特許第6981545号(P6981545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981545
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 25/065 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20211202BHJP
   H05K 3/00 20060101ALN20211202BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   H01L23/28 F
   H01L23/00 C
   H01L25/08 H
   !H05K3/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-518294(P2020-518294)
(86)(22)【出願日】2019年5月7日
(86)【国際出願番号】JP2019018207
(87)【国際公開番号】WO2019216300
(87)【国際公開日】20191114
【審査請求日】2020年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-89657(P2018-89657)
(32)【優先日】2018年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】野村 忠志
(72)【発明者】
【氏名】楠山 貴文
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−203633(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/017159(WO,A1)
【文献】 特開2010−118649(JP,A)
【文献】 特開平5−275417(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/035715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/28
H01L 23/00
H01L 25/065
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板の一方主面に実装された第1部品と、
前記配線基板の前記一方主面に当接する当接面と、該当接面に対向する対向面と、前記当接面と前記対向面の端縁同士をつなぐ側面とを有し、前記第1部品を封止する第1封止樹脂層と、
前記配線基板の他方主面に実装された第2部品と、
前記配線基板の前記他方主面に当接する当接面と、該当接面に対向する対向面と、前記当接面と前記対向面の端縁同士をつなぐ側面とを有し、前記第2部品を封止する第2封止樹脂層とを備え、
前記第1部品の少なくとも一部は、前記第1封止樹脂層の前記対向面から露出されており、
前記第1封止樹脂層の樹脂の線膨張係数は、前記第2封止樹脂層の樹脂の線膨張係数よりも小さく、
前記第1封止樹脂層の樹脂のガラス転移温度が、前記第2封止樹脂層の樹脂のガラス転移温度よりも高い、および/または前記第1封止樹脂層の樹脂の弾性率が、前記第2封止樹脂層の樹脂の弾性率よりも大きい
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記第1部品が半導体素子であることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記配線基板の前記一方主面から前記第1封止樹脂層の前記対向面までの高さは、前記配線基板の前記他方主面から前記第2封止樹脂層の前記対向面までの高さよりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記第1封止樹脂層に埋設された接続端子をさらに備え、
前記接続端子は、一方端部が前記配線基板の前記一方主面に接続され、他方端部が前記第1封止樹脂層の前記対向面から露出していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記接続端子はバンプであることを特徴とする請求項4に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記第1封止樹脂層の前記側面と、前記配線基板の側面と、前記第2封止樹脂層の前記側面および前記対向面とを少なくとも被覆するシールド膜をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の一方主面上に部品が実装され、部品が封止樹脂層で被覆された高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すモジュール100のように、配線基板101の上面101aに第2樹脂層103で被覆された複数のチップ部品102が実装され、配線基板101の下面101bに第1樹脂層106で被覆された半導体基板104と接続端子105とが実装された高周波モジュールが提案されている。このようなモジュール100において、第1樹脂層106の表面106aを研磨して半導体基板104および接続端子105を第1樹脂層106から露出させることがある。これにより、一方の封止樹脂層の厚さを薄くしてモジュール100の低背化を実現することができる。
【0003】
このように、一方の樹脂層の厚さが他方の樹脂層の厚さよりも薄くなる場合、両樹脂層にかかる応力の大きさが異なるため、モジュール100の反りが発生しやすくなる。そこで、第2樹脂層103よりも薄い第1樹脂層106の樹脂として、第2樹脂層103の樹脂よりも線膨張係数の大きい樹脂を採用する。これにより、応力のバランスを保つことができるため、モジュール100の反りを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/017159号(段落0033〜0048、図4等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モジュール100の製造工程において、半導体基板104の厚さを精度よく研削することが重要であり、厚さばらつき要因を極力排除した状態で研削する必要がある。このため、半導体基板104の研削は、第2樹脂層103が形成される前の、第1樹脂層106のみが形成された状態で行われる。このとき、第1樹脂層106には線膨張係数の大きい樹脂が使用されるため、第1樹脂層106だけが形成された状態の半製品の反りが大きくなってしまう。特に、モジュール100を集合基板により製造する場合には、面積が大きいため反りが大きくなる傾向にある。集合基板に反りが発生することにより、半導体基板104の研削精度にも悪影響が及ぼされる。さらに、半導体基板104は研削されて薄くなるため剛性が低下するが、半導体基板104の線膨張係数は、樹脂よりも小さいため、半導体基板104と第1樹脂層106との線膨張係数の差に伴う応力が大きくなり、半導体基板104の破損が発生しやすくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、部品が封止樹脂層から露出した状態にあって、当該封止樹脂層の線膨張係数が小さく、ガラス転移温度が高いおよび/または弾性率の高いものを使用することにより、半製品の反りを低減し、封止樹脂層に被覆された部品の破損を防止した高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の高周波モジュールは、配線基板と、前記配線基板の一方主面に実装された第1部品と、前記配線基板の前記一方主面に当接する当接面と、該当接面に対向する対向面と、前記当接面と前記対向面の端縁同士をつなぐ側面とを有し、前記第1部品を封止する第1封止樹脂層と、前記配線基板の他方主面に実装された第2部品と、前記配線基板の前記他方主面に当接する当接面と、該当接面に対向する対向面と、前記当接面と前記対向面の端縁同士をつなぐ側面とを有し、前記第2部品を封止する第2封止樹脂層とを備え、前記第1部品の少なくとも一部は、前記第1封止樹脂層の前記対向面から露出されており、前記第1封止樹脂層の樹脂の線膨張係数は、前記第2封止樹脂層の樹脂の線膨張係数よりも小さく、前記第1封止樹脂層の樹脂のガラス転移温度が、前記第2封止樹脂層の樹脂のガラス転移温度よりも高い、および/または前記第1封止樹脂層の樹脂の弾性率が前記第2封止樹脂層の樹脂の弾性率よりも大きいことを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、第1封止樹脂層形成後の半製品の反りを低減することができるため、第1部品の研削工程が容易になり研削精度を向上させることができる。また、第1封止樹脂層には、線膨張係数の小さい樹脂を使用することにより、研削して剛性が低下した第1部品と第1封止樹脂層との線膨張係数の差が小さくなるため、線膨張係数の差に伴う応力を低減することができ、第1部品の破損を防止することができる。
【0009】
また、前記第1部品が半導体素子であってもよい。この場合、第1封止樹脂層とともに第1部品を研磨することができるため、高周波モジュールの低背化を図ることができる。
【0010】
また、前記配線基板の前記一方主面から前記第1封止樹脂層の前記対向面までの高さは、前記配線基板の前記他方主面から前記第2封止樹脂層の前記対向面までの高さよりも低くてもよい。この場合、第1封止樹脂層と第2封止樹脂層の厚さの違いに起因する応力による反りを防止することができる。
【0011】
また、前記第1封止樹脂層に埋設された接続端子をさらに備え、前記接続端子は、一方端部が前記配線基板の前記一方主面に接続され、他方端部が前記第1封止樹脂層の前記対向面から露出していてもよい。この構成によると、接続端子によりモジュールを外部に接続することができる。また、接続端子の他方端部をマザー基板に接続すると、マザー基板のグランド電極を介して、第1部品で発生した熱を放熱することができる。
【0012】
また、前記接続端子はバンプであるとしてもよい。
【0013】
また、前記第1封止樹脂層の前記側面と、前記配線基板の側面と、前記第2封止樹脂層の前記側面および前記対向面とを少なくとも被覆するシールド膜をさらに備えていてもよい。この場合、第1部品および第2部品に対するシールド性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1封止樹脂層形成後の半製品の反りを低減することができるため、第1部品の研削工程が容易になり、第1部品の研削精度を向上させることができる。また、第1封止樹脂層に線膨張係数の小さな樹脂を使用するため、第1部品と第1封止樹脂層との線膨張係数の差に伴う応力を低減することができ、第1部品の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態にかかる高周波モジュールの断面図である。
図2図1の高周波モジュールの平面図である。
図3】ガラス転移温度と線膨張係数(ひずみ)および弾性率の関係を示すグラフである。
図4図1の高周波モジュールの製造工程を示す図である。
図5図1の高周波モジュールの製造工程を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態にかかる高周波モジュールの断面図である。
図7図6の高周波モジュールの平面図である。
図8】本発明の第3実施形態にかかる高周波モジュールの断面図である。
図9図8の高周波モジュールの平面図である。
図10】従来の高周波モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態にかかる高周波モジュール1aの構成について、図1ないし図5を参照して説明する。なお、図1は高周波モジュール1aの断面図、図2は高周波モジュール1aの第1封止樹脂層5の下面5aを示す平面図、図3はガラス転移温度と線膨張係数および弾性率の関係を示すグラフ、図4および図5は高周波モジュール1aの製造工程を示す図である。
【0017】
この実施形態にかかる高周波モジュール1aは、図1および図2に示すように、配線基板2と、該配線基板2の下面2aに実装された第1部品3aおよび複数の接続端子4と、第1部品3aおよび接続端子4とを封止する第1封止樹脂層5と、配線基板2の上面2bに実装された複数の第2部品3bと、第2部品3bを封止する第2封止樹脂層6と、第1封止樹脂層5の側面5cと第2封止樹脂層6の側面6cおよび上面6aと配線基板2の側面2cとを被覆するシールド膜7とを備え、例えば、高周波信号が用いられる電子機器のマザー基板等に搭載される。
【0018】
配線基板2は、例えば、低温同時焼成セラミック、高温同時焼成セラミックやガラスエポキシ樹脂などで形成された複数の絶縁層が積層されてなる。配線基板2の上面2b(本発明の「他方主面」に相当する)および下面2a(本発明の「一方主面」に相当する)には各部品3a、3bまたは接続端子4の実装用の実装電極8が形成される。また、下面2aには、外部接続用の複数の接続端子4が実装される。また、隣接する絶縁層間それぞれに、各種の内部配線電極(図示省略)やグランド電極9が形成される。さらに、配線基板2の内部には、内部配線電極同士を接続するための複数のビア導体(図示省略)が形成される。なお、実装電極8および内部配線電極は、いずれもCuやAg、Al等の配線電極として一般的に採用される金属で形成されている。また、各ビア導体は、AgやCu等の金属で形成されている。なお、各実装電極8には、Ni/Auめっきがそれぞれ施されていてもよい。
【0019】
第1部品3aは、ICやPA(パワーアンプ)などの半導体素子で構成され、半田接合などの一般的な表面実装技術により配線基板2に実装される。また、高周波モジュール1aの低背化のため、第1部品3aは下面30aが第1封止樹脂層5の下面5aとともに研磨され、第1部品3aの下面30aが第1封止樹脂層5の下面5aから露出している。なお、第1部品3aの研磨は、配線基板2の下面2aに実装された後に行う。
【0020】
第2部品3bは、チップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗等のチップ部品、ICなどの半導体素子で構成される。
【0021】
接続端子4は、外部基板との入出力に使用され、図2に示すように、高周波モジュール1aの外周に沿って配置される。この実施形態では、高周波モジュール1aの外周に沿って1列に配列されているが、場所により、複数列に並列配置されていてもよい。また、接続端子4は、たとえば、金属ピンを実装電極8に搭載して半田接合してもよいし、あらかじめ、実装電極8上にめっきで形成したポスト電極でもよい。また、バンプであってもよい。なお、接続端子4の下面4aには、めっきにより金属皮膜が形成されていてもよい。
【0022】
第1封止樹脂層5および第2封止樹脂層6は、シリカフィラー入りのエポキシ樹脂等の封止樹脂として一般的に採用される樹脂で形成され、それぞれ、第1部品3aおよび第2部品3bを封止する。また、第1封止樹脂層5は、配線基板2の下面2aに当接する上面5b(本発明の「封止樹脂層の当接面」に相当する)と、該上面5bに対向する下面5a(本発明の「封止樹脂層の対向面」に相当する)と、側面5cとを有する。同様に、第2封止樹脂層6は、配線基板2の上面2bに当接する下面6bと、該下面6bに対向する上面6aと、側面6cとを有する。また、第1封止樹脂層5の配線基板2の下面2aからの高さは、第2封止樹脂層6の配線基板2の上面2bからの高さよりも低く形成される。また、熱伝導率を高めるために、アルミナフィラーなどの熱伝導率が高いフィラーを使用してもよい。
【0023】
なお、線膨張係数、ガラス転移温度、および弾性率の値を変えるために、第1封止樹脂層5と第2封止樹脂層6とでは、樹脂の材料定数やフィラーの含有量が異なっており、次の2つの条件を満たすように両封止樹脂層5、6の樹脂が選定される。1つめの条件は、第1封止樹脂層5の樹脂の線膨張係数が第2封止樹脂層6の樹脂の線膨張係数よりも小さいことであり、2つめの条件は、第1封止樹脂層の樹脂のガラス転移温度が第2封止樹脂層の樹脂のガラス転移温度よりも高いこと、および/または、第1封止樹脂層の樹脂の弾性率が第2封止樹脂層の弾性率よりも大きいことである。これらの条件を満たす樹脂を使用することにより、半導体素子である第1部品3aの下面30aを露出させる研削を精度よく行うことができ、さらに、第1封止樹脂層5と第2封止樹脂層6の厚さの違いによる応力の差によって発生する高周波モジュール1aの反りを緩和することができる。
【0024】
ここで、第2封止樹脂層6の樹脂の線膨張係数を第1封止樹脂層の樹脂よりも大きくすることにより、高周波モジュール1aへの応力が増大するにもかかわらず、反りを緩和することができる理由について説明する。
【0025】
図3(a)のひずみ温度特性のグラフに示すように、ガラス転移温度Tより低い温度(低温)Tにおける線膨張係数α1と、ガラス転移温度Tより高い温度(高温)Tにおける線膨張係数α2とを比較すると、線膨張係数は、ガラス転移温度Tを境に約5倍の大きさになっている。すなわち、線膨張係数α2は線膨張係数α1の約5倍である。また、図3(b)の弾性率温度特性のグラフに示すように、ガラス転移温度Tより低い温度(低温)Tにおける弾性率E1と、ガラス転移温度より高い温度(高温)Tにおける弾性率E2とを比較すると、弾性率は、ガラス転移温度Tを境に約100分の1の大きさになっている。すなわち、弾性率E2は弾性率E1の約100分の1である。
【0026】
一方、樹脂の応力σと線膨張係数α1、α2および弾性率E1、E2について、数1の(1)式の関係がある。上記したように、線膨張係数α1から線膨張係数α2の変化量と、弾性率E1から弾性率E2への変化量を比較した場合、弾性率の変化量の方が大きいことから、樹脂の応力σに対して、数1の(1)式の第2項の影響度が高く、樹脂の応力σと線膨張係数α1、α2および弾性率E1、E2の関係は、数1の(2)式のように簡略化することができる。ここで、数1の(2)式によると、ガラス転移温度Tが低いほど温度変動幅が小さくなって、温度変動による応力σの累積値が小さくなる。また、弾性率E1が低いほど応力σが小さくなる。したがって、第2封止樹脂層6の樹脂の線膨張係数を第1封止樹脂層の樹脂よりも大きくしたことにより増加した応力は、第2封止樹脂層6の樹脂のガラス転移温度Tを低くすること、および第2封止樹脂層6の樹脂の弾性率E1を低くすることにより低減することができる。なお、ガラス転移温度Tと弾性率E1の両方を小さくしてもよいし、どちらか一方を小さくしてもよい。
【0027】
【数1】
【0028】
シールド膜7は、第1封止樹脂層5の側面5cと第2封止樹脂層6の側面6cおよび上面6aと配線基板2の側面2cとを被覆する。また、シールド膜7は、配線基板2の側面2cに露出したグランド電極9に接続される。
【0029】
シールド膜7は、第1封止樹脂層5の側面5cと配線基板2の側面2cと第2封止樹脂層6の側面6cおよび上面6aとに積層された密着膜と、密着膜に積層された導電膜と、導電膜に積層された防錆膜とを有する多層構造で形成することができる。ここで、密着膜は、導電膜と両封止樹脂層5、6との密着強度を高めるために設けられたものであり、例えば、Ti、Cr、SUSなどの不動態を形成する材料で形成することができる。また、導電膜は、シールド膜7の実質的なシールド機能を担う層であり、例えば、Cu、Ag、Alのうちのいずれかの金属で形成することができる。防錆膜は、導電膜が腐食したり、傷が付いたりするのを防止するために設けられたものであり、例えば、SUSで形成することができる。
【0030】
(高周波モジュールの製造方法)
次に、図4および図5を参照して、高周波モジュール1aの製造方法について説明する。この第1実施形態では、複数の高周波モジュール1aの集合体を形成した後に個片化することにより、高周波モジュール1aを製造する。なお、必要に応じて、各工程の順序を入れ替えてもよいし、新規の工程を追加しても構わない。
【0031】
まず、図4(a)に示すように、配線基板2の下面2aに第1部品3aを周知の表面実装技術を用いて実装して接続端子4を形成する。接続端子4は、金属ピンを実装電極8に搭載して半田接合してもよいし、あらかじめ実装電極8上にめっきで形成してもよい。その後、図4(b)に示すように、第1部品3aおよび接続端子4を覆うように第1封止樹脂層5を形成する。このとき、第1封止樹脂層5は第2封止樹脂層6よりも線膨張係数が小さくなるような樹脂により形成する。第1封止樹脂層5の線膨張係数は、たとえば、シリカフィラーの含有量を多くすることで調整することができる。第1封止樹脂層5は、たとえば、トランスファーモールド方式、コンプレッションモールド方式、樹脂ディスペンス法等周知の技術を用いて形成することができる。なお、第1封止樹脂層5には、一般的なシリカフィラー入りのエポキシ樹脂を用いることができる。また、第1封止樹脂層5に高い熱伝導性を持たせるために、アルミナフィラーなどの熱伝導率が高いフィラー入りのエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0032】
第1封止樹脂層5の形成後、図4(c)に示すように、研磨等により、第1部品3aの下面30a、接続端子4の下面4aを露出させる。研磨後、接続端子4の下面4aにめっき等により金属皮膜を形成する。めっき処理の前にエッチングなどの表面処理を行ってもよい。このように、第2封止樹脂層6を形成する前に第1封止樹脂層を形成した状態で研磨を行うと、第1部品3aの研削精度を向上させることができる。しかし、第1封止樹脂層5の形成後の半製品集合基板に反りが発生しやすくなってしまう。この実施形態では、第1封止樹脂層5の樹脂に線膨張係数の小さいものを採用しているため、半製品集合基板の反りを抑制することができ、製造が容易になる。また、第1封止樹脂層5を線膨張係数の小さい樹脂で形成することにより、第1部品3aと第1封止樹脂層5との線膨張係数の差が小さくなるため、線膨脹係数の差に伴う応力を低減することができ、第1部品3aの破損を防止することができる。
【0033】
その後、図4(d)に示すように、配線基板2の上面2bに第2部品3bを周知の実装技術を用いて実装する。次に、図5(a)に示すように、第2部品3bを覆うように第2封止樹脂層6を形成する。第2封止樹脂層6は、第1封止樹脂層5と同様に、トランスファーモールド方式、コンプレッションモールド方式、樹脂ディスペンス法等周知の技術を用いて形成することができる。また、第2封止樹脂層6には、一般的なシリカフィラー入りのエポキシ樹脂を用いることができる。また、第1封止樹脂層5に高い熱伝導性を持たせるために、アルミナフィラーなどの熱伝導率が高いフィラー入りのエポキシ樹脂を用いることもできる。第2封止樹脂層6を形成後、高周波モジュール1aの製品厚さを薄くするため、第2封止樹脂層6を上面6a側から研削してもよい。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、集合基板として製造してきた高周波モジュール1aをダイシングやレーザー加工などによりカットして個片化する。さらに、図5(c)に示すように、配線基板2の側面2cと第1封止樹脂層5の側面5cと第2封止樹脂層6の側面6cおよび上面6aとにシールド膜7を形成する。シールド膜7の形成には、スパッタ、真空蒸着、めっき、導電性樹脂塗布等の周知の方法を用いることができる。また、シールド膜7の形成前に、プラズマ洗浄、ドライエッチング、イオンミリング等のドライプロセスによる残留成分の除去工程をさらに追加してもよい。
【0035】
したがって、上記した実施形態によれば、先に形成する第1封止樹脂層5の樹脂の線膨張係数を小さくすることにより、第1封止樹脂層5の形成後の半製品集合基板の反りを低減することができるため、製造が容易になり、第1部品3aの研削精度を向上させることができる。また、第1部品3aの線膨張係数は2.4〜6ppm/℃であり、樹脂材料よりも小さいが、上記した実施形態のように、第1封止樹脂層5の線膨張係数を小さくすることにより、第1部品3aと第1封止樹脂層5との線膨張係数の差を小さくすることができるため、線膨張係数の差による応力を低減することができる。
【0036】
また、第1封止樹脂層5と第2封止樹脂層6との厚さの違いに伴う応力により、第1封止樹脂層5の樹脂の線膨張係数を小さくした場合には、高周波モジュール1aの反りが大きくなってしまう恐れがあるが、第1封止樹脂層5および第2封止樹脂層6の樹脂のガラス転移温度と弾性率を調整することにより、反りの発生しにくい高周波モジュール1aを提供することができる。
【0037】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態にかかる高周波モジュール1bについて、図6および図7を参照して説明する。なお、図6は高周波モジュール1bの断面図、図7は高周波モジュール1bの第1封止樹脂層5の下面5aを示す平面図である。
【0038】
この実施形態にかかる高周波モジュール1bが、図1および図2を参照して説明した第1実施形態の高周波モジュール1aと異なるところは、図6および図7に示すように、配線基板2の下面2aに複数の第1部品3aが実装され、隣接する第1部品3aの間に接続端子4が配置されている点である。その他の構成は、第1実施形態の高周波モジュール1aと同じであるため、同一記号を付すことにより説明を省略する。
【0039】
この実施形態では、配線基板2の下面2aに2つの第1部品3aが実装されている。また、接続端子4が高周波モジュール1bの外周に沿った部分だけではなく、2つの第1部品3aに挟まれた部分にも配置されている。なお、配線基板2の下面2aに実装された第1部品3aは3つ以上でもよく、また、接続端子4は複数列に配列されていてもよい。
【0040】
この構成によれば、第1実施形態の高周波モジュール1aと同様の効果に加えて、高周波モジュール1bにより多くの第1部品3aを搭載することができるため、高周波モジュール1bの高機能化を実現することができる。
【0041】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態にかかる高周波モジュール1cについて、図8および図9を参照して説明する。なお、図8は高周波モジュール1cの断面図、図9は高周波モジュール1cの第1封止樹脂層5の下面5aを示す平面図である。
【0042】
この実施形態にかかる高周波モジュール1cが、図1および図2を参照して説明した第1実施形態の高周波モジュール1aと異なるところは、図8および図9に示すように、外部接続用の複数の接続端子40をバンプとしている点である。その他の構成は、第1実施形態の高周波モジュール1aと同じであるため、同一記号を付すことにより説明を省略する。
【0043】
この実施形態では、接続端子40を実装電極8上に例えば半田バンプや金バンプなどのバンプとしている。この接続端子40は、外部基板との入出力に使用され、図9に示すように、高周波モジュール1cの外周に沿って配置される。この実施形態では、高周波モジュール1cの外周に沿って1列に配列されているが、場所により、複数列に並列配置されていてもよい。
【0044】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、上記した各実施形態や変形例の構成を組み合わせてもよい。
【0045】
たとえば、配線基板2の下面2aに第2部品3bやその他の部品が実装されていてもよい。このとき、配線基板2の下面2aに実装される第2部品3bまたはその他の部品の高さは、研磨後の第1封止樹脂層5の高さよりも低いことが望ましい。
【0046】
また、シールド膜7が形成されていなくてもよい。この場合、配線基板2の側面2cにグランド電極9が露出しない構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、半導体部品を備える種々の高周波モジュールに適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1a、1b、1c 高周波モジュール
2 配線基板
3a 第1部品
3b 第2部品
5 第1封止樹脂層
6 第2封止樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10