特許第6981528号(P6981528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6981528-発電システムおよびプラント制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981528
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】発電システムおよびプラント制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   H02J3/46
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-504050(P2020-504050)
(86)(22)【出願日】2019年8月2日
(86)【国際出願番号】JP2019030441
(87)【国際公開番号】WO2021024293
(87)【国際公開日】20210211
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】三ッ木 康晃
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−168351(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/116419(WO,A1)
【文献】 特開2015−100234(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/185661(WO,A1)
【文献】 特開2009−225599(JP,A)
【文献】 特開2007−244068(JP,A)
【文献】 崎元 謙一 Kenichi Sakimoto,製品と技術 インバータ電源の制御方式の違いによる系統周波数変動の比較,スマートグリッド 第10巻 第2号 Smart Grid,日本,株式会社大河出版,2020年04月15日,第10巻 第2号,46−49頁,ツールエンジニア別冊 第61巻 第6号
【文献】 野上 駿 Shun Nogami,下位系統を考慮した大規模系統における太陽光発電の仮想同期発電機制御による系統安定化効果,平成29年 電気学会全国大会講演論文集 [CD−ROM] 平成29年電気学会全国大会講演論文集 (第6分冊) The 2017 Annual Meeting Record I.E.E.Japan 2017 Annual Meeting Record I.E.E.Japan,日本,一般社団法人電気学会,2017年03月05日,103,104頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、共通の系統連系点を介して電力系統と連係する複数の電力変換装置と、
前記複数の電力変換装置を制御するプラント制御装置と、
を備え、
前記プラント制御装置は、同期発電機の回転子運動方程式とガバナとAVRとを模擬した制御モデルを用いることで前記複数の電力変換装置の出力側における前記系統連系点の電流値および電圧値に基づいて前記複数の電力変換装置に対して共通の電力指令値を出力する仮想同期発電機モデル部を含み、
前記複数の電力変換装置は前記電力指令値に従って前記交流電力を出力する発電システム。
【請求項2】
前記複数の電力変換装置は、第一電力変換装置と第二電力変換装置とを含み、
前記第一電力変換装置が接続する直流電源は、再生可能エネルギー発電装置であり、
前記第二電力変換装置が接続する直流電源は、蓄電池である請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記複数の電力変換装置それぞれが接続する直流電源の少なくとも一つは、第一直流電源である再生可能エネルギー発電装置と第二直流電源である蓄電池とが並列接続したものである請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
前記プラント制御装置が前記電力変換装置に伝達する前記電力指令値はアナログ信号である請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項5】
前記プラント制御装置が前記系統連系点の前記電流値および前記電圧値に基づいて実施するフィードバック制御の制御周期が10msec以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項6】
前記複数の電力変換装置それぞれが、電力変換回路と、前記電力指令値に従って前記電力変換回路を制御する電力変換制御回路とを含み、
前記電力変換制御回路は、PLL回路を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項7】
直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、共通の系統連系点を介して電力系統と連係する複数の電力変換装置を制御するプラント制御装置であって、
前記プラント制御装置は、同期発電機の回転子運動方程式とガバナとAVRとを模擬した制御モデルを用いることで前記複数の電力変換装置の出力側における前記系統連系点の電流値および電圧値に基づいて前記複数の電力変換装置に対して共通の電力指令値を出力する仮想同期発電機モデル部を含み、前記電力指令値に従って前記複数の電力変換装置に前記交流電力を出力させるように構築されたプラント制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、発電システムおよびプラント制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば日本特開2014−168351号公報に開示されているように、VSG(仮想同期発電機)として動作するように構築された電力変換装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開2014−168351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、VSGを模擬するための制御を一つの電力変換装置で実施している。現実的に、一つの電力変換装置が持つ容量にはある程度の制限が存在する。この制限があるので、上記従来の技術では、大きな発電量のVSGを模擬することは困難であるという問題があった。
【0005】
本出願は、上述のような課題を解決するためになされたもので、複数の電力変換装置でVSGを模擬することができるように改良された発電システムおよびプラント制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願にかかる発電システムは、
直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、共通の系統連系点を介して電力系統と連係する複数の電力変換装置と、
前記複数の電力変換装置を制御するプラント制御装置と、
を備え、
前記プラント制御装置は、同期発電機の回転子運動方程式とガバナとAVRとを模擬した制御モデルを用いることで前記複数の電力変換装置の出力側における前記系統連系点の電流値および電圧値に基づいて前記複数の電力変換装置に対して共通の電力指令値を出力する仮想同期発電機モデル部を含み、
前記複数の電力変換装置は前記電力指令値に従って前記交流電力を出力する。
【0007】
本出願にかかる発電システムおよびプラント制御装置は、
直流電源からの直流電力を交流電力に変換し、共通の系統連系点を介して電力系統と連係する複数の電力変換装置を制御するプラント制御装置であって、
前記プラント制御装置は、同期発電機の回転子運動方程式とガバナとAVRとを模擬した制御モデルを用いることで前記複数の電力変換装置の出力側における前記系統連系点の電流値および電圧値に基づいて前記複数の電力変換装置に対して共通の電力指令値を出力する仮想同期発電機モデル部を含み、前記電力指令値に従って前記複数の電力変換装置に前記交流電力を出力させるように構築されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本出願によれば、プラント制御装置が仮想同期発電機モデル部を持つので、複数の電力変換装置それぞれの制御回路にモデルを搭載する必要がない。プラント制御装置が複数の電力変換装置を統合制御することができるので、複数の電力変換装置を含むシステム全体でVSG(仮想同期発電機)を模擬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる発電システムおよびプラント制御装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態にかかる発電システムが備えるインバータ制御回路の構成を示す図である。
図3】実施の形態の変形例にかかる発電システムおよびプラント制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施の形態にかかる発電システム1およびプラント制御装置10の構成を示す図である。発電システム1は、系統連系点Sを介して電力系統100と系統連系運転する。図1に示すように、発電システム1は、発電プラント2と、連系トランス3と、計器用変成器5と、変流器4と、を備える。発電プラント2は、複数の電力変換装置22と、複数の直流電源23、24と、複数の開閉器20と、プラント制御装置10と、を備える。
【0011】
図1に示すように、発電プラント2と系統連系点との間には、連系トランス3が介在している。計器用変成器5および変流器4の信号出力はプラント制御装置10に伝達されている。これによりプラント制御装置10は系統連系点の系統電流Isの値および系統電圧Vsの値を計測することができる。図1に示すように、連系トランス3と複数の電力変換装置22それぞれとの間には、開閉器20および複数のトランス21とからなる直列回路がそれぞれ介在している。
【0012】
複数の電力変換装置22は、複数の直流電源23、24からの直流電力を交流電力に変換する。電力変換装置22は、具体的には、複数の半導体スイッチング素子で構築された三相交流インバータ回路である。
【0013】
複数の電力変換装置22は、第一の電力変換装置22と第二の電力変換装置22とを含む。第一の電力変換装置22が接続する直流電源23は、再生可能エネルギー発電装置であり、一例として太陽光発電モジュールである。第二の電力変換装置22が接続する直流電源24は、蓄電池である。このようなシステムは、ACリンク方式とも呼ばれる。なお、第二の電力変換装置22および直流電源24は、蓄電システム(Energy Storage System:ESS)25として提供されている。また、電力変換装置は、パワーコンディショナシステム(PCS)とも称される。
【0014】
プラント制御装置10は、複数の電力変換装置22を制御する。プラント制御装置10は、Power Plant Controller(PPC)とも称される。プラント制御装置10は、仮想同期発電機モデル部10aを含む。仮想同期発電機モデル部10aは、系統電流値Isおよび系統電圧値Vsに基づいて電力指令値P、Qを出力する。電力指令値P、Qは、有効電力指令値Pおよび無効電力指令値Qを含む。複数の電力変換装置22は電力指令値P、Qに従って交流電力を出力する。これにより、プラントレベルでのVSG制御が実現される。仮想同期発電機は、Virtual Synchronous Generator(VSG)とも称される。
【0015】
仮想同期発電機モデル部10aは、回転子運動方程式モデルとガバナモデルとAVR制御モデルとを含む。これにより、同期発電機の回転子運動方程式とガバナとAVRとを模擬した制御モデルが、プラント制御装置10に組み込まれる。仮想同期発電機モデル部10aは、系統連系点Sの潮流が仮想的に同期発電機の出力となるように制御を行う。
【0016】
回転子運動方程式モデルとガバナモデルとAVR制御モデルとを含む仮想同期発電機のモデル構成は、例えば日本特開2014−168351号公報などに開示されているように、既に公知であり新規の事項ではない。従って、モデルの具体的構成についての説明は省略する。
【0017】
プラント制御装置10が仮想同期発電機モデル部10aを持つので、複数の電力変換装置22それぞれの制御回路にモデルを搭載する必要がない。プラント制御装置10が複数の電力変換装置22を統合制御することができるので、複数の電力変換装置22を含むシステム全体でVSG(仮想同期発電機)を模擬することができる。これにより、スケールメリットが得られるので、単位容量あたりのシステム価格が安価になるという利点がある。
【0018】
実施の形態では、プラント制御装置10が発電プラント2内の複数の電力変換装置22を最適制御することで、電力系統100の周波数安定化および電圧安定化が実現される。系統周波数および系統電圧Vsが維持され、系統安定化効果が得られる。
【0019】
また、仮想同期発電機モデル部10aが、複数のインバータ制御回路22bそれぞれではなく、プラント制御装置10に実装されている。従って、多数の電力変換装置22それぞれのインバータ制御回路22bについて、ハードウェアおよびソフトウェアの変更を加えなくともよい利点がある。
【0020】
しかも、実施の形態によれば、ACリンク方式で接続された複数の電力変換装置22を含むシステム全体で、仮想同期発電機を模擬することができる。ACリンク方式によれば、蓄電池をまとめて第二の電力変換装置22に接続することができるので、DCリンク方式のように個々の電力変換装置22に蓄電池を接続する必要がない利点がある。図1に示すACリンク方式のシステム構成によれば、発電プラント2内に蓄電池を分散配置させることなく一箇所に集約して設置することができるので、蓄電池構成に関するコストカットも期待される。
【0021】
図2は、実施の形態にかかる発電システム1が備えるインバータ制御回路の構成を示す図である。複数の電力変換装置22それぞれが、電力変換回路22aと、インバータ制御回路22bとを含む。インバータ制御回路22bは、電力指令値P、Qに従って電力変換回路22aを制御する電力変換制御回路である。
【0022】
インバータ制御回路22bは、PLL回路22cを含むことが好ましい。PLL回路22cは、位相同期回路である。PLL回路22cで位相同期制御を実施することができるので、複数の電力変換装置22の制御タイミングを揃えることができる。なお、日本特開2014−168351号公報にかかる技術はPLL回路を用いずに制御を実現することを特徴としたものであり、この点はPLL回路22cを積極的に用いる本実施の形態と明確に異なっている。
【0023】
プラント制御装置10がインバータ制御回路22bに伝達する電力指令値P、Qは、アナログ信号であることが好ましい。アナログ信号であれば、デジタル信号のようにデジタル演算処理を行わなくてもよい。アナログ信号で電力指令値P、Qを伝達することで、インバータ制御回路22bの内部での演算処理を簡素化あるいは省略することができる。その結果、フィードバック制御速度を高めることができる。
【0024】
また、実施の形態では、マルチメータと呼ばれる計測器を用いずに、変流器4と計器用変成器5とを介して系統電流Isと系統電圧Vsとをプラント制御装置10が直接取得している。これにより、マルチメータを介するよりも高速に信号伝達を行うことができ、制御速度を高めることができる利点がある。
【0025】
プラント制御装置10が系統電圧Vsおよび系統電流Isに基づいて実施するフィードバック制御の制御周期が10msec以下であることが好ましい。フィードバック制御周期を10msec以下とすれば、実用上、十分な応答速度で、電力系統100の側の系統電圧変化あるいは系統周波数変化などをVSGモデル10a内の電力指令値P,Qに反映させるような高速フィードバック制御を実施することができる。
【0026】
図3は、実施の形態の変形例にかかる発電システム1およびプラント制御装置10の構成を示す図である。図3に示すように、発電システム1において、複数の電力変換装置22それぞれが接続する複数の直流電源23、24は、第一の直流電源23である再生可能エネルギー発電装置と第二の直流電源24である蓄電池とが並列接続したものであってもよい。DCリンク方式で接続された複数の電力変換装置22を含むシステム全体で、VSG(仮想同期発電機)を模擬することができる。
【0027】
実施の形態にかかる発電システム1およびプラント制御装置10は、実施の形態にかかる発電方法およびプラント制御方法として提供されても良い。既存の発電システムおよびプラント制御装置に事後的に実施の形態にかかるプラント制御装置10を追加することによって、実施の形態にかかる発電方法およびプラント制御方法が実施されてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 発電システム、2 発電プラント、3 連系トランス、4 変流器、5 計器用変成器、10 プラント制御装置、10a 仮想同期発電機モデル部(VSGモデル部)、20 開閉器、21 トランス、22 電力変換装置(PCS)、22a 電力変換回路、22b インバータ制御回路、22c PLL回路、23 直流電源(太陽光発電モジュール)、24 直流電源(蓄電池)、25 蓄電システム、100 電力系統、Is 系統電流、P、Q 電力指令値、S 系統連系点、Vs 系統電圧
図1
図2
図3