず、酸化物イオンであっても良いし、プロトンであっても良い。なかでも、固体電解質層1bは、プロトン伝導性を有することが好ましい。プロトン伝導型酸化物型燃料電池(Protonic Ceramic Fuel Cells、PCFC)は、例えば400〜600℃の中温域で稼働できる。そのため、PCFCは、多様な用途に使用可能である。
【0083】
固体電解質層1bの材料としては、例えば、アノード1aの材料として例示した固体酸化物が同じく例示される。固体電解質層1bの厚みは、特に限定されないが、5μm〜100μm程度であることが、抵抗が低く抑えられる点で好ましい。
【0084】
(MEAの製造方法)
MEA1の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、アノード用材料をプレス成形する工程と、得られたアノード成形体の片面に、固体酸化物を含む固体電解質用材料を積層し、焼結する工程と、焼結された固体電解質用材料の表面に、カソード用の材料を積層し、焼結する工程と、を備える方法により、製造することができる。このようにして製造されたMEA1において、アノード1aと固体電解質層1bとカソード1cとは一体化されている。
【0085】
固体電解質用材料を積層する工程は、例えば、アノード成形体の片面に、固体電解質用材料の粉末と水溶性のバインダ樹脂とを混合したペーストを、スクリーン印刷、スプレー塗布、スピンコート、ディップコート等により付与することにより行われる。カソード用材料も同様にして、固体電解質の表面に積層することができる。
【0086】
固体電解質用材料の焼結は、アノード成形体と固体電解質用材料との積層体を、酸素雰囲気下で、例えば1300〜1500℃に加熱することにより行われる。焼結の雰囲気中の酸素含有量は、特に限定されず、50体積%以上であっても良いし、60体積%以上であっても良い。加熱温度は、1350〜1450℃であることが好ましい。焼結は、常圧下または加圧下で行うことができる。
【0087】
固体電解質用材料を積層する前に、アノード用材料を仮焼結しても良い。仮焼結は、アノード用材料が焼結される温度よりも低い温度(例えば、900〜1100℃)で行えばよい。仮焼結を行うことにより、固体電解質用材料を積層し易くなる。
【0088】
固体電解質用材料を焼結する前に、各材料に含まれるバインダ等の樹脂成分を除去しても良い。すなわち、カソード用材料を積層した後、大気中で500〜800℃程度の比較的低い温度に加熱して、各材料に含まれる樹脂成分を除去する。その後、酸素雰囲気下で、積層体を1300〜1500℃に加熱して、各材料を焼結させてもよい。
【0089】
カソード用材料の焼結は、固体電解質層が形成されたアノード成形体とカソード用材料との積層体を、酸素雰囲気下で、例えば800〜1100℃で焼結することにより行われる。焼結の雰囲気中の酸素含有量は、特に限定されず、例えば、上記範囲であれば良い。
焼結は、常圧下または加圧下で行うことができる。
【0090】
(インターコネクタ)
インターコネクタ3は、燃料ガスと空気とを分離する。MEA1と金属多孔体2とインターコネクタ3とが組み合わされて、一つの構成単位が形成される。燃料電池10が、積層された複数の上記構成単位を含む場合、インターコネクタ3の一方の面を第1金属多孔体2に接触させ、他方の面をMEA1の一方の面に接触させても良い。
【0091】
インターコネクタ3の材料としては、導電性および耐熱性の点で、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金等の耐熱合金が例示できる。PCFCの場合、動作温度が400〜600℃程度であるため、安価なステンレス鋼をインターコネクタの材料として用いることができる。
【0092】
第1金属多孔体2は優れたガス拡散性を有するため、第1金属多孔体2に隣接するインターコネクタ3の第1金属多孔体2に対向する面には、ガス流路を形成することを要せず、当該面は平滑であっても良い。平滑とは、ガス流路としての機能を発揮する程度の凹凸を有していないことをいう。
【0093】
これにより、インターコネクタ3として加工性の低いクロム基合金を用いる場合であっても、エッチングを施すことなくインターコネクタとして使用することができる。そのため、生産性が向上するとともに、コストが低減する。なお、燃料電池10が、積層された複数の上記構成単位を含む場合、インターコネクタ3の第1金属多孔体2に接触しない面(MEA1に接触する面)には、ガス流路が形成されていても良い。
【0094】
ここで、上記のような三次元網目状の骨格を有する金属多孔体は、燃料電池以外に、水の電気分解(電解)による水素の製造にも好適に使用できる。水素の製造方式には、大きく分けて(1)アルカリ性水溶液を用いるアルカリ水電解方式、(2)PEM方式(polymer electrolyte membrane:高分子電解質膜方式)、(3)SOEC方式(Solid Oxide Electrolysis Cell:固体酸化物形電解セル方式)があり、いずれの方式にも、上記金属多孔体を用いることができる。なお、上記金属多孔体には、金属多孔体S、金属多孔体H、その他の三次元網目状の骨格を有する金属多孔体、あるいは、これら2種以上の組み合わせが含まれる(以下、同じ)。
【0095】
(1)アルカリ水電解方式は、アルカリ性水溶液(好ましくは強アルカリ性水溶液)に陽極および陰極を浸漬し、陽極と陰極との間に電圧を印加することにより、水を電気分解する方式である。この場合、少なくともいずれか一方の電極に上記金属多孔体を使用する。陽極では、水酸化イオンが酸化されて、酸素と水が生成される。陰極では、水素イオンが還元されて、水素が発生する。上記金属多孔体は表面積が大きいため、各イオンと金属多孔体との接触面積が大きく、水の電解効率が向上する。また、上記金属多孔体は良好な電気伝導性を備えているため、水の電解効率はより向上する。さらに、上記金属多孔体は気孔率が高いため、発生した水素および酸素が速やかに脱離できる。この点においても、水の電解効率の向上が期待できる。
【0096】
上記金属多孔体を構成する金属は特に限定されず、金属多孔体Sまたは金属多孔体Hを構成する金属として例示したものと同じ金属を例示することができる。なかでも、安価であり、水素発生反応に対して良好な触媒能を有している点で、陰極に用いられる上記金属多孔体は、NiまたはNi合金を含むことが好ましい。触媒活性の点で、陽極に用いられる上記金属多孔体は、プラチナを含むことが好ましい。
【0097】
上記金属多孔体の気孔径は、100μm以上、5000μm以下が好ましい。上記金属多孔体の気孔径が上記範囲であれば、各電極で発生した水素または酸素が速やかに脱離できるため、電解効率がさらに向上するとともに、各電極と水素イオンまたは水酸化イオンとの十分な接触面積が確保できる。同様の観点から、上記金属多孔体の気孔径は400μm以上、4000μm以下が好ましい。なお、気泡の脱離性、保水性および電気的接続を考慮して、異なる気孔率を持つ複数の上記金属多孔体(例えば、金属多孔体Sおよび金属多孔体H)を組み合わせて、1つの電極を構成してもよい。この場合、積層された複数の金属多孔体同士は、その界面で互いの骨格が絡み合うことにより接合されていることが好ましい。さらに、他の金属製の多孔体を上記金属多孔体と組み合わせて用いてもよい。
【0098】
上記金属多孔体の厚さおよび単位面積当たりの質量(金属量)は、製造装置の規模によって適宜設定すればよい。例えば、撓み等が生じないように、各電極の主面の面積に応じて、厚さや単位面積当たりの質量等を設定すればよい。
【0099】
発生した水素と酸素との混合を防止するために、陽極と陰極との間にセパレータを配置することが好ましい。セパレータの材質は特に限定されず、湿潤性、イオン透過性、耐アルカリ性、非導電性、非通気性、熱安定性等を有していればよい。このようなセパレータの材質としては、チタン酸カリウムが含浸されたフッ素樹脂、ポリアンチモン酸、ポリスルホン、親水化ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。陽極と陰極とセパレータとからなるものを構成単位として複数スタックして用いる場合、短絡防止の観点から、各構成単位同士の間にも上記したようなセパレータを配置することが好ましい。
【0100】
アルカリ性水溶液の溶質も特に限定されず、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)あるいはアルカリ土類金属(カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)の水酸化物等が挙げられる。なかでも、強アルカリ性の水溶液が得られる点で、アルカリ金属の水酸化物(特に、NaOH、KOH)が好ましい。アルカリ性水溶液の濃度も特に限定されず、電解効率の観点から、20〜40質量%であればよい。動作温度は、例えば60〜90℃程度であり、電流密度は、例えば0.1〜0.3A/cm
2程度である。
【0101】
(2)PEM方式は、高分子電解質膜を用いて水を電気分解する方法である。具体的には、PEM方式では、高分子電解質膜の両面に陽極および陰極をそれぞれ配置し、陽極に水を導入するとともに、陽極と陰極との間に電圧を印加することにより、水を電気分解する。この場合、少なくとも陽極として、上記金属多孔体を用いる。PEM方式では、高分子電解質膜によって陽極側と陰極側とが完全に分離されているため、(1)アルカリ水電解方式と比較して、純度の高い水素を取り出せる利点がある。また、上記金属多孔体は、表面積が大きく良好な電気伝導性を備えている。そのため、上記金属多孔体は、PEM方式を用いる水素製造装置(PEM式水素製造装置)の陽極として、好適に使用できる。
【0102】
ここで、PEM式水素製造装置により発生したプロトンは、高分子電解質膜を通って陰極へと移動し、陰極側で水素として取り出される。つまり、PEM式水素製造装置は、水素および酸素を反応させて発電し、水を排出する固体高分子型燃料電池とは、全く逆の反応を利用するものでありながら、同様の構成を有している。PEM式水素製造装置の動作温度は100℃程度である。高分子電解質膜としては、体高分子型燃料電池あるいはPEM式水素製造装置に従来使用されている、パーフルオロスルホン酸ポリマー等のプロトン伝導性の高分子が使用できる。なお、発生した水素が速やかに脱離できる点で、陰極もまた、上記金属多孔体を含むことが好ましい。
【0103】
上記金属多孔体を構成する金属は特に限定されず、金属多孔体Sまたは金属多孔体Hを構成する金属として例示したものと同じ金属を例示することができる。なかでも、安価であり、水素発生反応に対して良好な触媒能を有している点で、陽極に用いられる上記金属多孔体は、NiまたはNi合金を含むことが好ましい。触媒活性の点で、陰極に用いられる上記金属多孔体は、ロジウムを含むことが好ましい。
【0104】
上記金属多孔体の気孔径は、100μm以上、5000μm以下が好ましい。上記金属多孔体の気孔径が上記範囲であれば、各電極で発生した水素または酸素が速やかに脱離できるため、電解効率がさらに向上するとともに、保水性が高まる。特に陽極の保水性が小さいと、水が陽極と十分に反応する前に通り抜けてしまうため、電解効率が低下し易くなる。同様の観点から、上記金属多孔体の気孔径は400μm以上、4000μm以下が好ましい。なお、気泡の脱離性、保水性および電気的接続を考慮して、異なる気孔率を持つ複数の上記金属多孔体を積層して、1つの電極を構成してもよい。なかでも、陽極は、金属多孔体Sおよび金属多孔体Hを組み合わせて、構成されることが好ましい。この場合、金属多孔体Sを水の供給口に対向するように配置する。これにより、水の電解効率はさらに向上する。また、組み合わされた複数の金属多孔体同士は、その界面で互いの骨格が絡み合うことにより接合されていることが好ましい。さらに、他の金属製の多孔体を上記金属多孔体と組み合わせて用いてもよい。
【0105】
上記金属多孔体の厚さおよび単位面積当たりの質量は、製造装置の規模によって適宜設定すればよい。なかでも、上記金属多孔体の気孔率が30%以上となるように、厚さと単位面積当たりの質量とを調整することが好ましい。上記金属多孔体の気孔率が30%より小さくなると、上記金属多孔体の内部に水を流す際の圧力損失が大きくなるためである。また、本方式において、高分子電解質膜と電極として用いられる上記金属多孔体とは、圧着されることにより導通する。そのため、両者を圧着する際の各電極の変形およびクリープによる電気抵抗増加が実用上問題ない範囲になるように、上記金属多孔体の単位面積当たりの質量を調節することが好ましい。上記金属多孔体の単位面積当たりの質量は、400g/m
2以上が好ましい。
【0106】
(3)SOEC方式(水蒸気電解方式ともいう)は、固体酸化物電解質膜を用いて水蒸気を電気分解する方法である。具体的には、SOEC方式では、固体酸化物電解質膜の両面に陽極および陰極をそれぞれ配置し、いずれかの電極に水蒸気を導入するとともに、陽極と陰極との間に電圧を印加することにより、水蒸気を電気分解する。
【0107】
SOEC方式では、固体酸化物電解質膜がプロトン伝導性であるか酸化物イオン伝導性であるかによって、水蒸気を導入する電極が異なる。固体酸化物電解質膜が酸化物イオン伝導性である場合、水蒸気は陰極に導入される。水蒸気は陰極で電気分解されて、プロトンおよび酸化物イオンが生成される。生成したプロトンは、そのまま陰極で還元されて水素として取り出される。酸化物イオンは固体酸化物電解質膜を通過して陽極へと移動した後、陽極で酸化されて、酸素として取り出される。一方、固体酸化物電解質膜がプロトン伝導性である場合、水蒸気は陽極に導入される。水蒸気は陽極で電気分解されて、プロトンおよび酸化物イオンが生成される。生成したプロトンは固体酸化物電解質膜を通って陰極へと移動した後、陰極で還元されて水素として取り出される。酸化物イオンは、そのまま陽極で酸化されて、酸素として取り出される。
【0108】
SOEC方式では、水蒸気が導入される電極として、上記金属多孔体を用いる。上記金属多孔体は表面積が大きいため、水蒸気と電極との接触面積も大きくなり、水蒸気の電解効率が向上する。さらに、上記金属多孔体は良好な電気伝導性を備えているため、水蒸気の電解効率はより向上する。
【0109】
高純度の水素が得られ易い点で、固体酸化物電解質膜はプロトン伝導性であることが好ましい。固体酸化物電解質膜がプロトン伝導性である場合、水蒸気が導入される電極と水素が取り出される電極とが異なるためである。この場合、上記金属多孔体は、陽極に用いられる。なお、発生した水素が速やかに脱離できる点で、陰極もまた上記金属多孔体を含むことが好ましい。
【0110】
SOEC方式を用いる水素製造装置(SOEC式水素製造装置)と、水素および酸素を反応させて発電し、水を排出する固体酸化物型燃料電池とは、全く逆の反応を利用するものでありながら、同様の構成を有している。SOEC式水素製造装置の動作温度は600℃〜800℃程度であり、陽極では酸素が発生する。そのため、陽極は高温の酸化雰囲気に置かれる。上記金属多孔体は、高い耐酸化性および耐熱性を備えているため、SOEC式水素製造装置の特に陽極として好適に使用できる。
【0111】
上記金属多孔体を構成する金属は特に限定されず、金属多孔体Sまたは金属多孔体Hを構成する金属として例示したものと同じ金属を例示することができる。なかでも、酸化雰囲気となる陽極は、Crなどの高い耐酸化性を有する金属を、3〜30質量%含有するNi合金を含む上記金属多孔体を用いることが好ましい。電気抵抗の点で、陰極に用いられる上記金属多孔体は、Snを含むことが好ましい。
【0112】
上記金属多孔体の気孔径は、100μm以上、5000μm以下が好ましい。上記金属多孔体の気孔径が上記範囲であれば、水蒸気の圧力損失が適切な範囲になって、電解効率が高まる。また、上記金属多孔体を陰極に用いた場合、発生した水素も速やかに脱離することができる。同様の観点から、上記金属多孔体の気孔径は400μm以上、4000μm以下が好ましい。なお、気泡の脱離性、保水性および電気的接続を考慮して、異なる気孔径を持つ複数の上記金属多孔体を積層して、1つの電極を構成してもよい。なかでも、水蒸気が導入される電極は、金属多孔体Sおよび金属多孔体Hを組み合わせて、構成されることが好ましい。この場合、金属多孔体Sを水蒸気の供給口に対向するように配置する。これにより、水蒸気の電解効率はさらに向上する。また、積層された複数の金属多孔体同士は、その界面で互いの骨格が絡み合うことにより接合されていることが好ましい。さらに、他の金属製の多孔体を上記金属多孔体と組み合わせて用いてもよい。
【0113】
上記金属多孔体の厚さおよび単位面積当たりの質量は、水素製造装置の規模によって適宜設定すればよい。なかでも、上記金属多孔体の気孔率が30%以上となるように、厚さと単位面積当たりの質量とを調整することが好ましい。上記金属多孔体の気孔率が30%より小さくなると、上記金属多孔体の内部に水蒸気を流す際の圧力損失が大きくなるためである。また、本方式において、固体酸化物電解質膜と電極として用いられる上記金属多孔体とは、圧着されることにより導通する。そのため、両者を圧着する際の各電極の変形およびクリープによる電気抵抗増加が実用上問題ない範囲になるように、上記金属多孔体の単位面積当たりの質量を調節することが好ましい。上記金属多孔体の単位面積当たりの質量は、400g/m
2以上が好ましい。
【0114】
図11に、プロトン伝導性の固体酸化物電解質膜を用いたSOEC式水素製造装置20の要部の断面を模式的に示す。なお、
図11では、電源を省略している。水素製造装置20は、固体酸化物電解質膜21bを含む構造体21と、構造体21の各主面にそれぞれ対向する陽極22Aおよび陰極22Bと、陽極22Aの構造体21とは反対側の主面に対向する板状部材23Aと、陰極22Bの構造体21とは反対側の主面に対向する板状部材23Bと、図示しない電源と、を備える。陽極22A側の板状部材23Aには、水蒸気供給口24およびガス排出口25a、25bが形成されている。水蒸気Vは、水蒸気供給口24から陽極22Aに導入され、陽極22Aで発生した酸素あるいは未反応の水蒸気は、ガス排出口25a、25bから系外に排出される。
【0115】
陽極22Aおよび陰極22Bはいずれも、上記したような三次元網目状の骨格を有する金属多孔体である。さらに、陽極22Aは、金属多孔体Sおよび金属多孔体Hにより構成されている。金属多孔体Sは、少なくとも板状部材23Aに形成された水蒸気供給口24に対向するように配置されている。陽極22Aの金属多孔体S以外の部分には、金属多孔体Hが配置されている。板状部材23Aおよび23Bは、水蒸気および酸素と水素とが混合しないように配置されたセパレータである。
【0116】
SOEC式水素製造装置20は、陰極22B、板状部材23Bおよび電源を備える以外、
図1に示す燃料電池10と同様の構成を有している。構造体21は、プロトン伝導性を有する固体酸化物を含む固体酸化物電解質膜21bと、その各主面に対向するように配置された多孔質層21aおよび21cとを備える。多孔質層21aおよび21cは、固体酸化物電解質膜21bをサポートしている。固体酸化物電解質膜21bは、固体電解質層1bとして例示したのと同じプロトン伝導性を有する固体酸化物を含む。また、陽極22A側に配置された多孔質層21aは、アノード1aと同様、上記固体酸化物と触媒成分である酸化ニッケル(NiO)との複合酸化物により形成されている。そのため、電解効率がさらに高まる。多孔質層21cは、例えば、カソード1cで例示したのと同じ化合物により形成される。
【0117】
板状部材23Aの構成はインターコネクタ3に対応している。板状部材23Bの構成は特に限定されず、例えば、燃料電池に用いられるインターコネクタと同様の構成を有している。陰極22Bに隣接する板状部材23Bには、図示しないガス流路が形成されていてもよい。この場合、陰極22Bで発生した水素は、このガス流路を経由して取り出すことができる。
【0118】
[付記]
上記アルカリ水電解方式を用いる水素製造装置に関し、以下の付記1−1を開示する。
(付記1−1)
アルカリ性水溶液を収容する電解槽と、
前記アルカリ性水溶液に浸漬される陽極および陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、を備え、
前記陽極および前記陰極の少なくとも一方が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素製造装置。
【0119】
上記アルカリ水電解方式を用いる水素の製造方法に関し、以下の付記1−2を開示する。
(付記1−2)
陽極、陰極およびアルカリ性水溶液を、それぞれ準備する工程と、
前記アルカリ性水溶液に、前記陽極および前記陰極を浸漬する工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する工程と、を備え、
前記陽極および前記陰極の少なくとも一方が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素の製造方法。
【0120】
上記PEM方式を用いる水素製造装置に関し、以下の付記2−1を開示する。
(付記2−1)
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に介在する高分子電解質膜と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、を備え、
少なくとも前記陽極が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素製造装置。
【0121】
上記PEM方式を用いる水素の製造方法に関し、以下の付記2−2を開示する。
(付記2−2)
陽極、陰極、および、前記陽極と前記陰極との間に介在する高分子電解質膜を準備する工程と、
前記陽極に水を導入する工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する工程と、を備え、
少なくとも前記陽極が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素の製造方法。
【0122】
上記SOEC方式を用いる水素製造装置に関し、以下の付記3−1を開示する。
(付記3−1)
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に介在する固体酸化物電解質膜と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、を備え、
前記陽極および前記陰極の少なくとも一方が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素製造装置。
【0123】
上記SOEC方式を用いる水素の製造方法に関し、以下の付記3−2を開示する。
(付記3−2)
陽極、陰極、および、前記陽極と前記陰極との間に介在する固体酸化物電解質膜を準備する工程と、
前記陽極または前記陰極に水蒸気を導入する工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する工程と、を備え、
前記陽極および前記陰極のうち、少なくとも前記水蒸気が導入される電極が、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を含む、水素の製造方法。
【0124】
三次元網目状の骨格を有する金属多孔体は、表面積が大きく、高い気孔率を備えているとともに、電気伝導性に優れる。付記で開示された水素製造装置および水素の製造方法によれば、陽極および陰極の少なくとも一方の電極に上記金属多孔体が含まれるため、水(水蒸気)の電解効率が向上する。特に、PEM方式およびSOEC方式において、陽極および陰極のうち、水あるいは水蒸気が導入される電極が、異なる気孔率を持つ複数の上記金属多孔体を含む場合、水の電解効率はさらに向上する。このとき、気孔率のより小さい上記金属多孔体を、水あるいは水蒸気の供給口に対向するように配置する。
【0125】
次に、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0126】
[製造例a〜g]
気孔率の異なる7種類の金属多孔体の前駆体(前駆体a〜g)として、住友電気工業株式会社製のニッケルのセルメット(登録商標)、品番#1〜#6および#8を準備した。
前駆体a〜gの気孔率等を表1に示す。
【0128】
[製造例A〜F]
得られた前駆体a〜gを所望の形状に切断し、組み合わせて、第1前駆体を形成した。
別途、前駆体a〜gのうちの1種類を第1前駆体と同じ大きさに切断し、第2前駆体を形成した。第1前駆体と第2前駆体とを積層し、1MPaの荷重でロールプレスを行って、第1前駆体と第2前駆体とを接合した。得られた複合材料A〜Fの構成を表2および3に示す。なお、第1金属多孔体および第2金属多孔体に含まれる各金属多孔体の気孔率、気孔径およびセル径は、前駆体a〜gよりもそれぞれ5%減少していた。以下に、各複合材料について詳述する。
【0129】
(1)複合材料A〜C
複合材料A〜Cは、いずれも同じ構成の第1前駆体と、異なる種類の第2前駆体とを接合して形成した。第1前駆体は、第1領域SR(金属多孔体S)に1種類の前駆体を用い、第2領域HR(金属多孔体H)に以下に示す複数の前駆体を用いた。第1前駆体は、
図5Bに示す分割領域HR
1〜HR
4に替えて、分割領域HR
1〜HR
6に分割された構成とした。具体的には、
図5Bに示す分割領域HR
3の外側に分割領域HR
5をさらに配置し、分割領域HR
4の外側に分割領域HR
6をさらに配置した。プレス加工後の金属多孔体Sの幅(直線Lに垂直な方向の長さ)は12mmであり、金属多孔体Hを構成する各金属多孔体(HR
1〜HR
6)の幅はそれぞれ24mmであり、第1金属多孔体および第2金属多孔体の厚みはいずれも1mmであった。複合材料A〜Cに使用された前駆体の種類およびその配置、並びにプレス加工後の各気孔率を、表2に示す。
【0131】
(2)複合材料D〜F
複合材料D〜Fは、いずれも同じ構成の第1前駆体と、異なる種類の第2前駆体とを接合して形成した。第1前駆体は、第1領域SR(金属多孔体S)に1種類の前駆体を用い、第2領域HR(金属多孔体H)に以下に示す複数の前駆体を用いた。第1前駆体は、
図7Bに示す分割領域HR
1、HR
2に替えて、分割領域HR
1〜HR
4に分割された構成とした。具体的には、
図7Bに示す環状の分割領域HR
2の外側にさらに環状の分割領域HR
3を配置し、分割領域HR
3の外側にさらに環状の分割領域HR
4を配置した。プレス加工後の金属多孔体Sの幅(直線Lに垂直な方向の長さ)は10mmであり、環状の金属多孔体Hを構成する各金属多孔体(HR
1〜HR
4)の幅((外径−内径)/2)はそれぞれ10mmであり、第1金属多孔体および第2金属多孔体の平均の厚みはいずれも1mmであった。複合材料D〜Fに使用された前駆体の種類とその配置、並びにプレス加工後の各気孔率を、表3に示す。
【0133】
[実施例1−1]
複合材料Aを用いて、以下の手順で、燃料電池を作製した。
【0134】
(1)MEAの作製
下記の手順でMEAを作製した。
まず、BZY(BaZr
0.8Y
0.2O
2.9)に、Ni(触媒成分)を70体積%含むようにNiOを混合し、ボールミルによって粉砕混練した。次いで、得られた混練物をプレス成形して、アノードを構成する成形体(厚さ550μm)を形成し、1000℃で仮焼結した。続いて、上記成形体の一方の面に、BZY(BaZr
0.8Y
0.2O
2.9)と水溶性バインダ樹脂(エチルセルロース)とを混合したペーストをスクリーン印刷によって塗布した後、750℃で水溶性バインダ樹脂を除去した。続いて、酸素雰囲気下、1400℃で共焼成させることにより、アノードと固体電解質層(厚さ10μm)とを形成した。
【0135】
続いて、固体電解質層の表面に、カソードの材料であるLSCF(La
0.6HR
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3−δ)の粉末とエチルセルロースとを混合したLSCFペーストをスクリーン印刷し、1000℃で2時間の焼成を行うことにより、MEAを作製した。カソードの厚みは10μmであった。
【0136】
(2)燃料電池の作製
複合材料Aを、上記で得られたMEAのアノードの表面に、アノードに第1金属多孔体が対向するように積層し、さらに、平滑な表面を有するステンレス鋼製のアノード側インターコネクタを積層した。一方、カソードの表面に、ガス流路を有するステンレス鋼製のカソード側インターコネクタを積層し、
図10Aに示す燃料電池Aを製作した。
【0137】
(3)ガス拡散性評価
動作温度を600℃として、作製された燃料電池Aのアノードに燃料ガス(水素)を0.3L/分で流し、カソードに空気を1L/分で流した時のガス拡散性を評価した。ガス拡散性は、アノードの表面における壁せん断応力、静圧、ガスの流線、ガスの速度ベクトルにより評価した。結果を
図12に示す。
図12は、アノードの表面の1/4の部分における、A壁せん断応力の分布、B静圧の分布、C水素ガスの流線、D水素ガスの速度ベクトルを示している(以下、
図13〜18についても同じ)。図中、白く見えている部分はシールされている部分であり、
図12CおよびDにおいて、右下にある半円は、排出口の一部を示している(以下、
図13〜18についても同じ)。
【0138】
[実施例1−2]
複合材料Aを、アノードに第2金属多孔体が対向するように積層したこと以外は、実施例1と同様にして、
図10Bに示す燃料電池Bを作製し、評価した。結果を
図13に示す。
【0139】
[実施例1−3]
複合材料Bを用い、アノードに第2金属多孔体が対向するように積層したこと以外は、実施例1と同様にして、
図10Bに示す燃料電池Cを作製し、評価した。結果を
図14に示す。
【0140】
[実施例1−4]
複合材料Cを用い、アノードに第2金属多孔体が対向するように積層したこと以外は、実施例1と同様にして、
図10Bに示す燃料電池Dを作製し、評価した。結果を
図15に示す。
【0141】
[実施例2−1]
複合材料Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、
図10Aに示す燃料電池Eを
作製し、評価した。結果を
図16に示す。
【0142】
[実施例2−2]
複合材料Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、
図10Aに示す燃料電池Fを作製し、評価した。結果を
図17に示す。
【0143】
[実施例2−3]
複合材料Fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、
図10Aに示す燃料電池Gを作製し、評価した。結果を
図18に示す。
【0144】
図12〜18に示されるように、複合材料A〜Fを用いた燃料電池A〜Gはガス拡散性能に優れる。