特許第6981544号(P6981544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6981544-鉄道車両の現在位置情報補正方法 図000002
  • 特許6981544-鉄道車両の現在位置情報補正方法 図000003
  • 特許6981544-鉄道車両の現在位置情報補正方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981544
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】鉄道車両の現在位置情報補正方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20211202BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B60L3/00 N
   B61L25/02 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-513239(P2020-513239)
(86)(22)【出願日】2019年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2019015103
(87)【国際公開番号】WO2019198633
(87)【国際公開日】20191017
【審査請求日】2020年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2018-74498(P2018-74498)
(32)【優先日】2018年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】小坂田 潤
(72)【発明者】
【氏名】品川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聖真
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−141300(JP,A)
【文献】 特開2008−56179(JP,A)
【文献】 特開平6−144227(JP,A)
【文献】 特開平11−171017(JP,A)
【文献】 特開2009−23423(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/135626(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00− 3/12
B61L 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の鉄道車両が地上子からの距離程情報の受信に失敗して現在位置情報を補正できないときに、当該鉄道車両の現在位置情報を補正する方法であって、
前記距離程情報の受信に失敗した後、最初に認識した地上子と当該地上子から連続して認識した適数の地上子が発信する距離程情報を基に前記各地上子間の間隔を算出して、当該算出した各地上子間の間隔と、前記走行中の走行経路のデータベース上の各地上子間の間隔を比較し、
前記比較した両間隔が一致する場所を特定できた場合、当該特定した位置を鉄道車両の現在位置として現在位置情報を補正することを特徴とする鉄道車両の現在位置情報補正方法。
【請求項2】
前記比較した両間隔が一致する場所を特定できない場合は、前記データベースと比較する各地上子を更新して更新した地上子間の間隔を算出し、当該算出した各地上子間の間隔と、前記データベース上の各地上子間の間隔との比較を両間隔が一致する場所を特定できるまで繰り返し行い、両間隔が一致する場所を特定できた場合、
当該特定した位置を鉄道車両の現在位置として現在位置情報を補正することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の鉄道車両の現在位置情報補正方法。
【請求項3】
前記適数の各地上子間の算出間隔と比較する前記データベース上の地上子間の距離程の検索範囲を定め、当該定めた距離程の検索範囲内で前記適数の各地上子間の算出間隔と比較することを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の鉄道車両の現在位置情報補正方法。
【請求項4】
前記検索範囲は±500m以下であることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の鉄道車両の現在位置情報補正方法。
【請求項5】
前記データベースと比較する地上子間の数は3つ又は4つであることを特徴とする請求の範囲第3項又は第4項に記載の鉄道車両の現在位置情報補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の鉄道車両が地上子から発信される距離程情報の受信に失敗して現在位置情報を補正できなかったときに、当該鉄道車両の現在位置情報を補正する方法に関するものである。以下、地上子から発信される距離程情報の受信に失敗して現在位置情報を補正できなかった場合を、現在位置を見失った場合という。
【背景技術】
【0002】
走行中の鉄道車両は、各停車駅を起点として速度発電機により取得した車輪の回転数によって現在位置を把握している。この現在位置の把握方法では、車輪の空転時、或いは、車輪の滑走時には、前記把握した位置に誤差が生じる。従って、鉄道車両は、対を成すレール間に設置した地上子を通過するとき、当該地上子から発信される距離程情報を受信して現在位置情報を補正している(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、鉄道車両が何らかの原因で地上子からの距離程情報を受信できなかったとき、或いは、前記受信できない状態が連続したとき、次に受信した距離程情報がどの位置の地上子から発信されたものであるのかを特定できなくなる。この場合、当該鉄道車両は現在位置を見失うことになる。
【0004】
なお、地上子から発信された距離程情報を受信できない原因としては、例えばシステムのバグ、車両の増結に伴って地上子の位置を変更した場合に当該変更がデータベースに反映されるまでの期間などが考えられる。
【0005】
走行中の鉄道車両が現在位置を見失ったとき、従来は、地上子から発信された距離程情報を受信して行う現在位置情報の補正を次の停車駅まで行わず、鉄道車両の現在位置の認識は速度発電機により取得した車輪の回転数による把握に頼っていた。
【0006】
しかしながら、曲線区間が保有する曲線情報を基に車体傾斜制御を行う鉄道車両では、前記現在位置情報の補正を非制御とした状態で次の停車駅まで走行する間に曲線区間が存在する場合、適切な車体傾斜制御を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−121658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、曲線情報を基に車体傾斜制御を行う鉄道車両では、現在位置情報の補正を非制御とした状態で次の停車駅まで走行する間に存在する曲線区間で適切な車体傾斜制御を行えないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行中の鉄道車両が何らかの原因で現在位置を見失ったときにも、可及的速やかに現在位置を把握して現在位置情報を補正できるようにすることを目的とするものである。
【0010】
レール上に設置される地上子の間隔は一定ではなく、直線区間の長さ、曲線区間の曲線半径、レールの勾配、隣接する駅の間隔等によって相違する。発明者らは、対を成すレール間に設置される地上子の間隔が一定でないことに着目し、以下の本発明を成立させた。
【0011】
本発明は、走行中の鉄道車両が現在位置を見失ったときに、当該鉄道車両の現在位置情報を補正する方法であって、以下の構成を最も主要な特徴としている。
【0012】
走行中の鉄道車両が現在位置を見失った後、最初に認識した地上子と当該地上子から連続して認識した適数の地上子から受信した距離程情報を記憶し、これら記憶した距離程情報を基に前記連続して認識した各地上子間の間隔を算出する。
【0013】
その後、前記算出した各地上子間の間隔と、前記走行中の走行経路のデータベース上の各地上子間の間隔を比較する。
【0014】
そして、前記比較した両間隔が一致する場所を特定できた場合、当該特定した位置を鉄道車両の現在位置として現在位置情報を補正する。
【0015】
一方、前記比較した両間隔が一致する場所を特定できない場合は、前記データベースと比較する各地上子を更新して更新した地上子間の間隔を算出する。なお、更新する地上子には、前記両間隔が一致する場所を特定できなかったときの地上子を全く含まない場合、前記地上子を一部含む場合の何れの場合でも良い。
【0016】
その後、前記更新した地上子間の算出間隔と前記データベース上の各地上子間の間隔を比較する。
【0017】
そして、前記地上子の更新と、更新した地上子間の算出間隔と前記データベース上の各地上子間の間隔との比較を、両間隔が一致する場所を特定できるまで繰り返し行い、両間隔が一致する場所を特定できた場合、当該特定した位置を鉄道車両の現在位置として現在位置情報を補正する。
【0018】
上記本発明の場合、前記適数の各地上子間の算出間隔と比較する前記データベース上の地上子間の距離程の検索範囲を定め、当該定めた距離程の検索範囲内で前記適数の各地上子間の算出間隔と比較することが望ましい。
【0019】
その理由は、比較する前記データベース上の地上子間の距離程の検索範囲を定めない場合は、比較するデータ数が膨大となって前記両間隔が一致する区間が重複する可能性が高くなり、前記両間隔が一致する場所を特定し難くなるからである。
【0020】
前記距離程の検索範囲とは、鉄道車両が現在位置を見失ったとき、見失った後の最初に認識する地上子を起点とする距離程の検索範囲を意味する。発明者らの調査によれば、前記検索範囲は±500以下の場合は、問題なく前記両間隔が一致する場所を特定できることを確認している。
【0021】
また、上記本発明において、前記データベースと比較する地上子間の数は特に限定されない。しかしながら、前記地上子間の数が2つでは各地上子間の算出間隔と前記データベース上の各地上子間の間隔が一致する場所を特定することが難しくなる。
【0022】
一方、前記データベースと比較する地上子間の数が多くなりすぎる場合は、前記両間隔が一致する場所を特定できる可能性が高くなるが、特定に要する時間が長くなる。
【0023】
従って、両者を勘案して、前記データベースと比較する地上子間の数は、できるだけ少なくなるように決定することになる。発明者らの調査によれば、前記地上子間の数を4つとした場合は、前記距離程の検索範囲を定めることによって重複する区間が存在しなかった。前記地上子間の数を3つとした場合は、前記距離程の検索範囲を定めても重複する区間が存在するときもあるが、比較する地上子を更新することによって速やかに現在位置情報を補正できることに変わりはない。
【0024】
対を成すレール間に設置される隣接する地上子の間隔は、隣接する駅の間隔に比べて短い。したがって、上記本発明によれば、走行中の鉄道車両が現在位置を見失ったときにも、可及的速やかに鉄道車両の現在位置情報を補正することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、走行中の鉄道車両が現在位置を見失ったときにも、可及的速やかに走行中の現在位置情報を補正することができる。したがって、曲線区間が存在しても曲線情報を基に適切な車体傾斜制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明方法により鉄道車両が現在位置情報を補正する場合の説明図で、4つの地上子間の間隔を用い、最初の比較で現在位置を補正できた場合の例である。
図2】本発明方法により鉄道車両が現在位置情報を補正する場合の説明図で、4つの地上子間の間隔を用い、2回目の比較で現在位置を補正できた場合の例である。
図3】本発明方法により鉄道車両が現在位置情報を補正する場合の説明図で、4つの地上子間の間隔を用い、5回目の比較で現在位置を補正できた場合の例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的は、走行中の鉄道車両が現在位置を見失ったときにも、可及的速やかに現在位置を把握して現在位置情報を補正することである。そして、その目的を、連続する地上子から受信する距離程情報を基に算出した各地上子間の間隔をデータベース上の各地上子間の間隔と比較することで実現した。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の鉄道車両における現在位置情報の補正方法を、添付図面を用いて説明する。
【0029】
例えばシステムのバグによって、走行中の鉄道車両が地上子からの距離程情報を受信できなかったとき、その後の地上子から受信する距離程情報がどの地上子から発信されたものであるのかを判断できない。この場合、走行中の鉄道車両は現在位置情報を補正できなくなって、現在位置を見失うことになる。
【0030】
例えば、図1図3に示すように、駅1を通過した後に地上子2を3つ読み飛ばし、3つ目の地上子を読み飛ばした後に当該読み飛ばしを検知した場合、地上子からの距離程情報を受信して行う現在位置情報の補正を次の停車駅まで非制御とする。
【0031】
その後、本発明では、鉄道車両の現在位置情報を、以下に説明するように補正する。
現在位置情報の前記補正を非制御とした後、最初に認識した地上子2aと、当該地上子2aから連続して認識した適数の地上子2b…が発信する距離程情報を鉄道車両に搭載した情報処理装置に記憶する。以後、最初に認識した地上子を、最初の地上子という。なお、正常時は、地上子から受信する距離程情報は、走行中の現在位置を確認した後にクリアされる。
【0032】
(連続して認識した4つの地上子が発信する距離程情報を使用して最初の比較で現在位置を補正できた場合:図1
前記記憶した、最初の地上子2aと、当該地上子2aから連続して認識した2番目〜4番目の地上子2b〜2dが発信した距離程情報を基に、前記情報処理装置は各地上子間の間隔d1〜d3を算出する。
【0033】
そして、当該算出した間隔(以下、算出間隔という)d1〜d3と、当該走行中の走行経路のデータベースにおける各地上子間の間隔を比較する。
【0034】
図1に示した例のように、最初の比較により両間隔が一致する場所を特定できた場合、前記情報処理装置は当該特定した場所を鉄道車両の現在位置と判断して現在位置情報を補正し、地上子2からの距離程情報を受信して行う補正を再開する。
【0035】
(連続して認識した4つの地上子が発信する距離程情報を使用して最初の比較で両間隔が一致する場所を特定できない場合:図2図3
一方、前記最初の比較により両間隔が一致する場所を特定できない場合は、比較する最初〜4番目の地上子2a〜2dを更新し、更新した地上子間の間隔を算出する。その後、更新した算出間隔を前記データベース上の各地上子間の間隔と比較する作業を、両間隔が一致する場所を特定できるまで行う。
【0036】
(2回目の比較で現在位置を補正できた場合:図2
図2で示した例の場合、最初の比較により、両間隔が一致する場所を特定できなかったので、比較する地上子2a〜2dを更新する。
【0037】
更新する地上子として、図2は、先に比較した最初〜4番目の地上子2a〜2dのうち最初の地上子2aを、最初に比較した4番目の地上子2dに続く5番目の地上子2eに変更した例である。つまり、最初の地上子2aの次の2番目の地上子2bと、当該2番目の地上子2bと連続する3〜5番目の地上子2c〜2eに更新した例である。この場合、更新した算出間隔d2〜d4を前記データベース上の各地上子間の間隔と比較する。
【0038】
図2に示した例は、2回目の比較で前記算出間隔d2〜d4と前記データベース上の各地上子間の間隔が一致する場所を特定できたので、情報処理装置は当該特定した場所を鉄道車両の現在位置と判断して現在位置情報を補正する。そして、この補正と共に、地上子からの距離程情報を受信して行う補正を再開する。
【0039】
(5回目の比較で現在位置を補正できた場合:図3
図3で示した例の場合も図2の例と同様、最初の比較により、両間隔が一致する場所を特定できなかったので、比較する地上子2a〜2dを更新する。
【0040】
図3は、最初の比較後に再度現在位置を見失った例である。この場合、その後最初に認識した地上子2eと、当該最初の地上子2eから連続して認識した2〜5番目の地上子2f〜2hが発信する距離程情報を基に各地上子間の間隔d5〜d7を算出し、当該算出間隔d5〜d7と当該走行経路のデータベースにおける各地上子間の間隔を比較する。
【0041】
図3の例では、再度現在位置を見失った後の最初の比較(2回目の比較)により、両間隔が一致する場所を特定できなかったので、図2の例と同様、比較した地上子のうち最初の地上子2eを、前記比較した5番目の地上子2iに続く6番目の地上子2jに変更する。そして、当該更新した算出間隔d6〜d8と前記データベース上の各地上子間の間隔を比較する。
【0042】
以上の作業を算出間隔と前記データベース上の各地上子間の間隔が一致する場所を特定できるまで行う。図3は5回目に更新した、4番目〜7番目の地上子2h〜2kの算出間隔d8〜d10と前記データベース上の各地上子間の間隔の比較により両間隔が一致する場所を特定できた例である。両間隔が一致する場所を特定できた場合、情報処理装置は当該特定した場所を鉄道車両の現在位置と判断して現在位置情報を補正し、地上子からの距離程情報を受信して行う補正を再開する。
【0043】
ちなみに、発明者らは、5つの走行区間で、データベース上の地上子間の距離程の検索範囲を±500mとした場合に、データベース上の隣接する3つの地上子間の間隔が重複する区間があるか否かを調査した。
【0044】
その結果、2区間重複する走行区間が2つ、3区間重複する走行区間と1区間重複する走行区間が各1つあった。また、重複する区間がない走行区間も1つあった。
【0045】
一方、前記と同じ5つの走行区間で、データベース上の地上子間の距離程の検索範囲を±500mとした場合に、データベース上の隣接する4つの地上子間の間隔が重複する区間があるか否かを発明者らが調査した結果、全ての走行区間で重複する区間がなかった。
【0046】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0047】
更新する地上子は、図2図3に示した例と異なり、最初に比較した地上子と複数個の地上子を異ならせてもよい。また、全ての地上子を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 駅
2,2a,2b… 地上子
図1
図2
図3