(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抽出手段は、前記負荷情報を表す信号に含まれる前記信号の周波数成分を分析することによって、あるいは、前記信号の時間変化を分析する信号処理を行うことによって、前記動的負荷情報を抽出する、
請求項1に記載の設備状態分析装置。
前記測定条件決定手段は、前記仕様情報に基づいて、前記負荷をシミュレーションにより求めることによって、前記測定手段による測定場所を示す前記測定条件を決定する、
請求項3に記載の設備状態分析装置。
外部から入手した、複数の前記設備の個々に関する、補修工事の容易さと、前記補修工事の費用との少なくともいずれかを含む補修工事情報と、前記予測手段による前記危険度合いに関する予測結果とに基づいて、複数の前記設備に関する前記補修工事を行う優先度を決定する優先度決定手段をさらに備える、
請求項5に記載の設備状態分析装置。
【背景技術】
【0002】
近年、ICT(Information and Communication Technology)の進展により、電子機器によって処理あるいは蓄積される情報量は増大の一途をたどっており、IoT(Internet of Things)が実現されつつある。そして、IoTが構築された社会において、多数のセンサから事象の正確なデータを取得し、取得したデータを、正確に分析、判断、加工を施したのち、有用な情報として人が認知することは、安心安全な社会を形成する上で重要な位置づけにある。
【0003】
現代社会では、上下水道網、ガスや石油などの高圧化学パイプライン、高速鉄道、長大橋、超高層建築、大型旅客機、自動車などの設備が構築され、豊かな社会の基盤となっている。しかしながら、これらの設備が、予期せぬ震災などの自然災害や経年劣化等により破損することによって、重大事故が発生した場合、社会への影響は多大であり、経済的損失は大きい。これらの設備に用いられる部材は、使用時間とともに腐食や磨耗などの劣化が進み、やがて破損などの機能不全に至る。したがって、設備に関する安心安全を確保するために、科学、工学、社会学などの学術的領域を超えた技術開発に多大な努力が行なわれている。特に、低コストかつ操作が簡便な検査技術である非破壊検査技術等を使用した社会インフラの維持管理技術は、設備の劣化や破損による重大事故を防止するという点において、ますます重要になってきている。
【0004】
このような技術に関連する技術として、特許文献1には、機器の疲労寿命を評価する装置が開示されている。この装置は、機器の部材形状及び構成材料の情報に基づいて、その弾性応力を求める。この装置は、求めた弾性応力に基づいて、構成材料における負荷時の応力及び歪を求める。この装置は、負荷時の応力及び歪を基点とする除荷時の応力及び歪を求める。この装置は、負荷時の応力及び歪、並びに除荷時の応力及び歪に基づいて、塑性歪を求める。この装置は、求めた塑性歪に基づいて、部材の疲労様式が弾性変形のみによる高サイクル疲労であるか、又は塑性変形を伴う低サイクル疲労であるかを判定する。そしてこの装置は、判定した疲労様式に基づいて、機器の寿命を求める。
【0005】
また、特許文献2には、既設の標識柱を傷つけるような作業を行ったり、既設標識柱に作業者が近づいて煩雑な作業を行ったりすることなく、既設標識柱の安全性を確認する、既設標識柱の耐久評価方法が開示されている。この方法は、既設標識柱の支柱部材の実振幅量を非接触で測定する実振幅量測定工程と、実振幅量から既設標識柱の基部の曲げ応力を算出する応力算出工程とを備える。この方法では、支柱部材の上端の動的振幅量と支柱部材の基部の動的曲げ応力を求め、支柱部材の静的撓み量と静的曲げ応力が動的振幅量及び動的曲げ応力と一致するように、腕部材の先端に対して静的引張力を作用させ、腕部材に対する静的引張力の引張角度を求める。この方法では、その引張角度と実振幅量とを基に一般撓み式から腕部材の先端に作用する水平力と垂直力とを算出する。そしてこの方法では、水平力及び垂直力を基に一般モーメント算出式を用いて算出した支柱部材の基部に作用する曲げモーメントから、支柱部材の基部に作用する曲げ応力を算出する。
【0006】
また、特許文献3には、現有資産の状態、価値を定量化し、設備更新需要および財政収支情報から、中長期的観点で上下水道事業の適切な維持管理と更新計画の立案を支援するシステムが開示されている。このシステムは、上下水道施設からデータ毎に決められている監視周期または任意に入力されてくる各種設備情報、点検保守データ、モニタリングデータ、プラントデータを計算機システムへ取り込み、データベースに格納する。このシステムは、当該格納した、設備に関する点検保守、モニタリングデータから、定量的健全度の評価と、劣化診断予測による統計的耐用年数を算出し、設備毎に設定されたリスクレベルに応じて、予算制約を遵守した設備更新需要コストの平準化と、需要計画立案の支援とを行う。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本願発明の第1の実施の形態に係る設備状態分析装置10の構成を示すブロック図である。設備状態分析装置10は、社会インフラである水道管路20を維持管理するために、水道管路20の状態を表す情報を収集し、収集した情報を分析する機能を有する情報処理装置である。尚、
図1には、説明の便宜上、水道管路20を1つ記載しているが、設備状態分析装置10は、複数の水道管路20を設備状態の分析対象としてもよい。
【0020】
設備状態分析装置10は、測定部11、抽出部12、測定条件決定部13、分析部14、推定部15、予測部16、優先度決定部17、提示部18、及び、データベース19を備えている。
【0021】
データベース19は、例えば磁気ディスク等の不揮発性の記憶デバイスによって構成され、設備状態分析装置10が動作する際に参照する仕様情報190、設置情報191、事故影響度情報192、及び、補修工事情報193を記憶している。これらの情報の詳細に関しては後述する。尚、設備状態分析装置10は、データベース19を備えなくてもよい。データベース19は、例えば、設備状態分析装置10が通信ネットワークを介してアクセス可能なストレージ装置などに構築されてもよい。
【0022】
測定部11は、水道管路20に対する負荷の状態を表す情報(本願では以降、負荷情報と称する)を収集するセンサと、それらのセンサとの間で情報(データ)を無線通信あるいは有線通信により送受信する機能とを含んでいる。当該センサは、例えば、水圧センサ、流量センサ、振動センサ等である。尚、
図1には説明の便宜上、測定部11を設備状態分析装置10の内部に記載しているが、測定部11に含まれる当該センサは、例えば水道管路20の表面あるいは内部等における様々な場所に設置されていることとする。測定部11は、後述する測定条件130に基づいて、当該センサからの負荷情報110の出力を制御する。測定部11は、センサから取得した(受信した)負荷情報110を、抽出部12及び分析部14へ入力する。
【0023】
抽出部12は、測定部11から入力された負荷情報110を、動的負荷情報120と静的負荷情報121とに分離する。但し、動的負荷情報120は、水道管路20に対する負荷に含まれる、時間の経過とともに動的に変動する度合いが基準以上である(動的な変動が大きい)成分を表す情報である。これに対して静的負荷情報121は、水道管路20に対する負荷に含まれる、時間の経過とともに動的に変動する度合いが基準以下である(動的な変動が小さい)成分を表す情報である。
【0024】
抽出部12は、負荷情報110を表す信号に対して、所定の信号処理を行うことによって、負荷情報110を、動的負荷情報120と静的負荷情報121とに分離する。抽出部12は、この所定の信号処理として、例えば、周波数成分ごとに信号を分析する処理(例えばフーリエ変換等を用いた処理)、あるいは、信号の時間変化を分析する処理(例えばバンドパスフィルタ等を適用する処理)などを使用することができる。抽出部12は、あるいは、この所定の信号処理において、例えば、自己回帰モデル、移動平均モデル、自己回帰移動平均モデル等による時系列データ分析手法を用いてもよい。
【0025】
動的負荷情報120及び静的負荷情報121が示す、水道管路20に対する負荷の具体例としては、例えば流体力学における動圧と静圧である。動圧は、流体(即ち水道管路20を流れる水)の流れによって生じる圧力(流れが押す力)であり、流体が流れる速度が速ければ速いほど大きくなる。一方、静圧は、流体が流れなくても(即ち流体が止まっている状態で)発生する圧力である。そして水道管路20が受ける水圧は、動圧と静圧とを合わせた圧力となる。但し、測定部11による測定対象を水圧にする場合、センサは、生じる水圧が互いに異なる場所(即ち、水路の系統が異なる場所)に設置されていることとする。尚、動的負荷情報120及び静的負荷情報121が表す負荷は、動圧及び静圧以外の物理量であってもよい。
【0026】
抽出部12は、上述した処理を行うことによって生成した動的負荷情報120と静的負荷情報121とを、測定条件決定部13に入力する。
【0027】
測定条件決定部13は、抽出部12から動的負荷情報120と静的負荷情報121とを入手する他、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システム30から運用情報300を入手し、データベース19に記憶されている仕様情報190を入手する。仕様情報190は、例えば水道管路20の構造(口径や形状等)や、水道管路20が埋設された状態等、水道管路20の仕様を表す情報である。
【0028】
SCADAシステム30は、水道管路20の状態を監視してその状態を遠隔制御するシステムである。SCADAシステム30は、運用情報300に基づいて、水道管路20の状態を制御する。運用情報300は、例えば、水道管路20を介した水使用量など、水道管路20の運用管理を表す情報である。
【0029】
測定条件決定部13は、少なくとも動的負荷情報120に基づいて、水道管路20の状態を高い精度でかつ効率的に把握することを実現可能な、測定部11による最適な測定時間帯を決定する。測定条件決定部13は、この際、静的負荷情報121、運用情報300、及び、仕様情報190の少なくともいずれかもあわせて使用するようにしてもよい。即ち、測定条件決定部13は、例えば、動的負荷情報120に静的負荷情報121を加算した指標を用いてもよい。測定条件決定部13は、あるいは例えば、動的負荷情報120のうち、運用情報300と整合する部分を用いる(即ち、運用情報300と整合しない部分を、偶発的な情報として使用しない)ようにしてもよい。測定条件決定部13は、あるいは例えば、仕様情報190が示す水道管路20における老朽化の進行のしやすさ等をふまえて、最適な測定時間帯を決定してもよい。
【0030】
測定条件決定部13は、例えば住宅街に設置された水道管路20に関しては、この測定時間帯の初期値として、人間の生活サイクルが一般的に1週間であることに基づいて、例えば1週間以上の連続する時間帯を設定する。測定条件決定部13は、あるいは、工業地域に設置された水道管路20に関しては、この測定時間帯の初期値として、工場の稼動サイクルよりも長い、連続する時間帯を設定する。測定条件決定部13は、測定時間帯の初期値を上述の通り設定することによって、測定部11による最適な測定時間帯の決定において、漏れが発生することを効率的に回避することができる。尚、測定条件決定部13は、上述とは異なる基準に基づいて、測定時間帯の初期値を設定してもよい。
【0031】
測定条件決定部13は、例えば住宅街に設置された水道管路20に関して、測定時間帯の初期値として設定した1週間以上の連続する時間帯における、少なくとも動的負荷情報120が示す水道管路20に加わる動圧の変動状況に基づいて、測定部11による測定時間帯を決定する。測定条件決定部13は、この際、水道管路20に加わる負荷が大きくなることによって水道管路20を傷める度合いが大きくなる時間帯を、測定部11による最適な測定時間帯として決定する。
【0032】
測定条件決定部13は、例えば、水道管路20に加わる負荷を表すこれらの値が閾値以上となっている時間帯を含むように、測定部11による最適な測定時間帯を決定してもよい。測定条件決定部13は、あるいは、機械学習等の技術を使用して、水道管路20に加わる負荷が変動するパターンを分析し、その分析結果に基づいて、測定部11による最適な測定時間帯を決定してもよい。
【0033】
測定条件決定部13は、決定した測定部11による最適な測定時間帯を示す測定条件130を、測定部11へ入力する。これにより、測定部11は、測定条件130が示す最適な測定時間帯に負荷情報110が生成されるように、各センサを制御する。
【0034】
測定条件決定部13は、また、上述した通り、水道管路20の状態を高い精度でかつ効率的に把握することを実現可能な、測定部11による最適な測定時間帯に加えて、測定部11による最適な測定場所を下記の通り決定する。
【0035】
測定条件決定部13は、データベース19から入手した仕様情報190が示す水道管路20の構造等に基づいて、水道管路20に生じる水撃に関して、その大きさ、伝播経路、到達距離等をシミュレーションにより算出する。但し、測定条件決定部13には、水道管路20に生じる水撃をシミュレーションするのに必要な情報(算出式等)が与えられていることとする。測定条件決定部13は、このシミュレーション結果に基づいて、加えられる負荷が大きい水道管路20における場所を特定し、特定した場所を、測定部11による最適な測定場所として決定する。
【0036】
測定条件決定部13は、決定した測定部11による最適な測定場所を示す測定条件130を、測定部11へ入力する。これにより、測定部11は、複数のセンサのうち、測定条件130が示す測定場所に位置するセンサによって負荷情報110が生成されるように、各センサを制御する。
【0037】
測定条件決定部13は、上述の通り決定した測定条件130を提示部18へ入力する。提示部18は、入出力インタフェースを用いて情報をユーザに提示可能なデバイスであり、例えば、画像により情報をユーザに提示するモニター、あるいは、音声により情報をユーザに提示するスピーカ等である。提示部18は、測定条件決定部13から入力された測定条件130をユーザに提示する。
【0038】
図2は、本実施形態に係る提示部18(モニター)が測定条件130を表示する態様を例示する図である。提示部18は、
図2に例示する通り、例えば、測定条件130が示す最適な測定時間帯を、曜日と時間とにより表示し、測定条件130が示す最適な測定場所を、地点の名称と空間座標(XYZ座標)とにより表示する。ユーザは、提示部18によって提示された、測定条件130が示す測定部11による最適な測定場所に、センサを設置することが可能である。
【0039】
分析部14は、測定条件130が示す最適な測定場所に設置されたセンサから、測定条件130が示す最適な測定時間帯に出力された負荷情報110に基づいて、現在までに、あるいはユーザによって指定された期間に、水道管路20に加えられた負荷を分析する。分析部14は、例えば、負荷情報110が表す、水道管路20の内部に生じた水撃により水道管路20に加えられる応力の大きさと、水撃が発生した回数とから、水道管路20に対する累積負荷の大きさを算出する。分析部14は、この算出において、材料工学分野におけるS(Stress)−N(Number of cycles to failure)線図の考え方を適用してもよい。分析部14は、例えば、フープ応力式等の評価式を用いることによって、あるいは有限要素法等のシミュレーション技術を用いることによって、応力の大きさを推定してもよい。
【0040】
分析部14は、現在までに水道管路20に加えられた負荷について分析した結果を予測部16へ入力する。分析部14は、また、その分析結果を、提示部18を介してユーザへ提示する。
【0041】
推定部15は、データベース19から入手した仕様情報190及び設置情報191に基づいて、水道管路20の強度を推定する。但し、設置情報191は水道管路20の設置状態を表す情報であり、例えば、水道管路20が設置された時期(年など)、水道管路20が設置された土壌の状態等を表す情報である。
【0042】
推定部15は、例えば、仕様情報190及び設置情報191に基づいて、様々な水道管路において過去に発生した事故の履歴や、様々な水道管路に対して過去に行なわれた実験の結果等もふまえて、水道管路20の強度を統計的に推定してもよい。推定部15は、あるいは、水道管路20の強度を推定する際に、ユーザが埋設された水道管路20を取り出してその状態を確認した結果を用いてもよい。推定部15は、あるいは、測定部11によって得られた水道管路20の状態を表すデータと、過去の実験結果や技術文献に記載されている内容等とを比較することによって、水道管路20の強度を推定してもよい。推定部15は、水道管路20の強度を推定した結果を予測部16へ入力する。
【0043】
予測部16は、分析部14から入力された水道管路20に加えられた負荷に関する分析結果と、推定部15から入力された水道管路20の強度に関する推定結果とに基づいて、例えば信頼性工学や統計分析の手法を用いることによって、水道管路20において損傷による事故が発生する確率を予測する。予測部16は、この際、例えば、ある強度を有する設備にある大きさの負荷が加えられた場合に、その設備が損傷する可能性の大きさを表す「負荷−強度」モデルを使用することができる。
【0044】
予測部16は、また、データベース19から事故影響度情報192を入手する。事故影響度情報192は、水道管路20において事故が発生した場合における影響の大きさを表す情報である。この影響度の大きさは、例えば、水道管路20において過去に発生した事故による損害賠償金額の実績等に基づいている。
【0045】
そして予測部16は、上述の通りに求めた、水道管路20において損傷による事故が発生する確率と、事故影響度情報192が表す水道管路20において事故が発生した場合における影響の大きさとの積を求めることによって、水道管路20に関する事故の危険度合いを予測する。予測部16は、設備状態分析装置10が分析対象とする複数の水道管路20の個々について、上述した事故の危険度合いを予測する。予測部16は、予測した事故の危険度合いを優先度決定部17へ入力する。予測部16は、予測結果を、提示部18を介してユーザへ提示する。
【0046】
優先度決定部17は、データベース19から補修工事情報193を入手する。補修工事情報193は、複数の水道管路20に関する、補修工事の容易さと、補修工事の費用との少なくともいずれかを表す情報である。優先度決定部17は、入手した補修工事情報193と、予測部16による事故の危険度合いに関する予測結果とに基づいて、複数の水道管路20に関する補修工事を行う優先度を決定する。
【0047】
優先度決定部17は、例えば、事故の危険度合いが高いほど、あるいは補修工事が容易なほど、あるいは、補修工事の費用が安いほど、補修工事を行う優先度を高くする。予測部16は、この際、例えば、補修工事情報193が表す情報と、予測部16による事故の危険度合いに関する予測結果とを、所定の基準に基づいて金額換算し、換算した金額の合計に基づいて優先度を決定してもよい。優先度決定部17は、あるいは、補修工事情報193が表す情報と、予測部16による事故の危険度合いに関する予測結果とを、規格化された指標として取り扱い、線形計画法などの手法を用いて、優先度を決定してもよい。
【0048】
優先度決定部17は、また、決定した水道管路20に関する補修工事を行う優先度を、提示部18を介してユーザへ提示する。
【0049】
次に
図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る設備状態分析装置10の動作(処理)について詳細に説明する。
【0050】
測定部11は、所定の期間(水道管路20が住宅街に設置されている場合は例えば1週間)継続して水道管路20に対する負荷を測定し、その測定結果を表す負荷情報110を抽出部12へ入力する(ステップS101)。抽出部12は、負荷情報110を表す信号に対して所定の信号処理を行うことによって、負荷情報110から動的負荷情報120を抽出する(ステップS102)。
【0051】
測定条件決定部13は、動的負荷情報120の時間推移、データベース19から入手した仕様情報190、及びSCADAシステム30から入手した運用情報300に基づいて、負荷情報110が得られる時間帯や測定場所を示す測定条件130を決定する(ステップS103)。測定条件決定部13は、決定した測定条件130を、提示部18を介してユーザに提示する(ステップS104)。
【0052】
分析部14は、測定条件決定部13により決定された測定条件130に基づいて1回以上繰り返して測定部11によって生成された負荷情報110を使用して、現在までに、あるいはユーザによって指定された期間に、水道管路20に加えられた負荷を分析する(ステップS105)。予測部16は、推定部15による水道管路20の強度に関する推定結果と、分析部14による分析結果と、データベース19から入手した事故影響度情報192とに基づいて、水道管路20に関する事故の危険度合いを予測する(ステップS106)。
【0053】
優先度決定部17は、データベース19から入手した補修工事情報193と、予測部16による予測結果とに基づいて、複数の水道管路20に関する補修工事の優先度を決定する(ステップS107)。優先度決定部17は、決定した補修工事の優先度を、提示部18を介してユーザに提示し(ステップS108)、全体の処理は終了する。
【0054】
本実施形態に係る設備状態分析装置10は、設備に対して加えられた負荷の状況に基づいて当該設備の状態を推定する精度を効率的に高めることができる。その理由は、設備状態分析装置10は、水道管路20に関する負荷情報110から動的負荷情報120を抽出し、抽出した動的負荷情報120の時間推移に基づいて測定条件130を決定し、測定条件130に基づいて得られた負荷情報110を使用して、水道管路20に加えられた負荷を分析するからである。
【0055】
以下に、本実施形態に係る設備状態分析装置10によって実現される効果について、詳細に説明する。
【0056】
設備に関する将来の事故確率を推定する場合、設備の老朽度合いだけでなく、その当該設備に印加される負荷を適切に評価することが重要である。この負荷は、時間や場所等に応じて変動するので、例えば設備の設計時における負荷に関する情報のみに基づく評価では、満足できる推定精度を期待できない。このような問題に対して、センサを用いて適切な場所と適切な時間帯に、設備に関する物理的な状況を直接観測することによって、推定精度を高めることが考えられる。しかしながら、通常、センサによる測定条件自体が、設計時における情報に基づいているので、負荷状態が設計時とは異なる現在の設備の状態を適切に推定できず、設備を適切に維持管理することができない。また、現在の設備の状態をより高い精度で推定するために、例えばセンサから常時情報を収集するなど、センサから収集する情報量を多くした場合、通信基盤に大きな影響を及ぼすことになる。即ち、これまでに設備に対して加えられた負荷の状況に基づいて当該設備の状態を推定する精度を効率的に高めることが課題である。
【0057】
このような問題に対して、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、測定部11と、抽出部12と、測定条件決定部13と、分析部14と、を備え、例えば
図1乃至
図3を参照して上述する通り動作する。即ち、測定部11は、水道管路20(設備)に対する負荷を測定し、測定した負荷を表す負荷情報110を、測定条件130に基づいて生成する。抽出部12は、測定部11によって生成された負荷情報110から、時間の経過とともに動的に変動する度合いが基準以上である負荷の動的成分を表す動的負荷情報120を抽出する。測定条件決定部13は、動的負荷情報120の時間推移に基づいて、負荷情報110が生成される時間帯を示す測定条件130を決定する。そして分析部14は、測定条件130に基づいて生成された負荷情報110を使用して、水道管路20に加えられた負荷を分析する。
【0058】
即ち、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、水道管路20に対する負荷の動的成分が時間の経過とともに変動した実績に基づいて、水道管路20の状態を高い精度でかつ効率的に把握することを実現可能な、測定部11による最適な測定時間帯を示す測定条件130を決定する。そして、設備状態分析装置10は、その最適な測定時間帯に負荷情報110を取得し、取得した負荷情報110を使用して、現在までに、あるいは指定された期間に、水道管路20に加えられた負荷の累積を分析する。これにより、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、設備に対して加えられた負荷の状況に基づいて当該設備の状態を推定する精度を効率的に高めることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、測定条件130を決定する際に、データベース19から入手した水道管路20の仕様を表す仕様情報190と、SCADAシステム30から入手した水道管路20の運用状態を表す運用情報300と、もあわせて使用する。これにより、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、最適な測定時間帯を、より正確に決定することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、仕様情報190に基づいて、水道管路20に加わる負荷をシミュレーションにより求めることによって、水道管路20の状態を高い精度でかつ効率的に把握することを実現可能な、測定部11による最適な測定場所を示す測定条件130を決定する。そして、ユーザは、必要に応じて、測定条件130が示す最適な測定場所にセンサを設置することができる。これにより、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、設備に対して加えられた負荷の状況に基づいて当該設備の状態を推定する精度をさらに高めることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、仕様情報190、及び、水道管路20の設置状態を表す設置情報191に基づいて、水道管路20の強度を推定し、その推定結果と、水道管路20に加えられた負荷に関する分析結果とに基づいて、水道管路20に関する事故発生の可能性の大きさを予測する。そして設備状態分析装置10は、予測した事故発生の可能性の大きさと、事故発生による影響度の大きさを表す事故影響度情報192とに基づいて、水道管路20に関する事故の危険度合いを予測する。これにより、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、水道管路20を効率的に維持管理することを実現できる。
【0062】
また、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、複数の水道管路20の個々に関する、補修工事の容易さと、補修工事の費用との少なくともいずれかを含む補修工事情報193と、事故の危険度合いに関する予測結果とに基づいて、複数の水道管路20に関する補修工事を行う優先度を決定する。これにより、本実施形態に係る設備状態分析装置10は、複数の水道管路20を効率的に維持管理することを実現できる。
【0063】
尚、本実施形態に係る設備状態分析装置10が設備状態を分析する対象は、水道管路20に限定されない。設備状態分析装置10は、水道管路以外の様々な設備を、設備状態の分析対象としてもよい。
【0064】
<第2の実施形態>
図4は、本願発明の第2の実施形態に係る設備状態分析装置40の構成を示すブロック図である。
【0065】
本実施形態に係る設備状態分析装置40は、測定部41、抽出部42、測定条件決定部43、及び、分析部44を備えている。
【0066】
測定部41は、設備50に対する負荷を測定し、測定した負荷を表す負荷情報410を、測定条件430に基づいて生成する。
【0067】
抽出部42は、測定部41によって生成された負荷情報410から、時間の経過とともに動的に変動する度合いが基準以上である負荷の動的成分を表す動的負荷情報420を抽出する。
【0068】
測定条件決定部43は、動的負荷情報420の時間推移に基づいて、負荷情報410が生成される時間帯を示す測定条件430を決定する。
【0069】
分析部44は、測定条件420に基づいて得られた負荷情報410を使用して、設備50に加えられた負荷を分析する。
【0070】
本実施形態に係る設備状態分析装置40は、設備に対して加えられた負荷の状況に基づいて当該設備の状態を推定する精度を効率的に高めることができる。その理由は、設備状態分析装置40は、設備50に関する負荷情報410から動的負荷情報420を抽出し、抽出した動的負荷情報420の時間推移に基づいて測定条件430を決定し、測定条件430に基づいて得られた負荷情報410を使用して、現在までに設備50に加えられた負荷を分析するからである。
【0071】
<ハードウェア構成例>
上述した各実施形態において
図1、及び、
図4に示した設備状態分析装置における各部は、専用のHW(HardWare)(電子回路)によって実現することができる。また、
図1、及び、
図4において、少なくとも、下記構成は、ソフトウェアプログラムの機能(処理)単位(ソフトウェアモジュール)と捉えることができる。
・測定部11及び41における測定制御機能、
・抽出部12及び42、
・測定条件決定部13及び43、
・分析部14及び44、
・推定部15、
・予測部16、
・優先度決定部17。
【0072】
但し、これらの図面に示した各部の区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。この場合のハードウェア環境の一例を、
図5を参照して説明する。
【0073】
図5は、本願発明の各実施形態に係る設備状態分析装置を実行可能な情報処理装置900(コンピュータ)の構成を例示的に説明する図である。即ち、
図5は、
図1、及び、
図4に示した設備状態分析装置を実現可能なコンピュータ(情報処理装置)の構成であって、上述した実施形態における各機能を実現可能なハードウェア環境を表す。
【0074】
図5に示した情報処理装置900は、構成要素として下記を備えている。
・CPU(Central_Processing_Unit)901、
・ROM(Read_Only_Memory)902、
・RAM(Random_Access_Memory)903、
・ハードディスク(記憶装置)904、
・外部装置や
図1(
図4)に示す測定部11(41)との通信インタフェース905、
・バス906(通信線)、
・CD−ROM(Compact_Disc_Read_Only_Memory)等の記録媒体907に格納されたデータを読み書き可能なリーダライタ908、
・情報提示手段として機能するモニターやスピーカ、キーボード等の入力デバイス等の入出力インタフェース909。
【0075】
即ち、上記構成要素を備える情報処理装置900は、これらの構成がバス906を介して接続された一般的なコンピュータである。情報処理装置900は、CPU901を複数備える場合もあれば、マルチコアにより構成されたCPU901を備える場合もある。
【0076】
そして、上述した実施形態を例に説明した本願発明は、
図5に示した情報処理装置900に対して、次の機能を実現可能なコンピュータプログラムを供給する。その機能とは、その実施形態の説明において参照したブロック構成図(
図1、及び、
図4)における上述した構成、或いはフローチャート(
図3)の機能である。本願発明は、その後、そのコンピュータプログラムを、当該ハードウェアのCPU901に読み出して解釈し実行することによって達成される。また、当該装置内に供給されたコンピュータプログラムは、読み書き可能な揮発性のメモリ(RAM903)、または、ROM902やハードディスク904等の不揮発性の記憶デバイスに格納すれば良い。
【0077】
また、前記の場合において、当該ハードウェア内へのコンピュータプログラムの供給方法は、現在では一般的な手順を採用することができる。その手順としては、例えば、CD−ROM等の各種記録媒体907を介して当該装置内にインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等がある。そして、このような場合において、本願発明は、係るコンピュータプログラムを構成するコード或いは、そのコードが格納された記録媒体907によって構成されると捉えることができる。
【0078】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本願発明を説明した。しかしながら、本願発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本願発明は、本願発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0079】
この出願は、2018年2月16日に出願された日本出願特願2018−026173を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。