特許第6981549号(P6981549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981549
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   G01S7/526 M
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-528775(P2020-528775)
(86)(22)【出願日】2019年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2019024172
(87)【国際公開番号】WO2020008868
(87)【国際公開日】20200109
【審査請求日】2020年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2018-129396(P2018-129396)
(32)【優先日】2018年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】高▲瀬▼ 恭英
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/167003(WO,A1)
【文献】 特開2017−172989(JP,A)
【文献】 特開2015−190817(JP,A)
【文献】 特開2012−065308(JP,A)
【文献】 特開平03−282386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52−7/64
G01S 15/00−15/96
H04R 3/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体に振動を生じさせる励振信号が印加される駆動電極および前記振動体の振動に応じた検出信号を取り出す検出電極を有する超音波を発する振動子と、
前記振動体を振動させる前記励振信号を前記駆動電極へ出力する送信回路と、
前記検出電極に検出される前記検出信号を入力する受信回路と、
前記送信回路から前記駆動電極への前記励振信号の出力が停止された後に前記受信回路から出力される前記振動体の残響振動に応じた残響振動抑圧回路制御信号を増幅して前記残響振動を抑圧する抑圧制御信号を生成し、前記駆動電極に与える、信号増幅の周波数帯域が可変な帯域可変演算増幅器を有する残響振動抑圧回路と、
前記残響振動抑圧回路から前記駆動電極への前記抑圧制御信号の出力が停止された後に前記帯域可変演算増幅器の信号増幅の周波数帯域を変化させる制御回路と
を備える超音波センサ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記帯域可変演算増幅器の主要極の周波数を変化させることで信号増幅の周波数帯域を変化させることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記残響振動抑圧回路と前記駆動電極との間に設けられる半導体スイッチを備え、
前記制御回路は前記半導体スイッチの導通状態を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記帯域可変演算増幅器は、入力される差電圧を電流に変換する電圧電流変換部と、前記電圧電流変換部によって変換される電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、前記電圧電流変換部と前記電流電圧変換部の間に設けられる、前記制御回路によって抵抗値が可変される可変抵抗部とを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記可変抵抗部はMOSFETで構成されることを特徴とする請求項4に記載の超音波センサ。
【請求項6】
第1の可変電流源、第1の抵抗、第2の抵抗、第2の可変電流源がこの順に正電源および負電源間に直列接続され、前記第1の抵抗および前記第2の抵抗間の接続点が前記残響振動抑圧回路の出力に接続される直列回路を備え、
前記半導体スイッチは、nチャネルMOSFETのソース・ドレイン間とpチャネルMOSFETのソース・ドレイン間とが並列に接続されたトランスミッションゲートから構成され、前記nチャネルMOSFETおよび前記pチャネルMOSFETの各ソースが前記第1の抵抗および前記第2の抵抗間の接続点、前記nチャネルMOSFETのゲートが前記第1の可変電流源および前記第1の抵抗間の接続点、前記pチャネルMOSFETのゲートが前記第2の抵抗および前記第2の可変電流源間の接続点に接続される
ことを特徴とする請求項3または請求項3を引用する請求項4または請求項3を引用する請求項4に従属する請求項5に記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を発する振動体の残響振動を抑圧する残響振動抑圧回路を備える超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の超音波センサとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この超音波センサは半導体スイッチを備え、半導体スイッチにより、超音波を発する圧電体に設けられる送信用電極と受信用電極との間の電気的な経路を導通状態と非導通状態とに切り替える。送信用電極への交流電圧印加後に半導体スイッチによって上記経路を導通状態にすることで、圧電体の残響振動に応じて圧電体の受信用領域から出力される残響信号が送信用電極にフィードバックされる。残響信号が電圧として送信用電極にフィードバックされることで、圧電体の残響振動が相殺されて抑圧される。残響信号が送信用電極にフィードバックされた後、上記経路を導通状態から非導通状態に切り替えることで、超音波センサは受信可能状態にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6249111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の超音波センサにおいては、残響信号が電圧として送信用電極にフィードバックされて圧電素子の残響振動が一旦抑制されても、半導体スイッチのスイッチング等によって生じる高周波ノイズにより、圧電体が再励起されて再振動する。このため、半導体スイッチを導通状態から非導通状態に切り替えて超音波センサを受信可能状態にしても、振動体の残響振動が抑圧された直後に受信される受信信号がこの再振動に起因する雑音に埋もれて、受信信号を正しく受信することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
振動体に振動を生じさせる励振信号が印加される駆動電極および振動体の振動に応じた検出信号を取り出す検出電極を有する超音波を発する振動子と、
振動体を振動させる励振信号を駆動電極へ出力する送信回路と、
検出電極に検出される検出信号を入力する受信回路と、
送信回路から駆動電極への励振信号の出力が停止された後に受信回路から出力される振動体の残響振動に応じた残響振動抑圧回路制御信号を増幅して残響振動を抑圧する抑圧制御信号を生成し、駆動電極に与える、信号増幅の周波数帯域が可変な帯域可変演算増幅器を有する残響振動抑圧回路と、残響振動抑圧回路から駆動電極への抑圧制御信号の出力が停止された後に帯域可変演算増幅器の信号増幅の周波数帯域を変化させる制御回路とを備え、超音波センサを構成した。
【0006】
本構成によれば、送信回路から駆動電極への励振信号の出力が停止された後、抑圧制御信号が帯域可変演算増幅器によって信号増幅されて残響振動抑圧回路から駆動電極に与えられることで、振動体の残響振動が抑圧される。また、駆動電極への抑圧制御信号の出力が停止された後、帯域可変演算増幅器の信号増幅周波数帯域が制御回路によって変化させられ、帯域可変演算増幅器の内部で発生する高周波ノイズの周波数帯域における帯域可変演算増幅器の信号増幅率が低下させられることで、振動体の残響振動が抑圧された後に駆動電極に印加される高周波ノイズの信号レベルが低減される。したがって、振動体の残響振動が抑圧された後、高周波ノイズによって振動体が再励起されて再振動するのが防止される。このため、振動体の残響振動が抑圧された直後に受信が可能になる。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明によれば、振動体の残響振動が抑圧された直後に受信される受信信号を正しく受信することが可能な超音波センサを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態による超音波センサの回路図である。
図2図1に示す超音波センサを構成する帯域可変演算増幅器の内部構成を示す回路である。
図3】超音波センサの動作シーケンスを示す図である。
図4図1に示す超音波センサの各箇所における信号波形を示す図である。
図5図1に示す超音波センサの内部に構成されるローパスフィルタの信号増幅周波数帯域が可変される前後の利得特性を示すグラフである。
図6図1に示す超音波センサの内部に構成されるローパスフィルタによって高周波ノイズが低減されることを説明するためのグラフである。
図7図1に示す超音波センサに比較される第1の比較例による超音波センサの回路図である。
図8図1に示す超音波センサに比較される第2の比較例による超音波センサの回路図である。
図9】本発明の第2の実施形態による超音波センサの回路図である。
図10図9に示す超音波センサにおける半導体スイッチの変形例による駆動回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の超音波センサを実施するための形態について、説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態による超音波センサ1Aの回路図である。
【0011】
超音波センサ1Aは、例えば、車両に搭載されて、超音波を発してから反射波を受信するまでの時間に応じて、自身から物体までの距離を計測するのに用いられる。超音波センサ1Aは、超音波を発する振動子である圧電素子2、送信回路3、受信回路4、残響振動抑圧回路5、および制御回路6を備えて構成される。圧電素子2は、振動体である圧電体2a、駆動電極2b、検出電極2cおよび共通電極2dを有する。共通電極2dは接地電圧等の基準電圧に接続される。駆動電極2bおよび共通電極2d間には、圧電体2aに振動を生じさせる励振信号が印加される。また、検出電極2cおよび共通電極2d間には、圧電体2aの振動に応じた電荷が現れ、この電荷が検出信号として取り出される。送信回路3は、圧電体2aを振動させる励振信号Aを駆動電極2bへ出力する。受信回路4は、反射波等の受信によって圧電体2aが振動することで、検出電極2cに検出される検出信号を入力する。
【0012】
駆動電極2bに励振信号Aが印加されることで、圧電体2aが振動して、気中などに向けて超音波が出射される。この圧電体2aの振動は、送信回路3から駆動電極2bへの励振信号Aの出力が停止された後にも、直ぐには収まらず、しばらく残響振動として継続する。この残響振動により、検出電極2cには残響振動に応じた電圧が残響信号として検出される。受信回路4には検出電極2cからこの残響信号が入力され、受信回路4は、入力した残響信号に応じて残響振動抑圧回路5を制御する残響振動抑圧回路制御信号を残響振動抑圧回路5へ出力する。
【0013】
残響振動抑圧回路5は帯域可変演算増幅器50を用いて構成される。残響振動抑圧回路5は、送信回路3から駆動電極2bへの励振信号Aの出力が停止された後に受信回路4から出力される残響振動抑圧回路制御信号を増幅して、残響振動を抑圧する抑圧制御信号を生成し、駆動電極2bに与える。抑圧制御信号は、残響振動による圧電体2aの振動が打ち消されるように、例えば、残響信号に対して位相を反転した電圧信号として生成される。
【0014】
帯域可変演算増幅器50は、信号増幅の周波数帯域が可変な図2に示す内部構成を有し、同図(a)に概略構成、同図(b)に詳細な構成の一例が示される。つまり、帯域可変演算増幅器50は、入力段に電圧電流変換部51、中間段に可変抵抗部52、および出力段に電流電圧変換部53を備える。電圧電流変換部51は、帯域可変演算増幅器50の非反転入力端子(+)50aおよび反転入力端子(−)50bの各入力電圧がゲートにそれぞれ印加される一対のMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)51a、51b、カレントミラー回路を構成する一対のMOSFET51c、51d、およびゲートに一定の電圧Vbが与えられて定電流源を構成するMOSFET51eから構成され、非反転入力端子(+)50aおよび反転入力端子(−)50b間に入力される差電圧を電流に変換する。電流電圧変換部53は、ゲートに一定の電圧Vbが与えられて定電流源を構成するMOSFET53a、および、MOSFET53aに直列に接続されて、ゲート・ドレイン間にコンデンサ53cが接続されるMOSFET53bから構成され、電圧電流変換部51によって変換される電流を電圧に変換して、帯域可変演算増幅器50の出力端子50cへ出力する。なお、図2(b)に示す内部回路は一例であり、電圧電流変換部51および電流電圧変換部53の構成はこれに限定されない。
【0015】
電圧電流変換部51および電流電圧変換部53間に設けられる可変抵抗部52は、ゲートに制御回路6が接続されたMOSFET52aから構成され、制御回路6によって抵抗値が可変される。制御回路6は、残響振動抑圧回路5から駆動電極2bへの抑圧制御信号の出力が停止された後に、可変抵抗部52の抵抗値を制御することで、帯域可変演算増幅器50の信号増幅の周波数帯域を可変させる。本実施形態では、可変抵抗部52の抵抗とその周囲の回路に形成される容量とにより、帯域可変演算増幅器50の内部に主要極を構成する。制御回路6は、可変抵抗部52の抵抗値を制御して、帯域可変演算増幅器50による信号増幅の周波数帯域を可変する。
【0016】
帯域可変演算増幅器50の内部には、各MOSFETのスイッチングにより高周波ノイズが発生するが、本実施形態による超音波センサ1Aは、残響振動による圧電体2aの振動が抑圧制御信号で打ち消された後に生じるこの高周波ノイズを、主要極の周波数を変化させることで、低減する。
【0017】
帯域可変演算増幅器50の信号増幅周波数帯域を可変するには、一般的に、定電流源を構成するMOSFET51e、53aによって流される電流の電流値を低下させることで行われる。しかし、この電流値を低下させると、帯域可変演算増幅器50の各ノードにおける電圧が変化し、各MOSFETに対するバイアス電圧が変化して、帯域可変演算増幅器50の出力DC電圧が微小に変化する。これに対して、上記のように、主要極の周波数を変化させることで、帯域可変演算増幅器50による信号増幅周波数帯域を可変する本実施形態においては、各ノードにおける電圧が変化することはなく、帯域可変演算増幅器50の出力に影響を与えることはない。
【0018】
図3は、超音波センサ1Aの動作シーケンスを示し、図の左から右へ時間が経過する。超音波センサ1Aは、期間T1における送信動作、期間T2における残響抑圧動作、期間T3における受信動作を繰り返す。同図(a)は、残響振動抑圧回路5から駆動電極2bへ出力される抑圧制御信号Bのタイミングチャート、同図(b)は、残響振動による圧電体2aの振動を抑圧した後、圧電体2aに再励起が生じないときにおける超音波センサ1Aの動作シーケンス、同図(c)は、残響振動による圧電体2aの振動を抑圧した後、圧電体2aに再励起が生じたときにおける超音波センサ1Aの動作シーケンスである。
【0019】
送信期間T1においては、送信回路3から駆動電極2bへ励振信号A(図4(a)参照)が出力され、圧電体2aが振動させられて超音波が発生する。送信回路3から駆動電極2bへの励振信号Aの出力が停止された後の残響抑圧期間T2では、抑圧制御信号B(図4(b)参照)がアクティブになる。生成された抑圧制御信号Bは駆動電極2bに印加され、圧電体2aの残響振動が抑圧される。抑圧制御信号Bはパルス状をしており、その信号の立ち上がりエッジタイミングおよび立ち下がりエッジタイミングに高周波ノイズC(図4(c)参照)が発生する。この高周波ノイズCは、帯域可変演算増幅器50により減衰した高周波ノイズD(図4(d)参照)となる。
【0020】
図5(a)は、帯域可変演算増幅器50の主要極の周波数、すなわち、帯域可変演算増幅器50の内部に構成されるカットオフ周波数の一番低いローパスフィルタのカットオフ周波数が引き下げられる前における帯域可変演算増幅器50の開ループ利得特性および閉ループ利得特性を表すグラフ、同図(b)は、このカットオフ周波数が引き下げられたときにおける帯域可変演算増幅器50の開ループ利得特性および閉ループ利得特性を表すグラフである。各グラフの横軸は信号周波数f、縦軸は帯域可変演算増幅器50の利得Gである。また、同図(a)において点線で示す特性線71aはカットオフ周波数が引き下げられる前における帯域可変演算増幅器50の開ループ利得特性、実線で示す特性線72aは閉ループ利得特性である。また、同図(b)において点線で示す特性線71bはカットオフ周波数が引き下げられたときにおける帯域可変演算増幅器50の開ループ利得特性、実線で示す特性線72bは閉ループ利得特性である。
【0021】
矢印73に示されるようにカットオフ周波数が引き下げられると、帯域可変演算増幅器50の開ループ利得特性および閉ループ利得特性は、高周波ノイズが発生する周波数帯域fwにおける利得Gが矢印74に示されるように低下して、帯域可変演算増幅器50の信号増幅率が小さくなる。したがって、図6に示すグラフのように、高周波ノイズCは、カットオフ周波数が引き下げられる前における帯域可変演算増幅器50の点線の特性線72aで示される閉ループ利得特性では、信号増幅されてしまうが、カットオフ周波数が引き下げられたときにおける帯域可変演算増幅器50の実線の特性線72bで示される閉ループ利得特性では、信号増幅率が小さく、矢印75に示されるように振幅が減衰した高周波ノイズDに低減される。なお、図6に示すグラフの縦軸および横軸は図5に示す各グラフと同じである。
【0022】
したがって、図3(b)に示す動作シーケンスの受信期間T3において、圧電体2aの残響振動が抑圧された後には、高周波ノイズCが高周波ノイズDに低減されるので、圧電体2aに再励起は生じない。このため、残響抑圧期間T2が終了した直後の受信期間T3に、超音波の反射波が受信されることで圧電体2aに生じる振動は、検出電極2cに検出波Eとして捉えることができる。しかし、図3(c)に示す動作シーケンスの受信期間T3において、圧電体2aの残響振動が抑圧された後に、帯域可変演算増幅器50から高周波ノイズCが駆動電極2bに出力されると、圧電体2aに再励起が生じる。したがって、残響抑圧期間T2が終了した直後の受信期間T3に、圧電体2aの再励起による振動によって雑音Nが生じる。このため、残響抑圧期間T2が終了した直後の受信期間T3に反射波が受信されると、その反射波は雑音Nに埋もれて検出することができない。この結果、超音波センサ1Aは近距離の物体を検出できなくなる。
【0023】
上記のように、残響抑圧期間T2から受信期間T3への切り替えで、抑圧制御信号Bの立ち下がりエッジに起因にして高周波ノイズCが生じ、この高周波ノイズCが圧電体2aに再励起を引き起こす。このような高周波ノイズに起因する圧電体2aの再励起は、図7に第1の比較例として示す超音波センサ11Aにおいても生じる。なお、図7において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0024】
超音波センサ11Aは、増幅回路およびフィルタ等から構成される残響振動抑圧回路81を備え、受信回路4から出力される制御信号を残響振動抑圧回路81で増幅する。増幅された制御信号は、nチャネルMOSFET82およびpチャネルMOSFET83からなるトランスミッションゲート84でスイッチングされて抑圧制御信号に変換され、残響抑圧期間T2において駆動電極2bに与えられる。この際、nチャネルMOSFET82のゲートには負電圧に振れる駆動パルスF、pチャネルMOSFET83のゲートには駆動パルスFが反転した正電圧に振れる駆動パルスGが与えられる。圧電素子2の駆動電圧は数十Vと高く、圧電体2aの残響振動を抑圧する抑圧制御信号も高い電圧が必要となり、トランスミッションゲート84の素子サイズが大きくなって駆動パルスF、Gの振幅も大きくなる。また、各MOSFET82、83のゲート・ドレイン間には寄生容量85、86が生じる。この寄生容量85、86は、トランスミッションゲート84の素子サイズの大きさに伴って容量値も大きくなる。したがって、駆動電極2bに与えられる抑圧制御信号の立ち上がりエッジタイミングおよび立ち下がりエッジタイミングには、振幅の大きな高周波ノイズHが発生する。このため、残響抑圧期間T2から受信期間T3に切り替わる際、抑圧制御信号の立ち下がりエッジに生じる高周波ノイズHによって圧電体2aが再励起されてしまう。
【0025】
また、高周波ノイズに起因する圧電体2aの再励起は、図8に第2の比較例として示す超音波センサ11Bにおいても生じる。なお、図8において図7と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0026】
超音波センサ11Bでは素子サイズの小さなトランスミッションゲート84が使用され、各MOSFET82、83のゲートに与えられる駆動パルスF、Gの振幅は小さくなる。また、各MOSFET82、83のゲート・ドレイン間に生じる寄生容量85、86もトランスミッションゲート84の素子サイズに応じて小さくなる。このため、駆動電極2bに与えられる抑圧制御信号の立ち上がりエッジタイミングおよび立ち下がりエッジタイミングに発生する高周波ノイズHは、振幅が小さくなる。しかし、各MOSFET82、83のソース・ドレイン間に寄生ダイオード87、88が生じ、制御信号が残響振動抑圧回路81で大きな倍率で増幅されるため、高周波ノイズHの電圧が寄生ダイオード87、88の順方向電圧を超える。このため、残響抑圧期間T2から受信期間T3に切り替わる際、寄生ダイオード87、88を通って圧電体2aを励起させる信号が駆動電極2bに出力され、圧電体2aが再励起されてしまう。
【0027】
しかし、本実施形態による超音波センサ1Aによれば、上記のように、残響抑圧期間T2から受信期間T3に切り替わる際に発生する高周波ノイズCは、帯域可変演算増幅器50の帯域が引き下げられて減衰するので、寄生ダイオード87、88が導通状態にならず、圧電体2aに再励起は生じない。
【0028】
このような本実施形態による超音波センサ1Aによれば、送信回路3から駆動電極2bへの励振信号Aの出力が停止された後、抑圧制御信号Bが帯域可変演算増幅器50によって信号増幅されて残響振動抑圧回路5から駆動電極2bに与えられることで、残響抑圧期間T2において、圧電体2aの残響振動が抑圧される。また、駆動電極2bへの抑圧制御信号Bの出力が停止された後の受信期間T3において、帯域可変演算増幅器50の信号増幅周波数帯域が制御回路6によって可変され、帯域可変演算増幅器50の内部で発生する高周波ノイズCの周波数帯域における帯域可変演算増幅器5の信号増幅率が低下させられることで、圧電体2aの残響振動が抑圧された後に駆動電極2bに印加される高周波ノイズDの信号レベルが低減される。
【0029】
本実施形態では、帯域可変演算増幅器50の信号増幅周波数帯域は、帯域可変演算増幅器50の内部に構成される主要極の周波数が制御回路6によって可変され、主要極の周波数が引き下げられて、高周波ノイズCの周波数帯域における帯域可変演算増幅器50の信号増幅率が低下させられる。つまり、駆動電極2bへの抑圧制御信号Bの出力が停止された後、制御回路6によって可変抵抗部52の抵抗値が可変されることで、帯域可変演算増幅器50の容量成分と可変抵抗部52から構成されるローパスフィルタの時定数が変わり、帯域可変演算増幅器50の信号増幅周波数帯域が簡単な回路構成で可変されて、高周波ノイズCの周波数帯域における帯域可変演算増幅器50の信号増幅率が低下させられる。
【0030】
したがって、圧電体2aの残響振動が抑圧された後、高周波ノイズCは、帯域可変演算増幅器50によって圧電体2aに再振動を起こさない信号レベルの高周波ノイズDに低減される。したがって、圧電体2aの残響振動が抑圧された後、高周波ノイズDによって圧電体2aが再励起されて再振動するのが防止される。このため、圧電体2aの残響振動が抑圧された直後の受信期間T3に受信される受信信号が圧電体2aの再振動に起因する雑音Nに埋もれなくなり、受信信号を正しく受信することが可能になる。
【0031】
また、本実施形態による超音波センサ1Aによれば、可変抵抗部52が電圧電流変換部51および電流電圧変換部53と共にMOSFETから構成されることで、帯域可変演算増幅器50は製造容易でかつ小型に構成され、超音波センサ1Aは小型で安価に製造される。
【0032】
図9は、本発明の第2の実施形態による超音波センサ1Bの回路図である。
【0033】
超音波センサ1Bは、残響振動抑圧回路5と駆動電極2bとの間に設けられる半導体スイッチ91を備える。制御回路6は、残響振動抑圧回路5から抑圧制御信号Bが出力される際に半導体スイッチ91を導通状態に制御し、残響振動抑圧回路5から駆動電極2bへの抑圧制御信号Bの出力が停止された後に半導体スイッチ91を非導通状態に制御する。第2の実施形態による超音波センサ1Bは、これらの点が第1の実施形態による超音波センサ1Aと相違する。これらの相違点以外の構成は第1の実施形態による超音波センサ1Aと同様である。
【0034】
半導体スイッチ91は、nチャネルMOSFET92のソース・ドレイン間とpチャネルMOSFET93のソース・ドレイン間とが並列に接続されたトランスミッションゲートから構成される。MOSFET92のソース・ドレイン間にはソースからドレインを順方向とする寄生ダイオード94、MOSFET93のソース・ドレイン間にはドレインからソースを順方向とする寄生ダイオード95が生じる。MOSFET92は制御回路6からゲートに駆動バルスJが印加されることで導通状態になり、MOSFET93は制御回路6からゲートに駆動バルスKが印加されることで導通状態になる。
【0035】
本実施形態による超音波センサ1Bによれば、上記の第1の実施形態による超音波センサ1Aと同様な作用効果が奏される。さらに、本実施形態による超音波センサ1Bによれば、残響振動抑圧回路5から駆動電極2bへの抑圧制御信号Bの出力が停止された後の受信期間T3に、半導体スイッチ91が制御回路6によって非導通状態に制御される。この際、帯域可変演算増幅器50の信号増幅周波数帯域が制御回路6によって可変され、帯域可変演算増幅器50の内部で発生する高周波ノイズCの周波数帯域における帯域可変演算増幅器50の信号増幅率が、半導体スイッチ91に寄生する寄生ダイオード94、95の順方向電圧以下に高周波ノイズCの信号レベルを低下させる信号増幅率になっていると、圧電体2aの残響振動が抑圧された後の受信期間T3に残響振動抑圧回路5から出力される高周波ノイズDは寄生ダイオード94、95を通ることができずに、半導体スイッチ91によって遮断される。したがって、本実施形態による超音波センサ1Bによれば、圧電体2aの残響振動が抑圧された後の受信期間T3に高周波ノイズDは駆動電極2bに何ら影響を与えなくなり、圧電体2aは確実に高周波ノイズDによって再励起されなくなり、再振動を起こさなくなる。
【0036】
図10は、図9に示す超音波センサ1Bにおける半導体スイッチ91の駆動回路の変形例を示す回路図である。図10において図9と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0037】
この変形例による半導体スイッチ91の駆動回路は、第1の可変電流源10、第1の抵抗11、第2の抵抗12、第2の可変電流源13がこの順に正電源VDDおよび負電源VSS間に直列接続され、第1の抵抗11および第2の抵抗12間の接続点14が残響振動抑圧回路5の出力線15に接続される直列回路を備えている。nチャネルMOSFET92およびpチャネルMOSFET93の各ソースは第1の抵抗11および第2の抵抗12間の接続点14に接続され、nチャネルMOSFET92のゲートは第1の可変電流源10および第1の抵抗11間の接続点16、pチャネルMOSFET93のゲートは第2の抵抗12および第2の可変電流源13間の接続点17に接続される。
【0038】
本構成によれば、半導体スイッチ91を構成するトランスミッションゲートにおけるnチャネルMOSFET92のゲート・ソース間には、第1の可変電流源10および第2の可変電流源13によって直列回路に流される電流の電流値と第1の抵抗11の抵抗値とによって定まる駆動電圧が、第1の抵抗11および第2の抵抗12間の接続点14の電圧を基準にして印加される。また、pチャネルMOSFET93のゲート・ソース間には、第1の可変電流源10および第2の可変電流源13によって直列回路に流される電流の電流値と第2の抵抗12の抵抗値とによって定まる駆動電圧が、第1の抵抗11および第2の抵抗12間の接続点14の電圧を基準にして印加される。第1の抵抗11および第2の抵抗12間の接続点14は残響振動抑圧回路5の出力線15に接続されるので、第1の抵抗11および第2の抵抗12間の接続点14の電圧は、残響振動抑圧回路5の出力電圧にしたがって変化する。
【0039】
しかし、残響振動抑圧回路5の出力電圧が変化しても、トランスミッションゲートにおけるnチャネルMOSFET92のゲート・ソース間、およびpチャネルMOSFET93のゲート・ソース間には、残響振動抑圧回路5の出力電圧を基準とする上記の各駆動電圧が印加されるので、nチャネルMOSFET92およびpチャネルMOSFET93は、残響振動抑圧回路5の出力電圧の変化に影響を受けずに適切に駆動される。また、この駆動電圧は、第1の可変電流源10および第2の可変電流源13によって直列回路に流される電流の電流値が制御回路6によって可変されることで制御される。このため、半導体スイッチ91は、残響振動抑圧回路5の出力電圧の変化に影響を受けずに、その導通状態が制御回路6によって制御される。よって、残響振動抑圧回路5から駆動電極2bへの抑圧制御信号Bの出力が停止された後の受信期間T3において、半導体スイッチ91は制御回路6によって適切に非導通状態に制御され、圧電体2aはより確実に高周波ノイズDによって再励起されなくなり、再振動を起こさなくなる。
【0040】
なお、第1の実施形態による超音波センサ1A並びに第2の実施形態による超音波センサ1Bでは、超音波を発生する振動子が圧電素子2である場合について説明したが、静電容量型の振動子であってもよい。その場合においても第1および第2の各実施形態と同様な作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0041】
1A、1B…超音波センサ
2…圧電素子(振動子)
2a…圧電体(振動体)
2b…駆動電極
2c…検出電極
2d…共通電極
3…送信回路
4…受信回路
5…残響振動抑圧回路
50…帯域可変演算増幅器
50a…非反転入力端子(+)
50b…反転入力端子(−)
50c…出力端子
6…制御回路
10…第1の電流源
11…第1の抵抗
12…第2の抵抗
13…第2の電流源
14、16、17…接続点
91…半導体スイッチ
92…nチャネルMOSFET
93…pチャネルMOSFET
94、95…寄生ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10